JP2004256618A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】液状で取扱い性に優れると共に、極圧剤や油性剤などの添加を要することなく、高温・高面圧の加工条件下において焼付き等を起こすことのない潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5〜100%で、上記グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とする潤滑油組成物である。
【解決手段】グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5〜100%で、上記グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とする潤滑油組成物である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑油組成物に関し、特に鉄や鉄鋼、アルミニウムやその合金などの金属を塑性加工する際に、優れた潤滑性を示す潤滑油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属を塑性加工する際の潤滑剤としては、動・植物由来の油脂類が広く使用されている。油脂類は、石油などの鉱油由来の基油に比べると化合物内にエステル基を有しているため、金属に対する親和性が良好で金属表面に吸着し易く、高温・高面圧の厳しい加工条件下でも優れた潤滑特性を発揮するからである。また、動・植物由来の油脂類は生分解性にも優れたものであることから、環境に優しい潤滑油としても注目されている。
【0003】
ところで最近、生産性向上のため金属の加工条件はますます厳しくなり、より高温・高面圧の加工条件下でも焼付きを起こし難い潤滑油が求められている。しかし、動・植物由来の油脂類はグリセリントリ脂肪酸エステルを主成分とするもので、これら油脂類単独の潤滑性は必ずしも十分ではないことから、脂肪酸等の油性剤やリン酸エステル、硫黄化合物の如き極圧剤の併用が必要となる。
【0004】
グリセリンの部分エステルは上記油性剤の1つであり、例えば特許文献1には、油性剤としてグリセリンジ脂肪酸エステルを油脂に添加する方法が提案されている。ところが、油脂中に多量のグリセリンジ脂肪酸エステルを添加すると、融点が上昇して取扱い性が悪くなるので添加量に制約があり、満足のいく潤滑効果は得られ難い。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−214118号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く従来の潤滑剤は基油自体の潤滑性が不十分であるため、現状では各種の添加剤を配合することによって潤滑性を高めざるを得ないが、脂肪酸などの油性剤では、工具や被加工物の脂肪酸による腐食が問題となる。また、潤滑性向上剤としてハロゲン系の極圧剤も知られており、このハロゲン系極圧剤は優れた潤滑性向上効果を有しているが、廃棄物として処理する際にダイオキシンの発生が懸念されるため、最近ではその使用が規制されつつある。また、リン系や硫黄系化合物からなる極圧剤も、工具や被加工材を腐食させる恐れがあり、特にアルミニウム基金属や銅基金属などでは、リンや硫黄による被加工材の変色や腐食が懸念されるため、その使用は嫌われている。従って、それら極圧剤などの添加を要することなく十分に高い潤滑性を発揮し得るような塑性加工用潤滑剤が求められている。
【0007】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、極圧剤や油性剤などの添加を要することなく、高温・高面圧の加工条件下において焼付き等を起こすことのない潤滑油組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の潤滑油組成物とは、グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5〜100%(質量%を意味する、以下同じ)で、該グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とするところに特徴を有している。
【0009】
本発明において、上記グリセリンジ脂肪酸エステルのより好ましい含有率は30%以上であり、また、基油となる上記脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分の炭素数は8〜24の範囲のものが好ましい。そして、これらの要件を満たす基油からなる潤滑油組成物は、常温で液状を呈し取扱い性の良好なものものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る潤滑油組成物は、上記の様にグリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5%以上、より好ましくは30%以上で、100%以下、より好ましく99%以下で、上記グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中の不飽和脂肪酸成分の占める割合が70%以上、より好ましくは90%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、且つグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とするもので、これらの要件を満たすものは常温で液状の油となり、取扱い性の良好なものとなる。
【0011】
そして、上記グリセリンジ脂肪酸エステルおよびグリセリントリ脂肪酸エステルは、特に高温条件下で優れた潤滑性を発揮させるため、それらを構成する脂肪酸成分の炭素数が8以上、24以下、より好ましくは12以上、22以下であるものを選択使用することが望ましい。
【0012】
ところで、一般的な動・植物油は、周知の通りグリセリントリ脂肪酸エステルを主成分とし、少量のグリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルが含まれており、グリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルは、分子内に水酸基を有しているためグリセリントリ脂肪酸エステルに比べて極性が高く、金属表面への吸着が起こり易い上に吸着膜も堅固であることから、優れた潤滑性を発揮し得ると考えられている。
【0013】
ところが、天然の油脂中に微量存在するグリセリンモノ脂肪酸エステルやグリセリンジ脂肪酸エステルは融点が高いため、含有量が多くなると潤滑油全体の融点が上昇し、特に冬期の流動性が悪くなって取扱いが困難になるため、現実にはあまり使用されていない。
【0014】
また工業的に合成したグリセリンジ脂肪酸エステルの場合、オレイン酸の如き不飽和脂肪酸のジエステルでも冬期には結晶化が起こり、半固体状になってしまう。これに対し最近では、菜種油や大豆油を主原料とする油脂から脂肪酸のみを取り出してから再度グリセリンと反応させ、グリセリンジ脂肪酸エステルとした油脂を容易に入手できる様になってきた。
【0015】
菜種油や大豆油は、そのエステルを構成する脂肪酸成分として、リノール酸やリノレン酸の如く分子中に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸を多く含んでいるため、冬期でも固化しない。従って、潤滑剤組成物の主体となる基油を、上記菜種油や大豆油などの油脂と類似の脂肪酸成分組成のグリセリンジ脂肪酸エステルとしてやれば、冬期でも固化しないという、従来の動・植物油由来のグリセリンジ脂肪酸エステルには見られない特徴を発揮すると考えられる。
【0016】
具体的には、グリセリンジ脂肪酸エステル主体の油脂を製造する際に、該脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分として、不飽和脂肪酸であっても1分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸、例えばリノール酸やリノレン酸などの含有比率を高めてやれば、冬期でも固化しないグリセリンジ脂肪酸エステルが得られるはずである。
【0017】
そこで、上記知見に沿って冬場でも固化しない安定なグリセリン脂肪酸エステルを提供すべく研究を重ねた結果、用いるグリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分として、全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸であるものを選択すれば、得られる基油は低温環境下でも液状を維持しつつ優れた潤滑性を発現することを突き止めた。なお本発明では、更に少量のグリセリンモノ脂肪酸エステルが含まれることがあるが、後述する如くその含有量は全量中に占める比率で1%未満に制限されるので、該モノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸量や、2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸成分の含有比率は性能に殆ど影響を及ぼさない。
【0018】
本発明においては、グリセリンジ脂肪酸エステル分子を構成する2つの脂肪酸成分の組み合わせが飽和脂肪酸同士であるものは望ましくなく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の組み合わせ、もしくは不飽和脂肪酸同士の組み合わせが多いことが望ましく、とりわけ、分子中に二重結合を2以上有する不飽和度の高い脂肪酸成分を多量に含むグリセリン脂肪酸エステルを使用することが望ましい。
【0019】
上記の様なグリセリンジ脂肪酸エステル成分は、グリセリントリ脂肪酸エステルを主体とする基油に油性向上剤として添加する場合、少量の添加でそれなりの潤滑性改善効果は見られるが、特に高温条件下において、グリセリントリ脂肪酸エステル単独に比べて有意に優れた潤滑効果を発揮させるには、基油を構成する全脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの割合を5%以上、より好ましくは30%以上にすることが望ましい。
【0020】
ちなみに、グリセリンジ脂肪酸エステルの割合が5%未満では、グリセリントリ脂肪酸エステル量を増大し、或いはそれらを構成する脂肪酸成分の不飽和度などを調整したとしても、本発明で意図する様な取扱い性や特に高温条件下での優れた潤滑性を確保できなくなる。
【0021】
ところで従来例では、グリセリントリ脂肪酸エステル主体の潤滑剤が80℃程度に加熱されると粘度が約1/3に低下し、その粘度低下に伴う工具−被加工材間への導入油量の減少によって摩擦係数が上昇し、摩耗粉の発生量が増加していた。しかし本発明において、グリセリンジ脂肪酸エステルを30%以上含む油脂配合とすれば、加熱により粘度が低下した場合でも、グリセリントリ脂肪酸エステル単独配合の場合に比べて低い摩擦係数を維持することができる。
【0022】
一方、グリセリンモノ脂肪酸エステルは、同じ脂肪酸を含むグリセリンジ脂肪酸エステルやグリセリントリ脂肪酸エステルに比べて融点が高く、そのため、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が高くなると、潤滑油全体の融点が上昇して取扱い性が低下してくる。また現在のところまだ理由は明確にされていないが、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が高くなると、温度が上昇した時の油性効果も低下してくるので、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率は1%未満に抑えなければならない。
【0023】
そして、本発明で基油として用いる上記油脂組成を満たすグリセリン脂肪酸エステル混合油脂は、上記グリセリンジ脂肪酸エステル含量や全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の含有比率、更には二重結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸成分の含有比率などを満たす様、好ましい脂肪酸成分を適宜組合せてグリセリンと反応させることによって合成することができる。しかし、コストや実用性を考慮して特に好ましいのは、前述した如く脂肪酸成分として不飽和度の高いリノール酸やリノレン酸などを脂肪酸成分として多量に含む菜種油や大豆油などの天然油脂を利用し、これらを他の任意の天然油脂と適当な比率で併用し、或いは必要に応じて適宜の合成油脂を配合することによって、上記要件を満たす油脂組成に調整する方法である。
【0024】
本発明で使用する上記潤滑油基油の粘度は特に制限されないが、取扱い性や塑性加工面での油膜強度や導入油量を考えると、40℃における動粘度で10〜100mm2/sec、より好ましくは20〜80mm2/secのものが好ましい。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、上記潤滑油基油に対して、更に塑性加工時の摩擦係数低減や耐焼付き性改善などの目的で、基油の上記特性を損なわない範囲で各種の添加剤を加えてもよい。それらの添加剤としては、脂肪酸やアルコール類、エステル類などの油性向上剤、焼付き性向上のための極圧添加剤、酸化劣化を防ぐための酸化防止剤、粘度調整のための粘度指数向上剤、などが例示される。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。
【0027】
実施例
下記表1に示す含有組成の天然油脂および合成油脂を使用し、これらを表2に示す比率で併用することによって、下記表3,4に示す組成のグリセリンモノ脂肪酸エステル(MG)、グリセリンジ脂肪酸エステル(DG)、グリセリントリ脂肪酸エステル(TD)を含む混合油脂を調製した。
【0028】
得られた各油脂を基油とし、これに酸化防止剤としてとしてステアリル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.6質量部配合して潤滑剤組成物を調製した後、各潤滑剤組成物を用いてボール・オン・ディスク型の湿式摩擦摩耗試験機(高千穂精機社製)によって、軟鋼(一般構造用鋼:JIS規格品)およびAl合金(品番:JIS規格品「5356系合金」)を被加工材として用いた時の摩擦力を測定すると共に、実験に用いたディスク上に残った摺動痕幅を観察することによって潤滑性能を評価した。尚、ディスクの素材は、被加工材として用いた軟鋼およびAl合金と同じ材質とし、ボール側は超硬(直径10mm)で統一した。潤滑油は、ディスク表面に薄く塗布することによって供給した。各潤滑油の脂肪酸構成と20℃での性状を表5に示した。また、上記ボール・オン・ディスク試験後のディスク表面の摺動面を光学顕微鏡によって観察し、摺動痕の幅を測定した。
【0029】
尚、表3,4に示した油脂配合におけるグリセリンモノ脂肪酸エステル(MG)、グリセリンジ脂肪酸エステル(DG)、グリセリントリ脂肪酸エステル(TD)の組成比については、それら混合エステルの遊離水酸基部分をビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドによって誘導体化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーによってモノ、ジ、トリ体の組成比を求めた。各油脂混合物の脂肪酸組成については、各油脂混合物を加水分解して脂肪酸のみを取り出した後、HCl/メタノールまたはNaOMe/メタノールにより誘導体化し、ガスクロマトグラフィーによって炭素数、飽和・不飽和の脂肪酸量、更には不飽和脂肪酸中に占める二重結合が1つの不飽和脂肪酸と二重結合が2つ以上の不飽和脂肪酸の含有比率を求めた。
【0030】
<摩擦係数測定条件>
軟鋼ディスク−超硬ボール系:
荷重;800g、温度;室温または80℃、摺動速度;4.7cm/秒、摺動回数;360回
アルミディスク−超硬ボール系:
荷重;500g、温度;室温、摺動速度;4.7cm/秒、摺動回数;360回
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
実施例1〜5で使用した配合油は、グリセリンジ脂肪酸エステルの占める割合が5〜99%で、グリセリンモノ脂肪酸エステルの占める割合が1%未満であり、それら脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸が70%以上で、且つ不飽和脂肪酸のうち二重結合を2つ以上含む脂肪酸の割合が40%を超えているものである。これらの配合油を用いた場合は、軟鋼でもアルミニウムでも摩擦係数が低く、摺動痕も幅が狭いか或いは痕跡が軽微であるなど、良好な潤滑性が得られている。
【0037】
これに対し比較例1(油番号4)は、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分は望ましい範囲に入っているものの、全配合に占めるグリセリンジ脂肪酸エステル(DG)の割合が規定範囲を外れているため摩擦係数が高く、しかも、特に温度を高めたときの潤滑性が低下している。
【0038】
比較例2(油番号5)は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有比率が高過ぎるため、潤滑性は良好であるものの常温で半固体状となっており、また比較例3(油番号6)は、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の占める比率が高いため半固体状となっており、いずれも取扱い性が悪い。
【0039】
比較例4(油番号7)は、比較例1と同様にグリセリンジ脂肪酸エステルの配合比率が不足するため、摩擦係数が高くなっている。
【0040】
なお図1は、上記実施例3で得たボール・オン・ディスク試験(80℃)後の軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真、図2は、上記比較例1で得たボール・オン・ディスク試験(80℃)後の軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真であり、本発明の規定要件を満たす実施例3の潤滑剤を用いたときの摺動痕(図1)は、本発明の規定要件を外れる比較例の潤滑剤を用いたときの摺動痕(図2)に比べて格段に軽微であることが分る。
【0041】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、殊に、グリセリン脂肪酸エステル系の混合油脂系からなり、特にグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率を特定し、或いは更に、それら脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数や不飽和脂肪酸の占める比率が特定されたグリセリン脂肪酸エステルからなる油脂成分を基油として選択使用することにより、液状で取扱い性に優れると共に、極圧剤や油性剤などの添加を要することなく、高温・高面圧の加工条件下において焼付き等を起こすことのない潤滑油組成物を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の潤滑剤を用いた場合のボール・オン・ディスク試験(80℃)で軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真である。
【図2】比較例の潤滑剤を用いた場合のボール・オン・ディスク試験(80℃)で軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑油組成物に関し、特に鉄や鉄鋼、アルミニウムやその合金などの金属を塑性加工する際に、優れた潤滑性を示す潤滑油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属を塑性加工する際の潤滑剤としては、動・植物由来の油脂類が広く使用されている。油脂類は、石油などの鉱油由来の基油に比べると化合物内にエステル基を有しているため、金属に対する親和性が良好で金属表面に吸着し易く、高温・高面圧の厳しい加工条件下でも優れた潤滑特性を発揮するからである。また、動・植物由来の油脂類は生分解性にも優れたものであることから、環境に優しい潤滑油としても注目されている。
【0003】
ところで最近、生産性向上のため金属の加工条件はますます厳しくなり、より高温・高面圧の加工条件下でも焼付きを起こし難い潤滑油が求められている。しかし、動・植物由来の油脂類はグリセリントリ脂肪酸エステルを主成分とするもので、これら油脂類単独の潤滑性は必ずしも十分ではないことから、脂肪酸等の油性剤やリン酸エステル、硫黄化合物の如き極圧剤の併用が必要となる。
【0004】
グリセリンの部分エステルは上記油性剤の1つであり、例えば特許文献1には、油性剤としてグリセリンジ脂肪酸エステルを油脂に添加する方法が提案されている。ところが、油脂中に多量のグリセリンジ脂肪酸エステルを添加すると、融点が上昇して取扱い性が悪くなるので添加量に制約があり、満足のいく潤滑効果は得られ難い。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−214118号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く従来の潤滑剤は基油自体の潤滑性が不十分であるため、現状では各種の添加剤を配合することによって潤滑性を高めざるを得ないが、脂肪酸などの油性剤では、工具や被加工物の脂肪酸による腐食が問題となる。また、潤滑性向上剤としてハロゲン系の極圧剤も知られており、このハロゲン系極圧剤は優れた潤滑性向上効果を有しているが、廃棄物として処理する際にダイオキシンの発生が懸念されるため、最近ではその使用が規制されつつある。また、リン系や硫黄系化合物からなる極圧剤も、工具や被加工材を腐食させる恐れがあり、特にアルミニウム基金属や銅基金属などでは、リンや硫黄による被加工材の変色や腐食が懸念されるため、その使用は嫌われている。従って、それら極圧剤などの添加を要することなく十分に高い潤滑性を発揮し得るような塑性加工用潤滑剤が求められている。
【0007】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、極圧剤や油性剤などの添加を要することなく、高温・高面圧の加工条件下において焼付き等を起こすことのない潤滑油組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の潤滑油組成物とは、グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5〜100%(質量%を意味する、以下同じ)で、該グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とするところに特徴を有している。
【0009】
本発明において、上記グリセリンジ脂肪酸エステルのより好ましい含有率は30%以上であり、また、基油となる上記脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分の炭素数は8〜24の範囲のものが好ましい。そして、これらの要件を満たす基油からなる潤滑油組成物は、常温で液状を呈し取扱い性の良好なものものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る潤滑油組成物は、上記の様にグリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5%以上、より好ましくは30%以上で、100%以下、より好ましく99%以下で、上記グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中の不飽和脂肪酸成分の占める割合が70%以上、より好ましくは90%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、且つグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とするもので、これらの要件を満たすものは常温で液状の油となり、取扱い性の良好なものとなる。
【0011】
そして、上記グリセリンジ脂肪酸エステルおよびグリセリントリ脂肪酸エステルは、特に高温条件下で優れた潤滑性を発揮させるため、それらを構成する脂肪酸成分の炭素数が8以上、24以下、より好ましくは12以上、22以下であるものを選択使用することが望ましい。
【0012】
ところで、一般的な動・植物油は、周知の通りグリセリントリ脂肪酸エステルを主成分とし、少量のグリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルが含まれており、グリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルは、分子内に水酸基を有しているためグリセリントリ脂肪酸エステルに比べて極性が高く、金属表面への吸着が起こり易い上に吸着膜も堅固であることから、優れた潤滑性を発揮し得ると考えられている。
【0013】
ところが、天然の油脂中に微量存在するグリセリンモノ脂肪酸エステルやグリセリンジ脂肪酸エステルは融点が高いため、含有量が多くなると潤滑油全体の融点が上昇し、特に冬期の流動性が悪くなって取扱いが困難になるため、現実にはあまり使用されていない。
【0014】
また工業的に合成したグリセリンジ脂肪酸エステルの場合、オレイン酸の如き不飽和脂肪酸のジエステルでも冬期には結晶化が起こり、半固体状になってしまう。これに対し最近では、菜種油や大豆油を主原料とする油脂から脂肪酸のみを取り出してから再度グリセリンと反応させ、グリセリンジ脂肪酸エステルとした油脂を容易に入手できる様になってきた。
【0015】
菜種油や大豆油は、そのエステルを構成する脂肪酸成分として、リノール酸やリノレン酸の如く分子中に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸を多く含んでいるため、冬期でも固化しない。従って、潤滑剤組成物の主体となる基油を、上記菜種油や大豆油などの油脂と類似の脂肪酸成分組成のグリセリンジ脂肪酸エステルとしてやれば、冬期でも固化しないという、従来の動・植物油由来のグリセリンジ脂肪酸エステルには見られない特徴を発揮すると考えられる。
【0016】
具体的には、グリセリンジ脂肪酸エステル主体の油脂を製造する際に、該脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分として、不飽和脂肪酸であっても1分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸、例えばリノール酸やリノレン酸などの含有比率を高めてやれば、冬期でも固化しないグリセリンジ脂肪酸エステルが得られるはずである。
【0017】
そこで、上記知見に沿って冬場でも固化しない安定なグリセリン脂肪酸エステルを提供すべく研究を重ねた結果、用いるグリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分として、全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸であるものを選択すれば、得られる基油は低温環境下でも液状を維持しつつ優れた潤滑性を発現することを突き止めた。なお本発明では、更に少量のグリセリンモノ脂肪酸エステルが含まれることがあるが、後述する如くその含有量は全量中に占める比率で1%未満に制限されるので、該モノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸量や、2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸成分の含有比率は性能に殆ど影響を及ぼさない。
【0018】
本発明においては、グリセリンジ脂肪酸エステル分子を構成する2つの脂肪酸成分の組み合わせが飽和脂肪酸同士であるものは望ましくなく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の組み合わせ、もしくは不飽和脂肪酸同士の組み合わせが多いことが望ましく、とりわけ、分子中に二重結合を2以上有する不飽和度の高い脂肪酸成分を多量に含むグリセリン脂肪酸エステルを使用することが望ましい。
【0019】
上記の様なグリセリンジ脂肪酸エステル成分は、グリセリントリ脂肪酸エステルを主体とする基油に油性向上剤として添加する場合、少量の添加でそれなりの潤滑性改善効果は見られるが、特に高温条件下において、グリセリントリ脂肪酸エステル単独に比べて有意に優れた潤滑効果を発揮させるには、基油を構成する全脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの割合を5%以上、より好ましくは30%以上にすることが望ましい。
【0020】
ちなみに、グリセリンジ脂肪酸エステルの割合が5%未満では、グリセリントリ脂肪酸エステル量を増大し、或いはそれらを構成する脂肪酸成分の不飽和度などを調整したとしても、本発明で意図する様な取扱い性や特に高温条件下での優れた潤滑性を確保できなくなる。
【0021】
ところで従来例では、グリセリントリ脂肪酸エステル主体の潤滑剤が80℃程度に加熱されると粘度が約1/3に低下し、その粘度低下に伴う工具−被加工材間への導入油量の減少によって摩擦係数が上昇し、摩耗粉の発生量が増加していた。しかし本発明において、グリセリンジ脂肪酸エステルを30%以上含む油脂配合とすれば、加熱により粘度が低下した場合でも、グリセリントリ脂肪酸エステル単独配合の場合に比べて低い摩擦係数を維持することができる。
【0022】
一方、グリセリンモノ脂肪酸エステルは、同じ脂肪酸を含むグリセリンジ脂肪酸エステルやグリセリントリ脂肪酸エステルに比べて融点が高く、そのため、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が高くなると、潤滑油全体の融点が上昇して取扱い性が低下してくる。また現在のところまだ理由は明確にされていないが、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が高くなると、温度が上昇した時の油性効果も低下してくるので、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率は1%未満に抑えなければならない。
【0023】
そして、本発明で基油として用いる上記油脂組成を満たすグリセリン脂肪酸エステル混合油脂は、上記グリセリンジ脂肪酸エステル含量や全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の含有比率、更には二重結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸成分の含有比率などを満たす様、好ましい脂肪酸成分を適宜組合せてグリセリンと反応させることによって合成することができる。しかし、コストや実用性を考慮して特に好ましいのは、前述した如く脂肪酸成分として不飽和度の高いリノール酸やリノレン酸などを脂肪酸成分として多量に含む菜種油や大豆油などの天然油脂を利用し、これらを他の任意の天然油脂と適当な比率で併用し、或いは必要に応じて適宜の合成油脂を配合することによって、上記要件を満たす油脂組成に調整する方法である。
【0024】
本発明で使用する上記潤滑油基油の粘度は特に制限されないが、取扱い性や塑性加工面での油膜強度や導入油量を考えると、40℃における動粘度で10〜100mm2/sec、より好ましくは20〜80mm2/secのものが好ましい。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、上記潤滑油基油に対して、更に塑性加工時の摩擦係数低減や耐焼付き性改善などの目的で、基油の上記特性を損なわない範囲で各種の添加剤を加えてもよい。それらの添加剤としては、脂肪酸やアルコール類、エステル類などの油性向上剤、焼付き性向上のための極圧添加剤、酸化劣化を防ぐための酸化防止剤、粘度調整のための粘度指数向上剤、などが例示される。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。
【0027】
実施例
下記表1に示す含有組成の天然油脂および合成油脂を使用し、これらを表2に示す比率で併用することによって、下記表3,4に示す組成のグリセリンモノ脂肪酸エステル(MG)、グリセリンジ脂肪酸エステル(DG)、グリセリントリ脂肪酸エステル(TD)を含む混合油脂を調製した。
【0028】
得られた各油脂を基油とし、これに酸化防止剤としてとしてステアリル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.6質量部配合して潤滑剤組成物を調製した後、各潤滑剤組成物を用いてボール・オン・ディスク型の湿式摩擦摩耗試験機(高千穂精機社製)によって、軟鋼(一般構造用鋼:JIS規格品)およびAl合金(品番:JIS規格品「5356系合金」)を被加工材として用いた時の摩擦力を測定すると共に、実験に用いたディスク上に残った摺動痕幅を観察することによって潤滑性能を評価した。尚、ディスクの素材は、被加工材として用いた軟鋼およびAl合金と同じ材質とし、ボール側は超硬(直径10mm)で統一した。潤滑油は、ディスク表面に薄く塗布することによって供給した。各潤滑油の脂肪酸構成と20℃での性状を表5に示した。また、上記ボール・オン・ディスク試験後のディスク表面の摺動面を光学顕微鏡によって観察し、摺動痕の幅を測定した。
【0029】
尚、表3,4に示した油脂配合におけるグリセリンモノ脂肪酸エステル(MG)、グリセリンジ脂肪酸エステル(DG)、グリセリントリ脂肪酸エステル(TD)の組成比については、それら混合エステルの遊離水酸基部分をビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドによって誘導体化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーによってモノ、ジ、トリ体の組成比を求めた。各油脂混合物の脂肪酸組成については、各油脂混合物を加水分解して脂肪酸のみを取り出した後、HCl/メタノールまたはNaOMe/メタノールにより誘導体化し、ガスクロマトグラフィーによって炭素数、飽和・不飽和の脂肪酸量、更には不飽和脂肪酸中に占める二重結合が1つの不飽和脂肪酸と二重結合が2つ以上の不飽和脂肪酸の含有比率を求めた。
【0030】
<摩擦係数測定条件>
軟鋼ディスク−超硬ボール系:
荷重;800g、温度;室温または80℃、摺動速度;4.7cm/秒、摺動回数;360回
アルミディスク−超硬ボール系:
荷重;500g、温度;室温、摺動速度;4.7cm/秒、摺動回数;360回
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
実施例1〜5で使用した配合油は、グリセリンジ脂肪酸エステルの占める割合が5〜99%で、グリセリンモノ脂肪酸エステルの占める割合が1%未満であり、それら脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸が70%以上で、且つ不飽和脂肪酸のうち二重結合を2つ以上含む脂肪酸の割合が40%を超えているものである。これらの配合油を用いた場合は、軟鋼でもアルミニウムでも摩擦係数が低く、摺動痕も幅が狭いか或いは痕跡が軽微であるなど、良好な潤滑性が得られている。
【0037】
これに対し比較例1(油番号4)は、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分は望ましい範囲に入っているものの、全配合に占めるグリセリンジ脂肪酸エステル(DG)の割合が規定範囲を外れているため摩擦係数が高く、しかも、特に温度を高めたときの潤滑性が低下している。
【0038】
比較例2(油番号5)は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有比率が高過ぎるため、潤滑性は良好であるものの常温で半固体状となっており、また比較例3(油番号6)は、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の占める比率が高いため半固体状となっており、いずれも取扱い性が悪い。
【0039】
比較例4(油番号7)は、比較例1と同様にグリセリンジ脂肪酸エステルの配合比率が不足するため、摩擦係数が高くなっている。
【0040】
なお図1は、上記実施例3で得たボール・オン・ディスク試験(80℃)後の軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真、図2は、上記比較例1で得たボール・オン・ディスク試験(80℃)後の軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真であり、本発明の規定要件を満たす実施例3の潤滑剤を用いたときの摺動痕(図1)は、本発明の規定要件を外れる比較例の潤滑剤を用いたときの摺動痕(図2)に比べて格段に軽微であることが分る。
【0041】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、殊に、グリセリン脂肪酸エステル系の混合油脂系からなり、特にグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率を特定し、或いは更に、それら脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数や不飽和脂肪酸の占める比率が特定されたグリセリン脂肪酸エステルからなる油脂成分を基油として選択使用することにより、液状で取扱い性に優れると共に、極圧剤や油性剤などの添加を要することなく、高温・高面圧の加工条件下において焼付き等を起こすことのない潤滑油組成物を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の潤滑剤を用いた場合のボール・オン・ディスク試験(80℃)で軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真である。
【図2】比較例の潤滑剤を用いた場合のボール・オン・ディスク試験(80℃)で軟鋼ディスク上に観察される摺動痕の光学顕微鏡写真である。
Claims (4)
- グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステル中に占めるグリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が5〜100%(質量%を意味する、以下同じ)で、上記グリセリンジ脂肪酸エステルまたはこれとグリセリントリ脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸成分中に占める不飽和脂肪酸成分の割合が70%以上で、且つ該不飽和脂肪酸成分のうち40%以上が分子内に2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸からなり、且つグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有率が1%未満である油脂混合物を基油とするものであることを特徴とする潤滑油組成物。
- 上記グリセリンジ脂肪酸エステルの含有率が30%以上である請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 上記脂肪酸エステルを構成する脂肪酸成分の炭素数が8〜24である請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
- 常温で液状である請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
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