JP2004258110A - 光学薄膜成膜装置及び光学素子 - Google Patents

光学薄膜成膜装置及び光学素子 Download PDF

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毅治 小宮
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Abstract

【課題】従来に比して均一に成膜を行うことができる光学薄膜成膜装置を提供する。
【解決手段】スパッタイオン源3よりターゲット2に対してArイオンなどのイオンを照射する。イオンの照射を受けたターゲット2では衝撃により表面近傍の部分がスパッタ粒子として飛散する。このときスパッタ粒子の分布はターゲット中心付近ほど密になっており、この分布を維持したまま大半はミラー1へと向かって行く。この例ではターゲット2とミラー1の間に設置した遮蔽板4aにより、ミラー1の自転中心付近へ到達するスパッタ粒子の一部が遮蔽されて、ミラー1の自転中心付近の成膜速度が外周部での成膜速度に近づき制御性が向上する。さらにミラー1の直前に設けられた補正板4bにより曲率に応じたスパッタ粒子の遮蔽が行われ、均一な膜厚を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学レンズ、ミラー等の光学素子の表面に光学薄膜(例えば、反射膜、反射防止膜等)を成膜させるための光学薄膜成膜装置、及びレンズ、ミラー等の光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学レンズ、ミラー等のような光学素子の表面には、反射膜、反射防止膜等の光学薄膜が形成されるのが普通である。一般的にこのような光学薄膜を成膜するには、光学素子を自転させ、ターゲットから発生する物質を、光学素子の成膜面付近に配設された、膜厚分布を均一に補正する補正板を介して光学素子表面に当てて堆積させる方法が用いられ、具体的にはスパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等が用いられる。
【0003】
図5(a)に、従来から用いられている光学薄膜成膜装置の一例を示す。この装置は真空排気可能な密閉された成膜室内に、ターゲット12と、スパッタイオン源13と、補正板14と、図示しない支持機構により自転自在に支持された光学素子(図ではミラー)11とを配設してなる。なお光学素子11は支持機構により矢印で示すように自転するようにされている。
【0004】
成膜処理は、成膜室内を真空排気した状態で、ターゲット12に対してスパッタイオン源13よりイオンを照射して行われ、ターゲット12より放出されるスパッタ粒子を光学素子11の表面に付着させて薄膜を形成させる。このとき、一般に、ターゲット12から発生するスパッタ粒子は、ターゲット12の中心で多く発生し、又、曲率を有する光学素子では部分毎にターゲット12からの距離が異なるために膜厚分布にむらが生じる。例えば、図に示すような凸型の曲面を有する光学素子11の場合、その中心部がターゲット12に近く、周辺部がターゲット12から遠いため、中心部の成膜速度が大きくなり、中心部の膜厚が厚くなる。
【0005】
このように成膜速度が大きくなる部分があると、その部分の膜厚が厚くなって膜厚均一性が保てなくなるばかりでなく、膜厚を時間で制御しようとする場合、成膜速度が速いために、時間制御が厳しくなり、それだけ実際の膜厚が目標の膜厚からずれるという問題が生じる。
【0006】
これを補正するために、補正板14が図示のように設置されている。この補正板は光学素子の形状に合わせて、自転軸からの距離ごとに遮蔽する面積を調整されている。この補正板14は、例えば図5(b)に示すような形状を有し、遮蔽板としての役割を果たす。図のハッチング部分が補正板14の形状を示しており、この部分でスパッタ粒子が遮蔽される。この遮蔽率を光学素子11の自転軸の中心からの半径方向の距離に応じて変えることにより、光学素子11に到達するスパッタ粒子の数を、光学素子11の半径方向に変えることができ、これにより、成膜速度を均一にしようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5(b)に示すような補正板14の形状を調整することにより、光学素子11の中心付近の成膜速度を調整することは非常に困難である。例えば、図5(b)に示すような形状の補正板14を使用した場合、中心付近での遮蔽率が急激に低下し、図6(a)に示すような成膜速度分布が得られる。又、これを避けようとして例えば図5(c)に示すような形状の補正板14を使用した場合、中心付近での遮蔽率が急激に上昇し、図6(b)に示すような成膜速度分布が得られる。
【0008】
このように、従来の補正板14を使用した成膜速度分布の調整方法では、光学素子11の中心付近での成膜速度分布を調整することが困難であるという問題があり、これに起因して、全体の膜厚を所定の値に制御することが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光学素子、特に表面の曲率が大きな光学素子に対しても、従来に比して均一に成膜を行うことができる光学薄膜成膜装置及び光学素子を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、密閉可能に形成された成膜室内に、光学素子を支持すると共にこの光学素子を自転運動させる光学素子支持部と、前記光学素子表面に形成させる薄膜の原料となるスパッタ粒子を発生させ、前記光学素子表面に送出するスパッタ粒子生成装置と、前記光学素子の自転中心付近に到達する前記スパッタ粒子を制限するスパッタ粒子制限機構を有することを特徴とする光学薄膜成膜装置(請求項1)である。
【0011】
成膜装置を用いて成膜を行う場合、一般的に光学素子の自転中心にスパッタ粒子が付着する割合が高くなり、光学素子の自転中心及びその近傍の成膜速度が高くなる。この傾向は、特に、光学素子の表面が凸形状のときに、光学素子の自転中心がスパッタ粒子生成装置に近くなるので著しくなる。
【0012】
本手段においては、光学素子の自転中心付近に到達するスパッタ粒子を制限するスパッタ粒子制限機構が設けられているので、光学素子の自転中心及びその近傍に到達するスパッタ粒子の量が少なくなり、光学素子の自転中心及びその近傍の成膜速度が高くなることが抑制される。よって、光学素子全体の成膜速度を、従来に比べて均一化することができる。
【0013】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記光学素子における膜厚分布を均一に補正する補正板を有し、前記スパッタ粒子制限機構が、この補正板とは独立して配設されていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0014】
本手段においては、スパッタ粒子制限機構が、この補正板とは独立して配設されているので、例えば補正板を光学素子の近くに配置して、成膜速度の均一化を図り、スパッタ粒子制限機構をそれから少し離れたスパッタ粒子生成装置側に配置することにより、光学素子の自転中心及びその近傍に到達するスパッタ粒子の量の分布を、割と広い範囲にわたってなまった形で減少させながら、補正板により、光学素子の自転中心から離れた部分の成膜分布を均一にするようにすることができる。
【0015】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第2の手段であって、前記スパッタ粒子制限機構が、前記光学素子の自転中心付近に設けられたスパッタ粒子遮蔽板であることを特徴とするもの(請求項3)である。
【0016】
光学素子の自転中心付近にスパッタ粒子遮蔽板を設けることにより、簡単な機構で、光学素子の自転中心及びその近傍に到達するスパッタ粒子の量の分布を、割と広い範囲にわたってなまった形で減少させることができる。
【0017】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第2の手段であって、前記スパッタ粒子制限機構が、前記光学素子の自転中心付近に到達するスパッタ粒子の発生量を、前記光学素子の自転中心付近より外周側に到達するスパッタ粒子の発生量よりも少なくするように構成された、スパッタ粒子生成装置であることを特徴とするもの(請求項4)である。
【0018】
本手段においては、スパッタ粒子生成装置自体に、光学素子の自転中心付近に到達するスパッタ粒子の発生量を、光学素子の自転中心付近より外周側に到達するスパッタ粒子の発生量よりも少なくするような特性を持たせている。よって、前記第3の手段と同様の作用効果を有する。
【0019】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のうちいずれか1項に記載の光学薄膜成膜装置を用いて、表面に光学薄膜を形成されたことを特徴とする光学素子(請求項5)である。
【0020】
本手段においては、光学素子の全面に亘って、従来よりも成膜速度が均一化されるような光学薄膜成膜装置を用いているので、膜厚が均一になると共に、膜厚の制御が容易である。よって、膜厚精度の良い光学素子とすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態である光学薄膜成膜装置の概要を示す図である。この光学薄膜成膜装置は、成膜室(図示せず)内に設けられ、図示のように光学素子(ミラー)1を支持して自転運動させる素子支持機構(図示せず)と、薄膜の原料となるターゲット2とターゲット2にイオンビームを照射しスパッタリングを行うスパッタイオン源3を配置して構成される。
【0022】
成膜室内にはさらに、ターゲット2よりミラー1の自転中心付近に到達するスパッタ粒子の数を制限し、成膜速度を外周部より低く調整する遮蔽板4aと光学素子の形状に応じて膜厚分布を均一化する補正板4bがミラー1とターゲット2の間に設けられている。
【0023】
このような成膜装置を用いてミラー1の表面に光学薄膜を成膜するには、まず成膜室内を真空に排気し、次にスパッタイオン源3よりターゲット2に対してArイオンなどのイオンを照射する。イオンの照射を受けたターゲット2では衝撃により表面近傍の部分がスパッタ粒子として飛散する。このときスパッタ粒子の分布はターゲット2中心付近ほど密になっており、この分布を維持したまま大半はミラー1へと向かって行く。この例ではターゲット2とミラー1の間に設置した遮蔽板4aにより、ミラー1の自転中心付近へ到達するスパッタ粒子の一部が遮蔽されて、ミラー1の自転中心付近の成膜速度が外周部での成膜速度に近づき制御性が向上する。
【0024】
さらにミラー1の直前に設けられた補正板4bにより曲率に応じたスパッタ粒子の遮蔽が行われ、均一な膜厚を得ることができる。もし、補正板4bが無いと、遮蔽板4aによりミラー1の自転中心付近へ到達するスパッタ粒子の一部が遮蔽される結果、成膜速度分布は図2(a)に示すようになる。そこで、例えば、図2(b)に示すような形状の補正板4bを設けることにより、2(c)に示すような、より均一な形状の成膜速度分布を得ることができる。
【0025】
なお、図1においては、別体として、遮蔽板4aを補正板4bよりもターゲット2側に設けている。これにより、遮蔽板4aを回り込んだスパッタ粒子が少量ミラー1の自転中心付近へ到達するので、この部分で極端に成膜速度が落ちることを防止することができる。もし、差し支えがなければ、遮蔽板4aと補正板4bを同一部材としてもよい。
【0026】
図3に、本発明の第2の実施の形態である光学薄膜成膜装置の概要を示す。この装置も図示しない成膜室内に、光学素子(ミラー)1を支持して自転運動させる素子支持機構(図示せず)と、薄膜の原料となるターゲット2と、ターゲット2にイオンビームを照射しスパッタリングを行うスパッタイオン源3を配設して構成される。この実施の形態では、飛来するスパッタ粒子の密度分布を考慮して、ミラー1の回転中心付近で最も成膜速度が遅くなるようにターゲット2の位置を最適化することで自転中心付近の成膜速度を抑制し、膜厚制御性を向上させている。さらにミラー1の直前に設けられた補正板4bにより光学素子の曲率に応じたスパッタ粒子の遮蔽が行われ、均一な膜厚を得ることができる。
【0027】
もし、補正板4bが無いと、ミラー1の回転中心付近で最も成膜速度が遅くなるので、図4(a)に示すような成膜速度分布が得られる。そこで、例えば、図4(b)に示すような形状の補正板4bを設けることにより、ミラー1の回転中心付近で、最もスパッタ粒子が遮られることがないようにして、図4(c)に示すような、均一な成膜速度分布を得ることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、いずれも、成膜方法としてイオンビームスパッタが用いられているが、これをマグネトロンスパッタなど他のイオンプロセスとしてもよい。また、真空蒸着、イオンプレーティング等の他の成膜方法を用いてもよい。
【0029】
また補正板は単純な板状に限らず、スパッタ粒子の分布に応じてメッシュ状など穴の開いた形状としてもよく、さらに多層膜の成膜においては、可動式、取り替え式として、原料物質固有のスパッタ粒子分布に併せて移動させたり、取り替えたりするようにしてもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光学素子、特に表面の曲率が大きな光学素子に対しても、従来に比して均一に成膜を行うことができる光学薄膜成膜装置及び光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である光学薄膜成膜装置の概要を示す図である。
【図2】成膜速度分布と補正板の形状の例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である光学薄膜成膜装置の概要を示す図である。
【図4】成膜速度分布と補正板の形状の例を示す図である。
【図5】従来から用いられている光学薄膜成膜装置の一例を示すである。
【図6】成膜速度分布を示す図である。
【符号の説明】
1…ミラー
2…ターゲット
3…スパッタイオン源
4a…遮蔽板
4b…補正板

Claims (5)

  1. 密閉可能に形成された成膜室内に、光学素子を支持すると共にこの光学素子を自転運動させる光学素子支持部と、前記光学素子表面に形成させる薄膜の原料となるスパッタ粒子を発生させ、前記光学素子表面に送出するスパッタ粒子生成装置と、前記光学素子の自転中心付近に到達する前記スパッタ粒子を制限するスパッタ粒子制限機構を有することを特徴とする特徴とする光学薄膜成膜装置。
  2. 前記光学素子における膜厚分布を均一に補正する補正板を有し、前記スパッタ粒子制限機構が、この補正板とは独立して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の光学薄膜成膜装置。
  3. 前記スパッタ粒子制限機構が、前記光学素子の自転中心付近に設けられたスパッタ粒子遮蔽板であることを特徴とする請求項2に記載の光学薄膜成膜装置。
  4. 前記スパッタ粒子制限機構が、前記光学素子の自転中心付近に到達するスパッタ粒子の発生量を、前記光学素子の自転中心付近より外周側に到達するスパッタ粒子の発生量よりも少なくするように構成された、スパッタ粒子生成装置であることを特徴とする請求項2に記載の光学薄膜成膜装置。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の光学薄膜成膜装置を用いて、表面に光学薄膜を形成されたことを特徴とする光学素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010047821A (ja) * 2008-08-25 2010-03-04 Olympus Corp 光学的有効面の形成方法及び光学素子

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