JP2004257775A - 球形圧子の押し込み深さ測定方法及びその装置 - Google Patents

球形圧子の押し込み深さ測定方法及びその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】球形圧子の押し込み深さ測定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】1つの透明球体を球形圧子及びレーザのカップリング(結合)レンズとして使用し、該透明球体をレーザの光源と受光センサーの光軸に配置し、試験試料とレーザ放射面とレーザ受光面を固定し、試料表面に球形圧子を圧入させるために透明球体を変位させ、球レンズとレーザ光線との光結合軸に軸ずれを生じさせることにより受光センサーで計測される光パワーを増減させ、球レンズの移動量と光パワーの関係のうち線形関係にある領域を利用し、光パワーから換算される変位量により球形圧子の変位量を計測することを特徴とする被圧入試料表面の圧子押し込み深さの計測方法、及びその計測装置。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、球形圧子の押し込み深さ測定方法及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、1つの透明球体を球形圧子及びレーザのカップリング(結合)レンズとして用いて、球形圧子そのものの変位量を球レンズの移動量と受光センサーで計測される光パワーの関係から換算することにより直接計測することを可能とする被圧入試料表面の圧子押し込み深さの計測方法及びその装置に関するものである。
本発明は、固体表面への球形圧子圧入試験により固体試料の各種力学的特性を評価する圧子力学において、圧子押し込み深さを高精度に計測するための計測技術を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
圧子圧子法(インデンテーション法)は、もともとはマクロな材料特性評価を対象として、工業材料の硬さ評価試験法として広く普及してきた歴史があり、その過程において、微小部の硬さ(分布)が評価できる点が注目され、マイクロインデンテーション法としての発達をみた。更に、微小圧入荷重を制御する技術に加え、圧子を試料表面に圧入する際の圧入深さ(押し込み深さ)を圧入荷重と同時に計測・記録するダイナミックインデンテーション法又は記録式(計装化)インデンテーション法と呼ばれる技術が開発され、応用分野が更に拡大した。この新技術を用いると圧子を圧入した後の除荷剛性の値(除荷曲線の最初の傾き)から試料のヤング率が測定できることが報告されると、単なる硬さのみを評価対象としていた圧子力学が、物性評価法として急激に脚光を浴びることになった。更に、最近では、この圧子力学で発達した技術が走査型プローブ顕微鏡に応用され、顕微鏡用の走査探針を圧子としても用いることにより圧入前後の表面状態を原子オーダーまでの高分解能で3次元表面形状を測定することが可能となっている。このように、圧子力学は、その対象とする領域の押し込み深さにおいてナノメートルオーダー以下に達しており、これまでの力学特性評価法が無力であったフィルム・薄膜や電子デバイスをはじめとする極めて限られた微小体積に対する特性評価手法として注目されている。
【0003】
ナノメートルの移動量を計測するには、更に、一桁以上の高い精度の寸法計測技術が必要であるが、対象とする押し込み深さが試験機のたわみが無視できないほど小さくなると、圧子と被圧入試料表面との相対変位を計測するセンサー技術が重要となってくる。すなわち、フレームの弾性変形、駆動機構の変形、荷重測定器の変形、などの非本質的な変形が、真の押し込み深さと同じオーダーとなるために無視できなくなる。また、圧子の変位軸と変位計の変位計測軸とが一致しない試験機系(非特許文献1及び特許文献1〜3)ではミスアライメント(ぶれ)による誤差が測定精度を下げる要因である。この対策として、複数個の変位計を異なる変位計測軸に配置し、各々の変位データを平均化処理(非特許文献1及び特許文献2)することによってこの誤差を減少させているが、装置全体を複雑にすると同時に高価なものにしている。
【0004】
光学的原理に基づく変位計測法のうち、レーザ干渉計測法は、ナノメートルオーダー又はそれ以下の計測が可能であり、測定精度面での利点がある。しかしながら、一般的には、干渉装置は、装置全体が複雑なものとなり高価であるという欠点を有する。一方、半導体レーザと光ファイバを組み合わせることにより小型・軽量・安価なセンサーが開発できることが多くの実例によって示されている。例えば、Cusworthらは、GRINロッドレンズの端部に2本の束ねた光ファイバを接続した変位計を構成し、GRINロッドレンズのもう一方の端部とミラー間の数ミリメーターの作動距離を隔てた変位計測に成功した実例を報告している(非特許文献2)。また、Murphyらは、弱いバネとして作用するダイヤフラムに固定された、一方の端部にミラーを形成したGRINロッドレンズのフリーな端面に2本の束ねた光ファイバを光結合させるように配置させ、外部からの変位によってGRINロッドレンズが光ファイバの光軸から垂直方向に軸ずれを生じる際の光パワーの増減を利用する変位計測手法を用いると、実験事実として2.5nmの分解能が得られたことを報告した(非特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−214096号公報
【特許文献2】
特開2002−181679号公報
【特許文献3】
特開2000−292332号公報
【非特許文献1】
G. M. Pharr and R. F. Cook, ”Instrumentation of a conventional hardness tester for load−displacement measurement during indentation”, J. Mater. Res., Vol. 5, No. 4, p.847, (1990)
【非特許文献2】
S. D. Cusworth and J. M. Senior, ”A reflective optical sensing technique employing a GRIN rod lens”, J. Phys. E: Sci. Instrum. Vol. 20, p. 102, (1987)
【非特許文献3】
P. J. Murphy and T. P. Coursolle, ”Fiber optic displacement sensor employing a graded index lens”, Applied Optics, Vol. 29, No. 4, p. 544, (1990)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、圧子力学において、圧子押し込み深さを高精度に計測するための新しい計測方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、圧子の変位量を直接的かつ高精度に計測する方法を確立することに成功して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、球形圧子の変位量を高精度に計測する方法及び装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、圧子圧入(インデンテーション)法において要求される高精度な圧子による試料表面への押し込み深さ量を計測する手法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)1つの透明球体を球形圧子及びレーザのカップリング(結合)レンズとして使用し、該透明球体をレーザの光源と受光センサーの光軸に配置し、試験試料とレーザ放射面とレーザ受光面を固定し、試料表面に球形圧子を圧入させるために透明球体を変位させ、球レンズとレーザ光線との光結合軸に軸ずれを生じさせることにより受光センサーで計測される光パワーを増減させ、球レンズの移動量と光パワーの関係のうち線形関係にある領域を利用し、光パワーから換算される変位量により球形圧子の変位量を計測することを特徴とする被圧入試料表面の圧子押し込み深さの計測方法。
(2)球レンズとして、被圧入試料の硬さ、弾性率(ヤング率)の値よりも充分に高い値を有し、かつ、用いるレーザの波長域で透明である材質のものを用いる、前記(1)記載の計測方法。
(3)球レンズが、サファイア又はルビーである、前記(1)記載の計測方法。
(4)線形関係にある領域として、球レンズの変位に起因する軸ずれ量と光パワー曲線との関係において、直線関係が成立する、勾配の大きい直線領域を用いる、前記(1)記載の計測方法。
(5)透明球体直近でレーザを放射あるいは受光する物質として、石英製光ファイバを用いる、前記(1)記載の計測方法。
(6)石英ガラスのガラス転移点を越えない温度範囲で計測する、前記(4)記載の計測方法。
(7)用いるレーザ光の波長で透明である気体又は液体の中で測定する、前記(1)記載の計測方法。
(8)前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法で使用する計測装置であって、球形圧子と球レンズとして作用する透明球体、該球体に変位を与える駆動装置、荷重検出器、該荷重検出器によって測定された荷重信号及び受光センサーで観測された光パワーを記録する計算機、上記透明球体にレーザを放射するレーザ光源とそれを受光する受光センサー、レーザ光を導く光ファイバ、被圧入試料を保持するサンプルステージを構成要素として含むことを特徴とする計測装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、圧子を透明な球体とすることにより、球体を圧子と(球)レンズとの複合した作用をする素子として用い、光源の放射面から放射されるレーザ光が球レンズを通過して反対側の受光センサーの受光面に光結合させる位置に放射面と受光面を配置・固定させ、球レンズが移動することにより生じる軸ずれ量と光パワー損失との間にある定量的関連を用いて、圧子の移動量を測定することを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、先ず、球状圧子及び球レンズとして作用させる球体を選定する。球体の材質の選択には、圧子として作用させる要件として、機械的特性に関して充分な硬さと弾性率を有すること、更に、光学的特性の要件において、用いる光の波長に対して充分な透明度を有することの2つの条件を満たす必要がある。例えば、サファイア(単結晶アルミナ)・ルビー(酸化クロム含有単結晶アルミナ)の弾性率は410GPaであり、また、波長1000nmの光に対する透過率は85%であるので、機械的特性・光学的特性の両条件を満足する球形圧子と成り得る。一方、多結晶アルミナの場合、弾性率は約400GPaであるが、不透明であるので光学的特性を満たさず、球レンズと成り得ない。更に、例えば光学ガラスとして広く普及しているBK7、シリカガラス等のヤング率は約70−80GPaであり、1000nmの波長における光透過率は90%であるので、工業用ポリマーや一部の金属など硬度の低い材料に対する球形圧子と成り得る。すなわち、具体的には、球レンズとしては、被圧入試料の硬さ、弾性率(ヤング率)の値よりも充分に高い値を有し、かつ、用いるレーザの波長域で透明である材質のものが用いられる。本発明では、球形圧子として、好適には、サファイア、ルビー、光学ガラス、シリカガラスが用いられるが、これらに限らずこれらの条件を満たす材質のものであれば、球形圧子として使用することができる。
【0010】
球体の直径は、試料の微細組織や試料の降伏応力と荷重測定限界を考慮して任意に決定することができるが、例えば、試料が気孔・介在物等の第2相を含む場合、球形圧子を弾性限界の応力(降伏応力)まで圧入するとき、球形圧子と試料表面との接触面の直径が、第2相の平均直径の10倍程度あれば、圧子圧入過程の応答性から試料全体の平均化した弾性的及び弾塑性的材料物性を評価することが可能となる。一例として、第2相の平均直径が5ミクロン、ヤング率が100GPa、降伏応力が500MPaの試料に対しては、球体の直径は4.2mm以上が必要であることが例示される。レーザの光源から放射されたレーザ光を球レンズで集光して受光センサーに光結合させると、球レンズの変位に応じて軸ずれが発生し、その軸ずれ量と光パワー損失との間にある定量的関連を用いて、球レンズの移動量が測定できる。このような光学系を小型・軽量・安価な装置で構成する一例として、光ファイバを用いることができる。
本発明では、例えば、2本の光ファイバを用いてレーザ光源からのレーザ光を球レンズへ導き、そして、球レンズを通して出射した光を光パワーメーターに導くことにより装置系の小形化を実現できる。透明球体の一例として、ルビー球体を圧子と(球)レンズとの複合した作用をする素子として用い、光源から光ファイバを通して放射されるレーザ光が、ルビー球レンズを通過して反対側の光ファイバ端面に集光するように光結合させる位置に放射側及び受光側光ファイバを配置・固定させ、球レンズが移動することにより生じる軸ずれ量と光パワー損失との間にある定量的関連を用いて、圧子の移動量を測定することができる。すなわち、球レンズの変位に起因する軸ずれ量と光パワー曲線との関係において、直線関係が成立する、勾配の大きい直線領域を用いる。
レーザ光の光源としては、好適には、例えば、ダイオード式LED素子が、また、受光センサーとしては、好適には、例えば、InGaAsを受光素子としたレーザパワーメータが、それぞれ例示されるが、これらに制限されない。
【0011】
次に、本発明の計測装置は、球形圧子と球レンズとして作用する透明球体、該球体に変位を与える駆動装置、荷重検出器、該荷重検出器によって測定された荷重信号及び受光センサーで観測された光パワーを記録する計算機、上記透明球体にレーザを放射するレーザ光源とそれを受光する受光センサー、レーザ光を導く光ファイバ、被圧入試料を保持するサンプルステージを構成要素として含むことを特徴とする。図1に、本発明の装置の一例の構成図を示す。
本発明の計測装置の好適な一例について具体的に説明すると、図1において、球形圧子と球レンズとして作用する透明球体1は、それを保持する治具2により荷重検出器(ロードセル)3 に接続され、更に、変位を与える駆動装置(モーションデバイス)4 を介してフレーム15と結合されている。荷重検出器3によって測定された荷重信号はアンプ5によって増幅され、A/D変換器7を通して計算機8に記録される。また、駆動装置(モーションデバイス)4 によって発生させる変位量は、計算機8からA/D変換器7を通して駆動ドライブ(モーションドライブ)6に送る変調信号によって制御される。透明球体1は、例えば、治具2表面に適宜の接着剤を用いて固定され、その反対側の自由表面である球面は被圧入試料14表面に押し付けられる。レーザの光源10と受光センサー(レーザパワーメーター)9の光軸に透明球体1を配置することによって光結合が達成されるが、その配置方法の一例として、2本の光ファイバ11をレーザの光源10と受光センサー(レーザパワーメーター)9のそれぞれに接続し、光ファイバ11のそれぞれの端面を位置決め、ステージ12を用いて透明球体1の焦点位置に微動させ、光結合が達成される位置に固定させる。受光センサー(レーザパワーメーター)9で観測される光パワーは、A/D変換器7を通して計算機8に記録される。被圧入試料14を保持したサンプルステージ13は、フレーム15に固定されているので、試料の被圧入表面と光ファイバとの相対位置関係は球形圧子の位置に関わらず常に一定に保たれることになる。
【0012】
最大効率で光結合した位置を基準とし、ある変位量だけ透明球体1を変位させて軸ずれを生じさせた場合に、後記する実施例で具体的に示したように、受光センサー(レーザパワーメーター)9で観測される光パワー損失と透明球体1の移動量との関係に線形関係が見られる領域がある。この線形関係が成立する変位の範囲内で透明球体1を変位させるとき、透明球体1が被圧入試料14の表面に圧入するようにサンプルステージ13を用いて被圧入試料の位置を調節し、固定すれば、光パワーから換算される変位量により圧子圧入による押し込み深さを計測することができる。押し込み深さの開始点は、アンプ5を通した荷重検出器(ロードセル)3からの信号が変化を開始する点、すなわち、負荷の開始点として定義される。本発明の装置において、上記各構成要素は、それらと同効のものであれば同様に使用することが可能であり、また、それらを使用して任意に設計変更することができる。
本発明では、透明球体直近でレーザを放射あるいは受光する物質として、好適には、例えば、石英製光ファイバが用いられるが、この場合、石英ガラスのガラス転移点を越えない温度範囲で、低温から高温まで計測することができる。また、用いるレーザ光の波長で透明である気体又は液体の中を測定環境として用いることができる。本発明の方法及び装置は、圧子圧入による被圧入試料への押し込み深さを高精度で計測することを可能にする技術として、あらゆる種類の試料の特性評価に適用可能である。
【0013】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、該実施例は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
透明球体として、ルビー製ボール(半径R:1500ミクロン、ヤング率:411GPa、屈折率:1.77)を用い、ルビー製ボールをステンレス製治具表面にシアノアクリレート系接着剤を用いて固定し、その反対側の自由表面である球面を試料表面に押し付ける圧子球面として作用させた。圧子を精度良く微少量だけ変位させるために、駆動装置(モーションデバイス)として、ピエゾ圧電式アクチュエーター(Piezosystem Jena GmbH 製PA40/12)を用い、透明球体を固定した治具に直接接続させた。アクチュエーターの最大変位量は40ミクロン、分解能は0.01nmであり、その移動量は、計算機によって発生させた直流電圧を変調信号としてアクチュエーターの駆動アンプに外部入力させることによって制御させた。
【0014】
レーザの光源は、波長1310nmのダイオード式LED素子を発光源とし、また、光パワーの測定には、InGaAsを受光素子とした光マルチメーター(安藤電気製、AQ2150A)を用いた。この光マルチメーターの0−50℃、8時間以内の条件における温度安定度は0.3dBp−p以内であり、一定温度5分間の時間安定性は0.02dB以内である。
レーザ光源からのレーザ光を球レンズへ導くために、更に、球レンズを通過した光を光パワーメーターに導くために、2本の光ファイバを用いた。各々の光ファイバは、単心線(長さ2m)であり、グレード・インデックス型光ファイバ(Graded Index Fiber: GI型、コア直径50ミクロン、クラッディング径125ミクロン、外径0.9mm)を用いた。
球レンズに向かう放射側と入射側それぞれの光ファイバの端面は、レーザをコアから低損失で放射し、高効率に入射させるために、被覆を剥がした後に劈開破壊法(クリーブ法)によって軸方向に対し、垂直かつ平坦な鏡面端とした。また、逆側の終端にはFCコネクタ(PC研磨)が固定されており、このコネクタを介して光マルチメーターのレーザ光源又は光センサーユニットと接続した。光ファイバの鏡面先端と球圧子とを光結合させるために、微動軸合わせ機能付き光ファイバーホルダー(放射側:シグマ光機(株)MFH−FOP−2、及び、受光側:駿河精機(株)E3000A)を用いた。
【0015】
球レンズが実際に移動する変位量を計測するために、差動トランス電子変位計(TESA, Tesatronic TTA 20及びセンサーGT−21、ヒステリシス誤差:0.01ミクロン)を用い、ルビー製ボールを固定した治具が装置のフレームベースと平行移動する変化量を球レンズの変位量として計測した。
球形圧子にサファイアあるいはルビーを用い、光ファイバに石英ガラス製光ファイバを用いる場合には、大気中あるいは不活性雰囲気中にて、結露及び氷結しない条件において、低温から石英ガラスのガラス転移点である1200℃までの温度範囲で押し込み深さが計測できる。
【0016】
球形圧子が被圧入試料表面に到達しない、すなわち、圧子と被圧入試料間の接触がない条件において、球レンズの変位量と光パワーとの関係を定量的に検討した。図2に、光ファイバとしてグレード・インデックス型光ファイバを用いた装置系において、光結合の状態にある球レンズを約45ミクロンの最大振幅で変位させた際の光パワーの変化を示す。球レンズの変位量が増大するに伴い、光パワーは大きく増減する。具体的には、光結合が最大効率の状態にあるとき、光パワーはピークを取り、そのピーク値は1.295マイクロワットであるが、光軸と垂直方向に30.00ミクロンだけ球レンズが変位すると、軸ずれを生じて光パワーは0.125マイクロワットまで減少した。また、光パワーのピーク高さが半分(1/2)となる半値幅は、光パワースペクトルの対称性を考慮して32.81ミクロンと見積もられる。一般に、レーザから放射される光は、ガウス形状で表現できるが、図3に示す様に光軸と垂直方向に球レンズを変位させた時の軸ずれを光パワー変化として計測した実測値と理論値との比較の結果からルビー製球レンズと光ファイバとの光結合の軸ずれがほぼ理論どおりであることがわかる。なお、図3の横軸は、最大ピーク位置からの変位を光ファイバのコア半径rで規格化した相対変位、縦軸は、最大光パワーで規格した値である。
図2において、球レンズの変位量に対する光パワーの変化量が大きい領域、すなわち、曲線の傾きが大きい領域では、具体的には球レンズが−10.0ミクロンから−19.5ミクロンまで変位するにつれて、光パワーがほぼ直線的に1.01マイクロワットから0.48マイクロワットまで変化する領域では、光パワーから変位量を効率良く見積もることができる。図4に、図2の光パワー曲線の微分係数(曲線の各点における接線の傾き)を示すが、プラトー域の中心は、最大光パワー位置から15ミクロンだけ離れた位置にある。更に、微分係数のプラトーの中央からプラスマイナス10%に入る領域の内側では、レンズの変位量に対する光パワーの変化率に十分な直線関係が成立していると考えられ、その直線関係にある領域の幅は、実変位量では約9.6ミクロンである。この値が、本発明による変位計測手法により測定できる変位量のフルスケールである。図5に、図2の線形領域、すなわち、図4のプラトーを拡大表示して示したが、実験データを直線として最適フィットさせることにより検量線としての関数が得られることが分かった。
【0017】
以上の結果として、最大光パワーのピーク位置から15ミクロンだけあらかじめ球レンズを変位させておけば、この位置を中心としてプラスマイナス約4.8ミクロンの変位量にわたり、光パワーから変位量への換算が十分な精度で可能であること、すなわち、十分な精度で変位計測ができることが分かった。
【0018】
実施例2
上述の実施例1における装置の構成のうち、光ファイバのみをシングルモード光ファイバ(Single Mode Fiber:SM型、コア直径(モードフィールド径)9.2ミクロン、クラッディング径125ミクロン、外径0.9mm)に変更した以外は、実施例1と同様に実施した場合の結果を示す。図6に、球レンズを約8ミクロンの最大振幅で変位させた際の光パワーの変化を示す。グレード・インデックス型光ファイバを用いた装置系と同様に、球レンズの変位量の増大に伴い、光パワーは大きく増減するが、そのカーブを形成するピークの高さと幅は、いずれもグレード・インデックス型光ファイバを用いた装置系と比較すると小さい。具体的には、光パワーのピーク値は0.524マイクロワットであるが、球レンズが光軸と垂直方向にプラスマイナス3.00ミクロンだけ変位すると、光パワーは0.123マイクロワットまで減少した。光パワーのピーク高さが半分(1/2)になる半値幅は4.15ミクロンであり、グレード・インデックス型光ファイバのそれ(32.81ミクロン)と比較すると約1/8である。
図7に、得られた光パワー曲線の微分係数(曲線の各点における接線の傾き)を示すが、微分係数のプラトー中心は、最大光パワー位置から1.9ミクロンだけ離れた位置にあり、微分係数のプラトーを形成する領域の幅は、約1ミクロンである。図8には、直線関係が見られる領域を拡大したものを示したが、実験データを直線として最適フィットさせることにより、検量線としての関数が得られた。変位計測として使用できる領域は、グレード・インデックス型光ファイバが約9.6ミクロンであったの対して、シングルモード光ファイバでは、約1.1ミクロンと狭くなる。しかしながら、図4及び図7から分かるように、光パワー曲線の直線領域の傾き、すなわち、変位計測センサーとしての感度は、グレード・インデックス型光ファイバの0.045に対して、シングルモード光ファイバでは0.35と高い。
以上の結果として、最大光パワーのピーク位置から1.9ミクロンだけあらかじめ球レンズを変位させておけば、この位置を中心としてプラスマイナス約0.5ミクロンの変位量にわたり、光パワーから変位量への換算が十分な精度で可能であること、すなわち、十分な精度で変位計測ができることが分かった。
【0019】
実施例3
本発明の変位計測法を記録式インデンテーション法に適用させた一例として、光ファイバとしてグレード・インデックス型ファイバを用い、ソーダ石灰ガラスの表面に球形圧子を押し付ける操作を行い、押し込み深さと押し込み荷重との関係を調べた。その結果を図9に示す。
なお、変位計の構成は「実施例1」で示したものと同一とした。負荷荷重の計測は、静歪みアンプと接続した高感度ロードセルを用い、荷重変化をアンプによって電圧変化に変換し、それをA/D変換器を介して計算機に逐次収録させた。ここでは、圧子が試料表面に接触し負荷が増大を開始する点を原点とし、その点以降の圧子変位量を押し込み深さとして定義した。また、図中の実線は、ヘルツの解として知られる理論式を表しており、被圧入試料のヤング率を未知の物性値としてのパラメータにして実測データに最適フィッティングさせたものである。このフィッティングによって見積もられるヤング率は、44GPaであり、別に標準的方法(超音波パルスエコー法)によって測定された値である74.8GPaとほぼ一致し、このことは、本発明による押し込み深さ計測の正確さと計測方法に矛盾がないことを証明するものである。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、1つの透明球体を球形圧子及びレーザ集光レンズとして用いることにより、球レンズの移動に伴いレーザ光線の光結合の軸ずれを発生させ、光パワーに増減を生じさせるものであり、本発明により、1)球レンズの移動量と光パワーの関係のうち、線形関係にある領域を利用し、球形圧子そのものの変位量を直接計測することができる、2)球圧子と保持治具とのすき間や保持治具のたわみなどに起因する真の変位と分離すべき非本質的な変位を排除することにより、圧子の変位計測の精度を向上させることができる、3)高精度な圧子の変位量を計測できる記録式インデンテーション法に利用できる、4)球形圧子にサファイアあるいはルビーを用い、光ファイバに石英ガラス製光ファイバを用いると、大気中あるいは不活性雰囲気中にて低温から石英ガラスのガラス転移点である1200℃までの温度範囲で押し込み深さが計測できる、という効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】装置の構成図を示す。
【図2】グレード・インデックス型光ファイバを用いた場合の球レンズの軸ずれ量と光パワーの関係を示す。
【図3】グレード・インデックス型光ファイバを用いた場合の光パワー曲線実測値と理論値との比較を示す。
【図4】グレード・インデックス型光ファイバを用いた場合の光パワー曲線の微分係数を示す。
【図5】グレード・インデックス型光ファイバを用いた場合の光パワーから変位量を見積もる検量線を示す。
【図6】シングルモード型光ファイバを用いた例における球レンズの軸ずれ量と光パワーの関係を示す。
【図7】シングルモード型光ファイバを用いた例における光パワー曲線の微分係数を示す。
【図8】シングルモード型光ファイバを用いた例における光パワーから変位量を見積もる検量線を示す。
【図9】ソーダ石灰ガラスへの押し込み試験から得られた押し込み深さ(h)と押し込み荷重(P)の関係を示す。
【符号の説明】
1 透明球体
2 治具
3 荷重検出器(ロードセル)
4 駆動装置(モーションデバイス)
5 アンプ
6 アンプ
7 A/D変換器
8 計算機
9 受光センサー(レーザパワーメーター)
10 レーザの光源
11 光ファイバ
12 位置決めステージ
13 サンプルステージ
14 被圧入試料
15 フレーム

Claims (8)

  1. 1つの透明球体を球形圧子及びレーザのカップリング(結合)レンズとして使用し、該透明球体をレーザの光源と受光センサーの光軸に配置し、試験試料とレーザ放射面とレーザ受光面を固定し、試料表面に球形圧子を圧入させるために透明球体を変位させ、球レンズとレーザ光線との光結合軸に軸ずれを生じさせることにより受光センサーで計測される光パワーを増減させ、球レンズの移動量と光パワーの関係のうち線形関係にある領域を利用し、光パワーから換算される変位量により球形圧子の変位量を計測することを特徴とする被圧入試料表面の圧子押し込み深さの計測方法。
  2. 球レンズとして、被圧入試料の硬さ、弾性率(ヤング率)の値よりも充分に高い値を有し、かつ、用いるレーザの波長域で透明である材質のものを用いる、請求項1記載の計測方法。
  3. 球レンズが、サファイア又はルビーである、請求項1記載の計測方法。
  4. 線形関係にある領域として、球レンズの変位に起因する軸ずれ量と光パワー曲線との関係において、直線関係が成立する、勾配の大きい直線領域を用いる、請求項1記載の計測方法。
  5. 透明球体直近でレーザを放射あるいは受光する物質として、石英製光ファイバを用いる、請求項1記載の計測方法。
  6. 石英ガラスのガラス転移点を越えない温度範囲で計測する、請求項4記載の計測方法。
  7. 用いるレーザ光の波長で透明である気体又は液体の中で測定する、請求項1記載の計測方法。
  8. 請求項1から6のいずれかに記載の方法で使用する計測装置であって、球形圧子と球レンズとして作用する透明球体、該球体に変位を与える駆動装置、荷重検出器、該荷重検出器によって測定された荷重信号及び受光センサーで観測された光パワーを記録する計算機、上記透明球体にレーザを放射するレーザ光源とそれを受光する受光センサー、レーザ光を導く光ファイバ、被圧入試料を保持するサンプルステージを構成要素として含むことを特徴とする計測装置。
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