JP2004259764A - 発光素子の製造方法および発光素子 - Google Patents

発光素子の製造方法および発光素子 Download PDF

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Junya Ishizaki
順也 石崎
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Abstract

【課題】Alを含む化合物半導体より構成される発光層部あるいは電流拡散層上に酸化物透明導電膜を形成させる場合にも、これら発光層部や電流拡散層の酸化を抑制ないし防止できる発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子12は、AlGaInP混晶化合物半導体にて構成される発光層部9と、該発光層部9上に形成され、酸化インジウム錫(ITO)にてなる酸化物透明導電膜10とを有する。そして、この酸化物透明導電膜10における、発光層部9と接触する第一部分5は非晶質からなるものとし、該第一部分5上に位置する第二部分6は結晶質からなるものとする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光素子およびその製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
AlP(燐化アルミニウム)と、GaP(燐化ガリウム)およびInP(燐化インジウム)との混晶化合物半導体にて発光層部が形成された発光素子、つまりAlGaInP系発光素子には、その内部量子効率などを向上させるために、電極と発光層部との間に電流拡散層を設ける場合がある。該電流拡散層は、電極と発光層部間の電流を、発光層部の層面内に均一に広げる役割を担うものである。また、この電流拡散層は、発光層部にて発光した光に対するバンド間吸収がなく、かつ、AlGaInP混晶化合物半導体と格子整合性がよい、例えばAlGaAsP混晶化合物半導体などにて構成される。このように、電流拡散層を形成することにより、外部量子効率を低下させることなく、効果的に内部量子効率を向上させることが可能である。しかしながら、この電流拡散層の効果を十分に実現させるためには、電流拡散層の形成厚さを5〜10μm以上といった過大なものとする必要がある。そのため、製造効率の低下や、コスト高を招く結果となり、産業利用上の観点から得策と言えない側面があった。
【0003】
そこで、発光層部上や電流拡散上に透明導電膜を形成することで、電流拡散層を形成しない方法や、電流拡散層の層厚を減少させる方法が種々開示されている(例えば、特開平8−83927号公報)。ここで、透明導電膜としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)膜や酸化亜鉛(ZnO)膜などの酸化物透明導電膜が採用されている。
【0004】
【参考文献】
特開平8−83927号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような酸化物透明導電膜を、AlGaInP混晶化合物半導体からなる発光層部上や、AlGaAsP混晶化合物半導体からなる電流拡散層上に形成させた場合、これら発光層部および電流拡散層は、酸化されやすいAlを含有しているので、特に酸化物透明導電膜との界面部が酸化されやすい状態となる。酸化が発光層部や電流拡散層に発生すると、酸化物透明導電膜との界面を含む界面部の抵抗率が増大してしまい、電気的特性などの素子特性の低下を招く。さらに、過度に酸化されてしまうと、素子自体が機能しないものとなる。つまり、内部量子効率を向上させるという酸化物透明導電膜の機能が有効に働かない問題や、酸化物透明導電膜を形成することにより却って素子特性を低下させてしまう問題に繋がる。
【0006】
上記問題を考慮してなされたのが本発明であり、本発明の課題は、Alを含む化合物半導体より構成される発光層部あるいは電流拡散層上に酸化物透明導電膜を形成させる場合にも、これら発光層部や電流拡散層の酸化を抑制ないし防止できる発光素子の製造方法、及び酸化物透明導電膜と界面を形成する発光層部あるいは電流拡散層の界面部における酸化に伴う抵抗率の増大が抑制ないし防止され得る発光素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
上記課題を解決するための本発明の発光素子の製造方法は、
発光層部あるいは電流拡散層をなし、かつAlを含む化合物半導体層上に、酸化物透明導電膜をスパッタリング法により形成する発光素子の製造方法において、
前記酸化物透明導電膜の、前記化合物半導体層と接触する第一部分を、それ以降に形成される第二部分よりも低い温度にて形成することを特徴とする。
【0008】
上記本発明は、発光層部あるいは電流拡散層をなし、かつAlを含む化合物半導体層上に、酸化物透明導電膜が形成される層構造を有した発光素子を対象とするものである。ここで、酸化物透明導電膜をスパッタリング法にて形成させる際に、本発明の製造方法では、酸化物透明導電膜が化合物半導体層に接触する第一部分を、それ以降に形成される第二部分よりも低い温度にて形成する。つまり、酸化物透明導電膜を、第一部分と第二部分とを有した形で形成するとともに、第一部分は第二部分よりも低温にて形成する。このように酸化物透明導電膜を形成することで、化合物半導体層と接触する第一部分を形成する際に、化合物半導体層における第一部分と界面を形成する界面部が酸化されるのを効果的に抑制ないし防止することが可能となる。また、第二部分は、化合物半導体層に及ぼす酸化を特には考慮することなく、第二部分の構成材料や該構成材料の良好な結晶化条件などを加味して適宜、形成温度を設定することが可能である。そのため、酸化物透明導電膜自体の結晶性は有為に確保することができる。
【0009】
上記のように酸化物透明導電膜を第一部分と第二部分とを有した形で形成することで、該酸化物透明導電膜と界面を形成する化合物半導体層の界面部における酸化を効果的に抑制ないし防止できる。その結果、該界面部における酸化に伴う抵抗率の増大を効果的に抑制ないし防止することが可能となるとともに、酸化物透明導電膜の機能を有効に活用できるので、発光素子における内部量子効率など素子特性を効果的に高めることが可能となる。
【0010】
次に、本発明においては、酸化物透明導電膜の第一部分を、ターゲットと前記化合物半導体層との間に直流電圧を重畳した高周波電圧を印加する高周波スパッタリング法にて形成することが望ましい。
【0011】
上記のように、酸化物透明導電膜の第一部分は第二部分よりも低温にて形成する。そのため、第一部分の形成時における温度に起因した成膜エネルギーが低く抑えられることにより、緻密性が過度に低下した形で第一部分が形成される場合がある。そのような緻密性の低下は、必然的に抵抗率の増大を招く。そこで、第一部分をスパッタリング法にて形成させる際には、第一部分の構成原料を担うターゲットと、化合物半導体層との間に直流電圧を重畳した高周波電圧を印加する高周波スパッタリング法を用いるのが望ましい。本発明者の鋭意検討の結果、このような直流電圧を重畳させる高周波スパッタリング法を用いることで、形成温度の低下に伴う第一部分の緻密性の低下が効果的に抑えられることが分かった。ここで、直流電圧を重畳させる高周波スパッタリング法を用いることにより第一部分の緻密性が向上するのは、ターゲットから化合物半導体層上に飛来する粒子が化合物半導体層上に堆積する際に、運動量変換などにより損失するエネルギーが効果的に抑制され、ひいては、成膜エネルギーに移行するエネルギーが効果的に高まるためと考えられる。
【0012】
上記のごとく、直流電圧に高周波を重畳させたスパッタリング法を用いることで、第一部分の緻密性を向上させることが可能となる。その結果、化合物半導体層における酸化物透明導電膜との界面を形成する界面部の酸化を効果的に抑え、かつ酸化物透明導電膜の膜品質を確保することが可能となる。また、第一部分のみならず、第二部分も同様に直流電圧に交流電圧を重畳させたスパッタリング法を用いて形成すれば、より簡便に酸化物透明導電膜の膜品質を向上させることが可能である。なお、ここまでに述べた直流電圧に交流電圧を重畳させるスパッタリング法において、印加する高周波電圧の周波数は、例えば13.6MHz帯域幅7kHz程度、実効値電圧は、例えば100〜300V程度といった、通常の高周波電圧のみを印加する高周波スパッタリング法にて用いられるものを採用すればよく、特に限定されない。また、重畳させる直流電圧の電圧値についても特に限定されず、例えば100〜300V程度の範囲にて、適宜、酸化物透明導電膜の構成材料や、その形成温度などを加味して調整すればよい。
【0013】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の第一部分を、化合物半導体層の温度を50℃以上600℃以下として形成することが望ましい。
【0014】
酸化物透明導電膜の第一部分は、第二部分よりも低温にて形成すればよいが、具体的な第一部分の形成温度は、50℃以上600℃以下とするのが望ましい。つまり、第一部分は、Alを含む発光層部もしくは電流拡散層とされる化合物半導体層上に形成するので、該化合物半導体層の温度を50℃以上600℃以下として第一部分を形成するのが望ましい。この第一部分の形成温度が50℃未満となると、第一部分の緻密性などの膜品質が過度に低下したものとなりやすい。一方、第一部分の形成温度が600℃を超えると、確かに第一部分の緻密性などの膜品質は有為に確保しやすいが、第一部分と界面を形成する化合物半導体層の界面部における酸化を十分に抑制できない場合が発生する。よって、これら内容より、酸化物透明導電膜の第一部分は、化合物半導体層の温度を50℃以上600℃以下として形成するのが望ましい。
【0015】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の第二部分を、化合物半導体層の温度を400℃以上800℃以下として形成することが望ましい。
【0016】
酸化物透明導電膜の第二部分の形成温度は、第一部分の形成時と違い、特には化合物半導体層に及ぼす酸化を考慮する必要がなく、結晶性などを十分に確保するのに好適な条件を適宜選択すればよいが、具体的な第二部分の形成温度は、400℃以上800℃以下とするのが望ましい。つまり、化合物半導体層の温度を400℃以上800℃以下として、第一部分上に形成するのが望ましい。この第二部分の形成温度が400℃未満となると、温度に起因した熱エネルギーが小さいために十分な結晶化エネルギーが得られず、第二部分をより単結晶に近い、結晶の連続性や周期性が高い結晶性に富んだものとして形成できない場合がある。一方、第二部分の形成温度が800℃を超えると、確かに第二部分の結晶性を有為に確保しやすいが、既に形成させた第一部分と、該第一部分と界面を形成する化合物半導体層の界面部におけるAlなどの構成元素との間にて原子の再配列などが発生しやすくなり、例えばAlとの酸化物が新たに形成されやすくなる。よって、これら内容より、酸化物透明導電膜の第二部分は、化合物半導体層の温度を400℃以上800℃以下として形成するのが望ましい。
【0017】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の第一部分の形成厚さを、5nm以上10nm以下とすることが望ましい。
【0018】
酸化物透明導電膜の第一部分の形成厚さとしては、特に限定されないが、その形成厚さとしては、5nm以上10nm以下とするのが望ましい。第一部分の形成厚さが5nm未満であると、第二部分の形成時において、既に形成させた第一部分と、該第一部分と界面を形成する化合物半導体層の界面部におけるAlなどの構成元素との間での原子の再配列や、該界面部において第二部分の構成材料である酸素との結合による酸化が発生しやすくなり、十分に化合物半導体層の界面部における酸化を抑制できない場合がある。一方、第一部分の形成厚さを5nm以上に増加させると、第二部分の形成時においても、十分に化合物半導体層の界面部における酸化を抑制しやすくなるが、第一部分は第二部分に比べて緻密性が低いことにより抵抗率が増大しやすい傾向があるので、トンネル効果を利用して第一部分における抵抗率を下げる方法を採用するのが得策であると言える。そこで、このトンネル効果を用いて第一部分における抵抗率を下げる場合、第一部分の形成厚さが10nmを超えるとトンネル効果を十分に得ることができない。よって、これら内容より、酸化物透明導電膜の第一部分の形成厚さは、5nm以上10nm以下とするのが望ましい。
【0019】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の形成厚さを、0.2μm以上1μm以下とすることが望ましい。
【0020】
酸化物透明導電膜は、発光層部と電極との間に、電流拡散層などを介する形または両者と接触する形などにて形成させることにより、電極と発光層部間の電流を発光層部の層面内に均一に広げて内部量子効率を向上させる役割を担うものである。そこで、酸化物透明導電膜の形成厚さであるが、特には、0.2μm以上1μm以下とするのが望ましい。酸化物透明導電膜の形成厚さが0.2μm未満となると、例えば、第一部分を5〜10nm程度といった過小なものとしても第二部分における結晶性を十分に確保できない場合があり、ひいては、酸化物透明導電膜にて電流を十分に発光層部の層面内に均一に広げられない場合がある。一方、酸化物透明導電膜の形成厚さが1μmを超えると、確かに酸化物透明導電膜における結晶性をより有為に確保しやすくなるが、酸化物透明導電膜にて電流を発光層部の層面内に均一に広げるという効果は飽和して、製造コストの増大のみを招くことになる。よって、これら内容より、酸化物透明導電膜の形成厚さは、0.2μm以上1μm以下とするのが望ましい。
【0021】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の第一部分は非晶質とされることが望ましい。
【0022】
酸化物透明導電膜の第一部分は、第二部分よりも低温にて形成することが必須条件とされる。このことは、第一部分の形成時に、第一部分と界面を形成する化合物半導体層の界面部の酸化を効果的に抑制させるためである。よって、この界面部の酸化をより抑制させるには、第一部分の形成温度をより低く設定するのが望ましいと言える。そのため、多結晶や単結晶といった結晶質として形成するよりも低温にて簡便に形成できる非晶質(アモルファス)にて第一部分を形成するのが望ましいと言える。また、非晶質として形成する場合、結晶質と違い、特定の面を配向させる形で膜成長させる必要がないので、第一部分の緻密性を簡便に高められる。これら内容より、酸化物透明導電膜の第一部分は非晶質として形成するのが望ましいと言える。
【0023】
次に、本発明において、酸化物透明導電膜の第二部分は結晶質とされることが望ましい。
【0024】
酸化物透明導電膜の第二部分は、第一部分の形成時と異なり、特には化合物半導体層に及ぼす酸化を考慮することなく形成温度を設定することが可能である。つまり、第二部分の形成時においては、多結晶や単結晶といった結晶質として形成するために必要とされる成膜エネルギーに呼応する形で、適宜、形成温度を高めることが可能である。また、第二部分は、酸化物透明導電膜自体の結晶性を有為に確保するために、第一部分に比べて、特に結晶性に富んだものとする必要がある。これら内容より、酸化物透明導電膜の第二部分は結晶質として形成するのが望ましいと言える。
【0025】
ここまでに述べてきた化合物半導体層は、酸化物透明導電膜と接触する界面を有する発光層部もしくは電流拡散層をなすものであり、その構成材料としては、Alを含む化合物半導体であれば特に限定されないが、具体的な例示を挙げるならば次のようなものである。発光層部をなす場合は、例えば、(Al1−xGaIn1−yP混晶化合物半導体(ただし、0≦x<1、0<y≦1)、つまりAlGaInP混晶化合物半導体を例示できる。また、電流拡散層をなす場合は、発光層部がAlGaInP混晶化合物半導体であれば、Al1−xGaAs1−y混晶化合物半導体(ただし、0≦x<1、0≦y≦1)、つまりAlGaAsP混晶化合物半導体を例示できる。なお、発光層部が、例えばAlGaInP混晶化合物半導体にて構成される場合においても、発光層部におけるそれぞれp型層およびn型層、さらにダブルへテロ構造であれば活性層における構成材料は、各層にて必要とされるバンドギャップエネルギーなどに対応して、それぞれ混晶率(上記組成式におけるxやy)は適宜調整される。さらに、電流拡散層においても、発光層部にて発光した光に対してバンド間吸収が起こらないように、AlGaAsP混晶化合物半導体の混晶率(上記組成式におけるxやy)は適宜調整される。
【0026】
また、酸化物透明導電膜の構成材料も特には限定されないが、例えば電気伝導率や材料費などを考慮すると、特には酸化亜鉛や酸化インジウム錫(ITO)を用いるのが望ましい。つまり、室温近傍における電気伝導率が大きいという観点や、材料費が安価であるという観点を加味するとともに形成の容易性において、酸化物透明導電膜における第一部分及び第二部分は、酸化インジウム錫又は酸化亜鉛にて構成するのが望ましい。ここで、酸化物透明導電膜における第一部分および第二部分を、ともに酸化インジウム錫または酸化亜鉛のいずれかから構成させてもよいが、屈折率の違いを利用し電極の形成領域を効果的に避けることにより、光取出し効率を向上させる観点からは、例えば、第一部分は酸化インジウム錫にて構成し、第二部分は酸化亜鉛にて構成することが、より望ましいと言える。
【0027】
ここまでに、本発明の製造方法に係わる要件について述べてきたが、本発明の製造方法にて形成される発光素子においては、酸化物透明導電膜との界面を形成する化合物半導体層の界面部の酸化に伴う抵抗率の増大が、効果的に抑制ないし防止されたものとなる。その結果、酸化物透明導電膜の機能をより有効なものとすることができるとともに、内部量子効率が効果的に高められた素子特性に優れた発光素子とすることが可能となる。また、上記したように、酸化物透明導電膜における第一部分および第二部分における結晶形態としては、第一部分は特に非晶質であるのがよく、一方、第二部分は特に結晶質であるのがよい。そこで、これら第一部分および第二部分の結晶形態を、特に望ましい形態として位置付けられる発光素子を本発明の発光素子とする。
【0028】
即ち、本発明の発光素子は、
発光層部あるいは電流拡散層をなし、かつAlを含む化合物半導体層上に、酸化物透明導電膜が形成された発光素子であって、
前記酸化物透明導電膜は、前記化合物半導体層と接触する非晶質の第一部分と、該第一部分上に形成される結晶質の第二部分とを有することを特徴とする。
【0029】
上記本発明の発光素子は、酸化物透明導電膜における第一部分が非晶質とされ、第二部分が結晶質とされる。つまり、酸化しやすいAlを含む、発光層部あるいは電流拡散層とされる化合物半導体層は、酸化物透明導電膜における非晶質の第一部分と接触してなる。ここで、酸化物透明導電膜において、第一部分を非晶質とし、第二部分を結晶質として形成するため、第一部分は第二部分を形成する際の形成温度よりも低温にて形成することが望ましい。その結果、化合物半導体層における酸化物透明導電膜と界面を形成する界面部の酸化に伴う抵抗率増大は、効果的に抑制ないし防止され、ひいては、内部量子効率が効果的に高められた素子特性に優れた発光素子とすることが可能となる。なお、酸化物透明導電膜の形成方法は、例えばスパッタリング法を用いればよい。
【0030】
上記本発明の発光素子において、酸化物透明導電膜の第一部分の形成厚さは、特に5nm以上10nm以下とするのが望ましく、また、酸化物透明導電膜の形成厚さは、特に0.2μm以上1μm以下とするのが望ましい。
【0031】
上記本発明の発光素子における酸化物透明導電膜の構成材料は特に限定されないが、上記同様の限定理由にて、第一部分及び第二部分は、酸化インジウム錫又は酸化亜鉛にてなることが望ましく、さらには、第一部分は酸化インジウム錫にてなり、第二部分は酸化亜鉛にてなることが望ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の製造方法により得られる本発明の発光素子12を示すものである。該発光素子12は、AlGaInP混晶化合物半導体にて構成される発光層部9と、該発光層部9上に形成され、酸化インジウム錫(ITO)にてなる酸化物透明導電膜10と、通電電極7および裏面電極8とを有する。さらに、発光層部9は、AlGaInP活性層3(以下、単に活性層3とする)を、該活性層3よりもバンドギャップエネルギーが大きいn型AlGaInPクラッド層2(以下、単にn型クラッド層2)、及びp型AlGaInPクラッド層4(以下、単にp型クラッド層4とする)とで挟み込んだダブルへテロ構造をなす。そして、このような発光層部9は、AlGaInP混晶化合物半導体と格子整合しやすい、例えばGaAs単結晶基板1上に、n型クラッド層2、活性層3、p型クラッド層4がこの順序でエピタキシャル成長されてなる。このエピキシャル成長は、例えば、ハイドライド気相成長法、有機金属気相成長法、分子線エピタキシ成長法などの公知の気相成長法を用いて行う。
活性層3、n型クラッド層2およびp型クラッド層4は、具体的には、それぞれ(Al1−xGa0.51In0.49P、(Al1−yGa0.51In0.49P、(Al1−zGa0.51In0.49Pにて構成され、それぞれの混晶率x、y、zは、0≦x<1、x>y、x>zを満足する。
【0033】
このような発光層部9上に、スパッタリング法により形成される酸化物透明導電膜10は、発光層部9に接触する側に第一部分5が形成され、該第一部分5上に第二部分6が形成されてなる。また、酸化物透明導電膜10のうち、第一部分5は非晶質(アモルファス)であり、第二部分6は結晶質である。このような構成とすることで、酸化物透明導電膜10と界面を形成する発光層部9の界面部における酸化に伴う抵抗率の増大を効果的に抑制ないし防止することが可能となり、発光素子12の素子特性を優れたものとすることができる。さらに、酸化物透明導電膜10の膜厚は0.2μm以上1μm以下であり、第一部分の膜厚は5nm以上10nm以下の範囲に設定されてなる。このように酸化物透明導電膜の膜厚を調整することで、通電電極7から発光層部9に対して発光駆動用電圧が印加されると、酸化物透明導電膜10内において、電流が発光層部9の層面内全体に均一に広がるとともに、第一部分5をトンネル効果により電流が導通して発光層部9に至ることになる。その結果、発光層部9の層面内全体から発光がより生じ易くなり、ひいては通電電極7の非形成領域からの光取出し効率を効果的に高めることができる。
【0034】
また、本発明の発光素子は、図2に示すような発光素子13とすることもできる。該発光素子13においては、AlGaInP混晶化合物半導体にて構成される図1と同様の発光層部9上に、AlGaAsP混晶化合物半導体からなる電流拡散層11がエピタキシャル成長にて形成されており、該電流拡散層11上にスパッタリング法によりITOからなる酸化物透明導電膜10が形成されてなる。酸化物透明導電膜10のうち、電流拡散層11に接する側には、第一部分5が形成されており、該第一部分上に第二部分6が形成されてなる。なお、酸化物透明導電膜10は、図1に示すものと同様の構造を有するものとされる。このような酸化物透明導電膜10を電流拡散層11上に形成することで、電流拡散層11の層厚を効果的に小さくできるとともに、光取出し効率に優れた、より安価な発光素子とすることができる。ここで、電流拡散層11は、発光層部9にて発光した光に対するバンド間吸収が起こらないように、Al1−xGaAs1−y(0≦x<1、0≦y≦1)における混晶率xおよびyが適宜調整されてなるAlGaAsP混晶化合物半導体にて構成される。また、電流拡散層11の層厚は、50nm以上2μm以下とされる。
【0035】
図1および図2に示される酸化物透明導電膜10はITOからなるものとしたが、その他にも酸化亜鉛などを好適な構成材料として用いることができる。これらITOおよび酸化亜鉛は、酸化物透明導電膜として形成したときの導電性および透光性が良好であり、形成が容易であることなどから特に好適な構成材料と言える。また、酸化物透明導電膜の第一部分及び第二部分を異なる材料により形成することも可能であり、例えば、第一部分をITOにて、第二部分を酸化亜鉛にて形成してもよい。非晶質のITO膜上に結晶質の酸化亜鉛を形成することにより、光取出し効率がさらに向上する。光取出し効率が向上するのは、ITOよりも酸化亜鉛の方が可視領域の光に対する屈折率が小さいためである。
【0036】
上記のような発光素子12、13は、従来行われている方法により、発光素子用の発光層部などを基板の主表面上にエピタキシャル成長させたエピタキシャルウエーハを作製し、該エピタキシャルウエーハの主表面上に酸化物透明導電膜を本発明の方法に基づいて形成したのち、これを素子化することにより得ることができる。
【0037】
以下、本発明に係わる酸化物透明導電膜の形成方法について、より好適な方法を含めて説明する。
図3は、本発明の製造方法にて使用されるスパッタリング装置の概要を模式的に示すものである。スパッタリング装置100のチャンバ101内に、ターゲット102とウエーハホルダー103とが対向する形で配置されている。ターゲット102は、酸化物透明導電膜10となる原料(ここではITO)にて構成される。ターゲット102とウエーハホルダー103とは高周波電源および直流電源に接続されており、ターゲット102およびウエーハホルダー103が電極を兼ねる。チャンバ101内には、放電用ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスが充填されており、電極間に電圧を印加すると、放電用ガス中にプラズマが発生し、ターゲット102にイオンが衝突する。そして、ターゲット102から叩き出された原子などがウエーハホルダー103上に載置されているウエーハW上に堆積する。ウエーハWは、図1および図2にて示した発光素子12、13用のエピタキシャルウエーハWであり、発光層部9あるいは電流拡散層11となるAlGaInP層9’あるいはAlGaAsP層11’が最表面に形成されている。
【0038】
図3のようなスパッタリング装置100を用いて、例えば図4に示すような温度プロセスに基づき、酸化物透明導電膜10を形成する。ウエーハホルダー103にウエーハWを載置した後、電極(ターゲット102とウエーハホルダー103)間に放電用ガス(アルゴンガス)を充填し、ウエーハWの温度を第一温度(50℃以上600℃以下)にしてスパッタリングを行う。アルゴンガスの圧力は0.5〜2Paとする。この時、スパッタリング装置100において、電極間に直流電圧を重畳させた高周波電圧を印加する。このような成長条件にて、ウエーハW上に第一部分5を形成する。そして、第一部分5を形成した後、チャンバ内を加熱して、ウエーハWの温度を、第一温度よりも高温の第二温度(400℃以上800℃以下)にし、第二部分6を形成する。この第二部分6の形成においては、直流電圧を電極間に特に印加することなく、高周波電圧のみを電極間に印加させたスパッタリングとしてもよい。このようにして、第一部分5および第二部分6からなる酸化物透明導電膜10を形成することができる。
【0039】
上記のような形成条件を採用することで、第一部分5は第二部分6よりも低温にて形成されることになる。その結果、第一部分5の形成時に、ウエーハWの最表面に形成されているAlGaInP層9’あるいはAlGaAsP層11’が酸化されるのを効果的に抑制できる。さらに、直流電圧を重畳した高周波電圧を電極間に印加させて第一部分5の形成を行っているので、第一部分5の緻密性を効果的に高めることができる。他方、第二部分6においては、第一部分5よりも高温にて形成することが可能となるので、第二部分の構成材料となるITOを緻密性とともに結晶性よく成長させることができる。なお、スパッタリングを行う時間を調整することで、第一部分の厚さは5nm以上10nm以下、第二部分の厚さは0.2μm以上1μm以下となるように調整されてなる。また、重畳される直流電圧の電圧値は100〜300Vの範囲にて、形成温度などを加味して調整され、交流電圧の周波数は13.6MHz帯域幅7kHzにて、実効値電圧は100〜300Vの範囲にて、形成温度などを加味して調整される。
【0040】
図3を用いて説明した上記実施形態においては、第一部分5と第二部分6とを同一のターゲット102を用いて同一の材料(ITO)により形成しているが、第一部分5と第二部分6とを別々のターゲット102を用いて、異なる材料により形成することも勿論可能である。例えば、第一部分5をITOにて、第二部分6を酸化亜鉛にて構成することもできる。この場合、図4における第一温度にてITO膜とされる第一部分5を形成した後、ターゲットを酸化亜鉛にて構成されるものに取り替えて、第二温度にて酸化亜鉛からなる第二部分を形成すればよい。
【0041】
本発明の製造方法に係わる実施形態を上述したが、あくまで例示であって、特に、酸化物透明導電膜における第一部分を非晶質とし、第二部分を結晶質とするように製造してもよく、その場合、構成材料にもよるが、常温〜350℃程度にて形成温度を設定すれば非晶質とすることができ、それよりも高い形成温度を設定すれば結晶質とすることができる。また、上述した本発明の発光素子や、本発明の製造方法に係わる実施形態に本発明は限定されず、請求項の記載に基づく技術的範囲を逸脱しない限り、種々の変形ないし改良を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子の1例を示す概略断面図。
【図2】本発明の発光素子の図1とは異なる1例を示す概略断面図。
【図3】本発明の製造方法に使用されるスパッタリング装置の概要を示す図。
【図4】本発明の酸化物透明導電膜の形成に係わる温度プロセスの1例を示す図。
【符号の説明】
1 GaAs単結晶基板
2 n型クラッド層
3 活性層
4 p型クラッド層
5 第一部分
6 第二部分
9 発光層部
10 酸化物透明導電膜
11 電流拡散層
12、13 発光素子
100 スパッタリング装置
101 チャンバ
102 ターゲット

Claims (13)

  1. 発光層部あるいは電流拡散層をなし、かつAlを含む化合物半導体層上に、酸化物透明導電膜をスパッタリング法により形成する発光素子の製造方法において、
    前記酸化物透明導電膜の、前記化合物半導体層と接触する第一部分を、それ以降に形成される第二部分よりも低い温度にて形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
  2. 前記第一部分を、ターゲットと前記化合物半導体層との間に直流電圧を重畳した高周波電圧を印加する高周波スパッタリング法にて形成することを特徴とする請求項1記載の発光素子の製造方法。
  3. 前記第一部分を、前記化合物半導体層の温度を50℃以上600℃以下として形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子の製造方法。
  4. 前記第二部分を、前記化合物半導体層の温度を400℃以上800℃以下として形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  5. 前記第一部分の形成厚さを、5nm以上10nm以下とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  6. 前記酸化物透明導電膜の形成厚さを、0.2μm以上1μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  7. 前記第一部分は非晶質とされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  8. 前記第二部分は結晶質とされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  9. 前記第一部分及び前記第二部分は、酸化インジウム錫又は酸化亜鉛にて構成することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
  10. 前記第一部分は酸化インジウム錫にて構成し、前記第二部分は酸化亜鉛にて構成することを特徴とする請求項9に記載の発光素子の製造方法。
  11. 発光層部あるいは電流拡散層をなし、かつAlを含む化合物半導体層上に、酸化物透明導電膜が形成された発光素子であって、
    前記酸化物透明導電膜は、前記化合物半導体層と接触する非晶質の第一部分と、該第一部分上に形成される結晶質の第二部分とを有することを特徴とする発光素子。
  12. 前記第一部分及び前記第二部分は、酸化インジウム錫又は酸化亜鉛にてなることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
  13. 前記第一部分は酸化インジウム錫にてなり、前記第二部分は酸化亜鉛にてなることを特徴とする請求項12に記載の発光素子。
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