JP2004262169A - インクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】色材含有樹脂微粒子を用いた高堅牢度の色再現性に優れた水系インクの利点を保持しながら、更にインク吸収性、画像定着性に優れ、かつ光沢等の性能にも優れた着色樹脂微粒子含有インク用インクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】支持体上にインク吸収層を有する着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体であって、前記着色樹脂微粒子含有インクが色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクであり、かつ前記インクジェット記録媒体の細孔分布曲線において細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上にインク吸収層を有する着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体であって、前記着色樹脂微粒子含有インクが色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクであり、かつ前記インクジェット記録媒体の細孔分布曲線において細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクを用いてインクジェット記録する際のインク吸収性、画像定着性に優れ、かつ光沢等の性能が優れた着色樹脂微粒子含有インク用インクジェット記録媒体、及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。
【0003】
従来の記録方法で、従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インク及び装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピュータ端末等、様々な分野に急速に普及している。
【0004】
このインクジェット記録方式で使用される記録媒体としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0005】
これらの要求を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。例えば特開昭52−53012号に記載される低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号に記載される支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号に記載される被覆層中の顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号に記載される無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号に記載される二つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号に記載される上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号及び同60−18383号等に記載される不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号及び同62−149475号等に記載される微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号及び同3−27976号等に記載される特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号(特許文献1)等に記載されるコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙、及び特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号及び同5−16517号等に記載されるアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等の多数が知られている。
【0006】
一方、インクジェット記録方法に適用するインクとしては、上述の記録媒体、画像記録方法に適合して用いられ、水性インク、顔料インク、色素含有低融点固形ワックスインク、油溶性染料インクなど様々なものが知られている。水溶性色素を含む水性インクは、ノズルの目詰まりを起こし難いという長所を有しているが、形成した画像が滲み易く耐水性が劣る。又、顔料を含むインクは、滲み難く耐水性は好ましいが、画質の鮮やかさが劣り、ノズルの目詰まりも起こし易い。
【0007】
色素を含有した低融点固形ワックスを含むワックスインクは、被記録部材に付着させた後、熱溶融させて画像を完成させるという煩雑さが伴う。油溶性染料を含むインクには、有機溶剤等の油性媒を用いる油性インクと水性媒を用いる水性インクとがあるが、前者の油性インクは環境面から用途に制限があるため、後者の水性インクで滲みの少ない耐水性に優れた水性インクの開発が待望されている。特に油溶性染料をポリマー(樹脂)微粒子中に含浸させた水性インクは、滲み難く耐水性が優れることに加えて、ノズル目詰まりを起こし難いことが期待される。
【0008】
このような水性インクとしては、例えば特開昭54−58504号に、ビニルモノマーを乳化重合したラテックスに有機溶媒に溶解した油溶性染料を加え、撹拌後、有機溶剤を蒸発させて油溶性染料を含浸させたポリマー微粒子を用いた水性インクが開示されている。又、特開昭55−139471号、同62−172076号、同62−184072号(特許文献2)等に、ビニルモノマーを低分子界面活性剤で乳化重合したラテックス(ポリマー微粒子)に、油溶性染料を加え、加熱撹拌したポリマー微粒子を用いた水性インクが開示されている。
【0009】
しかしながら、これら油溶性染料をポリマー微粒子に含浸させたインクは、滲み難く耐水性が優れることに加えノズル目詰まりを起こし難いものの、被記録媒体にインクを吐出させて画像記録した後、記録媒体を重ね合わせて保存すると、画像の一部が重ね合わせた相手に転写したり、記録媒体の表面に付着した着色ポリマー(樹脂)微粒子が十分な定着性を得られず、少しの摩擦により取れてしまうことがある。
【0010】
最近では、支持体上に、空隙を有する画像形成層を設けたインク記録材料に、油溶性染料を含有するポリマー微粒子を分散した水性インクを用いて画像記録する方法(特許文献3参照)や、多孔質インク受容層を基材上に有するインクジェット記録媒体に、マイクロカプセル化顔料を用いて画像形成する方法(特許文献4参照)等も開示されているが、これら技術でも上記要望を満足させるに到ってないのが実情である。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−276789号公報
【0012】
【特許文献2】
特開昭62−184072号公報
【0013】
【特許文献3】
特開2002−127586号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2002−307819号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みて為されたものであり、本発明の目的とするところは、色材含有樹脂微粒子を用いた高堅牢度の色再現性に優れた水系インクの利点を保持しながら、更にインク吸収性、画像定着性に優れ、かつ光沢等の性能に優れた着色樹脂微粒子含有インク用インクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成された。
【0017】
1)支持体上にインク吸収層を有する着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体であって、前記着色樹脂微粒子含有インクが色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクであり、かつ前記インクジェット記録媒体の細孔分布曲線において細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有するインクジェット記録媒体。
【0018】
2)色材を含有するポリマーが、ポリマーコア及びポリマーシェルで構成される1)記載のインクジェット記録媒体。
【0019】
3) 細孔直径30〜100nmの範囲に少なくとも一つのピークを有する1)又は2)記載のインクジェット記録媒体。
【0020】
4) インク吸収層表面のJIS Z 8741による75度鏡面光沢度が40〜80%である1)、2)又は3)項記載のインクジェット記録媒体。
【0021】
5) 1)、2)又は3)記載のインクジェット記録媒体に、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクをインクジェットヘッドより液滴として吐出させ、記録するインクジェット記録方法。
【0022】
6) 着色樹脂微粒子の体積平均粒子径が5〜500nmである5)記載のインクジェット記録方法。
【0023】
7) 体積平均粒子径の変動係数が80%以下である6)記載のインクジェット記録方法。
【0024】
8) ポリマーシェルの色材含有率が、ポリマーコアの色材含有率の0.8以下である5)記載のインクジェット記録方法。
【0025】
9) ポリマーシェルを構成するポリマーが着色樹脂微粒子で用いられている総ポリマー量の5〜95質量%である5)記載のインクジェット記録方法。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体(以下、本発明の記録媒体とも言う)は、支持体上にインク吸収層を有する。
【0027】
本発明の記録媒体に用いられる支持体は、吸水性支持体と非吸水性支持体の何れも用いることができるが、プリント後に皺の発生が無く、平滑性に差が生ぜずに高品位のプリントが得られること、又、容易に光沢面を形成できることから非吸水性支持体が好ましい。
【0028】
吸水性支持体としては、特に天然パルプを主体とした紙支持体が代表的であるが、合成パルプと天然パルプの混合物であってもよい。非吸水性支持体としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、又は紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは透明、又は半透明なものも使用できる。本発明で特に好ましい支持体は紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。以下、特に好ましい支持体である、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0029】
支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKP(Lは広葉樹、Nは針葉樹、BKは硫酸塩晒し、BSは亜硫酸塩晒し、Pはパルプの略)の何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70%が好ましい。
【0030】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0031】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%のものが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。紙は抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0032】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては上記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。紙のpHはJIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0033】
次に、紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン等が挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0034】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPE(直線状低密度ポリエチレン)やPP等も一部使用することができる。特に塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0035】
着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0036】
紙の表裏のPEの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜40μm、バック層側で10〜30μmの範囲である。表裏のPEの比率はインク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のPEの比率は厚みで概ね3/1〜1/3である。更に上記PEで被覆紙の支持体は以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0037】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgである。
【0038】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が10〜300g、横方向が20〜400gである。
【0039】
(3)圧縮弾性率は98MPa以上である。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定した時に50%以上、特に85〜98%である。
【0040】
(5)白さは、JIS Z 8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2である。
【0041】
(6)クラーク剛直度は、記録媒体の搬送方向のクラーク剛直度が20〜400cm3/100である。
【0042】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%である。
本発明の着色樹脂微粒子含有インクに適したインクジェット記録媒体は、上記支持体上にインク吸収層を有するものが好ましい。
【0043】
次に、インク吸収層について説明する。
本発明の記録媒体は少なくとも1層のインク吸収層を有するが、インク吸収層の物性又は構成材料等の異なる2層以上のインク吸収層を有してもよい。例えば、上層に高光沢発現機能及び/又は高インク発色性機能を持たせたインク吸収層、下層に高インク吸収性の機能を持たせたインク吸収層を設けた多層構成のインク吸収層を用いることもできる。
【0044】
又、インク吸収層は支持体の片面のみでもよいが、両面に設けてもよい。この時、両面に設けられるインク吸収層は同じでも異なってもよい。インク吸収層は膨潤層型インク吸収層と空隙型インク吸収層に大別される、何れの場合であってもよい。又、膨潤型のインク吸収層と空隙型のインク吸収層を組み合わせてもよい。例えば、支持体に近い側に膨潤型インク吸収層を設け、支持体から離れた側に空隙型インク吸収層を設けた層構成やこの逆の層構成を用いることもできる。更には支持体の両面にインク吸収層を設けた記録媒体の場合には、表裏で同じタイプの吸収層にしてもよく、異なるタイプのインク吸収層であってもよい。
【0045】
本発明で特に好ましいのは空隙型インク吸収層である。これは、単にインク吸収速度が速く、ムラの発生が少ないために高品位のプリントが得られるだけでなく、空隙型インク吸収層表面は非常に微細な凹凸が形成されるために、インク吸収層表面で、着色樹脂微粒子群との接着面積が増大して着色樹脂微粒子の擦過性が改善されるためである。着色樹脂微粒子はインク吸収層中に浸透させるのが困難であり、これを浸透させるために、より大サイズの細孔をインク吸収層に与えると、光沢が低下する問題がある。着色樹脂微粒子は、インク吸収層表面に存在するだけでは表面が擦られた時に取れ易いが、表面との接着性を高めることで或る程度改善することができる。
【0046】
このような観点から、着色樹脂微粒子の平均粒子径(r)がインク吸収層の表面の凹凸のサイズに比較的近い範囲であることが好ましい。インク吸収層が無機又は有機微粒子で形成される多孔質層である場合には、インク吸収層の微粒子の平均粒径(L)と着色樹脂微粒子の平均粒子径(r)の比、L/rは0.05〜10.0の範囲であることが、適度の光沢性を維持しながら着色樹脂微粒子インクの擦過性を改善する上で好ましい。
【0047】
膨潤型インク吸収層は、インク溶媒に対して膨潤性がある親水性ポリマーで主として構成される。そのような親水性ポリマーとしては、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチン等)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜4000、鹸化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。膨潤型インク吸収層には、親水性ポリマーの膨潤性に影響を与えない範囲で無機微粒子や有機微粒子等の微粒子を含有させてもよいが、親水性バインダーに対して概ね100%以下である。膨潤層に設けられる親水性ポリマーの使用量は、記録媒体1m2当たり概ね3〜20g、好ましくは5〜15gである。
【0048】
空隙型インク吸収層は、無機又は有機の微粒子と少量の親水性ポリマーから形成される空隙層を有する多孔質皮膜のものが好ましい。微粒子は無機微粒子が好ましい。このような無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、又、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0049】
特に微細な空隙が形成できることから、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ、気相法で合成された微粒子シリカ又は擬ベーマイトが好ましく、特に平均粒径が300nm以下の合成シリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトが好ましい。
【0050】
無機微粒子の平均粒径は、例えば粒子そのもの又は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。又、空隙層を形成する塗工液から動的光散乱法を利用して平均粒径を求めることも出来る。例えば大塚電子社製レーザ粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0051】
空隙層に用いられる親水性ポリマーとしては、膨潤型インク吸収層で用いられる親水性ポリマーと同様のものが用いられるが、好ましい親水性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)である。本発明で用いられるPVAには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAの他に、末端をカチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるPVAは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に1000〜5000のものが好ましい。鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。インク吸収層が空隙型である場合、親水性ポリマーと前記無機又は有機の微粒子の質量比率は、通常、1:10〜1:3であり、特に好ましくは1:8〜1:5である。
【0052】
前記空隙層が親水性ポリマーを含有する場合には、皮膜の造膜性を改善し、皮膜の耐水性や強度を高めるために、硬膜剤を添加することが好ましい。硬膜剤としては、一般的には前記親水性ポリマーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性ポリマーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物が好ましく、親水性ポリマーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0053】
硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、イソシアネート系硬膜剤(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等)硼酸、硼酸塩、硼砂、明礬等が挙げられる。
【0054】
親水性ポリマーとしてPVAを使用する場合には、硼酸、硼酸塩又はエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。上記硬膜剤の使用量は親水性ポリマーの種類、硬膜剤の種類、シリカ微粒子の種類、親水性ポリマーに対する比率等により変化するが、通常、親水性ポリマー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。又、複数の種類の硬膜剤を併用することもできる。
【0055】
記録媒体のインク吸収層には、上記以外の各種添加剤を添加することができる。中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。カチオン媒染剤としては、第1〜3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体や、その他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得られる。カチオン媒染剤の具体例は、例えば「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(シーエムシー社発行,1998年)に記載されている。
【0056】
上記以外に、例えば特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載の蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等、公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0057】
次に本発明の記録媒体の細孔分布曲線について説明する。
本発明の記録媒体の細孔分布曲線を測定した場合、支持体の有する空隙に起因するピーク及び支持体上に形成されたインク吸収層に起因するピークが出現するが、本発明の記録媒体の細孔分布曲線におけるピークは、どちらに起因するピークでもよい。ただし、インクジェット記録において、記録媒体の記録面のインク吸収に関わらない空隙、例えば非吸水性支持体の切断面の空隙等は除く。本発明で言う空隙とは、記録媒体中で記録面から上下及び左右方向といった2次元及び3次元方向に連結した細孔構造で形成され、これによってインク中の溶媒分が速やかに細孔中を通過できるものを指す。
【0058】
上記記録媒体の細孔分布曲線は水銀圧入法により求めることが出来る。
本発明の記録媒体は、かかる細孔分布曲線のピークが細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有するように構成されている。上記範囲にピークがあることにより、着色樹脂微粒子含有インクの吸収性が良好となり、光沢も高くすることができる。更にはインク吸収層表面で着色樹脂微粒子群との接着面積が増大して、着色樹脂微粒子の定着性(擦過性)が改善される。細孔分布曲線のピークが細孔直径10nmよりも小さい範囲にある場合には、着色樹脂微粒子含有インクの吸収速度が低下し、パス数の少ない高速印字においてはインクの吸収が追い付かず、インク溢れが発生したり、吸収の不均一性が生じたりして筋ムラ等が発生してしまう。又、インク吸収層表面で着色樹脂微粒子群との接着面積が減少して着色樹脂微粒子の定着性が悪くなる。一方、細孔分布曲線のピークが細孔直径200nmよりも大きい範囲にのみある場合は、緻密な微多孔性の膜が形成されないために、画像を形成した場合にドットの広がりやインクの滲みが発生してしまう。又、この場合には、塗工膜の透明性も低下するため、鮮明な画像が得られなくなる。更に光沢が低下する問題がある。
【0059】
記録媒体が十分なインク吸収性、光沢及び透明性、更に着色樹脂微粒子含有インクに対する定着性(擦過性)を有するようにするためには、記録媒体の細孔分布曲線において、特に細孔直径30〜100nmの範囲に一つ以上のピークがあるように構成することがより好ましい。更に、上記の細孔直径10〜200nmの範囲の細孔容積の合計が0.01〜0.3cm3/gであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2cm3/gである。
【0060】
記録媒体に上記のような細孔構造を形成させるためには、インク吸収層を構成する材料を適宜に調整することで可能となる。例えば、インク吸収層を構成する無機又は有機の微粒子の種類、親水性ポリマーの種類、支持体の種類、更には、無機又は有機の微粒子の分散度、構成材料の配合比率、成膜時における乾燥条件、膜厚等を適宜に調整することで可能となる。
【0061】
本発明の記録媒体におけるインク吸収層面側の光沢度としては、JIS Z 8741による75度鏡面光沢度測定で40〜80%が好ましい。この光沢度が小さいほど記録画像の鮮明度が低下し易くなる。尚、光沢度は、本発明では75度で測定した場合に上記範囲内が好ましいが、より低い角度、例えば60度や45度で測定した場合には、より低い値になるのが一般的である。
【0062】
記録媒体は、インク吸収層を形成する塗工液を前記支持体に塗布することにより作製できる。ここで、インク吸収層に好ましく用いられる前記無機微粒子は分散媒体中で十分に分散してから、塗工液として用いることが好ましい。
【0063】
無機微粒子の分散方法としては、予備分散工程と本分散工程を有することが好ましく、用いられる分散方法としては、高速攪拌分散機、超音波分散機、ローラミルタイプ、ニーダータイプ、ピンミキサータイプ、高圧式ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)等を挙げることができる。分散媒体として特に制限は無いが水性媒体が好ましく、該水性媒体としては、水以外に前記カチオン媒染剤、前記硬膜剤が含有されていることが好ましい。
【0064】
更には前記親水性ポリマー、各種添加剤を、予め分散媒体又は無機微粒子分散後の分散液に添加してもよく、例えばノニオン又はカチオン性の各種界面活性剤、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン又はカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、i−プロパノール、プロパノール、アセトン等)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することができる。このような構成材料から成る塗工液を、前記支持体に塗布することで本発明の記録媒体を作製することができる。
【0065】
インク吸収層を塗布するに当たっては、支持体表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理や下引層を設けることが好ましい。下引層としては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを必要に応じて硬化剤と併用して設けられる。好ましい下引層の厚さは0.01〜1μmの範囲である。
【0066】
本発明のインクジェット記録媒体が、片面にのみ記録する用途であるある場合、インク吸収層を有する側の反対側にカール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類のバック層を設けることができる。バック層の構成は支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが、一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。
【0067】
バック層の厚みは、通常、0.1〜10μmの範囲である。又、バック層には他の記録媒体との「くっつき」防止、筆記性改良、更にはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化できる。この目的で好ましく用いられるのは、粒径が0.5〜20μmの有機又は無機の微粒子である。これらのバック層は予め設けていてもよく、反対側のインク吸収層を塗布した後で設けてもよい。
【0068】
インク吸収層の塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。支持体としてポリオレフィン樹脂コート紙を使用する場合には、乾燥は概ね0〜80℃の範囲で乾燥することが好ましい。80℃を超えると、ポリオレフィン樹脂が軟化して搬送を困難にしたり記録層表面の光沢にムラが出たりする。好ましい乾燥温度は0〜60℃である。
【0069】
乾燥後に、前記界面活性剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、硬膜剤、カチオン媒染剤、消泡剤、蛍光増白剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤等、公知の各種添加剤を含有する溶液をオーバーコートしてもよい。オーバーコートにより表面ゼータ電位を制御することも可能となる。
【0070】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられるが、中でも陰イオン界面活性剤もしくは陽イオン界面活性剤を、それぞれ単独で用いるか、又はこれらを併用することが好ましい。
【0071】
オーバーコート塗工液には、無機粒子及び/又は有機粒子も添加できる。無機粒子としては、軽質又は重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。又、有機粒子としては、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
【0072】
インク吸収層上にオーバーコート層を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知のバーコーター、エァナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等の塗工機や印刷機によって設けることができる。又、オーバーコート層の塗工量は、目的性能を満足させる限り不必要に多くする必要はなく、0.2〜5g/m2の範囲が好ましく用いられる。
【0073】
次に色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクについて詳細に説明する。
【0074】
本発明で言う着色樹脂微粒子は、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子、又は色材を含有するポリマーコア及びポリマーシェルから成る着色樹脂微粒子であることを特徴とする。特に、色材を含有するポリマーコアとコアよりも色材含有率の少ないポリマーシェルを有することが好ましい。
【0075】
ポリマーコアは主として色材を包含し、その堅牢性や色調を保持するのに寄与する。一方、ポリマーシェルは、色材を包含した微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増すことに寄与し、更に記録媒体(メディア)上での色材の定着を促進し、凝集を防止し、画質の向上に寄与する。又、色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0076】
本発明においては、シェルにおける色材含有率(濃度)が、コア/シェル化を行ってないコアにおける色材含有率の0.8以下が好ましい。更に好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.2以下である。
【0077】
色材含有率はTOF−SIMSのような質量分析装置で測定することができる。TOF−SIMSでは、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に起因するイオンの総量から、色材含有率を求めることができる。シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較する。TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため、本発明のようなコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0078】
本発明において、色材含有ポリマー(樹脂)微粒子含有水系インクに用いられる色材含有樹脂微粒子は、体積平均粒子径が5nm以下であると単位体積当たりの表面積が非常に大きくなるため、色材をポリマー中に封入する効果が小さくなる。一方、500nmを超えるほど大きな粒子では、ヘッドに詰まり易く、又、インク中での沈降が起き易く停滞安定性に問題が出る場合がある。粒子径は5〜400nmが好ましく、10〜300nmが更に好ましい。
【0079】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求めた。更に体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求めることが出来る。又、動的光散乱法を利用して体積平均粒子径、変動係数を求めた。例えば大塚電子社製レーザ粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0080】
粒子径の変動係数は、この値が大きいほど粒子径の分布が広いことを意味する。体積平均粒子径の変動係数が80%以上であると、粒子間の表面物性に「ばらつき」が生じ易くなる。表面物性の「ばらつき」は粒子の凝集を招き易く、インクジェットヘッドの詰まりを起こし易い。又、粒子の凝集は記録媒体上で色材の光散乱を招き易く、画質の低下も招き易くする。変動係数は50%以下が好ましく、30%以下が更に好ましい。
【0081】
本発明においては、シェルに用いられるポリマー量が総ポリマー量の5〜95質量%が好ましい。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。又、シェルのポリマーが多すぎると、コアの色材保護能低下を起こし易い。更に好ましくは10〜90質量%である。
【0082】
色材の総量は総ポリマー量に対して20〜1000質量%であることが好ましい。色材量がポリマーに比して少なすぎると吐出後の画像濃度が上がらず、又、色材質量が多すぎるとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0083】
本発明におけるコア/シェルは、最初に色材を含有するポリマーコアを作製した後、ポリマーシェルを設ける方法と、コアシェルを同時に設ける、以下の2手法が考えられる。
【0084】
<微粒子コア作製後にシェルを設ける手法>
コアとなる色材含有ポリマーは、各種の手法で調製することができる。例えばモノマー中に油溶性染料を溶解させ、水中で乳化後、重合によりポリマー中に染料を封入する方法、ポリマーと色材を有機溶剤中に溶解し、水中で乳化後有機溶剤を除去する方法、染料溶液に多孔質のポリマー微粒子を添加し、染料を微粒子に吸着、含浸させる手法などがある。それにポリマーシェルを設ける手法としては、コアとなるポリマーの水系サスペンションに水溶性のポリマー分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法、あるいは、有機溶剤に溶解したポリマーを徐々に滴下し、析出と同時にコア表面に吸着させる方法などがある。
【0085】
あるいは、顔料をポリマーと混練し、その後水系で分散しポリマー被覆顔料コアを作製し、更に上記の方法によりシェル化を行うことも可能である。
【0086】
〈微粒子形成時にコアとシェルを同時に設ける手法〉
コアとなるポリマーと色材を重合後にシェルとなるモノマーに溶解又は分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合して行く手法などがある。モノマーがコア、ポリマーがシェルとなってもよい。あるいは、重合後にコアとなり得るモノマーとシェルとなり得るモノマー混合液に色材を溶解又は分散し、懸濁重合あるいは乳化重合する手法がある。
【0087】
〈コアシェル化の評価〉
実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明においては、個々の粒子径が500nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析手法としては、TEMやTOF−SIMS等が適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物であるポリマーの種類のみではコントラスト差が小さいため、コアシェル化されているか否かを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロルスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色する必要がある。コアだけの微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。更に、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。
【0088】
TOF−SIMSのような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0089】
即ち、色材含有率は、TOF−SIMSによって、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に含有されるコアシェルのポリマーに含有されていない元素に由来するイオンの総量との比から求めることができる。この方法により、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較することにより、それぞれの色素含有率を測定できる。TOF−SIMSでは表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため、本発明の様なコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0090】
そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量がシェルを設けていないものと比較することができる。
【0091】
又、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄い切片を作製、染色を行うことでコアシェル化はより明瞭に観察できる。上記のように、ポリマーや、色材にプローブとなり得る元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0092】
前述のように、本発明においては、シェルにおける色材含有率が、コア/シェル化を行っていないコアにおける色材含有率の0.8以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.2以下である(勿論、0あるいは限りなく0に近い値であってもよい)。これにより、ポリマーコアが、色材の主たる部分を包含することで、その堅牢性や色調を保持するのに寄与し、一方、ポリマーシェルは色材を包含したこれら微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増すことに寄与すると共に、メディア上での色材の定着促進、凝集の防止、画質の向上や色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0093】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と適当な乳化法の選定が重要である。処方は、用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。又、シェルを構成するポリマーに含有される色材は、上記のようにコアを構成するポリマー中より少ないことが好ましく、色材もシェルを構成するポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法が、POLYMER HANDBOOK第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)675頁からの記載が参考になる。
【0094】
色材含有樹脂微粒子に用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100000、特に1000〜30000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0095】
該ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各種のものを用いることが可能だが、用いるポリマーの内、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
【0096】
本発明においては、一般に知られている全てのポリマーを使用可能であるが、特に好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー及びエステル基を有するポリマーである。上記のポリマーは置換基を有してもよく、その置換基は、直鎖状、分岐、又は環状構造を採ってもよい。又、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。又、これらの共重合体は、例えば一つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0097】
主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとしては、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。例えば、電気化学工業社製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP、あるいは積水化学工業社製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5等がある。
【0098】
樹脂は、PVAの誘導体として得られるが、元のPVAの水酸基のアセタール化度は最大でも80モル%程度であり、通常は50〜80モル%程度である。尚、ポリビニルブチラールの場合には、アセタール基として1,1′−ブチレンジオキシ基が形成されるが、ここでアセタール化度と言う場合は、この様な狭義のアセタールを指すのではなく、より一般的なアセタール基を意味し、水酸基を有する化合物(この場合PVA)とアルデヒド基を有する化合物(この場合ブタナール)とから形成されるアセタール基を有する化合物を指す。水酸基については、特に規定はないが、10〜40モル%含有されていることが好ましい。又、アセチル基の含有率に特に規定はないが、10モル%以下であることが好ましい。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち、少なくとも30モル%以上がアセタール基を形成していることを言う。
【0099】
他に主な官能基としてアセタールを基含有するポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピタールシリーズ等も使用可能である。
【0100】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。例えば三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズがある。ユーピロンシリーズはビスフェノールAを原料として作られており、測定法によってその値は異なるが、各種の分子量のものを用いることができる。ノバレックスシリーズでは、分子量が20000〜30000、Tg150℃付近のものを用いることができるが、これらに限定されない。
【0101】
主な官能基として炭酸エステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上が炭酸エステル基の形成に寄与していることを言う。
【0102】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、例えばPVAが挙げられる。PVAの有機溶剤への溶解度は小さいものが多いが、鹸化価の小さいPVAであれば有機溶剤への溶解度は上昇する。水溶性が高いPVAは、水相中に添加しておき、有機溶剤除去後にポリマーのサスペンションに吸着させるようにして使用することもできる。
【0103】
PVAとしては市販のものを用いることができ、例えばクラレ社のポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505等の他、特殊銘柄のサイズ剤用PVA、熱溶融成形用PVA、その他機能性ポリマーとして、KL−506、C−118、R−1130、M−205、MP−203、HL−12E、SK−5102等を用いることができる。
【0104】
鹸化度は50モル%以上のものが一般的であるが、LM−10HDのように40モル%程度であっても、これを用いることも可能である。このようなPVA以外でも主な官能基として水酸基を有するものが使用可能であるが、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも20モル%以上が水酸基を形成しているものが使用可能である。
【0105】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、例えばメタクリル樹脂が挙げられる。旭化成社製デルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500等を用いることができる。主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上がエステル基を形成していることを言う。
【0106】
これらのポリマーを、それぞれ1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。又、これらのポリマーが質量比で50%以上含まれていれば、他のポリマーや無機物のフィラーが含有されていてもよい。
【0107】
これらのポリマーの共重合体を用いることも好ましいが、例えば水酸基を含有するポリマーと、各種のポリマーを共重合させる手法として、水酸基をグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーと反応させ、その後、懸濁重合でメタクリル酸エステルモノマーと共重合させ、得ることができる。
【0108】
次に、上記ポリマーによって封入される色材について説明する。上記ポリマーによって封入され得る色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等が挙げられるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。上記分散染料として特に好ましい具体例を以下に示すが、これ等のみに限定されるものではない。
【0109】
C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレッド33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等。
【0110】
一方、上記油性染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例として、例えばC.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット3;C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0111】
色材として、又、以下に挙げるような水溶性染料も使用可能である。
用いることのできる水溶性染料としては、例えばアゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0112】
〔C.I.アシッドイエロー〕
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246。
【0113】
〔C.I.アシッドオレンジ〕
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168。
【0114】
〔C.I.アシッドレッド〕
1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415。
【0115】
〔C.I.アシッドバイオレット〕
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126。
【0116】
〔C.I.アシッドブルー〕
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350。
【0117】
〔C.I.アシッドグリーン〕
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109。
【0118】
〔C.I.アシッドブラウン〕
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413。
【0119】
〔C.I.アシッドブラック〕
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222。
【0120】
〔C.I.ダイレクトイエロー〕
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153。
【0121】
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118。
【0122】
〔C.I.ダイレクトレッド〕
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254。
【0123】
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕
9、35、51、66、94、95。
【0124】
〔C.I.ダイレクトブルー〕
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291。
【0125】
〔C.I.ダイレクトグリーン〕
26、28、59、80、85。
【0126】
〔C.I.ダイレクトブラウン〕
44、106、115、195、209、210、222、223。
【0127】
〔C.I.ダイレクトブラック〕。
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169。
【0128】
〔C.I.ベイシックイエロー〕
1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91。
【0129】
〔C.I.ベイシックオレンジ〕
2、21、22。
【0130】
〔C.I.ベイシックレッド〕
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109。
【0131】
〔C.I.ベイシックバイオレット〕
1、3、7、10、11、15、16、21、27、39。
【0132】
〔C.I.ベイシックブルー〕
1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151。
【0133】
〔C.I.ベイシックグリーン〕
1、4。
【0134】
〔C.I.ベイシックブラウン〕
1。
【0135】
〔C.I.リアクティブイエロー〕
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176。
【0136】
〔C.I.リアクティブオレンジ〕
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107。
【0137】
〔C.I.リアクティブレッド〕
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235。
【0138】
〔C.I.リアクティブバイオレット〕
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38。
【0139】
〔C.I.リアクティブブルー〕
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236。
【0140】
〔C.I.リアクティブグリーン〕
8、12、15、19、21。
【0141】
〔C.I.リアクティブブラウン〕
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46。
【0142】
〔C.I.リアクティブブラック〕
5、8、13、14、31、34、39。
【0143】
これら上記した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載されている。これら水溶性染料の中でもフタロシアニン染料が好ましい。
【0144】
フタロシアニン染料としては、無置換あるいは中心元素を有するものが挙げられ、中心元素としては金属、非金属のものが挙げられ、好ましくは銅であり、より好ましくはC.I.ダイレクトブルー199が挙げられる。
【0145】
又、水や各種有機溶剤に不溶な顔料を用いることも可能である。
使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0146】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等。
【0147】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等。
【0148】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等。
【0149】
色材として、特開平9−277693号、同10−20559号、同10−30061号に示されるような金属錯体色素も使用可能である。例えば、特開平10−20559号に記載の一般式(1)、一般式(2)で表される色素が使用できる。
【0150】
【化1】
【0151】
一般式(1)において、X1は、金属イオンと少なくとも2座の配位結合を形成可能な原子群を表し、Y1は芳香族炭化水素環、5〜6員の複素環又は−L4=Y2を表し、Y2は含窒素の5〜6員の複素環を表す。L1、L4は置換もしくは非置換のメチン基又は窒素原子を表し、L2、L3は置換又は非置換のメチン基を表す。Mは金属イオンを表し、X1で形成される原子群と少なくとも2座の配位結合を形成する。mは0、1、2又は3の整数を表し、n1は1、2又は3の整数を表す。
【0152】
又、一般式(2)において、X3、Y3、M及びn2は、それぞれ上記一般式(1)のX1、Y1、M及びn1と同義である。
【0153】
一般式(1)、一般式(2)で表される色素の具体例は、前記特開平10−20559号の段落「0043」〜「0056」にD−1〜D−70として記載がある。
【0154】
本発明で言う着色樹脂微粒子が分散されたインク中には、ポリマーが0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましい。ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えると、サスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘や、サスペンションの凝集が起こることによってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合がある。
【0155】
一方、上記色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、30質量%を超えるとサスペンションの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向がある。
【0156】
本発明で言う水系インクは、水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンションから成り、該サスペンションには従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されてもよい。
【0157】
上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルスルホキシドの1種又は2種以上を使用することができる。これら湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することである。
【0158】
分散剤としては特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果を発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。分散剤として市販品も使用することができ、そのような市販品として、例えば花王社製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、Pが挙げられる。
【0159】
分散剤の配合量に特に制限はないが、着色樹脂微粒子が分散された水系インク中に0.01〜10質量%配合されることが好ましい。配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化するおそれがある。
【0160】
又、消泡剤としても、特に制限なく市販品を使用することができる。そのような市販品として、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F等が挙げられる。
【0161】
これら化合物(添加剤)の配合量に特に制限はないが、着色樹脂微粒子が分散された水系インク中に0.001〜2質量%配合されることが好ましい。配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、一方、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際にインク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合がある。
【0162】
次に、着色樹脂微粒子が分散されたインクの製造方法について説明する。
本発明に係るインクは各種の乳化法で製造することができ、乳化法として各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー・エム・シー社刊」の86頁の記載に纏められている。特に超音波、高速回転剪断、高圧による乳化分散装置の使用が好ましい。
【0163】
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の二通りが使用可能である。バッチ式は比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、例えばUH−600SR(エスエムテー社製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は、実際上は10,000秒以下である。10,000秒を超える時間が必要だと工程の負荷が大きく、実際には乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10,000秒超える時間は必要でない。より好ましくは10〜2,000秒である。
【0164】
高速回転剪断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開」(前出)の255〜256頁に記載されるような、ディスパーミキサーや、251頁に記載されるようなホモミキサー、256頁に記載されるようなウルトラミキサー等が使用できる。これらの型式は乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。高速回転剪断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは、通常、0.5mm程度で極端に狭くはできないので、剪断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5〜150m/secであれば、本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/secにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。更に好ましくは20〜100m/secである。
【0165】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)等が使用できるが、その乳化・分散能力は、試料に掛けられる圧力に依存する。圧力は1×104〜5×105kPaの範囲が好ましい。又、必要に応じて数回、乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化・分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、又、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷が掛かり実用的ではない。より好ましくは5×104〜2×105kPaの範囲である。
【0166】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。
【0167】
又、上記の装置を用いる他、いわゆる転相乳化によっても製造できる。転相乳化とは、前記ポリマーを前記染料と共にエステル、ケトン等の有機溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えて該ポリマー中のカルボキシル基をイオン化し、次いで水相を加えた後、前記有機溶剤を溜去して水系に転相することから成る。転相が完了した後、系を減圧下に加熱することにより、前記エステル、ケトン系溶剤を除去すると共に、所定量の水を除去して所望の濃度を有する着色樹脂微粒子が分散された水系インクが得られる。
【0168】
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
前記インクジェット記録媒体に、前記着色樹脂微粒子が分散された水系インクを使用してインクジェット記録する方法は、特に限定されるものではなく、ピエゾ方式やサーマル方式のインクジェットプリンターを使用することにより印字又は画像を得ることができる。記録方法の詳細は、例えば「インクジェット技術の動向」,中村孝一編,日本科学情報社(1995.3.31刊行)に記載されている。
【0169】
本発明の記録方法で用いることのできるインクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又、インク吐出方式としては、電気−機械変換方式(シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)、静電吸引方式(電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(スパークジェット型等)などを具体例として挙げることができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。
【0170】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0171】
実施例1
以下の手順でインクジェット記録媒体を作製した。
【0172】
〈支持体の作製〉
含水率6.5%、坪量170g/m2の写真用原紙の裏面に、溶融押出し塗布法により密度0.92の低密度ポリエチレンを30μmの厚さで塗布した。次いで表側に、アナターゼ型酸化チタン5.5%を含有する密度0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで溶融押出し法で塗布して、両面をポリエチレンで被覆した支持体を作製した。
【0173】
表側にコロナ放電を行い、ゼラチン下引層を厚さ0.3g/m2になるよう塗布し、裏面にもコロナ放電を行った後、ラテックス層を厚さ0.2g/m2になるよう塗布した。
【0174】
〔各分散液の調製〕
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業社製:W−10)を、pH=7.5のトリポリ燐酸ナトリウム150g、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)500g、カチオンポリマー(P−1)150g及びサンノブコ社製消泡剤(SN381)10gを含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液1を得た。
【0175】
【化2】
【0176】
〈蛍光増白剤分散液1の調製〉
チバガイギー社製の油溶性蛍光増白剤(UVITEX−OB)400gをジ−i−デシルフタレート9000g及び酢酸エチル12Lに加熱溶解し、これを酸処理ゼラチン3500g、カチオンポリマー(P−1)800g、サポニン50%水溶液6Lとを含有する水溶液65Lに添加混合し、三和工業社製の高圧ホモジナイザーで乳化分散し、減圧で酢酸エチルを除去した後、全量を100Lに仕上げた。
【0177】
〈シリカ分散液1の調製〉
水系媒体(以後、A液と称す)として、
水 80L
硼酸 0.27kg
硼砂 0.23kg
5%硝酸 0.4L
エタノール 1.8L
カチオン性ポリマー(P−1)(25%水溶液) 5L
を混合・溶解した。シリカとして沈降法シリカ(トクヤマ社製:T−32、平均2次粒径1.5μm、以後T−32と称す)32kgを用意し、以下のように分散しシリカ分散液1を得た。
【0178】
A液を1.56kg/min、T−32を0.44kg/minの割合で分散機1としてフロージェットミキサー300型(ピンミキサータイプ、粉研パウテックス製、以後FJMと称す)に供給した。その後、分散機2としてファインフローミルFM−25(連続式高速撹拌型分散機、大平洋機工社製、以下FMと称す)に供給した。その後、分散機3としてLMK−4(連続式湿式メディア型粉砕機、アシザワ社製、以後LMKと称す)を用い、分散機2から出て来た分散液を、モノーポンプを用いてLMKに2.0kg/minで供給した。FJMの条件は周速25m/sec、滞留時間20sec、FMの条件は周速25m/sec、滞留時間0.15sec、LMKの条件はビーズ径0.5mmジルコニア、滞留時間5min、ロータ回転周速11m/secであった。その後、LMKから出て来た分散液をフィルター処理した。フィルターは日本ポール社製のプロファイルを用いた。この時のシリカの平均粒径は210nmであった。この平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSで測定した値である。
【0179】
〈シリカ分散液2の調製〉
LMKに2回通した以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は170nmであった。
【0180】
〈シリカ分散液3の調製〉
LMKのロータ回転周速を7m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は290nmであった。
【0181】
〈シリカ分散液4の調製〉
フィルター処理を行わなかった以外は、シリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は230nmであった。
【0182】
〈シリカ分散液5の調製〉
LMKのロータ回転周速を14m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は190nmであった。
【0183】
〈シリカ分散液6の調製〉
LMKを高圧ホモジナイザーに変え、圧力34.3MPaで1回分散し、かつフィルター処理を行わなかった以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は390nmであった。
【0184】
〈シリカ分散液7の調製〉
シリカをゲル法シリカ(日本シリカ社製:AZ−204、平均2次粒径1.3μm)に変えた以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は230nmであった。
【0185】
〈シリカ分散液8の調製〉
シリカを気相法シリカ(日本アエロジル社製:A−300)に変え、LMKのロータ回転周速を8m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は190nmであった。
【0186】
〈シリカ分散液9の調製〉
シリカを気相法シリカ(A−300:前出)に変え、LMKのロータ回転周速を12m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は150nmであった。
【0187】
〈シリカ分散液10の調製〉
シリカ分散液1と同様の処方だが、シリカ分散液の調製で粉砕分散を行わず、ホモミキサーによる分散のみ行った。平均粒径は1.5μmであった。
【0188】
〔塗布液の調製〕
インクジェット記録媒体用の第1層、第2層、第3層塗布液を、以下の手順で調製した。
(第1層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ濃度が10%になるように調整した調整分散液560mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0189】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
(第2層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ濃度が10%になるように調整した調整分散液630mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0190】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
(第3層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ質量濃度が10%になるように調整した調整分散液640mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0191】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0192】
〔塗布〕
上記のようにして得られた各塗布液を、ポリエチレンで両面を被覆した前記支持体の表側に、第1層(40μm)、第2層(110μm)、第3層(30μm)の順になるよう各層を同時塗布した(括弧内は、それぞれの湿潤膜厚を示す)。即ち、それぞれの塗布液を40℃で3層式カーテンコーターで同時塗布を行い、塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間、順次乾燥した(恒率乾燥域における皮膜温度は8〜25℃であり、減率乾燥域で皮膜温度は徐々に上昇した)後、23℃・RH(相対湿度)40〜60%で調湿した。
【0193】
次に、酢酸エチルに溶解したイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製:コロネート3041と、住友バイエルウレタン社製:スミジュールN3300の2:8(質量比)の混合物)を2.0g/m2になるようにオーバーコートし、インクジェット記録媒体1(以下、記録媒体1と称す)を得た。
【0194】
〈記録媒体2〜10の作製〉
上記記録媒体1の作製において、シリカ分散液1をシリカ分散液2〜10に変更した以外は同様にして、表1に示す内容の記録媒体2〜10を作製した。
【0195】
表1には、得られた各記録媒体について、シリカ種類、分散結果、細孔分布曲線のピーク位置及び75°鏡面光沢度を示す。平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSで測定した値である。細孔分布曲線は、Quanta Chrome社製Pore Master60−GTを用いて水銀圧入法により求めた。尚、測定範囲は細孔直径0.0034〜400μmである。光沢度は、日本電色工業社製VGS−1001DP型光沢度計を用い、入射角75°、受光角75°でJIS Z 8741による光沢度を測定した値である。
【0196】
【表1】
【0197】
実施例2
以下の手順で着色樹脂微粒子含有インクジェットインクを作製した。
【0198】
〈着色樹脂微粒子分散液1の調製〉
ポリマーとして、ポリビニルブチラール(積水化学社製:BL−S、平均重合度350)15g、ジョンクリル67(ジョンソンポリマー社製)5g、色材として、シアン染料(C.I.Solvent Blue 70)10g、及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素で置換後、攪拌して上記各ポリマー及び染料を完全に溶解させた。次いで、ジョンクリル67を中和するのに必要な水酸化ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下し撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:エスエムテー社製)を用いて70℃で5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸する着色樹脂微粒子分散液1を得た。この着色樹脂微粒子分散液1のシェルポリマーはジョンクリル67で、総ポリマーに対する比率は25%である。
【0199】
〈着色樹脂微粒子分散液2の調製〉
ポリマーとしてポリビニルブチラール(前出:BL−S、平均重合度350)15g、色材としてシアン染料(C.I.Solvent Blue 70)10g、及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素で置換した後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全に溶解させた。次いで、PVA樹脂(MP−203:クラレ社製)3g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下し撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:前出)を用いて70℃で5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸する着色樹脂微粒子分散液2を得た。この着色樹脂微粒子分散液2のシェルポリマーはMP−203で、総ポリマーに対する比率は16.7%である。
【0200】
〈着色樹脂微粒子分散液3の調製〉
ジョンクリル67(前出ポリマー)及び水酸化ナトリウムを添加しなかった以外は着色樹脂微粒子分散液1と同様にして、着色樹脂微粒子分散液3を得た。
【0201】
〈水系インクの調製〉
上記調製した着色樹脂微粒子分散液1〜3を用いて、下記の方法に従って水系インク1〜3を調製した。
【0202】
着色樹脂微粒子分散液 69.9%
エチレングリコール 15%
グリセリン 15%
サーフィノール465(日信化学工業社) 0.1%
上記各添加剤を混合した後、0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過してゴミ及び粗大粒子を除去し、インクジェット用の水系インク1〜3を得た。
【0203】
〈インクの各特性値の測定〉
このように調製した着色樹脂微粒子を含有する水系インクについて、下記の体積平均粒径、その変動係数、コアシェル化の確認及びシェル/コアの色材濃度比を算出した。結果を表2に示す。
【0204】
《体積平均粒径》
大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した。
【0205】
《体積平均粒径の変動係数》
TEM写真の投影面積の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して体積平均粒径と、その標準偏差を求め、体積平均粒径で割ることで変動係数を求めた。
【0206】
《コアシェル化》
コアシェル化は、サスペンションの超薄切片をカーボン支持膜付きメッシュに固定後、RuO4で染色し、それぞれ比較例と比べて染色度合から確認した。
【0207】
《色材濃度比》
Si−ウェーファ上に調製した着色樹脂微粒子を塗布・乾燥し、Physical Electrinics社製のTRIFT−IIを用い、以下の条件で色材としての色素の質量数+1のエリア強度を、0.5〜1000a.m.u.の全検出イオン強度で割り、この値をコアのみの粒子とコア/シェル粒子を、それぞれ比較することで、コアとシェルの色材含有率(濃度)比を算出した。
【0208】
1次イオン:Ga+
加速電圧:15kV
測定質量範囲:0.5〜1000a.m.u.
測定エリア:60μm×60μm
検出イオン:正二次イオン検出
積算時間:5分間
測定温度:液体窒素で冷却
ステージ電圧:3000V
【0209】
【表2】
【0210】
実施例3
〈インクジェット画像の記録〉
実施例2で調製した各水系インクをインクジェットカートリッジに収納し、カラーインクジェットプリンタPM800C(セイコーエプソン社製)により、実施例1の記録媒体1〜10に、表3に示す組合せで画像を記録した。出力画像としては、出力濃度を0〜100%の間を16段階に分割したウェッジ画像(各濃度について3cm×3cmのパッチ状に出力)を記録した。
【0211】
〈記録画像の評価〉
以上のようにして記録した各画像について、以下の項目の特性評価を行った。結果を表3に示す。
【0212】
《定着性:耐擦過性》
上記出力した各画像の出力濃度100%のパッチ部について、画像が表面になるように平面性が保たれた定盤に貼り付け、消毒用ガーゼを付けた板(3cm角)に19.6Nの荷重を掛けた器具を画像表面に押し当て、画像表面を100往復して擦った。次いで、擦る前と擦った後での画像の光学反射濃度を3点で測定し平均値を求めた。擦る前の光学反射濃度をA、擦った後の光学反射濃度をBとした時、下式に従って画像残存率(%)を求め、これを耐擦過性の尺度とした。
【0213】
画像残存率(%)=B/A×100
《インク吸収性》
上記出力した各画像の出力濃度100%のパッチ部について、記録直後(約10秒後)にコピー紙を接触させ、インクの記録媒体への吸収性及び紙への転写状況を目視で観察し、下記基準に則りインク吸収性を4段階評価した。
【0214】
A:インクの吸収が速く、インクがコピー紙に転写されなかった
B:インクの吸収は速いが、インクが僅かにコピー紙に転写された
C:インクの吸収がやや遅く、インクがコピー紙に転写された
D:インクの吸収が遅く、インク溢れが認められる
【0215】
【表3】
【0216】
表1及び表3より明らかなように、本発明のインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法により形成された画像は、比較例に比べて光沢性に優れ、かつ色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクに対して、インク定着性及びインク吸収性に優れていることが判る。
【0217】
【発明の効果】
本発明により、着色樹脂微粒子を含有する高堅牢度で、色再現性に優れた水系インクの利点を維持しながら、更にインク吸収性、インクの定着性(耐擦過性)に優れ、かつ光沢性等の性能にも優れた着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクを用いてインクジェット記録する際のインク吸収性、画像定着性に優れ、かつ光沢等の性能が優れた着色樹脂微粒子含有インク用インクジェット記録媒体、及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。
【0003】
従来の記録方法で、従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インク及び装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピュータ端末等、様々な分野に急速に普及している。
【0004】
このインクジェット記録方式で使用される記録媒体としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0005】
これらの要求を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。例えば特開昭52−53012号に記載される低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号に記載される支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号に記載される被覆層中の顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号に記載される無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号に記載される二つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号に記載される上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号及び同60−18383号等に記載される不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号及び同62−149475号等に記載される微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号及び同3−27976号等に記載される特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号(特許文献1)等に記載されるコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙、及び特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号及び同5−16517号等に記載されるアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等の多数が知られている。
【0006】
一方、インクジェット記録方法に適用するインクとしては、上述の記録媒体、画像記録方法に適合して用いられ、水性インク、顔料インク、色素含有低融点固形ワックスインク、油溶性染料インクなど様々なものが知られている。水溶性色素を含む水性インクは、ノズルの目詰まりを起こし難いという長所を有しているが、形成した画像が滲み易く耐水性が劣る。又、顔料を含むインクは、滲み難く耐水性は好ましいが、画質の鮮やかさが劣り、ノズルの目詰まりも起こし易い。
【0007】
色素を含有した低融点固形ワックスを含むワックスインクは、被記録部材に付着させた後、熱溶融させて画像を完成させるという煩雑さが伴う。油溶性染料を含むインクには、有機溶剤等の油性媒を用いる油性インクと水性媒を用いる水性インクとがあるが、前者の油性インクは環境面から用途に制限があるため、後者の水性インクで滲みの少ない耐水性に優れた水性インクの開発が待望されている。特に油溶性染料をポリマー(樹脂)微粒子中に含浸させた水性インクは、滲み難く耐水性が優れることに加えて、ノズル目詰まりを起こし難いことが期待される。
【0008】
このような水性インクとしては、例えば特開昭54−58504号に、ビニルモノマーを乳化重合したラテックスに有機溶媒に溶解した油溶性染料を加え、撹拌後、有機溶剤を蒸発させて油溶性染料を含浸させたポリマー微粒子を用いた水性インクが開示されている。又、特開昭55−139471号、同62−172076号、同62−184072号(特許文献2)等に、ビニルモノマーを低分子界面活性剤で乳化重合したラテックス(ポリマー微粒子)に、油溶性染料を加え、加熱撹拌したポリマー微粒子を用いた水性インクが開示されている。
【0009】
しかしながら、これら油溶性染料をポリマー微粒子に含浸させたインクは、滲み難く耐水性が優れることに加えノズル目詰まりを起こし難いものの、被記録媒体にインクを吐出させて画像記録した後、記録媒体を重ね合わせて保存すると、画像の一部が重ね合わせた相手に転写したり、記録媒体の表面に付着した着色ポリマー(樹脂)微粒子が十分な定着性を得られず、少しの摩擦により取れてしまうことがある。
【0010】
最近では、支持体上に、空隙を有する画像形成層を設けたインク記録材料に、油溶性染料を含有するポリマー微粒子を分散した水性インクを用いて画像記録する方法(特許文献3参照)や、多孔質インク受容層を基材上に有するインクジェット記録媒体に、マイクロカプセル化顔料を用いて画像形成する方法(特許文献4参照)等も開示されているが、これら技術でも上記要望を満足させるに到ってないのが実情である。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−276789号公報
【0012】
【特許文献2】
特開昭62−184072号公報
【0013】
【特許文献3】
特開2002−127586号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2002−307819号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みて為されたものであり、本発明の目的とするところは、色材含有樹脂微粒子を用いた高堅牢度の色再現性に優れた水系インクの利点を保持しながら、更にインク吸収性、画像定着性に優れ、かつ光沢等の性能に優れた着色樹脂微粒子含有インク用インクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成された。
【0017】
1)支持体上にインク吸収層を有する着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体であって、前記着色樹脂微粒子含有インクが色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクであり、かつ前記インクジェット記録媒体の細孔分布曲線において細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有するインクジェット記録媒体。
【0018】
2)色材を含有するポリマーが、ポリマーコア及びポリマーシェルで構成される1)記載のインクジェット記録媒体。
【0019】
3) 細孔直径30〜100nmの範囲に少なくとも一つのピークを有する1)又は2)記載のインクジェット記録媒体。
【0020】
4) インク吸収層表面のJIS Z 8741による75度鏡面光沢度が40〜80%である1)、2)又は3)項記載のインクジェット記録媒体。
【0021】
5) 1)、2)又は3)記載のインクジェット記録媒体に、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクをインクジェットヘッドより液滴として吐出させ、記録するインクジェット記録方法。
【0022】
6) 着色樹脂微粒子の体積平均粒子径が5〜500nmである5)記載のインクジェット記録方法。
【0023】
7) 体積平均粒子径の変動係数が80%以下である6)記載のインクジェット記録方法。
【0024】
8) ポリマーシェルの色材含有率が、ポリマーコアの色材含有率の0.8以下である5)記載のインクジェット記録方法。
【0025】
9) ポリマーシェルを構成するポリマーが着色樹脂微粒子で用いられている総ポリマー量の5〜95質量%である5)記載のインクジェット記録方法。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体(以下、本発明の記録媒体とも言う)は、支持体上にインク吸収層を有する。
【0027】
本発明の記録媒体に用いられる支持体は、吸水性支持体と非吸水性支持体の何れも用いることができるが、プリント後に皺の発生が無く、平滑性に差が生ぜずに高品位のプリントが得られること、又、容易に光沢面を形成できることから非吸水性支持体が好ましい。
【0028】
吸水性支持体としては、特に天然パルプを主体とした紙支持体が代表的であるが、合成パルプと天然パルプの混合物であってもよい。非吸水性支持体としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、又は紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは透明、又は半透明なものも使用できる。本発明で特に好ましい支持体は紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。以下、特に好ましい支持体である、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0029】
支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKP(Lは広葉樹、Nは針葉樹、BKは硫酸塩晒し、BSは亜硫酸塩晒し、Pはパルプの略)の何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70%が好ましい。
【0030】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0031】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%のものが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。紙は抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0032】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては上記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。紙のpHはJIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0033】
次に、紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン等が挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0034】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPE(直線状低密度ポリエチレン)やPP等も一部使用することができる。特に塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0035】
着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0036】
紙の表裏のPEの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜40μm、バック層側で10〜30μmの範囲である。表裏のPEの比率はインク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のPEの比率は厚みで概ね3/1〜1/3である。更に上記PEで被覆紙の支持体は以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0037】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgである。
【0038】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が10〜300g、横方向が20〜400gである。
【0039】
(3)圧縮弾性率は98MPa以上である。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定した時に50%以上、特に85〜98%である。
【0040】
(5)白さは、JIS Z 8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2である。
【0041】
(6)クラーク剛直度は、記録媒体の搬送方向のクラーク剛直度が20〜400cm3/100である。
【0042】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%である。
本発明の着色樹脂微粒子含有インクに適したインクジェット記録媒体は、上記支持体上にインク吸収層を有するものが好ましい。
【0043】
次に、インク吸収層について説明する。
本発明の記録媒体は少なくとも1層のインク吸収層を有するが、インク吸収層の物性又は構成材料等の異なる2層以上のインク吸収層を有してもよい。例えば、上層に高光沢発現機能及び/又は高インク発色性機能を持たせたインク吸収層、下層に高インク吸収性の機能を持たせたインク吸収層を設けた多層構成のインク吸収層を用いることもできる。
【0044】
又、インク吸収層は支持体の片面のみでもよいが、両面に設けてもよい。この時、両面に設けられるインク吸収層は同じでも異なってもよい。インク吸収層は膨潤層型インク吸収層と空隙型インク吸収層に大別される、何れの場合であってもよい。又、膨潤型のインク吸収層と空隙型のインク吸収層を組み合わせてもよい。例えば、支持体に近い側に膨潤型インク吸収層を設け、支持体から離れた側に空隙型インク吸収層を設けた層構成やこの逆の層構成を用いることもできる。更には支持体の両面にインク吸収層を設けた記録媒体の場合には、表裏で同じタイプの吸収層にしてもよく、異なるタイプのインク吸収層であってもよい。
【0045】
本発明で特に好ましいのは空隙型インク吸収層である。これは、単にインク吸収速度が速く、ムラの発生が少ないために高品位のプリントが得られるだけでなく、空隙型インク吸収層表面は非常に微細な凹凸が形成されるために、インク吸収層表面で、着色樹脂微粒子群との接着面積が増大して着色樹脂微粒子の擦過性が改善されるためである。着色樹脂微粒子はインク吸収層中に浸透させるのが困難であり、これを浸透させるために、より大サイズの細孔をインク吸収層に与えると、光沢が低下する問題がある。着色樹脂微粒子は、インク吸収層表面に存在するだけでは表面が擦られた時に取れ易いが、表面との接着性を高めることで或る程度改善することができる。
【0046】
このような観点から、着色樹脂微粒子の平均粒子径(r)がインク吸収層の表面の凹凸のサイズに比較的近い範囲であることが好ましい。インク吸収層が無機又は有機微粒子で形成される多孔質層である場合には、インク吸収層の微粒子の平均粒径(L)と着色樹脂微粒子の平均粒子径(r)の比、L/rは0.05〜10.0の範囲であることが、適度の光沢性を維持しながら着色樹脂微粒子インクの擦過性を改善する上で好ましい。
【0047】
膨潤型インク吸収層は、インク溶媒に対して膨潤性がある親水性ポリマーで主として構成される。そのような親水性ポリマーとしては、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ基をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチン等)、ポリビニルアルコール(平均重合度が300〜4000、鹸化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種類以上を併用することもできる。膨潤型インク吸収層には、親水性ポリマーの膨潤性に影響を与えない範囲で無機微粒子や有機微粒子等の微粒子を含有させてもよいが、親水性バインダーに対して概ね100%以下である。膨潤層に設けられる親水性ポリマーの使用量は、記録媒体1m2当たり概ね3〜20g、好ましくは5〜15gである。
【0048】
空隙型インク吸収層は、無機又は有機の微粒子と少量の親水性ポリマーから形成される空隙層を有する多孔質皮膜のものが好ましい。微粒子は無機微粒子が好ましい。このような無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、又、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0049】
特に微細な空隙が形成できることから、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ、気相法で合成された微粒子シリカ又は擬ベーマイトが好ましく、特に平均粒径が300nm以下の合成シリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトが好ましい。
【0050】
無機微粒子の平均粒径は、例えば粒子そのもの又は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。又、空隙層を形成する塗工液から動的光散乱法を利用して平均粒径を求めることも出来る。例えば大塚電子社製レーザ粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0051】
空隙層に用いられる親水性ポリマーとしては、膨潤型インク吸収層で用いられる親水性ポリマーと同様のものが用いられるが、好ましい親水性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)である。本発明で用いられるPVAには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAの他に、末端をカチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるPVAは、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に1000〜5000のものが好ましい。鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。インク吸収層が空隙型である場合、親水性ポリマーと前記無機又は有機の微粒子の質量比率は、通常、1:10〜1:3であり、特に好ましくは1:8〜1:5である。
【0052】
前記空隙層が親水性ポリマーを含有する場合には、皮膜の造膜性を改善し、皮膜の耐水性や強度を高めるために、硬膜剤を添加することが好ましい。硬膜剤としては、一般的には前記親水性ポリマーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性ポリマーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物が好ましく、親水性ポリマーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0053】
硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、イソシアネート系硬膜剤(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等)硼酸、硼酸塩、硼砂、明礬等が挙げられる。
【0054】
親水性ポリマーとしてPVAを使用する場合には、硼酸、硼酸塩又はエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。上記硬膜剤の使用量は親水性ポリマーの種類、硬膜剤の種類、シリカ微粒子の種類、親水性ポリマーに対する比率等により変化するが、通常、親水性ポリマー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。又、複数の種類の硬膜剤を併用することもできる。
【0055】
記録媒体のインク吸収層には、上記以外の各種添加剤を添加することができる。中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。カチオン媒染剤としては、第1〜3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体や、その他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得られる。カチオン媒染剤の具体例は、例えば「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(シーエムシー社発行,1998年)に記載されている。
【0056】
上記以外に、例えば特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載の蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等、公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0057】
次に本発明の記録媒体の細孔分布曲線について説明する。
本発明の記録媒体の細孔分布曲線を測定した場合、支持体の有する空隙に起因するピーク及び支持体上に形成されたインク吸収層に起因するピークが出現するが、本発明の記録媒体の細孔分布曲線におけるピークは、どちらに起因するピークでもよい。ただし、インクジェット記録において、記録媒体の記録面のインク吸収に関わらない空隙、例えば非吸水性支持体の切断面の空隙等は除く。本発明で言う空隙とは、記録媒体中で記録面から上下及び左右方向といった2次元及び3次元方向に連結した細孔構造で形成され、これによってインク中の溶媒分が速やかに細孔中を通過できるものを指す。
【0058】
上記記録媒体の細孔分布曲線は水銀圧入法により求めることが出来る。
本発明の記録媒体は、かかる細孔分布曲線のピークが細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有するように構成されている。上記範囲にピークがあることにより、着色樹脂微粒子含有インクの吸収性が良好となり、光沢も高くすることができる。更にはインク吸収層表面で着色樹脂微粒子群との接着面積が増大して、着色樹脂微粒子の定着性(擦過性)が改善される。細孔分布曲線のピークが細孔直径10nmよりも小さい範囲にある場合には、着色樹脂微粒子含有インクの吸収速度が低下し、パス数の少ない高速印字においてはインクの吸収が追い付かず、インク溢れが発生したり、吸収の不均一性が生じたりして筋ムラ等が発生してしまう。又、インク吸収層表面で着色樹脂微粒子群との接着面積が減少して着色樹脂微粒子の定着性が悪くなる。一方、細孔分布曲線のピークが細孔直径200nmよりも大きい範囲にのみある場合は、緻密な微多孔性の膜が形成されないために、画像を形成した場合にドットの広がりやインクの滲みが発生してしまう。又、この場合には、塗工膜の透明性も低下するため、鮮明な画像が得られなくなる。更に光沢が低下する問題がある。
【0059】
記録媒体が十分なインク吸収性、光沢及び透明性、更に着色樹脂微粒子含有インクに対する定着性(擦過性)を有するようにするためには、記録媒体の細孔分布曲線において、特に細孔直径30〜100nmの範囲に一つ以上のピークがあるように構成することがより好ましい。更に、上記の細孔直径10〜200nmの範囲の細孔容積の合計が0.01〜0.3cm3/gであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2cm3/gである。
【0060】
記録媒体に上記のような細孔構造を形成させるためには、インク吸収層を構成する材料を適宜に調整することで可能となる。例えば、インク吸収層を構成する無機又は有機の微粒子の種類、親水性ポリマーの種類、支持体の種類、更には、無機又は有機の微粒子の分散度、構成材料の配合比率、成膜時における乾燥条件、膜厚等を適宜に調整することで可能となる。
【0061】
本発明の記録媒体におけるインク吸収層面側の光沢度としては、JIS Z 8741による75度鏡面光沢度測定で40〜80%が好ましい。この光沢度が小さいほど記録画像の鮮明度が低下し易くなる。尚、光沢度は、本発明では75度で測定した場合に上記範囲内が好ましいが、より低い角度、例えば60度や45度で測定した場合には、より低い値になるのが一般的である。
【0062】
記録媒体は、インク吸収層を形成する塗工液を前記支持体に塗布することにより作製できる。ここで、インク吸収層に好ましく用いられる前記無機微粒子は分散媒体中で十分に分散してから、塗工液として用いることが好ましい。
【0063】
無機微粒子の分散方法としては、予備分散工程と本分散工程を有することが好ましく、用いられる分散方法としては、高速攪拌分散機、超音波分散機、ローラミルタイプ、ニーダータイプ、ピンミキサータイプ、高圧式ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)等を挙げることができる。分散媒体として特に制限は無いが水性媒体が好ましく、該水性媒体としては、水以外に前記カチオン媒染剤、前記硬膜剤が含有されていることが好ましい。
【0064】
更には前記親水性ポリマー、各種添加剤を、予め分散媒体又は無機微粒子分散後の分散液に添加してもよく、例えばノニオン又はカチオン性の各種界面活性剤、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン又はカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、i−プロパノール、プロパノール、アセトン等)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することができる。このような構成材料から成る塗工液を、前記支持体に塗布することで本発明の記録媒体を作製することができる。
【0065】
インク吸収層を塗布するに当たっては、支持体表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理や下引層を設けることが好ましい。下引層としては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを必要に応じて硬化剤と併用して設けられる。好ましい下引層の厚さは0.01〜1μmの範囲である。
【0066】
本発明のインクジェット記録媒体が、片面にのみ記録する用途であるある場合、インク吸収層を有する側の反対側にカール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類のバック層を設けることができる。バック層の構成は支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが、一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。
【0067】
バック層の厚みは、通常、0.1〜10μmの範囲である。又、バック層には他の記録媒体との「くっつき」防止、筆記性改良、更にはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化できる。この目的で好ましく用いられるのは、粒径が0.5〜20μmの有機又は無機の微粒子である。これらのバック層は予め設けていてもよく、反対側のインク吸収層を塗布した後で設けてもよい。
【0068】
インク吸収層の塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。支持体としてポリオレフィン樹脂コート紙を使用する場合には、乾燥は概ね0〜80℃の範囲で乾燥することが好ましい。80℃を超えると、ポリオレフィン樹脂が軟化して搬送を困難にしたり記録層表面の光沢にムラが出たりする。好ましい乾燥温度は0〜60℃である。
【0069】
乾燥後に、前記界面活性剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、硬膜剤、カチオン媒染剤、消泡剤、蛍光増白剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤等、公知の各種添加剤を含有する溶液をオーバーコートしてもよい。オーバーコートにより表面ゼータ電位を制御することも可能となる。
【0070】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられるが、中でも陰イオン界面活性剤もしくは陽イオン界面活性剤を、それぞれ単独で用いるか、又はこれらを併用することが好ましい。
【0071】
オーバーコート塗工液には、無機粒子及び/又は有機粒子も添加できる。無機粒子としては、軽質又は重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。又、有機粒子としては、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
【0072】
インク吸収層上にオーバーコート層を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知のバーコーター、エァナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等の塗工機や印刷機によって設けることができる。又、オーバーコート層の塗工量は、目的性能を満足させる限り不必要に多くする必要はなく、0.2〜5g/m2の範囲が好ましく用いられる。
【0073】
次に色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクについて詳細に説明する。
【0074】
本発明で言う着色樹脂微粒子は、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子、又は色材を含有するポリマーコア及びポリマーシェルから成る着色樹脂微粒子であることを特徴とする。特に、色材を含有するポリマーコアとコアよりも色材含有率の少ないポリマーシェルを有することが好ましい。
【0075】
ポリマーコアは主として色材を包含し、その堅牢性や色調を保持するのに寄与する。一方、ポリマーシェルは、色材を包含した微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増すことに寄与し、更に記録媒体(メディア)上での色材の定着を促進し、凝集を防止し、画質の向上に寄与する。又、色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0076】
本発明においては、シェルにおける色材含有率(濃度)が、コア/シェル化を行ってないコアにおける色材含有率の0.8以下が好ましい。更に好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.2以下である。
【0077】
色材含有率はTOF−SIMSのような質量分析装置で測定することができる。TOF−SIMSでは、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に起因するイオンの総量から、色材含有率を求めることができる。シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較する。TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため、本発明のようなコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0078】
本発明において、色材含有ポリマー(樹脂)微粒子含有水系インクに用いられる色材含有樹脂微粒子は、体積平均粒子径が5nm以下であると単位体積当たりの表面積が非常に大きくなるため、色材をポリマー中に封入する効果が小さくなる。一方、500nmを超えるほど大きな粒子では、ヘッドに詰まり易く、又、インク中での沈降が起き易く停滞安定性に問題が出る場合がある。粒子径は5〜400nmが好ましく、10〜300nmが更に好ましい。
【0079】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求めた。更に体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求めることが出来る。又、動的光散乱法を利用して体積平均粒子径、変動係数を求めた。例えば大塚電子社製レーザ粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0080】
粒子径の変動係数は、この値が大きいほど粒子径の分布が広いことを意味する。体積平均粒子径の変動係数が80%以上であると、粒子間の表面物性に「ばらつき」が生じ易くなる。表面物性の「ばらつき」は粒子の凝集を招き易く、インクジェットヘッドの詰まりを起こし易い。又、粒子の凝集は記録媒体上で色材の光散乱を招き易く、画質の低下も招き易くする。変動係数は50%以下が好ましく、30%以下が更に好ましい。
【0081】
本発明においては、シェルに用いられるポリマー量が総ポリマー量の5〜95質量%が好ましい。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。又、シェルのポリマーが多すぎると、コアの色材保護能低下を起こし易い。更に好ましくは10〜90質量%である。
【0082】
色材の総量は総ポリマー量に対して20〜1000質量%であることが好ましい。色材量がポリマーに比して少なすぎると吐出後の画像濃度が上がらず、又、色材質量が多すぎるとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0083】
本発明におけるコア/シェルは、最初に色材を含有するポリマーコアを作製した後、ポリマーシェルを設ける方法と、コアシェルを同時に設ける、以下の2手法が考えられる。
【0084】
<微粒子コア作製後にシェルを設ける手法>
コアとなる色材含有ポリマーは、各種の手法で調製することができる。例えばモノマー中に油溶性染料を溶解させ、水中で乳化後、重合によりポリマー中に染料を封入する方法、ポリマーと色材を有機溶剤中に溶解し、水中で乳化後有機溶剤を除去する方法、染料溶液に多孔質のポリマー微粒子を添加し、染料を微粒子に吸着、含浸させる手法などがある。それにポリマーシェルを設ける手法としては、コアとなるポリマーの水系サスペンションに水溶性のポリマー分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法、あるいは、有機溶剤に溶解したポリマーを徐々に滴下し、析出と同時にコア表面に吸着させる方法などがある。
【0085】
あるいは、顔料をポリマーと混練し、その後水系で分散しポリマー被覆顔料コアを作製し、更に上記の方法によりシェル化を行うことも可能である。
【0086】
〈微粒子形成時にコアとシェルを同時に設ける手法〉
コアとなるポリマーと色材を重合後にシェルとなるモノマーに溶解又は分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合して行く手法などがある。モノマーがコア、ポリマーがシェルとなってもよい。あるいは、重合後にコアとなり得るモノマーとシェルとなり得るモノマー混合液に色材を溶解又は分散し、懸濁重合あるいは乳化重合する手法がある。
【0087】
〈コアシェル化の評価〉
実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明においては、個々の粒子径が500nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析手法としては、TEMやTOF−SIMS等が適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物であるポリマーの種類のみではコントラスト差が小さいため、コアシェル化されているか否かを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロルスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色する必要がある。コアだけの微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。更に、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。
【0088】
TOF−SIMSのような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0089】
即ち、色材含有率は、TOF−SIMSによって、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に含有されるコアシェルのポリマーに含有されていない元素に由来するイオンの総量との比から求めることができる。この方法により、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較することにより、それぞれの色素含有率を測定できる。TOF−SIMSでは表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため、本発明の様なコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0090】
そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量がシェルを設けていないものと比較することができる。
【0091】
又、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄い切片を作製、染色を行うことでコアシェル化はより明瞭に観察できる。上記のように、ポリマーや、色材にプローブとなり得る元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0092】
前述のように、本発明においては、シェルにおける色材含有率が、コア/シェル化を行っていないコアにおける色材含有率の0.8以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.2以下である(勿論、0あるいは限りなく0に近い値であってもよい)。これにより、ポリマーコアが、色材の主たる部分を包含することで、その堅牢性や色調を保持するのに寄与し、一方、ポリマーシェルは色材を包含したこれら微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増すことに寄与すると共に、メディア上での色材の定着促進、凝集の防止、画質の向上や色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0093】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と適当な乳化法の選定が重要である。処方は、用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。又、シェルを構成するポリマーに含有される色材は、上記のようにコアを構成するポリマー中より少ないことが好ましく、色材もシェルを構成するポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法が、POLYMER HANDBOOK第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)675頁からの記載が参考になる。
【0094】
色材含有樹脂微粒子に用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100000、特に1000〜30000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0095】
該ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各種のものを用いることが可能だが、用いるポリマーの内、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
【0096】
本発明においては、一般に知られている全てのポリマーを使用可能であるが、特に好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー及びエステル基を有するポリマーである。上記のポリマーは置換基を有してもよく、その置換基は、直鎖状、分岐、又は環状構造を採ってもよい。又、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。又、これらの共重合体は、例えば一つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0097】
主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとしては、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。例えば、電気化学工業社製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP、あるいは積水化学工業社製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5等がある。
【0098】
樹脂は、PVAの誘導体として得られるが、元のPVAの水酸基のアセタール化度は最大でも80モル%程度であり、通常は50〜80モル%程度である。尚、ポリビニルブチラールの場合には、アセタール基として1,1′−ブチレンジオキシ基が形成されるが、ここでアセタール化度と言う場合は、この様な狭義のアセタールを指すのではなく、より一般的なアセタール基を意味し、水酸基を有する化合物(この場合PVA)とアルデヒド基を有する化合物(この場合ブタナール)とから形成されるアセタール基を有する化合物を指す。水酸基については、特に規定はないが、10〜40モル%含有されていることが好ましい。又、アセチル基の含有率に特に規定はないが、10モル%以下であることが好ましい。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち、少なくとも30モル%以上がアセタール基を形成していることを言う。
【0099】
他に主な官能基としてアセタールを基含有するポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピタールシリーズ等も使用可能である。
【0100】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。例えば三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズがある。ユーピロンシリーズはビスフェノールAを原料として作られており、測定法によってその値は異なるが、各種の分子量のものを用いることができる。ノバレックスシリーズでは、分子量が20000〜30000、Tg150℃付近のものを用いることができるが、これらに限定されない。
【0101】
主な官能基として炭酸エステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上が炭酸エステル基の形成に寄与していることを言う。
【0102】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、例えばPVAが挙げられる。PVAの有機溶剤への溶解度は小さいものが多いが、鹸化価の小さいPVAであれば有機溶剤への溶解度は上昇する。水溶性が高いPVAは、水相中に添加しておき、有機溶剤除去後にポリマーのサスペンションに吸着させるようにして使用することもできる。
【0103】
PVAとしては市販のものを用いることができ、例えばクラレ社のポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505等の他、特殊銘柄のサイズ剤用PVA、熱溶融成形用PVA、その他機能性ポリマーとして、KL−506、C−118、R−1130、M−205、MP−203、HL−12E、SK−5102等を用いることができる。
【0104】
鹸化度は50モル%以上のものが一般的であるが、LM−10HDのように40モル%程度であっても、これを用いることも可能である。このようなPVA以外でも主な官能基として水酸基を有するものが使用可能であるが、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも20モル%以上が水酸基を形成しているものが使用可能である。
【0105】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、例えばメタクリル樹脂が挙げられる。旭化成社製デルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500等を用いることができる。主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上がエステル基を形成していることを言う。
【0106】
これらのポリマーを、それぞれ1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。又、これらのポリマーが質量比で50%以上含まれていれば、他のポリマーや無機物のフィラーが含有されていてもよい。
【0107】
これらのポリマーの共重合体を用いることも好ましいが、例えば水酸基を含有するポリマーと、各種のポリマーを共重合させる手法として、水酸基をグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーと反応させ、その後、懸濁重合でメタクリル酸エステルモノマーと共重合させ、得ることができる。
【0108】
次に、上記ポリマーによって封入される色材について説明する。上記ポリマーによって封入され得る色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等が挙げられるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。上記分散染料として特に好ましい具体例を以下に示すが、これ等のみに限定されるものではない。
【0109】
C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレッド33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等。
【0110】
一方、上記油性染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例として、例えばC.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット3;C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0111】
色材として、又、以下に挙げるような水溶性染料も使用可能である。
用いることのできる水溶性染料としては、例えばアゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0112】
〔C.I.アシッドイエロー〕
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246。
【0113】
〔C.I.アシッドオレンジ〕
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168。
【0114】
〔C.I.アシッドレッド〕
1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415。
【0115】
〔C.I.アシッドバイオレット〕
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126。
【0116】
〔C.I.アシッドブルー〕
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350。
【0117】
〔C.I.アシッドグリーン〕
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109。
【0118】
〔C.I.アシッドブラウン〕
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413。
【0119】
〔C.I.アシッドブラック〕
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222。
【0120】
〔C.I.ダイレクトイエロー〕
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153。
【0121】
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118。
【0122】
〔C.I.ダイレクトレッド〕
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254。
【0123】
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕
9、35、51、66、94、95。
【0124】
〔C.I.ダイレクトブルー〕
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291。
【0125】
〔C.I.ダイレクトグリーン〕
26、28、59、80、85。
【0126】
〔C.I.ダイレクトブラウン〕
44、106、115、195、209、210、222、223。
【0127】
〔C.I.ダイレクトブラック〕。
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169。
【0128】
〔C.I.ベイシックイエロー〕
1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91。
【0129】
〔C.I.ベイシックオレンジ〕
2、21、22。
【0130】
〔C.I.ベイシックレッド〕
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109。
【0131】
〔C.I.ベイシックバイオレット〕
1、3、7、10、11、15、16、21、27、39。
【0132】
〔C.I.ベイシックブルー〕
1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151。
【0133】
〔C.I.ベイシックグリーン〕
1、4。
【0134】
〔C.I.ベイシックブラウン〕
1。
【0135】
〔C.I.リアクティブイエロー〕
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176。
【0136】
〔C.I.リアクティブオレンジ〕
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107。
【0137】
〔C.I.リアクティブレッド〕
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235。
【0138】
〔C.I.リアクティブバイオレット〕
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38。
【0139】
〔C.I.リアクティブブルー〕
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236。
【0140】
〔C.I.リアクティブグリーン〕
8、12、15、19、21。
【0141】
〔C.I.リアクティブブラウン〕
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46。
【0142】
〔C.I.リアクティブブラック〕
5、8、13、14、31、34、39。
【0143】
これら上記した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載されている。これら水溶性染料の中でもフタロシアニン染料が好ましい。
【0144】
フタロシアニン染料としては、無置換あるいは中心元素を有するものが挙げられ、中心元素としては金属、非金属のものが挙げられ、好ましくは銅であり、より好ましくはC.I.ダイレクトブルー199が挙げられる。
【0145】
又、水や各種有機溶剤に不溶な顔料を用いることも可能である。
使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0146】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等。
【0147】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等。
【0148】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等。
【0149】
色材として、特開平9−277693号、同10−20559号、同10−30061号に示されるような金属錯体色素も使用可能である。例えば、特開平10−20559号に記載の一般式(1)、一般式(2)で表される色素が使用できる。
【0150】
【化1】
【0151】
一般式(1)において、X1は、金属イオンと少なくとも2座の配位結合を形成可能な原子群を表し、Y1は芳香族炭化水素環、5〜6員の複素環又は−L4=Y2を表し、Y2は含窒素の5〜6員の複素環を表す。L1、L4は置換もしくは非置換のメチン基又は窒素原子を表し、L2、L3は置換又は非置換のメチン基を表す。Mは金属イオンを表し、X1で形成される原子群と少なくとも2座の配位結合を形成する。mは0、1、2又は3の整数を表し、n1は1、2又は3の整数を表す。
【0152】
又、一般式(2)において、X3、Y3、M及びn2は、それぞれ上記一般式(1)のX1、Y1、M及びn1と同義である。
【0153】
一般式(1)、一般式(2)で表される色素の具体例は、前記特開平10−20559号の段落「0043」〜「0056」にD−1〜D−70として記載がある。
【0154】
本発明で言う着色樹脂微粒子が分散されたインク中には、ポリマーが0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましい。ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えると、サスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘や、サスペンションの凝集が起こることによってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合がある。
【0155】
一方、上記色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、30質量%を超えるとサスペンションの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向がある。
【0156】
本発明で言う水系インクは、水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンションから成り、該サスペンションには従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されてもよい。
【0157】
上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルスルホキシドの1種又は2種以上を使用することができる。これら湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することである。
【0158】
分散剤としては特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果を発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。分散剤として市販品も使用することができ、そのような市販品として、例えば花王社製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、Pが挙げられる。
【0159】
分散剤の配合量に特に制限はないが、着色樹脂微粒子が分散された水系インク中に0.01〜10質量%配合されることが好ましい。配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化するおそれがある。
【0160】
又、消泡剤としても、特に制限なく市販品を使用することができる。そのような市販品として、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F等が挙げられる。
【0161】
これら化合物(添加剤)の配合量に特に制限はないが、着色樹脂微粒子が分散された水系インク中に0.001〜2質量%配合されることが好ましい。配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、一方、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際にインク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合がある。
【0162】
次に、着色樹脂微粒子が分散されたインクの製造方法について説明する。
本発明に係るインクは各種の乳化法で製造することができ、乳化法として各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー・エム・シー社刊」の86頁の記載に纏められている。特に超音波、高速回転剪断、高圧による乳化分散装置の使用が好ましい。
【0163】
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の二通りが使用可能である。バッチ式は比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、例えばUH−600SR(エスエムテー社製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は、実際上は10,000秒以下である。10,000秒を超える時間が必要だと工程の負荷が大きく、実際には乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10,000秒超える時間は必要でない。より好ましくは10〜2,000秒である。
【0164】
高速回転剪断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開」(前出)の255〜256頁に記載されるような、ディスパーミキサーや、251頁に記載されるようなホモミキサー、256頁に記載されるようなウルトラミキサー等が使用できる。これらの型式は乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。高速回転剪断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは、通常、0.5mm程度で極端に狭くはできないので、剪断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5〜150m/secであれば、本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/secにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。更に好ましくは20〜100m/secである。
【0165】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)等が使用できるが、その乳化・分散能力は、試料に掛けられる圧力に依存する。圧力は1×104〜5×105kPaの範囲が好ましい。又、必要に応じて数回、乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化・分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、又、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷が掛かり実用的ではない。より好ましくは5×104〜2×105kPaの範囲である。
【0166】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。
【0167】
又、上記の装置を用いる他、いわゆる転相乳化によっても製造できる。転相乳化とは、前記ポリマーを前記染料と共にエステル、ケトン等の有機溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えて該ポリマー中のカルボキシル基をイオン化し、次いで水相を加えた後、前記有機溶剤を溜去して水系に転相することから成る。転相が完了した後、系を減圧下に加熱することにより、前記エステル、ケトン系溶剤を除去すると共に、所定量の水を除去して所望の濃度を有する着色樹脂微粒子が分散された水系インクが得られる。
【0168】
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
前記インクジェット記録媒体に、前記着色樹脂微粒子が分散された水系インクを使用してインクジェット記録する方法は、特に限定されるものではなく、ピエゾ方式やサーマル方式のインクジェットプリンターを使用することにより印字又は画像を得ることができる。記録方法の詳細は、例えば「インクジェット技術の動向」,中村孝一編,日本科学情報社(1995.3.31刊行)に記載されている。
【0169】
本発明の記録方法で用いることのできるインクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又、インク吐出方式としては、電気−機械変換方式(シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)、静電吸引方式(電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(スパークジェット型等)などを具体例として挙げることができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。
【0170】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0171】
実施例1
以下の手順でインクジェット記録媒体を作製した。
【0172】
〈支持体の作製〉
含水率6.5%、坪量170g/m2の写真用原紙の裏面に、溶融押出し塗布法により密度0.92の低密度ポリエチレンを30μmの厚さで塗布した。次いで表側に、アナターゼ型酸化チタン5.5%を含有する密度0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで溶融押出し法で塗布して、両面をポリエチレンで被覆した支持体を作製した。
【0173】
表側にコロナ放電を行い、ゼラチン下引層を厚さ0.3g/m2になるよう塗布し、裏面にもコロナ放電を行った後、ラテックス層を厚さ0.2g/m2になるよう塗布した。
【0174】
〔各分散液の調製〕
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業社製:W−10)を、pH=7.5のトリポリ燐酸ナトリウム150g、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)500g、カチオンポリマー(P−1)150g及びサンノブコ社製消泡剤(SN381)10gを含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液1を得た。
【0175】
【化2】
【0176】
〈蛍光増白剤分散液1の調製〉
チバガイギー社製の油溶性蛍光増白剤(UVITEX−OB)400gをジ−i−デシルフタレート9000g及び酢酸エチル12Lに加熱溶解し、これを酸処理ゼラチン3500g、カチオンポリマー(P−1)800g、サポニン50%水溶液6Lとを含有する水溶液65Lに添加混合し、三和工業社製の高圧ホモジナイザーで乳化分散し、減圧で酢酸エチルを除去した後、全量を100Lに仕上げた。
【0177】
〈シリカ分散液1の調製〉
水系媒体(以後、A液と称す)として、
水 80L
硼酸 0.27kg
硼砂 0.23kg
5%硝酸 0.4L
エタノール 1.8L
カチオン性ポリマー(P−1)(25%水溶液) 5L
を混合・溶解した。シリカとして沈降法シリカ(トクヤマ社製:T−32、平均2次粒径1.5μm、以後T−32と称す)32kgを用意し、以下のように分散しシリカ分散液1を得た。
【0178】
A液を1.56kg/min、T−32を0.44kg/minの割合で分散機1としてフロージェットミキサー300型(ピンミキサータイプ、粉研パウテックス製、以後FJMと称す)に供給した。その後、分散機2としてファインフローミルFM−25(連続式高速撹拌型分散機、大平洋機工社製、以下FMと称す)に供給した。その後、分散機3としてLMK−4(連続式湿式メディア型粉砕機、アシザワ社製、以後LMKと称す)を用い、分散機2から出て来た分散液を、モノーポンプを用いてLMKに2.0kg/minで供給した。FJMの条件は周速25m/sec、滞留時間20sec、FMの条件は周速25m/sec、滞留時間0.15sec、LMKの条件はビーズ径0.5mmジルコニア、滞留時間5min、ロータ回転周速11m/secであった。その後、LMKから出て来た分散液をフィルター処理した。フィルターは日本ポール社製のプロファイルを用いた。この時のシリカの平均粒径は210nmであった。この平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSで測定した値である。
【0179】
〈シリカ分散液2の調製〉
LMKに2回通した以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は170nmであった。
【0180】
〈シリカ分散液3の調製〉
LMKのロータ回転周速を7m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は290nmであった。
【0181】
〈シリカ分散液4の調製〉
フィルター処理を行わなかった以外は、シリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は230nmであった。
【0182】
〈シリカ分散液5の調製〉
LMKのロータ回転周速を14m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は190nmであった。
【0183】
〈シリカ分散液6の調製〉
LMKを高圧ホモジナイザーに変え、圧力34.3MPaで1回分散し、かつフィルター処理を行わなかった以外はシリカ分散液1と同様に作製した。平均粒径は390nmであった。
【0184】
〈シリカ分散液7の調製〉
シリカをゲル法シリカ(日本シリカ社製:AZ−204、平均2次粒径1.3μm)に変えた以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は230nmであった。
【0185】
〈シリカ分散液8の調製〉
シリカを気相法シリカ(日本アエロジル社製:A−300)に変え、LMKのロータ回転周速を8m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は190nmであった。
【0186】
〈シリカ分散液9の調製〉
シリカを気相法シリカ(A−300:前出)に変え、LMKのロータ回転周速を12m/secにした以外はシリカ分散液1と同様に分散を行った。平均粒径は150nmであった。
【0187】
〈シリカ分散液10の調製〉
シリカ分散液1と同様の処方だが、シリカ分散液の調製で粉砕分散を行わず、ホモミキサーによる分散のみ行った。平均粒径は1.5μmであった。
【0188】
〔塗布液の調製〕
インクジェット記録媒体用の第1層、第2層、第3層塗布液を、以下の手順で調製した。
(第1層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ濃度が10%になるように調整した調整分散液560mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0189】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
(第2層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ濃度が10%になるように調整した調整分散液630mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0190】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
(第3層用塗布液)
シリカ分散液1を、分散液のシリカ質量濃度が10%になるように調整した調整分散液640mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0191】
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0192】
〔塗布〕
上記のようにして得られた各塗布液を、ポリエチレンで両面を被覆した前記支持体の表側に、第1層(40μm)、第2層(110μm)、第3層(30μm)の順になるよう各層を同時塗布した(括弧内は、それぞれの湿潤膜厚を示す)。即ち、それぞれの塗布液を40℃で3層式カーテンコーターで同時塗布を行い、塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間、順次乾燥した(恒率乾燥域における皮膜温度は8〜25℃であり、減率乾燥域で皮膜温度は徐々に上昇した)後、23℃・RH(相対湿度)40〜60%で調湿した。
【0193】
次に、酢酸エチルに溶解したイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製:コロネート3041と、住友バイエルウレタン社製:スミジュールN3300の2:8(質量比)の混合物)を2.0g/m2になるようにオーバーコートし、インクジェット記録媒体1(以下、記録媒体1と称す)を得た。
【0194】
〈記録媒体2〜10の作製〉
上記記録媒体1の作製において、シリカ分散液1をシリカ分散液2〜10に変更した以外は同様にして、表1に示す内容の記録媒体2〜10を作製した。
【0195】
表1には、得られた各記録媒体について、シリカ種類、分散結果、細孔分布曲線のピーク位置及び75°鏡面光沢度を示す。平均粒径は、マルバーン社製ゼータサイザー1000HSで測定した値である。細孔分布曲線は、Quanta Chrome社製Pore Master60−GTを用いて水銀圧入法により求めた。尚、測定範囲は細孔直径0.0034〜400μmである。光沢度は、日本電色工業社製VGS−1001DP型光沢度計を用い、入射角75°、受光角75°でJIS Z 8741による光沢度を測定した値である。
【0196】
【表1】
【0197】
実施例2
以下の手順で着色樹脂微粒子含有インクジェットインクを作製した。
【0198】
〈着色樹脂微粒子分散液1の調製〉
ポリマーとして、ポリビニルブチラール(積水化学社製:BL−S、平均重合度350)15g、ジョンクリル67(ジョンソンポリマー社製)5g、色材として、シアン染料(C.I.Solvent Blue 70)10g、及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素で置換後、攪拌して上記各ポリマー及び染料を完全に溶解させた。次いで、ジョンクリル67を中和するのに必要な水酸化ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下し撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:エスエムテー社製)を用いて70℃で5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸する着色樹脂微粒子分散液1を得た。この着色樹脂微粒子分散液1のシェルポリマーはジョンクリル67で、総ポリマーに対する比率は25%である。
【0199】
〈着色樹脂微粒子分散液2の調製〉
ポリマーとしてポリビニルブチラール(前出:BL−S、平均重合度350)15g、色材としてシアン染料(C.I.Solvent Blue 70)10g、及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素で置換した後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全に溶解させた。次いで、PVA樹脂(MP−203:クラレ社製)3g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下し撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:前出)を用いて70℃で5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸する着色樹脂微粒子分散液2を得た。この着色樹脂微粒子分散液2のシェルポリマーはMP−203で、総ポリマーに対する比率は16.7%である。
【0200】
〈着色樹脂微粒子分散液3の調製〉
ジョンクリル67(前出ポリマー)及び水酸化ナトリウムを添加しなかった以外は着色樹脂微粒子分散液1と同様にして、着色樹脂微粒子分散液3を得た。
【0201】
〈水系インクの調製〉
上記調製した着色樹脂微粒子分散液1〜3を用いて、下記の方法に従って水系インク1〜3を調製した。
【0202】
着色樹脂微粒子分散液 69.9%
エチレングリコール 15%
グリセリン 15%
サーフィノール465(日信化学工業社) 0.1%
上記各添加剤を混合した後、0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過してゴミ及び粗大粒子を除去し、インクジェット用の水系インク1〜3を得た。
【0203】
〈インクの各特性値の測定〉
このように調製した着色樹脂微粒子を含有する水系インクについて、下記の体積平均粒径、その変動係数、コアシェル化の確認及びシェル/コアの色材濃度比を算出した。結果を表2に示す。
【0204】
《体積平均粒径》
大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した。
【0205】
《体積平均粒径の変動係数》
TEM写真の投影面積の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して体積平均粒径と、その標準偏差を求め、体積平均粒径で割ることで変動係数を求めた。
【0206】
《コアシェル化》
コアシェル化は、サスペンションの超薄切片をカーボン支持膜付きメッシュに固定後、RuO4で染色し、それぞれ比較例と比べて染色度合から確認した。
【0207】
《色材濃度比》
Si−ウェーファ上に調製した着色樹脂微粒子を塗布・乾燥し、Physical Electrinics社製のTRIFT−IIを用い、以下の条件で色材としての色素の質量数+1のエリア強度を、0.5〜1000a.m.u.の全検出イオン強度で割り、この値をコアのみの粒子とコア/シェル粒子を、それぞれ比較することで、コアとシェルの色材含有率(濃度)比を算出した。
【0208】
1次イオン:Ga+
加速電圧:15kV
測定質量範囲:0.5〜1000a.m.u.
測定エリア:60μm×60μm
検出イオン:正二次イオン検出
積算時間:5分間
測定温度:液体窒素で冷却
ステージ電圧:3000V
【0209】
【表2】
【0210】
実施例3
〈インクジェット画像の記録〉
実施例2で調製した各水系インクをインクジェットカートリッジに収納し、カラーインクジェットプリンタPM800C(セイコーエプソン社製)により、実施例1の記録媒体1〜10に、表3に示す組合せで画像を記録した。出力画像としては、出力濃度を0〜100%の間を16段階に分割したウェッジ画像(各濃度について3cm×3cmのパッチ状に出力)を記録した。
【0211】
〈記録画像の評価〉
以上のようにして記録した各画像について、以下の項目の特性評価を行った。結果を表3に示す。
【0212】
《定着性:耐擦過性》
上記出力した各画像の出力濃度100%のパッチ部について、画像が表面になるように平面性が保たれた定盤に貼り付け、消毒用ガーゼを付けた板(3cm角)に19.6Nの荷重を掛けた器具を画像表面に押し当て、画像表面を100往復して擦った。次いで、擦る前と擦った後での画像の光学反射濃度を3点で測定し平均値を求めた。擦る前の光学反射濃度をA、擦った後の光学反射濃度をBとした時、下式に従って画像残存率(%)を求め、これを耐擦過性の尺度とした。
【0213】
画像残存率(%)=B/A×100
《インク吸収性》
上記出力した各画像の出力濃度100%のパッチ部について、記録直後(約10秒後)にコピー紙を接触させ、インクの記録媒体への吸収性及び紙への転写状況を目視で観察し、下記基準に則りインク吸収性を4段階評価した。
【0214】
A:インクの吸収が速く、インクがコピー紙に転写されなかった
B:インクの吸収は速いが、インクが僅かにコピー紙に転写された
C:インクの吸収がやや遅く、インクがコピー紙に転写された
D:インクの吸収が遅く、インク溢れが認められる
【0215】
【表3】
【0216】
表1及び表3より明らかなように、本発明のインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法により形成された画像は、比較例に比べて光沢性に優れ、かつ色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクに対して、インク定着性及びインク吸収性に優れていることが判る。
【0217】
【発明の効果】
本発明により、着色樹脂微粒子を含有する高堅牢度で、色再現性に優れた水系インクの利点を維持しながら、更にインク吸収性、インクの定着性(耐擦過性)に優れ、かつ光沢性等の性能にも優れた着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体及びインクジェット記録方法を提供することができた。
Claims (9)
- 支持体上にインク吸収層を有する着色樹脂微粒子含有インク用のインクジェット記録媒体であって、前記着色樹脂微粒子含有インクが色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクであり、かつ前記インクジェット記録媒体の細孔分布曲線において細孔直径10〜200nmの範囲に少なくとも一つのピークを有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
- 色材を含有するポリマーが、ポリマーコア及びポリマーシェルで構成されることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
- 細孔直径30〜100nmの範囲に少なくとも一つのピークを有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録媒体。
- インク吸収層表面のJIS Z 8741による75度鏡面光沢度が40〜80%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録媒体。
- 請求項1、2又は3記載のインクジェット記録媒体に、色材を含有するポリマーから成る着色樹脂微粒子が分散された水系インクをインクジェットヘッドより液滴として吐出させ、記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 着色樹脂微粒子の体積平均粒子径が5〜500nmであることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録方法。
- 体積平均粒子径の変動係数が80%以下であることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
- ポリマーシェルの色材含有率が、ポリマーコアの色材含有率の0.8以下であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録方法。
- ポリマーシェルを構成するポリマーが着色樹脂微粒子で用いられている総ポリマー量の5〜95質量%であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録方法。
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JP2020118656A (ja) * | 2019-01-28 | 2020-08-06 | 株式会社日立製作所 | 温度検知ラベルおよび温度検知インク |
-
2003
- 2003-03-04 JP JP2003056938A patent/JP2004262169A/ja active Pending
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