JP2004258364A - 光利用装置、表示体、発電体、および光利用装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機ELを発光層14として備えた表示パネル10において、金属電極層12の表面12aにモス・アイ構造を形成して、光吸収領域30を設ける。モス・アイ構造は、周期的な錐状で光の波長以下程度の微細構造31を備えており、外光は吸収され反射が無くなる。したがって、電極層12の表面に余分な膜を形成することなく、外光反射を防止でき、低コストで、電気的な特性も維持でき、表示コントラストが高く、低消費電力の表示パネル10として提供できる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学装置における外光利用あるいは不利用をさらに積極的に行える装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自発光型のフラットパネルディスプレイ(FPD)として、有機EL素子を用いた表示パネルや、プラズマディスプレイパネル(PDP)を用いたものがある。有機ELパネルでは、陰極電極として放電率の高い、すなわち仕事関数の低い金属電極、主にアルミニウムあるいはクロムなどの金属が用いられている。一方、金属電極は、反射性の高い部材(電極)であり、昼間の太陽光の下などの明るい環境では、外光が金属電極により反射され、自発光素子である有機ELから射出される光との間のコントラストが低下する。このため、表示コントラストが低下してしまうという問題が生じる。
【0003】
外光の反射によるコントラストの低下を抑制するためには、パネル表面に円偏光板を貼る方法が知られている。しかし、この方式では円偏光板の透過率が40%程度で、EL(発光層)の放射光を必要以上に遮断してしまうという問題がある。さらに、金属反射の場合は、反射による位相のずれがπとは限らないので、金属電極での反射光を円偏光板が遮断しきれないという問題がある。
【0004】
一方、外光反射を抑える方法としては、特開平2−276191号公報には、反射性電極の上に吸光と干渉により、電極での光反射を0に近づける薄膜を形成する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−276191号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平2−276191号公報に記載された方法では、複数の薄膜を積層する必要があり、しかも、その膜を極めて高精度な厚みで膜付けしなければならない等、技術的な課題が大きく、信頼性の高い製品を低コストで製造するには不向きである。さらに、電極の表面を電極とは異なる材質、たとえば、金属製の電極に対して誘電体の膜により覆う必要があるので、電極と発光層との接触状態は変わってしまい、必ずしも発光層を所望の条件で駆動することが可能になるとは限らない。したがって、性能が低下する要因となる可能性が高い。
【0007】
一方、金属電極に代り、透明電極を採用して、透明電極に光吸収性の層を貼り付けるという方法で、光の反射を防止する方法も考えられる。しかしながら、発光体と透明電極との界面では、屈折率の差や界面の形成状態により光が反射する可能性は常にあり、反射を完全になくすことは難しい。また、ITOなどの透明電極に比較すれば、仕事関数、製造の容易さ、コストなどから金属製の電極はメリットが大きく、光を透過させないといけないという積極的な要求がない場所に透明電極を採用することはできれば避けたい事項である。
【0008】
また、外光を利用して発電する装置に太陽電池がある。この太陽電池においては、外光を反射しないようにする、すなわち、外光の吸収性を高めることにより光の利用効率が高くなる。しかしながら、発電に関与しない層で外光を吸収しても意味はなく、少なくともi型のシリコン層を挟むシリコン電極層(n型のシリコン層)の近傍における光の吸収性を高めないと意味がない。
【0009】
このように、発光あるいは発電などの目的で電力と光学的状態とが関連する変換層を有する光利用装置においては、光の反射率の小さな非透過性の電極構造は非常に利用価値が高い。そこで、本発明では、光の反射率の小さな非透過性の電極構造であって、電極表面に誘電体薄膜などの他の素材を積層しなくて済む構造を提供する。そして、表示体においては、外光反射を抑制でき、光の利用効率が高く、さらに低消費電力を図ることができる表示体、およびそれを利用した表示装置を提供することを目的としている。また、太陽電池などの外光を利用する装置においては、外光の利用効率をさらに向上して、変換効率の高い発電装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、電極の外界に向いた側にモス・アイ構造を形成し、電極表面における反射を抑制する。本発明においては、電力と光学的状態とが関連する変換層と、この変換層に関わる電極層とを有する光利用装置であって、電極層の外界に向いた側の少なくとも一部は、モス・アイ構造を備えた光吸収領域である光利用装置を提供する。また、電力と光学的状態とが関連する変換層を形成する第1の工程と、この第1の工程と前後して電極層を積層する第2の工程を有する光利用装置の製造方法であって、第2の工程は、電極層の外界に向いた側の少なくとも一部に、モス・アイ構造を形成する工程を備えている光利用装置の製造方法を本発明では提供する。
【0011】
本明細書においてモス・アイ構造とは、円錐または角錐状(先端が鋭角に尖っていない円錐台または角錐台も含む。)などの微細構造、たとえば、微細凹凸、微細突起、微細凹みが複数形成されている構造を含む。各々の微細構造のピッチは、可視光の波長以下が望ましく、50nm〜100nm程度であることが望ましい。さらに、微細構造は縦長で、そのアスペクト比(縦横比)は1以上であることが望ましい。
【0012】
モス・アイ構造は、ガラス表面に、蛾の目を模倣した構造、すなわち、1μm以下の円錐状の微細形状を2次元に周囲配列して、光学素子に安定した無反射な面を形成することを目的で開発されている。
【0013】
本発明では、モス・アイ構造を光学素子ではなく電極表面に形成する。これにより、電極の材質を変えずに、その表面を無反射構造にすることが可能であり、光の反射率の小さな非透過性の電極構造を提供することができる。さらに、表面が無反射になるのであれば、導電性を損なうことなく、表面反射を抑制できるので金属性の電極の応用範囲はいっそう広がる。そして、アルミニウムおよびクロムなどの電極に適した金属膜は展性を備えているので、超精密金型を用いたエンボス加工によりモス・アイ構造を導入することが可能であり、低コストで無反射構造を光利用装置に導入することができる。
【0014】
超精密金型は、シリコンをドライエッチングにより、パターニング加工して突起の雌型を作成し、その雌型に超硬合金をスパッタリングし、シリコンをウエットエッチングで除去して突起を成形することにより製造できる。また、放射光露光および電鋳により金型を作成することも可能である。
【0015】
モス・アイ構造により、光吸収領域に円錐または角錐状の微細構造を複数形成でき、最密充填な形状であるため、金属層の導電率を低下させず電極としての特性を十分に維持できるというメリットもある。さらに、微細構造は、50nm〜100nm程度のピッチで配置することが望ましく、アスペクト比は1以上であることが望ましい。光の波長よりも小さな構造を備えた光吸収領域を電極表面に形成することにより、この領域では、光が幾何学的な振る舞いができず、さらに、微細構造の先端から根元に向けて物質の充填率が高くなるため、光は屈折率が徐々に変化する物質を通るときのように振る舞い、界面での反射を起こさずに減衰する。したがって、変換層と共に積層されたり、変換層に隣接して形成されたり、変換層に積層されたり、変換層と前後して形成されることにより変換層と関連した機能を有する電極層の表面に光吸収領域を形成することができ、電極層と変換層の界面あるいは電極層におけるフレネル反射を防止できる。このため、電極層と変換層との接触効率、伝達効率、その他のこれらの層が関連する性能を低下させることなく、電極層における反射を防止できる。したがって、外光反射を防止したい電極層が変換層に面している光利用装置に対して、本発明は特に有効である。
【0016】
電力を供給することにより発光する自発光層と、この自発光層に関わる金属製の電極層とを有する表示体においては、電極層の変換層に面した側の少なくとも一部にモス・アイ構造を形成して光吸収領域とすることにより、電極による外光反射を防止できる。したがって、外光反射を防止するための偏光板は不要となり、本発明の表示体を2次元にアレイ状あるいはマトリクス状に配置した表示パネルにおいては、光の利用効率(取出効率)が高く、明るい画像が表示可能であり、外光がある場合でも十分なコントラストを確保できる。したがって、本発明の表示パネルと、この表示パネルの発光層を駆動して画像を表示させる駆動装置とを有する表示装置においては、輝度が高く、どの方向から見ても、コントラストが高く非常に見やすい表示が可能な、指向性の高い表示装置として提供できる。
【0017】
変換層が、電力を供給することにより相変化するスイッチング層である表示体においても本発明は有効である。例えば、変換層が液晶の表示体および表示パネルにおいても有効である。TFT等を構成する配線部や容量部の表面にモス・アイ構造を形成し、無反射化(黒色化)できる。このため、外光反射を積極的に行いたい電極はモス・アイ構造を形成しないで反射効率を確保し、ブラックマトリクスとして機能させたいような電極層はモス・アイ構造を形成することにより無反射化できる。したがって、簡易な構成でコントラストの高い表示パネルおよび表示装置を提供できる。
【0018】
変換層が、光により電力を発生する発電層である光利用装置においても本発明は有効である。i型のアモルファスシリコン層による変換層を挟むn型のシリコン電極層の表面にモス・アイ構造を形成することにより変換層における光の吸収効率を向上でき、変換効率の高い発電パネルおよび発電装置を提供できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に示した携帯電話機1は、自発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL)を備えた表示パネル10と、表示パネル10の発光素子に電力を供給して画像を表示する駆動回路9とを搭載している。この表示パネル10は、本発明に係る光利用装置の一例であり、画素を表示する多数の有機ELを用いた発光層(発光素子)14がマトリックス状に2次元状に配置されており、駆動回路9はCPU、RAM、ROMなどから構成され、アクティブマトリックス方式やパッシブマトリックス方式により表示パネル10の発光素子14を駆動する。その結果、発光素子14から出力された光L1がユーザ90に向かって出力され、文字や画像などのデータが提供される。
【0020】
図2に、表示パネル10の概略構成を部分的に拡大した断面図で示してある。本例の表示パネル10は、トップエミッション型であり、ベース11の上に、金属製(本例ではクロム製)の電極層(陰極層)12と、有機ELなどの発光素子14を含む出力層18と、ITO電極を用いた透明な電極層(陽極層)13、エポキシ樹脂等の接着材16を介してガラスの保護層17が積層されている。出力層18は、複数のEL素子層(自発光層)14およびこれらのEL層14をそれぞれ囲むバンク層15とを含んでいる。したがって、1つのEL層14を発光素子として捉えると、この表示パネル10は発光素子14を備えた複数の表示体19が2次元にマトリクスあるはアレイ状に配置されたものとなっている。この表示体19は、基板11の上に、電極層12、発光層14、電極層13および保護層17が積層された構造となる。そして、表示体19では、駆動装置9を介して、電極極12および13に電圧を印加されると、これらの電極間に配置されたEL層14が発光する。本例のEL層14には、不図示の正孔/電子輸送層が含まれている。
【0021】
この表示パネル10においては、発光層14の裏側に配置された金属電極層12の外界91あるいはユーザ90に面した側、すなわち、発光層14に面した表面12aがモス・アイ構造が形成された光吸収領域30となっている。図3に、この光吸収領域30を拡大した状態を模式的に示してある。電極層12の表面12aは巨視的には平坦であるが、サブミクロンサイズでは、無数の規則的な凹凸の微細構造31が形成されている。このように規則的な円錐台あるいは角錐台状の凸形状、あるいは凹形状、さらには凹凸形状31が規則的に所定のピッチで形成された構造を、本明細書においては、モス・アイ構造と称する。円錐台あるいは角錐台状の微細構造31は、先端が尖った円錐あるいは角錐構造と等価であり、サブミクロンの微細構造において先端がどこまで尖塔状になっているかの相違でしかない。
【0022】
電極層12の表面12aに可視光レベルで無反射な光吸収領域30を形成するために、本例においては、錐状の突起31が波長の数分の1程度のサイズのピッチ、たとえば、50nm〜100nm程度のピッチpで最密充填されるように配置され、電極としての機能(導電性)も十分に維持されるようになっている。さらに、これら微細構造31のアスペクト比(縦横比)は1以上になるよう設計されており、たとえば、直径φが50μm、高さhが50nm以上の縦長の円錐または角錐が微細構造31が形成されている。
【0023】
このように、波長レベル以下のピッチで微細構造31が配置された領域30においては、光は幾何学的な振舞いができなくなり、さらに、錐状の微細構造31により先端から根元に向けて物質の充填率が高くなるため、ここに至った光は、屈折率が徐々に変化する物質を通るときのように振舞い、再び出ることはない。したがって、この領域30に到達した光はほぼ完全に吸収され、無反射領域となる。このため、表示パネル10において、外界91から入力される外光L2を考えたとき、発光層14を透過した外光L2は発光層14との電極層12との境界の光吸収領域30に到達して吸収され、外界91に反射されることがない。したがって、表示パネル10に円偏光板などの外光反射を防止するための余分な光学素子を設ける必要がなく、そのための製造コストの増加や、余分な光学要素による光の減衰を避けることができる。
【0024】
さらに、発光層14に接する電極層12の表面を光吸収領域30とすることにより、発光層14と電極層12との間に余分な層がない。したがって、余分な界面がなく、その様な界面によるフレネル反射が発生することもない。さらに、電極層12の表面12aも、異なる屈折率の明確な界面ではないため、電極層12の表面12aによるフルネル反射も起こらない。したがって、発光層14より下側(外界91と反対側)における反射は最小限にとどめることが可能となり、ほぼ外光L2の影響のない表示パネル10を提供できる。このため、本発明により、発光層14からの光L1の取出し効率が高く明るい画像を表示でき、その一方で、外光L2の反射がなく、コントラストの大きく鮮明な画像を表示できる表示パネル10を提供できる。したがって、光の利用効率が高く、消費電力が低く、昼夜でも鮮明な画像を出力できる表示装置1を提供できる。
【0025】
図4(a)〜(c)に、金属製の電極層12にモス・アイ構造を形成して外光反射の影響のない、あるいは少ない表示パネル10を製造する過程を示してある。この例では、金属電極よりも十分に硬度の高い超精密金型80を用いてモス・アイ構造をナノプリントする。微細形状を備えた精密金型80は、パターンに沿ってシリコンをドライエッチングして雌型を作り、超硬合金、たとえば、SiCをスパッタして超精密金型80を形成し、その後、シリコンをウエットエッチングで除去する。あるいは、LIGA(放射光露光)と電鋳の組合せにより、同様の超精密金型80を作ることができる。
【0026】
先ず、図4(a)に示すように、凸状パターン81が形成されたSiC製の精密金型(モールド)80を、基板11上に形成された金属の陰極電極層12の表面12aを押し付ける。これにより、図4(b)に示すように、金属電極層12の表面12aに、微細凸状パターン31が転写され、エンボス加工(型押し)により電極層12の表面12aにモス・アイ構造が形成される。さらに、図4(c)に示すように、バンク層15の内に、電子輸送層などを含む発光層14をインクジェット技術などにより成膜する。
【0027】
さらに、透明電極(ITO)13を製膜し、その表面(上方)に接着材16を介してガラス基板17を接合することにより、図2または図3に示したような、トップエミッション型の有機ELの表示パネル10が製造される。
【0028】
本例の製造方法であれば、薄膜な金属層12の表面12aを簡単にモス・アイ構造を形成し光吸収領域30を設けることができる。また、金属層12の表面に、新たに薄膜の干渉膜(吸収膜)を設ける必要もない。したがって、高精度で膜厚を管理する必要がある工程が非常に少なくなり、製造は容易で歩留まりも高い。また、金属層12の表面12aが直に発光層14に接触するので、接触効率も高く、発光性能も高い表示パネルを提供できる。
【0029】
なお、金属電極層は、クロムに限らず、アルミニウムなどの他の金属であっても良い。陰極電極には、仕事関数の低いアルカリ金属やアルミニウム等が望ましいが、用途に応じて、金や銅などであっても良い。金や銅などの展性のある軟らかい金属はエンボス加工には適している。
【0030】
図5に、異なる表示パネル10aの概要を示してある。本例の表示パネルは、ボトムエミッション型の有機EL型の表示体19を備えており、ベース基板11の上に、陽極電極(ITO)、有機EL発光層14およびバンク層15、さらに、本例ではアルミニウムの陰極電極(電極層)12bが積層されている。また、本例もEL発光層14は、正孔輸送層および電子輸送層を含む。これらは、さらに、接着材16を介してガラス基板17で封止されている。また、本例の表示パネル10aは、陽極電極(ITO)側へ表示光L1を発光するようになっている。このボトムエミッション型の表示パネル10aも、上記の表示パネル10と同様に、薄膜の金属製の電極層12bにモス・アイ加工された、図3に示したような、光吸収領域30が設けられている。このため、電極層12bでの反射は0となり、外光を遮蔽でき、コントラストを向上させることができ、かつ電極層12bの電気的な特性は維持され低消費電力を実現できる。
【0031】
図6に、本発明に係る光利用装置の異なる例として、ディスプレイ等に用いられるTFT液晶パネル10bを示してある。この液晶パネル10bは、液晶層54を挟むように絶縁性の透明基板50aおよび50bが設けられ、この透明基板50a上に、TFTを駆動するためのゲート配線(信号)52やソース信号線(不図示)が配置される。液晶パネル10bでは、画素分離するために画素電極51の周囲を光が透過しないように遮光する必要があり、それを囲うようにゲート配線52やソース信号線といった金属電極を配置して遮光することが考えられる。しかしながら、遮光性の高い金属配線であると、それによる外光の反射およびコントラストの低下が問題となり、結局、ブラックマトリクスなどの遮光を目的とした構造層を積層している。
【0032】
これに対し、図6に示したように、遮光も目的として配置される金属製の電極52の表面52aを、上述したようなモス・アイ構造を形成して光吸収領域30とすることにより、外光反射を防止できる。したがって、遮光に適した位置に金属製の電極を配置することにより、ブラックマトリクスを省略したり、ブラックマトリクスでカバーする必要のあるエリアを縮小することができ、液晶を用いた表示体19bの構造を簡略化できる。また、TFT駆動回路などのメタル配線部や容量部が外界から見えると、それらの部分での外光反射が問題となる可能性があり、そのような電極の外界に面した側をモス・アイ加工することにより、配線部を覆い隠す遮蔽膜(ブラックマトリックス)を省略できる。したがって、低コストでコントラストの高い表示が可能な液晶表示体19bおよびそれが2次元に配置された表示パネル10bを提供できる。
【0033】
図7に、本発明に係る光利用装置の一例として、太陽電池(光利用装置)を示してある。本例の太陽電池3は、アモルファスシリコン太陽電池であり、外光(太陽光)L2を取入れるガラス等のベース基板60と、透明電極61と、pin型のアモルファスシリコン製の発電体62と、金属電極63がこの順番で積層されている。発電体62は、p型のシリコン電極層65と、i型のシリコン発電層66と、n型のシリコン電極層67が積層された構成になっており、i型のシリコン発電層66が光を吸収することにより発生したキャリア(正孔および電子)が内部電界によるドリフトで運ばれて電圧が発生する。このような構造をした複数の発電セル69が複数、2次元に配列されることにより太陽電池パネル4が形成される。そして、太陽発電装置3は、太陽電池パネル4と、発電セル69を適当に接続することにより所定の電圧の電力を取り出すことができるインターフェイス70とを備えている。
【0034】
本例の発電体62においては、n型のシリコン電極層67の発電層66の側を向いた面67aにモス・アイ構造が形成され、光吸収領域30が設けられている。したがって、発電層66を通過してしまい、発電に寄与しなかった光も、発電層66と電極層67との境界領域で吸収され、キャリアを発生させ、発電効率を向上できる。
【0035】
図8(a)〜(e)に、シリコン製の電極層67の表面67aにモス・アイ構造を形成するプロセスを示してある。先ず、図8(a)に示すように、電極層67となるn型のアモルファスシリコン層を形成する。次に、図8(b)に示すように、シリコン電極層67の表面67aにリフトオフ用のレジスト89を塗布し、ホログラム露光および現像し、図8(c)に示すようなパターニングを行う。モス・アイ構造として、ピッチpが80nm、アスペクト比が1程度の微細構造31を形成するためには、40nm幅、高さ60nmのレジスト89が80nmピッチで残るようにすることが可能である。
【0036】
そして、図8(d)に示すように、パターニングされた凹凸状のレジスト89を覆うように、同じa−Si層(n層)67tをディポジットなどの方法により製膜する。そして、レジスト89を有機溶媒と超音波を用いてリフトオフする。このリフトオフ加工は、薄膜エッチング手法として知られているものである。その結果、図8(e)に、モス・アイ構造となる微細構造31が周期的に規則正しく形成された光吸収領域30がn型シリコン電極層67の表面67aに形成される。この後、図7に示したように、シリコン電極層67にi型のシリコン発電層66、p型のシリコン電極層65などを積層することにより太陽発電体69が製造できる。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、電極層の表面にモス・アイ構造を形成することにより、複雑な製膜プロセスを用いずに、また、余分な膜を付けずに金属製の電極であってもその表面を無反射化することができる。したがって、表示装置であれば、外光反射の影響を簡易な構造で防止でき、表示コントラストが向上し、光の利用効率が高く、表示品質が高く、高効率で消費電力の少ない表示装置を提供できる。また、太陽電池に適用すると、簡易な構成でエネルギー変換効率の高い発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る表示パネルが搭載された携帯電話機の概要を示す図である。
【図2】表示パネルの概略構成を示す断面図である。
【図3】電極層の表面を拡大して示す図である。
【図4】表示パネルの製造プロセスを示す図である。
【図5】異なる表示パネルの概要を示す断面図である。
【図6】異なる表示パネルの概略構成を示す断面図である。
【図7】アモルファス太陽電池の概要を示す図である。
【図8】図7に示す太陽電池の電極にモス・アイ構造を形成するプロセスを示す図である。
【符号の説明】
1 携帯電話機
3 太陽電池
10、10a、10b 表示パネル
9 駆動回路
11 基板
12、12b、13 電極層
12a 電極層の表面
14 発光層
30 光吸収領域
31 微細構造
L1 表示光
L2 外光
Claims (29)
- 電力と光学的状態とが関連する変換層と、
この変換層に関わる電極層とを有する光利用装置であって、
前記電極層の外界に向いた側の少なくとも一部は、モス・アイ構造を備えた光吸収領域である光利用装置。 - 請求項1において、前記光吸収領域には、円錐または角錐状の微細構造が複数形成されている光利用装置。
- 請求項2において、前記微細構造は50nm〜100nm程度のピッチで配置されている光利用装置。
- 請求項2において、前記微細構造のアスペクト比は1以上である光利用装置。
- 請求項1において、前記光吸収領域は、前記変換層に面している光利用装置。
- 請求項1において、前記電極層は金属製である光利用装置。
- 請求項1において、前記変換層は、前記電極層から電力を供給することにより発光する自発光層である光利用装置。
- 請求項7において、前記変換層は、EL層である光利用装置。
- 請求項1において、前記変換層は、前記電極層から電力を供給することにより相変化するスイッチング層である光利用装置。
- 請求項9において、前記変換層は、液晶層である光利用装置。
- 請求項1において、前記変換層は、光により電力を発生する発電層である光利用装置。
- 電力を供給することにより発光する自発光層と、
この自発光層に関わる金属製の電極層とを有する表示体であって、
前記電極層の前記変換層に面した側の少なくとも一部は、モス・アイ構造を備えた光吸収領域である表示体。 - 請求項12において、前記自発光層は、EL層である表示体。
- 請求項12に記載の表示体が2次元に配置された表示パネル。
- 請求項14に記載の表示パネルと、
前記表示体の発光層に電力を供給して画像を表示する駆動装置とを有する表示装置。 - 電力を供給することにより相変化するスイッチング層と、
このスイッチング層に関わる金属製の電極層とを有する表示体であって、
前記電極層の外界に面した側の少なくとも一部は、モス・アイ構造を備えた光吸収領域である表示体。 - 請求項16において、前記スイッチング層は、液晶層である表示体。
- 請求項16に記載の表示体が2次元に配置された表示パネル。
- 請求項18に記載の表示パネルと、
前記表示パネルを駆動して画像を表示する駆動装置とを有する表示装置。 - 光を供給することにより発電する発電層と、
この発電層に関わる電極層とを有する発電体であって、
前記電極層の前記変換層に面した側の少なくとも一部は、モス・アイ構造を備えた光吸収領域である発電体。 - 請求項19において、前記電極層は、アモルファスシリコン層である発電体。
- 請求項20に記載の発電体が2次元に配置された発電パネル。
- 請求項20に記載の発電体と、
前記発電体からの電力を出力するインターフェイスとを有する発電装置。 - 電力と光学的状態とが関連する変換層を形成する第1の工程と、
この第1の工程と前後して電極層を積層する第2の工程を有する光利用装置の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記電極層の外界に向いた側の少なくとも一部に、モス・アイ構造を形成する工程を備えている光利用装置の製造方法。 - 請求項24において、前記第2の工程では、前記第1の工程の前に前記電極層の前記変換層に面する少なくとも一部にモス・アイ構造を形成する光利用装置の製造方法。
- 請求項24において、前記第2の工程では、円錐または角錐状の微細構造が複数形成される、光利用装置の製造方法。
- 請求項26において、前記微細構造は50nm〜100nm程度のピッチで配置される、光利用装置の製造方法。
- 請求項26において、前記微細構造のアスペクト比は1以上である、光利用装置の製造方法。
- 請求項26において、前記第2の工程では、前記微細構造が超精密金型を用いてエンボス加工される、光利用装置の製造方法。
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