JP2004251128A - 密閉型電動圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】密閉型電動圧縮機に関し、疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機の実現を図る。
【解決手段】幅狭のスリットによって舌状のリード部11cが形成される薄板状の吸入弁11にショットピーニング処理を施すことにより、表面に圧縮残留応力を付与し、ドライホーニング処理を施すことにより、吸入弁11の表面欠陥およびスリットの各エッジ部のバリ等を除去することで吸入弁11の疲労耐久性を上げ、信頼性の高い密閉型電動圧縮機を実現することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】幅狭のスリットによって舌状のリード部11cが形成される薄板状の吸入弁11にショットピーニング処理を施すことにより、表面に圧縮残留応力を付与し、ドライホーニング処理を施すことにより、吸入弁11の表面欠陥およびスリットの各エッジ部のバリ等を除去することで吸入弁11の疲労耐久性を上げ、信頼性の高い密閉型電動圧縮機を実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫、冷凍庫等の冷却システムに使用する密閉型電動圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、密閉型電動圧縮機は地球環境の観点から、ノンフロン冷媒の採用やインバータでの高速運転化が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型電動圧縮機を説明する。図3は、従来の密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図である。図4は従来の密閉型電動圧縮機の圧縮ユニット部の構造を示す断面図である。図3、図4において、略円筒形のピストン1はシリンダ2内に摺動自在に挿入されている。平板状のバルブプレート3には吸入孔4と吐出孔5とが形成され、吐出孔5を開閉する吐出弁6が備え付けられている。
【0004】
薄板状の板ばね材で形成された吸入弁7には、吸入孔4を開閉するリード部7aが形成されている。シリンダヘッド8は吸入室9および吐出室10を形成しており、吸入弁7、バルブプレート3をシリンダ2との間で挟みこんで固定している。なお、吸入弁7は金属製の圧延した板ばね材をプレスで型抜きした後、材料の表面欠陥および各エッジ部のバリを除去するために、ショットピーニング処理もしくはドライホーニング処理がおこなわれている。これらの処理は吸入弁7の全表面にわたって施されており、図3においてこれをまだら点模様で示している。
【0005】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。
【0006】
まず、ピストン1がシリンダ2の中で水平往復運動することで、冷媒はまず吸入室9からバルブプレート3の吸入孔4を通り吸入弁7を開弁してシリンダ2内に吸入される。そしてこの冷媒は同じくピストン1の水平往復運動によって圧縮され、吸入弁7が閉じ吐出弁6が開くことでバルブプレート3の吐出孔5を通り、シリンダヘッド8の吐出室10に送り込まれる。この動作が繰り返し行われることで周知の圧縮動作がなされることになる。一方、吸入弁7は開閉を繰り返す際、繰り返したわむことで繰り返し応力が発生する。また弁部7cの吸入孔4に対応する個所はバルブプレート3に衝突し、衝撃荷重を繰り返し受けることになる。
【0007】
これに対し、吸入弁7の表面には少なくとも全面にわたってショットピーニング処理もしくはドライホーニング処理が施されており、材料の表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労破壊の起点が無くなるとともに、材料表面に圧縮残留応力が付与されることで疲労耐久性が向上し、長期の運転に耐えるものである。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−310068号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成において、ショットピーニング処理を行った吸入弁7は処理をしないものと比べて表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労耐久性を向上させることができたが、長期間に渡って開閉を繰り返す吸入弁7に十分な圧縮残留応力を与える為に必要なショットピーニング処理に使用するショット粒の直径は0.4−0.7mm程の大きさの鋼球であった。これによって、吸入弁周辺のスリット部といったところに除去されない細かいバリが残ってしまうという欠点があった。
【0010】
また、このショット粒の直径が大きいほど、材料により高い圧縮残留応力を与えることができるが、その反面ショット粒の直径が大きいと吸入弁7の表面に打ち付ける際の衝撃エネルギーが大きくなるため、吸入弁7の表面には凹凸が生じてしまい、吸入弁7表面の表面粗さが劣化し、これによって新たな欠陥や傷が生じてしまい、これらが疲労破壊の起点となり、吸入弁7の疲労耐久性を低下させる可能性があった。
【0011】
一方、上記従来の構成において、ドライホーニング処理を行った吸入弁7は処理をしないものと比べて表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労耐久性を向上させることができたが、一般的にドライホーニングで使用する0.05−0.15mm程の大きさの鋼球であり、長期間に渡って開閉を繰り返す吸入弁に十分な圧縮残留応力を与えることが難しいという欠点があった。
【0012】
本発明は、従来技術の課題を解決するもので、疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、往復動するピストンを収納するシリンダと、前記シリンダの開口端に備えられたバルブプレートと、前記バルブプレートに形成された吸入孔と、前記シリンダの開口端とバルブプレートの間に挟持された吸入弁とを備え、前記吸入弁は前記吸入孔を開閉するリード部を有し、前記吸入弁の表面にショットピーニング処理を施した後、少なくとも前記リード部にドライホーニング処理を施したもので、衝撃エネルギーが大きなショット粒が衝突をすることによって表面層に高い値の圧縮残留応力が十分な深さまで付与され、かつショット粒よりも小さいガラスビーズを衝突させることによって吸入弁表面の凹凸である表面粗さが改善され、さらにショットピーニング処理では除去しきれない吸入弁周辺のスリット部といったところに発生する細かいバリをより確実に除去できる、という作用を有する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に、さらに吸入弁が13クロム鋼からなるものであり、一般的に使用されている炭素鋼よりも粘度が高くねばい材料である為に表面の欠陥や傷、エッジ部のバリが除去しにくいという性質を持っているにもかかわらず、表面の欠陥や傷、エッジ部のバリの除去が十分になされ、ねばい材料であるが故に極めて高い値の圧縮残留応力を得ることができる、という作用を有する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、冷媒をR600aとしたものであり、従来のR134aなどのフロン系冷媒と比べて希薄であるために、吸入弁へのオイル付着が少なくなって吸入弁が乾きやすいノンフロン冷媒のR600aでは特に疲労破壊に対する耐力を向上できる、という作用を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による密閉型電動圧縮機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図である。図2は、同実施の形態における密閉型電動圧縮機の圧縮機ユニット部の断面図である。図1、図2において、略円筒形のピストン1はシリンダ2内に摺動自在に挿入されている。平板状のバルブプレート3には吸入孔4と吐出孔5とが形成され、吐出孔5を封止する吐出弁6が備え付けられている。
【0018】
シリンダヘッド8は吸入室9および吐出室10を形成しており、薄板状の吸入弁11、バルブプレート3をシリンダ2との間で挟みこんで固定している。吸入弁11は板ばね材である13クロム材で形成され、幅1mm以下のスリット11bにより舌状のリード部11cが形成されており、リード部11cの吐出孔5と対向する部分には貫通孔11aが形成されている。
【0019】
ここで、吸入弁11は圧延した13クロム材をプレスで型抜きし、材料の表面全体にショットピーニング処理を施した後、舌状のリード部11cにドライホーニング処理が施されている。図1において、ショットピーニング処理およびドライホーニング処理した部分を斜線模様部分として示している。
【0020】
ショットピーニング処理の条件は、直径0.5mmの鋼球であるショット粒を遠心力で効率よく噴射するもので、その強さはSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.07−0.10mmが得られる条件に設定した。またドライホーニング処理の条件は、直径0.1mm前後の微細なガラス球を圧縮空気とともに噴射ノズルで吹付けるもので、その強さはSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.04−0.08mmが得られる条件に設定した。
【0021】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。まず、ピストン1がシリンダ2の中で水平往復運動することで、冷媒はまず吸入室9からバルブプレート3の吸入孔4を通り吸入弁11を開弁してシリンダ2内に吸入される。そしてこの冷媒は同じくピストン1の水平往復運動によって圧縮され、吸入弁11が閉じ吐出弁6が開くことでバルブプレート3の吐出孔5を通り、シリンダヘッド8の吐出室10に送り込まれる。この動作が繰り返し行われることで周知の圧縮動作がなされることになる。
【0022】
この際、吸入弁11の貫通孔11a近傍は開閉を繰り返し、その結果、貫通孔11a近傍は繰り返し応力が発生する。またリード部11cの吸入孔4に対応する個所はバルブプレート3に衝突し、衝撃荷重を繰り返し受ける。
【0023】
次に吸入弁11の表面処理の作用について説明する。吸入弁11はショット粒が衝突することでその表面層は延展されようとする。しかしながら内面層の拘束により延びることはできず、その結果、表面層同士の間に互いに圧縮し合う力が発生する。この圧縮し合う力が圧縮残留応力であり、本実施の形態では直径0.5mmの鋼球であるショット粒をSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.07−0.10mmが得られる強さでショットピーニング処理を行うことで結果的に表面層に十分な深さの圧縮残留応力を付与することができた。
【0024】
また、ショットピーニング処理を行うことによって、吸入弁11の表面欠陥および比較的大きな各エッジ部のバリは除去された。反面、吸入弁11の表面には凹凸が生じてしまい、吸入弁11表面の表面粗さが劣化している。また13クロム材は粘度が高くねばいため、特にショットピーニングのショット粒が当りにくいスリット11bには若干のばりが残留している。
【0025】
その後、リード部11cにショット粒よりも小さいガラスビーズによるドライホーニング処理を施すことにより、ショットピーニング処理により表面に生じた凹凸による荒れをショット粒より小さなガラス球が均すことで表面粗さが改善され、表面の欠陥をより確実に除去できた。さらに、ショットピーニング処理では除去しきれずスリット11bに残留した細かいバリも除去できた。
【0026】
その結果、表面欠陥がほとんどなく、全面に渡って高い圧縮残留応力が付与された吸入弁11を実現でき、疲労耐久性が高く長期の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができた。
【0027】
また、近年の家庭用冷蔵庫におけるインバータ運転化により、80HZにのぼる高速運転時には吸入弁11にかかる負荷は増大し、長期間において開閉を繰り返す吸入弁11には更なる疲労耐久性が求められているが、こういったインバータ運転の冷蔵庫に搭載しても長期間の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができた。
【0028】
またノンフロン冷媒であるR600a冷媒が家庭用冷蔵庫の主流となってきた現在においては、R600a冷媒が従来のR134aといった冷媒と比べて希薄であるが故に吸入弁11へのオイル付着等が少なくなり吸入弁11が乾きやすく、吸入弁11が過酷な状況にさらされ、疲労破壊に対する耐力をより向上させる必要があるが、こういったR600a冷媒といった希薄な冷媒を使用した冷蔵庫に搭載しても長期間の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができ、ノンフロン冷媒適用の冷蔵庫あるいはその他の冷凍装置を装備した製品においても信頼性を維持しながら地球環境保護に寄与することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明は、表面に高い圧縮残留応力を付与することができ、表面粗さが改善され、表面の欠陥や傷、エッジ部のバリをより確実に除去することで、疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供できるという効果がある。
【0030】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、13クロム鋼を用いることで極めて高い圧縮残留応力を吸入弁の表面に付与することができ、更に疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供できるという効果がある。
【0031】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、希薄であるために吸入弁へのオイル付着が少なくなって吸入弁が乾きやすいR600a冷媒においても疲労破壊に対する耐力を向上でき、ノンフロン冷媒適用における信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図
【図2】本発明の実施の形態1による圧縮ユニット部の断面図
【図3】従来の密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図
【図4】従来の密閉型電動圧縮機の圧縮ユニット部の断面図
【符号の説明】
1 ピストン
2 シリンダ
3 バルブプレート
4 吸入孔
5 吐出孔
6 吐出弁
7、11 吸入弁
8 シリンダヘッド
9 吸入室
10 吐出室
11a 貫通孔
11b スリット
11c リード部
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫、冷凍庫等の冷却システムに使用する密閉型電動圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、密閉型電動圧縮機は地球環境の観点から、ノンフロン冷媒の採用やインバータでの高速運転化が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型電動圧縮機を説明する。図3は、従来の密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図である。図4は従来の密閉型電動圧縮機の圧縮ユニット部の構造を示す断面図である。図3、図4において、略円筒形のピストン1はシリンダ2内に摺動自在に挿入されている。平板状のバルブプレート3には吸入孔4と吐出孔5とが形成され、吐出孔5を開閉する吐出弁6が備え付けられている。
【0004】
薄板状の板ばね材で形成された吸入弁7には、吸入孔4を開閉するリード部7aが形成されている。シリンダヘッド8は吸入室9および吐出室10を形成しており、吸入弁7、バルブプレート3をシリンダ2との間で挟みこんで固定している。なお、吸入弁7は金属製の圧延した板ばね材をプレスで型抜きした後、材料の表面欠陥および各エッジ部のバリを除去するために、ショットピーニング処理もしくはドライホーニング処理がおこなわれている。これらの処理は吸入弁7の全表面にわたって施されており、図3においてこれをまだら点模様で示している。
【0005】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。
【0006】
まず、ピストン1がシリンダ2の中で水平往復運動することで、冷媒はまず吸入室9からバルブプレート3の吸入孔4を通り吸入弁7を開弁してシリンダ2内に吸入される。そしてこの冷媒は同じくピストン1の水平往復運動によって圧縮され、吸入弁7が閉じ吐出弁6が開くことでバルブプレート3の吐出孔5を通り、シリンダヘッド8の吐出室10に送り込まれる。この動作が繰り返し行われることで周知の圧縮動作がなされることになる。一方、吸入弁7は開閉を繰り返す際、繰り返したわむことで繰り返し応力が発生する。また弁部7cの吸入孔4に対応する個所はバルブプレート3に衝突し、衝撃荷重を繰り返し受けることになる。
【0007】
これに対し、吸入弁7の表面には少なくとも全面にわたってショットピーニング処理もしくはドライホーニング処理が施されており、材料の表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労破壊の起点が無くなるとともに、材料表面に圧縮残留応力が付与されることで疲労耐久性が向上し、長期の運転に耐えるものである。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−310068号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成において、ショットピーニング処理を行った吸入弁7は処理をしないものと比べて表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労耐久性を向上させることができたが、長期間に渡って開閉を繰り返す吸入弁7に十分な圧縮残留応力を与える為に必要なショットピーニング処理に使用するショット粒の直径は0.4−0.7mm程の大きさの鋼球であった。これによって、吸入弁周辺のスリット部といったところに除去されない細かいバリが残ってしまうという欠点があった。
【0010】
また、このショット粒の直径が大きいほど、材料により高い圧縮残留応力を与えることができるが、その反面ショット粒の直径が大きいと吸入弁7の表面に打ち付ける際の衝撃エネルギーが大きくなるため、吸入弁7の表面には凹凸が生じてしまい、吸入弁7表面の表面粗さが劣化し、これによって新たな欠陥や傷が生じてしまい、これらが疲労破壊の起点となり、吸入弁7の疲労耐久性を低下させる可能性があった。
【0011】
一方、上記従来の構成において、ドライホーニング処理を行った吸入弁7は処理をしないものと比べて表面欠陥および各エッジ部のバリが除去されることで疲労耐久性を向上させることができたが、一般的にドライホーニングで使用する0.05−0.15mm程の大きさの鋼球であり、長期間に渡って開閉を繰り返す吸入弁に十分な圧縮残留応力を与えることが難しいという欠点があった。
【0012】
本発明は、従来技術の課題を解決するもので、疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、往復動するピストンを収納するシリンダと、前記シリンダの開口端に備えられたバルブプレートと、前記バルブプレートに形成された吸入孔と、前記シリンダの開口端とバルブプレートの間に挟持された吸入弁とを備え、前記吸入弁は前記吸入孔を開閉するリード部を有し、前記吸入弁の表面にショットピーニング処理を施した後、少なくとも前記リード部にドライホーニング処理を施したもので、衝撃エネルギーが大きなショット粒が衝突をすることによって表面層に高い値の圧縮残留応力が十分な深さまで付与され、かつショット粒よりも小さいガラスビーズを衝突させることによって吸入弁表面の凹凸である表面粗さが改善され、さらにショットピーニング処理では除去しきれない吸入弁周辺のスリット部といったところに発生する細かいバリをより確実に除去できる、という作用を有する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に、さらに吸入弁が13クロム鋼からなるものであり、一般的に使用されている炭素鋼よりも粘度が高くねばい材料である為に表面の欠陥や傷、エッジ部のバリが除去しにくいという性質を持っているにもかかわらず、表面の欠陥や傷、エッジ部のバリの除去が十分になされ、ねばい材料であるが故に極めて高い値の圧縮残留応力を得ることができる、という作用を有する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、冷媒をR600aとしたものであり、従来のR134aなどのフロン系冷媒と比べて希薄であるために、吸入弁へのオイル付着が少なくなって吸入弁が乾きやすいノンフロン冷媒のR600aでは特に疲労破壊に対する耐力を向上できる、という作用を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による密閉型電動圧縮機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図である。図2は、同実施の形態における密閉型電動圧縮機の圧縮機ユニット部の断面図である。図1、図2において、略円筒形のピストン1はシリンダ2内に摺動自在に挿入されている。平板状のバルブプレート3には吸入孔4と吐出孔5とが形成され、吐出孔5を封止する吐出弁6が備え付けられている。
【0018】
シリンダヘッド8は吸入室9および吐出室10を形成しており、薄板状の吸入弁11、バルブプレート3をシリンダ2との間で挟みこんで固定している。吸入弁11は板ばね材である13クロム材で形成され、幅1mm以下のスリット11bにより舌状のリード部11cが形成されており、リード部11cの吐出孔5と対向する部分には貫通孔11aが形成されている。
【0019】
ここで、吸入弁11は圧延した13クロム材をプレスで型抜きし、材料の表面全体にショットピーニング処理を施した後、舌状のリード部11cにドライホーニング処理が施されている。図1において、ショットピーニング処理およびドライホーニング処理した部分を斜線模様部分として示している。
【0020】
ショットピーニング処理の条件は、直径0.5mmの鋼球であるショット粒を遠心力で効率よく噴射するもので、その強さはSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.07−0.10mmが得られる条件に設定した。またドライホーニング処理の条件は、直径0.1mm前後の微細なガラス球を圧縮空気とともに噴射ノズルで吹付けるもので、その強さはSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.04−0.08mmが得られる条件に設定した。
【0021】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。まず、ピストン1がシリンダ2の中で水平往復運動することで、冷媒はまず吸入室9からバルブプレート3の吸入孔4を通り吸入弁11を開弁してシリンダ2内に吸入される。そしてこの冷媒は同じくピストン1の水平往復運動によって圧縮され、吸入弁11が閉じ吐出弁6が開くことでバルブプレート3の吐出孔5を通り、シリンダヘッド8の吐出室10に送り込まれる。この動作が繰り返し行われることで周知の圧縮動作がなされることになる。
【0022】
この際、吸入弁11の貫通孔11a近傍は開閉を繰り返し、その結果、貫通孔11a近傍は繰り返し応力が発生する。またリード部11cの吸入孔4に対応する個所はバルブプレート3に衝突し、衝撃荷重を繰り返し受ける。
【0023】
次に吸入弁11の表面処理の作用について説明する。吸入弁11はショット粒が衝突することでその表面層は延展されようとする。しかしながら内面層の拘束により延びることはできず、その結果、表面層同士の間に互いに圧縮し合う力が発生する。この圧縮し合う力が圧縮残留応力であり、本実施の形態では直径0.5mmの鋼球であるショット粒をSAEで規格されているタイプNのアルメンストリップを用いて測定した時、0.07−0.10mmが得られる強さでショットピーニング処理を行うことで結果的に表面層に十分な深さの圧縮残留応力を付与することができた。
【0024】
また、ショットピーニング処理を行うことによって、吸入弁11の表面欠陥および比較的大きな各エッジ部のバリは除去された。反面、吸入弁11の表面には凹凸が生じてしまい、吸入弁11表面の表面粗さが劣化している。また13クロム材は粘度が高くねばいため、特にショットピーニングのショット粒が当りにくいスリット11bには若干のばりが残留している。
【0025】
その後、リード部11cにショット粒よりも小さいガラスビーズによるドライホーニング処理を施すことにより、ショットピーニング処理により表面に生じた凹凸による荒れをショット粒より小さなガラス球が均すことで表面粗さが改善され、表面の欠陥をより確実に除去できた。さらに、ショットピーニング処理では除去しきれずスリット11bに残留した細かいバリも除去できた。
【0026】
その結果、表面欠陥がほとんどなく、全面に渡って高い圧縮残留応力が付与された吸入弁11を実現でき、疲労耐久性が高く長期の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができた。
【0027】
また、近年の家庭用冷蔵庫におけるインバータ運転化により、80HZにのぼる高速運転時には吸入弁11にかかる負荷は増大し、長期間において開閉を繰り返す吸入弁11には更なる疲労耐久性が求められているが、こういったインバータ運転の冷蔵庫に搭載しても長期間の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができた。
【0028】
またノンフロン冷媒であるR600a冷媒が家庭用冷蔵庫の主流となってきた現在においては、R600a冷媒が従来のR134aといった冷媒と比べて希薄であるが故に吸入弁11へのオイル付着等が少なくなり吸入弁11が乾きやすく、吸入弁11が過酷な状況にさらされ、疲労破壊に対する耐力をより向上させる必要があるが、こういったR600a冷媒といった希薄な冷媒を使用した冷蔵庫に搭載しても長期間の運転に耐える密閉型電動圧縮機を提供することができ、ノンフロン冷媒適用の冷蔵庫あるいはその他の冷凍装置を装備した製品においても信頼性を維持しながら地球環境保護に寄与することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明は、表面に高い圧縮残留応力を付与することができ、表面粗さが改善され、表面の欠陥や傷、エッジ部のバリをより確実に除去することで、疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供できるという効果がある。
【0030】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、13クロム鋼を用いることで極めて高い圧縮残留応力を吸入弁の表面に付与することができ、更に疲労耐久性が高い吸入弁を備えた信頼性の高い密閉型電動圧縮機を提供できるという効果がある。
【0031】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、希薄であるために吸入弁へのオイル付着が少なくなって吸入弁が乾きやすいR600a冷媒においても疲労破壊に対する耐力を向上でき、ノンフロン冷媒適用における信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図
【図2】本発明の実施の形態1による圧縮ユニット部の断面図
【図3】従来の密閉型電動圧縮機の吸入弁の平面図
【図4】従来の密閉型電動圧縮機の圧縮ユニット部の断面図
【符号の説明】
1 ピストン
2 シリンダ
3 バルブプレート
4 吸入孔
5 吐出孔
6 吐出弁
7、11 吸入弁
8 シリンダヘッド
9 吸入室
10 吐出室
11a 貫通孔
11b スリット
11c リード部
Claims (3)
- 往復動して冷媒を吸入,圧縮するピストンを収納するシリンダと、前記シリンダの開口端に備えられたバルブプレートと、前記バルブプレートに形成された吸入孔と、前記シリンダの開口端とバルブプレートの間に挟持された吸入弁とを備え、前記吸入弁は前記吸入孔を開閉するリード部を有し、前記吸入弁の表面にショットピーニング処理を施した後、少なくとも前記リード部にドライホーニング処理を施した密閉型電動圧縮機。
- 前記吸入弁は13クロム鋼からなる請求項1に記載の密閉型電動圧縮機。
- 前記冷媒をR600aとした請求項1または請求項2に記載の密閉型電動圧縮機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003039343A JP2004251128A (ja) | 2003-02-18 | 2003-02-18 | 密閉型電動圧縮機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003039343A JP2004251128A (ja) | 2003-02-18 | 2003-02-18 | 密閉型電動圧縮機 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2004251128A true JP2004251128A (ja) | 2004-09-09 |
Family
ID=33023549
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003039343A Pending JP2004251128A (ja) | 2003-02-18 | 2003-02-18 | 密閉型電動圧縮機 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004251128A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102330656A (zh) * | 2010-07-12 | 2012-01-25 | 日立空调·家用电器株式会社 | 密闭式压缩机及具备该压缩机的冰箱 |
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2003
- 2003-02-18 JP JP2003039343A patent/JP2004251128A/ja active Pending
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