JP2004256579A - セルロース素材 - Google Patents
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Abstract
【課題】不純物を多く含むセルロース素材であっても、簡単に分解性を制御でき、自然環境中で使用しても環境に重大な影響を及ぼさない新規セルロース素材を提供すること。
【解決手段】環境中の生物に有害とならない水溶性高分子とセルロース素材とを混合し、セルロース素材を被覆することにより、生分解速度が制御されたセルロース素材が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】環境中の生物に有害とならない水溶性高分子とセルロース素材とを混合し、セルロース素材を被覆することにより、生分解速度が制御されたセルロース素材が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種工業用途において使用されるセルロース素材に関し、セルロースの特質である生分解性を、目的に応じてコントロールすることで、より広範囲な分野での使用に適した新規なセルロース素材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは、生分解性を有するバイオマス資源であり、近年、環境に悪影響を及ぼさない素材として、プラスチック素材に代わって屋外で使用される物品に用いられる事例が増えてきている。特に、農業、園芸分野ではこれまでの塩化ビニルやポリエチレン製に代わり、紙製のマルチシートの利用が検討されたり、紙製の育苗ポットが使用されたりしている。
【0003】
従来のプラスチック素材に代わって、生分解性のセルロース素材を使用する場合、問題となるのはその分解速度であり、必要な期間は十分な強度や形態を保ち、不要になった時点で分解が進行することが望まれる。
【0004】
水溶性高分子を用いてセルロース素材を修飾する方法としては、セルロース分子にポリエチレングリコール分子を共有結合させる方法が示されているが、化学合成のプロセスが必要なため容易にはできないことと、セルロース以外の不純物を多く含む素材に対しては適用しにくいといった問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、各種抗菌剤、防腐剤等を添加して、分解を抑制する方法が開示されているが、抗菌剤や防腐剤自体が有害であったり、自然環境中で使用すると目的とする生物以外へも影響を及ぼす可能性のある物質が多く、用途や使用量、使用場所を限定せざるを得ないという問題があった(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−053670号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】
特開平8−116796号公報(第1〜5頁)
【特許文献3】
特開平8−116797号公報(第1〜4頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記実状を鑑みたものであって、不純物を多く含むセルロース素材であっても、簡単に生分解性を制御でき、自然環境中で使用しても環境に重大な影響を及ぼさない新規セルロース素材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため検討した結果、セルロース素材とは生分解速度の異なる水溶性高分子で、セルロース素材を被覆することにより、セルロース素材として要求される機械的強度や、シート形成性を損なわず、自然環境に対しても大きな影響を及ぼさない新規なセルロース素材を製造できることを見出した。
【0009】
本発明におけるセルロース素材とは、植物の細胞壁及び、微生物や動物の代謝活動により生産された結晶性セルロースを含有する素材または、これらに物理的、化学的方法でセルロース以外の成分を取り除く加工を施した素材である。各種セルロース誘導体等、結晶性セルロースを含有しないものは、本発明におけるセルロース素材には含まれない。
【0010】
本発明における水溶性高分子とは、生分解性を有し、その速度がセルロース素材と異なる水溶性高分子であり、天然高分子、合成高分子を問わないが、自然環境中において使用される場合においては、各種生物に対し少なくとも急性毒性を示さない物質であることが必要である。
【0011】
本発明における生分解性とは、自然環境中の水中または土中において、微生物の活動によりその分子が分解、低分子化される現象であり、その分解速度は問わない。
【0012】
本発明における水溶性高分子の例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等が挙げられるが、これらは、試薬や各種工業用原料として広く流通している商品の他、目的に応じてその重合度や置換度、各種変性、形状等が調製されたものも含まれる。但し、有害性を発現する処理が施されたものについては、本発明には含まれない。
【0013】
本発明における50℃以上で溶解する水溶性高分子とは、50℃未満の水中ではほとんど溶解せず、50℃以上に加熱することで、溶解する水溶性高分子である。
【0014】
本発明における植物体の一部とは、植物体を物理的、化学的あるいは生物的な方法により処理することにより、セルロース素材の特性、即ち生分解性、親水性、不溶性、成膜性、繊維形状等が引き出されたものである。植物体としては、草本、木本類を問わず、また根、茎、葉といったいずれの組織でも利用することができる。
【0015】
本発明における植物体の一部より精製された素材とは、上記植物体の一部から、セルロース含有量を増加させるために、化学的、生物的な手法によりセルロース以外の成分を取り除く処理を施すことにより得られた素材である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、セルロース素材とは生分解速度の異なる水溶性高分子で、セルロース素材を被覆することで、セルロース素材として要求される機械的強度や、シート形成性を損なわず、自然環境に対しても大きな影響を及ぼさない新規セルロース素材を提供するものである。
【0017】
本発明におけるセルロース素材としては、セルロース成分を含む木材、綿、麻、わら等を適当な大きさに調製したものや、これらより主に化学的な方法でセルロース以外の成分を除去したパルプが利用できる他、サトウキビや甜菜、各種果実の絞り粕等、セルロース素材が含有さているものを同様に用いても良い。また、発酵装置を用いてある種の微生物を培養することにより得られるバクテリアセルロースや、ポリ乳酸を加工したもの等を用いることもできる。
【0018】
本発明における水溶性高分子とは、セルロースとは分解性が異なり、0〜100℃の間の適当な温度域の水に易溶で、環境に対して有害性を有しない高分子物質を利用することができる。例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダといった合成高分子やデンプン、寒天、ペクチンといった天然高分子、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース、カチオン化デンプンといった天然高分子に化学修飾したもの等を利用することができる。これらの高分子は土壌改良材や食品添加物として既に利用されている高分子であり、生物への有害性は極めて低い。また、複数の水溶性高分子を混合して使用したり、異なる水溶性高分子により多層に被覆して使用してもよい。
【0019】
50℃以上の水で溶解性が高まる水溶性高分子を使用すると、一旦溶解してセルロース素材を被覆後は、一般的な自然環境中で水が存在しても溶出する量が少なくなり、長期間セルロース素材を被覆することが可能となる。水溶性高分子の溶解性は、例えば重合度や置換度、乾燥方法といった製造条件を変えることで調整することができる。
【0020】
セルロース素材よりも生分解速度が遅い水溶性高分子を使用した場合には、セルロース素材の分解を抑制することが可能であり、被覆した水溶性高分子の分解が進行するまで、内部のセルロース素材が保護される。また、セルロース素材よりも生分解速度が速い水溶性高分子を使用した場合には、セルロース素材単独の時よりも、微生物の活動が活発になるため、分解が促進される。
【0021】
セルロース素材を水溶性高分子で被覆するためには、水溶性高分子溶液にセルロース素材を混合する他、セルロース素材と水溶性高分子の乾燥粉末を混合後、水を加えたり、加熱することによって被覆することができる。また、セルロース素材を予めシートや立体形状に成形したものについても、同様に処理することで、セルロース素材表面を被覆することが可能である。さらに、被覆する水溶性高分子は複数であっても良く、一度被覆したセルロース素材にさらに、異なる水溶性高分子で上記の被覆処理を繰り返すことにより、多層の被覆をすることが可能である。
【0022】
水溶性高分子で被覆したセルロース素材は、単独あるいは他の資材と複合するなどして様々な用途に利用することができる。水溶性高分子溶液とセルロース素材の混合物をキャストしたり、乾燥させて積層することによりシート状に加工して、農業用のマルチシートに利用したり、立体加工して育苗用の容器に利用したりすることができる。その際、使用する水溶性高分子の種類を適宜選択することで、シートや容器の形状や機能が維持される期間を調節したり、使用後の分解速度を調節したりすることが可能である。
【0023】
本発明に用いられる植物体は、既にセルロース素材原料として利用されている木材、綿、麻、わら等の他、果物やナタネ、大豆、甜菜、サトウキビ等の絞り粕といった食品廃棄物や農産廃棄物を利用することができる。これらの植物体をそのまま使用しても良いし、酸、アルカリや酵素による処理により不純物を取り除いて使用してもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
ポリビニルアルコール(クラレ社製、重合度1700)0.1%(w/w)水溶液10Lに、広葉樹チップを原料とした、晒しクラフトパルプ(三菱製紙社製)を0.1%(w/w)となるように混合し、撹拌した。
【0026】
混合液を金属製平板上に均一に広げた後に風乾し、60×30cmのシートを形成した。
【0027】
長さ60cmの市販のプラスチック製プランターに黒土、腐葉土、堆肥、化成肥料を混合した培養土を詰め、その上に先に形成したシートを被せ、マルチとした。シートの端は培養土を載せて固定した。シート上に15cm間隔で穴を開け、ほうれん草の種子を穴から、培養土中に播種した。
【0028】
プランターを日当たりの良い屋外において、適宜散水しながら約2ヶ月間、ほうれん草を栽培した。ほうれん草の生育に特に異常は認められなかった。また、シートは栽培期間を通じて、その形状を保ち、雑草の発生を抑えることができた。
【0029】
比較例1
実施例1において、ポリビニルアルコールを用いずに、広葉樹晒しクラフトパルプのみを用い、実施例1と同様の方法でシートを形成した。
【0030】
実施例1と同様に、パルプのみのシートでマルチングを行い、ほうれん草を栽培した。その結果、ほうれん草は生育したものの、シートは栽培途中で所々が破れ、破れた箇所の一部では雑草の発生が認められた。
【0031】
実施例2
ポリビニルアルコール(クラレ社製、重合度1700)、ポリエチレングリコール(純正化学社製、重合度20000)、カルボキシメチルセルロース(和光純薬工業社製)のそれぞれ2.0%(w/w)水溶液50mLに、それぞれサトウキビの搾汁粕であるバガスを1.0%(w/w)となるように混合、撹拌し、それぞれの水溶性高分子でバガスを被覆した。比較としてバガスのみを1.0%(w/w)とした混合液を調製した。なお、ポリビニルアルコール溶液の調製は、60℃に加温して行った。
【0032】
100mL容の市販のガラス製サンプルびんに市販の園芸用黒土20g(乾物量)をつめ、上記バガスのみ、及びバガスと水溶性高分子混合液をそれぞれ6.0gと硝酸アンモニウム(純正化学社製)62mgを黒土に加えて混合した。比較として黒土に硝酸アンモニウムのみを混合したものを調製した。サンプルびんの口をポリエチレンフィルムで覆い、暗黒下30℃で静置した。
【0033】
1ヶ月後、黒土を1規定塩化カリウム溶液で抽出し、抽出液中の硝酸イオン及びアンモニウムイオン由来の窒素量をイオンクロマトグラムにより定量した結果、ポリビニルアルコールで被覆したバガス、ポリエチレングリコールで被覆したバガス及び、硝酸アンモニウムのみを添加した黒土においては、添加直後と1ヶ月経過後とで、黒土乾燥重量当たりの窒素量に変化は無かったが(600mg/kg)、バガスのみを添加した黒土では2/3(400mg/kg)、カルボキシメチルセルロースで被覆したバガスを添加した黒土ではおよそ1/6(100mg/kg)に低下した。これは、バガスやカルボキシメチルセルロースの添加により、これらを炭素源、硝酸アンモニウムを窒素源として分解、資化することで、黒土中の微生物の活動が活発になったためであると考えられる。従って、窒素量の低下はバガス及び、カルボキシメチルセルロースの分解が進行していることを示す。
【0034】
また、バガス単独よりもカルボキシメチルセルロースで被覆した方が、窒素量の減少が大きかったことから、カルボキシメチルセルロースで被覆したバガスはバガス単独よりも分解が速くなっていると言える。また、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールで被覆したバガスは、1ヶ月ではほとんど分解しておらず、バガス単独よりも分解が遅くなっていると言える。
【0035】
さらに、試験期間を延長したところ、およそ3ヶ月経過後、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールで被覆したバガスで、窒素量の減少が認められた。
【0036】
これらの結果より、セルロース素材を水溶性高分子で被覆することにより、その分解速度をコントロールすることが可能であることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、水溶性高分子でセルロース素材を被覆することにより、セルロース素材の生分解性が制御され、かつ環境に影響を及ぼさないセルロース素材を調製することが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種工業用途において使用されるセルロース素材に関し、セルロースの特質である生分解性を、目的に応じてコントロールすることで、より広範囲な分野での使用に適した新規なセルロース素材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは、生分解性を有するバイオマス資源であり、近年、環境に悪影響を及ぼさない素材として、プラスチック素材に代わって屋外で使用される物品に用いられる事例が増えてきている。特に、農業、園芸分野ではこれまでの塩化ビニルやポリエチレン製に代わり、紙製のマルチシートの利用が検討されたり、紙製の育苗ポットが使用されたりしている。
【0003】
従来のプラスチック素材に代わって、生分解性のセルロース素材を使用する場合、問題となるのはその分解速度であり、必要な期間は十分な強度や形態を保ち、不要になった時点で分解が進行することが望まれる。
【0004】
水溶性高分子を用いてセルロース素材を修飾する方法としては、セルロース分子にポリエチレングリコール分子を共有結合させる方法が示されているが、化学合成のプロセスが必要なため容易にはできないことと、セルロース以外の不純物を多く含む素材に対しては適用しにくいといった問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、各種抗菌剤、防腐剤等を添加して、分解を抑制する方法が開示されているが、抗菌剤や防腐剤自体が有害であったり、自然環境中で使用すると目的とする生物以外へも影響を及ぼす可能性のある物質が多く、用途や使用量、使用場所を限定せざるを得ないという問題があった(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−053670号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】
特開平8−116796号公報(第1〜5頁)
【特許文献3】
特開平8−116797号公報(第1〜4頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記実状を鑑みたものであって、不純物を多く含むセルロース素材であっても、簡単に生分解性を制御でき、自然環境中で使用しても環境に重大な影響を及ぼさない新規セルロース素材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため検討した結果、セルロース素材とは生分解速度の異なる水溶性高分子で、セルロース素材を被覆することにより、セルロース素材として要求される機械的強度や、シート形成性を損なわず、自然環境に対しても大きな影響を及ぼさない新規なセルロース素材を製造できることを見出した。
【0009】
本発明におけるセルロース素材とは、植物の細胞壁及び、微生物や動物の代謝活動により生産された結晶性セルロースを含有する素材または、これらに物理的、化学的方法でセルロース以外の成分を取り除く加工を施した素材である。各種セルロース誘導体等、結晶性セルロースを含有しないものは、本発明におけるセルロース素材には含まれない。
【0010】
本発明における水溶性高分子とは、生分解性を有し、その速度がセルロース素材と異なる水溶性高分子であり、天然高分子、合成高分子を問わないが、自然環境中において使用される場合においては、各種生物に対し少なくとも急性毒性を示さない物質であることが必要である。
【0011】
本発明における生分解性とは、自然環境中の水中または土中において、微生物の活動によりその分子が分解、低分子化される現象であり、その分解速度は問わない。
【0012】
本発明における水溶性高分子の例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等が挙げられるが、これらは、試薬や各種工業用原料として広く流通している商品の他、目的に応じてその重合度や置換度、各種変性、形状等が調製されたものも含まれる。但し、有害性を発現する処理が施されたものについては、本発明には含まれない。
【0013】
本発明における50℃以上で溶解する水溶性高分子とは、50℃未満の水中ではほとんど溶解せず、50℃以上に加熱することで、溶解する水溶性高分子である。
【0014】
本発明における植物体の一部とは、植物体を物理的、化学的あるいは生物的な方法により処理することにより、セルロース素材の特性、即ち生分解性、親水性、不溶性、成膜性、繊維形状等が引き出されたものである。植物体としては、草本、木本類を問わず、また根、茎、葉といったいずれの組織でも利用することができる。
【0015】
本発明における植物体の一部より精製された素材とは、上記植物体の一部から、セルロース含有量を増加させるために、化学的、生物的な手法によりセルロース以外の成分を取り除く処理を施すことにより得られた素材である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、セルロース素材とは生分解速度の異なる水溶性高分子で、セルロース素材を被覆することで、セルロース素材として要求される機械的強度や、シート形成性を損なわず、自然環境に対しても大きな影響を及ぼさない新規セルロース素材を提供するものである。
【0017】
本発明におけるセルロース素材としては、セルロース成分を含む木材、綿、麻、わら等を適当な大きさに調製したものや、これらより主に化学的な方法でセルロース以外の成分を除去したパルプが利用できる他、サトウキビや甜菜、各種果実の絞り粕等、セルロース素材が含有さているものを同様に用いても良い。また、発酵装置を用いてある種の微生物を培養することにより得られるバクテリアセルロースや、ポリ乳酸を加工したもの等を用いることもできる。
【0018】
本発明における水溶性高分子とは、セルロースとは分解性が異なり、0〜100℃の間の適当な温度域の水に易溶で、環境に対して有害性を有しない高分子物質を利用することができる。例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダといった合成高分子やデンプン、寒天、ペクチンといった天然高分子、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース、カチオン化デンプンといった天然高分子に化学修飾したもの等を利用することができる。これらの高分子は土壌改良材や食品添加物として既に利用されている高分子であり、生物への有害性は極めて低い。また、複数の水溶性高分子を混合して使用したり、異なる水溶性高分子により多層に被覆して使用してもよい。
【0019】
50℃以上の水で溶解性が高まる水溶性高分子を使用すると、一旦溶解してセルロース素材を被覆後は、一般的な自然環境中で水が存在しても溶出する量が少なくなり、長期間セルロース素材を被覆することが可能となる。水溶性高分子の溶解性は、例えば重合度や置換度、乾燥方法といった製造条件を変えることで調整することができる。
【0020】
セルロース素材よりも生分解速度が遅い水溶性高分子を使用した場合には、セルロース素材の分解を抑制することが可能であり、被覆した水溶性高分子の分解が進行するまで、内部のセルロース素材が保護される。また、セルロース素材よりも生分解速度が速い水溶性高分子を使用した場合には、セルロース素材単独の時よりも、微生物の活動が活発になるため、分解が促進される。
【0021】
セルロース素材を水溶性高分子で被覆するためには、水溶性高分子溶液にセルロース素材を混合する他、セルロース素材と水溶性高分子の乾燥粉末を混合後、水を加えたり、加熱することによって被覆することができる。また、セルロース素材を予めシートや立体形状に成形したものについても、同様に処理することで、セルロース素材表面を被覆することが可能である。さらに、被覆する水溶性高分子は複数であっても良く、一度被覆したセルロース素材にさらに、異なる水溶性高分子で上記の被覆処理を繰り返すことにより、多層の被覆をすることが可能である。
【0022】
水溶性高分子で被覆したセルロース素材は、単独あるいは他の資材と複合するなどして様々な用途に利用することができる。水溶性高分子溶液とセルロース素材の混合物をキャストしたり、乾燥させて積層することによりシート状に加工して、農業用のマルチシートに利用したり、立体加工して育苗用の容器に利用したりすることができる。その際、使用する水溶性高分子の種類を適宜選択することで、シートや容器の形状や機能が維持される期間を調節したり、使用後の分解速度を調節したりすることが可能である。
【0023】
本発明に用いられる植物体は、既にセルロース素材原料として利用されている木材、綿、麻、わら等の他、果物やナタネ、大豆、甜菜、サトウキビ等の絞り粕といった食品廃棄物や農産廃棄物を利用することができる。これらの植物体をそのまま使用しても良いし、酸、アルカリや酵素による処理により不純物を取り除いて使用してもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
ポリビニルアルコール(クラレ社製、重合度1700)0.1%(w/w)水溶液10Lに、広葉樹チップを原料とした、晒しクラフトパルプ(三菱製紙社製)を0.1%(w/w)となるように混合し、撹拌した。
【0026】
混合液を金属製平板上に均一に広げた後に風乾し、60×30cmのシートを形成した。
【0027】
長さ60cmの市販のプラスチック製プランターに黒土、腐葉土、堆肥、化成肥料を混合した培養土を詰め、その上に先に形成したシートを被せ、マルチとした。シートの端は培養土を載せて固定した。シート上に15cm間隔で穴を開け、ほうれん草の種子を穴から、培養土中に播種した。
【0028】
プランターを日当たりの良い屋外において、適宜散水しながら約2ヶ月間、ほうれん草を栽培した。ほうれん草の生育に特に異常は認められなかった。また、シートは栽培期間を通じて、その形状を保ち、雑草の発生を抑えることができた。
【0029】
比較例1
実施例1において、ポリビニルアルコールを用いずに、広葉樹晒しクラフトパルプのみを用い、実施例1と同様の方法でシートを形成した。
【0030】
実施例1と同様に、パルプのみのシートでマルチングを行い、ほうれん草を栽培した。その結果、ほうれん草は生育したものの、シートは栽培途中で所々が破れ、破れた箇所の一部では雑草の発生が認められた。
【0031】
実施例2
ポリビニルアルコール(クラレ社製、重合度1700)、ポリエチレングリコール(純正化学社製、重合度20000)、カルボキシメチルセルロース(和光純薬工業社製)のそれぞれ2.0%(w/w)水溶液50mLに、それぞれサトウキビの搾汁粕であるバガスを1.0%(w/w)となるように混合、撹拌し、それぞれの水溶性高分子でバガスを被覆した。比較としてバガスのみを1.0%(w/w)とした混合液を調製した。なお、ポリビニルアルコール溶液の調製は、60℃に加温して行った。
【0032】
100mL容の市販のガラス製サンプルびんに市販の園芸用黒土20g(乾物量)をつめ、上記バガスのみ、及びバガスと水溶性高分子混合液をそれぞれ6.0gと硝酸アンモニウム(純正化学社製)62mgを黒土に加えて混合した。比較として黒土に硝酸アンモニウムのみを混合したものを調製した。サンプルびんの口をポリエチレンフィルムで覆い、暗黒下30℃で静置した。
【0033】
1ヶ月後、黒土を1規定塩化カリウム溶液で抽出し、抽出液中の硝酸イオン及びアンモニウムイオン由来の窒素量をイオンクロマトグラムにより定量した結果、ポリビニルアルコールで被覆したバガス、ポリエチレングリコールで被覆したバガス及び、硝酸アンモニウムのみを添加した黒土においては、添加直後と1ヶ月経過後とで、黒土乾燥重量当たりの窒素量に変化は無かったが(600mg/kg)、バガスのみを添加した黒土では2/3(400mg/kg)、カルボキシメチルセルロースで被覆したバガスを添加した黒土ではおよそ1/6(100mg/kg)に低下した。これは、バガスやカルボキシメチルセルロースの添加により、これらを炭素源、硝酸アンモニウムを窒素源として分解、資化することで、黒土中の微生物の活動が活発になったためであると考えられる。従って、窒素量の低下はバガス及び、カルボキシメチルセルロースの分解が進行していることを示す。
【0034】
また、バガス単独よりもカルボキシメチルセルロースで被覆した方が、窒素量の減少が大きかったことから、カルボキシメチルセルロースで被覆したバガスはバガス単独よりも分解が速くなっていると言える。また、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールで被覆したバガスは、1ヶ月ではほとんど分解しておらず、バガス単独よりも分解が遅くなっていると言える。
【0035】
さらに、試験期間を延長したところ、およそ3ヶ月経過後、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールで被覆したバガスで、窒素量の減少が認められた。
【0036】
これらの結果より、セルロース素材を水溶性高分子で被覆することにより、その分解速度をコントロールすることが可能であることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、水溶性高分子でセルロース素材を被覆することにより、セルロース素材の生分解性が制御され、かつ環境に影響を及ぼさないセルロース素材を調製することが可能である。
Claims (4)
- 水溶性高分子で被覆することにより、生分解性を改良したセルロース素材。
- 水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのうち、少なくとも一種類を含んだものである請求項1に記載のセルロース素材。
- 水溶性高分子が50℃以上の温度で溶解することを特徴とする請求項1に記載のセルロース素材。
- セルロース素材が、植物体の一部、もしくは植物体の一部より精製された素材である請求項1に記載のセルロース素材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003045751A JP2004256579A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | セルロース素材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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-
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Cited By (6)
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EP3932974A1 (en) | 2020-06-30 | 2022-01-05 | Fujifilm Business Innovation Corp. | Biodegradable resin particle |
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