JP2004250351A - 六員環ラクトン類の製造方法 - Google Patents

六員環ラクトン類の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アレンと二酸化炭素を原料として、医薬中間体原料である六員環ラクトン類を製造する。
【解決手段】アレンと二酸化炭素をパラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒の存在下で反応させる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除草剤や植物成長調節剤等の生理活性物質又は医薬中間体原料として、医農薬分野において広く利用されている六員環ラクトン類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六員環ラクトンは、除草剤や植物成長調節剤等の生理活性物質又は医薬中間体原料として、医農薬分野において広く利用されている。このような六員環ラクトンは有用な性質をもつ化合物であるにも関わらず、その合成法は微生物が産出する化合物からの単離によるものや、多段階の合成過程を必要とするものであった。
【0003】
一方、有機合成のビルディングブロックとしてアレン類が注目され、これを利用して各種化合物を合成する方法が提案されているが、六員環ラクトンの合成を意図とした報告例としては、無置換アレンと二酸化炭素とをニッケル触媒の存在下で反応させると六員環ラクトンが生起する旨の研究報告(非特許文献1)やメトキシ基で置換されたアレンと二酸化炭素とをパラジウム−トリ(シクロヘキシル)ホスフィンなどの触媒の存在下で反応させると六員環ラクトンが生成する旨の研究論文(非特許文献2)を数えるに過ぎない。
このように、アレン類と二酸化炭素とからの六員環ラクトンの合成反応は、その反応機構が未だ充分に解明されておらず、原料であるアレンの種類、触媒種が異なった場合に果たしてどのような生成物が得られるか否かを予測することが極めて困難な研究途上の技術分野に位置している。
【0004】
【非特許文献1】J. Molecular Catalysis, vol. 54, p L9, 1989
【非特許文献2】J. Organometallic Chem., vol. 429, p C46, 1992
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の背景のもとでなされたものであって、アレン類及び二酸化炭素を原料として用い、医農薬中間体原料等として有用な六員環ラクトン類を有効に製造できる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の従来法の問題点を克服するために研究を重ねた結果、アレン類と二酸化炭素から六員環ラクトン誘導体を製造する際には、パラジウム化合物とホスフィン類との組み合わせからなる触媒が有効であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)炭化水素基で置換されてもよいアレン類と二酸化炭素とを、パラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒の存在下で反応させることを特徴とする六員環ラクトン類の製造方法。
(2)炭化水素基で置換されてもよいアレン類が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
一般式(1)
【化2】
Figure 2004250351
(式中、R〜Rは水素または炭化水素基で表される)
(3)ホスフィン類がアルキル基を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
(4)アルキル基が直鎖アルキル基であることを特徴とする上記(3)に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の六員環ラクトン類の製造方法は、炭化水素で置換されてもよいアレン類と二酸化炭素の反応をパラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒の存在下で行うことを特徴とする。
【0009】
本発明で用いられるアレンは、炭化水素基で置換されてもよいアレン類であり、好ましくは下記一般式(1)で示される。
一般式(1)
【化3】
Figure 2004250351
(式中、R〜Rは水素または炭化水素基で表される)
【0010】
式中、R〜Rは水素、アルキル基、アラルキル基又はアリール基であるが、これらの炭化水素基は二酸化炭素と反応しない置換基例えばアルコキシ基、ジアルキルアミノ基等で置換されていてもよい。
【0011】
このようなアレン類としては、アレン、メチルアレン、エチルアレン、プロピルアレン、ブチルアレン、イソプロピルアレン、ヘキシルアレン、フェニルアレン、ベンジルアレン、ジメチルアレン、ジエチルアレン、ジヘキシルアレン、ジフェニルアレン等が例示される。
【0012】
本発明においては、上記環化エステル化反応は、パラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒の存在下で行われる。
【0013】
このエステル化反応によって生成する6員環ラクトンとしては、2H−pyrane−2−one類やその異性体である5−ethylidene−6−hydro−2H−pyranone−2−one類等を挙げることができる。
表1に、これらの化合物の代表的な構造式を示す。
なお、表1においてPhはフェニル基を、Rは、R〜Rから選ばれた基を示す。
【0014】
【表1】
Figure 2004250351
【0015】
本発明で用いるパラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒は、あらかじめ反応系外で形成して反応系内に供給し得る他、反応系内で形成することができる。反応系内で形成させる場合には、パラジウム化合物とホスフィン類を反応系内に供給すればよい。
【0016】
パラジウム化合物の具体的な例として、パラジウム炭素などの担持パラジウム金属、酢酸パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス[4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−フォスファビシクロ(2,2,2)オクタン]パラジウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジ−m−クロロ−ジクロロビス(イソシアニド)二パラジウム、ビス(シクロオクタジエン−1,5−ジエン)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、クロロ(メチル)(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジメチル[1,2−ビス(ジメチルアミノ)エタン]パラジウム、ジネオペンチル(2,2’−ビピリジル)パラジウム、η−アリル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)パラジウム、η−アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム、η−アリル(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムテトラフルオロホウ酸塩、ビス(η−アリル)パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ジクロロエチレンジアミンパラジウム、塩化パラジウム等を挙げることができる。
【0017】
ホスフィン類としては、好ましくはアルキル基特に直鎖状のアルキル基を含むホスフィン類が用いられる。このようなホスフィン類としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ペンチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等が挙げられる。
【0018】
あらかじめ反応系外で形成した触媒の具体的な例として、ジブロモビス(ジメチルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム、ジヨード[1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジ−μ−クロロ−ジクロロビス(トリフェニルホスフィノ)二パラジウム、ジクロロ−μ−[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]二パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、(η−エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジメチル[1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジメチル[1,3−ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジメチルビス(1−ホスファ−2,6,7−オキソビシクロ[2,2,2]オクタン)パラジウム、ジフェニルビス(メチルジフェニルホスフィニト)パラジウム、ジベンジルビス(トリメチルホスフィン)パラジウム、ジエチニルビス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ブロモ(メチル)ビス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ベンゾイル(クロロ)ビス(トリメチルホスフィン)パラジウム、シクロペンタジエニル(フェニル)(トリエチルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を挙げることができる。
【0019】
反応温度に制限はなく、通常、室温〜300℃、好ましくは室温〜80℃である。反応圧力に制限はなく、反応に使用する耐圧装置の製造コストなどによって定められるが、通常1〜1000気圧、好ましくは50〜300気圧である。
反応時間は用いる原料であるアレンの種類、反応温度、反応圧力など諸条件により異なるが、1〜100時間で十分である。
【0020】
本発明の反応は、特に溶媒を必要としないが、反応を阻害しないような溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、炭化水素類、エーテル類、二トリル類などが挙げられる。具体例としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリルなどが例示される。
【0021】
本発明の反応における触媒量には特に制限はないが、通常0.01mol%〜100mol%で十分である。好ましくは、0.1〜20mol%の範囲である。
【0022】
本発明方法は、バッチ式あるいは連続式の何れの方式でも実施可能である。バッチ方式の例は以下に示したように行われる。
攪拌装置を具備したオートクレーブに、アレン及びパラジウムとホスフィンからなる触媒を仕込んだ後、炭酸ガスボンベから炭酸ガスを充填し、密封する。オートクレーブ内を攪拌しながら設定温度まで加熱し、さらに炭酸ガスを充填することにより設定圧力まで調整する。所定時間反応を行った後、生成した六員環ラクトンを所望の手段で分離する。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0024】
実施例1
攪拌装置を具備した20ml容積のオートクレーブに、フェニルアレン4.3mmol、0.21mmolのη−アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム及び配位子として0.43mmolのトリ−n−ブチルホスフィン、アセトニトリル4.0mlを仕込んだ後、炭酸ガスボンベから炭酸ガスを充填し、密封した。その後、オートクレーブ内を攪拌しながら80℃まで加熱し、さらに炭酸ガスを充填することにより内圧を50気圧まで調整し、12時間反応させた。反応混合物をガスクロマトグラフィーに連結した高分解能質量分析装置により分析したところ、6員環ラクトンとして4成分の異性体の存在が確認された。これら4成分のうち、成分1を単離し詳細な構造の確認を行ったところ、3,5−dibenzyl−2H−pyranone−2−oneが得られた。
H NMR δ = 3.63 (s, 2H), 3.68(s,2H), 7.03 (s, 1H), 7.12−7.37 (m, 10H), 7.42 (s, 1H); 13C NMR δ = 35.53 (−CH−Ph), 37.01 (−CH−Ph), 119.63 (5−position of δ−lactone), 127.18, (C of Ph), 127.36 (C of Ph), 129.17 (C of Ph), 129.42 (C of Ph), 129.48 (C of Ph), 129.58 (3−position of δ−lactone), 129.74 (C of Ph), 139.44 (C of Ph), 139.93 (C of Ph), 142.37 (6−position of δ−lactone), 147.62 (2−position of δ−lactone), 162.52 (C=O); IR 1714 cm−1 (νC=O); HRMS Calcd. for C1916: (M), 276.1150. Found : m/z 276.1151
6員環ラクトン類の収率は62%であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、医薬原料の中間体として有用な6員環ラクトンを、パラジウム化合物とホスフィン系配位子の組み合わせからなる触媒を用いることにより、高収率、高選択率で得ることができる。
すなわち、本発明方法は、触媒としてパラジム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒を用い、原料として、環境に無害で循環可能資源である二酸化炭素を用いることから、安全かつ工業的に有利な六員環ラクトンを製造することができる。

Claims (4)

  1. 炭化水素基で置換されてもよいアレン類と二酸化炭素とを、パラジウム化合物とホスフィン類の組み合わせからなる触媒の存在下で反応させることを特徴とする六員環ラクトン類の製造方法。
  2. 炭化水素基で置換されてもよいアレン類が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
    一般式(1)
    Figure 2004250351
    (式中、R〜Rは水素または炭化水素基で表される)
  3. ホスフィン類がアルキル基を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
  4. アルキル基が直鎖アルキルであることを特徴とする請求項3に記載の六員環ラクトン類の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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