JP2004261230A - 水洗可能な陰唇間パッド - Google Patents

Abstract

【課題】着用中の湿潤状態においては分解されることなく経血の防漏性を有し、使用後に陰唇間パッドをトイレに廃棄した後では、裏面側シートがそのままの形態をとどめる事がなく複数枚のシート片に分散されることによって、浄化槽の機能に障害を与えない水洗適性を兼ね備えた陰唇間パッドを提供する。
【解決手段】液透過性の表面側シートと液不透過性の裏面側シートとの間に吸収体を介してなる陰唇間パッドにおいて、前記裏面側シートは、複数枚のシート片から構成され、隣接する該シート片同士が互いに重なり合って形成される長手方向の重なり部および／または短手方向の重なり部を有するものとし、前記長手方向の重なり部は、身体面側に位置する前記シート片の端部が長手方向中心線上から離れた位置に配置されるようにして重ね合わされたものとする。
【選択図】 図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、月経時、もしくは失禁防御のため、またはこれら両方のために女性着用者によって陰唇間に装着される陰唇間パッドに関し、更に詳しくは、浄化槽の機能に障害を与えない水洗適性を兼ね備えた水洗可能な陰唇間パッドに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、一般的に、水洗可能な吸収性物品に使用される裏面側シートは、使用中の防漏性と水洗適正を兼ね備えるために、例えば、特許文献１に記載の陰唇間パッドにおいて、「生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドの構成材料」で述べられているように、大きく２種類に大別できる。一種類目は、ポリプチレンサクシネートやポリ乳酸などの生分解性高分子を主体とした生分解性シートである。もう一種類は、ポリビニルアルコール、アルキルセルロースなどの水崩壊性高分子を主体として構成した水崩壊性シートである。
【０００３】
【特許文献１】
国際公開第０２／０９４１４８号パンフレット
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水洗可能な吸収性物品に使用される裏面側シートがポリプチレンサクシネートやポリ乳酸などの生分解性高分子を主体として構成した生分解性シートとした場合には、以下の不都合があった。
【０００５】
日本の浄化槽は大きく２タイプあり、小型合併処理浄化槽と単独処理浄化槽である。小型合併処理浄化槽は、第一嫌気槽、第二嫌気槽、好気槽、から構成される。第一もしくは第二嫌気槽には、好気槽さらには下水道を固形物によって詰まらせないようにするために、濾材が充填されている。濾材を通過する生分解性の固形物であれば、その後、微生物によって分解されるために浄化槽、更には自然界に負荷を与えることはない。しかし、固形物が濾材に絡みついて滞留してしまい、微生物の分解速度より不純物の廃棄量が上回ってしまうと、濾材に固形物が詰まってしまう、いわゆる目詰まりが発生し、濾材が閉塞状態になってしまい浄化槽の機能に障害を与えるおそれがある。
【０００６】
また、単独処理浄化槽で主に使用されている全曝気式浄化槽は、曝気槽内を好気性に保ち微生物を活性化させるために空気を曝露する散気管が設置されている。この散気管に生分解性の固形物が巻きつき滞留してしまうと、空気の曝気量が減少してしまうために微生物の活性が抑えられ、そのため固形物の分解速度が低下してしまう、更には散気管が暴発することで浄化槽の機能に障害を与えるおそれがある。
【０００７】
その結果、着用者ばかりでなく場合によっては多くの生活者までもがトイレを使用することができなくなり、不便性を多大に与えることになる。また、家庭用の場合には浄化槽内のつまりを除去するための修繕費用が必要となり、使用済みの製品を第三者に見られるばかりか、経済的にも負担を与えることとなる。
【０００８】
液不透過性の裏面側シートが使用された市販の吸収性物品の中で、一番サイズがコンパクトであるのは、一般的に陰唇間パッドである。ＰＧ社が米国でテスト販売を行った、陰唇間製品である商品名Ｅｎｖｉｖｅ（Ｍｏｄｅｒａｔｅ）に使用されている裏面側シートは、ポリプチレンサクシネートを主体とした生分解性シートであり、サイズは長さ寸法９０ｍｍ、横寸法５０ｍｍの楕円形で構成されている。生分解性シートを裏面側シートとして使用することにより、着用者の体液によって湿潤状態が高まったとしても確実に防漏し、体液のモレを防止することができる。
【０００９】
しかし、このＥｎｖｉｖｅ（Ｍ）を模擬的に再現した小型合併処理浄化槽、単独処理浄化槽（詳細は後述する）を有するそれぞれのトイレに廃棄したところ、市販されている形態で一番サイズがコンパクトであっても小型合併処理浄化槽の濾材、または単独処理浄化槽の散気管に滞留してしまい、浄化槽の機能に障害を発生させる危険性が高いことが確認された。
【００１０】
一方、ポリビニルアルコールなどの水崩壊性高分子を主体として構成した水崩壊性シートを裏面側シートとして使用すると、トイレの便器、配管内、さらには浄化槽内の水と接することで、水崩壊性シートが溶解もしくは膨潤し分散するため、浄化槽の機能に障害を与えにくい。しかし、着用者が着用中における湿潤状態では溶解もしくは分散は生じないが、使用後においてトイレに廃棄した際に水中での湿潤状態では溶解・分散が行われ易いというように溶解・分散度合いを調整することが非常に困難である。
【００１１】
更に、着用中における防漏性を得るために水崩壊性の溶解・分解速度を遅くしようとする場合には、水崩壊性高分子の重合度、鹸化度を高める、膜厚を高める、更には添加剤を混合するなどが挙げられるが、重合度、鹸化度、膜厚を高くするとシートの剛直感も高まり着用者に不快感を与えてしまうばかりでなく、水崩壊性高分子の溶解・分解速度が落ちるため、浄化槽の濾材、散気管への滞留時間が長くなってしまう。また、添加剤の種類によっては浄化槽内の微生物活性へ影響を与えてしまうため、浄化槽内の機能に障害が発生するおそれがあった。
【００１２】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用中の湿潤状態においては分解されることなく経血の防漏性を有し、使用後に陰唇間パッドをトイレに廃棄した後では、裏面側シートがそのままの形態をとどめる事がなく複数枚のシート片に分散することによって、浄化槽の機能に障害を与えない水洗適性を兼ね備えた水洗可能な陰唇間パッドを提供することにある。
【００１３】
液透過性表面シートと液不透過性の裏面側シートとの間に吸収体を介してなる陰唇間パッドにおいて、裏面側シートを複数枚の隣接し合うシート片同士が互いに重なり合うように配置させることにより、本発明を完成するに至った。
【００１４】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【００１５】
（１） 着用時に身体側となる液透過性の表面側シートと反身体側となる液不透過性の裏面側シートとの間に吸収体を介してなる、長手方向と短手方向を有する陰唇間パッドにおいて、前記裏面側シートに水壊性継ぎ目部分を有することを特徴とする水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００１６】
本発明によれば、裏面側シートに形成されている継ぎ目部分が水壊性であるので、陰唇間パッドが使用後にトイレに廃棄された場合、水によって継ぎ目部分で分散されて小片となり、浄化槽の濾材、または散気管に滞留することがないので、浄化槽の機能に障害を発生させる危険性がないことになる。
【００１７】
ここで、反身体側とは、身体と接する面の反対側であって、装着した際に衣服に向く側を意味する。また、水壊性とは、水によって容易に崩壊する性質を意味する。また、水洗可能とは、使用後にトイレに廃棄しても浄化槽の機能等に支障をきたさず、水洗廃棄が出来ることを意味する。また、水壊性継ぎ目部分は、本発明では後述する複数枚のシート片を重ね合わせた重なり部としているが、その他に例えば、水壊性接着剤でシート片同士をジョイントしたジョイント部や水の水圧で容易に破壊される程度のミシン目状のスリットが施されている等であってもよい。
【００１８】
（２） 前記裏面側シートは、複数枚のシート片から構成され、隣接する該シート片同士が互いに重なり合って形成される長手方向重なり部および／または短手方向重なり部を有するものであること特徴とする（１）に記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００１９】
本発明によれば、裏面側シートは複数枚のシート片が長手方向および／または短手方向に重なり合って構成されているので、容易に個々のシート片に分解されることになる。このため、使用後にトイレに廃棄しても、浄化槽の濾材、または散気管に滞留することがないので、浄化槽の機能に障害を発生させる危険性がないことになる。
【００２０】
ここで、長手方向重なり部とは、隣り合うシート片同士を重ね合わせた際に、裏面材シートの長手方向に向く重なり部のことを意味し、短手方向重なり部とは、短手方向に向く重なり部を意味する。
【００２１】
（３） 前記裏面側シートは、前記重なり部における各シート片の間において、接着剤が塗布されており、前記重なり部の少なくとも前記身体面側に位置する前記シート片によって、該接着剤が被覆されているものであることを特徴とする（１）または（２）に記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００２２】
本発明によれば、水崩壊性の接着剤により重なり部の各シート片間の気密性が高まり、着用中に経血がシート片間に入り込み難くなる。また、水崩壊性の接着剤が、重なり部における身体面側に位置するシート片によって被覆されているため、着用中に経血が水崩壊性の接着剤に接触しないので、裏面側シートが分離するおそれがない。
【００２３】
（４） 前記長手方向重なり部は、身体面側に位置する前記シート片の端部が長手方向中心線上から離れた位置に配置されるようにして重ね合わされたものであることを特徴とする（２）に記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００２４】
本発明によれば、排泄された経血は、吸収体を介して、折り畳まれて装着された陰唇間パッドの折り畳みの外方向に流れて裏面側シートと接触することとなるが、重なり部における身体面側に位置するシート片の端部は、陰唇間パッドの折り畳みの中心線から離れた位置に配置されているため、陰唇間パッドを折り畳んで装着した際に、シート片の端部が折り畳みの外方向に向くことになる。このため、折り畳みの外方向に流れる経血に対して、シート片の端部が経血を受け止める方向（経血の流れに対向する方向）に向いていないため、シート片の重なり部には経血が入り込む隙間が生じないことになり、経血等が漏れるのを防止できる。
【００２５】
また、使用後にトイレに廃棄されると、多量の水がシート片の重なり部においてあらゆる方向から各シート片の間に入り込めるため、裏面側シートはそのままの形態をとどめる事がなく、複数枚のシート片に分散することになる。
【００２６】
ここで、折り畳みの外方向とは、陰唇間パッドを長手方向のほぼ中心線で裏面側シート同士が向き合うように折り畳まれた際に、陰唇間パッドの短手方向端縁同士が向き合う方向であり、陰唇間に装着された際に、陰唇の前庭床側とは反対側の方向を意味する。
【００２７】
（５） 前記短手方向重なり部は、前記陰唇間パッドの長手方向の後方側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであることを特徴とする（２）に記載の陰唇間パッドを提供する。
【００２８】
本発明によれば、短手方向重なり部における身体面側のシート片の端部は、陰唇間パッドの前方を向くこととなる。経血は、粘液や粘膜の濡れ性により膣口から前方へ伝い流れ易いが、短手方向重なり部が少なくとも１つ以上形成され、陰唇間パッドの後方側に位置するシート片が身体面側になるように配置されていることにより、前方へ流れる経血に対してシート片の端部が対向しないことになる。このため、シート片の重なり部には経血が入り込む隙間が生じないことになり、経血等が重なり部から漏れるのを防止できる。
【００２９】
ここで、陰唇間パッドの長手方向の後方側とは、陰唇間パッドが長手方向のほぼ中心線で裏面側シート同士が向き合うようにして折り畳まれて陰唇間に装着された場合に、膣口と対向する側の方向をいう。
【００３０】
（６） 前記裏面側シートは、前記短手方向重なり部を少なくとも１つ以上形成して長手方向中心線上に沿って配置されるシート片と、該シート片を挟んで前記長手方向重なり部を少なくとも１つ以上形成して短手方向に配置されるシート片と、からなり、前記長手方向重なり部は、長手方向中心線側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであり、前記短手方向重なり部は、前記陰唇間パッドの長手方向の後方側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであることを特徴とする（１）から（３）いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００３１】
本発明によれば、裏面側シートの短手方向は、長手方向中心線を跨いで配置されるシート片と、そのシート片の両側縁で重なり合うシート片からなる少なくとも３列以上で構成され、また、長手方向は、少なくとも２列以上で構成されることとなるため、使用後トイレに廃棄されて分散するシート片は、小さいサイズとなる。
【００３２】
また、前庭床と対向する長手方向中心線を跨ぐように長手方向重なり部が形成されていない（すなわち中心線上に重なり部が形成されていない）ため、重なり部はシート片の端部が経血を受け止める方向に向いていないことになり、上記（４）で述べたように、シート片の重なり部には経血が入り込む隙間が生じないことになり、経血等が漏れるのを防止できる。また、シート片が２重になる重なり部分が前庭床付近に存在しないため、シート片の重なりに起因する裏面側シートの剛性による異物感を着用者に与えるおそれがないことになる。また、短手方向重なり部は、陰唇間パッドの長手方向の後方側に位置するシート片が身体面側になるよう配置されて重ね合わされているので、上記（５）で述べたように、前方へ流れる経血に対してシート片の端部が対向しないことになり、シート片の重なり部には経血が入り込む隙間が生じないことになるため、経血等が重なり部から漏れるのを防止できる。
【００３３】
（７） 前記裏面側シートは、その反身体面側に、前記陰唇間パッドの長手方向の前方側から指を挿入するためのミニシート片を備えることを特徴とする（１）から（６）いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００３４】
本発明によれば、陰唇間への装着時には、裏面側シートとミニシート片との間に指を挿入し、陰唇間パッドの反身体面側に指を接触させることで、指の剛性により陰唇を押し開けることができるため、前庭床にまで確実に陰唇間パッドを装着でき、前庭床もしくは陰唇内壁と陰唇間パッドの身体面側との間に隙間を発生させないことが可能となる。
【００３５】
尚、前方から裏面側シートとミニシート片との間に指を挿入する際、短手方向重なり部における反身体面側のシート片の端部は、後方を向くことになるため、挿入される指に対して、重なり部の段差によって抵抗を与えることがないため、スムーズに指を挿入することができ、挿入中に重なり部が破損して、着用中に破損部から経血が漏れてしまうおそれはない。
【００３６】
（８） 前記裏面側シートは、少なくとも反身体面側に凹凸が形成されたものであることを特徴とする（１）から（７）いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッドを提供する。
【００３７】
本発明によれば、着用中は裏面側シート同士が向き合うように装着されていた陰唇間パッドが、使用後トイレに廃棄されると、向き合っていた凹凸が形成された裏面側シートの間の隙間から、容易に水が入り込めるようになる。これによって、折り畳まれていた陰唇間パッドが水中で瞬時に開くことになり、裏面側シートの反身体面側がほぼ均一に水と接触することになり、シート片の重なり部も反身体面側から水が入り込み易くなるので、裏面側シートは容易に複数枚のシート片に分散することになる。
【００３８】
更に、裏面側シート同士が向き合って着用されるため、裏面側シートの反身体面側が凹凸状であると、お互いの接触面積が低下するため摩擦抵抗も下がる。それにより、着用者の行動変化、更に、湿潤状態において裏面側シート同士が貼りつき難くなるため、折り畳まれて向き合った裏面側シートがお互いの挙動変化を妨げず、陰唇内壁と陰唇間パッドの身体面側との密着性を高め続けることができる。
【００３９】
（９） 陰唇間パッドを内包する個別包装体であって、該個別包装体を構成する包装シートは、複数枚のシート片から構成され、該シート片同士が互いに重なり合って形成される長手方向重なり部および／または短手方向重なり部を有するものであることを特徴とする水洗可能な個別包装体を提供する。
【００４０】
本発明によれば、使用後にトイレに廃棄されると、多量の水があらゆる方向から重なり部から各シート片の間に入り込めるため、包装体を構成する包装シートはそのままの形態をとどめることがなく、分解されて複数枚のシート片に分散される。
【００４１】
（１０） 前記包装シートは、液不透過性のシートであることを特徴とする（９）に記載の水洗可能な個別包装体を提供する。
【００４２】
本発明によれば、外部からの水（湿気）の侵入を確実に遮断できることになる。このため、陰唇間パッドを携帯している時に、誤って個別包装体に水をかけてしまったり、または陰唇間パッドを取り出す際に、誤ってトイレの床に落としてしまったりしても水（湿気）の侵入を遮断できるので、内包されている陰唇間パッドが濡れたり汚れたりせず衛生面で優れる。
【００４３】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の陰唇間パッドの一実施形態について、図を参照しつつ説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【００４４】
本実施形態の陰唇間パッドの基本構成について説明する。図１は本発明に係る陰唇間パッドの第１の実施形態を示す図で、（ａ）は斜視図であり、（ｂ）は（ａ）中のＸ−Ｘ線断面図であり、図２は第１の実施形態の陰唇間パッドに使用の裏面側シートを示す斜視図であり、図３は第１の実施形態の陰唇間パッドが陰唇間に装着された状態をあらわす図であり、図４は発明に係る陰唇間パッドの第２の実施形態を示す断面図であり、図５は発明に係る陰唇間パッドの第３の実施形態を示す断面図である。
【００４５】
本発明に係る第１の実施形態の陰唇間パッドは、図１に示すように、着用時に身体側となる液透過性の表面側シート２と、反身体側となる液不透過性の裏面側シート３と、が体液を吸収する吸収体４を内包した構成を有し、吸収体４の周縁部付近の表面側シート２と裏面側シート３を少なくとも部分的に一体化させることで、吸収体４を内包してなる平面視ほぼ楕円形状の長手方向と短手方向を有するものである。
【００４６】
裏面側シート３は、図２に示すように、２枚のシート片３ａ，３ｂからなり、長手方向中心線Ｌ−Ｌ’上をまたぐように長手方向重なり部Ｐが設けられている。長手方向重なり部Ｐは、隣接し合うシート片３ａ，３ｂ同士が互いに、１〜２５ｍｍ、好ましくは５〜１５ｍｍの範囲で重なり合って形成されている。重なり合う領域が１ｍｍより小さいと、着用者の行動変化によってシート片３ａ，３ｂ同士が離間してしまうことで隙間が発生し、経血が流出してしまう危険性がある。一方、２５ｍｍより大きいと、分散し難くなるため、小型合併処理浄化槽における濾材、単独処理浄化槽における散気管に滞留し易くなり、浄化槽の機能に障害を発生させる危険性が高くなる。更に、シート片３ａ，３ｂが２重になる重なり部が過剰に存在することとなり、異物感を着用者に与えることになる。
【００４７】
尚、裏面側シート３を構成する一枚あたりのシート片３ａ，３ｂの大きさは、小型合併処理浄化槽における濾材、単独処理浄化槽における散気管への滞留を起こり難くするため、長手寸法×左右（幅）寸法で６０×６０ｍｍ以下、好ましくは４５×４５ｍｍ以下、より好ましくは３０×３０ｍｍ以下である。尚、本実施形態では、２枚のシート片３ａ，３ｂとしたが、後述するように、複数枚の隣接する３ａ，３ｂ同士の重なり部は、長手方向および短手方向（幅方向）に形成されていても良いため、一枚あたりのシート片３ａ，３ｂの大きさは上記の範囲から適宜選定される。
【００４８】
また、裏面側シート３には、使用後トイレに廃棄された時に、着用中に折り畳まれて向き合っていた裏面側シート３の間に容易に水が入り込めるよう、反身体面側に凹凸状の形状が施されていてもよい。この凹凸状の形状は凹凸状のエンボス加工によって施される、または不織布などを裏面側シート３の反身体面側に設けて、その繊維の交絡によって凹凸状が形成されていてもよい。尚、不織布繊維による場合には、不織布繊維が親水性であると、トイレに廃棄後、速やかにトイレの水を吸い上げ、重なり部におけるシート片３ａ，３ｂの間に水が入り込むことができるため、裏面側シート３を容易に分離されることになるので好ましい。
【００４９】
尚、使用後陰唇間パッド１をトイレに廃棄した際、シート片３ａ，３ｂ同士の重なり部において、シート片３ａ，３ｂ同士の間に反身体面側から容易に水が入り込めるようにするために、上記のようにシート片３ａ，３ｂ同士の間には親水性繊維を設ける、凹凸を形成する他に、重なり部Ｐにおける反身体面側のシート片３ａに、ミシン目状のスリット加工を施してもよい。または、重なり部Ｐにおける反身体面側の隙間を大きくするためにシート片３ａ端部が折り返されていてもよい。また、シート片３ａ，３ｂ間に接着剤５が塗布されている場合には、重なり部Ｐにおける反身体面側のシート片３ａによって、接着剤５の端面を被覆しない等が挙げられる。
【００５０】
更に、トイレに廃棄後、トイレの排水圧、もしくは配管及び浄化槽内での水圧をより受け易くし、部分的に一体化されていたシート片３ａ，３ｂ同士が、その衝撃により容易に分離するための別の様態として、裏面側シート３の重なり部Ｐに合わせて、吸収体４を分離するか、もしくは吸収体４にミシン目状のスリット加工を施して、各々の吸収体４とシート片３ａ，３ｂが一体化してあってもよい。これによって、水を吸収した吸収体４による重量および表面積の増加によって、浄化槽内で発生している泡（気泡）により浮力が与えられたとしても、裏面側シート３が浄化槽内の水面に浮遊してしまうことも防止できる。
【００５１】
また、この陰唇間パッド１は、シート片３ａ，３ｂは、吸収体４の周縁部付近の重なり部（陰唇間パッド１の長手方向の後方端および前方端）において一体化されている。つまり、長手方向中心線Ｌ−Ｌ’上の重なり部においては、シート片３ａ，３ｂは完全に離間可能である。これによって、トイレに廃棄した後では、シート片３ａ，３ｂは吸収体４の周縁部付近の重なり部で一体化されただけであるため、容易に分離でき、裏面側シート３はそのままの形態をとどめることなく、浄化槽への負荷を与えにくいものとなる。更に、着用者の行動変化による衝撃は、裏面側シート３がシート片３ａ，３ｂに離間されていることで緩衝でき、着用者へ裏面側シート３の剛性による異物感を与えにくいものとなっている。
【００５２】
また、本実施形態の陰唇間パッド１の大きさは、長手方向において４０〜１８０ｍｍ、好ましくは７０〜１３０ｍｍの範囲である。４０ｍｍより小さいと、着用者の個人差によっては、前庭床の長手方向を全て被覆することができないことにより、経血モレが発生してしまう危険性があり、一方、１８０ｍｍより大きいと、陰唇間からはみ出る領域が大きすぎ、外陰部などと容易に接触してしまい、陰唇間パッド１が陰唇間から脱落してしまう危険性が高くなってしまうので好ましくない。また、陰唇間に装着される前の広げた状態での短手方向（幅方向）の寸法は、２５〜１００ｍｍ、好ましくは４０〜８０ｍｍの範囲である。２５ｍｍより小さいと、着用者の個人差によっては、陰唇内壁を全て被覆することができないことにより、経血モレが発生してしまう危険性があり、一方、１００ｍｍより大きいと、陰唇間からはみ出る領域が大きすぎ、外陰部などと容易に接触してしまい、陰唇間パッド１が陰唇間から脱落してしまう危険性が高まってしまう。また、その形状も、平面視で略楕円形状の形態としているが、長方形型、瓢箪型、雫型等の陰唇間に挟んで保持することが可能な形態であれば特に限定されるものではない。また、本実施形態の陰唇間パッド１は平面状としているが、断面形状が矩形状のもの、断面形状がほぼＶ字状に折れ曲がったもの等の陰唇間に挟んで保持することが可能な形態であれば特に限定されるものではない。
【００５３】
また、吸収体４の周縁部付近の表面側シート２と裏面側シート３を少なくとも部分的に一体化させるには、接着剤やエンボス加工を単独、もしくは組み合わせて使用する。エンボス加工は、熱融着によって一体化されていてもよいが、浄化槽内での表面側シート２と裏面側シート３との分離を速やかに行うためには、噛み込みパターンによって擬似的に一体化させたものが好ましい。更に、陰唇間パッド１の後方および前方に位置するシート片３ａ，３ｂ同士の重なり部においては、シート片３ａ，３ｂ同士の分離を速やかに行うために、エンボス加工が施されていなくてもよい。更に、着用中に経血によって、シート片３ａ，３ｂが完全に分離されて経血の漏れが発生させないために、裏面側シート３の大きさを表面側シート２の大きさよりも一回り大きくし、かつ、裏面側シート３のみがはみ出した領域でのシート片同士３ａ，３ｂの長手方向重なり部Ｐに、接着剤５が塗布されていてもよい。これにより、裏面側シート３のみがはみ出した領域には、経血を吸収している表面側シート２および吸収体４が接触しないため、着用中の経血によってシート片３ａ，３ｂが完全に分離してしまうことを防止することできる。
【００５４】
この陰唇間パッド１は、裏面側シート３が向き合うように、ほぼ長手方向中心線で折り畳まれて陰唇間に装着されるが、装着された状態では図３に示すように、重なり部Ｐにおいて、シート片３ａの端部は別のシート片３ｂに対して身体面側になっており、陰唇の前庭床とは反対の方向（折り畳みの外方）に向くことになる。すなわち、シート片３ａの端部が経血を受け止める方向（経血の流れに対向する方向）に向いていないため、経血が２枚のシート片３ａ，３ｂの重なり部Ｐに入り込む隙間を与えないことになる。このため、経血が多量に流出している前庭床付近の裏面側シート３から経血が漏れ難いことになる。
【００５５】
更に、裏面側シート３の各シート片３ａ，３ｂは、長手方向中心線上の重なり部Ｐにおいて完全に離間可能であるため、着用中その隙間から経血が流出してしまう危険性がある。それを防止するために、裏面側シート３と吸収体４との間へ、裏面側シート３の重なり部Ｐの端部をまたぐように、接着剤５が塗布されていてもよい。また、図４に示すように、重なり部Ｐにおける各シート片３ａ，３ｂの間にも、接着剤５が塗布されており、重なり部Ｐの少なくとも身体面側に位置するシート片３ａによって、接着剤５の端面（厚み方向）が被覆されていてもよい。これによって、接着剤５により各シート片３ａ，３ｂ間の気密性が高まるため、着用中に経血がシート片３ａ，３ｂ間に入り込みにくくなり、更に、重なり部Ｐにおける身体面側のシート片３ａによって、接着剤５の端面が被覆されているため、経血が接着剤５に接触しにくくなる。このため、着用中に重なり部Ｐにおける隙間から経血が流出してしまう危険性を防止できる。この接着剤５の塗布は目付を１〜２０ｇ／ｍ^２、好ましくは３〜１０ｇ／ｍ^２の範囲で、塗布パターンを波状、Ω状、スパイラル状、線状、ドット状など、重り部Ｐの端部を部分的にまたぐように塗布する、このように、部分的にシート片３ａ，３ｂ間が一体化されていれば、離間可能であるため、浄化槽中で複数枚のシート片３ａ，３ｂに分散され易いと共に着用者へ異物感を与えにくいものとなる。
【００５６】
また、図５に示すように、陰唇間パッド１の裏面側に前方側から指を挿入することができるようにしたミニシート片６を設けてもよい。これにより、陰唇間への装着時には、裏面側シート３とミニシート片６との間に指を挿入し、陰唇間パッド１の反身体面側に指を接触させることで、指の剛性により陰唇を押し開けることができるため、前庭床にまで確実に陰唇間パッド１を装着でき、前庭床もしくは陰唇内壁と陰唇間パッド１の身体面側との間に隙間を発生させないことが可能となる。
【００５７】
次に、陰唇間パッド１を構成する材料について説明する。
【００５８】
裏面側シート３の材料としては、ポリプチレンサクシネートやポリ乳酸などの生分解性高分子を主体として構成した生分解性シートや、ポリビニルアルコール、アルキルセルロースなどの水崩壊性高分子を主体として構成した水崩壊性シートが挙げられる。また、使用後に陰唇間パッド１をトイレに廃棄した際にシート片３ａ，３ｂ同士の重なり部において、シート片３ａ，３ｂ同士の間に反身体面側から容易に水が入り込めるようにするため、また、廃棄した際にトイレの水面に浮いてしまうことを防止するために、液不透過性の裏面側シート３の反身体面側には、親水性不織布が配置されていることが好ましい。
【００５９】
具体的には、ＰＶＡフィルム、ＰＶＡフィルムの片面若しくは両面あるいは部分的にシリコンなどにより撥水処理を施したフィルムシート、シリコンを混合したＰＶＡフィルム、澱粉フィルム、ポリ乳酸、またはポリプチレンサクシネート等の加水分解による所謂生分解性樹脂を原料としたフィルムが挙げられるが、上記したように水との濡れ性などを考慮すると、これらフィルムにティッシュ等の親水性繊維を張りあわせる、もしくはラミネート加工したラミネート紙が好適である。更に、親水性繊維にサイズ剤などにより撥水処理を施し、その混合比によって撥水度を調整することで、着用中の防漏性と廃棄時の水との濡れ性とを兼ね備えてもよい。また、必要に応じて無機顔料を０．１〜５％の範囲で混合して着色を施してもよい。
【００６０】
この親水性不織布の具体的な構成例としては、繊維長さが１〜３８ｍｍの範囲、より好ましくは２〜２０ｍｍの範囲で、繊度が１．１〜３．３ｄｔｅｘの範囲であるレーヨン繊維、アセテートレーヨン繊維、コットン繊維、パルプ繊維、合成繊維から選ばれる繊維を所定量混合して、目付が１０〜６０ｇ／ｍ^２の範囲に調整された湿式スパンレース不織布である。これらの不織布に液不透過性の樹脂をラミネート加工、またはフィルムを貼り合わせたシートが裏面側シート３として用いられる。不織布に貼り合わせるフィルムの目付は１０〜４０ｇ／ｍ^２であり、エンボス加工もしくは水崩壊性の接着剤により接合され、接合率は１〜３０％の範囲が好ましい。また、ラミネート加工する樹脂は、厚みが１０〜４０μｍの範囲が好ましい。
【００６１】
表面側シート２には、液親水性であり、肌に刺激を与えない材料が使用される。このようなものとしては、メルトブローン、スパンボンド、スルーエアー、ポイントボンド、ニードルパンチ、湿式スパンレース等の製造方法から得られる不織布が使用できる。より好ましくは、パルプ、コットン、レーヨン、アセテートの他、ポリ乳酸、ポリプチレンサクシネートなどの生分解性樹脂を原料とした繊維からなるものが好ましい。
【００６２】
吸収体４は、液体（体液）を吸収保持が可能であればよいが、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。また、用いられる材料としては、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、繊維性高分子吸収体、合成繊維を単独またはこれらを混合したものが使用できる。なお、高分子吸収材料の生分解性等を考慮すると、カルボキシメチルセルロース繊維を使用するのが好ましい。
【００６３】
これらをシート状若しくは粉状に加工して使用してもよく、使用方法に限定されるものではない。
【００６４】
ミニシート片６に使用できる材料としては、ポリ乳酸、ポリプチレンサクシネート等の生分解性材料を原料としたフィルム、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等、またはＰＶＡ、ＣＭＣ等の水溶性材料を原料としたフィルム、不織布等、並びにセルロース繊維、再生セルロース繊維等を主体とした水分散性ティッシュ、スパンレース不織布等が挙げられる。
【００６５】
より好ましくは、生分解性材料を主体としたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布であって、太さが０．１〜３．３ｄｔｅｘの範囲、目付が１５〜４０ｇ／ｍ^２の範囲に調整されたシートであって、機械的コルゲート加工を施すことにより得られる。
【００６６】
また、接着剤５としては、接着剤５によって一体化されるシート片３ａ，３ｂの材料によって使い分けることができる。例えば、裏面側シート３がポリビニルアルコールなどの水崩壊性材料からなる場合には、シート片３ａ，３ｂ間に塗布される接着剤５として、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体（ＳＥＢＳ）、スチレン−ブタジェン−スチレンブロック共重合体（ＳＢＳ）、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体（ＳＩＳ）等の合成ゴムを主体とした感圧接着剤やＥＶＡ等の合成ゴムを主体とした感熱型接着剤であっても、塗工パターンがドット状など間欠パターンであれば浄化槽への負荷は与え難いことになる。これは、接着剤５が水によって物性が変化し難いタイプの感圧型接着剤や感熱型接着剤であっても、接着剤５によって一体化されるシート材料が水によって崩壊するので、接着剤５そのものを維持することなく浄化槽中で分散できることになるからである。
【００６７】
また、上記以外の接着剤５の例としては、水によって物性が変化し易いタイプの感水性接着剤や、水によって物性が変化し難いタイプの生分解性接着剤が挙げられるが、このような接着剤を使用する場合は、裏面側シート３が水崩壊性材料であっても生分解性材料であっても構わない。また、接着剤５の塗工パターンも限定されるものではない。具体的には、感水性接着剤としては、水溶性高分子からなるポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等、または、水膨潤性高分子からなるポリビニルアセテートやポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、生分解性接着剤としては、デンプン、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、ジェランガム等が挙げられる。また、これらを架橋させてゲル状にして使用しても良い。
【００６８】
次に、裏面側シートの第２の実施形態として、図６に示すように４枚のシート片で形成されたものについて説明する。尚、図６は裏面側シートの第２の実施形態を示す斜視図である。
【００６９】
この裏面側シート３Ａは、第１の実施形態の裏面側シート３に短手方向重なり部Ｐ’を形成して４枚のシート片３ａ，３ａ’，３ｂ，３ｂ’で構成されたものである。長手方向重なり部Ｐは第１の実施形態と同様に長手方向中心線Ｌ−Ｌ’上をまたぐようにして設けられている。また、短手方向（左右方向）の重なり部Ｐ’は、後方側に位置するシート片３ａ，３ｂの端部が前方側に位置するシート片３ａ’，３ｂ’に身体面側で重なり合うように配置されている。そして、重なり部Ｐ，Ｐ’は、隣接し合うシート片３ａ，３ａ’，３ｂ，３ｂ’が互いに、１〜２５ｍｍ、好ましくは５〜１５ｍｍの範囲で重なり合うものである。
【００７０】
このように、短手方向（左右方向）の重なり部Ｐ’において、身体面側のシート片３ａ，３ｂの端部が前方を向くこととなる。経血は、粘液や粘膜の濡れ性により膣口から前方へ伝い流れ易いが、短手方向（左右方向）の重なり部Ｐ’を膣口と当接する位置より前方（陰核側）に備えることにより、前方への経血の流れに対してシート片３ａ’，３ｂ’の端部が対向しないので、短手方向重なり部Ｐ’に隙間が生ずることがないため、短手方向重なり部Ｐ’から経血が漏れるのを防止できることになる。
【００７１】
更に、図示していないが、陰唇間に陰唇間パッド１を装着し易いように図５で示すようにミニシート片６を裏面側シート３Ａの反身体側に配設した場合において、前方から裏面側シート３Ａとミニシート片との間に指を挿入する際、短手方向（左右方向）の重なり部Ｐ’におけるシート片３ａ’，３ｂ’の端部は、裏面側シート３Ａの反身体面側では後方を向くことになるため、挿入される指に対して、短手方向重なり部Ｐ’の段差によって抵抗を与えることがないため、スムーズに指を挿入することができ、挿入する際に短手方向重なり部Ｐ’が破損されて、着用中にこの破損部から経血が漏れてしまうことがない。
【００７２】
次に、裏面側シートの第３の実施形態として、図７に示すように９枚のシート片で形成されたものについて説明する。尚、図８は図７に示す第３の実施形態の裏面側シートを用いた陰唇間パッド１が陰唇間に装着された状態をあらわす図である。
【００７３】
この裏面側シート３Ｂは、図７で示すように、前庭床と対向する長手方向中心線Ｌ−Ｌ’を跨ぐようにしてシート片３ａ，３ａ’，３ａ”が長手方向に配置され、後方側に位置するシート片が身体面側になるようにして、隣接するシート片の端部が重ね合わされて短手方向重なり部Ｐ’が形成されている。そして、その短手方向の左右にはシート片３ａ，３ａ’，３ａ”の左右端部が身体面側になるようにして、シート片３ｂ，３ｂ’，３ｂ”および３ｃ，３ｃ’，３ｃ”が長手方向に配置されて長手方向重なり部Ｐが形成され、長手方向中心線側に位置するシート片が身体面側になるようにして、隣接するシート片の端部が重ね合わされている。このため、短手方向重なり部Ｐ’における身体面側のシート片の端部は前方を向くことになり、短手方向重なり部Ｐ’を膣口と対抗する位置より前方（陰核側）に備えることにより、前方へ向かう経血に対して重なり部における隙間を与えることがないため、経血を流出させ難くなる。
【００７４】
また、長手方向重なり部Ｐは、前庭床と対向する長手方向中心線をまたぐような重なり部が設けられていないことにより、図８で示すように、裏面側シート３Ｂを使用した陰唇間パッド１Ｃが２つに折り畳まれて陰唇間に装着された場合、前庭床付近の裏面側シート３Ｂには、シート片の長手方向重なり部Ｐが存在しないこととなり、また、この重なり部Ｐにおける身体面側のシート片の端部は経血の流れに対向する方向に向いていないため、経血が多量に流出している前庭床付近の裏面側シート３Ｂから経血がモレ難くなる。また、シート片が２重になる重なり部Ｐが前庭床付近に存在しないため、裏面側シート３Ｂの剛性による異物感を与え難くできる。
【００７５】
以上複数枚のシート片を隣り合うようにして重ね合わせて一枚の裏面側シートとしているものについて説明したが、例えば、図９に示すように、一枚のシート片３ａにおいて、シート片３ａの左右方向（短手方向）を三等分する位置に、長手方向へ向かって長さ１０ｍｍ、間隔５ｍｍのピッチでスリット加工を施したように、裏面側シート３Ｃが一枚のシート片３ａからなり、部分的にミシン目状のスリット７が施されているものであってもよい。
【００７６】
この場合、鉛直方向（短手方向）へ流れる経血に対して、スリット７による隙間は平行に向いているため、少量の経血が滲み出してしまう危険性があるが、隙間から経血が多量に流出することは防止できる。また、スリット加工されているため、分断されていない領域が存在するが、連結されている部分が少ないので、トイレに廃棄された後、分散が速いことになる。
【００７７】
また、図１０に示すように、裏面側シート３Ｄとして、図９に示す裏面側シート３Ｃのスリット７部を起点に、左右方向へ折り畳むように長手方向へ向かう折り重なり部Ｐ_１が設けられたものであってもよい。この場合は、スリット７を起点に、左右方向へ折り畳まれているので、鉛直方向へ流れる経血に対して、スリット７による隙間は存在しないことになり、経血の流出を防止することができる。また、スリット加工されているため、分断されていない領域が存在するが、連結されている部分が少ないので、トイレに廃棄された後、分散が速いことになる。尚、図９は本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第４の実施形態を示す斜視図であり、図１０は本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第４の実施形態の別形態を示す斜視図である。
【００７８】
次に、陰唇間パッドを内包する個別包装体について説明する。
【００７９】
個別包装体を構成する包装シートは、陰唇間パッド１の裏面側シート３と同様に複数枚の隣接し合うシート片同士が互いに重なり合う重なり部を有するものである（図示せず）。
【００８０】
この包装シートは、前述の陰唇間パッド１の表面側シート２で用いられるような液透過性シートでも、また、裏面側シート３で用いられるような液不透過性シートであっても良い。しかし、陰唇間パッド１を携帯している時に、誤って個別包装体に水がかかってしまったり、カバンなどから陰唇間パッド１を取り出す際に、誤ってトイレの床に落としてしまい個別包装体に水がかかってしまった場合に、陰唇間パッド１の衛生状態を考慮すると、包装シートは裏面側シート３で用いられるような液不透過性シートであることが好ましい。
【００８１】
包装シートの大きさは、個別包装体に内包される陰唇間パッド１の形状にもよるが、陰唇間パッド１の全域を覆わなくてはならないため、少なくとも陰唇間パッド１の大きさよりも大きいものである。つまり、包装シートの大きさは、長手方向が４０〜３６０ｍｍ、短手方向が２５〜２００ｍｍの範囲であるのが好ましい。また、包装シートを構成する一枚あたりのシート片の大きさは、浄化槽への負荷を考慮すると、長手寸法×幅寸法が６０×６０ｍｍ以下、好ましくは４５×４５ｍｍ以下、より好ましくは３０×３０ｍｍ以下である。
【００８２】
更に、上記のように陰唇間パッド１の衛生状態を維持すること考慮すると、重なり部における各シート片の間には、接着剤５が塗布されて接合されていることが好ましい。この場合の接着剤５としては、陰唇間パッド１の裏面側シート３のシート片３ａ，３ｂの接合に使用のものが使用でき、その塗布目付は１〜２０ｇ／ｍ^２、好ましくは３〜１０ｇ／ｍ^２の範囲であって、塗布パターンを波状、Ω状、スパイラル状、線状、ドット状、ベタ状などから適宜選定される。
【００８３】
また、使用後に包装シートをトイレに廃棄した場合に、速やかにトイレの水を吸い上げ、シート片同士の間に水が入り込み易いように、液不透過性の包装シートをサンドイッチするように親水性不織布が配置されていても良い。
【００８４】
次に本発明に係る陰唇間パッドの水分散性について実施例に基づいて説明する。
【００８５】
図１１は水分散性を評価するのに使用した陰唇間パッドの実施例の形態を説明する説明図で（ａ）は実施例の平面図、（ｂ）は実施例の底面図、（ｃ）は実施例に使用の裏面側シートの斜視図である。また、図１２は模擬的な水洗トイレを説明する説明図である。
【００８６】
この水分散性を評価するのに使用した陰唇間パッドの実施例に関する試作内容について説明する。
【００８７】
本実施例の陰唇間パッドは、図１１に示すように表面側シート１０１と裏面側シート１０２とこれらシートに内包される吸収体１０３と裏面側シート１０２の反身体面側に設けられたミニシート片１０５からなり、表面側シート１０１は、繊維長５ｍｍ、維度１．７ｄｔｅｘのレーヨン繊維を７０％と、針葉樹クラフトパルプを３０％とを混合し抄紙された後に、水流交絡によりシート化させた湿式スパンレースである。また、吸収体１０３は、針葉樹パルプシートをパルプ粉砕機にて綿状のパルプにしたものを、目付３００ｇ／ｍ^２に調整し、厚みを４ｍｍにプレス調整し、幅が５２ｍｍで長さが８５ｍｍの寸法の方形に形成したものである。裏面側シート１０２は、寸法が３７×３４ｍｍであって、目付１８ｇ／ｍ^２の水解紙にポリプチレンサクシネート樹脂を２０μｍの厚みにラミネートしたラミネート不織布のシート片１０２ａを６枚、図１１（ｃ）に示すように、長手方向中心線上をまたぐように幅１０ｍｍの長手方向重なり部Ｐと、長手方向を３等分する位置で幅１０ｍｍの左右方向の重なり部Ｐ’とを設けるようにして重ね合わせて形成されている。その重なり部Ｐ，Ｐ’におけるシート片１０２ａの間には、ポリビニルアセテートを主成分とした感熱型の水崩壊性接着剤が塗布量約５ｇ／ｍ^２でドット状の塗布パターンで塗布されて、お互いのシート片１０２ａが接合されている。
【００８８】
そして、上記裏面側シート１０２の身体面側に、ポリビニルアルコールを主成分とした水崩壊性接着剤を、裏面側シート１０２の身体面側の全面を覆うようにして、目付３ｇ／ｍ^２の塗布量でスパイラル状に複数本連続的に塗布した後に、上記吸収体１０３を積層する。次に、この積層した吸収体１０３の身体面側に表面側シート１０１を積層し、吸収体１０３周縁に沿って幅２ｍｍの格子状の噛み込みエンボス加工を行い、表面側シート１０１と裏面側シート１０２とを互いに接合し吸収体１０３を内包する。
【００８９】
次に、図１１（ｂ）に示すように、裏面側シート１０２の反身体面側に陰唇間パッド１００の後方端部から５０ｍｍの長さに亘って、目付１８ｇ／ｍ^２の水解紙からなるミニシート片１０５を敷設し、裏面側シート１０２との間に指を挿入することが可能な間口部１０６を有するようにして取り付けた。間口部１０６の間口の幅は２５ｍｍとなるようにして、ミニシート片１０５の両側部を裏面側シート１０２にポリビニルアセテートを主成分とした水崩壊性接着剤で接合して接合部１０７を形成している。
【００９０】
このようにして複合して得られた陰唇間パッド１００の周縁部、所謂フラップ部１０４を吸収体１０３周縁から３ｍｍの位置でカットし、図１１（ａ）に示すように、最大幅５８ｍｍ、最大長さ９１ｍｍの寸法に陰唇間パッド１００の形態を形成した。
【００９１】
次に、上記実施例の陰唇間パッド１００をトイレに流した場合の水分散性テストの内容について説明する。
【００９２】
上記実施例と比較例としてのＰＧ社のＥｎｖｉｖｅ（Ｍ）とを、各５試験体にて擬似的な水洗トイレに廃棄し、実施例および比較例の崩壊状態を目視で確認した。
【００９３】
この確認試験において用いた水洗トイレは、図１２に示すような模擬的な水洗トイレとした。図１２は模擬的な水洗トイレを説明する説明図で、（ａ）は浄化槽を小型合併処理浄化槽としたもので、（ｂ）は浄化槽を単独処理浄化槽としたものである。
【００９４】
この擬似的な水洗トイレは、図１２に示すように、セミサイホン式の洋式トイレ２０１であり、排水量は１回あたり８リットル、トラップ部の直径は５３ｍｍである。トイレから浄化槽２０３，２０４までは配管２０２で接続されており、配管２０２は直径１００ｍｍで、傾斜勾配は１／１００とし、配管長さは１０ｍとした。浄化槽は、濾材２０３ａを有する小型合併処理浄化槽２０３（図１２（ａ）参照）と散気管２０４ａを有する単独処理浄化槽２０４（図１２（ｂ）参照）との２種類とし、何れも内部は水道水のみで満たされた状態とした。尚、小型合併処理浄化槽２０３の濾材２０３ａはアムズ（株）の型式ＣＸＩＩＩに使用されている直径１５０ｍｍの骨格様球状を浄化槽２０３内に約６５０ｍｍの高さになるように充填ものを用いた。また、単独処理浄化槽２０４の散気管２０４ａは、直径１８ｍｍとした。
【００９５】
その結果、実施例の水中分散状態に関しては、洋式トイレに廃棄されて、配管中を流れ、浄化槽に入り込んだ時には裏面側シートは複数枚のシート片に分散していたため、単独処理浄化槽の散気管に絡みつくことはなく、また、小型合併処理浄化槽の濾材に詰まることなく通過していることが目視確認できた。一方、比較例の水中分散状態に関しては、裏面側シートが単独処理浄化槽の散気管に絡みつき、また、小型合併処理浄化槽の濾材に詰まっていることを目視した。このように、裏面側シートを小片のシート片を複数枚重ね合せたものにすることによって、浄化槽の機能を損なうことがないことが確認された。
【００９６】
以上のように本発明に係る陰唇間パッド１００に関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明したが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前述の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【００９７】
【発明の効果】
本発明によれば、裏面側シートは、複数枚の隣接し合うシート片同士が互いに重なり合うように配置されて構成されていることにより、使用後トイレに廃棄された場合、多量の水と接することにより、裏面側シートは複数枚のシート片に分散されるため、各シート片が小型合併処理浄化槽の濾材、あるいは、単独処理浄化槽の散気管に滞留してしまうことが抑制されるので、浄化槽の機能に障害を与えることが低減される。
【００９８】
また、長手方向重なり部における身体面側に位置するシート片の端部は、前記陰唇間パッドの長手方向中心線上から離れた位置に配置されているので、ほぼ長手方向中心線で折り畳まれて陰唇間に装着された状態では、裏面側シートの重なり部における身体面側のシート片の端部は、折り畳みの外方向に向くことになり、折り畳みの外方向に流れる経血に対してシート片の端部が経血を受け止める方向に向いていないことになるので、着用中に経血が漏れるおそれがない。
【００９９】
また、裏面側シートの反身体面側に凹凸を形成することにより、使用後トイレに折り畳まれた状態で廃棄されても、着用中に向き合っていた凹凸状の裏面側シートの間における隙間から、容易に水が入り込めるようになるため、折り畳まれていた陰唇間パッドが水中で瞬時に開くことになる。これによって、裏面側シートは反身体面側方向からほぼ均一に水と接触することとなり、水は重なり部の反身体面側からも入り込み易くなる。
【０１００】
また、陰唇間パッドを内包する個別包装体の包装シートが裏面側シートと同様に複数枚のシート片から構成された液不透過性シートであることにより、使用後トイレに廃棄された場合に、複数枚のシート片に容易に分散されるため、浄化槽の機能に障害を与えることが低減される。また、外部からの水（湿気）の侵入を確実に遮断できるため、内包されている陰唇間パッドの衛生状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る陰唇間パッドの第１の実施形態を示す図で、（ａ）は斜視図であり、（ｂ）は（ａ）中のＸ−Ｘ線断面図である。
【図２】第１の実施形態の陰唇間パッドに使用の裏面側シートを示す斜視図である。
【図３】第１の実施形態の陰唇間パッドが陰唇間に装着された状態をあらわす図である。
【図４】発明に係る陰唇間パッドの第２の実施形態を示す断面図である。
【図５】発明に係る陰唇間パッドの第３の実施形態を示す断面図である。
【図６】本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第２の実施形態を示す斜視図である。
【図７】本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第３の実施形態を示す斜視図である。
【図８】図７に示す裏面側シートを用いた陰唇間パッドが陰唇間に装着された状態をあらわす図である。
【図９】本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第４の実施形態を示す斜視図である。
【図１０】本発明に係る陰唇間パッドの裏面側シートの第４の実施形態の別形態を示す斜視図である。
【図１１】水分散性を評価するのに使用した陰唇間パッドの実施例の形態を説明する説明図で（ａ）は実施例の平面図、（ｂ）は実施例の底面図、（ｃ）は裏面側シートの斜視図である。
【図１２】模擬的な水洗トイレを説明する説明図で、（ａ）は浄化槽を小型合併処理浄化槽としたもので、（ｂ）は浄化槽を単独処理浄化槽としたものである。
【符号の説明】
１，１Ａ，１Ｂ，１Ｃ 陰唇間パッド
２ 表面側シート
３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ，３Ｄ 裏面側シート
３ａ，３ｂ，３ｃ シート片
４ 吸収体
５ 接着剤
６ ミニシート片
７ スリット
Ｐ 長手方向重なり部
Ｐ’ 短手方向重なり部

Claims (10)

1. 着用時に身体側となる液透過性の表面側シートと反身体側となる液不透過性の裏面側シートとの間に吸収体を介してなる、長手方向と短手方向を有する陰唇間パッドにおいて、
   前記裏面側シートに水壊性継ぎ目部分を有することを特徴とする水洗可能な陰唇間パッド。
2. 前記裏面側シートは、複数枚のシート片から構成され、隣接する該シート片同士が互いに重なり合って形成される長手方向重なり部および／または短手方向重なり部を有するものであること特徴とする請求項１に記載の水洗可能な陰唇間パッド。
3. 前記裏面側シートは、前記重なり部における各シート片の間において、接着剤が塗布されており、前記重なり部の少なくとも前記身体面側に位置する前記シート片によって前記接着剤が被覆されているものであることを特徴とする請求項１または２に記載の水洗可能な陰唇間パッド。
4. 前記長手方向重なり部は、身体面側に位置する前記シート片の端部が長手方向中心線上から離れた位置に配置されるようにして重ね合わされたものであることを特徴とする請求項２に記載の水洗可能な陰唇間パッド。
5. 前記短手方向重なり部は、前記陰唇間パッドの長手方向の後方側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであることを特徴とする請求項２に記載の陰唇間パッド。
6. 前記裏面側シートは、前記短手方向重なり部を少なくとも１つ以上形成して長手方向中心線上に沿って配置されるシート片と、該シート片を挟んで前記長手方向重なり部を少なくとも１つ以上形成して短手方向に配置されるシート片と、からなり、
   前記長手方向重なり部は、長手方向中心線側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであり、
   前記短手方向重なり部は、前記陰唇間パッドの長手方向の後方側に位置する前記シート片が前記身体面側になるよう配置されて重ね合わされたものであることを特徴とする請求項１から３いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッド。
7. 前記裏面側シートは、その反身体面側に、前記陰唇間パッドの長手方向の前方側から指を挿入するためのミニシート片を備えることを特徴とする請求項１から６いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッド。
8. 前記裏面側シートは、少なくとも反身体面側に凹凸が形成されたものであることを特徴とする請求項１から７いずれか記載の水洗可能な陰唇間パッド。
9. 陰唇間パッドを内包する個別包装体であって、
   該個別包装体を構成する包装シートは、複数枚のシート片から構成され、該シート片同士が互いに重なり合って形成される長手方向重なり部および／または短手方向重なり部を有するものであることを特徴とする水洗可能な個別包装体。
10. 前記包装シートは、液不透過性のシートであることを特徴とする請求項９に記載の水洗可能な個別包装体。

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