JP2004249867A - 自動2輪車の構造 - Google Patents

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Abstract

【目的】前輪の分担荷重を大きくし、車体剛性を下げて車体重量を軽減し、かつリヤスイングアームを長くしてトラクションを良好にする。
【構成】前輪1及び後輪2の間にエンジン3を配置し、そのシリンダ28を後傾させ、その前面に上方へ突出する吸気ポートへ吸気系部品である吸気ボックス24等を接続してダウンドラフトで吸気し、後面の排気ポートから排気管12を後方へ延出させる。これによりエンジン3を前輪1へ近接配置し、前輪の分担荷重を大きくする。またエンジン3が前方へ移る分だけ、同じ長さのホイールベースの場合はその分リヤスイングアーム16が長くなる。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は自動2輪車の構造、特にエンジンを前方配置可能にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4に示す自動2輪車は、前輪101と後輪102の間にエンジン103を配置し、そのシリンダ104を前傾させ、シリンダ104の後方に吸気ポート105を設けて後方から吸気し、シリンダ104の前方から排気管106を前方へ延出している。符号108は車体フレーム、109は車体フレームの後端に設けられてリヤスイングアーム110を揺動自在に連結するピボット点、111はリヤクッションである。また、符号112は前輪車軸、113はクランク軸、114は後輪車軸である。
【0003】
図5に示す自動2輪車は、特許文献1に示されたものの略図であり、この自動2輪車も前傾シリンダ104を備えるが、シリンダ104の後部から排気管106を後方へ延出し、かつクランクケース114の前方に気化器107を配置し、シリンダ104の下方かつエンジン103の前方から吸気する形式になっている。なお、吸気系部品としての気化器107と冷却系部品116の各後方かつエンジン103の前方となる空間を通って上下に延び、下端で気化器107と接続するエアタンク117及びその上端に接続するエアクリーナ118が車体フレーム108の内側に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特許第2771213号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
車体を構成する部品で最も重量のあるエンジンは車体の重心近傍へ配置することが一般的である。しかし、スポーツ系の大排気量車両などでは、できるだけ前輪へ近接させて前輪の分担荷重を大きくすることが求められる場合がある。
【0006】
また、車体を軽量化するために車体の剛性を所定レベルを維持しつつできるだけ下げることが求められ、このためには、ヘッドパイプとピボット点間の距離を短くすることが望まれる。さらには、リヤスイングアームを十分に長くしてトラクションを良好にすることも望まれる。しかしこれらの要請を一定のホイールベースの中でレイアウトしようとすれば多くの制約がある。
【0007】
図4及び5の従来例において、ホイールベースをa、前輪車軸112とピボット点109間の距離をb、ピボット点109と後輪車軸114間の距離をc、前輪車軸112とクランク軸113間の距離をd、クランク軸113とピボット点109間の距離をe、前輪101の後端とクランク軸113間の距離をfとすれば、
図4の例では、排気管106が前方へ延出するため、エンジン103を前輪101へ接近させることができないので、b:c≒3:2程度であり、ピボット点109はホイールベースの中間より後方側となる。このためリヤスイングアーム110が比較的短くなる。また、d:e≒7:3, f:e≒1:1となり、エンジン103を前輪101へあまり接近させることができない。
【0008】
一方、図5では、排気管106をシリンダ104の後方から延出させているが、エンジン103の前方へ気化器107及びエアタンク117等の吸気系部品を配置しているため、やはりエンジン103を前輪101へあまり接近させることができず、
b:c≒3:2, d:e≒2:1, f:e≒1:1 である。
そこで本願発明は、これら従来例よりもさらにエンジンを前輪へ接近させて、前記各要請の実現を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明に係る請求項1は、前後輪間にエンジンを配置し、シリンダの前後へ吸気系部品及び排気系部品をそれぞれ接続した自動2輪車において、前記シリンダを後傾させ、かつ吸気ポートを前面に設けることにより、シリンダの前上方に配置した吸気系部品から吸気するとともに、シリンダの後面に設けた排気ポートから排気管を後方へ延出配管したことを特徴とする。
【0010】
請求項2は上記請求項1において、前記吸気系部品を前記シリンダ前面上方かつクランク軸の上方に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項3は上記請求項1において、前記シリンダ前方に冷却系部品を配置し、この冷却系部品とシリンダの間に形成される側面視略V字形の空間上方に前記吸気系部品を配置するとともにこの空間内に前記吸気ポートを配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項4は上記請求項1において、後輪を支持するリヤスイングアームのピボット点が、ホイールベースの中間点より前方側に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項5は上記請求項4において、前輪後端とクランク軸間の距離がクランク軸と前記ピボット点間の距離より小さいことを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
請求項1によれば、シリンダを後傾させ、その前面から吸気し、かつ後面から吸気ポートを後方へ延出させたので、シリンダ及びクランクケース前方に大きなスペースが形成される。そこでエンジンを前輪へ可及的に接近させることが可能となり、その結果、前輪分担荷重を増大させ、その分だけピボット点を前方へ移すことができるので、ヘッドパイプとピボット点間の距離を短くして車体剛性を下げて全体の車体重量を軽減でき、かつリヤスイングアームを長くしてトラクションを良好とすることができる。
【0015】
請求項2によれば、シリンダを後傾させた状態でその前面上方かつクランク軸の上方に吸気系部品を位置させたので、シリンダの前面へダウンドラフトで吸気することができ、しかも吸気通路を最短にできるので、吸気効率を向上させることができる。
【0016】
請求項3によれば、シリンダ前方に冷却系部品を配置するとともにエンジンを前方へ配置しても、シリンダが後傾しているため、シリンダと冷却系部品が干渉しない。また冷却系部品とシリンダ間の側面視略V字状空間上方に大きな吸気系部品を配置し、かつこの空間を利用して吸気ポートを配置できる。したがって、エンジンを前方配置するにもかかわらず、冷却系部品及び吸気系部品とシリンダをコンパクトに集中配置できる。
【0017】
請求項4によれば、ピボット点がホイールベースの中間点よりも前方に位置するので、同じ長さのホイールベースの場合にはそれだけリヤスイングアームを長くすることができ、トラクションを良好にできる。
【0018】
請求項5によれば、前輪後端からクランク軸までの距離をクランク軸からピボット点の距離よりも小さくなるようにしたので、エンジンを可及的に前輪へ近接配置することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は全体の側面図、図2は車体フレーム及びエンジン等の内部構造を見せた側面図、図3は図2の要部を拡大した図である。これらの図において、この実施形態に係る自動2輪車は、前輪1と後輪2間に4サイクル直列4気筒式のエンジン3を配置した、スポーツ系の大排気量バイクである。
【0020】
前輪1は前輪車軸4でフロントフォーク5の下端へ支持され、フロントフォーク5の上部はヘッドパイプ6へ回動自在に連結され、ハンドル7により操向自在となっている。ヘッドパイプ6は車体フレーム8の前端に設けられ、車体フレーム8の上には燃料タンク9が支持され、下方にはエンジン3が支持される。また、燃料タンク9の後方には、車体フレーム8の後部から斜め上がりに後方へ延びるリヤカウル10が設けられ、その上にシート11が取付けられている。
【0021】
リヤカウル10内には前後方向へ延びる排気管12及びその後端に接続するマフラー13が配管されている。車体フレーム8の後部に形成されたピボットフレーム14にはピボット点15においてリヤスイングアーム16の前端が揺動自在に支持される。リヤスイングアーム16の後端は後輪車軸17により後輪2を回転自在に支持する。
【0022】
車体前部はフロントカウル18により覆われ、フロントカウル18はヘッドパイプ6及びエンジン3の各前方から車体フレーム8及びエンジン3を含む車体の左右側部を覆っている。19は吸気ダクトであり、車体の左右へ一対で設けられている。20は一本だけで設けられる排気冷却ダクトであり、フロントカウル18の前面上部から走行風を取り込み、燃料タンク9の上を通ってその後部を上から下へ貫通し、リヤカウル10内へ開口することにより、排気管12を冷却する。21は走行風取入口であり、リヤカウル10の前部側面左右に設けられる。
【0023】
図2及び図3に示すように、車体フレーム8はエンジン3の上方を斜め下がりに前後方向へ通るメインフレーム22とその後端部に接続して下方へ延びるピボットフレーム14を備える。また、メインフレーム22の後端部には側面視略3角形状をなすタンクフレーム23がメインフレーム22から上方へ凸に設けられ、その上に燃料タンク9の後部が支持されるようになっている。
【0024】
メインフレーム22及びタンクフレーム23は金属製の角パイプ部材からなる。ピボットフレーム14は金属製の鋳造板状部材である。これらはそれぞれ左右一対で設けられ、タンクフレーム23は上部パイプ23aが後端で左右と連結し、メインフレーム22及びピボットフレーム14の左右間はクロスパイプ14a,14b(図3)等で連結されている。
【0025】
メインフレーム22の左右前部間でかつヘッドパイプ6の後方部分には吸気ボックス24が燃料タンク9の前部底面側へ上方へ凹入して形成された凹部25内へ収容された状態で配置されている。吸気ボックス24は左右の吸気ダクト19と連通し、かつ内部に設けられている電子燃料噴射装置26に対して走行風圧をかけて吸気するようになっている。
【0026】
電子燃料噴射装置26が接続する吸気ポート27は、後傾するシリンダ28の前面斜面から略直上へ延出し、ダウンドラフト形式の吸気を行うようになっている。シリンダ28は並列4気筒であって、車幅方向へ4コ並んでいる。電子燃料噴射装置26及び吸気ポート27もそれぞれのシリンダ28毎に車幅方向へ4コ並んで設けられる。電子燃料噴射装置26には燃料タンク9の底面下方から燃料タンク9内に設けられた燃料ポンプ29によって燃料が供給される。
【0027】
シリンダ28はその軸線Cが図示の側面視で後方へ斜め上がりとなった、いわゆる後傾状態であり、その軸線Cの下方延長上にクランク軸30が位置する。クランク軸30の位置はクランクケース31の前端部近傍にあり、シリンダ28の下端部よりも前方となり、かつそのクランク軸30を通る垂直線上に吸気ボックス24が位置する。また、図3に示す車体の側面視において、クランクケース31の前端部と吸気ボックス24の前端部はほぼ同じ前後方向位置にあり、吸気ボックス24はほぼ最前方位置に配置されている。
【0028】
シリンダ28の前方には冷却系部品であるラジエータ32が後方斜め下がりにメインフレーム22のヘッドパイプ6近傍から吊り下げ支持され、その下端はシリンダ28の下端部近傍となるクランクケース31の前端上部へ支持されている。ラジエータ32とシリンダ28の間には側面視で略V字状をなす空間33が形成され、この空間33の上方に吸気ボックス24が位置し、吸気ポート27はこの空間33内をシリンダ28の前面から上方へ延び、電子燃料噴射装置26に接続している。
【0029】
シリンダ28の後面に設けられた排気ポート34には排気管12の前端が接続される。ここからリヤカウル10内を後方へ斜め上がりに延出している。排気管12の前部は各シリンダ毎に4本であり、途中で2本に集合し、さらにその後方で一本に集合し、後端部で再び左右2本に分離して、左右一対のマフラー13でそれぞれ接続する4−2−1−2集合形式になっている。左右の各マフラー13の後端部はリヤカウル10の後端部に設けられた開口より後方へ突出している。
【0030】
排気ポート34下方のエンジン後部には出力スプロケット35が設けられ、チェーン36を介して後輪スプロケット37(図2)を駆動するようになっている。エンジン3はクランクケース31の前側上端部でメインフレーム22の下部から下方へ延出するステー22aと連結点22bで取付けられ、クランクケース31の後方下部から延出するステー38でピボットフレーム14の下端と連結点39で取付けられている。
【0031】
リヤスイングアーム16は側面視略台形状をなす比較的長いものであり、金属材料の鋳造等により製造される。その前部は左右2股上の腕部40をなし、ここでピボット点15によりピボットフレーム14の上下方向略中央かつ前端部へ揺動自在に連結される。この左右の腕部40間にリヤクッション41が前傾して上下方向に配置され、その上端部は左右の腕部40間に掛け渡されたブリッジ42によって支持されている。
【0032】
リヤクッション41の下部は左右のピボットフレーム14の各下部間を連結するクロスパイプ14bから後方へ延びるステー43へ軸着された略三角形状の第1リンク44及びこれと連結するアーム状の第2リンク45を介してリヤスイングアーム16へ連結されている。
【0033】
符号46は略3角形状をなしてリヤスイングアーム16の前部左右両側を覆うように後方へ延びるステップブラケットであり、その前端部は上下2点46a,46bでピボットフレーム14の後端上下へ結合されている。また、後端部にはステップ46cが取付けられている。さらにステップブラケット46の上部にはステー47が上方へ突出形成され、ここにタンクフレーム23における下辺23b側の下端部及びリヤカウル10の前端下部がそれぞれ取付けられている。
【0034】
ム14の下端部に吊り下げ支持され、車体重心の低重心化及びマスの集中を図っている。符号49はオイルフィルターであり、クランクケース31の底部前側位置から下方へ突出している。
【0035】
次に、再び図1において主要部の寸法関係を説明する。まず各部の寸法を図4及び図5と同様に表現すれば、前輪車軸4と後輪車軸17間の距離がホイールベースaであり、b:c≒4:6, d:e≒6:4, f:e≒3:7となっている。すなわち、エンジン3は前輪1へ可及的に近接し、かつピボット点15がホイールベースの中間点よりも前方へ位置しているから、ホイールベースaが一定であればリヤスイングアーム16を比較的長くすることができる。
【0036】
なお、これらの寸法比率は一例であって、後傾シリンダ及び前方吸気・後方排気という上記基本的レイアウトを維持する限り自由に設定できる。したがって、エンジン3のレイアウトにおける自由度が高くなる。但しエンジンの形式も後傾シリンダを採用したものであれば特に限定されない。
【0037】
次に、本実施形態の作用を説明する。まずシリンダ28を後傾させ、その前面から吸気し、かつ後面から排気管12を後方へ延出させたので、シリンダ28及びクランクケース31の前方に大きなスペースが形成される。そこでエンジン3を前輪1へ可及的に接近させることが可能となり、その結果、前輪分担荷重を増大させることができる。またその分だけピボット点15を前方へ移すことができるので、ヘッドパイプ6とピボット点15間の距離(bが近似する)を短くし、所定レベルを維持した状態で可能な限り車体剛性を下げることができる。このため全体の車体重量を軽減でき、かつリヤスイングアーム16を長くしてトラクションを良好とすることができる。
【0038】
また、シリンダ28を後傾させた状態でその前面上方かつクランク軸30の上方に吸気系部品である吸気ボックス24を位置させたので、シリンダ28の前面へダウンドラフトで吸気することができ、しかも吸気通路を最短にできるので、吸気効率を向上させることができる。
【0039】
さらに、シリンダ28の前方に冷却系部品であるラジエタ32を配置するとともにエンジン6を前方へ配置しても、シリンダ28が後傾しているため、シリンダ28とラジエタ32が干渉しない。またラジエタ32とシリンダ28間の側面視略V字状空間33が形成され、その上方に大きな吸気ボックス24を配置し、かつこの空間33を利用して吸気ポート27を配置できる。したがって、エンジン3を前方配置するにもかかわらず、ラジエタ32(冷却系部品)及び吸気ボックス24(吸気系部品)とシリンダ28をコンパクトに集中配置できる。
【0040】
また、ピボット点15がホイールベースa(図1)の中間点よりも前方に位置するので、同じ長さのホイールベースaの場合にはそれだけリヤスイングアーム16を長くすることができ、トラクションを良好にできる。
【0041】
そのうえ、前輪1の後端からクランク軸30までの距離fをクランク軸30からピボット点15の距離eよりも小さくなるようにしたので、エンジン3を可及的に前輪1へ近接配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る自動2輪車の全体側面図
【図2】車体フレーム及びエンジン等の内部構造を見せた側面図
【図3】図2の要部を拡大した図
【図4】従来例の側面図
【図5】他の従来例の側面図
【符号の説明】1:前輪、2:後輪、3:エンジン、4:前輪車軸、8:車体フレーム、9:燃料タンク、12:排気管、14:ピボットフレーム、15:ピボット点、16:リヤスイングアーム、22:メインフレーム、23:タンクフレーム、24:吸気ボックス、25:凹部、26:電子燃料噴射装置、27:吸気ポート、28:シリンダ、34:排気ポート

Claims (5)

  1. 前後輪間にエンジンを配置し、シリンダの前後へ吸気系部品及び排気系部品をそれぞれ接続した自動2輪車において、
    前記シリンダを後傾させ、かつ吸気ポートを前面に設けることにより、シリンダの前上方に配置した吸気系部品から吸気するとともに、シリンダの後面に設けた排気ポートから排気管を後方へ延出配管したことを特徴とする自動2輪車の構造。
  2. 前記吸気系部品を前記シリンダ前面上方かつクランク軸の上方に配置したことを特徴とする請求項1の自動2輪車の構造。
  3. 前記シリンダ前方に冷却系部品を配置し、この冷却系部品とシリンダの間に形成される側面視略V字形の空間上方に前記吸気系部品を配置するとともにこの空間内に前記吸気ポートを配置したことを特徴とする請求項1の自動2輪車の構造。
  4. 後輪を支持するリヤアームのピボット点が、ホイールベースの中間点より前方側に位置することを特徴とする請求項1の自動2輪車の構造。
  5. 前輪後端とクランク軸間の距離がクランク軸と前記ピボット点間の距離より小さいことを特徴とする請求項4の自動2輪車の構造。
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