JP2004248951A - 吸着材および該吸着材を充填した体外循環用カラム - Google Patents
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Abstract
【課題】一般的に普及可能であり、体液中から、直接、TGFβ、免疫抑制酸性蛋白、PGE2などの免疫抑制物質を高い効率で選択的に吸着し、かつ、安全に体外循環できる免疫抑制物質吸着材を提供し、ひいては癌の治療に役立てる。
【解決手段】ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなり、免疫抑制物質を吸着する吸着材およびこれを充填した体外循環用カラム。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなり、免疫抑制物質を吸着する吸着材およびこれを充填した体外循環用カラム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中に過剰に存在すれば免疫の大幅な低下を招き、癌の形成が促進されるTGFβ、免疫抑制酸性蛋白、PGE2などの免疫抑制物質を除去するための吸着材および体外循環カラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
医学の発達した今日でも、依然として日本人の主な死亡原因の一つが癌である。その原因は患者には手術で取りきれない癌細胞が存在するためであり、その除去のため抗癌剤治療や放射線治療が行われてきた。しかし、これらは正常細胞をも傷害するため患者の生命を維持しつつ癌細胞を完全に除去することができない。一方、最近、患者の免疫力を高めて、患者自身の白血球で癌を排除しようとする細胞療法が盛んに試みられる様になった。最も有望なものとして、患者の樹状細胞を体外で癌抗原刺激した後、患者に戻し、癌特異的キラー細胞(CTL)を誘導して治療しようとする樹状細胞輸注療法がある。しかし、健康な動物の血液からはCTLを誘導できても癌末期の担癌動物からは誘導できないことが多い。また、動物実験では好成績を得ても臨床では目に見えた効果が出ないことが殆どである。この理由として患者の血中には免疫を抑制する物質が存在するためと考えられる。その免疫抑制物質の代表的なものがトランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGFβ)、免疫抑制酸性蛋白、プロスタグランジンーE2(PGE2)である。この物質がCTLの誘導や機能発現を阻害していると考えられる。TGFβは、健康な人の血液中にも存在する蛋白質で免疫作用を調整する重要な物質であるが、癌の進行に伴って異常に増え、癌細胞の増殖を助けていると考えられる。TGFβは単独では分子量25000程度の蛋白質であるが、血中では他の蛋白質と結合して10万前後の分子量で存在するため、従来の吸着材では吸着除去が困難な物質である。従って、癌患者の血液中から異常に増えたTGFβを効率よく除去できる吸着材は知られていない。TGFβの吸着材が特許文献1(特開2001−218840号公報)に開示されているが、除去効率が悪く、機械的強度も十分でない問題がある。また、免疫抑制酸性蛋白は分子量5万程度の蛋白質で、癌の悪性度のマーカーとして臨床で利用されているが、免疫を抑制すると言われている。活性炭カラムでの除去も試みられたが、吸着能力が不十分だったためか治療効果が明確でなかった。また、活性炭は粉が出やすいので、直接、血液と接触する用途には向かない。これら免疫抑制物質の除去には、理論上、血漿交換も有効であるが、感染の危険が避けがたい本質的な欠点がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−218840号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、一般的に普及可能であり、体液中から、直接、TGFβ、免疫抑制酸性蛋白、PGE2などの免疫抑制物質を高い効率で選択的に吸着し、かつ、安全に体外循環できる免疫抑制物質吸着材を提供し、ひいては癌の治療に役立てることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわちポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなることを特徴とする免疫抑制物質吸着材である。
【0006】
また本発明は、上記の吸着材を充填した体外循環カラムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いるポリ(芳香族ビニル化合物)としては、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、クロルメチルスチレンなどのホモ重合体もしくはこれらの2種以上の共重合体またはこれらのブレンド体が好ましい。
【0009】
補強用ポリマとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリαーオレフィン等のホモ重合体、またはこれらの共重合体、ブレンド体が好ましく用いられる。そのなかでも耐薬品性にすぐれたポリαーオレフィンが最も好ましく用いられる。ポリαーオレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリー3−メチルブテンー1、ポリー4−メチルペンテンー1などが好ましく用いられる。
【0010】
本発明においては、水不溶性繊維としては少なくとも前記ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマから構成されるが、水に不溶で、親水性アミンを固定化できるものであれば良く、特に限定されない。具体的には水不溶性繊維として、ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる混合繊維、複合繊維をあげることができるが、特に免疫抑制物質の吸着性能から、ポリ(芳香族ビニル化合物)を海成分、補強用ポリマを島成分とする海島型複合繊維望ましい。島の個数にとくに限定はされないが、製造面から1〜100個が好ましい。さらに、海成分についてはポリ(芳香族ビニル化合物)以外に、前記補強用ポリマとのブレンド体であつてもよい。この場合、補強用ポリマのブレンド比が大きくなるほど耐剥離性に優れた繊維が得られるが、逆に免疫抑制物質の吸着性が低下するため、ブレンド比は50%未満、特に5〜30%程度が好ましい。
【0011】
繊維の直径は通常0.1〜100μm程度であるが、細すぎると糸強力が小さくなり、取り扱いが難しい欠点を生じ、太すぎると免疫抑制物質の吸着性が低下するため特に1〜50μmが望ましい。
【0012】
また、繊維の2次形態には限定がなく、フィラメント糸、パンチフェルト、織物、編み物、不織布、繊維束、詰め綿、短繊維、中空糸等種種の形態で用いることができる。
【0013】
水不溶性繊維におけるポリ(芳香族ビニル化合物)の割合は通常20%以上であるが、割合が低すぎると免疫抑制物質の吸着量が低下するため、30%以上が好ましく、特に50%以上が最も好ましい。一方、補強用ポリマの割合は通常20%以上であるが、割合が低すぎると機械的強度が低下するため、30%以上が好ましい。
【0014】
本発明において、親水性アミン残基はポリ(芳香族ビニル化合物)に固定化する。親水性アミン残基を固定化するためのポリ(芳香族ビニル化合物)の反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などをあげることができるが、とりわけ、活性ハロゲン基、中でも、ハロアセチル基は、製造が容易な上に、反応性が適度に高く、親水性アミンの固定化反応が温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので好ましい。さらに具体的な例としては、クロルアセトアミドメチルポリスチレン、クロルメチルスチレンなどがあげられる。
【0015】
本発明で言う親水性アミン残基とは、単独では水に溶解もしくは水を溶解するアミン、すなわち親水性アミンがポリマーに化学的に結合した状態のものを意味する。親水性アミンとしては、炭素数で言うと、窒素原子1個当たり炭素数18以下であるものが好ましい。
【0016】
本発明においては、親水性アミンの中でも、窒素原子1個当たり炭素数3以上18以下、とりわけ、4以上14以下のアルキル基を持つ第3級アミンから得られる第4アンモニウム基を結合したものが好ましい。そのような第3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N、N−ジメチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミンなどがあげられる。さらに、親水性アミンを構成するアルキル基が親水性基である水酸基やエーテル基を含むもの、例えば、N,N−ジメチル−6−ヒドロキシヘキシルアミンやN,N−ジメチル−4−メトキシブチルアミン等も親水性アミンとして好ましく用いうる。
【0017】
本発明において、固定化した親水性アミン残基の結合の密度は、少なすぎるとその機能が発現しない傾向にあり、一方、多すぎると、固定化後の重合体の物理的強度が悪くなり、吸着材としての機能も下がる傾向にあるので、該密度はポリ(芳香族ビニル化合物)の繰り返し単位あたり0.01〜2.0モル、より好ましくは0.1〜1.0モルが良い。密度はアニオン交換容量もしくは収量などを測定することによって算出することができる。
【0018】
本発明における水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなり、免疫抑制物質を吸着することを特徴とする吸着材は、例えば公知の方法によつて紡糸、延伸した前記複合繊維のポリ(芳香族ビニル化合物)にクロルアセトアミドメチル基を導入した後、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,Nージメチルホルムアミド(DMF)などの極性の高い溶媒中で前記親水性アミンと反応させることによつて製造することができる。
【0019】
本発明の免疫抑制物質吸着材は血液中のTGFβ、免疫抑制酸性蛋白,PGE2などの免疫抑制物質の除去の目的で、カラムに充填した状態で、癌等の病気の体外循環治療に用いられる。本発明のカラムの作製は、綿状、筒編み状、フェルト状にした本発明の免疫抑制物質吸着材を、空隙容積が200mL程度以下になるようにして、適度の大きさの円筒形のカラムに詰めることで達成できる。また、本発明吸着材は輸血用血液、血清、血漿からの免疫抑制物質の除去の目的にも用いることができる。
【0020】
【実施例】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
<実施例1〜4、比較例1>
(水不溶性繊維)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3重量%共重合したポリエチレンテレフタレート
複合比率(重量比);芯:鞘:海=27:53:20。
この複合繊維の海成分を熱苛性ソーダ水溶液で溶解し、芯鞘(海島)型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維として、直径4μmの原糸1(ポリスチレンの割合60重量%)を得た。
【0022】
また、16島および複合比率(重量比);芯:鞘:海=24.5:30.5:45にする以外は上記の方法で芯鞘(海島)型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維として、直径4μmの原糸2(ポリスチレの割合50重量%)を得た。
【0023】
また、海成分がポリスチレン、島成分がポリプロピレン、海島比率(重量比)が65:35になるように紡糸速度1200m/分で製糸し16島の海島型複合繊維として、直径30μmの原糸3(ポリスチレンの割合65重量%)を得た。
【0024】
さらに、海成分がポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%、島成分がポリプロピレン、海島比率(重量比)が50:50になるように紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍で製糸し16島の海島型複合繊維として直径20μmの原糸4(ポリスチレンの割合45重量%)を得た。
【0025】
(中間体)
ニトロベンゼン150mLと硫酸98mLの混合溶液にパラホルムアルデヒド0.39gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、27.2gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに10gの上記で調製した原糸1を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取りだし、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールで良く洗った後、真空乾燥して、15.8gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を得た。
【0026】
また、10gの原糸2、10gの原糸3および10gの原糸4を上記と同様に処理して、それぞれ中間体2(収量15.0g)、中間体3(収量17.0)および中間体4(収量14.2g)を得た。
【0027】
(親水性アミンの固定)
N,N−ジメチルヘキシルアミン5gとヨウ化カリウム1gを100mLのDMFに溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。繊維を1モル/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、メタノール洗浄し、真空乾燥して、7.6gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(実施例1)を得た。 また、5gの中間体2、5gの中間体3および5gの中間体4を上記と同様に処理して、実施例2(収量7.4g)、実施例3(収量7.5g)および実施例4(収量7.0g)の繊維を得た。いずれの吸着材も補強用ポリマで補強されているため、優れた機械的強度を示した。収量は重量を測定して求めた。
【0028】
(非親水性アミンの固定)
また、非親水性アミンとして、ステアリルアミン50gを360mLのエタノールに溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。繊維をイソプロパノールで洗浄後、水洗し、真空乾燥して、7.5gのステアリルアミノ化繊維(比較例1)を得た。
【0029】
(吸着能の評価)
10週令のWKAH/Hkmラット(雄)の背部皮下にKDH8細胞(北海道大学提供)2×106個接種して調製した担癌ラットから血液を採取し、血清6mL(TGFβの濃度:29ng/mL)を調製した。その血清1mLに吸着材50mgを入れ、37℃で4時間振とうした。上清中のTGFβ濃度を測定して、吸着率を求めたところ、実施例1が84%、実施例2が73%、実施例3が54%、実施例4が26%および比較例1が0%であった(表1)。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、TGFβ濃度はゼンザイム・テクネ社のヒトTGFβ免疫分析キットを使用して求めた。吸着率の計算は、100×{(吸着前の血清中のTGFβ濃度)ー(吸着後の血清中のTGFβ濃度)}/(吸着前の血清中のTGFβ濃度)を計算することにより行った。
【0032】
比較例1は親水性でないアミノ基のリガンドのためTGFβの吸着能が無い。実施例1〜4から親水性の第4級アンモニウム基が高いTGFβ吸着率を示すことが分かる。また、実施例1と2および実施例3と4からポリスチレンの割合が大きいほど吸着率が高く、実施例1、2と実施例3、4から繊維の直径が細いほど吸着率が高いことが分かる。
【0033】
【発明の効果】
本発明により、免疫抑制物質を効率よく吸着除去することが可能となり、癌の患者の治療に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中に過剰に存在すれば免疫の大幅な低下を招き、癌の形成が促進されるTGFβ、免疫抑制酸性蛋白、PGE2などの免疫抑制物質を除去するための吸着材および体外循環カラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
医学の発達した今日でも、依然として日本人の主な死亡原因の一つが癌である。その原因は患者には手術で取りきれない癌細胞が存在するためであり、その除去のため抗癌剤治療や放射線治療が行われてきた。しかし、これらは正常細胞をも傷害するため患者の生命を維持しつつ癌細胞を完全に除去することができない。一方、最近、患者の免疫力を高めて、患者自身の白血球で癌を排除しようとする細胞療法が盛んに試みられる様になった。最も有望なものとして、患者の樹状細胞を体外で癌抗原刺激した後、患者に戻し、癌特異的キラー細胞(CTL)を誘導して治療しようとする樹状細胞輸注療法がある。しかし、健康な動物の血液からはCTLを誘導できても癌末期の担癌動物からは誘導できないことが多い。また、動物実験では好成績を得ても臨床では目に見えた効果が出ないことが殆どである。この理由として患者の血中には免疫を抑制する物質が存在するためと考えられる。その免疫抑制物質の代表的なものがトランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGFβ)、免疫抑制酸性蛋白、プロスタグランジンーE2(PGE2)である。この物質がCTLの誘導や機能発現を阻害していると考えられる。TGFβは、健康な人の血液中にも存在する蛋白質で免疫作用を調整する重要な物質であるが、癌の進行に伴って異常に増え、癌細胞の増殖を助けていると考えられる。TGFβは単独では分子量25000程度の蛋白質であるが、血中では他の蛋白質と結合して10万前後の分子量で存在するため、従来の吸着材では吸着除去が困難な物質である。従って、癌患者の血液中から異常に増えたTGFβを効率よく除去できる吸着材は知られていない。TGFβの吸着材が特許文献1(特開2001−218840号公報)に開示されているが、除去効率が悪く、機械的強度も十分でない問題がある。また、免疫抑制酸性蛋白は分子量5万程度の蛋白質で、癌の悪性度のマーカーとして臨床で利用されているが、免疫を抑制すると言われている。活性炭カラムでの除去も試みられたが、吸着能力が不十分だったためか治療効果が明確でなかった。また、活性炭は粉が出やすいので、直接、血液と接触する用途には向かない。これら免疫抑制物質の除去には、理論上、血漿交換も有効であるが、感染の危険が避けがたい本質的な欠点がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−218840号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、一般的に普及可能であり、体液中から、直接、TGFβ、免疫抑制酸性蛋白、PGE2などの免疫抑制物質を高い効率で選択的に吸着し、かつ、安全に体外循環できる免疫抑制物質吸着材を提供し、ひいては癌の治療に役立てることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわちポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなることを特徴とする免疫抑制物質吸着材である。
【0006】
また本発明は、上記の吸着材を充填した体外循環カラムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いるポリ(芳香族ビニル化合物)としては、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、クロルメチルスチレンなどのホモ重合体もしくはこれらの2種以上の共重合体またはこれらのブレンド体が好ましい。
【0009】
補強用ポリマとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリαーオレフィン等のホモ重合体、またはこれらの共重合体、ブレンド体が好ましく用いられる。そのなかでも耐薬品性にすぐれたポリαーオレフィンが最も好ましく用いられる。ポリαーオレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリー3−メチルブテンー1、ポリー4−メチルペンテンー1などが好ましく用いられる。
【0010】
本発明においては、水不溶性繊維としては少なくとも前記ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマから構成されるが、水に不溶で、親水性アミンを固定化できるものであれば良く、特に限定されない。具体的には水不溶性繊維として、ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる混合繊維、複合繊維をあげることができるが、特に免疫抑制物質の吸着性能から、ポリ(芳香族ビニル化合物)を海成分、補強用ポリマを島成分とする海島型複合繊維望ましい。島の個数にとくに限定はされないが、製造面から1〜100個が好ましい。さらに、海成分についてはポリ(芳香族ビニル化合物)以外に、前記補強用ポリマとのブレンド体であつてもよい。この場合、補強用ポリマのブレンド比が大きくなるほど耐剥離性に優れた繊維が得られるが、逆に免疫抑制物質の吸着性が低下するため、ブレンド比は50%未満、特に5〜30%程度が好ましい。
【0011】
繊維の直径は通常0.1〜100μm程度であるが、細すぎると糸強力が小さくなり、取り扱いが難しい欠点を生じ、太すぎると免疫抑制物質の吸着性が低下するため特に1〜50μmが望ましい。
【0012】
また、繊維の2次形態には限定がなく、フィラメント糸、パンチフェルト、織物、編み物、不織布、繊維束、詰め綿、短繊維、中空糸等種種の形態で用いることができる。
【0013】
水不溶性繊維におけるポリ(芳香族ビニル化合物)の割合は通常20%以上であるが、割合が低すぎると免疫抑制物質の吸着量が低下するため、30%以上が好ましく、特に50%以上が最も好ましい。一方、補強用ポリマの割合は通常20%以上であるが、割合が低すぎると機械的強度が低下するため、30%以上が好ましい。
【0014】
本発明において、親水性アミン残基はポリ(芳香族ビニル化合物)に固定化する。親水性アミン残基を固定化するためのポリ(芳香族ビニル化合物)の反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などをあげることができるが、とりわけ、活性ハロゲン基、中でも、ハロアセチル基は、製造が容易な上に、反応性が適度に高く、親水性アミンの固定化反応が温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので好ましい。さらに具体的な例としては、クロルアセトアミドメチルポリスチレン、クロルメチルスチレンなどがあげられる。
【0015】
本発明で言う親水性アミン残基とは、単独では水に溶解もしくは水を溶解するアミン、すなわち親水性アミンがポリマーに化学的に結合した状態のものを意味する。親水性アミンとしては、炭素数で言うと、窒素原子1個当たり炭素数18以下であるものが好ましい。
【0016】
本発明においては、親水性アミンの中でも、窒素原子1個当たり炭素数3以上18以下、とりわけ、4以上14以下のアルキル基を持つ第3級アミンから得られる第4アンモニウム基を結合したものが好ましい。そのような第3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N、N−ジメチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミンなどがあげられる。さらに、親水性アミンを構成するアルキル基が親水性基である水酸基やエーテル基を含むもの、例えば、N,N−ジメチル−6−ヒドロキシヘキシルアミンやN,N−ジメチル−4−メトキシブチルアミン等も親水性アミンとして好ましく用いうる。
【0017】
本発明において、固定化した親水性アミン残基の結合の密度は、少なすぎるとその機能が発現しない傾向にあり、一方、多すぎると、固定化後の重合体の物理的強度が悪くなり、吸着材としての機能も下がる傾向にあるので、該密度はポリ(芳香族ビニル化合物)の繰り返し単位あたり0.01〜2.0モル、より好ましくは0.1〜1.0モルが良い。密度はアニオン交換容量もしくは収量などを測定することによって算出することができる。
【0018】
本発明における水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなり、免疫抑制物質を吸着することを特徴とする吸着材は、例えば公知の方法によつて紡糸、延伸した前記複合繊維のポリ(芳香族ビニル化合物)にクロルアセトアミドメチル基を導入した後、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,Nージメチルホルムアミド(DMF)などの極性の高い溶媒中で前記親水性アミンと反応させることによつて製造することができる。
【0019】
本発明の免疫抑制物質吸着材は血液中のTGFβ、免疫抑制酸性蛋白,PGE2などの免疫抑制物質の除去の目的で、カラムに充填した状態で、癌等の病気の体外循環治療に用いられる。本発明のカラムの作製は、綿状、筒編み状、フェルト状にした本発明の免疫抑制物質吸着材を、空隙容積が200mL程度以下になるようにして、適度の大きさの円筒形のカラムに詰めることで達成できる。また、本発明吸着材は輸血用血液、血清、血漿からの免疫抑制物質の除去の目的にも用いることができる。
【0020】
【実施例】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
<実施例1〜4、比較例1>
(水不溶性繊維)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3重量%共重合したポリエチレンテレフタレート
複合比率(重量比);芯:鞘:海=27:53:20。
この複合繊維の海成分を熱苛性ソーダ水溶液で溶解し、芯鞘(海島)型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維として、直径4μmの原糸1(ポリスチレンの割合60重量%)を得た。
【0022】
また、16島および複合比率(重量比);芯:鞘:海=24.5:30.5:45にする以外は上記の方法で芯鞘(海島)型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維として、直径4μmの原糸2(ポリスチレの割合50重量%)を得た。
【0023】
また、海成分がポリスチレン、島成分がポリプロピレン、海島比率(重量比)が65:35になるように紡糸速度1200m/分で製糸し16島の海島型複合繊維として、直径30μmの原糸3(ポリスチレンの割合65重量%)を得た。
【0024】
さらに、海成分がポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%、島成分がポリプロピレン、海島比率(重量比)が50:50になるように紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍で製糸し16島の海島型複合繊維として直径20μmの原糸4(ポリスチレンの割合45重量%)を得た。
【0025】
(中間体)
ニトロベンゼン150mLと硫酸98mLの混合溶液にパラホルムアルデヒド0.39gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、27.2gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに10gの上記で調製した原糸1を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取りだし、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールで良く洗った後、真空乾燥して、15.8gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を得た。
【0026】
また、10gの原糸2、10gの原糸3および10gの原糸4を上記と同様に処理して、それぞれ中間体2(収量15.0g)、中間体3(収量17.0)および中間体4(収量14.2g)を得た。
【0027】
(親水性アミンの固定)
N,N−ジメチルヘキシルアミン5gとヨウ化カリウム1gを100mLのDMFに溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。繊維を1モル/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、メタノール洗浄し、真空乾燥して、7.6gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(実施例1)を得た。 また、5gの中間体2、5gの中間体3および5gの中間体4を上記と同様に処理して、実施例2(収量7.4g)、実施例3(収量7.5g)および実施例4(収量7.0g)の繊維を得た。いずれの吸着材も補強用ポリマで補強されているため、優れた機械的強度を示した。収量は重量を測定して求めた。
【0028】
(非親水性アミンの固定)
また、非親水性アミンとして、ステアリルアミン50gを360mLのエタノールに溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。繊維をイソプロパノールで洗浄後、水洗し、真空乾燥して、7.5gのステアリルアミノ化繊維(比較例1)を得た。
【0029】
(吸着能の評価)
10週令のWKAH/Hkmラット(雄)の背部皮下にKDH8細胞(北海道大学提供)2×106個接種して調製した担癌ラットから血液を採取し、血清6mL(TGFβの濃度:29ng/mL)を調製した。その血清1mLに吸着材50mgを入れ、37℃で4時間振とうした。上清中のTGFβ濃度を測定して、吸着率を求めたところ、実施例1が84%、実施例2が73%、実施例3が54%、実施例4が26%および比較例1が0%であった(表1)。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、TGFβ濃度はゼンザイム・テクネ社のヒトTGFβ免疫分析キットを使用して求めた。吸着率の計算は、100×{(吸着前の血清中のTGFβ濃度)ー(吸着後の血清中のTGFβ濃度)}/(吸着前の血清中のTGFβ濃度)を計算することにより行った。
【0032】
比較例1は親水性でないアミノ基のリガンドのためTGFβの吸着能が無い。実施例1〜4から親水性の第4級アンモニウム基が高いTGFβ吸着率を示すことが分かる。また、実施例1と2および実施例3と4からポリスチレンの割合が大きいほど吸着率が高く、実施例1、2と実施例3、4から繊維の直径が細いほど吸着率が高いことが分かる。
【0033】
【発明の効果】
本発明により、免疫抑制物質を効率よく吸着除去することが可能となり、癌の患者の治療に有用である。
Claims (8)
- ポリ(芳香族ビニル化合物)と補強用ポリマからなる水不溶性繊維に親水性アミン残基を固定してなることを特徴とする免疫抑制物質吸着材。
- 親水性アミン残基が、窒素原子1個当たり炭素数3以上、18以下である第4級アンモニウム基である請求項1記載の免疫抑制物質吸着材。
- 免疫抑制物質がトランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGFβ)である請求項1または2記載の免疫抑制物質吸着材。
- 前記水不溶性繊維中のポリ(芳香族ビニル化合物)の割合が30重量%以上である請求項1〜3のいずれか記載の免疫抑制物質吸着材。
- 前記水不溶性繊維中のポリ(芳香族ビニル化合物)の割合が50重量%以上である請求項1〜3のいずれか記載の免疫抑制物質吸着材。
- 前記水不溶性繊維がポリ(芳香族ビニル化合物)を海成分、補強用ポリマを島成分とする海島型複合繊維である請求項1〜5いずれか記載の免疫抑制物質吸着材。
- 請求項1〜6のいずれか記載の免疫抑制物質吸着材を充填した体外循環カラム。
- 請求項1〜6のいずれか記載の免疫抑制物質吸着材を充填した癌治療用体外循環カラム。
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-
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- 2003-02-21 JP JP2003043919A patent/JP2004248951A/ja active Pending
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