JP2004257186A - 搬送台車用走行軌道レール - Google Patents
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Abstract
【課題】ラックとピニオンの噛み合い機構を用いることなく、スリップすることなく登坂走行及び降坂走行が可能なモノレール式搬送装置を提供すること。
【解決手段】水平走行部並びに傾斜走行部を有する軌道に沿って走行する搬送台車20の走行軌道レール10であって、搬送台車の駆動車輪22との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成することにより、傾斜走行部においても高いグリップ力が長期に亘り確保される構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】水平走行部並びに傾斜走行部を有する軌道に沿って走行する搬送台車20の走行軌道レール10であって、搬送台車の駆動車輪22との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成することにより、傾斜走行部においても高いグリップ力が長期に亘り確保される構成とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属するの技術分野】
本発明は、工場や倉庫内において、物品の搬送に使用される搬送台車に関し、特に、天井等に架設された水平走行部並びに傾斜走行部を有する1本の走行軌道レールによって案内される搬送台車を有するモノレール式搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、モノレール式搬送装置は、走行軌道レールに案内されて走行する駆動車輪付きの搬送台車によって、搬送物を吊り下げて運搬する。このようなモノレール式搬送装置は、搬送台車の駆動車輪と走行軌道レールとの接触面で発生する摩擦力により、搬送台車が走行軌道レール上を走行している。そのため、走行軌道レールに傾斜走行部を設けると登坂走行時や降坂走行時に、搬送台車側の駆動車輪と走行軌道レールとの間でスリップが生じて、搬送台車が登坂走行不能になったり、降坂走行時に安全速度を越えて暴走する恐れがあった。
【0003】
このような課題に対応するため、従来のモノレール式搬送装置では、例えば、(1)駆動車輪の表面に溝を形成することにより、摩擦係数を増大させ、駆動車輪と走行軌道レールとの間のグリップ力を向上させることが行われている。
また、(2)走行軌道レールにラック(直線ギア)を設け、搬送台車側の駆動車輪軸にラックと噛み合うピニオン(小歯車)を設けることにより、搬送台車側の駆動車輪と走行軌道レールとの間のスリップを防止することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記(1)に記載したモノレール式搬送装置では、レールの走行面に水・油等が付着した場合、駆動車輪とレールとの接触界面に水・油等の薄層が形成されるため、駆動車輪とレールとの間の摩擦係数が低下し、十分なグリップ力が得られないという課題が指摘されていた。
また、上記(2)に記載したモノレール式搬送装置では、走行軌道レールに機械加工によってラックを設ける必要があり、加工時間の増大やコストアップの原因になっていた。しかも、レール表面に切削加工等でラックを形成するため、レールの断面形状が制約を受けるとともに、レールの機械的強度を低下させるという課題も指摘されていた。
【0005】
さらには、レール側のラックと搬送台車側のピニオンとの噛み合いにより、不快な金属音が発生したり、噛み合い摩耗により発生した粉塵が飛散するという課題も懸念されており、病院、食品工場あるいは半導体工場など、静粛性や高度なクリーン度が要求される場所での使用に支障を来していた。
【0006】
そこで、本発明は、従来のモノレール式搬送装置の問題点を解消して、ラックとピニオンの噛み合い機構を用いることなく、スリップすることなく登坂走行及び降坂走行が可能なモノレール式搬送装置を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、水平走行部並びに傾斜走行部を有する軌道に沿って走行する搬送台車の走行軌道レールであって、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じを金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成したことを特徴としている。ここで、微細凹凸面の形成個所を少なくとも傾斜走行部とした理由は、駆動車輪と走行軌道レールとの間の摩擦係数の低下は、傾斜走行部において特に問題となるためであって、傾斜走行部及び水平走行部の両方に形成しても構わない。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、前記目的をより効果的に、且つ、再現性良く達成するものである。ここで、算術平均粗さRaとは1994年に改正されたJISB0601に規定された“表面粗さ−定義及び表示”に基づく表面粗さのパラメータであり、改正前のJISB0601における中心線平均粗さに対応するパラメータである。
【0009】
なお、本発明の走行軌道レールと共に使用される搬送台車が取り扱う搬送物品は、半導体基板・磁気ディスク・液晶基板などの産業用半製品、あるいは、食品・書類・医薬品・医療器具などの民生用製品、若しくは、これらを収納した搬送容器など、搬送台車に積載・運搬可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0010】
また、本発明の搬送台車において採用する駆動機構については、走行軌道レールに沿って敷設した給電線と搬送台車内の集電子を利用した接触給電により電力を供給し、搬送台車に搭載したモータを回転駆動する接触給電式駆動機構、あるいは、電磁結合を用いて非接触で給電を行い搬送台車に搭載したモータを回転駆動する非接触給電式駆動機構のいずれであっても差し支えないが、非接触給電式駆動機構を採用した場合は、給電線と集電子との接触による粉塵の発生を回避することができるため、高度なクリーン度を要求される場合に適している。
【0011】
また、本発明の搬送台車に採用する搬送物保持手段については、搬送台車下方部で搬送物を着脱自在に保持することができるものであれば、いかなる搬送物保持手段であっても差し支えないが、搬送物の保持位置を上下自在に昇降できるホイスト機構を備えている場合は、搬送物に対して上下位置が異なる多種多様な一連の処理工程を施す必要がある場合に適用することができる。
【0012】
【作用】
請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射することにより形成された微細凹凸面の凸部が、搬送台車の駆動車輪に機械的に食い込む“くさび”の役割を果たすため、接触走行面における高いグリップ力が確保される。また、微細凹凸面の凹部が、接触走行面に存在する水や油などの介在物を排出する“ドレイン(排水溝)”の役割を果たすため、接触走行面におけるグリップ力が長期に亘り保持される。
【0013】
請求項2に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールの作用に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、凸部と凹部が相乗的に作用し、一層高いグリップ力が長期に亘って保持される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明の搬送台車用走行軌道レール10を用いたモノレール式搬送装置100が示されている。このモノレール式搬送装置は、アルミ製の走行軌道レール10とその走行軌道レール10に案内されて走行する搬送台車20を有している。搬送台車20には、モータが搭載されており、そのモータが駆動車輪22を回転駆動することにより、搬送台車20が、走行軌道レールに沿って走行する。
【0016】
この搬送台車20は、搬送物保持手段24を有しており、所望の物品を搬送することができる。走行軌道レール10と搬送台車20の駆動車輪22との接触走行面には、アルミ粉末を溶射することにより微細凹凸面12が形成されている。本発明に用いる溶射の方法としては、アーク溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射など、工業的に広く利用されている様々な方法を用いることができる。特に、フレーム溶射やアーク溶射などは、現場施工が可能であるため、既存の搬送台車用走行軌道レールを利用して、本発明を実施することができるため、好ましい。さらに、高圧の酸素とプロピレンあるいは水素などの燃料ガスを燃焼室に供給し、粉末材料を窒素等の搬送ガスによって火炎中に供給することによって、超高速度で走行軌道レールに吹き付けるフレーム溶射、すなわちHVOF(高速酸素燃料)溶射法を用いることにより、緻密で密着性がきわめて高い微細凹凸面を形成することが可能である。
【0017】
図2は、図1に一点鎖線で示した走行軌道レールと搬送台車の駆動車輪との接触走行面を拡大して示した斜視図である。この微細凹凸面12の凸部がゴム製の駆動車輪22に“くさび”のように食い込むことにより、グリップ力を著しく向上させている。また、溶射により形成された微細凹凸面は、凹部及び凸部が無方向性(不規則)に形成されるため、微細凹凸部面上に水や油などの介在物が存在した場所を駆動車輪が走行した場合、その介在物は、駆動車輪と走行軌道レールの接触走行面に閉じ込められることなく、いくつかの凹部を介して接触走行面外に速やかに排出される。したがって、介在物の存在により、摩擦係数が低下することなく、長期に亘り安定したグリップ力が保持される。
【0018】
一方、従来より知られている微細凹凸面を形成していない走行軌道レールの場合、接触走行面における摩擦係数が小さいため、傾斜走行部などではグリップ力が足りず、駆動車輪がスリップを起こす。しかも、接触走行面に水や油などの介在物が存在する場合、これらの介在物は、駆動車輪の走行により、薄く引きのばされ、接触走行面上に薄い層を形成する。そのため、摩擦係数を低下させ、駆動車輪のスリップがさらに発生しやすくなる。
【0019】
本発明の搬送台車用走行軌道レールと従前のレールの接触走行面の性状を明らかにするために、両者の表面粗さをディジタル型触針式表面粗さ測定器を用いてJISB0601(1994)に基づき計測した結果を図3に示す。図3(a)が、本発明の搬送台車用走行軌道レールの粗さ曲線であり、図3(b)が、従前のレールの粗さ曲線である。
【0020】
図3(a)に示した例では、算術平均粗さRaが13.4μm、最大高さRyが71.6μm、十点平均粗さRzが51.6μmとなっている。一方、図3(b)に示した従前のレールは、算術平均粗さRaが0.2μm、最大高さRyが1.2μm、十点平均粗さRzが0.8μmとなっている。このグラフから明らかなように、溶射により形成された微細凹凸面は、凹凸がきわめてシャープであり、非常に緻密である。しかも、溶射する金属は、レールを構成する材料と同じ金属を主成分としているため、レールと微細凹凸面との結合力がきわめて高いものとなっている。また、レール断面の形状や大きさに左右されず、均一な微細凹凸面を形成することが可能である。そのため、搬送台車用走行軌道レールの接触走行面として理想的な凹凸部を形成することが可能である。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成したことにより、搬送台車の駆動車輪と走行軌道レールとの間の摩擦係数が高くなり、傾斜走行部においても、駆動車輪がスリップすることなく、安全に搬送台車を運行することが可能になる。また、接触走行面に水や油などの介在物が存在する場合にも、それらの介在物が速やかに排出され、スリップの発生がきわめて効果的に抑制される。
【0022】
請求項2に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールが奏する効果に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、凸部と凹部が相乗的に作用し、スリップの発生がより効果的に、且つ、再現性良く、抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の搬送台車用走行軌道レールを用いたモノレール式搬送装置を示した斜視図である。
【図2】図1に一点鎖線で示した走行軌道レールと搬送台車の駆動車輪との接触走行面を拡大して示した斜視図である。
【図3】(a)が、本発明の搬送台車用走行軌道レールの表面粗さを示すグラフであり、(b)が、従前のレールの表面粗さを示すグラフである。
【符号の説明】
10 ・・・ 走行軌道レール
12 ・・・ 微細凹凸面
20 ・・・ 搬送台車
22 ・・・ 駆動車輪
24 ・・・ 搬送物保持手段
【発明の属するの技術分野】
本発明は、工場や倉庫内において、物品の搬送に使用される搬送台車に関し、特に、天井等に架設された水平走行部並びに傾斜走行部を有する1本の走行軌道レールによって案内される搬送台車を有するモノレール式搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、モノレール式搬送装置は、走行軌道レールに案内されて走行する駆動車輪付きの搬送台車によって、搬送物を吊り下げて運搬する。このようなモノレール式搬送装置は、搬送台車の駆動車輪と走行軌道レールとの接触面で発生する摩擦力により、搬送台車が走行軌道レール上を走行している。そのため、走行軌道レールに傾斜走行部を設けると登坂走行時や降坂走行時に、搬送台車側の駆動車輪と走行軌道レールとの間でスリップが生じて、搬送台車が登坂走行不能になったり、降坂走行時に安全速度を越えて暴走する恐れがあった。
【0003】
このような課題に対応するため、従来のモノレール式搬送装置では、例えば、(1)駆動車輪の表面に溝を形成することにより、摩擦係数を増大させ、駆動車輪と走行軌道レールとの間のグリップ力を向上させることが行われている。
また、(2)走行軌道レールにラック(直線ギア)を設け、搬送台車側の駆動車輪軸にラックと噛み合うピニオン(小歯車)を設けることにより、搬送台車側の駆動車輪と走行軌道レールとの間のスリップを防止することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記(1)に記載したモノレール式搬送装置では、レールの走行面に水・油等が付着した場合、駆動車輪とレールとの接触界面に水・油等の薄層が形成されるため、駆動車輪とレールとの間の摩擦係数が低下し、十分なグリップ力が得られないという課題が指摘されていた。
また、上記(2)に記載したモノレール式搬送装置では、走行軌道レールに機械加工によってラックを設ける必要があり、加工時間の増大やコストアップの原因になっていた。しかも、レール表面に切削加工等でラックを形成するため、レールの断面形状が制約を受けるとともに、レールの機械的強度を低下させるという課題も指摘されていた。
【0005】
さらには、レール側のラックと搬送台車側のピニオンとの噛み合いにより、不快な金属音が発生したり、噛み合い摩耗により発生した粉塵が飛散するという課題も懸念されており、病院、食品工場あるいは半導体工場など、静粛性や高度なクリーン度が要求される場所での使用に支障を来していた。
【0006】
そこで、本発明は、従来のモノレール式搬送装置の問題点を解消して、ラックとピニオンの噛み合い機構を用いることなく、スリップすることなく登坂走行及び降坂走行が可能なモノレール式搬送装置を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、水平走行部並びに傾斜走行部を有する軌道に沿って走行する搬送台車の走行軌道レールであって、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じを金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成したことを特徴としている。ここで、微細凹凸面の形成個所を少なくとも傾斜走行部とした理由は、駆動車輪と走行軌道レールとの間の摩擦係数の低下は、傾斜走行部において特に問題となるためであって、傾斜走行部及び水平走行部の両方に形成しても構わない。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、前記目的をより効果的に、且つ、再現性良く達成するものである。ここで、算術平均粗さRaとは1994年に改正されたJISB0601に規定された“表面粗さ−定義及び表示”に基づく表面粗さのパラメータであり、改正前のJISB0601における中心線平均粗さに対応するパラメータである。
【0009】
なお、本発明の走行軌道レールと共に使用される搬送台車が取り扱う搬送物品は、半導体基板・磁気ディスク・液晶基板などの産業用半製品、あるいは、食品・書類・医薬品・医療器具などの民生用製品、若しくは、これらを収納した搬送容器など、搬送台車に積載・運搬可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0010】
また、本発明の搬送台車において採用する駆動機構については、走行軌道レールに沿って敷設した給電線と搬送台車内の集電子を利用した接触給電により電力を供給し、搬送台車に搭載したモータを回転駆動する接触給電式駆動機構、あるいは、電磁結合を用いて非接触で給電を行い搬送台車に搭載したモータを回転駆動する非接触給電式駆動機構のいずれであっても差し支えないが、非接触給電式駆動機構を採用した場合は、給電線と集電子との接触による粉塵の発生を回避することができるため、高度なクリーン度を要求される場合に適している。
【0011】
また、本発明の搬送台車に採用する搬送物保持手段については、搬送台車下方部で搬送物を着脱自在に保持することができるものであれば、いかなる搬送物保持手段であっても差し支えないが、搬送物の保持位置を上下自在に昇降できるホイスト機構を備えている場合は、搬送物に対して上下位置が異なる多種多様な一連の処理工程を施す必要がある場合に適用することができる。
【0012】
【作用】
請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射することにより形成された微細凹凸面の凸部が、搬送台車の駆動車輪に機械的に食い込む“くさび”の役割を果たすため、接触走行面における高いグリップ力が確保される。また、微細凹凸面の凹部が、接触走行面に存在する水や油などの介在物を排出する“ドレイン(排水溝)”の役割を果たすため、接触走行面におけるグリップ力が長期に亘り保持される。
【0013】
請求項2に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールの作用に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、凸部と凹部が相乗的に作用し、一層高いグリップ力が長期に亘って保持される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明の搬送台車用走行軌道レール10を用いたモノレール式搬送装置100が示されている。このモノレール式搬送装置は、アルミ製の走行軌道レール10とその走行軌道レール10に案内されて走行する搬送台車20を有している。搬送台車20には、モータが搭載されており、そのモータが駆動車輪22を回転駆動することにより、搬送台車20が、走行軌道レールに沿って走行する。
【0016】
この搬送台車20は、搬送物保持手段24を有しており、所望の物品を搬送することができる。走行軌道レール10と搬送台車20の駆動車輪22との接触走行面には、アルミ粉末を溶射することにより微細凹凸面12が形成されている。本発明に用いる溶射の方法としては、アーク溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射など、工業的に広く利用されている様々な方法を用いることができる。特に、フレーム溶射やアーク溶射などは、現場施工が可能であるため、既存の搬送台車用走行軌道レールを利用して、本発明を実施することができるため、好ましい。さらに、高圧の酸素とプロピレンあるいは水素などの燃料ガスを燃焼室に供給し、粉末材料を窒素等の搬送ガスによって火炎中に供給することによって、超高速度で走行軌道レールに吹き付けるフレーム溶射、すなわちHVOF(高速酸素燃料)溶射法を用いることにより、緻密で密着性がきわめて高い微細凹凸面を形成することが可能である。
【0017】
図2は、図1に一点鎖線で示した走行軌道レールと搬送台車の駆動車輪との接触走行面を拡大して示した斜視図である。この微細凹凸面12の凸部がゴム製の駆動車輪22に“くさび”のように食い込むことにより、グリップ力を著しく向上させている。また、溶射により形成された微細凹凸面は、凹部及び凸部が無方向性(不規則)に形成されるため、微細凹凸部面上に水や油などの介在物が存在した場所を駆動車輪が走行した場合、その介在物は、駆動車輪と走行軌道レールの接触走行面に閉じ込められることなく、いくつかの凹部を介して接触走行面外に速やかに排出される。したがって、介在物の存在により、摩擦係数が低下することなく、長期に亘り安定したグリップ力が保持される。
【0018】
一方、従来より知られている微細凹凸面を形成していない走行軌道レールの場合、接触走行面における摩擦係数が小さいため、傾斜走行部などではグリップ力が足りず、駆動車輪がスリップを起こす。しかも、接触走行面に水や油などの介在物が存在する場合、これらの介在物は、駆動車輪の走行により、薄く引きのばされ、接触走行面上に薄い層を形成する。そのため、摩擦係数を低下させ、駆動車輪のスリップがさらに発生しやすくなる。
【0019】
本発明の搬送台車用走行軌道レールと従前のレールの接触走行面の性状を明らかにするために、両者の表面粗さをディジタル型触針式表面粗さ測定器を用いてJISB0601(1994)に基づき計測した結果を図3に示す。図3(a)が、本発明の搬送台車用走行軌道レールの粗さ曲線であり、図3(b)が、従前のレールの粗さ曲線である。
【0020】
図3(a)に示した例では、算術平均粗さRaが13.4μm、最大高さRyが71.6μm、十点平均粗さRzが51.6μmとなっている。一方、図3(b)に示した従前のレールは、算術平均粗さRaが0.2μm、最大高さRyが1.2μm、十点平均粗さRzが0.8μmとなっている。このグラフから明らかなように、溶射により形成された微細凹凸面は、凹凸がきわめてシャープであり、非常に緻密である。しかも、溶射する金属は、レールを構成する材料と同じ金属を主成分としているため、レールと微細凹凸面との結合力がきわめて高いものとなっている。また、レール断面の形状や大きさに左右されず、均一な微細凹凸面を形成することが可能である。そのため、搬送台車用走行軌道レールの接触走行面として理想的な凹凸部を形成することが可能である。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成したことにより、搬送台車の駆動車輪と走行軌道レールとの間の摩擦係数が高くなり、傾斜走行部においても、駆動車輪がスリップすることなく、安全に搬送台車を運行することが可能になる。また、接触走行面に水や油などの介在物が存在する場合にも、それらの介在物が速やかに排出され、スリップの発生がきわめて効果的に抑制される。
【0022】
請求項2に係る搬送台車用走行軌道レールにおいては、請求項1に係る搬送台車用走行軌道レールが奏する効果に加えて、微細凹凸面の算術平均粗さRaを12.5μm以上とすることにより、凸部と凹部が相乗的に作用し、スリップの発生がより効果的に、且つ、再現性良く、抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の搬送台車用走行軌道レールを用いたモノレール式搬送装置を示した斜視図である。
【図2】図1に一点鎖線で示した走行軌道レールと搬送台車の駆動車輪との接触走行面を拡大して示した斜視図である。
【図3】(a)が、本発明の搬送台車用走行軌道レールの表面粗さを示すグラフであり、(b)が、従前のレールの表面粗さを示すグラフである。
【符号の説明】
10 ・・・ 走行軌道レール
12 ・・・ 微細凹凸面
20 ・・・ 搬送台車
22 ・・・ 駆動車輪
24 ・・・ 搬送物保持手段
Claims (2)
- 水平走行部並びに傾斜走行部を有する軌道に沿って走行する搬送台車の走行軌道レールであって、
前記搬送台車の駆動車輪との接触走行面の少なくとも傾斜走行部に、当該走行軌道レールを構成する材料と同じ金属を主成分とする粉末を溶射して微細凹凸面を形成したことを特徴とする搬送台車用走行軌道レール。 - 前記微細凹凸面の算術平均粗さRaが、12.5μm以上である請求項1に記載の搬送台車用走行軌道レール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003051623A JP2004257186A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 搬送台車用走行軌道レール |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003051623A JP2004257186A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 搬送台車用走行軌道レール |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004257186A true JP2004257186A (ja) | 2004-09-16 |
Family
ID=33116721
Family Applications (1)
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JP2003051623A Pending JP2004257186A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 搬送台車用走行軌道レール |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004257186A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010116003A (ja) * | 2008-11-12 | 2010-05-27 | Nakanishi Metal Works Co Ltd | フリクション駆動ホイールを備えた搬送装置 |
CN106740886A (zh) * | 2016-12-06 | 2017-05-31 | 马亚胜 | 一种索道上自动运行的穿梭机 |
-
2003
- 2003-02-27 JP JP2003051623A patent/JP2004257186A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010116003A (ja) * | 2008-11-12 | 2010-05-27 | Nakanishi Metal Works Co Ltd | フリクション駆動ホイールを備えた搬送装置 |
CN106740886A (zh) * | 2016-12-06 | 2017-05-31 | 马亚胜 | 一种索道上自动运行的穿梭机 |
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