JP2004249968A - シートベルトリトラクタ - Google Patents

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Masahiro Shiotani
塩谷昌広
Tetsuya Hamagami
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Abstract

【課題】エネルギ吸収効果をより安定させて乗員の衝撃エネルギを可能な限りより効果的にかつより適切に吸収することができるようにしつつ、簡単な構成で安価に形成できるシートベルトリトラクタを提供する。
【解決手段】緊急時に、スプール4がシートベルト引出方向にロッキングベース14に対して相対回転すると、トーションバー7のねじり変形により衝撃エネルギが吸収されて、シートベルト3に制限されたEA荷重が発生する。同時に、スプール4の回転力で切り裂き用突起22がともに回動してエネルギ吸収部材21をけがき線21dに沿って連続して切り裂く。このエネルギ吸収部材21の切裂きによりシートベルト3に制限されたEA荷重が発生し、衝撃エネルギが吸収される。エネルギ吸収部材21がけがき線21dのすべてにおいて切り裂けると、トーションバー7による衝撃エネルギ吸収のみとなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートベルトを巻取引出し可能に巻き取るシートベルトリトラクタの技術分野に属し、特に、シートベルト装着状態で衝突時等の車両に大きな車両減速度が作用した場合のような緊急時にシートベルトの引出しを阻止する際、シートベルトによって、慣性移動しようとする乗員に作用される衝撃のエネルギを吸収するエネルギ吸収機構(以下、EA機構ともいう)を備えているシートベルトリトラクタの技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、前述の緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止し、乗員を保護している。
このようなシートベルト装置においては、シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタを備えている。このシートベルトリトラクタは、シートベルトは非装着時にはスプールに巻き取られているが、装着時には引き出されて乗員に装着される。そして、シートベルトリトラクタは、前述のような緊急時にロック機構が作動してスプールの引出し方向の回転を阻止することにより、シートベルトの引出しが阻止される。これにより、緊急時にシートベルトは乗員を確実に拘束し、保護するようになる。
【0003】
ところで、この従来のシートベルト装置のシートベルトリトラクタにおいては、車両衝突等の緊急時にシートベルトが乗員を拘束保護するとき、大きな車両減速度が生じるため、乗員が大きな慣性により前方へ移動しようとする。このため、シートベルトには大きな荷重が加えられるとともに、乗員はこのシートベルトから大きな衝撃を受けるようになる。乗員に対してこの衝撃は特に問題ではないが、できれば、そのエネルギを吸収して衝撃力を制限することが望ましい。
【0004】
そこで、シートベルトリトラクタにおいては、従来、トーションバーを設けて、シートベルト装着状態での前述の緊急時に、衝撃エネルギを吸収してシートベルトにかかる荷重を制限するようにしたものが開発されている。
図8は、このようなトーションバーを備えたシートベルトリトラクタの一例を示す縦断面図である。図中、1はシートベルトリトラクタ、2はコ字状のフレーム、3はシートベルト、4はコ字状のフレーム2の両側壁間に回転可能に支持され、シートベルト3を巻き取るスプール、5は前述の緊急時に発生する大きな車両減速度を感知して作動する減速度感知手段、6は減速度感知手段5によって作動して少なくともスプール4のベルト引出方向の回転を阻止するロック機構、7はこのスプール4の中心に軸方向に遊嵌、貫通され、かつスプール4とロック機構6とを回転的に連結するトーションバー、8はスパイラルスプリング9のばね力によりブッシュ10を介してスプール4を常時ベルト巻取方向に付勢するスプリング手段、11は前述の緊急時に作動してベルト巻取トルクを発生するプリテンショナー、12はプリテンショナー11のシートベルト巻取トルクをスプール4に伝達するブッシュである。
【0005】
ロック機構6は、トーションバー7の後述する第1トルク伝達軸17に一体回転可能に支持されかつパウル13を揺動可能に保持するロッキングベース(本発明のロッキング部材に相当)14を備えている。また、トーションバー7には、通常時はこのトーションバー7と一体回転し緊急時に減速度感知手段5の作動で停止してトーションバー7との間に相対回転差を発生させてパウル13をフレーム2の側壁の内歯19に係合させることで、ロッキングベース14つまりはスプール4のシートベルト引出方向の回転を阻止するロックギヤ6aを備えている。
【0006】
また、トーションバー7には、ロッキングベース14と相対回転不能に係合する第1トルク伝達部17が形成されているとともに、スプール4と相対回転不能に係合する第2トルク伝達部18が形成されている。
更に、スプール4とロッキングベース14の軸部14aとの間に、環状の相対回転ロック部材15が配設されている。この相対回転ロック部材15は内周面に雌ねじ15aが形成されてロッキングベース14の軸部14aに形成された雄ねじ14cに螺合されているとともにスプール4の軸方向孔に相対回転不能にかつ軸方向移動可能に嵌合されている。そして、スプール4がロッキングベース14に対してベルト引出し方向に相対回転すると、相対回転ロック部材15はスプール4と一体回転して図8において右方へ移動するようになっている。
【0007】
スプリング手段8のばね力により、スプール4はブッシュ10、トーションバー7、トーションバー7の第2トルク伝達部18およびブッシュ12を介して常時シートベルト巻取方向に付勢されている。また、プリテンショナー11の作動時、プリテンショナー11で発生したベルト巻取トルクがブッシュ12を介してスプール4に伝達され、これによりスプール4はシートベルト3を所定量巻き取るようになっている。
【0008】
このように構成された従来のシートベルトリトラクタ1においては、シートベルト非装着時には、スプリング手段8の付勢力で、シートベルト3が完全に巻き取られている。そして、装着のためシートベルト3を通常の速度で引き出すと、スプール4がシートベルト引出方向に回転し、シートベルト3はスムーズに引き出される。シートベルト3に摺動自在に設けられた図示しないタングを車体に固定されたバックルに挿入係止した後、余分に引き出されたシートベルト3がスプリング手段8の付勢力でスプール4に巻き取られ、シートベルト3は乗員に圧迫感を与えない程度にフィットされる。
【0009】
前述の緊急時にはプリテンショナー11が発生したシートベルト巻取トルクはスプール4に伝達され、スプール4はシートベルト3を所定量巻き取り、乗員を迅速に拘束する。一方、緊急時に発生する大きな車両減速度で減速度感知手段5が作動してロック機構6が作動する。すなわち、減速度感知手段5の作動により、ロックギヤ6aのシートベルト引出方向の回転が阻止され、ロック機構6のパウル13が回動して、フレーム2の側壁の内歯19に係合する。すると、ロッキングベース14のシートベルト引出方向の回転が阻止されるので、トーションバー7がねじられ、スプール4のみがシートベルト引出方向にロッキングベース14に対して相対回転する。これ以後、スプール4がトーションバー7をねじりつつシートベルト引出方向に回転することになり、このトーションバー7のねじりトルクによって、乗員の衝撃エネルギが吸収緩和されてシートベルト3に加えられる荷重が制限される。そして、このトーションバー7によってEA機構が構成されており、このときのEA機構の制限荷重(以下、EA荷重ともいう)の特性は、トーションバー7により制限されたEA荷重が図2に示すようにスプール4のロッキングベース14に対する相対回転のストロークが大きくなるにしたがって徐々に大きくなり、その後一定値となる特性である。
【0010】
ところで、ロッキングベース14に対するスプール4のベルト引出方向の相対回転で、相対回転ロック部材15が図8において軸方向右方へ移動する。そして、相対回転ロック部材15はロッキングベース14の雄ねじの終わりまで移動するとそれ以上軸方向右方へは移動しないので回転がロックされ、相対回転ロック部材15はロッキングベース14に対して相対回転しなくなる(なお、相対回転ロック部材15はロッキングベース14のフランジ状部14bの側面に当接することで、それ以上の軸方向右方への移動が阻止される場合もある)。
したがって、スプール4もロッキングベース14に対して相対回転しなくなる。つまり、スプール4のベルト引き出し方向の回転がロックされ、シートベルト3は引き出されなくなり、乗員はシートベルト3によって慣性移動が阻止されて保護される。
【0011】
また、この従来にシートベルトリトラクタ1は、シートベルトの急激な引出時にも、ロック機構6のロッキングベース14がロックギヤ6aに対してシートベルト引出方向に相対回転するようになっており、これにより前述と同様にロック機構6のパウル13がフレーム2の側壁の内歯19に係合して、ロッキングベース14の回転が阻止されるため、トーションバー7を介してスプール4の引出方向の回転が阻止され、シートベルトの引出が阻止される。
【0012】
ところで、このような従来のシートベルトリトラクタ1においては、トーションバー7のみにより1つのEA荷重が設定されており、この1つのEA荷重のみによって乗員の衝撃エネルギが吸収されるようになっている。このEA荷重は乗員への衝撃負荷をなるべく小さくなるようにするため、乗員の衝撃エネルギを吸収できる最小かつ一定のEA荷重に選定されている。
このような従来からのトーションバー7でも、緊急時の乗員の衝撃エネルギを吸収できるが、この乗員の衝撃エネルギは可能な限り効果的にかつ適切に吸収できるようにすることが望ましい。
【0013】
そこで、従来、ロッキングベースとスプールとの間に線材からなるエネルギ吸収手段を設けるとともに、この線材をスプールに設けた3つの係合ピンに係合させ、ロッキングベースとスプールとの相対回転時に、スプールの3つの係合ピンが線材を変形することにより、衝撃エネルギを吸収することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0014】
また、ロッキングベースとスプールとの間に、円筒状部とフランジ部とを有する筒状部材からなるエネルギ吸収手段を設けるとともに、円筒状部の切り離し部をロッキングベースの係止部に係合させ、かつフランジ部をスプールに相対回転不能に係合させて、ロッキングベースとスプールとの相対回転時に、ロッキングベースの係止部が円筒状部を内側に塑性変形することにより、衝撃エネルギを吸収することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0015】
これらの特許文献1および2に開示されているシートベルト装置では、前述の図8に示すトーションバー7と同様の回転軸のねじり変形によるエネルギ吸収と、前述のエネルギ吸収手段によるエネルギ吸収とを組み合わせることで、乗員の衝撃エネルギをより効果的にかつより適切に吸収できる。
【0016】
更に、図8に示すトーションバー7と同様のものが設けられず、エネルギ吸収手段のみで乗員の衝撃エネルギを吸収することも提案されている。このエネルギ吸収手段は、湾曲部でU字状に折り返され、それぞれ円弧部に形成された平板素材から形成されている。また、リトラクタのフレームに回転可能に支持された回転軸に、スプールをこの回転軸に対して相対回転可能に支持し、更に回転軸とスプールとの間に、この平板素材からなるエネルギ吸収手段を軸方向に延設するようにして介在させる。そして、U字状に折り返された平板素材の一端縁を回転軸に係合させ、かつ平板素材の他端縁をスプールに係合させて、回転軸とスプールとの相対回転時に、スプールが平板素材を変形することにより、衝撃エネルギを吸収することが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0017】
【特許文献1】
特開2002−53007号公報(段落番号[0029]、[要約]、[図4]、[図5])
【特許文献2】
特開2002−53008号公報(段落番号[0030]、[0031]、[0032]、[図3]ないし[図5])
【特許文献3】
特開平10−258702号公報(段落番号[0038]、[0039]、[0047]、[0053]、[0054]、[図1]、[図3]、[図5]、[図6])
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の特許文献1に開示のエネルギ吸収手段では、線材を3つの係合ピンのすべてに蛇行させながら係合させなければならないばかりでなく、このように線材を3つの係合ピンに係合させつつ、ロッキングベースに形成された孔に線材の一端を挿入しなければならず、構成が複雑でその組立に多くの手間と多くの時間がかかるという問題がある。しかも、所望のエネルギ吸収効果を安定して得るためには、3つの係合ピンをスプールの所定位置に立設しなければならない。そして、このようなことから、このエネルギ吸収手段は比較的高価になるという問題もある。
【0019】
また、前述の特許文献2に開示のエネルギ吸収手段では、円筒状部を内側に塑性変形することでエネルギを吸収するようになっているが、円筒状部を内側に一定に塑性変形させることは難しいため、所望のエネルギ吸収効果を安定して得ることが難しいという問題がある。また、エネルギ吸収手段は、円筒状部とフランジ部とからなり、かつ円筒状部に切欠凹部からなる切り離し部を形成しなければならないため、構成が複雑で加工が比較的面倒であり、その分コストがかかってしまうという問題がある。しかも、円筒状部によりリトラクタの軸方向寸法が長くなるという問題もある。
【0020】
更に、前述の特許文献3に開示のエネルギ吸収手段では、湾曲部でU字状に折り返され、かつそれぞれ円弧部に形成された平板素材を内側に回転軸に巻き付くように変形することでエネルギを吸収するようになっているが、湾曲部でU字状に折り返された平板素材を一定に変形させることは難しいため、所望のエネルギ吸収効果を安定して得ることが難しいという問題がある。また、エネルギ吸収手段は、湾曲部でU字状に折り返された平板素材を回転軸とスプールとの間に軸方向に延設するようにして介在させなければならないため、構成が複雑で組立が比較的面倒であり、その分コストがかかってしまうという問題がある。
【0021】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エネルギ吸収効果をより安定させて乗員の衝撃エネルギを可能な限りより効果的にかつより適切に吸収することができるようにしつつ、簡単な構成で安価に形成できるシートベルトリトラクタを提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、シートベルトを巻き取るスプールと、通常時前記シートベルトと一体的に回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されるロッキング部材を有するロック機構と、前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられ、緊急時に前記スプールが前記ロッキング部材に対してシートベルト引出方向に相対回転するとき、乗員の衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収機構とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、前記エネルギ吸収機構が、前記スプールおよび前記ロッキング部材のいずれか一方に設けられた板状のエネルギ吸収部材と、前記スプールおよび前記ロッキング部材のいずれか他方に設けられた、前記エネルギ吸収部材を変形するための変形手段とからなり、緊急時に前記ロッキング部材に対して前記スプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、前記変形手段が前記エネルギ吸収部材に対して相対回転して前記エネルギ吸収部材を変形することで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴としている。
【0023】
また、請求項2の発明は、前記変形手段が前記エネルギ吸収部材を切り裂き変形するための切り裂き手段であり、緊急時に前記ロッキング部材に対して前記スプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、前記切り裂き手段が前記エネルギ吸収部材を切り裂くことで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴としている。
【0024】
更に、請求項3の発明は、前記エネルギ吸収部材が環状円板で構成されているとともにこのエネルギ吸収部材にけがき線が形成されており、緊急時に前記エネルギ吸収部材がこのけがき線に沿って切り裂かれることを特徴としている。
更に、請求項4の発明は、前記エネルギ吸収部材が前記スプールの軸方向に切り裂かれることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記エネルギ吸収部材が前記スプールの径方向に切り裂かれることを特徴としている。
【0025】
更に 請求項6の発明は、前記エネルギ吸収部材が環状円板で構成されているとともにこのエネルギ吸収部材に所定幅の環状の孔が形成されており、前記変形手段が前記環状の孔を拡開する拡開ピンであり、緊急時における前記スプールの前記相対回転時に、前記拡開ピンにより前記環状の孔が拡開されて前記エネルギ吸収部材が変形されることで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴としている。
【0026】
更に、請求項7の発明は、前記拡開ピンが径方向に移動可能に設けられており、この拡開ピンが緊急時における前記スプールの前記相対回転に伴って回転中心から離れる方向に移動することで、前記エネルギ吸収部材の前記環状の孔より外周側部分が外方に向けて変形するようになっていることを特徴としている。
更に、請求項8の発明は、前記スプールと前記ロッキング部材とが、これらの相対回転時にねじり変形するトーションバーで回転方向に連結されていることを特徴としている。
【0027】
【作用】
このように構成された請求項1ないし8の発明にかかるシートベルトリトラクタにおいては、エネルギ吸収部材が単純な板状に形成されており、しかもこの板状のエネルギ吸収部材は軸方向に単純に組み付けられる。そして、ロッキング部材に対してスプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、変形手段がエネルギ吸収部材に対して相対回転することでこのエネルギ吸収部材を連続して変形する。これにより、シートベルトにかかる荷重が制限されて衝撃エネルギが効果的に吸収される。このように、エネルギ吸収機構は乗員の衝撃エネルギをより効果的に吸収しながら、しかも、簡単な構成で安価に形成されるようになる。
【0028】
特に、請求項2の発明においては、切り裂き手段によりエネルギ吸収部材が切り裂かれることで、シートベルトにかかる荷重が制限される。これにより、乗員の衝撃エネルギが更に一層効果的に吸収される。
また、請求項3の発明においては、エネルギ吸収部材は環状円板で構成されかつけがき線が形成されていることから、ロッキング部材に対してスプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、切り裂き手段により、エネルギ吸収部材がこのけがき線に沿って連続して一定に切り裂かれるようになる。したがって、エネルギ吸収部材のエネルギ吸収効果がより安定したものとなり、乗員の衝撃エネルギが可能な限りより効果的にかつより適切に吸収されるようになる。
【0029】
更に、請求項4の発明においては、エネルギ吸収部材がスプールの軸方向に切り裂かれるようになることから、径方向の寸法が大きくなることはない。
更に、請求項5の発明においては、エネルギ吸収部材がスプールの径方向に切り裂かれるようになることから、軸方向の寸法が大きくなることはない。
【0030】
更に、請求項6の発明においては、拡開ピンによりエネルギ吸収部材の環状の孔が拡開されてエネルギ吸収部材が変形されることで、シートベルトにかかる荷重が制限される。これにより、乗員の衝撃エネルギが更に一層効果的に吸収される。
更に、請求項7の発明においては、拡開ピンが回転中心から離れる方向に移動するようになるので、拡開ピンによるエネルギ吸収部材の変形が強制的に行われるようになる。これにより、シートベルトにかかる荷重が制限されて衝撃エネルギが効果的に吸収されるようになる。
【0031】
更に、請求項8の発明においては、トーションバーのねじれ変形によるシートベルトのEA荷重とエネルギ吸収部材の切り裂きによるシートベルトのEA荷重とを合わせることで比較的大きなEA荷重と、トーションバーのねじれ変形によるシートベルトのEA荷重のみの比較的小さなEA荷重とが得られるようになる。
したがって、シートベルトのEA荷重が2段階特性となり、このEA荷重の2段階特性を有効に利用することにより、制限荷重が柔軟に種々調整可能となる。
これにより、乗員の衝撃エネルギがより効果的にかつより適切に吸収されるようになる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の第1例を示し、(a)は前述の図8に示すシートベルトリトラクタのスプール、トーションバーおよびロッキングベースとそれぞれ対応するようにこれらを部分的に示す断面図、(b)はこの第1例のシートベルトリトラクタに用いられているエネルギ吸収機構を模式的に示す斜視図である。なお、本発明の実施の形態の各例の説明において、前述の図8に示すシートベルトリトラクタの構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略するとともに、図1(a)においてシートベルトリトラクタの図1に記載されていない構成要素は、図8に示すシートベルトリトラクタの構成要素と同じである。
【0033】
図1(a)に示すように、この第1例のシートベルトリトラクタ1は、図8に示すシートベルトリトラクタと同様にトーションバー7が設けられているとともに、スプール4とロッキングベース14との間に、エネルギ吸収機構20が設けられている。このエネルギ吸収機構20は、緊急時にシートベルト3にかかる荷重を制限して乗員の衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収手段であり、環状円板からなるエネルギ吸収部材21と、スプール4の右側{図1(a)において}のフランジ部4aに設けられ、エネルギ吸収部材21を切り裂き変形するための切り裂き用突起(本発明の切り裂き手段に相当)22とから構成されている。
【0034】
図1(b)に示すように、エネルギ吸収部材21の中心孔21aには所定数の係合凹部{図1(b)には、一例として2個の係合凹部21b,21cを図示;以下、(21b,21c)と表記する}が径方向に延びるようにして形成されている。また、ロッキングベース14の軸部14aには、これらの係合凹部(21b,21c)に対応して同数の係合突起{図1(a)には、1個の係合突起14dのみ図示;以下、(14d)と表記する}が径方向に延びるようにして形成されている。
【0035】
そして、図1(a)に示すようにエネルギ吸収部材21は、その中心孔21aがロッキングベース14の軸部14aに軸方向に嵌合されることで組み付けられる。このとき、各係合凹部(21b,21c)が対応する係合突起(14d)に係合されることで{図1(a)に、係合凹部21bと係合突起14dとの係合のみ図示}、エネルギ吸収部材21はロッキングベース14に対して相対回転不能とされ、ロッキングベース14とともに回転するようになっている。また、スプール4、トーションバー7、ロッキングベース14およびエネルギ吸収部材21が組み立てられた状態では、エネルギ吸収部材21はスプール4とロッキングベース14とにより軸方向に挟持されるようになる(もちろん、エネルギ吸収部材21は必ずしも挟持されることはなく、スプール4とロッキングベース14との間に単に介在させることもできる)。
【0036】
更に、図1(b)に示すようにエネルギ吸収部材21の内周縁と外周縁との間には、円環状のけがき線(ノッチ)21dが形成されており、エネルギ吸収部材21のけがき線21d形成部は、薄肉部となっている。このけがき線21dの形成位置は、図1(a)に示すようにエネルギ吸収部材21がスプール4とロッキングベース14とにより軸方向に挟持された状態で、ロッキングベース14のフランジ状部14bの外周縁より外側の位置(エネルギ吸収部材21がロッキングベース14のフランジ状部14bに挟持されない位置)に設定されている。なお、けがき線21dの形成位置は、ロッキングベース14のフランジ状部14bの外周縁にできるだけ接近した位置に設定することが、後述するけがき線21dに沿った、せん断によるエネルギ吸収部材21の切り裂きをより効果的に行ううえで望ましい。
【0037】
そして、エネルギ吸収部材21がロッキングベース14に図1(a)に示すように組み付けられたときは、円環状のけがき線21dはロッキングベース14の回転中心と実質的に同心(同心またはほぼ同心)となるようにされている。
更に、図1(b)に示すようにエネルギ吸収部材21には、組み立てられる前の例えばけがき線21dの形成時等に、けがき線21dより外周縁側の一部を面と直交する方向(組立状態でスプール4に軸方向)に切り裂いた予切裂き部21eが予め形成されている。
このように構成されたエネルギ吸収部材21は、鉄板等の板材をプレス成形することによって簡単かつ安価に製造することができる。
【0038】
一方、切り裂き用突起22はスプール4におけるフランジ状部4aの、エネルギ吸収部材21のけがき線21dより外周縁側に対向する位置に設けられている。この切り裂き用突起22は、ロッキングベース14に対するスプール4のベルト引出方向の相対回転方向{図1(b)に矢印で示す}に向かって、その突出量が小さくなるように傾斜して周方向に沿う断面がほぼ三角形の楔状に形成されている。切り裂き用突起22は、図1(a)に示すようにスプール4と別部材で形成してスプール4に一体的に固定するようにしてもよいし、スプール4と同じ単一部材で形成してもよい。
そして、前述のようにエネルギ吸収部材21が組み立てられた状態では、図1(b)に示すようにエネルギ吸収部材21の予切裂き部21eが切り裂き用突起22の位置となるようにされている。
【0039】
このように構成された第1例のシートベルトリトラクタ1においては、前述の従来のリトラクタ1と同様に緊急時に乗員の慣性移動により引き出されようとするシートベルト3からの荷重でスプール4およびロッキングベース14がともにベルト引出方向に回転を始めるが、この緊急時にはロック機構6が作動することにより、すぐにロッキングベース14がベルト引出方向の回転が阻止されたロック状態になる。しかし、スプール4には引き続きシートベルト3からベルト引出方向の荷重が加えられるので、スプール4がロッキングベース14に対して相対回転しようとする。すると、前述の図8に示すリトラクタの場合と同様にトーションバー7がねじられ、スプール4および相対回転ロック部材15がシートベルト引出方向にロッキングベース14に対して相対回転する。
【0040】
相対回転ロック部材15のロッキングベース14に対する相対回転により、前述のようにこの相対回転ロック部材15はフランジ状部14bの方へ向かって軸方向右{図1(a)において}に移動する。
そして、トーションバー7のねじり変形により衝撃エネルギが吸収されて、シートベルト3にかかる荷重として、制限されたEA荷重が発生する。
【0041】
また同時に、スプール4の回転力でスプール4の切り裂き用突起22が予切り裂き部21eを図1(b)において押し上げる方向{図1(a)においては右方向}に押圧し、この押圧力は突起の楔効果で大きくなる。
このため、エネルギ吸収部材21のけがき線21d部分に大きなせん断力が加えられ、このせん断力により予切り裂き部21eに隣接するまだ切り裂かれていない未切り裂き部が切り裂かれる。そして、ロッキングベース14に対するスプール4のベルト引出し方向の相対回転により、切り裂き用突起22が回動してエネルギ吸収部材21をけがき線21dに沿って連続して切り裂くようになる。このエネルギ吸収部材21の切裂きにより、シートベルト3にかかる荷重として制限されたEA荷重が発生し、衝撃エネルギが吸収される。
【0042】
ロッキングベース14の回転ロック後、スプール4がロッキングベース14に対してほぼ1回転すると、エネルギ吸収部材21がけがき線21dのすべてにおいて切り裂けると、エネルギ吸収部材21の切裂きによる衝撃エネルギ吸収が消滅し、衝撃エネルギ吸収は、トーションバー7のねじり変形による衝撃エネルギ吸収のみとなり、EA荷重はトーションバー7のねじり変形によるのみのものとなる。
【0043】
そして、前述のように相対回転ロック部材15が軸方向右方へ移動しなくなると、この相対回転ロック部材15の相対回転がロックされ、スプール4もロッキングベース14に対して相対回転しなくなる、つまりスプール4のベルト引き出し方向の回転がロックされ、シートベルト3は引き出されなくなり、乗員はシートベルト3によって慣性移動が阻止されて保護される。
【0044】
このようにして、この例のシートベルトリトラクタ1によれば、図2に実線で示すようにロッキングベース14の回転ロック後、最初、トーションバー7のねじれ変形によるシートベルト3のEA荷重とエネルギ吸収部材21の切り裂きによるシートベルト3のEA荷重とを合わせることで比較的大きなEA荷重が得られ、次いで、トーションバー7のねじれ変形によるシートベルト3のEA荷重のみの比較的小さなEA荷重が得られるようになる。これにより、シートベルト3のEA荷重を2段階特性に設定でき、乗員の衝撃エネルギをより効果的にかつより適切に吸収できるようになる。
【0045】
その場合、エネルギ吸収部材21を単純形状の環状円板から構成するとともにけがき線21dを形成し、エネルギ吸収部材21の切り裂きをこのけがき線21dに沿って連続して一定に行うことができるので、エネルギ吸収部材21のエネルギ吸収効果がより安定したものにできる。特に、エネルギ吸収部材21を実質的に一定幅(エネルギ吸収部材21の径とけがき線21dの径との差)で切り裂くようになるので、エネルギ吸収効果が更に安定したものにできる。
【0046】
また、エネルギ吸収部材21が環状円板の単純形状であり、しかもこのエネルギ吸収部材21を軸方向に組み付けるだけであるから、エネルギ吸収部材21のロッキングベース14への組み付けおよびエネルギ吸収部材21が組み付けられたロッキングベース14のスプール4への組み付けが容易となる。したがって、エネルギ吸収機構20を簡単な構成で安価に形成できる。
更に、エネルギ吸収部材21がスプール4の軸方向に切り裂かれることから、径方向の寸法が大きくなることを阻止できる。
この第1例のシートベルトリトラクタ1の他の構成および他の作用効果は前述の図8に示す従来のシートベルトリトラクタ1と同じである。
【0047】
図3は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の第2例におけるエネルギ吸収部材および突起を模式的に示す図である。
前述の図1(b)で示す第1例では、エネルギ吸収部材21によるエネルギ吸収動作時、切り裂き用突起22によりエネルギ吸収部材21をロッキングベース14の軸方向に切り裂くようにしているが、図3に示すようにこの第2例では、エネルギ吸収部材21によるエネルギ吸収動作時、スプール4とともにシートベルト引出し方向に回動する切り裂き用突起22により環状円板からなエネルギ吸収部材21をその径方向(つまり、スプール4の径方向)に切り裂くようにしている。
【0048】
その場合、図1(a)に示すスプール4におけるフランジ状部4a外周縁に軸方向に突出して形成された環状突起4bを省略するか、あるいはこの環状突起4bの内周縁とエネルギ吸収部材21の外周縁との間に、エネルギ吸収部材21をその径方向に切り裂き可能にする程度の間隔を設定することで、エネルギ吸収部材21の径方向の切り裂きを容易にすることが好ましい。
また、エネルギ吸収部材21がスプール4の径方向に切り裂かれることから、軸方向の寸法が大きくなることを阻止できる。
この第2例のシートベルトリトラクタ1の他の構成および作用効果は前述の第1例と実質的に同じである。
【0049】
図4は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の第3例を示す、図1と同様の断面図である。
前述の第1例では、スプール4とロッキングベース14との相対回転をロックする相対回転ロック部材15が設けられているが、この第3例のシートベルトリトラクタ1は、この相対回転ロック部材15を備えていない。
したがって、この第3例のシートベルトリトラクタ1では、ロッキングベース14に対するスプール4の相対回転は、シートベルト3の引出し力によるスプール4を相対回転させる回転トルクが抵抗となるトーションバー7のねじりトルクと等しくなったときに停止するようになっている。
【0050】
この第3例のシートベルトリトラクタ1によれば、相対回転ロック部材15が設けられないので、部品点数が削減できるとともに、リトラクタ1の構造が前述の各例に比べて簡単になる。
この第3例のシートベルトリトラクタ1の他の構成および作用効果は前述の第1例と実質的に同じである。
【0051】
図5は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の第4例を示す、図1と同様の断面図である。
前述の第3例では、トーションバー7が設けられているが、この第4例のシートベルトリトラクタ1は、このトーションバー7を備えていない。すなわち、前述のトーションバー7に代えて、フレーム2に回転可能に支持された回転軸23が設けられている。この回転軸23には、スプール4と回転軸23との間でトルク伝達を可能にする前述の第2トルク伝達部18が形成されている。したがって、スプール4と回転軸23とは前述のブッシュ12を介して回転方向に連結され、互いに一体的に回転するようになっている。
【0052】
一方、回転軸23には、ロッキングベース14と回転軸23との間でトルク伝達を可能にする前述の第1トルク伝達部17が形成されていなく、ロッキングベース14は回転軸23に相対回転自在に支持されている。そして、スプール4とロッキングベース14との間では、環状円板からなるエネルギ吸収部材21を介して回転トルクが伝達されるようになっている。
【0053】
この第4例のシートベルトリトラクタ1によれば、前述の各例と同様にエネルギ吸収部材21の切り裂きによりエネルギが吸収されて、トーションバーによるEA荷重が発生するが、トーションバーによるエネルギ吸収はなく、トーションバーによるEA荷重は発生しない。
また、単なる回転軸23を用いるだけでトーションバーを用いていないばかりでなく、第1トルク伝達部17が形成されていないので、前述の各例のリトラクタに比べて安価になる。
この第4例のシートベルトリトラクタ1の他の構成および作用効果は前述の第3例と実質的に同じである。
【0054】
なお、前述の各例では、切り裂き用突起22をスプール4に設けるとともに、エネルギ吸収部材21をロッキングベース14に設けているが、逆に、切り裂き用突起22をロッキングベース14に設けるとともに、エネルギ吸収部材21をスプール4に設けることもできる。
【0055】
また、前述の各例では、いずれも、切り裂き用突起22によりエネルギ吸収部材21をそのけがき線21dに沿って切り裂くようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、エネルギ吸収部材21を、例えば比較的靱性のある金属あるいはゴムや樹脂等の弾性体で形成して、図6に示すようにスプール4とロッキングベース14との相対回転時に、切り裂き用突起22と同様の突起(本発明の変形手段に相当)22′でこのエネルギ吸収部材21を切り裂かずに伸び変形させることで、EA荷重を発生させて衝撃エネルギを吸収することもできる。図6に示すエネルギ吸収部材21では、前述の例の環状のけがき線21dと対応する環状の薄肉部21d′を設けて、エネルギ吸収部材21を伸び変形し易くしている。その場合、薄肉部21d′の厚みを適宜設定することで、発生するEA荷重の大きさを調整することができる。また、この薄肉部21d′は必ずしも設ける必要はなく、省略することもできる。図6に示す例のエネルギ吸収部材21の取付およびこの例のシートベルトリトラクタ1の他の構成は前述の各例と同じである。この例の作用効果は前述の各例と実質的に同じである。
【0056】
更に、エネルギ吸収部材21は必ずしも環状円板に形成されることはなく、板状でありさえすればよい。しかし、エネルギ吸収効果を安定して得るためには、前述の実施例のように環状円板で形成することが好ましい。
更に、エネルギ吸収部材21に形成されるけがき線21dも必ずしも設ける必要はない。しかし、エネルギ吸収効果を安定して得るためには、前述の実施例のようにけがき線21dを設けることが好ましい。
【0057】
図7は、本発明の実施の形態の第5例を示し、(a)は図1(a)と同様の断面図、(b)は(a)におけるVII−VII線に沿う断面図である。
図7に示すようにこの第5例シートベルトリトラクタ1にも、薄肉環状円板からなるエネルギ吸収部材21が用いられている。このエネルギ吸収部材21は、その組付状態でスプール4の軸方向に貫通するほぼ環状の一定幅の孔21fが形成されている。その場合、この環状の孔21fはスプール4の回転軸と同心またはほぼ同心に形成されているとともに、その終端でエネルギ吸収部材21の外周に開放されている。また、ロッキングベース14には、係合凹部21b,21cに対応してそれぞれ2つの係合凸部14d(他の1つ図示省略)が形成されている。そして、エネルギ吸収部材21は、係合凹部21b,21cが対応する係合凸部14dに軸方向に嵌合することで、ロッキングベース14と一体回転するように組み付けられる。
【0058】
一方、スプール4の右側フランジ部4aには、長溝4aが径方向に対してスプール4の中心側から外周側に向かってシートベルト引出方向の下流側に延びるように形成されている。その場合、長溝4aの中心側端は、スプール4にロッキングベース14とエネルギ吸収部材21とが組み付けられた状態でエネルギ吸収部材21の孔21fの始端に位置するように設定されている。
この長溝4aには、円柱状の拡開ピン24が軸方向に突出しかつ長溝4aに沿って摺動可能に設けられている。この拡開ピン24は本発明の変形手段を構成している。図示しないが、拡開ピン24の長溝4aへの取付構造は、突出ピンを長溝に摺動可能に設ける従来の任意の構造を用いることができる。孔21fの幅tは拡開ピン24の直径dより若干小さく設定されている。
【0059】
この第5例のシートベルトリトラクタ1では、緊急時にスプール4がロッキングベース14に対してシートベルト引出方向に相対回転すると、拡開ピン24が孔21fに沿ってその開放端に向けて、その直径より小さな幅tの孔21fを拡開してエネルギ吸収部材21を変形しながら移動する。このとき、拡開ピン24は孔21を拡開することによる摺動抵抗でEA荷重を発生する。しかも、スプール4がロッキングベース14に対してシートベルト引出方向に相対回転することに伴って、拡開ピン24が長溝4aの外周側端に向かって(スプール4の回転中心から離れる方向に)移動するようになるので、エネルギ吸収部材21の孔21fより外周側部分21dは、孔21fの幅tが次第に大きくなるように外方に向けて変形される。このように、外周側部分21dが次第に大きくなるように外方に向けて変形することで、拡開ピン24の摺動抵抗が大きくなり、その結果EA荷重も次第に大きくなる。
この第5例では、エネルギ吸収部材21と拡開ピン24とを用いているだけであるので、シートベルトリトラクタ1の軸方向の寸法をコンパクトにできる。
この第5例の他の構成および他の作用効果は前述の第1例と同じである。
【0060】
なお、エネルギ吸収部材21はスプール4側に、また拡開ピン24はロッキングベース14側に設けることもできる。
また、前述の各例では、プリテンショナー11を一体的に設けたシートベルトリトラクタ1に適用しているが、プリテンショナー11が設けられないシートベルトリトラクタ1にも適用できる。その場合には、ブッシュ12は省略され、スプール4と第2トルク伝達部18とが直接回転方向に連結される。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1ないし5の発明にかかるシートベルトリトラクタによれば、エネルギ吸収部材を単純な板状に形成しているので、こ板状のエネルギ吸収部材を軸方向に簡単に組み付けることができる。そして、ロッキング部材に対するスプールのシートベルト引出し方向の相対回転時、変形手段がエネルギ吸収部材に対して相対回転することでこのエネルギ吸収部材を変形することで、シートベルトにかかる荷重を制限して衝撃エネルギを吸収できる。このように、本発明のエネルギ吸収機構により乗員の衝撃エネルギをより効果的に吸収できつつ、エネルギ吸収機構を簡単な構成で安価に形成できようになる。
【0062】
特に、請求項2の発明によれば、切り裂き手段によりエネルギ吸収部材を切り裂くようにしているので、シートベルトにかかる荷重が制限される。これにより、乗員の衝撃エネルギを更に一層効果的に吸収できる。
また、請求項3の発明によれば、エネルギ吸収部材を環状円板で構成しかつけがき線を形成しているので、切り裂き手段によるエネルギ吸収部材の切り裂きをけがき線に沿って連続して一定に行うことができる。したがって、エネルギ吸収部材のエネルギ吸収効果をより安定したものにでき、乗員の衝撃エネルギを可能な限りより効果的にかつより適切に吸収できるようになる。
【0063】
更に、請求項4の発明によれば、エネルギ吸収部材をスプールの軸方向に切り裂くようにしているので、径方向の寸法の増大を阻止できる。
更に、請求項5の発明によれば、エネルギ吸収部材をスプールの径方向に切り裂くようにしているので、軸方向の寸法の増大を阻止できる。
【0064】
更に、請求項6の発明によれば、拡開ピンによりエネルギ吸収部材の環状の孔を拡開してエネルギ吸収部材を変形させているので、シートベルトにかかる荷重が制限される。これにより、乗員の衝撃エネルギを更に一層効果的に吸収することができる。しかも、エネルギ吸収部材と拡開ピンとを用いているだけであるので、シートベルトリトラクタの軸方向の寸法をコンパクトにできる。
更に、請求項7の発明によれば、拡開ピンが回転中心から離れる方向に移動するようにしているので、拡開ピンによるエネルギ吸収部材の変形を強制的に行うことができるようになる。これにより、乗員の衝撃エネルギを更に一層効果的に吸収できる。
【0065】
更に、請求項8の発明によれば、トーションバーのねじれ変形によるシートベルトのEA荷重とエネルギ吸収部材の切り裂きによるシートベルトのEA荷重とで、シートベルトのEA荷重を2段階特性とすることができる。そして、このEA荷重の2段階特性を有効に利用することにより、制限荷重を柔軟に種々調整できるようになる。これにより、乗員の衝撃エネルギをより効果的にかつより適切に吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の第1例を模式的にかつ部分的に示し、(a)はその断面図、(b)は(a)に示す第1例のシートベルトリトラクタに用いられているエネルギ吸収部材および切り裂き用突起を模式的に示す斜視図である。
【図2】EA荷重を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の第2例のエネルギ吸収部材および切り裂き用突起を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態の第3例を模式的にかつ部分的に示す、図1と同様の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の第4例を模式的にかつ部分的に示す、図1と同様の断面図である。
【図6】本発明の変形例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の第5例を示し、(a)は図1(a)と同様の断面図、(b)は(a)におけるVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】従来のトーションバーを備えたシートベルトリトラクタの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…シートベルトリトラクタ、2…フレーム、3…シートベルト、4…スプール、5…減速度感知機構、6…ロック機構、7…トーションバー、8…スプリング手段、14…ロッキングベース、20…エネルギ吸収機構、21…エネルギ吸収部材、21d…けがき線、21f…孔、22…切り裂き用突起、24…拡開ピン

Claims (8)

  1. シートベルトを巻き取るスプールと、通常時前記シートベルトと一体的に回転しかつ緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されるロッキング部材を有するロック機構と、前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられ、緊急時に前記スプールが前記ロッキング部材に対してシートベルト引出方向に相対回転するとき、乗員の衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収機構とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、
    前記エネルギ吸収機構は、前記スプールおよび前記ロッキング部材のいずれか一方に設けられた板状のエネルギ吸収部材と、前記スプールおよび前記ロッキング部材のいずれか他方に設けられた、前記エネルギ吸収部材を変形するための変形手段とからなり、
    緊急時に前記ロッキング部材に対して前記スプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、前記変形手段が前記エネルギ吸収部材に対して相対回転して前記エネルギ吸収部材を変形することで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  2. 前記変形手段は前記エネルギ吸収部材を切り裂き変形するための切り裂き手段であり、
    緊急時に前記ロッキング部材に対して前記スプールがシートベルト引出し方向に相対回転するとき、前記切り裂き手段が前記エネルギ吸収部材を切り裂くことで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタ。
  3. 前記エネルギ吸収部材が環状円板で構成されているとともにこのエネルギ吸収部材にけがき線が形成されており、緊急時に前記エネルギ吸収部材がこのけがき線に沿って切り裂かれることを特徴とする請求項2記載のシートベルトリトラクタ。
  4. 前記エネルギ吸収部材は前記スプールの軸方向に切り裂かれることを特徴とする請求項3記載のシートベルトリトラクタ。
  5. 前記エネルギ吸収部材は前記スプールの径方向に切り裂かれることを特徴とする請求項3記載のシートベルトリトラクタ。
  6. 前記エネルギ吸収部材が環状円板で構成されているとともにこのエネルギ吸収部材に所定幅の環状の孔が形成されており、
    前記変形手段は前記環状の孔を拡開する拡開ピンであり、
    緊急時における前記スプールの前記相対回転時に、前記拡開ピンにより前記環状の孔が拡開されて前記エネルギ吸収部材が変形されることで、前記シートベルトにかかる荷重を制限して前記衝撃エネルギを吸収することを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタ。
  7. 前記拡開ピンは径方向に移動可能に設けられており、この拡開ピンが緊急時における前記スプールの前記相対回転に伴って回転中心から離れる方向に移動することで、前記エネルギ吸収部材の前記環状の孔より外周側部分が外方に向けて変形するようになっていることを特徴とする請求項7記載のシートベルトリトラクタ。
  8. 前記スプールと前記ロッキング部材とが、これらの相対回転時にねじり変形するトーションバーで回転方向に連結されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1記載のシートベルトリトラクタ。
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