JP2004259857A - 半導体装置および半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置を用いた応用システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の角度にて傾斜した面を表面とするGaAs基板上に、少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体層を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物結晶を有する半導体装置およびその製造方法、ならびにその半導体装置を用いた応用システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オプトエレクトロニクス用の分野において、V族元素として窒素(N)を含むIII−V族化合物半導体材料が注目されている。特に、GaInNAsは、NおよびInの組成を制御することによって、光ファイバー通信に重要な波長1.3μmまたは1.55μmに相当するバンドギャップを有し、かつ、GaAs基板に格子整合した直接遷移型半導体材料を得られる可能性があるため、非常に有望視されている。
【0003】
しかしながら、GaAs系化合物半導体へのNの取り込み効率が低いため、波長1.3μmまたは1.55μmに相当するバンドギャップを得るためにNの供給量を増やしてNの組成比を増加させると、結晶成長表面が荒れるという問題があった。また、GaInNAs混晶をGaAs基板に格子整合させるために、NおよびInの組成比を増加させた場合にも、その結晶性が大きく悪化し、半導体レーザ素子の活性層として用いるのに十分な結晶性が得られなかった。
そこで、特開平10−64828号公報(特許文献1)および特開平10−321959号公報(特許文献2)は、(001)面から特定の傾斜角度にて傾斜した表面を有するGaAs基板を用いることによって、GaAs基板に格子整合し、波長1.3μmおよび1.55μmに相当するバンドギャップを有するGaInNAs等のIII−V族化合物半導体を形成する技術を開示している。
【0004】
GaInNAsの発光波長を長くするために、Sb添加の効果が報告されている(エム・コペル(M. Copel)ら、「フィジックス・レビュー・レターズ(Phys. Rev. Lett.)」、第63巻、1989年、p.632;非特許文献1)。また、GaSbまたはInAsを基板として用い、基板に格子整合したGaInAsSbを発光層とした発光素子は、波長2μm以上の波長帯での発光が得られ、半導体レーザ素子や発光ダイオードの発光層として応用される。
一方、同じくGaInAsSbを発光層としてGaAs基板上に設けた場合、波長0.9〜1.2μmといった波長帯での発光が期待され、Nの導入により長波長化させれば、1.3〜1.55μm波長帯の発光が期待される。
【0005】
さらに、「エレクトロニクス・レターズ(Electronics Letters)」、第38巻、第6号、2002年3月14日、p.277−278(非特許文献2)に開示されているように、GaAs(100)面上に形成したGaInAsSbに数%以下のNが混晶化されたGaInNAsSbは、光ファイバー通信に重要な波長1.3μmまたは1.55μmで発光することから、工業的に重要となっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−64828号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−321959号公報
【0008】
【非特許文献1】
エム・コペル(M. Copel)ら、「フィジックス・レビュー・レターズ(Phys. Rev. Lett.)」、第63巻、1989年、p.632
【0009】
【非特許文献2】
「エレクトロニクス・レターズ(Electronics Letters)」、第38巻、第6号、2002年3月14日、p.277−278
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示したGaInAsSbやGaInNAsSbなど、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体は光通信に重要な波長領域で発光する発光材料として有用であるが、結晶成長によって良質の結晶を作製することが非常に困難である。これは、GaAs−GaSb−InAs−InSbを混合した場合に、広い組成範囲で非混和となることの影響であり、均一な組成分布を持つ良質の結晶を得ることが困難となっている。
【0011】
本発明者の検討によると、GaInAsSbを結晶成長した場合、スピノーダル分解によりGaInAsとGaAsSbとに相分離した混合膜や、完全に分離しなくてもIn組成およびSb組成に大きな分布を持った結晶膜が形成される傾向にある。また、特に基板としてGaAsを用いた場合には、GaSbやInAsを基板として用いた場合よりも良質な結晶を得ることが困難であった。そのため、GaInAsSbやGaInNAsSbを活性層とした半導体レーザ素子などの半導体装置においては、発振閾値電流密度が高くなる問題があった。また、そのような半導体レーザ素子では、温度特性が悪くなる(特性温度が低い)問題も見られた。
【0012】
本発明は上記の問題を解決することを目的としたものである。つまり、本発明は、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体がGaAs基板の上に結晶成長された半導体素子において、その混晶の相分離が抑制されており、優れた特性を有する半導体素子を提供するものである。また、そのような半導体装置の製造方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガリウム砒素からなる基板の上に、少なくとも一層の第一のIII−V族化合物半導体層が形成され、ここに、該基板の表面は、(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の方向に5度以上55度以下の角度にて傾斜した面であって、該第一のIII−V族化合物半導体層はガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含む半導体装置を提供する。
このように表面が(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から傾斜した面方位をもつGaAs基板を用いることにより、第一のIII−V族化合物半導体層の組成分布が均一となり、GaAs基板を用いた場合に固有の非混和の影響を受けることなく、結晶性に優れた結晶が得られ、かくして、優れた特性を示す半導体装置が得られるようになる。
【0014】
好適な具体例としては、前記所定の方向が[011]方向またはその方向と結晶学的に等価な方向である。
もう一つの好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層において、III族元素中のインジウム組成比が15%以上であって、V族元素中のアンチモン組成比が2%以上である。
さらにもう一つの好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層が、さらに窒素を混晶組成として含む。
さらなる好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層が、350℃以上550℃以下の範囲の基板温度にて結晶成長した半導体層である。
【0015】
また、本発明は、圧縮歪を有する第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、前記第一のIII−V族化合物半導体層の基板に近い側に隣接して設けられていることを特徴とする半導体装置を提供する。
このように圧縮歪を有する第二のIII−V族化合物半導体層を中間層として用いることにより、母材となるGaAsよりも格子定数が大きな前記の第一のIII−V族化合物半導体層をその上に結晶成長する際に、InやSbといった原子半径が大きな元素のステップ端からの結晶中への取り込みが安定して生じるようになり、より優れた結晶が得られ、それを用いた半導体装置においては優れた特性を示すようになるものである。
【0016】
好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、非混和性を示さない組成の材料である。
もう一つの好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、その混晶組成としてインジウムとアンチモンとを同時に含まない。
【0017】
さらにもう一つの好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)において、III族元素中のインジウム組成比またはV族元素中のアンチモン組成比が、それぞれ、前記第一のIII−V族化合物半導体層における各組成比と概ね同じである。
本発明の半導体装置において、第一のIII−V族化合物半導体層の特徴は、インジウムとガリウムと砒素とアンチモンとを含むことにあり、一方、第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)の特徴は、圧縮歪を有し、かつ、第一のIII−V族化合物半導体層の基板に近い側に隣接して設けられていることにある。
したがって、製造過程における容易性を考慮して、第一および第二のIII−V族化合物半導体層において、InまたはSbの組成比を同じ値に設定することができる。あるいは、各層の目的を最大限に発揮させるために、独立して、組成比を設定することもできる。
本明細書において、「インジウム組成比またはV族元素中のアンチモン組成比が概ね同じである」とは、組成比が同一の値またはその近傍の値であることを意味する。
【0018】
本発明の半導体装置は、前記第一のIII−V族化合物半導体層が、量子井戸構造における井戸層として機能することを特徴とするものである。前記第一のIII−V族化合物半導体層が発光層として機能する発光素子であることが好ましい。また、前記発光素子が、150K以上の特性温度を有する半導体レーザ素子である。
【0019】
本発明は、本発明による半導体装置を用いた応用システムを提供する。
本発明による半導体装置は、光ファイバー通信システムに適用することが非常に有用である。また、光ファイバーを用いない空間光伝送システム、あるいは光ディスク用のピックアップ、あるいは光によるセンサー機能を有する光計測システム、レーザを利用した医療用機器などの他の応用システムに用いることもできる。
【0020】
さらに、本発明は、(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の方向に5度以上55度以下の角度にて傾斜した面を表面に有するガリウム砒素からなる基板の上に、少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含む第一のIII−V族化合物半導体層を結晶成長することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0021】
好適な具体例としては、前記所定の方向が[011]方向またはその方向と結晶学的に等価な方向である。
もう一つの好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層において、III族元素中のインジウム組成比が15%以上であって、V族元素中のアンチモン組成比が2%以上である。
さらにもう一つの好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層が、さらに窒素を混晶組成として含む。
さらなる好適な具体例としては、前記第一のIII−V族化合物半導体層を、350℃以上550℃以下の範囲の基板温度にて結晶成長する。
【0022】
また、本発明は、圧縮歪を有する第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)を結晶成長し、次いで、それに隣接して前記第一のIII−V族化合物半導体層を結晶成長することを特徴とする製造方法も提供する。
【0023】
好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、非混和性を示さない組成の材料である。
もう一つの好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、その混晶組成としてインジウムとアンチモンとを同時に含まない。
【0024】
さらにもう一つの好適な具体例としては、前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)において、III族元素中のインジウム組成比またはV族元素中のアンチモン組成比が、それぞれ、前記第一のIII−V族化合物半導体層における各組成比と概ね同じである。
【0025】
【発明の実施の形態】
上記に示したGaInAsSbのように、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体は、いわゆる長波長帯と呼ばれる波長領域で発光する発光材料として有用であるが、結晶成長によって良質の結晶を作製することが非常に困難であった。これは、GaAs−GaSb−InAs−InSbを混合した場合に、広い組成範囲で非混和となることの影響であり、均一な組成分布を持つ良質の結晶を得ることが困難であることによっていると考えられる。
本発明者の検討によると、GaInAsSbを結晶成長した場合、スピノーダル分解によりGaInAsとGaAsSbとの混合膜、あるいは完全に分離しなくてもIn組成とSb組成とが大きな分布を持った結晶膜が形成される傾向にあった。
【0026】
ここで、基板としてGaSbやInAsを用いた場合、結晶成長されるGaInAsSb混晶は基板に格子整合させることが可能である。この場合、GaInAsSbのスピノーダル分解により生成されるGaInAsとGaAsSbは、均一に混合された格子整合組成のGaInAsSbと比較して、スピノーダル分解を起こすことによって生じる分解後の組成の格子定数が基板の格子定数から大きく離れるようになり、相分離することによって大きな歪を内包するようになる。そのため、基板としてGaSbやInAsを用いた場合には、GaInAsSb混晶は相分離せずに混合している方が内部歪のエネルギーが小さな状態であることから、基板によってスピノーダル分解が抑制される状態となっている。
【0027】
それに対し、基板としてGaAsを用いた場合には、その上に結晶成長されるGaInAsSbは、InとSb共に母材であるGaAsを構成するGaやAsよりも原子半径が大きいため、GaAsに格子整合することがなく、圧縮歪を持つことになる。格子歪み系のGaInAsSb系がGaInAsとGaInSbとに分離した場合、スピノーダル分解に伴なう歪み量の変化がほとんど生じず、GaSbやInAsを基板として用いた場合の格子整合系のGaInAsSbと比較して、容易に相分離が生じてしまうといった特有の問題を有している。
【0028】
そこで、本発明者は、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体を結晶成長する際のGaAs基板の面方位に着目して検討を進めた結果、基板として、(100)面を表面として有するGaAs基板に代えて、表面方位を(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から傾斜した面を表面として有するGaAs基板を用いた場合に、相分離や組成分布が抑制され、発光特性に優れたGaInAsSb結晶が得られることを見出した。
【0029】
本明細書において、基板の(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の傾斜角度にて傾斜した面を結晶成長主面とする基板を「オフ基板」という。
GaAsやSi等のように対称性の高い結晶の場合、結晶の(100)面は、(001)面、(010)面、(−100)面、(00−1)面などの他の面と結晶学的に等価な性質を有する。したがって、本発明において、基板の(100)面から傾斜した面を結晶成長主面とするオフ基板のみならず、(100)面と結晶学的に等価な面から傾斜した面を結晶主面とするオフ基板も用いることができる。
【0030】
また、GaAsオフ基板上に、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体層を含む半導体素子を構成した場合に、発振閾値電流密度の小さな優れた素子特性が得られ、さらに、温度特性に優れ、特性温度(T0)の大きな素子が得られることがわかった。
【0031】
上記したように、オフ基板を用いた場合に優れた素子特性が得られたのは、次の作用によっていると考えられる。
例えば、GaInAsSbを結晶成長する場合、結晶成長室内にて加熱された基板表面にGa、In、AsおよびSbのそれぞれの原料が供給されることによりGaInAsSb混晶が結晶成長するわけであるが、傾斜していない基板を用いた場合、基板上に供給された各原料の原子や分子は基板上をマイグレーションし、テラス上にランダムに核形成をして結晶成長が始まる。このように供給された原子や分子が自由にマイグレーションし、テラス上に核形成が生じた場合、各元素が混合するよりもエネルギー的により安定な状態、すなわちGaInAsとGaAsSbとに分離した状態での結晶成長が生じやすく、相分離された結晶膜となり、結晶の発光特性すなわち素子特性が悪化することになる。
【0032】
一方、オフ基板を用いた場合、基板上に供給された原子や分子はテラス上に核形成されるよりもステップ端に捕らえられて結晶中に取り込まれる確率が高くなる。そのため、自由なマイグレーションが行われないままランダムにステップ端から結晶成長が進行することになり、その結果として組成が分離することなく、ランダムに混ざり合った混晶結晶が得られるようになるものと思われる。
そのため、得られた結晶の発光特性は優れ、それを用いた半導体レーザ素子においては発振閾値電流密度が著しく小さくなる。また、半導体装置としてはここで例を挙げた半導体レーザ素子に限らず、発光ダイオード素子などの発光素子を作製した場合も同様に高効率での発光が生じるなど、他の半導体装置の構成に適用した場合においても半導体装置の高性能化を図ることができるようになる。
【0033】
一般的に、「オフ基板」は、成長主面にステップおよびテラスが形成され、材料原子がステップに取り込まれ2次元成長する「ステップフロー成長」が生じやすいため、平坦性に優れた半導体層を得る目的で使用される。
しかしながら、本発明は、上記したごとく、原子や分子をステップ端に捕えて、自由なマイグレーションを阻害することによって、組成分布が均一な結晶性の高い半導体層を得ることを目的として「オフ基板」を用いる。
【0034】
さらに、半導体レーザ素子の活性層として量子井戸構造を適用し、その量子井戸構造の井戸層に少なくともGa、In、AsおよびSbを含むIII−V族化合物半導体を適用した場合、GaAsオフ基板の上に構築することによって温度特性が著しく良好になる(特性温度T0が大きくなる)ことがわかった。
これは、例えばGaInAsSbの場合、従来の傾斜していないGaAs基板を用いた場合に得られるGaInAsとGaAsSbとの混合膜、あるいは完全に分離しなくてもIn組成とSb組成とが大きな分布を持った結晶膜を井戸層に用いた場合よりも、本発明のようにGaAsオフ基板を用いた場合に得られる組成分布が完全にランダムで均一なGaInAsSbを井戸層に用いた方が、組成の混合による禁制帯幅のボーイングの効果が大きく、井戸層への注入キャリアの閉じ込めがより強くなる効果によっている。
本発明のようにオフ基板を用い、その上に半導体レーザ素子を構成した場合、以下の実施例において実例を示すように、特性温度として150K以上の値が得られるようになった。
【0035】
なお、本発明は、下記の実施例において示す特定の結晶系、混晶組成、バンドギャップ波長、ヘテロ接合の組み合わせ、デバイス構造に限定されるものではないことは言うまでもない。
特にデバイスについては半導体レーザ素子に限定されるものではなく、発光ダイオード、受光素子、光導波路素子、太陽電池などの任意の光デバイス、あるいはトランジスタ、FET、HEMTなどの電子デバイスの任意の層の作製に適用することが可能である。
【0036】
また、本発明において、実施例において詳細に説明した元素以外のIII族元素(B、Tl等)やV族元素(P、Bi)が、半導体層に適宜混晶化されていてもよいし、不純物元素(C、Zn、Be、Mg、Te、S、Se、Si等)が適宜含まれていてもよい。
全ての実施例において、結晶成長方法としては、分子線エピタキシャル成長(MBE)法に限定されるものではなく、他の方法を適宜選択し得る。例えば、ガスソースMBE法、ケミカルビームエピタキシー(CBE)法、有機金属MBE(MO−MBE)法、有機金属気相成長(MO−CVD)法、光CVD法、プラズマCVD法、真空蒸着法、真空スパッタ法など、既存の各種手法を適用することが可能である。
【0037】
また、結晶成長に用いる各構成元素の原料については、実施例に記述した特定の原料、あるいはそれぞれの原料の特定の組み合わせに限定されるものではなく、任意の原料を任意の組み合わせで用いることができることは言うまでもない。また、結晶成長により形成された混晶について、各組成の混晶比の組み合わせについても実施例に記述した特定の値の組み合わせに限定されるものではなく、任意の混晶比の組み合わせとすることが可能である。
また、何れの実施例も、Ga、In、As、Sbとを含む混晶材料を量子井戸構造における井戸層として用いた場合について示すが、その際における井戸数、歪量、井戸層厚に関して制限はない。また、バリア層にも圧縮または引っ張りの歪を導入してもよい。また、量子井戸構造のみならず、バルク結晶であってもよい。
なお、本明細書において、「上」と示された方向は基板から離れる方向を示しており、「下」は基板へ近づく方向を示している。結晶成長は「下」から「上」の方向へ向かって進行する。
【0038】
本発明の半導体装置は、光ファイバー通信システムに適用するのに非常に有用である。以下の実施例において、本発明を光ファイバー通信システムへ応用した例について示すが、光ファイバーを用いない空間光伝送システム、あるいは光ディスク用のピックアップ、あるいは光によるセンサー機能を有する光計測システム、レーザを利用した医療用機器などの他の応用システムにおいて同様の構成が可能であり、同様の効果が得られることは言うまでもない。また、必ずしもモノリシック型でなくとも、半導体レーザ部や受光用ディテクター部を外部から貼り付けたハイブリッド型であってもよいことは言うまでもない。
【0039】
【実施例】
実施例1
図1に、本発明による半導体装置の第1の実施形態である半導体レーザ素子1を示す。この半導体レーザ素子1は、(100)面から[011]方向に5度の角度にて傾斜した表面を有するGaAs基板の上に構成されている点に特徴がある。以下、上記のGaAs基板を、「GaAs(100)5度オフ基板」と略記する。
また、半導体レーザ素子1において、活性層である井戸層を構成する化合物半導体層には、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体としてGaInAsSbが用いられていることを特徴とする。
【0040】
この実施例において、n型のGaAs(100)5度オフ基板101の上に、1μm厚のn型Al0.4Ga0.6As下クラッド層102、0.1μm厚のi(真性)−GaAs下ガイド層103、7nm厚のi−Ga0.73In0.27As0.95Sb0.05井戸層104、0.1μm厚のi−GaAs上ガイド層105、1μm厚のp型Al0.4Ga0.6As上クラッド層106、および0.5μm厚のp型GaAsコンタクト層107の各層を分子線エピタキシャル成長(MBE)法を用いて、順次結晶成長して、半導体レーザ素子1aを作製した。
このときに用いられたMBE法では、各元素(Al、Ga、In、As、Sb)の原料には、全て固体ソース(金属Al、金属Ga、金属In、金属As、金属Sb)を用いた。また、結晶成長時の基板温度は450℃とした。
【0041】
MBE法による結晶成長の後、上クラッド層106の一部およびp型GaAsコンタクト層107を幅2μmのストライプ状にエッチング加工してリッジ型導波路構造とし、リッジ側面にはポリイミドによる電流狭窄層108を施した。
さらに、上下にAuZnからなるp型電極109およびAuGeからなるn型電極110を形成した。続いてリッジに直交する方向に、劈開により端面ミラーを形成した。
【0042】
半導体レーザ素子1aは、波長1.2μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは0.25kA/cm2であり、低電流でのレーザ発振が見られた。
【0043】
素子温度20℃から80℃における特性温度T0は190Kであり、優れた特性を示した。ここで、特性温度T0とは、一般に、閾値電流−温度特性の関係式Jth(T)=J0×exp(T/T0)で定義される値T0であり、Jth(T)は絶対温度T(K)における発振閾値電流密度を意味し、J0は上記関係式の係数であって、特性温度T0(K)における発振閾値電流密度を意味する。
この実施例において、80℃および20℃におけるJthの実測値から、Jth(80℃)/Jth(20℃)=exp(60/T0)の関係式を用いて(ここでは、簡便のため、左辺における温度を摂氏表記した)、特性温度T0を求めた。
【0044】
実施例2〜4
実施例1と同様に、基板101として、GaAs(100)5度オフ基板に代えて、(100)面から[011]方向に2度傾斜した面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1bを作製し(実施例2)、(100)面から[011]方向に10度傾斜した面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1cを作製し(実施例3)、(100)から[011]方向に15度傾斜した面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1dを作製した(実施例4)。
【0045】
何れの半導体レーザ素子についても、波長1.2μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは、半導体レーザ素子1bにおいて0.4kA/cm2、半導体レーザ素子1cにおいて0.27kA/cm2、半導体レーザ素子1dにおいて0.35kA/cm2であり、低電流でのレーザ発振が見られた。
また、素子温度20℃から80℃における特性温度T0は、半導体レーザ素子1bにおいて180K、半導体レーザ素子1cにおいて160K、半導体レーザ素子1dにおいて185Kであり、優れた特性を示した。
【0046】
比較例1および2
実施例1と同様に、基板101として、GaAs(100)5度オフ基板に代えて、傾斜していない(100)面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1eを作製し(比較例1)、(100)面から[011]方向に0.5度傾斜した面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1fを作製した(比較例2)。
【0047】
何れの半導体レーザ素子についても、波長1.2μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは、半導体レーザ素子1eにおいて8kA/cm2、半導体レーザ素子1fにおいて4kA/cm2であり、実施例1〜4で作製した半導体レーザ素子1a〜1dと比較して発振閾値電流密度は非常に大きく、発振効率が悪かった。
また、素子温度20℃から80℃における特性温度T0は、半導体レーザ素子1eにおいて90K、半導体レーザ素子1fにおいて95Kであり、温度特性に劣るものであった。
【0048】
実施例5および6
実施例1と同様に、基板101として、GaAs(100)5度オフ基板に代えて、(311)A面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1gを作製し(実施例5)、(111)A面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1hを作製した(実施例6)。
【0049】
何れの半導体レーザ素子についても、波長1.2μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは、半導体レーザ素子1gにおいて0.3kA/cm2、半導体レーザ素子1hにおいて0.6kA/cm2であり、低電流でのレーザ発振が見られた。
また、素子温度20℃から80℃における特性温度T0は、半導体レーザ素子1gにおいて170K、半導体レーザ素子1hにおいて165Kであり、優れたレーザ特性を示した。
なお、ここで用いた(311)A面、(111)A面というのは、(100)面を[011]方向へそれぞれ25度、55度傾斜した面方位に相当する。
【0050】
実施例7、8および9
実施例1と同様に、基板101として、GaAs(100)5度オフ基板に代えて、(100)面から[01−1]方向に5度傾斜した面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1iを作製し(実施例7)、(311)B面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1jを作製し(実施例8)、(111)B面を表面に有するGaAs基板を用いて半導体レーザ素子1kを作製した(実施例9)。
実施例8および9で用いる(311)B面および(111)B面というのは、(100)面から[01−1]方向へそれぞれ25度、55度傾斜した面に相当する。すなわち、実施例1〜6では[011]方向へ傾斜した基板を用いた例を示したが、実施例7〜9では[01−1]方向へ傾斜した基板としている点に特徴がある。
【0051】
何れの半導体レーザ素子についても、波長1.2μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは、半導体レーザ素子1i、1jおよび1kにおいてそれぞれ1.0kA/cm2、1.3kA/cm2であり、1.5kA/cm2であり、比較例1および2で作製した半導体レーザ素子1eおよび1fと比べて低いものであった。
また、素子温度20℃から80℃における特性温度T0は、半導体レーザ素子1i、1jおよび1kにおいてそれぞれ150K、160Kおよび155Kであった。
【0052】
表1および図4は、実施例1〜9、比較例1および2に示した半導体レーザ素子の発振閾値電流密度Jthと基板の傾斜角度との相関を示すものである。
【0053】
【表1】
【0054】
基板の傾斜がない比較例1および傾斜角度が小さな比較例2に対し、傾斜角度が5度以上である実施例1〜9においては発振閾値電流密度が著しく低下し、より優れた素子特性が得られるようになっていることがわかる。かくして、図4から、上記の作用および効果を得るには傾斜角度として5度以上が必要であることがわかる。
レーザ素子の発振閾値電流密度は[011]方向に傾斜した基板を用いた場合に限らず[01−1]方向に傾斜した場合でも低下が見られ、[011]方向と同様にGaInAsSbの相分離を抑制する効果があることがわかる。
また、[011]方向と[01−1]方向の中間である[010]方向でも同様の効果が確認された。しかし、その効果は[011]方向の場合よりも小さく、[011]方向への傾斜の方がより好ましいことがわかった。
【0055】
実施例10
図2に、本発明による半導体装置の第2の実施形態である半導体レーザ素子2を示す。この半導体レーザ素子2は、実施例1に記載された半導体レーザ素子1と同様に、(100)面から[011]方向に5度傾斜した面を表面に有するGaAs基板の上に構成されるが、井戸層の上下に中間層が形成されていることを特徴とする。
この図では、半導体レーザ素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
【0056】
この実施例において、n型のGaAs(100)5度オフ基板101の上に、1μm厚のn型Al0.4Ga0.6As下クラッド層102、0.1μm厚のi(真性)−GaAs下ガイド層103、10nm厚のi−Ga0.8In0.2As下中間層201、6nm厚のi−Ga0.8In0.2As0.92Sb0.08井戸層104、10nm厚のi−Ga0.8In0.2As上中間層202、0.1μm厚のi−GaAs上ガイド層105、1μm厚のp型Al0.4Ga0.6As上クラッド層106、および0.5μm厚のp型GaAsコンタクト層107の各層を分子線エピタキシャル成長(MBE)法を用いて、順次結晶成長して、半導体レーザ素子2aを作製した。
このときに用いられたMBE法では、各元素(Al、Ga、In、As、Sb)の原料には、全て固体ソース(金属Al、金属Ga、金属In、金属As、金属Sb)を用いた。
【0057】
MBE法による結晶成長の後、上クラッド層106の一部およびp型GaAsコンタクト層107を幅2μmのストライプ状にエッチング加工してリッジ型導波路構造とし、リッジ側面にはポリイミドによる電流狭窄層108を施した。
さらに、上下にAuZnからなるp型電極109およびAuGeからなるn型電極110を形成した。続いてリッジに直交する方向に、劈開により端面ミラーを形成した。
【0058】
半導体レーザ素子2aは、波長1.15μmでレーザ発振した。共振器長(L)を300μmとした時のレーザ発振開始時の発振閾値電流密度Jthは0.2kA/cm2であり、低電流でのレーザ発振が見られた。
また、素子温度20℃から80℃における特性温度T0は187Kであり、優れた特性を示した。
【0059】
半導体レーザ素子2aにおいては、井戸層104の上下にGaInAsからなる中間層を設けた点に特徴がある。同様の構造で中間層が無い場合(半導体レーザ素子1a)と比較し、約20%の発振閾値電流密度の低減が確認された。
このように、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体に隣接し、結晶成長時の下地として格子歪み系の中間層を挿入することで、GaInAsSb層を成長する下地の結晶表面が圧縮歪を内包しており、ステップ端で、母材であるGaAsよりも原子半径の大きな元素であるIn、Sbが安定して結晶中に取り込まれるようになる。そのため、中間層が無い場合よりもより相分離が抑制されやすく、発光特性に優れた結晶、素子特性に優れた半導体素子が得られるようになった。
なお、GaInAsSb井戸層104の上にも下中間層201と同じ材料からなる上中間層202を設けているが、これは量子井戸構造を上下対称とするために設けたものである。
このように中間層を用いることによる効果は、ここで示した[011]方向に5度傾斜した基板に限らず、任意の傾斜角度、傾斜方向で有効であることは言うまでもない。
【0060】
実施例11
実施例10と同様に、下中間層201および上中間層202を共に15nm厚のi−GaAs0.92Sb0.08として、半導体レーザ素子2bを作製した。半導体レーザ素子2bは、半導体レーザ素子2aと同程度の低い発振閾値電流密度でレーザ発振することが確認さた。
【0061】
実施例10では、中間層としてGa0.8In0.2Asを用いた場合を示したが、中間層の材料としては、圧縮歪を有し、かつ非混和領域に入らない組成の材料であればよい。具体的には、実施例10で示したGa0.8In0.2Asの他に、任意のIn組成のGaInAs、あるいは実施例11で示したGaAs0.92Sb0.08の他に、任意のSb組成のGaAsSbなどを用いることができる。
【0062】
実施例12および13
実施例1と同様に、井戸層106を、6.5nm厚のi−Ga0.72In0.28N0.004As0.916Sb0.08として半導体レーザ素子1mを作製し(実施例12)、7nm厚のi−Ga0.7In0.3N0.01As0.89Sb0.1として半導体レーザ素子1nを作製した(実施例13)。
作製された半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子1mにおいては波長1.31μmにて、半導体レーザ素子1mにおいては波長1.55μmにてレーザ発振が見られた。また、発振閾値電流密度は、それぞれ0.6kA/cm2および0.8kA/cm2と、十分に小さな値であり、優れた特性を示した。
【0063】
実施例1〜11においては、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体としてGaInAsSbを用いた場合について示したのに対し、実施例12および13においては、さらに窒素(N)を混晶化したGaInNAsSbとした場合について示している点に特徴がある。
このように、In、Ga、Sb、As以外に他の元素が含まれている場合においてもIn−Ga−Sb−As四元系の非混和の影響によって生じる結晶性の悪化が見られ、オフ基板を用いることによってそれが抑制されることが確認された。
【0064】
なお、この実施例12および13においては、半導体レーザ素子1aの構成、すなわち(100)面から[011]方向に5度傾斜した面を有するGaAs基板の上にGaInNAsSbを結晶成長した構成について説明したが、他の実施例2〜11に示した基板の傾斜角度や方向の異なる構成においても井戸層を同様に窒素が混晶化された材料に置き換えても同様の効果が見られたことは言うまでもない。
また、窒素(N)以外にも、燐(P)、アルミニウム(Al)、タリウム(Tl)、硼素(B)などの他のIII族あるいはV族元素が混晶化されていても、さらには導電型がp型あるいはn型にドーピングされていてもオフ基板による同様の効果が見られることは言うまでもない。
【0065】
また、組成として少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体材料の各元素の組成は、上記の実施例において具体的に示した値のみならず、任意の組成において効果が確認されている。
特に、III族元素中のインジウム組成が15%以上であって、V族元素中のアンチモン組成が2%以上の場合には非混和の影響が大きい。したがって、半導体層の組成が上記の範囲にある場合に本発明を適用すれば、大きな効果が得られる。
【0066】
実施例14
結晶成長時の基板温度を300℃〜600℃の範囲で変化させる以外は、実施例1(基板温度450℃)と同様にして、(100)面から[011]方向に5度傾斜した面を表面に有するGaAs基板の上に種々の半導体レーザ素子を作製した。
このときの半導体レーザ素子の発振閾値電流密度と基板温度との関係を表2および図5に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
図5からわかるように、オフ基板の上に結晶成長した場合、基板温度350℃以上550℃以下にて低い発振閾値電流密度でのレーザ発振が確認された。基板温度が上記の温度範囲よりも高温過ぎる場合には結晶成長が平衡状態に近づくため、オフ基板を用いても非混和の影響を抑制する効果が弱くなるものと考えられる。また基板温度が上記の温度範囲よりも低温過ぎる場合には供給された原料のマイグレーション長が短くなり、オフ基板を用いてもステップ端からの原子の取り込みが生じにくくなるためにオフ基板を用いた効果が弱くなるものと考えられる。
【0069】
実施例15
この実施例は、本発明の半導体装置を適用した、光通信システムに用いられる光送受信モジュールについて説明する。
図3に、光送受信モジュール3の略図(斜視図)を示す。この光送受信モジュール3は、(100)面から[011]方向に10度傾斜した面を表面に有するGaAs基板301の上に、送信用半導体レーザ部302、光導波路部303、送信用半導体レーザの出力モニター部304および受光用ディテクター部305を一回で結晶成長することによって、それぞれの微小素子をモノリシック集積して、作製されている。
送信用半導体レーザ部302、受光用ディテクター部305、送信用半導体レーザの出力モニター部304の層構造は、実施例12で示した半導体レーザ素子1mと同一であり、量子井戸活性層あるいはコア層の井戸層部にGaInNAsSbからなる半導体材料が用いられている。光導波路部303には、上面から亜鉛が熱拡散され、コア層の量子井戸構造が無秩序化されており、波長1.31μmの光に対して透明となっている。それぞれの微小素子は、ドライエッチングにより加工され、分離されている。
【0070】
基地局から光ファイバー307を通して送られてきた波長1.31μmの光信号は、a点から光導波路303に結合され、光導波路303を導波する。Y分岐部306では導波されてきた光信号が50:50に分岐され、一方がb点を通して受光用ディテクター部305に達し、送られてきた光信号が電気信号に変換される。一方送信機能としては、半導体レーザ部302によって電気信号が光信号に変換され、c点を通して導波路303に結合され、a点から光ファイバー307へ送信される。出力モニター部304は、半導体レーザ部302の光出力を後方からモニターするものである。
【0071】
この光送受信モジュールでは、送信用半導体レーザ部302、受光用ディテクター部305、送信用半導体レーザの出力モニター部304の井戸層において、GaInNAsSbからなるIII−V族化合物半導体材料が用いられているが、オフ基板の上に結晶成長されていることにより、半導体レーザ部においては低消費電力化、ディテクター部およびモニター部においては光−電気変換効率が大幅に向上しており、システム全体の性能の向上が達成された。
【0072】
なお、この実施例においては、層構造として実施例12で説明したものと同一のものを用いた場合について説明したが、これまでに他の実施例で示してきた他の傾斜角度、傾斜方向の基板、種々の混晶組成の組み合わせ、組成比等を用いて同様のシステムを構築しても同様に高性能なシステムが構築されることは言うまでもない。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、ガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含むIII−V族化合物半導体層を所定の方向に傾斜した表面を有するガリウム砒素基板の上に結晶層を成長するので、非混和の影響による相分離あるいは組成の揺らぎを抑制することができる。かくして、その結晶層を用いた半導体装置の特性が大きく向上するものである。特にその結晶層を発光層とする半導体レーザ素子や発光ダイオードなどの発光デバイスにおいて、発振閾値電流密度の低減、温度特性の向上といった効果が得られる。またそのような発光デバイスを光通信システムにおける光源として用いた場合、消費電力の低減が図れるなど、応用システム全体の高性能化が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態の半導体レーザ素子の斜視図。
【図2】本発明による第2の実施形態の半導体レーザ素子の斜視図。
【図3】本発明による半導体レーザ素子を適用した光通信モジュールの斜視図。
【図4】発振閾値電流密度と基板の傾斜角度との相関を説明するグラフ。
【図5】発振閾値電流密度と結晶成長温度との相関を説明するグラフ。
【符号の説明】
1・・・半導体レーザ素子、
101・・・基板、
102・・・下クラッド層、
103・・・下ガイド層、
104・・・井戸層、
105・・・上ガイド層、
106・・・上クラッド層、
107・・・コンタクト層、
108・・・電流狭窄層、
109・・・p型側電極金属、
110・・・n型電極金属、
2・・・半導体レーザ素子、
201・・・下中間層、
202・・・上中間層、
3・・・光送受信モジュール、
301・・・基板、
302・・・半導体レーザ部、
303・・・導波路、
304・・・出力モニター、
305・・・受光用ディテクター、
306・・・Y分岐、
307・・・光ファイバー、
308・・・無反射コーティング、
309・・・電極パッド。
Claims (22)
- ガリウム砒素からなる基板の上に、少なくとも一層の第一のIII−V族化合物半導体層が形成され、ここに、該基板の表面は、(100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の方向に5度以上55度以下の角度にて傾斜した面であって、該第一のIII−V族化合物半導体層はガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含む半導体装置。
- 前記所定の方向が[011]方向またはその方向と結晶学的に等価な方向であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層において、III族元素中のインジウム組成比が15%以上であって、V族元素中のアンチモン組成比が2%以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層が、さらに窒素を混晶組成として含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層が、350℃以上550℃以下の範囲の基板温度にて結晶成長した半導体層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 圧縮歪を有する第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、前記第一のIII−V族化合物半導体層の基板に近い側に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、非混和性を示さない組成の材料であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、その混晶組成としてインジウムとアンチモンとを同時に含まないことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)において、III族元素中のインジウム組成比またはV族元素中のアンチモン組成比が、それぞれ、前記第一のIII−V族化合物半導体層における各組成比と概ね同じであることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層が、量子井戸構造における井戸層として機能することを特徴とする請求項1または6に記載の半導体装置。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層が、発光層として機能する発光素子であることを特徴とする請求項1または6に記載の半導体装置。
- 前記発光素子が、150K以上の特性温度を有する半導体レーザ素子であることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
- 請求項1から請求項12いずれかに記載の半導体装置を用いた応用システム。
- (100)面またはその面と結晶学的に等価な面から所定の方向に5度以上55度以下の角度にて傾斜した面を表面に有するガリウム砒素からなる基板の上に、少なくともガリウムとインジウムと砒素とアンチモンとを含む第一のIII−V族化合物半導体層を結晶成長することを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 前記所定の方向が[011]方向またはその方向と結晶学的に等価な方向であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層において、III族元素中のインジウム組成比が15%以上であって、V族元素中のアンチモン組成比が2%以上であることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層が、さらに窒素を混晶組成として含むことを特徴とする請求項14記載の製造方法。
- 前記第一のIII−V族化合物半導体層を、350℃以上550℃以下の範囲の基板温度にて結晶成長することを特徴とする請求項14記載の製造方法。
- 圧縮歪を有する第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)を結晶成長し、次いで、それに隣接して前記第一のIII−V族化合物半導体層を結晶成長することを特徴とする請求項14記載の製造方法。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、非混和性を示さない組成の材料であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)が、その混晶組成としてインジウムとアンチモンとを同時に含まないことを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
- 前記第二のIII−V族化合物半導体層(中間層)において、III族元素中のインジウム組成比またはV族元素中のアンチモン組成比が、それぞれ、前記第一のIII−V族化合物半導体層における各組成比と概ね同じであることを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
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