JP2004261964A - 皺寄せ板材の製造方法及び製造装置 - Google Patents

皺寄せ板材の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に存在する多数の皺を構成する凸部の先端同士がくっつき合わず、凹部が開口した、良質の陶板2aを安定して得られる製造方法を実現する。
【解決手段】(A)に示す様に伸長したゴムシート4の上面に粘土5を載せ、この粘土5の上面を、(B)に示す様に、この粘土5の焼成時に燃焼する材料製の表面層6により覆う。次いで、(C)に示す様に、上記ゴムシート4を収縮させて、上記粘土5の上面及び上記表面層6に皺を寄せる。その後、この粘土5を焼成すると共に表面層6を燃焼により消滅させて、(D)に示す様な陶板2aを得る。表面層6が、皺を構成する凸部の先端同士が直接くっつき合う事を防止するので、上記課題を解決できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係る皺寄せ板材の製造方法及び製造装置の対象となる皺寄せ板材は、例えば河川の護岸、各種建造物の壁面等を覆う為に利用する。本発明は、この様な皺寄せ板材の品質を良好にできる製造方法及び製造装置を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】
表面に多数の皺を有する陶磁器の製造方法に関する発明が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された製造方法は、膨らませたゴム風船の表面に粘土を付着させてからこのゴム風船を萎ませる事により、この粘土の表面に多数の皺を寄せ、その後、この粘土を焼成するものである。又、上記特許文献1の明細書の第1欄第16〜17行には、平板状の伸縮板により粘土に皺を寄せる事もできる旨の記載がある。
【0003】
上記特許文献1には表面に多数の皺を寄せた、粘土製で平板状の板材(陶板)の用途に就いての記述は存在しないが、例えば河川の護岸、各種建造物の壁面等を覆う為に利用する事が考えられる。例えば河川の護岸を覆う為に利用した場合、皺の内部で微生物を養生し、この微生物に汚染物質を分解させる事で、河川の浄化を図る事が可能になる。又、多数の皺を有する陶板は、単なる平板状の陶板に比べて吸音性能が優れている為、ホール等の空間の壁面を覆う為の壁板に使用した場合に、当該空間の内壁面の意匠を重厚なものにしつつ、音響性能を良好にする事が可能になる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−263521号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1には、平板状の伸縮板により粘土に皺を寄せる為の具体的装置が記載されておらず、又、製造方法に就いても基本的な事項のみを記載している為、そのままでは良質の陶板を能率良く得る事が難しい場合が考えられる。この点に就いて、図6により説明する。
【0006】
河川の護岸を覆う為に利用する場合に、皺の奥部にまで河川の水が出入りして汚染物質の分解が効率良く行なわれる様にする為には、図6(A)に示す様に、皺の凹部1が陶板2の表面で確実に開口している形状とする必要がある。図6(B)に示す様に、皺を構成する凸部3、3の先端同士が当接し合い、この皺を構成する凹部1が開口していない場合には、この凹部1の奥部にまで水が出入りできなくなる。この結果、この凹部1の奥部が、微生物の養生及び汚染物質の分解に寄与しなくなる。又、陶板2を空間の壁板として利用する場合には、図6(B)に示す様に凹部1が陶板2の表面で開口していないと、この凹部1による音波の吸収が効果的に行なわれず、ホール等の空間の音響特性を設計通りにする事が難しくなる。
【0007】
これらの事を考慮した場合、上記陶板1等の皺寄せ板材に所期の性能を発揮させる為には、上記皺を構成する凸部3、3の先端同士が当接せず、表面で凹部1が確実に開口する皺寄せ板材の製造方法、並びにこの製造方法を実施できる装置の実現が望まれる。
本発明の皺寄せ板材の製造方法及び製造装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の皺寄せ板材の製造方法及び製造装置のうち、請求項1に記載した皺寄せ板材の製造方法は、先ず、後処理により硬化する原材料を、未硬化若しくは半硬化状態で、伸縮性を有する支持膜の上面に、この支持膜を伸長した状態で載置すると共に、この原材料の上面を後処理(上記した後処理とは、必ずしも一致しない)により除去可能な材料製の表面層により覆う。
その後、上記支持膜を収縮させる事により、上記原材料の少なくとも上面に皺を寄せてから、この原材料を硬化させると共に、この原材料から上記表面層を除去する。
これらの工程により、少なくとも上面に多数の皺を有する皺寄せ板材とする。
尚、本明細書で言う上面、下面とは、上記支持膜の上面に上記原材料を載置した状態での方向で表している。必ずしも使用状態での上下方向を表していないだけでなく、例えば上記原材料が粘土である場合に、必ずしもこの原材料を硬化させる為の焼成工程時の上下方向を表すものでもない。
【0009】
又、請求項5に記載した皺寄せ板材の製造装置は、支持板と、複数のガイド部材と、複数のスライダと、駆動装置と、支持膜とを備える。
このうちの支持板は、水平方向に設けられている。
又、上記各ガイド部材は、上記支持板の上面に放射方向に設けられている。
又、上記各スライダは、上記各ガイド部材に沿う移動を自在とされている。
又、上記駆動装置は、上記各スライダを、上記各ガイド部材に沿って同期して移動させる為のものである。
更に、上記支持膜は、伸縮性を有し、上記各スライダにその外周縁部を結合されている。
【0010】
【作用】
上述の様に構成する、請求項1に係る皺寄せ板材の製造方法の場合には、伸長した支持膜を収縮させる事により、この支持膜の上面に載置した原材料の下面に、収縮方向の力が加わる。この結果この原材料には、面方向に亙って圧縮方向の力が加わる。この状態でもこの原材料の下面は、上記支持膜の上面に(直接又は中間層を介して)密着したままである為、この原材料の少なくとも上面及びこの原材料の上面を覆った表面層に、上記圧縮方向の力に基づいて皺が寄る。この場合に、上記原材料の上面がこの表面層により覆われている為、この皺を構成する多数の凸部の先端部で、この原材料同士が直接当接する事がなくなる。言い換えれば、これら各凸部の先端部同士が当接した場合でも、その当接部には上記表面層が存在する。そこで、上記原材料を硬化させると共に、この原材料からこの表面層を除去すれば、この原材料を硬化させて皺寄せ板材を完成させた状態で、上記各凸部の先端部同士の間に確実に隙間が存在する。言い換えれば、上記皺を構成する多数の凹部が、上記皺寄せ板材の表面部分に確実に開口を有する状態となる。
【0011】
又、請求項5に記載した皺寄せ板材の製造装置の場合には、駆動装置により複数のスライダを、各ガイド部材に沿って放射方向に同期して移動させる事により、支持膜を水平状態のまま伸縮させる事ができる。従って、上記各ガイド部材を径方向外方に移動させる事により上記支持膜を伸長させた状態で、この支持膜の上面に未硬化若しくは半硬化の原材料を載置した後、上記各ガイド部材を径方向内方に移動さて上記支持膜を収縮させれば、上記原材料の上面に皺を寄せる事ができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例は、河川の護岸やホール等の空間の壁面を覆うのに好適な、粘土を焼成して表面に多数の皺を有する陶板を造る製造方法の1例を示している。本例の場合、先ず、図1(A)に示す様に、伸縮性を有する支持膜であるゴムシート4の上面に、後処理(焼成)により硬化する原材料である粘土5を載置する。この際、このゴムシート4を伸長させておく。このゴムシート4の伸長方向を一次元方向(直線方向)にするか二次元方向(面方向)にするかは、製品の表面にどの様な皺を形成するかにより適宜選択する。上記ゴムシート4を一次元方向に伸長すれば、製品の表面に波形に近い皺を形成する事ができる。これに対して、上記ゴムシート4を二次元方向に伸長すれば、製品の表面にそれぞれが巾着状に膨らんだ多数の凸部から成る、複雑な皺を形成する事ができる。又、二次元方向に伸長させる場合でも、所定方向の伸長量と、この所定方向に対し直角方向の伸長量とは、必ずしも等しくする必要はない。これら両方向の伸長量を互いに異ならせれば、その相違に応じて得られる製品の表面に形成される皺の形状が異なる。要は、得たい皺の形状に応じて上記ゴムシート4を、少なくとも一方向に関して伸長させる。
【0013】
上述の様なゴムシート4の上面に上記粘土5を載置し、この粘土5の厚さ寸法並びにその分布を、得ようとする製品の形状に応じて適切にする。この場合に、厚さ寸法に関しては得ようとする製品よりも薄くし、分布に関しては任意であるが、一般的には均一にする。この状態で、上記粘土5の下面と上記ゴムシート4の上面とが密着する。次いで、図1(B)に示す様に、この粘土5の上面を、後処理により除去可能な材料製の表面層6により覆う。この表面層6の材料としては、上記粘土5を焼成する際に燃焼して消滅する材料、具体的には、炭素粉末を澱粉糊中に分散して硬めのペースト状としたもの、オブラート、寒天等が使用可能である。又、上記表面層6の厚さT {(図1(B)}は、得ようとする製品の上面に形成すべき凸部3、3の先端同士の間隔D {図2(B)}に応じて適切に規制する。具体的には、この間隔D を大きくする場合には上記厚さT を厚くする。尚、上記粘土5の上面に皺を寄せた場合に上記表面層6は、隣り合う凸部3、3の先端同士の間で多少なりとも押し潰される。従って、上記厚さT は、上記間隔D の1/2よりも多少大きくする(T >D /2)。この様に厚さT を大きくする程度は、実験的に求める。
【0014】
上述の様に、伸長したゴムシート4の上面に上記粘土5を付着させ、更にこの粘土5の上面を上記表面層6により覆ったならば、その後、上記ゴムシート4を収縮させる。このゴムシート4の上面と上記粘土5の下面とは、この粘土5の粘着力に基づいて付着している為、上記ゴムシート4を収縮させる事により、このゴムシート4の上面に載置した上記粘土5の下面に、収縮方向の力が加わる。この結果この粘土5には、面方向に亙って圧縮方向の力が加わる。この状態でもこの粘土5の下面は、上記ゴムシート4の上面に密着したままである為、この粘土5がゴムシート4の収縮に伴って、平面形状が小さくなり、厚さが大きくなる方向に塑性変形する。この塑性変形の際、ゴムシート4により支持されている下面と異なり、何ら支持されていない、上記粘土5の上面及び上記表面層6に、座屈方向の応力が加わる。そして、この応力に基づいて、図1(C)に示す様に、この粘土5の上面及びこの粘土5の上面を覆った上記表面層6に皺が寄る。
【0015】
この場合に、上記粘土5の上面がこの表面層6により覆われている為、この皺を構成する多数の凸部3、3の先端部で、この粘土5同士が直接当接する事がなくなる。言い換えれば、これら各凸部3、3の先端部同士が当接した場合でも、その当接部には、図2(A)に詳示する様に、上記表面層6が存在する。そこで、上記粘土5を上記表面層6ごと上記ゴムシート4の上面から(薄板を粘土5の下面とゴムシート4の上面との間に差し込む等により)取り上げて、別途十分な耐熱性を有する受板(図示しないが、一般的にはカーボンランダム製或は鉄製の平板。焼成前に移し替え作業を行なうのであれば、木製の平板であっても良い。)の上面に移し替える。そして、上記粘土5及び表面層6を、(必要に応じて十分な乾燥処理後に)上記受板ごと炉中に入れて加熱し、この粘土を焼成する。この加熱温度は、一般的に粘土瓦や陶磁器を焼く場合の温度と同様に、粘土5の種類等に応じて任意に定めるが、例えば1000℃程度とする。尚、加熱温度に関しては、使用する材料、必要とする強度等により、適宜決定する。例えば、粘土を焼成する場合には、600℃以上の温度が採用可能であるし、ファインセラミックを焼成する場合には2000℃程度の温度を採用する場合もある。
【0016】
この様にして上記粘土5を焼成する際に、上記表面層6は燃焼して消滅する。そして、この粘土5を硬化させて、図1(D)に示す様な、皺寄せ板材である陶板2aを完成させた状態では、図2(B)に示す様に、上記各凸部3、3の先端部同士の間に、確実に隙間28が存在する。言い換えれば、上記皺を構成する多数の凹部1が、上記皺寄せ板材の表面部分に確実に開口を有する状態となる。
【0017】
この様な陶板2aを、例えば河川の護岸を覆う為に利用すれば、皺を構成する多数の凹部1の奥部にまで河川の水が出入りする。そして、これら各凹部1の奥部が、微生物の養生及び汚染物質の分解に寄与する結果、汚染物質の分解を効率良く行なう事ができる。又、上記陶板2aを空間の壁板として利用する場合には、上記各凹部1の奥部にまで音波を進入させる事で、これら各凹部1による音波の吸収を効果的に行なわせ、ホール等の空間の音響特性を設計通りにする事が容易になる。
【0018】
次に、図3は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例は、例えば一般家屋の応接室やオーディオルームの如く、意匠を考慮しつつ音響特性を良好にする場合に利用可能な、合成樹脂製の皺寄せ板材の製造方法に関する。
【0019】
この様な本例の場合には、先ず、図3(A)に示す様に、伸縮性を有する支持膜であるゴムシート4の上面と、原材料である合成樹脂7の下面との間に、中間層8を介在させる。上記合成樹脂7としては、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等、撥水性を有し、硬化の過程で粘度が次第に高くなるものを使用する。又、上記中間層8は、圧縮方向の力によって塑性変形しつつ収縮自在で、且つ、後処理により除去可能な材料製とする。この様な中間層8の材料として具体的には、澱粉糊等の各種水溶性の糊、寒天を煮て固めたもの等、水溶性の各種ゲル状物質を使用する。又、上記合成樹脂7の上面は、図3(B)に示す様に、上記中間層8と同様の材料製の表面層6により被覆する。
【0020】
上述の様に、上記ゴムシート4の上面に、中間層8と合成樹脂7と表面層6とを、このゴムシート4を伸長させた状態で積層したならば、この合成樹脂7が硬化する以前に(半硬化状態で)、上記ゴムシート4を収縮させる。この結果、図3(C)に示す様に、上記中間層8が、上面に皺を寄せつつ収縮し、この中間層8の上面に設けられた上記合成樹脂7が、上下両面に皺を寄せつつ収縮する。この様に合成樹脂7の上下両面に形成される皺を構成する凸部の先端部同士が直接当接しない事は、前述した第1例の場合と同様である。そこで、この様に上下両面に皺を寄せた合成樹脂7を、上記中間層8と上記表面層6によりサンドイッチ状に挟んだ状態のまま、硬化させる。
【0021】
この様にして、上下両面に多数の皺を寄せた状態のまま、上記合成樹脂7を硬化させたならば、図3(D)(E)に示す様に、上記中間層8及び表面層6を除去する。この除去作業は、上記合成樹脂7の上下両面に水を吹き付ける事により、或はこの合成樹脂7を熱湯に漬ける(上記中間層8及び表面層6が寒天製の場合)事により行なう。この様にして、上記合成樹脂7の上下両面から上記中間層8及び表面層6を除去すれば、図3(E)に示す様な、両面に多数の皺を寄せた、合成樹脂製の板材9を得られる。この様な板材により、例えば一般家屋の応接室やオーディオルームの内壁面を覆えば、当該部屋の内面の意匠を考慮しつつ、音響特性を良好にできる。
【0022】
尚、単に表面に多数の皺を有する合成樹脂製の板材は、射出成形によっても造る事ができる。但し、その場合には、多数の皺を有する凹部の断面形状を、開口部の幅(直径)が奥部の幅(直径)以上の形状とする必要がある。言い換えれば、本例の様に、凹部の断面形状が巾着状である多数の皺を有する合成樹脂製の板材を、射出成形により造る事はできない。本例の皺寄せ板材の製造方法によれば、合成樹脂製製品の一般的製造方法である射出成形によっては得られない形状を得られる。
【0023】
次に、図4〜5は、請求項5に係る、皺寄せ板材の製造装置の実施の形態の1例を示している。この製造装置は、支持板10と、それぞれがガイド部材である複数本のガイドロッド11、11と、複数のスライダ12、12と、駆動装置13と、支持膜であるゴムシート4とを備える。
【0024】
このうちの支持板10は、円板状で、フレーム14の上端部に支持固定された状態で、水平方向に設けられている。この様な支持板10の円周方向複数個所(図示の例では8個所)にはスリット15、15を、それぞれ放射方向に設けている。尚、上記支持板10の径方向に関して、これら各スリット15、15の外端部はこの支持板10の外周縁には達しておらず、内端部はこの支持板10の中心部にまで達してはいない。
【0025】
又、上記各ガイドロッド11、11は、上記支持板10の上面に、上記各スリット15、15に沿って(これら各スリット15、15の直上位置に)設けられている。この為に、上記支持板10の上面中央部に中央支持ブロック16を、同じく上面外径側端部の複数個所に外側支持ブロック17、17を、それぞれ固設している。上記各ガイドロッド11、11は、それぞれの両端部を上記中央支持ブロック16と上記各外側支持ブロック17、17とに結合支持した状態で、上記支持板10の上面に、水平方向に配置されている。
【0026】
又、上記各スライダ12、12は、上記各ガイドロッド11、11に1個ずつ、これら各ガイドロッド11、11に沿う移動を自在に外嵌支持されている。そして、上記各スライダ12、12を、上記駆動装置13により、上記各ガイドロッド11、11に沿って同期して、移動させる様にしている。
【0027】
本例の場合、上記駆動装置13は、送りねじ機構18を含んで構成している。この送りねじ機構18は、上記支持板10の中心部下方に鉛直方向に配置され、正転、逆転自在なモータ19によりチェン20を介して回転駆動されるねじ杆21に、ナット片22を螺合させて成る。そして、このナット片22に固設され、第二のガイドロッド29、29に案内されて昇降のみ自在とされた昇降板23の上面複数個所に設けた昇降側係止部24、24と、上記各スライダ12、12の下面に設けた水平移動側係止部25、25とに、それぞれ押し引きロッド26、26の両端部を枢支している。
【0028】
この様に構成する上記駆動装置13は、図5に鎖線で示す様に、上記昇降板23を下降させた状態では、上記各押し引きロッド26、26が上記各スライダ12、12を、上記支持板10の中心寄り部分に引き寄せる。これに対して、図5に実線で示す様に、上記昇降板23を上昇させた状態では、上記各押し引きロッド26、26が上記各スライダ12、12を、上記支持板10の外径寄り部分に押し出す。
【0029】
前記ゴムシート4は、その外周縁部複数個所を上記各スライダ12、12に結合されている。この為に例えば、上記ゴムシート4の外周縁部複数個所を、上記各スライダ12、12の上面と抑え板の下面との間で挟持した状態で、これら各抑え板をこれら各スライダ12、12に対しねじ止め固定する。尚、上記支持板10の上方で、円周方向に隣り合うガイドロッド11、11及びスリット15、15同士の間位置には、扇形の補助支持板27、27を設けている。これら各補助支持板27、27はそれぞれ、上記ゴムシート4の下面に当接若しくは近接対向して、このゴムシート4が、自重若しくは粘土5等(図1〜2参照)の重量により下方に垂れ下がる事を防止する。
【0030】
上述の様に構成する、本例の皺寄せ板材の製造装置により、例えば図1(D)に示す様な陶板2aを造る場合には、上記駆動装置13を構成する上記昇降板23を上昇させる。そして、上記各押し引きロッド26、26により上記各スライダ12、12を押し、これら各スライダ12、12を上記各ガイドロッド11、11に沿って、上記支持板10の径方向外方に同期して移動させる。この結果、上記ゴムシート4の外周縁部円周方向複数個所が径方向外方に引っ張られて、このゴムシート4が面方向に拡がる。
【0031】
そこで、この様にゴムシート4を拡げた状態で、このゴムシート4の上面に、粘土5等(例えば図1参照)の未硬化の原材料を載置した後、上記昇降板23を下降させる。そして、上記各押し引きロッド26、26により上記各スライダ12、12を引っ張り、これら各スライダ12、12を上記各ガイドロッド11、11に沿って、上記支持板10の中央部に同期して移動させる。この結果、上記ゴムシート4が面方向に収縮するので、上記粘土5等の原材料の上面に皺を寄せる事ができる。
【0032】
尚、本発明の対象となる皺寄せ板材は、前述した様に、河川の護岸、各種建造物の壁面等を覆う為に利用する他、広い表面積を有する事を利用して、珊瑚の幼生(プラヌラ)或は海藻の胞子の定着板、光触媒担体、触媒或は触媒担体、吸着材、脱臭材、消臭材、徐放性材(各種材料を保持して徐々に放出する為の担体)、蓄光材担体、センサ、放熱材、発熱材、熱交換材、コンデンサ、燃料電池用電極等として利用する事もできる。又、人工骨、電磁波吸収体を得る事もできる。又、表面に金属薄膜をコーティングする事により、光を乱反射させて拡散する板材を構成できる。又、透明若しくは半透明の合成樹脂により造る事で、光拡散板を得る事もできる。更には、表面に存在する多数の凹凸が弾性変形する事を利用して、それぞれが剛体(ヤング率が高い)である1対の物体の接合面同士の間に挟持して、温度変化等に伴ってこの接合面同士の間に作用する応力を低減し、反りや剥離の発生を防止する構造の実現にも利用できる。
【0033】
この様な場合に、上記皺寄せ板材を構成する材料は、その用途によって、モルタル(コンクリート)、ファインセラミック、ガラス粉末、金属粉末、木材粉末(鋸屑)、ゴム、生体材料等を適宜使用する。このうち、ファインセラミック、ガラス粉末、金属粉末、木材粉末に関しては、適宜のバインダ(接着剤)と混練する事によりゲル状(糊状)の物質とした状態で表面に皺を形成してから硬化させる。硬化の為の手段は、燒結、焼成、乾燥、養生等、上記材料やバインダの種類に応じて選択する。尚、上記金属粉末は、適宜のバインダと共に燒結して燒結金属とする事が考えられる。又、木材粉末は、適切な合成樹脂と混合して皺を寄せてから固める事により、優れた吸音性能を有する壁板として利用できる。又、ゴムは、カーボン等の導電材の粉末を含む導電性ゴムを使用する事により、優れた電磁波の吸収特性を有する表装材を得られる。更に、上記生体材料に関しては、広い表面積を利用して、人工腎臓、人工肺等の人工内蔵の実現に寄与できる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の皺寄せ板材の製造方法及び製造装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、各種用途に使用した場合に良好な性能を発揮できる高品質の皺寄せ板材を安定して造れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の実施の形態の第1例を行程順に示す略断面図。
【図2】(A)は図1(C)のX部の、(B)は図1(D)のY部の、それぞれ部分拡大断面図。
【図3】本発明の製造方法の実施の形態の第2例を行程順に示す略断面図。
【図4】本発明の製造装置の実施の形態の1例を示す平面図。
【図5】同じく縦断面図。
【図6】従来技術の問題点を説明する為の、図2(B)と同様の図。
【符号の説明】
1 凹部
2、2a 陶板
3 凸部
4 ゴムシート
5 粘土
6 表面層
7 合成樹脂
8 中間層
9 板材
10 支持板
11 ガイドロッド
12 スライダ
13 駆動装置
14 フレーム
15 スリット
16 中央支持ブロック
17 外側支持ブロック
18 送りねじ機構
19 モータ
20 チェン
21 ねじ杆
22 ナット片
23 昇降板
24 昇降側係止部
25 水平移動側係止部
26 押し引きロッド
27 補助支持板
28 隙間
29 第二のガイドロッド

Claims (5)

  1. 後処理により硬化する原材料を伸縮性を有する支持膜の上面に、この支持膜を伸長した状態で載置すると共に、この原材料の上面を後処理により除去可能な材料製の表面層により覆った後、上記支持膜を収縮させる事により上記原材料の少なくとも上面に皺を寄せてから、この原材料を硬化させると共に、この原材料から上記表面層を除去する事により、少なくとも上面に多数の皺を有する皺寄せ板材とする皺寄せ板材の製造方法。
  2. 原材料が粘土であり、表面層を構成する材料がこの粘土を焼成する温度で燃焼により消滅する物質である、請求項1に記載した皺寄せ板材の製造方法。
  3. 支持膜の上面と原材料の下面との間に、変形しつつ収縮自在で、且つ、後処理により除去可能な材料製の中間層を介在させ、上記原材料を硬化させた後にこの中間層を除去する事により、上下両面に多数の皺を有する皺寄せ板材とする、請求項1に記載した皺寄せ板材の製造方法。
  4. 原材料が合成樹脂であり、表面層及び中間層を構成する材料が、この合成樹脂を侵さない液体により洗浄除去可能な材料であり、この合成樹脂が半硬化状態で支持膜を収縮させる作業を行ない、この合成樹脂が硬化してから上記表面層及び中間層を上記液体により洗い流す、請求項3に記載した皺寄せ板材の製造方法。
  5. 水平方向に設けられた支持板と、この支持板の上面に放射方向に設けられた複数のガイド部材と、これら各ガイド部材に沿う移動を自在とされた複数のスライダと、これら各スライダをこれら各ガイド部材に沿って同期して移動させる為の駆動装置と、これら各スライダにその外周縁部を結合された伸縮性を有する支持膜とを備えた、皺寄せ板材の製造装置。
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