JP2004264137A - 非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサ - Google Patents
非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】軸ずれが生じても高精度な回転角度の測定が可能な非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法を提供する。
【解決手段】回転軸に第1の軸ずれを発生させ、磁石を回転させ、所定の回転角度毎に、磁気センサから出力されるデータ1を記憶する(S502)。回転軸に第2の軸ずれを発生させ、磁石を回転させ、所定の回転角度の各々について、磁気センサから出力されるデータ2を記憶する(S504)。データ1とデータ2を用いて、位相の補正値を決定する(S508)。データ1とデータ2を用いて振幅の補正値の決定を行う(S510)。上述した処理により、任意の状態で磁石を回転させたときに磁気センサから出力される出力値に対する補正値が決定される。
【選択図】 図5
【解決手段】回転軸に第1の軸ずれを発生させ、磁石を回転させ、所定の回転角度毎に、磁気センサから出力されるデータ1を記憶する(S502)。回転軸に第2の軸ずれを発生させ、磁石を回転させ、所定の回転角度の各々について、磁気センサから出力されるデータ2を記憶する(S504)。データ1とデータ2を用いて、位相の補正値を決定する(S508)。データ1とデータ2を用いて振幅の補正値の決定を行う(S510)。上述した処理により、任意の状態で磁石を回転させたときに磁気センサから出力される出力値に対する補正値が決定される。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサに関し、より詳細には、回転軸の端部に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、磁石の回転角度に応じた値を出力する磁気センサと、磁気センサからの出力値を用いて回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおいて、出力値を補正するための補正値を決定する方法および非接触回転角度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石が生成する磁界を磁気センサにより検知して、磁界に対する磁気センサの位置を測定する技術が知られている。磁気センサの出力Yに基づいて磁気センサの回転角度θを求める場合、この磁気センサと組み合わせる磁石系としては、出力Yが回転角度θに対して概ねsin関数(あるいはcos関数)になるものが多く採用される。
【0003】
また、2つの磁気センサを回転軸に対して位相が90度異なる位置に配置し、互いに直交する方向成分の磁界の強さを検知させ、その2つの出力を除算することにより、角度を測定する技術が知られている。磁気センサの出力Xと、出力Yとの比率Y/Xに基づいて回転角度θを求める場合、磁気センサと組み合わせる磁石系として、出力Xと出力Yが回転角度θに対してcos関数とsin関数になるような、即ちY/Xがtan関数になるようなものが多く採用される。
【0004】
これにより、2つの磁気センサが共通の温度特性を有していれば、共に温度によって同じ比率で出力が変化するため、磁気センサや磁石の温度特性の影響をほとんど受けずに測定することができる。
【0005】
図1は、このような回転角度センサの外観構成を概念的に示す図で、(a)は底面図、(b)は図1(a)の矢印W方向から示した側面図である。同図において、磁気センサAおよびBは、磁界を検知して、その磁界の強さに応じた値を出力するホール素子であり、共に等しい温度特性を有する。また、磁気センサAおよびBは、平面P上に配置されている。
【0006】
この平面P上の基準点Oと磁気センサAの略中心とを通る直線101、および基準点Oと磁気センサBの略中心とを通る直線102がなす角度は、概ね90度である。
【0007】
円板状に形成された磁石100はベアリング104により支持された回転軸103の端部に取り付けられており、平面Pに垂直な回転中心線Zを中心として円周方向、即ち白抜き矢印で示す方向に回転可能に構成されている。理想的な状態では、基準点Oは回転中心線Z上に存在する。
【0008】
このように、2個の磁気センサの出力値から角度を計算することで、温度特性による影響を補償することができる。
【0009】
特許文献1には、上記のように配置された2個のセンサから出力される2相正弦波信号により移動体の位置を検出する方法が記載されている。この技術では、2相正弦波信号の各瞬時値の組合せに対応する内挿位置を内挿位置テーブルとして記憶しておき、検出した2相正弦波信号の瞬時値により内挿位置テーブルを参照するためのアドレスを算出する。そして、参照アドレスに該当する内挿位置を求めることで、移動体の位置を検出する。
【0010】
しかし、上述したような回転角度センサでは、磁石の回転軸に横方向の力が加わることにより軸ずれが生じる場合がある。
【0011】
図2は、図1に示す回転角度センサの軸ずれを示す図で、(a)は底面図、(b)は図2(a)の矢印W方向から示した側面図である。同図に示す例では、矢印Q方向から回転軸103に力が加わることにより、回転軸103が回転中心線Zからずれている。
【0012】
回転角度センサにおける軸ずれは、磁気センサからの出力値に影響を及ぼし、結果として角度誤差の原因となる。特に、高精度な回転角度センサにおいては、センサ本来の持つ角度精度の向上よりも、センサを用いる回転軸等による軸ずれに起因する角度精度の劣化の方が支配的になる。
【0013】
従来から、このような軸ずれによる角度誤差を補正する方法が考えられている。例えば特許文献2には、位置または角度に応じて発生する周期信号を内挿して、より細かく位置または角度を検出する際、周期信号の最大値と最小値の差から信号のオフセットおよび振幅の補正値を求めることが記載されている。また、1つの状態において検出した2つの周期信号の交点、および各周期信号が望ましい位相差であるときの交点における振幅の差から補正係数を決定することが記載されている。実際の回転角度の測定では、上記のように決定された補正値や補正係数を使用して、オフセット、振幅および位相を補正する。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−346322号公報
【0015】
【特許文献2】
特開平8−145719号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
回転角度センサにおける軸ずれは、理想的な位置に極めて近い状態から大きく傾いた状態まで様々な状態を取り得る。しかしながら、従来から行われている角度誤差の補正では、実際に回転角度を測定したときの状態が補正値を決定したときの状態と近ければ測定精度が高くなる一方、実際に回転角度を測定したときの状態が補正値を決定したときの状態とかけ離れていれば、測定精度が低くなる。即ち、従来から行われている方法で決定した補正値により角度誤差の補正を行った場合の精度は、補正値を決定したときの1つの状態に依存するという問題があった。
【0017】
そこで、このような軸ずれが生じないようにするため、図3に示すように回転角度センサに対する様々な設計上の工夫がなされてきた。図3(a)に示す例では、円板状の磁石200を回転軸203の中央に固定している。そして、回転軸203を磁石200の表面側および裏面側でベアリング204および205によりそれぞれ支持している。また、図3(b)に示す例では、回転軸206の端部に固定された円板状の磁石200の中心部に支持部材208を設けている。そして、回転軸206をベアリング204で支持すると共に、支持部材208を支持することで、横ずれの発生を防止している。更に、図3(c)に示す例では、端部に磁石200が固定された回転軸210を、2つのベアリング204および205で支持している。この場合、2つのベアリング204および205の間隔が離れるほど、横ずれを防止する効果が高くなることが期待される。また、複数のベアリングに代えて、軸受面積の大きなドライベアリングを用いることによっても、同様に横ずれの防止が可能となる。
【0018】
しかしながら、このような横ずれを防止するための設計を行うと、回転角度センサ全体のサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0019】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸ずれが生じても高精度な回転角度の測定が可能な非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサを提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、前記磁気センサからの出力値を用いて前記回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおける補正値を決定する方法であって、前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石を回転させ、複数の予め定められた回転角度における前記磁気センサからの出力値を記憶するステップと、前記記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときの前記磁気センサからの出力値に対する補正値を決定するステップとを備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法において、前記出力値は、前記回転軸に第1の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第1の出力値と、前記回転軸に第2の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第2の出力値とを有し、前記決定するステップは、前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との差分を求めるステップと、前記求められた差分を合計するステップと、前記合計が最小になるような角度ずれを前記出力値の位相に対する補正値として決定するステップとを有することを特徴とする。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法において、前記決定するステップは、前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に前記決定された角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との平均値を、前記出力値の振幅に対する補正値として決定するステップを更に有することを特徴とする。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、非接触回転角度センサであって、回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石が複数の予め定められた回転角度だけ回転したときの前記磁気センサからの出力値を記憶した記憶手段と、前記記憶手段に記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときに前記磁気センサから出力される出力値に対する補正値を決定する手段と、前記決定された補正値を用いて前記磁気センサからの出力値を補正する手段とを有する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図4は、本発明を適用した回転角度センサの一例を示す構成図である。回転角度センサ400は、磁気センサ401および411、アンプ402および412、アナログ−デジタル(A/D)変換器403および413、初期補正部408、比率演算部404、角度演算部405、記憶装置406、および端子407を備えている。磁気センサ401はアンプ402およびA/D変換器403を介して、磁気センサ411はアンプ412およびA/D変換器413を介してそれぞれ比率演算部404へ接続されている。
【0026】
2つの磁気センサ401および411は、磁石(不図示)が生成する磁界中に配置され、磁石の基準位置からの回転角変位に応じた電圧を出力するホール素子であり、共通の温度特性を有する。また、初期補正部408、比率演算部404および角度演算部405の機能は、磁気センサ401および411に対する磁石の相対的な回転角度を求めるための演算処理装置(CPU)によって実現される。なお、本実施形態において、磁気センサ401および411と磁石とは、図1に示すように配置されていることを想定している。
【0027】
記憶装置406には、2つの磁気センサ401および411の出力値に対する補正値と、補正された2つの出力値の比に対応した磁気センサに対する磁石の相対的な回転角度を示すデータとが記憶される。
【0028】
上記のように構成された回転角度センサの動作について説明する。アンプ402および412は、それぞれ磁気センサ401および411から出力されるアナログ信号値を受け取り、これをアナログ−デジタル(A/D)変換器403および413が受け取り可能な電圧に増幅する。A/D変換器403および413は、それぞれアンプ402および412からのアナログ信号値をデジタル信号値に変換する。
【0029】
初期補正時には、初期補正部408が、2つ以上の軸ずれ状態においてデジタル信号値を取得し、この値に基づいて補正値を決定し、記憶装置406に記憶する。このような初期補正を行うことで、実用条件下での軸ずれによる角度精度劣化を低減する。
【0030】
実際の回転角度の測定では、比率演算部404が、A/D変換器403および413から出力されたデジタル信号値を記憶装置406に記憶された補正値を用いて補正した後、この2つの計算結果の比率を求める。角度演算部405は記憶装置406に記憶された表を参照して、比率演算部404から出力された比率に対応する回転角度を求め、端子407に結果を出力する。
【0031】
以下、図5のフローチャートを参照し、本実施形態に係る回転角度センサにおける補正値の決定方法について説明する。
【0032】
まず、ステップS502において、回転軸に第1の軸ずれを発生させる。そして、この状態で磁石を回転させ、所定の回転角度a1、a2、a3、・・・、anの各々について、磁気センサから出力される出力値のデータX(a1)、X(a2)、X(a3)、・・・、X(an)を記憶する。以下、このデータをデータ1という。
【0033】
次に、ステップS504において、回転軸に第2の軸ずれを発生させる。そして、この状態で磁石を回転させ、所定の回転角度a1、a2、a3、・・・、anの各々について、磁気センサから出力される出力値のデータX’(a1)、X’(a2)、X’(a3)、・・・、X’(an)を記憶する。以下、このデータをデータ2という。
【0034】
なお、ここでいう第1の軸ずれおよび第2の軸ずれは、単に角度または向きが異なる2つの軸ずれであれば足り、2つの軸ずれ状態が一定の関係を有している必要はない。
【0035】
次に、ステップS506において、各磁気センサからの出力値について、磁石が理想的な位置に配置されている場合の出力値に対するオフセット値を算出する。この処理は、磁気センサからの出力値が0になる位置と、理想的な状態(即ち磁石が理想的な位置にある場合)で磁気センサからの出力値が0になる位置とのずれを求めるための周知の方法で行われる。
【0036】
次に、ステップS508において、データ1およびデータ2を用いて、位相の補正値を決定する。これは、具体的には
△X(m)=X(m)−X’(m+p) p=0〜an−1
で表される差分値△X(m)について、m=a1からanまでの総和Σ(△X(m))が最小になるようなpを求めることにより行う。ここで、pは角度mに対する角度ずれを示している。
【0037】
このようにして、複数の予め定められた回転角度の各々について、データ1と、予め定められた回転角度に角度ずれを加えた場合におけるデータ2内の対応する出力値との差分を求め、求められた差分を合計し、合計が最小になるような角度ずれを出力値の位相の補正値として決定する処理が実現される。
【0038】
次に、ステップS510において、データ1とデータ2を用いて振幅の補正値X”(a1)、X”(a2)、X”(a3)、・・・、X”(an)の決定を行う。具体的には、データ1:X(a1)、X(a2)、X(a3)、・・・、X(an)、および位相補正したデータ2:X’(a1+p)、X’(a2+p)、X’(a3+p)、・・・、X’(an+p)について、角度毎に平均値
X”(a1)=X(a1)+X’(a1+p)
X”(a2)=X(a2)+X’(a2+p)
X”(a3)=X(a3)+X’(a3+p)
・
・
・
X”(an)=X(an)+X’(an+p)
を求めることにより行う。
【0039】
このようにして、複数の予め定められた回転角度の各々について、データ1と、予め定められた回転角度にステップS508で決定された角度ずれを加えた場合におけるデータ2内の対応する出力値との平均値を、出力値の振幅の補正値として決定する処理が実現される。
【0040】
上述した処理により、任意の状態で磁石を回転させたときに磁気センサから出力される出力値に対する補正値を決定することができる。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0042】
【実施例】
磁気センサとして旭化成電子(会社名)のホール素子HG106、磁石として直径10mm、厚さ2mm、径方向着磁のNdFeB、ベアリングとしてボールベアリングを使用して、上述した構成による回転角度センサを作製した。本実施例による回転角度センサにおける1つの磁気センサからの出力(センサ出力)を図6に示す。同図において、横軸は磁石の回転角度(度)、縦軸はセンサ出力を軸ずれがないときのセンサ出力の最大値で規格化した値である。また、実線は軸ずれがないときのセンサ出力を、破線は軸ずれが生じた場合のセンサ出力をそれぞれ示している。
【0043】
図7は、軸ずれが生じたときのセンサ出力の例を示す。同図において、実線は軸ずれ状態1におけるセンサ出力、破線は軸ずれ状態2におけるセンサ出力を示す。
【0044】
軸ずれ状態1および2における実測値の曲線と、軸ずれがない場合の理論曲線との差は以下のとおりである。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、上記表において、各値は軸ずれがない場合のセンサ出力の最大振幅で規格化した。また、位相はオフセット補正後の正弦曲線の第1、2象限の角度範囲と第3、4象限の角度範囲の比とした。
【0047】
これらのセンサ出力を使用して、上述した補正値の決定方法により補正値を得た。そして、第3の軸ずれを発生させて磁石を回転させ、この補正値を用いて磁気センサから出力される出力値を補正した。
【0048】
図8(a)および(b)は、比較例として、1つの状態のみに基づいて初期補正値を決定する従来技術による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す。また、図9(a)および(b)は、本実施例による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す。また、従来技術および本実施例のそれぞれにおける角度誤差の範囲を以下の表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
図8(b)および図9(b)から明らかなように、本実施例の方法を実施した場合の角度誤差が著しく減少している。なお、軸ずれ状態1においては、本実施例の方法を実施した場合の角度誤差が従来技術における角度誤差より若干大きい。しかしながら、従来技術における角度誤差が図8(b)に示す範囲にまで大きくなる可能性があることを考慮すると、本実施例の方法は角度誤差を一定範囲内に収めることができる利点があるということができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限らず、他の種々の形態で実施できることはいうまでもない。例えば、上述の実施形態では2個の磁気センサを用いた例について説明したが、少なくとも1個の磁気センサを使用した回転角度センサに対して本発明の方法を適用しても、本発明の効果を奏することはいうまでもない。
【0052】
また、上述の実施形態では2つの状態における磁気センサからの出力値を用いて補正値を決定する例について説明したが、3つ以上の状態における磁気センサからの出力値を用いてもよいことはいうまでもない。この場合状態の数が増えるほど計算が複雑になるが、現段階では少なくとも4つの状態を利用して補正値を決定することは実用的な範囲内にあると考えられる。
【0053】
また、上述の実施形態では2個の磁気センサからの出力値をそれぞれ補正してから出力比を求める場合について説明したが、2個の磁気センサからの出力比の補正値を決定することとしてもよい。
【0054】
また、磁気センサからの出力値に対する補正値は、磁気センサ毎に決定してもよく、あるいは各磁気センサに共通の補正値を決定することとしてもよい。後者の場合、共通の補正値は複数の磁気センサの出力値の平均を使用して決定することができる。
【0055】
また、振幅の補正値を決定する際に、所定の回転角度の各々について、第1の出力値と、その回転角度に角度ずれを加えた場合の第2の出力値とを加重平均することとしてもよい。
【0056】
更に、本発明を適用したデジタル角度測定システムを構成する磁気センサとしては、ホール素子の他に、MR(Magnetic Resistance)素子、MI(Magnetic Impedance)素子、およびフラックスゲート等を使用することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、磁気センサからの出力値を用いて回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおける補正値を決定する方法であって、回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において磁石を回転させ、複数の予め定められた回転角度における磁気センサからの出力値を記憶し、記憶された出力値を用いて、任意の状態で磁石を回転させたときの磁気センサからの出力値に対する補正値を決定するので、この補正値を用いた補正を行うことで、軸ずれが生じても角度誤差を小さくすることができる。
【0058】
また、軸ずれを生じさせないような設計を行うことなく高精度な回転角度の測定を実現することができるので、回転角度センサ全体のサイズをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の回転角度センサの外観構成を概念的に示す図である。
【図2】図1に示す回転角度センサの軸ずれを示す図である。
【図3】従来の回転角度センサの外観構成を概念的に示す図である。
【図4】本発明を適用した回転角度センサの一例を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転角度センサにおける補正値の決定方法のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例による回転角度センサにおける1つの磁気センサからの出力(センサ出力)を示す図である。
【図7】本発明の一実施例による回転角度センサにおいて軸ずれが生じたときのセンサ出力を示す図である。
【図8】従来技術による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差を比較例として示す図である。
【図9】本発明の一実施例による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す図である。
【符号の説明】
100、200 磁石
101、102 直線
103、203、206、210 回転軸
104、204、205 ベアリング
208 支持部材
400 回転角度センサ
401、411 磁気センサ
402、412 アンプ
403、413 A/D変換器
404 比率演算部
405 角度演算部
406 記憶装置
407 端子
408 初期補正部
A、B 磁気センサ
O 基準点
P 平面
Q、W 矢印
Z 回転中心線
【発明の属する技術分野】
本発明は、非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサに関し、より詳細には、回転軸の端部に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、磁石の回転角度に応じた値を出力する磁気センサと、磁気センサからの出力値を用いて回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおいて、出力値を補正するための補正値を決定する方法および非接触回転角度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石が生成する磁界を磁気センサにより検知して、磁界に対する磁気センサの位置を測定する技術が知られている。磁気センサの出力Yに基づいて磁気センサの回転角度θを求める場合、この磁気センサと組み合わせる磁石系としては、出力Yが回転角度θに対して概ねsin関数(あるいはcos関数)になるものが多く採用される。
【0003】
また、2つの磁気センサを回転軸に対して位相が90度異なる位置に配置し、互いに直交する方向成分の磁界の強さを検知させ、その2つの出力を除算することにより、角度を測定する技術が知られている。磁気センサの出力Xと、出力Yとの比率Y/Xに基づいて回転角度θを求める場合、磁気センサと組み合わせる磁石系として、出力Xと出力Yが回転角度θに対してcos関数とsin関数になるような、即ちY/Xがtan関数になるようなものが多く採用される。
【0004】
これにより、2つの磁気センサが共通の温度特性を有していれば、共に温度によって同じ比率で出力が変化するため、磁気センサや磁石の温度特性の影響をほとんど受けずに測定することができる。
【0005】
図1は、このような回転角度センサの外観構成を概念的に示す図で、(a)は底面図、(b)は図1(a)の矢印W方向から示した側面図である。同図において、磁気センサAおよびBは、磁界を検知して、その磁界の強さに応じた値を出力するホール素子であり、共に等しい温度特性を有する。また、磁気センサAおよびBは、平面P上に配置されている。
【0006】
この平面P上の基準点Oと磁気センサAの略中心とを通る直線101、および基準点Oと磁気センサBの略中心とを通る直線102がなす角度は、概ね90度である。
【0007】
円板状に形成された磁石100はベアリング104により支持された回転軸103の端部に取り付けられており、平面Pに垂直な回転中心線Zを中心として円周方向、即ち白抜き矢印で示す方向に回転可能に構成されている。理想的な状態では、基準点Oは回転中心線Z上に存在する。
【0008】
このように、2個の磁気センサの出力値から角度を計算することで、温度特性による影響を補償することができる。
【0009】
特許文献1には、上記のように配置された2個のセンサから出力される2相正弦波信号により移動体の位置を検出する方法が記載されている。この技術では、2相正弦波信号の各瞬時値の組合せに対応する内挿位置を内挿位置テーブルとして記憶しておき、検出した2相正弦波信号の瞬時値により内挿位置テーブルを参照するためのアドレスを算出する。そして、参照アドレスに該当する内挿位置を求めることで、移動体の位置を検出する。
【0010】
しかし、上述したような回転角度センサでは、磁石の回転軸に横方向の力が加わることにより軸ずれが生じる場合がある。
【0011】
図2は、図1に示す回転角度センサの軸ずれを示す図で、(a)は底面図、(b)は図2(a)の矢印W方向から示した側面図である。同図に示す例では、矢印Q方向から回転軸103に力が加わることにより、回転軸103が回転中心線Zからずれている。
【0012】
回転角度センサにおける軸ずれは、磁気センサからの出力値に影響を及ぼし、結果として角度誤差の原因となる。特に、高精度な回転角度センサにおいては、センサ本来の持つ角度精度の向上よりも、センサを用いる回転軸等による軸ずれに起因する角度精度の劣化の方が支配的になる。
【0013】
従来から、このような軸ずれによる角度誤差を補正する方法が考えられている。例えば特許文献2には、位置または角度に応じて発生する周期信号を内挿して、より細かく位置または角度を検出する際、周期信号の最大値と最小値の差から信号のオフセットおよび振幅の補正値を求めることが記載されている。また、1つの状態において検出した2つの周期信号の交点、および各周期信号が望ましい位相差であるときの交点における振幅の差から補正係数を決定することが記載されている。実際の回転角度の測定では、上記のように決定された補正値や補正係数を使用して、オフセット、振幅および位相を補正する。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−346322号公報
【0015】
【特許文献2】
特開平8−145719号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
回転角度センサにおける軸ずれは、理想的な位置に極めて近い状態から大きく傾いた状態まで様々な状態を取り得る。しかしながら、従来から行われている角度誤差の補正では、実際に回転角度を測定したときの状態が補正値を決定したときの状態と近ければ測定精度が高くなる一方、実際に回転角度を測定したときの状態が補正値を決定したときの状態とかけ離れていれば、測定精度が低くなる。即ち、従来から行われている方法で決定した補正値により角度誤差の補正を行った場合の精度は、補正値を決定したときの1つの状態に依存するという問題があった。
【0017】
そこで、このような軸ずれが生じないようにするため、図3に示すように回転角度センサに対する様々な設計上の工夫がなされてきた。図3(a)に示す例では、円板状の磁石200を回転軸203の中央に固定している。そして、回転軸203を磁石200の表面側および裏面側でベアリング204および205によりそれぞれ支持している。また、図3(b)に示す例では、回転軸206の端部に固定された円板状の磁石200の中心部に支持部材208を設けている。そして、回転軸206をベアリング204で支持すると共に、支持部材208を支持することで、横ずれの発生を防止している。更に、図3(c)に示す例では、端部に磁石200が固定された回転軸210を、2つのベアリング204および205で支持している。この場合、2つのベアリング204および205の間隔が離れるほど、横ずれを防止する効果が高くなることが期待される。また、複数のベアリングに代えて、軸受面積の大きなドライベアリングを用いることによっても、同様に横ずれの防止が可能となる。
【0018】
しかしながら、このような横ずれを防止するための設計を行うと、回転角度センサ全体のサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0019】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸ずれが生じても高精度な回転角度の測定が可能な非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法および非接触回転角度センサを提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、前記磁気センサからの出力値を用いて前記回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおける補正値を決定する方法であって、前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石を回転させ、複数の予め定められた回転角度における前記磁気センサからの出力値を記憶するステップと、前記記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときの前記磁気センサからの出力値に対する補正値を決定するステップとを備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法において、前記出力値は、前記回転軸に第1の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第1の出力値と、前記回転軸に第2の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第2の出力値とを有し、前記決定するステップは、前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との差分を求めるステップと、前記求められた差分を合計するステップと、前記合計が最小になるような角度ずれを前記出力値の位相に対する補正値として決定するステップとを有することを特徴とする。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法において、前記決定するステップは、前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に前記決定された角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との平均値を、前記出力値の振幅に対する補正値として決定するステップを更に有することを特徴とする。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、非接触回転角度センサであって、回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石が複数の予め定められた回転角度だけ回転したときの前記磁気センサからの出力値を記憶した記憶手段と、前記記憶手段に記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときに前記磁気センサから出力される出力値に対する補正値を決定する手段と、前記決定された補正値を用いて前記磁気センサからの出力値を補正する手段とを有する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図4は、本発明を適用した回転角度センサの一例を示す構成図である。回転角度センサ400は、磁気センサ401および411、アンプ402および412、アナログ−デジタル(A/D)変換器403および413、初期補正部408、比率演算部404、角度演算部405、記憶装置406、および端子407を備えている。磁気センサ401はアンプ402およびA/D変換器403を介して、磁気センサ411はアンプ412およびA/D変換器413を介してそれぞれ比率演算部404へ接続されている。
【0026】
2つの磁気センサ401および411は、磁石(不図示)が生成する磁界中に配置され、磁石の基準位置からの回転角変位に応じた電圧を出力するホール素子であり、共通の温度特性を有する。また、初期補正部408、比率演算部404および角度演算部405の機能は、磁気センサ401および411に対する磁石の相対的な回転角度を求めるための演算処理装置(CPU)によって実現される。なお、本実施形態において、磁気センサ401および411と磁石とは、図1に示すように配置されていることを想定している。
【0027】
記憶装置406には、2つの磁気センサ401および411の出力値に対する補正値と、補正された2つの出力値の比に対応した磁気センサに対する磁石の相対的な回転角度を示すデータとが記憶される。
【0028】
上記のように構成された回転角度センサの動作について説明する。アンプ402および412は、それぞれ磁気センサ401および411から出力されるアナログ信号値を受け取り、これをアナログ−デジタル(A/D)変換器403および413が受け取り可能な電圧に増幅する。A/D変換器403および413は、それぞれアンプ402および412からのアナログ信号値をデジタル信号値に変換する。
【0029】
初期補正時には、初期補正部408が、2つ以上の軸ずれ状態においてデジタル信号値を取得し、この値に基づいて補正値を決定し、記憶装置406に記憶する。このような初期補正を行うことで、実用条件下での軸ずれによる角度精度劣化を低減する。
【0030】
実際の回転角度の測定では、比率演算部404が、A/D変換器403および413から出力されたデジタル信号値を記憶装置406に記憶された補正値を用いて補正した後、この2つの計算結果の比率を求める。角度演算部405は記憶装置406に記憶された表を参照して、比率演算部404から出力された比率に対応する回転角度を求め、端子407に結果を出力する。
【0031】
以下、図5のフローチャートを参照し、本実施形態に係る回転角度センサにおける補正値の決定方法について説明する。
【0032】
まず、ステップS502において、回転軸に第1の軸ずれを発生させる。そして、この状態で磁石を回転させ、所定の回転角度a1、a2、a3、・・・、anの各々について、磁気センサから出力される出力値のデータX(a1)、X(a2)、X(a3)、・・・、X(an)を記憶する。以下、このデータをデータ1という。
【0033】
次に、ステップS504において、回転軸に第2の軸ずれを発生させる。そして、この状態で磁石を回転させ、所定の回転角度a1、a2、a3、・・・、anの各々について、磁気センサから出力される出力値のデータX’(a1)、X’(a2)、X’(a3)、・・・、X’(an)を記憶する。以下、このデータをデータ2という。
【0034】
なお、ここでいう第1の軸ずれおよび第2の軸ずれは、単に角度または向きが異なる2つの軸ずれであれば足り、2つの軸ずれ状態が一定の関係を有している必要はない。
【0035】
次に、ステップS506において、各磁気センサからの出力値について、磁石が理想的な位置に配置されている場合の出力値に対するオフセット値を算出する。この処理は、磁気センサからの出力値が0になる位置と、理想的な状態(即ち磁石が理想的な位置にある場合)で磁気センサからの出力値が0になる位置とのずれを求めるための周知の方法で行われる。
【0036】
次に、ステップS508において、データ1およびデータ2を用いて、位相の補正値を決定する。これは、具体的には
△X(m)=X(m)−X’(m+p) p=0〜an−1
で表される差分値△X(m)について、m=a1からanまでの総和Σ(△X(m))が最小になるようなpを求めることにより行う。ここで、pは角度mに対する角度ずれを示している。
【0037】
このようにして、複数の予め定められた回転角度の各々について、データ1と、予め定められた回転角度に角度ずれを加えた場合におけるデータ2内の対応する出力値との差分を求め、求められた差分を合計し、合計が最小になるような角度ずれを出力値の位相の補正値として決定する処理が実現される。
【0038】
次に、ステップS510において、データ1とデータ2を用いて振幅の補正値X”(a1)、X”(a2)、X”(a3)、・・・、X”(an)の決定を行う。具体的には、データ1:X(a1)、X(a2)、X(a3)、・・・、X(an)、および位相補正したデータ2:X’(a1+p)、X’(a2+p)、X’(a3+p)、・・・、X’(an+p)について、角度毎に平均値
X”(a1)=X(a1)+X’(a1+p)
X”(a2)=X(a2)+X’(a2+p)
X”(a3)=X(a3)+X’(a3+p)
・
・
・
X”(an)=X(an)+X’(an+p)
を求めることにより行う。
【0039】
このようにして、複数の予め定められた回転角度の各々について、データ1と、予め定められた回転角度にステップS508で決定された角度ずれを加えた場合におけるデータ2内の対応する出力値との平均値を、出力値の振幅の補正値として決定する処理が実現される。
【0040】
上述した処理により、任意の状態で磁石を回転させたときに磁気センサから出力される出力値に対する補正値を決定することができる。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0042】
【実施例】
磁気センサとして旭化成電子(会社名)のホール素子HG106、磁石として直径10mm、厚さ2mm、径方向着磁のNdFeB、ベアリングとしてボールベアリングを使用して、上述した構成による回転角度センサを作製した。本実施例による回転角度センサにおける1つの磁気センサからの出力(センサ出力)を図6に示す。同図において、横軸は磁石の回転角度(度)、縦軸はセンサ出力を軸ずれがないときのセンサ出力の最大値で規格化した値である。また、実線は軸ずれがないときのセンサ出力を、破線は軸ずれが生じた場合のセンサ出力をそれぞれ示している。
【0043】
図7は、軸ずれが生じたときのセンサ出力の例を示す。同図において、実線は軸ずれ状態1におけるセンサ出力、破線は軸ずれ状態2におけるセンサ出力を示す。
【0044】
軸ずれ状態1および2における実測値の曲線と、軸ずれがない場合の理論曲線との差は以下のとおりである。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、上記表において、各値は軸ずれがない場合のセンサ出力の最大振幅で規格化した。また、位相はオフセット補正後の正弦曲線の第1、2象限の角度範囲と第3、4象限の角度範囲の比とした。
【0047】
これらのセンサ出力を使用して、上述した補正値の決定方法により補正値を得た。そして、第3の軸ずれを発生させて磁石を回転させ、この補正値を用いて磁気センサから出力される出力値を補正した。
【0048】
図8(a)および(b)は、比較例として、1つの状態のみに基づいて初期補正値を決定する従来技術による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す。また、図9(a)および(b)は、本実施例による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す。また、従来技術および本実施例のそれぞれにおける角度誤差の範囲を以下の表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
図8(b)および図9(b)から明らかなように、本実施例の方法を実施した場合の角度誤差が著しく減少している。なお、軸ずれ状態1においては、本実施例の方法を実施した場合の角度誤差が従来技術における角度誤差より若干大きい。しかしながら、従来技術における角度誤差が図8(b)に示す範囲にまで大きくなる可能性があることを考慮すると、本実施例の方法は角度誤差を一定範囲内に収めることができる利点があるということができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限らず、他の種々の形態で実施できることはいうまでもない。例えば、上述の実施形態では2個の磁気センサを用いた例について説明したが、少なくとも1個の磁気センサを使用した回転角度センサに対して本発明の方法を適用しても、本発明の効果を奏することはいうまでもない。
【0052】
また、上述の実施形態では2つの状態における磁気センサからの出力値を用いて補正値を決定する例について説明したが、3つ以上の状態における磁気センサからの出力値を用いてもよいことはいうまでもない。この場合状態の数が増えるほど計算が複雑になるが、現段階では少なくとも4つの状態を利用して補正値を決定することは実用的な範囲内にあると考えられる。
【0053】
また、上述の実施形態では2個の磁気センサからの出力値をそれぞれ補正してから出力比を求める場合について説明したが、2個の磁気センサからの出力比の補正値を決定することとしてもよい。
【0054】
また、磁気センサからの出力値に対する補正値は、磁気センサ毎に決定してもよく、あるいは各磁気センサに共通の補正値を決定することとしてもよい。後者の場合、共通の補正値は複数の磁気センサの出力値の平均を使用して決定することができる。
【0055】
また、振幅の補正値を決定する際に、所定の回転角度の各々について、第1の出力値と、その回転角度に角度ずれを加えた場合の第2の出力値とを加重平均することとしてもよい。
【0056】
更に、本発明を適用したデジタル角度測定システムを構成する磁気センサとしては、ホール素子の他に、MR(Magnetic Resistance)素子、MI(Magnetic Impedance)素子、およびフラックスゲート等を使用することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、磁気センサからの出力値を用いて回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおける補正値を決定する方法であって、回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において磁石を回転させ、複数の予め定められた回転角度における磁気センサからの出力値を記憶し、記憶された出力値を用いて、任意の状態で磁石を回転させたときの磁気センサからの出力値に対する補正値を決定するので、この補正値を用いた補正を行うことで、軸ずれが生じても角度誤差を小さくすることができる。
【0058】
また、軸ずれを生じさせないような設計を行うことなく高精度な回転角度の測定を実現することができるので、回転角度センサ全体のサイズをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の回転角度センサの外観構成を概念的に示す図である。
【図2】図1に示す回転角度センサの軸ずれを示す図である。
【図3】従来の回転角度センサの外観構成を概念的に示す図である。
【図4】本発明を適用した回転角度センサの一例を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転角度センサにおける補正値の決定方法のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例による回転角度センサにおける1つの磁気センサからの出力(センサ出力)を示す図である。
【図7】本発明の一実施例による回転角度センサにおいて軸ずれが生じたときのセンサ出力を示す図である。
【図8】従来技術による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差を比較例として示す図である。
【図9】本発明の一実施例による軸ずれ状態1および軸ずれ状態2における角度誤差をそれぞれ示す図である。
【符号の説明】
100、200 磁石
101、102 直線
103、203、206、210 回転軸
104、204、205 ベアリング
208 支持部材
400 回転角度センサ
401、411 磁気センサ
402、412 アンプ
403、413 A/D変換器
404 比率演算部
405 角度演算部
406 記憶装置
407 端子
408 初期補正部
A、B 磁気センサ
O 基準点
P 平面
Q、W 矢印
Z 回転中心線
Claims (4)
- 回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、前記磁気センサからの出力値を用いて前記回転角度を求める演算部とを有する非接触回転角度センサにおける補正値を決定する方法であって、
前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石を回転させ、複数の予め定められた回転角度における前記磁気センサからの出力値を記憶するステップと、
前記記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときの前記磁気センサからの出力値に対する補正値を決定するステップと
を備えることを特徴とする非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法。 - 前記出力値は、前記回転軸に第1の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第1の出力値と、前記回転軸に第2の軸ずれが発生した状態で前記磁気センサから出力される第2の出力値とを有し、前記決定するステップは、
前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との差分を求めるステップと、
前記求められた差分を合計するステップと、
前記合計が最小になるような角度ずれを前記出力値の位相に対する補正値として決定するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法。 - 前記決定するステップは、
前記複数の予め定められた回転角度の各々について、前記第1の出力値と、前記予め定められた回転角度に前記決定された角度ずれを加えた場合の前記第2の出力値との平均値を、前記出力値の振幅に対する補正値として決定するステップを更に有することを特徴とする請求項2に記載の非接触回転角度センサにおける補正値の決定方法。 - 回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転する磁石と、磁界の強さを検知して、前記磁石の回転角度に応じた値を出力する少なくとも1つの磁気センサと、
前記回転軸に発生した2つ以上の軸ずれ状態の各々において前記磁石が複数の予め定められた回転角度だけ回転したときの前記磁気センサからの出力値を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された出力値を用いて、任意の状態で前記磁石を回転させたときに前記磁気センサから出力される出力値に対する補正値を決定する手段と、前記決定された補正値を用いて前記磁気センサからの出力値を補正する手段とを有する演算手段と
を備えることを特徴とする非接触回転角度センサ。
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060509 |