JP2004251866A - X線回折測定装置およびx線回折測定方法 - Google Patents

X線回折測定装置およびx線回折測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で測定可能な1μm以下の高精度・高空間分解能のX線回折測定装置およびX線回折測定方法を提供すること。
【解決手段】回折X線ビーム(又は透過X線ビーム)の幅の拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下の少なくとも1つのASR結晶3を用いて試料1からのX線ビームを1方向または互いに直交する2方向に拡大してX線ビームの空間強度分布を記録したり、FZP16を用いて試料1からのX線ビームを拡大してX線ビームの空間強度分布を記録したり、あるいは、試料1からのX線像をFZP16上に結像し、少なくとも1つのASR結晶3を用いて1方向または互いに直交する2方向に拡大してX線ビームの空間強度分布を記録するようにした。また、FZP16をフレネルゾーン加工部以外の部分にX線不透過処理を施した位相変調型FZPとしたり、FZP16の焦点近傍に設けた遮蔽手段により目的とする回折光以外の光を遮断するようにした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線回折測定装置およびX線回折測定方法に関し、より詳細には、1μm以下の空間分解能を有する高精度のX線回折測定装置およびX線回折測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線をプローブとして用いる分析技術の中でも、X線回折法は現在最も普及した分析技術の1つであり、結晶の構造解析、成分分析、あるいは、結晶格子歪の評価などに広く利用されており、特に最近では、放射光の利用によってX線回折法の技術水準が格段に向上したことから、より高精度・高分解能を要求される分野への応用が盛んに試みられるようになってきた。
【0003】
放射光の利用により可能になったX線回折分析技術の1つに、10μm以下の領域を分析可能なマイクロX線回折分析技術がある。放射光X線はX線ビームの指向性が高く、X線を集光することにより細径ビームを得ることができるため、細径X線ビームを分析目的個所に照射することによって、高分解能で位置を特定した測定が可能になる。X線マイクロビームの形成には、X線に特有の現象である非対称反射(ASR)やフレネルゾーンプレート(FZP)が用いられる。
【0004】
X線像計測の空間分解能を向上させるための他の方法として、測定により得られたX線回折像を拡大(記録)するという方法が知られており、ASRによる像拡大方法をX線直接透過像(ラジオグラフィー)に適用して約25μmの空間分解能を得た例(非特許文献1)やASRによる像拡大方法をX線トポグラフィーに適用してX線像を約5倍に拡大記録した例(非特許文献2)が報告されている他、ASRによる像拡大方法をX線位相差顕微鏡観察に適用してサブミクロンレベルの空間分解能を得た例(非特許文献3)も報告されている。なお、このようなASR法の空間分解能を5μm以下にするためにはASRにおけるX線ビーム視射角を全反射臨界角程度にする必要があるとされている。
【0005】
X線の波長は0.1nm程度であるため、本来回折X線で得られる空間情報はこの波長程度の分解能を有しているはずである。ところが、回折X線を記録する写真フィルムの感光剤の粒子径は数μmであり、2次元イメージングデバイスとして注目されるCCD素子の分解能は約10μm、また、近年盛んに使われるようになったイメージングプレート(IP)の分解能に到っては50μm程度である。さらに、ピンホールを用いることにより空間情報を得たい部分を特定・選別しようとしても、X線ビームを遮断可能な板厚の材料に直径10μm以下のピンホールを形成することは困難である。
【0006】
このように、X線画像の空間分解能は主として記録手段側の空間分解能によって決定・制限されることとなるため、予めX線像を拡大しその拡大X線像を記録するというアプローチは空間分解能の向上に非常に有効である。
【0007】
【非特許文献1】
William J. Boettinger et al., ”X−ray magnifier”, Rev. Sci. Instrum., vol.50(1), pp.26−30 (1979).
【0008】
【非特許文献2】
S. Kawado et al., ”Measurement of Local Lattice Distortion in Silicon by Imaging−Plate Plane−Wave X−Ray Topography with Image Magnification”, Jpn. J. Appl. Phys., vol.34, L89−92 (1995).
【0009】
【非特許文献3】
K. Kobayashi et al., ”X−ray phase−contrast imaging with submicron resolution by using extremely asymmetric Bragg diffractions”, Appl. Phys. Lett., vol.78(1), pp.132−134 (2001).
【0010】
【非特許文献4】
A. R. Lang et al., ”Proc. R. Soc. Lond.” A368, p.313−329 (1979).
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来のX線マイクロビームの形成方法には、以下のような問題がある。
【0012】
FZPによりマイクロビームを形成する方法では、直径1μm以下の細径ビームが得られるものの、集光により発散角が大きくなるため高精度のX線回折測定には適さない。また、ASRによるマイクロビーム方式では、発散角が小さく平行度の高いX線ビームが得られるものの、ビーム細径化はφ6μm程度が限界である。
【0013】
さらに、ASRによる拡大方式は空間分解能の向上には有効な手法であるものの、サブミクロンレベルの空間分解能を達成したとされる非特許文献3に記載の方法では、ASRにおけるX線ビーム視射角を全反射臨界角程度に設定しなければならないという測定上の大きな問題がある。すなわち、全反射臨界角あるいはそれ以下の視射角ではASR結晶のX線侵入深さが2〜3桁減少することによってASRにおける像の劣化が抑制されて空間分解能が向上するが、このような条件ではASRの反射率も2〜3桁減少するために測定に長い時間を必要とし実際の測定のためにはアンジュレータを光源とする高強度放射光を用いることが必須となってしまう。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、短時間で測定可能な1μm以下の空間分解能を有する高精度のX線回折測定装置およびX線回折測定方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、前記測定試料からのX線ビームを、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大するための少なくとも1つの非対称反射結晶(ASR結晶)と、当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備え、前記ASR結晶のうちの少なくとも1つの拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線回折測定装置において、前記ASR結晶は、前記測定試料から当該ASR結晶に入射するX線ビームがσ偏光となるように配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のX線回折測定装置において、X線像を互いに直交する2方向に拡大するための2つのASR結晶を備え、当該2つのASR結晶のうちの少なくとも一方は、π偏光反射におけるブラッグ角θが30°以下となるように配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、前記測定試料からのX線ビームを拡大するためのフレネルゾーンプレート(FZP)と、当該FZPにより拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、前記測定試料からのX線像を結像するためのFZPと、当該FZP上に結像されたX線像を、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大するための少なくとも1つのASR結晶と、当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のX線回折測定装置において、前記測定試料とX線源との間に回折結晶を備え、当該回折結晶は、回折格子面間隔が前記測定試料の回折格子面間隔と同一となるように配置され、前記回折結晶からの反射X線ビームを前記測定試料に入射させるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6の何れかに記載のX線回折測定装置において、前記FZPは、フレネルゾーン加工部以外の部分にX線不透過処理を施した位相変調型FZPであることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7の何れかに記載のX線回折測定装置において、前記FZPの焦点近傍に、目的とする回折光以外の光を遮断するための第1の遮蔽手段を備えていることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項4乃至8の何れかに記載のX線回折測定装置において、前記記録手段の近傍に、当該FZPからの直接透過光を除去するための第2の遮蔽手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れかに記載のX線回折測定装置において、前記測定試料と前記記録手段との間に、拡大X線像の目的の微小部分を抽出するためのスリットあるいはピンホールを備えていることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10に記載のX線回折測定装置において、前記記録手段は、写真フィルム、イメージングプレート、2次元記録デバイスのうちの何れかであることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下の少なくとも1つのASR結晶を用いて、前記測定試料からのX線ビームを、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大し、当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、FZPを用いて前記測定試料からのX線ビームを拡大し、当該FZPにより拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の発明は、測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、前記測定試料からのX線像をFZP上に結像し、当該FZP上に結像されたX線像を、少なくとも1つのASR結晶を用いて、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大し、当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の発明は、請求項13または14に記載のX線回折測定方法において、前記測定試料への入射X線ビームは、回折格子面間隔が前記測定試料の回折格子面間隔と同一となるように配置された回折結晶からの反射X線ビームであることを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の発明は、請求項13乃至15の何れかに記載のX線回折測定方法において、前記FZPは、フレネルゾーン加工部以外の部分にX線不透過処理を施した位相変調型FZPであることを特徴とする。
【0031】
請求項17に記載の発明は、請求項13乃至16の何れかに記載のX線回折測定方法において、前記FZPの焦点近傍に設けた遮蔽手段により、目的とする回折光以外の光を遮断することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明するが、本発明のX線回折装置が当然に備える構成要素については省略して説明することとする。
【0033】
本発明者は、ASRの特性を詳細に検討した結果、視射角が全反射臨界角よりも大きな条件において1μm以下の空間分解能を得ることができることを見出し本発明に至ったものであるが、先ず、本発明の前提となるASRの仕組みについて説明する。
【0034】
(ASRの仕組み)
図17は、ASRの仕組みを説明するための図である。X線の回折現象は結晶格子面での反射であり、この図に示すように、結晶格子面162が結晶161の表面に対して角度φだけ傾いていると、入射視射角ωと出射視射角θoutとが異なりASRとなる。
【0035】
この図に示したASRでは、出射ビーム164の幅は入射ビーム163の幅に比較して拡大され、その拡大倍率mは、
【0036】
【数1】
Figure 2004251866
【0037】
【数2】
Figure 2004251866
【0038】
【数3】
Figure 2004251866
【0039】
で表される。ここで、θはブラッグ角であり、dを結晶面間隔、λをX線の波長、nを1以上の整数として、
【0040】
【数4】
Figure 2004251866
【0041】
が成り立つ。
【0042】
ASRによるX線像の劣化がないと仮定すると、ASR法における空間分解能は記録デバイスの空間分解能の1/mとなる。しかし、実際には以下の3つの要因によりX線像が劣化する。
【0043】
第1は試料からASRまでの間の像の劣化であり、試料から出たX線ビームが発散角を有することにより、試料とASRとの間で空間情報の一部が消滅する。第2はASRによる像の劣化であり、ASRそのものによる像のボケや変形に起因するものである。第3はASRから記録面までの間の像の劣化であり、ASR後のX線ビームが発散角を有することによりASRと記録面との間で空間情報の一部が消滅する。これらのうち、第1の劣化は、試料とASRとの間の距離を短縮することにより改善できる。また、第3の劣化については、ASR後の発散角は1/mに減少するために事実上は問題となることは少ない。
【0044】
そこで、以下では上述した第2の劣化について考察する。なお、ASR結晶表面の凹凸等の不完全性は無視できるものとする。回折X線が入射側に反射する場合を一般にブラッグケースと呼んでいる。ブラッグケースでは、完全結晶でかつ結晶による吸収が無視できる場合、ブラッグ条件において反射率は100%となり回折X線はほとんど結晶表面で反射する。実際の、完全に近い結晶(Si単結晶など)ではこれに近い状態となっている。しかし、数μmの深さ(消衰距離:extinction distance)まではX線が浸透するため、浸透部分からの回折X線が像劣化の原因となる。
【0045】
図18(a)は、微小な発散角のX線ビームが結晶表面で回折する場合の様子を説明するための図で、点Sから出射した微小な発散角のX線ビームが、結晶181の表面上の点Rで回折する場合の様子を表したものである。
【0046】
上述した理由により、反射X線は図中のA領域にもわずかに存在し、この領域からの回折光強度によりASRによる像劣化の度合いが決まる。この図の結晶181の表面におけるX線強度を、距離xの関数I(x)で表すと、
【0047】
【数5】
Figure 2004251866
【0048】
となることがわかっている(非特許文献4)。但し、この関係は入射視射角が全反射臨界角より大きい場合の関係式である。ここで、Jは1次のベッセル関数であり、Bは
【0049】
【数6】
Figure 2004251866
【0050】
で定義される非対称因子、ξは消衰距離
【0051】
【数7】
Figure 2004251866
【0052】
である。また、χおよびχ−hは分極率のフーリエ係数(χ−hはχの複素共役)、Cは偏光因子であり、σ偏光とπ偏光に対して、それぞれ、
C=1 (σ偏光) (8)
C=cos2θ (π偏光) (9)
である。ここで、吸収のない場合を考えるとχ=χ−hであり、
【0053】
【数8】
Figure 2004251866
【0054】
となる。また、χは構造因子Fにより、
【0055】
【数9】
Figure 2004251866
【0056】
と表される。なお、rは電子の古典半径、Vは結晶単位胞の体積である。
【0057】
図18(b)は、Si(100)結晶にフォトンエネルギ8KeVのX線が入射した場合の(311)反射のI(x)をσ偏光とπ偏光に関して計算した結果を説明するための図である。この図は、回折光が入射点(x=0)で最も強く、減衰してゼロとなった後に第2ピークが現れることを示している。しかしながら、第2ピーク強度は第1ピーク強度より2桁程度弱いため、x=0から最初のI(x)=0までの距離δをASRによる像劣化の指標と考えることができる。
【0058】
とx軸との最初の交点では、J(3.83)=0であるため、
【0059】
【数10】
Figure 2004251866
【0060】
からδを求めることができる。
【0061】
ここで、本発明は、Bとξの双方にγγが含まれる点に注目した。すなわち、式(2)および式(3)を変形すると、
【0062】
【数11】
Figure 2004251866
【0063】
【数12】
Figure 2004251866
【0064】
となり、これらを式(6)に代入して、
【0065】
【数13】
Figure 2004251866
【0066】
を得る。したがって、式(10)と式(15)を式(12)に代入することによって、
【0067】
【数14】
Figure 2004251866
【0068】
となる。よって、δは非対称因子Bに依存しないという結論が得られる。これは拡大倍率mを大きくするために入射視射角ωを小さくしても、δは大きくならないことを意味する。
【0069】
すなわち、理論分解能Rは、
【0070】
【数15】
Figure 2004251866
【0071】
であるから、δは一定でRはmに反比例することになる。
【0072】
したがって、記録デバイスの分解能をRとすると、ASR拡大による空間分解能RASRは、R<δのときにRASR=R、R≧δのときにRASR=R/m、となる。
【0073】
本発明者は、種々の条件でδを計算した結果、δの範囲は10〜50μmであるとの結論に達した。したがって、感光剤粒子径が数μm(R=数μm)のX線用フィルム等によりX線画像記録する場合(R<δでRASR=Rのケース)でも、δが分解能決定因子となるため、RASR<1μmとするためにはmが50よりも大きいこと(m>50)が必要である。また、Rが約50μmのIPを用いるような場合(R≧δでRASR=RD/mのケース)、RASR<1μmとするためにはmが50よりも大きいこと(m>50)が必要であるのは当然である。
【0074】
ASRによる画像拡大において、例えば100倍の拡大率を得るために、2つの結晶あるいはチャンネルカット結晶の2面による2回反射(各10倍の拡大率)がよく用いられるが、上記の考察によれば、第1反射においてRASR=δ/10であるため、空間分解能を1μm以下にすることはできない。このように、ASRによる画像拡大においてRASR<1μmとするためには、単一反射においてm>50であることが必要条件となる。
【0075】
一方、m≧200ではASRが全反射領域に入るために反射強度が急激に低下し、短時間での測定が困難となる。したがって本発明では、回折X線ビームの幅をASR結晶で50倍以上かつ150倍以下に拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現する。
【0076】
また、Si単結晶のように完全性の高い結晶では、通常はX線が試料を透過しない条件であっても、ブラッグ条件下では透過率が高くなる現象があり、これは異常透過と呼ばれ、異常透過状態では、X線は試料透過後に回折光と透過光とに分離し、双方のビームが結晶欠陥に関する等価な画像情報を含んでいることが分かっている。したがって本発明では、透過X線ビームの幅をASR結晶で50倍以上かつ150倍以下に拡大する。回折X線を用いる場合は、例え同種の試料であっても試料交換によりビームの出射方向が微妙に変化するため、試料交換毎にASR結晶の角度調整が必要になる。これに対して透過X線の方向は一定であるため調整が格段に容易となる。
【0077】
図18(b)は、電場ベクトルの方向が回転面(入射光ビームと回折光ビームを含む面)に対して垂直なσ偏光と、回折面に対して平行なπ偏光とでδが異なることを示している。これは、式(8)および式(9)で与えられる偏光因子Cの違いに起因する。この図が示すように、δはσ偏光よりπ偏光の方が大きい。また、π偏光においては、θが大きいと回折光強度が小さくなるにつれてδが増大する点が重要である。そこで、本発明では、単一のASR結晶を用いる場合には、ASR結晶への入射X線がσ偏光となるように回折条件を設定する。なお、X線像を互いに直交する2方向に拡大するための2つのASR結晶を用いる場合には必ず一方の結晶に対して入射X線ビームがπ偏光となるため、本発明においては、π偏光反射におけるθが30°以下となるように回折条件を設定する。これにより、C=cos2θが0.5以下(C<0.5)となり、δの増大を2倍以下とすることが可能となる。
【0078】
なお、本発明によりX線像を記録する手段(画像記録デバイス)としては、写真フィルム、イメージングプレート、X線用CCD素子などの記録手段を用いることが可能であり、スリットやピンホールにより拡大X線像の中から目的とする微小部分のみを抽出してその部分のX線回折線の強度を測定するといったことも可能である。
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、回折X線ビームの幅をASR結晶で50倍以上かつ150倍以下に拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現しており、単一のASR結晶への入射X線がσ偏光となるように測定系を配置する。
【0080】
図1は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この図において、1は試料として用いたSi基板であり、幅5μm深さ2μmのトレンチ(溝)が5μm間隔で加工されている。なお、Si基板の表面は(100)面である。入射X線ビーム2のフォトンエネルギは8.78KeVである。この条件において、θ=31.3°の(400)対称反射による回折線を測定する。
【0081】
3は非対称反射により、回折X線ビーム4を紙面に平行な方向に拡大するためのASR結晶であり、ここでは、(100)カットのSi単結晶を用いている。ASR反射面は(311)面であり、θ=25.6°、ω=0.3°、θout=50.8°、m=140である。
【0082】
入射X線2の偏光ベクトルは紙面に直角方向である。したがって、ASR結晶3に入射する光はσ偏光である。試料1であるSi基板からASR結晶3までの距離は90mmである。
【0083】
5はASR結晶3の端部から出る強い回折光を遮断するための鉛製シールド板であり、6は拡大されたX線像を記録するためのIPである。
【0084】
Si基板のトレンチ構造部は結晶格子に歪が存在するため、回折X線画像にはトレンチに対応する縞模様が現れ、この縞模様が紙面に平行方向に140倍に拡大されて拡大X線ビーム13となりIP6に記録される。なお、記録のために用いられるものは、本実施例のようなIPのほか、写真フィルムやCCDなどの2次元記録デバイスであってもよいことは言うまでもない。以降の実施例についても同様である。
【0085】
(実施例2)
本実施例も、回折X線ビームの幅をASR結晶で50倍以上かつ150倍以下に拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現しているが、この実施例では、試料からの回折X線ビームを互いに直交する2方向に拡大しており、X線像を互いに直交する2方向に拡大するための2つのASR結晶を用いる。
【0086】
この場合、必ず一方の結晶に対して入射X線ビームがπ偏光となる。そこで、π偏光反射におけるθが30°以下となるように回折条件を設定する。これにより、C=cos2θ<0.5となり、δの増大を2倍以下にすることができる。
【0087】
図2は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この図において、3は回折光ビームを紙面に平行方向に拡大するための第1のASR結晶、7は第1のASR結晶3からの第1拡大ビーム8を紙面に直角方向に拡大するための第2のASR結晶であり、9は第2のASR結晶7から出射される第2拡大ビームである。なお、これらのASR結晶(3、7)はいずれも(100)カットのSi単結晶である。また、試料1であるSi基板、フォトンエネルギ、Si基板における回折条件、および、第1のASR結晶3の回折条件は、実施例1と同様であるが、第2のASR結晶7の回折条件は、入射ビームがπ偏光である点が異なる。しかし、θ=26.5°であるため、δの増大は2倍以下に抑えられている。
【0088】
本実施例では、トレンチ構造に伴う縞模様画像が縦方法および横方向に140倍に引き伸ばされてIP6に記録される。
【0089】
(実施例3)
本実施例では、透過X線ビームの幅をASR結晶で50倍以上かつ150倍以下に拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現している。
【0090】
図18(b)には、電場ベクトルの方向が回折面(入射光ビームと回折光ビームを含む面)に対して垂直なσ偏光と、回折面に対して平行なπ偏光とでδが異なることが示されているが、これは式(8)および式(9)の偏光因子Cの違いによるものであり、この図に示されているように、δはσ偏光よりもπ偏光の方が大きい。また、π偏光においては、θが大きいと回折光強度が小さくなるとともにδが増大する点が重要である。
【0091】
図3は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この実施例では、異常透過光ビーム10を拡大している。用いた試料1は(100)カットのSi単結晶ウエハ上にトレンチのテストパターンとして深さ10μmで幅が異なるトレンチを順に加工したものであり、トレンチの幅は0.5〜10μm(0.5μmきざみ)で、トレンチ間のスペースは4μmである。フォトンエネルギおよびASR結晶3の回折条件は実施例1と同じである。試料1での回折条件はラウエケースの(022)反射であり、θ=21.5°である。
【0092】
図4は、図3に示した本実施例の配置で得られたX線像を説明するための図で、この図には、トレンチテストパターンの顕微鏡写真とこれに対応するトポグラフとが示されている。写真左端のトレンチは幅が0.5μmであり、その右隣は幅1μmである。この結果は、幅1μmまでのトレンチによるストライプが明確に記録され、幅0.5μmトレンチに起因する濃淡がわずかに識別できることを示している。
【0093】
本実施例では、試料1からASR結晶3までの距離が90mmであり、この距離を短縮することによってさらに分解能の向上が可能である。具体的には、本実施例の方法により1μm以下の空間分解能による測定が可能である。
【0094】
なお、測定条件をそのままに、図3の配置を図5に示す配置としてもよい。
【0095】
図5に示す配置は、IP6の代わりに、スリット11とシンチレーションカウンタ12を用いている。すなわち、この配置においては、拡大X線像の目的部分をスリット11で抽出し、その強度をシンチレーションカウンタ12で測定している。
【0096】
(実施例4)
本実施例では、回折X線画像をFZPで拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現している。ASR拡大方式ではASR結晶を試料に密着しない限り発散角による像劣化は避けられないのに対して、本実施例で採用したFZP方式は、試料面の画像を所定の場所に結像できるという利点がある。
【0097】
FZPの場合は、光学レンズと同様、
【0098】
【数16】
Figure 2004251866
【0099】
が成り立つ。ここで、aは試料からレンズまでの距離、bはレンズから結像点までの距離、そして、fは焦点距離である。
【0100】
また、拡大率mは、
【0101】
【数17】
Figure 2004251866
【0102】
となる。したがって、a(a>f)を決めれば、bとfが定まる。
【0103】
図6は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この実施例で用いた試料1は、実施例1のものと同一試料である。また、入射X線2のフォトンエネルギーは8KeVである。
【0104】
この条件において、θ=34.8°の(400)対称反射による回折X線4をFZP16に入射した。FZP16は位相変調タイプであり、厚み1μmのSiN膜上に厚み1μmのTa膜で同心円伏のパターンを形成したものである。FZP部の直径は64μm、最外周線幅は0.1μmである。FZPの空間分解能は最外周線幅にほぼ等しいため、このFZP16の理論空間分解能は約0.1μmである。また、フォトンエネルギー8KeVにおける焦点距離fは41.3mmである。なお、このFZP16は、FZP加工部以外の部分に金メッキを施すことにより、X線に対して不透過処理が施されている。
【0105】
図6に示したとおり、試料1からFZP16までの距離aは43.5mm、FZP16から結像面としてのスリット14までの距離bは896mmである。したがって、拡大倍率mは、m=b/a=21となる。トレンチ加工に伴う歪により生じたX線像はスリット14上に結像され、その目的部分を抽出して強度をシンチレーションカウンタ12で測定する。
【0106】
なお、本実施例では、中心部の直接光スポット15を避けるために、スリット開口部を中心から約200μmの位置にセットしている。スリット開口寸法は約10μm角である。よって、この実施例における空間分解能は0.48μm(10μm/21)となる。
【0107】
なお、FZPの回折効率は20%程度であるため、結像部中央付近には回折されなかった光による明るい直接光スポットが形成される。したがって、コントラストの強い拡大像を得ようとすると、この中央部以外の像を用いる必要がある。このような場合には、FZPの焦点近傍に例えばピンホールを配置して目的の回折光以外の光を遮断するようにしてもよい。焦点近傍では必要な回折光は微小スポットとして集光されるため、ピンホールはこの集光ビームのみを通すこととなり、これにより殆どの直接光をカットすることが可能となる。また、直接光以外にも高次の回折光などの焦点距離の異なる光も同様に除去することが可能であり、結像部の殆ど全領域から所望の拡大像を得ることが可能となる。さらに、結像部の半面を利用することで事足りる場合には、焦点近傍において衝立を片方から挿入するなどの手段を用いて目的を達成することができる。
【0108】
(実施例5)
本実施例も、回折X線像をFZPで拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現しているが、以下の点で実施例4と異なる。拡大率mを大きくとるためには、FZPから結像点までの距離bを大きくとる必要がある。しかしながら、通常、放射光は水平方向に出射されるため、実施例4の図6に示した配置のFZPによる回折X線像拡大方式では回折光が斜め方向となり、bは実質上2θのアームの長さで制限されてしまう。
【0109】
そこで、本実施例では、測定対象である試料と同じ材質の結晶にX線を入射させ、この結晶からの反射X線ビームを試料に入射させる。測定対象の試料と反射X線ビームを生じる結晶とは回折格子面間隔が同一となるように配置され、これにより試料からの回折光は水平方向に出射されることとなり、その結果、bを大きく設定することが可能となって高い拡大倍率が得られ、高い空間分解能を達成することができる。
【0110】
図7は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この実施例で用いた試料およびFZPは、実施例4の図6で説明したものと同じであるが、試料1の前に(100)面カットのダミーSi板20を配置し、入射X線を試料1の回折条件と同一の(400)対称反射条件で反射させ、この反射X線ビームを試料1に入射させる。本実施例によれば、試料1からの回折光が水平方向に出射されるためbを大きくとることが可能である。なお、a=41.6mm、b=5000mmであり、拡大倍率mは120(=5000/41.6)である。スリットの開口寸法は約10μm角であるから、10μm/120=0.083μmとなるが、この値はFZPの限界空間分解能(0.1μm)よりも小さいため、本実施例における空間分解能はFZPの空間分解能で決まり0.1μmとなる。
【0111】
(実施例6)
本実施例では、透過X線像をFZPで拡大することで1μm以下の空間分解能RASRを実現している。
【0112】
図8は、本実施例におけるX線回折測定方法を説明するための図で、この実施例では、異常透過光ビーム10をFZP16に入射させている。試料1は図3で示したものと同様にトレンチテストパターン加工したものであるが、トレンチ間のスペースは1μmである。フォトンエネルギーは実施例5と同じである。
【0113】
試料1での回折条件はラウエケースの(022)反射であり、θ=23.81°である。FZPの仕様と配置およびスリット14の位置等は実施例5と同じであり、トレンチ加工に伴う歪により生じたX線像がスリット14上に結像され、その目的部分を抽出して強度をシンチレーションカウンタ12で測定する。
【0114】
図9は、図8に示した配置において試料1を紙面に対して垂直方向に移動させてスリット抽出光12の強度を測定した結果を説明するための図で、横軸のXは試料1の位置を示している。図中の写真はトレンチテストパターンの顕微鏡写真であり、この結果は、スリット抽出光強度がトレンチ構造により影響を受けて変動することを示している。
【0115】
図10は、トレンチ幅の小さい部分を選択的に測定した結果を説明するための図である。この測定では、同一条件で2回測定を実施した。2回の測定のデータは微細なパターンに到るまで極めて類似した変動を示しており、再現性の高さを証明している。再現性を定量的に評価するために両者の相関係数を測定した。そして、各信号から長周期成分を除去することにより、含まれる波長成分の違いでその相関係数がどのように変化するかを分析した。
【0116】
図11は、相関係数の波長成分依存性を説明するための図で、横軸は信号に含まれる最大波長を表している。長周期成分を除去するにしたがって相関係数が低下するのは、ノイズ成分の割合が大きくなるためである。この図に示した結果で、波長1μm以下の成分のみを残した場合の相関係数は0.2である。データ数が446と大きいことを考慮すると、ここで得られた相関は高い有意性をもつと結論できる。すなわち、図9に示した測定データに含まれる波長1μm以下の信号は再現性があり、本実施例による空間分解能は1μm以下であると結論することができる。
【0117】
なお、図12に示すように、図8の配置におけるシンチレーションカウンタ12の代わりに、IP6を使用して測定するようにしてもよい。
【0118】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例に示した配置に限らず、多くのバリエーションが可能であるが、それらの例を以下に示す。
【0119】
図13は、図6の配置に焦点付近の衝立19を追加した配置を説明するための図であり、このような配置とすることにより、結像部上半分の直接光スポットを除去することができる。
【0120】
実施例1〜6において試料からASRまでの間の像の劣化を防ぐためには、試料とASR結晶との間の距離を極限まで近づける必要があるが、実際には、試料ステージ周辺の駆動機構等が障害物となって目的の配置が採れない場合が多い。そこで、試料面上の回折X線像をFZPで所定の位置に結像し、その像をASR結晶で拡大することが有効である。この場合のFZPによる結像は必ずしも拡大を伴う必要はない。これはASR結晶を試料の位置まで近付けるのと同等であり、これにより空間分解能の高い測定が可能となる。
【0121】
図14は、図8の配置に焦点付近のピンホール18を追加した配置を説明するための図である。このような配置とすることにより、結像部のほぼ全域の直接光スポットを除去することができる。
【0122】
FZPには振幅変調型(AM)と位相変調型(PM)とがある。AM型FZPはX線を透過しない薄膜に、同心円状のX線透過部と不透過部とを交互に形成したものであり、最初に実用化されたのはこのタイプである。AM型FZPでは不透過部で吸収されるX線は損失となるため、回折効率は最大でも10%程度である。PM型FZPはX線の透過に伴う位相遅れが半波長分異なる部分が同心円状に交互に形成されている。したがって、PM型FZPはX線の吸収量が少なく、最大で30%程度の回折効率が得られる。
【0123】
これまでの実施例において、AM型FZPは回折現象を無視すればFZP部が一種のピンホールをして機能する。したがってFZP透過光が最大になるように位置を調節することにより位置合わせが可能である。ところがPM型FZPはFZP部以外の部分でもX線が透過するため、このような調節手段が採用できない。また、回折光が形成する像に直接透過光が重ならないためには、あらかじめビーム径をFZPの直径に合わせることが必要になる。そこで、PM型FZPのFZP部以外の部分に金メッキ等を施して不透過処理を行うこととすれば、調整が容易になるばかりでなく直接光の影響を効果的に除去することが可能となる。
【0124】
図15は、図1で示した配置と同様の配置において、ASR結晶3の位置に結像されたトレンチ像を約140倍に拡大してIP6に露光・記録するようにした場合の配置を説明するための図である。ここで、試料1は図1に示したものと同一である。フォトンエネルギー、試料1およびASR結晶3における回折条件の何れも図1と同様である。なお、この配置でのFZPのパラメータは、f=45.3mm、a=82.9mm、b=100mm、であり、拡大率mはm=b/a=1.2である。
【0125】
図16は、図15の配置において、入射光2を試料1の裏面から入射させて(022)反射による異常透過光10を拡大するようにする場合の配置を説明するための図である。
【0126】
【発明の効果】
以上説明したように、上述した配置をとる本発明のX線回折測定装置(およびX線回折測定方法)によれば、回折X線ビーム(および透過X線ビーム)の幅の拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下の少なくとも1つのASR結晶を用いて試料からのX線ビームを1方向または互いに直交する2方向に拡大してX線ビームの空間強度分布を記録したり、FZPを用いて試料からのX線ビームを拡大してX線ビームの空間強度分布を記録したり、あるいは、試料からのX線像をFZP上に結像し、少なくとも1つのASR結晶を用いて1方向または互いに直交する2方向に拡大してX線ビームの空間強度分布を記録するようにしたので、短時間で測定可能な1μm以下の空間分解能を有する高精度のX線回折測定装置およびX線回折測定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図2】実施例2におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図3】実施例3におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図4】図3に示した実施例の配置で得られたトレンチパターンを説明するための図である。
【図5】IPの代わりに、スリットとシンチレーションカウンタを用いた配置を説明するための図である。
【図6】実施例4におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図7】実施例5におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図8】実施例6におけるX線回折測定方法を説明するための図である。
【図9】図8に示した配置において試料を紙面に対して垂直方向に移動させてスリット抽出光の強度を測定した結果を説明するための図である。
【図10】トレンチ幅の小さい部分を選択的に測定した結果を説明するための図である。
【図11】相関係数の波長成分依存性を説明するための図である。
【図12】図8の配置におけるシンチレーションカウンタの代わりにIPを使用して測定するようにした構成を説明するための図である。
【図13】図6の配置に焦点付近の衝立を追加した配置を説明するための図である。
【図14】図8の配置に焦点付近のピンホールを追加した配置を説明するための図である。
【図15】図1で示した配置と同様の配置において、ASR結晶の位置に結像されたトレンチ像を約140倍に拡大してIPに露光・記録するようにした場合の配置を説明するための図である。
【図16】図15の配置において、入射光を試料の裏面から入射させて(022)反射による異常透過光を拡大するようにする場合の配置を説明するための図である。
【図17】ASRの仕組みを説明するための図である。
【図18】微小な発散角のX線ビームが結晶表面で回折する場合の様子を説明するための図である。
【符号の説明】
1 試料
2 入射X線ビーム
3 ASR結晶
4 回折X線ビーム
5 シールド板
6 IP
7 第2ASR結晶
8 第1拡大ビーム
9 第2拡大ビーム
10 異常透過光ビーム
11、14 スリット
12 シンチレーションカウンタ
13 拡大X線ビーム
15 直接光スポット
16 FZP
18 ピンホール
19 衝立
20 ダミーSi板
161、181 結晶
162 結晶格子面
163 入射ビーム
164 出射ビーム

Claims (17)

  1. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、
    前記測定試料からのX線ビームを、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大するための少なくとも1つの非対称反射結晶(ASR結晶)と、
    当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備え、
    前記ASR結晶のうちの少なくとも1つの拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下であることを特徴とするX線回折測定装置。
  2. 前記ASR結晶は、前記測定試料から当該ASR結晶に入射するX線ビームがσ偏光となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線回折測定装置。
  3. X線像を互いに直交する2方向に拡大するための2つのASR結晶を備え、
    当該2つのASR結晶のうちの少なくとも一方は、π偏光反射におけるブラッグ角θが30°以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線回折測定装置。
  4. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、
    前記測定試料からのX線ビームを拡大するためのフレネルゾーンプレート(FZP)と、
    当該FZPにより拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備えていることを特徴とするX線回折測定装置。
  5. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定装置であって、
    前記測定試料からのX線像を結像するためのFZPと、
    当該FZP上に結像されたX線像を、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大するための少なくとも1つのASR結晶と、
    当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録するための記録手段とを備えていることを特徴とするX線回折測定装置。
  6. 前記測定試料とX線源との間に回折結晶を備え、
    当該回折結晶は、回折格子面間隔が前記測定試料の回折格子面間隔と同一となるように配置され、前記回折結晶からの反射X線ビームを前記測定試料に入射させるように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のX線回折測定装置。
  7. 前記FZPは、フレネルゾーン加工部以外の部分にX線不透過処理を施した位相変調型FZPであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のX線回折測定装置。
  8. 前記FZPの焦点近傍に、目的とする回折光以外の光を遮断するための第1の遮蔽手段を備えていることを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載のX線回折測定装置。
  9. 前記記録手段の近傍に、当該FZPからの直接透過光を除去するための第2の遮蔽手段を備えていることを特徴とする請求項4乃至8の何れかに記載のX線回折測定装置。
  10. 前記測定試料と前記記録手段との間に、拡大X線像の目的の微小部分を抽出するためのスリットあるいはピンホールを備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のX線回折測定装置。
  11. 前記記録手段は、写真フィルム、イメージングプレート、2次元記録デバイスのうちの何れかであることを特徴とする請求項1乃至10に記載のX線回折測定装置。
  12. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、
    拡大倍率が50倍以上かつ150倍以下の少なくとも1つのASR結晶を用いて、前記測定試料からのX線ビームを、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大し、
    当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とするX線回折測定方法。
  13. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、
    FZPを用いて前記測定試料からのX線ビームを拡大し、
    当該FZPにより拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とするX線回折測定方法。
  14. 測定試料の結晶格子面でブラッグ条件を満足して回折または透過したX線ビームの強度を記録するためのX線回折測定方法であって、
    前記測定試料からのX線像をFZP上に結像し、
    当該FZP上に結像されたX線像を、少なくとも1つのASR結晶を用いて、1方向、または、互いに直交する2方向に拡大し、
    当該ASR結晶により拡大されたX線ビームの空間強度分布を記録することを特徴とするX線回折測定方法。
  15. 前記測定試料への入射X線ビームは、回折格子面間隔が前記測定試料の回折格子面間隔と同一となるように配置された回折結晶からの反射X線ビームであることを特徴とする請求項13または14に記載のX線回折測定方法。
  16. 前記FZPは、フレネルゾーン加工部以外の部分にX線不透過処理を施した位相変調型FZPであることを特徴とする請求項13乃至15の何れかに記載のX線回折測定方法。
  17. 前記FZPの焦点近傍に設けた遮蔽手段により、目的とする回折光以外の光を遮断することを特徴とする請求項13乃至16の何れかに記載のX線回折測定方法。
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