JP2004264101A - ヨウ素・デンプン反応を利用したカンキツグリーニング病の検定法 - Google Patents
ヨウ素・デンプン反応を利用したカンキツグリーニング病の検定法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】カンキツの葉を破砕し、これを熱湯で糊化した後、その上清をマイクロプレートに入れ、これにヨウ素溶液を添加することにより、カンキツグリーニング病に罹病したサンプルは、紫色に、要素欠乏症状は淡い青色に、健全サンプルは黄、茶または緑色に発色する。またマイクロプレートリーダーなどの吸光値測定機によって波長540または655nmで測定する。また、微量遠心チューブ、マイクロプレート、ピペット、爪楊枝、発泡スチロール、ヨウ素溶液により検定キットを作製する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヨウ素・デンプン反応を利用したカンキツグリーニング病の検定法で、サンプルの処理法、ヨウ素添加量、発色の相違による罹病樹、要素欠乏症状の識別方法、吸光値による罹病サンプルの検出法、これらの方法を利用した検定キットの作成および作製法に係わる。
【0002】
【従来の技術】
沖縄県におけるカンキツ類の生産は、主にタンカン、温州、シークァーシャーなどの品種が栽培され6億円以上の生産額がある。特にシークァーシャーは血糖値や血圧の低下やガンの発病抑制に効果があるとして近年注目されており、本県の重要な果樹栽培品目となっている。しかし、ウイルス、エクスコーティスおよびカンキツグリーニング病などが発生し、収量の低下を引き起こし問題となっている。
【0003】
特にカンキツグリーニング病は、アフリカ南部および東部から中国、アラビア半島の南西部に広く発生し、猛威をふるっており、インドでは大災害レベルで発生し、フィリピンでは1962年に700万本が発病し、約10年間でカンキツ栽培地域が6割以上減少、インドネシアでは1960〜70年の間に約300万本のカンキツが枯死、アフリカでは30〜100%の減収、台湾ではカンキツの主たる枯死原因となっている。我が国では1988年に沖縄県西表島で初めて本病の発生が確認され、その後、南大東島を除く全ての地域で本病の発生が確認されている。
【0004】
本病の病原体は難培養のグラム陰性バクテリアで、1996年Jagoueixらが遺伝子解析によって16SrDNAの塩基配列から、Liberobacter asiaticum(アジア型)とL.africanum(南アフリカ型)の2種に分類されると提唱している。我が国で発生しているタイプはアジア型であると考えられている。
【0005】
本病はカンキツ類の難防除病害とされ、現段階では、罹病樹の早期発見および伐採、媒介虫であるミカンキジラミの防除を行うことが最善策とされている。
【0006】
一般的に本病の検定法は2種のユニバーサルプライマーを用いたPCR法により行われており、他の方法として血清反応や電子顕微鏡による病原体そのものを観察する方法も考案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法は優れた方法であるが、設備や備品、試薬などにコストがかかり、検定には時間がかかるだけでなく、技術の熟練が必要とされる。そこで本発明ではコストがかからず、迅速に多量のサンプルを検定できる検定法の開発を行った。
【0008】
本発明は、カンキツグリーニング病の安価で迅速に多数のサンプルを検定する技術を鑑みて行われたものであり、サンプルの処理法、ヨウ素添加量、発色の相違による罹病樹、要素欠乏症状の識別方法、吸光値による罹病サンプルの検出法、これらの方法を利用した検定キットの作製を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、カンキツ類の葉をちぎって破砕し、熱湯で糊化し、ヨウ素溶液を添加することで発色させ、その発色の違いによって、健全樹(カンキツグリーニング病に対して)、罹病樹および要素欠乏症状を識別する方法を見出し、さらに、これらの方法を利用した検定キットの作成法を考案した。該カンキツ類の葉は、細断しても、破砕、磨砕してもよく、葉に含まれるデンプンを抽出できるものであれば、いずれでも良い。
【0010】
本方法はヨウ素・デンプン反応を利用したカンキツグリーニング病および要素欠乏症状の識別法であり、本発明者らは、このヨウ素・デンプン反応を利用した検定法および検定キットの発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、被検定樹は、カンキツグリーニング病に罹病しているかどうかを検定するカンキツ樹の地上部、特に葉を使用するものであり、葉肉細胞内のデンプンをヨウ素・デンプン反応の発色状態から識別可能とするものである。
【0012】
このデンプンに含まれるアミクロペクチンとアミロースがヨウ素と反応し、前者が紫色に、後者が青色に染まる。この発色により、カンキツグリーニング病の症状を識別するものである。発明者らは、鋭意研究の結果、罹病葉は、紫色(青紫、茶紫を含む)に発色し、要素欠乏症状は、青色(淡い青)に発色する。健全葉は、黄色、茶色または緑色の発色を示すことがわかった。
【0013】
また、本発明は、発色の識別をより確実とするために、マイクロプレートリーダーなどの測定器を使用して波長540nmの吸光値により罹病サンプルを識別するものである。
【0014】
本方法を利用した検定用キットとして、被検定葉の破砕物と水を入れるための有蓋小径筒状容器と、この破砕物を磨り潰すための破砕具と、前記の容器を立てて固定し、そのまま煮沸するための固定台と、ヨウ素溶液と、スポイトと、煮沸した前記の容器内の抽出液を少量ずつ区画して注入できる、多数の凹部を有する検定プレートから構成する検定セットとした。該破砕具は、被検定葉を磨り潰すことができるものであり、ピンや爪楊枝、箸、割り箸などでも良い。該固定台は、発泡スチロール板に容器を挿入して立設させるための穴を設けたものでも良い。検定プレートは、市販の分析用マイクロプレートなどでも良い。
【0015】
なお、発明した検定法および検定キットはカンキツ類の品種(温州、タンカン、シークァーシャーなど)に利用可能であり、品種に関係なく本方法の提供が可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
カンキツグリーニング病は果実が発色しないため減収を招くだけでなく、最終的には樹を枯死させることから、深刻な問題である。したがって簡易で安価かつ、迅速に多数の検体を検定できる方法を確立することは、本病の早期発見・伐採による蔓延防止対策を行う上で非常に重要である。また技術の習得が必要なく、誰でも簡単に検定できる方法を開発するために本発明ではヨウ素・デンプン反応を利用し、健全葉、罹病葉および要素欠乏症状の発色の有無および相違について検討した。
【0018】
カンキツグリーニング病に罹病した樹の葉肉細胞には多量のデンプンが蓄積することが知られている。そこで葉の中肋および葉肉細胞の部分の切片を作製し、プレパラートに乗せヨウ素を滴下し、光学顕微鏡で観察した結果、組織が紫色に明瞭に紫色に発色することを見出した。
【0019】
そこで判別が容易になるように葉をちぎって破砕し、ヨウ素溶液を滴下した結果、罹病サンプルであっても発色しない場合があった。そこで破砕した葉を沸騰した熱湯で10分煮た後、その煮汁にヨウ素溶液を滴下した結果、安定して紫色に発色することを見出した。
【0020】
紫色に発色した場合でも、発色後直ちに消失する場合があったため、サンプル量に対するヨウ素滴下量を検討した結果、サンプル100μl当たりヨウ素溶液(5mM)を40μl添加した場合、10〜30分安定して発色し、色の違いを区別できることを見出した。
【0021】
様々なサンプルについて検討した結果、罹病サンプル以外でも何らかの色に発色する場合があった。そこで健全、要素欠乏症、罹病サンプルについて色の判別を行った結果、健全葉は黄、茶または緑色、要素欠乏症状は青(淡い青)、罹病葉は紫に発色することを見出した。
【0022】
肉眼での判定が可能であったが、さらに簡素化して数値で判断するために吸光値により判定できるか検討した。その結果、波長540nmで罹病サンプルが健全サンプルの20〜30倍以上の高い数値を示すことを見出した。
【0023】
野外から採取したカンキツ(温州、シークァーシャーおよびタンカン)のヨウ素・デンプン反応による検定結果をPCRの検定結果と比較した結果、樹当たり95%の割合で一致した。
【0024】
以上の結果から、ヨウ素・デンプン反応により高率にカンキツグリーニング病の検定が可能であると判断された。
【0025】
また微量遠心チューブ、爪楊枝(スティック状のもの)、発泡スチロール、マイクロプレート、ピペット、5mMヨウ素溶液(容器を含む)を組み合わせることで簡易な検定キットの作製が可能である。
【0026】
【実施例】
次に本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
【0027】
カンキツの葉を5mm大にちぎって、30μlの水が入ったマイクロチューブに入れて破砕し、さらに70μlの水を加え、10分間熱湯で糊化したのち、上清を100μl取ってマイクロプレートに入れ、これに5mMのヨウ素溶液40μl添加するとカンキツグリーニング病に罹病したサンプルは紫に、要素欠乏症状は青(淡い青)に、健全サンプルは黄、茶または緑色に発色する。これをマイクロプレートリーダーなどの吸光値測定機によって波長540nmで測定すると、健全サンプルの20倍以上の吸光値を示すことが明らかとなった。また微量遠心チューブ、マイクロプレート、ピペット、発泡スチロール、爪楊枝(スティック状のもの)ヨウ素溶液(5mM・容器を含む)を組み合わせることにより検定キットが作製できる。
【0028】
したがって、以上の検定方法および検定キットによってカンキツグリーニング病を簡易で安価かつ迅速に検定することが可能であると判断された。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した本発明では、ヨウ素・デンプン反応を利用することにより、肉眼または吸光値によりカンキツグリーニング病の検定が可能であるとともに、安価な資材によって検定キットの作製が可能である。
すなわち、ヨウ素・デンプン反応による罹病樹の識別(検出)方法を提供できる。
【0030】
さらにマイクロプレートリーダーなどの測定器を使用して波長540nmの吸光値により罹病サンプルを識別する方法を提供できる。また、本方法を利用した検定キットを提供できる。
【0031】
したがって、施設を必要とせず、カンキツグリーニング病が安価で迅速かつ多量に検定可能となるだけでなく、新たな産業創出に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カンキツグリーニング病の健全葉および罹病葉を示した図である。
【図2】カンキツグリーニング病検出における最適ヨウ素溶液濃度を示す図である。
【図3】カンキツグリーニング病検出におけるヨウ素溶液の最適添加量を示す図である。
【図4】ヨウ素・デンプン反応を利用したカンキツグリーニング病の検定法を示す図である。
【図5】ヨウ素・デンプン反応によるグリーニング病の検出結果を示した図である。
【図6】ヨウ素・デンプン反応により発色したサンプルを示した図である。
【図7】吸光値(波長540nm)の測定による検定結果を示した図である。
【図8】野外から採取したサンプルのヨウ素・デンプン反応による検定結果とPCRとの整合性を示した図である。
【図9】本発明による検定キットの実施例を示した図である。
Claims (5)
- 被検定樹の葉部のヨウ素・デンプン反応による発色により、カンキツグリーニング病を識別することを特徴とするカンキツグリーニング病の検出法。
- 請求項1の検定法による、罹病サンプル(葉)の発色状態により、カンキツグリーニング病を識別することを特徴とするカンキツグリーニング病樹の検出法。
- 請求項1の検定法による、罹病サンプル(葉)の発色状態により、要素欠乏症状を識別することを特徴とする要素欠乏症状の検出法。
- 前記の発色状態を識別するために、色の波長の吸光値により、罹病サンプルの症状の識別を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の識別法。
- 被検定葉の破砕物と水を入れるための有蓋小径筒状容器と、該破砕物を磨り潰すための破砕具と、前記の容器を立てて固定し、そのまま煮沸するための固定台と、ヨウ素溶液と、スポイトと、煮沸した前記の容器内の抽出液を少量ずつ区画して注入できる、多数の凹部を有する検定プレートから構成されていることを特徴とする、カンキツグリーニング病の検定セット。
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2003
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