JP2004245854A - トナー用線状ポリエステル樹脂およびトナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる線状ポリエステル樹脂であって、芳香族ジカルボン酸を全カルボン酸成分中50モル%以上及び炭素数4〜8の脂肪族ジオールを全カルボン酸成分100モル部に対して60モル部以上含有し、該ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000の範囲にあり、ガラス転移温度が40〜70℃の範囲にあり、軟化温度が90〜120℃の範囲にあるトナー用線状ポリエステル樹脂およびこれを5質量%以上の量で含有するトナー。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナー用線状ポリエステル樹脂およびこれを含有するトナーに関する。特に、本発明は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられ、物性バランスが良く、とりわけ低温定着性に優れるトナーを提供できる、トナー用線状ポリエステル樹脂およびこの樹脂を含有するトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真印刷法および静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち、定着部においてヒートローラー圧着により定着を行う方式が一般的である。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーは、帯電量安定性、耐ブロッキング性、非オフセット性等の様々な性能を併せ持つ必要がある。近年は、低エネルギーの観点から、ヒートローラーの温度がより低温でも紙への定着性が良好で、広い定着温度幅を有するトナーが強く求められている。
【0003】
トナー用バインダー樹脂は上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、そのような樹脂としてポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、本質的に定着性に優れるポリエステル樹脂が特に注目されている。
【0004】
ポリエステル系トナー用樹脂としては、三官能以上のモノマーを使用した非線状ポリエステル樹脂が一般的であるが、より低温での定着性に優れる樹脂が強く望まれており、種々の検討がなされてきた。
【0005】
例えば、特開平4−362956号公報、特開平8−320593号公報等では、非線状ポリエステルに低融点の線状ポリエステルを混合して低温定着性を改良する試みがなされている。さらに、特開平10−339969号公報、特開平10−268558号公報、特開2000−305316号公報等では、線状ポリエステルを用いた検討がなされている。さらに、特開平4−313760号公報、特開平2002−287427号公報では、軟化点を規定した2種のポリエステル樹脂からなるトナーの検討がなされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−362956号公報
【特許文献2】
特開平8−320593号公報
【特許文献3】
特開平10−339969号公報
【特許文献4】
特開平10−268558号公報
【特許文献5】
特開2000−305316号公報
【特許文献6】
特開平4−313760号公報
【特許文献7】
特開平2002−287427号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の技術等により、定着性能の改良されたトナー用樹脂が開発されてきているが、定着性能に対する市場の要求はさらに厳しくなってきており、上述の技術では、耐ブロッキング性、非オフセット性等の必要物性を保持しつつ、市場要求を満足させ得る低温定着性を有する樹脂の開発には至っていなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記の如き従来技術の問題点を解決し、低温定着性に優れたトナー用線状ポリエステル樹脂およびこれを含有するトナーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、トナー用線状ポリエステル樹脂について鋭意研究した結果、下記の如き構成を採用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる線状ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸成分を全カルボン酸成分中50モル%以上、及び、炭素数4〜8の脂肪族ジオールを全カルボン酸成分100モル部に対して60モル部以上含有し、該ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000の範囲にあり、ガラス転移温度が40〜70℃の範囲にあり、軟化温度が90〜120℃の範囲にあるトナー用線状ポリエステル樹脂を提供する。
【0011】
本発明は、また、上記のトナー用線状ポリエステル樹脂をトナー中に5質量%以上の量で含有するトナーを提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の態様について説明する。
【0013】
本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなることを特徴としている。ここで、線状ポリエステルとは、直鎖状の主鎖からなるポリエステルまたは直鎖状の主鎖とそれに結合する比較的短い側鎖とからなる構造をもつポリエステルをいう。線状のポリエステル樹脂とすることにより、定着面が平滑で、定着性の良好なトナーを提供できる樹脂を得ることができる。
【0014】
本発明においては、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を全カルボン酸成分中50モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上の量で用いる。これは、芳香族ジカルボン酸成分を50モル%以上とすることにより、得られる樹脂の定着性、耐ブロッキング性等の物性バランスが良好となる傾向にあるためである。
【0015】
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸またはそれらの低級アルキルエステルなどからの成分等が挙げられる。これらの成分はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明で使用可能なその他のジカルボン酸成分としては、フタル酸、セバシン酸、イソデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、またはそれらのモノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルエステルまたはそれらの酸無水物からの成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、トナーの定着性や耐ブロッキング性などの基本特性に関係するため、本発明の目的を損なわない範囲において要求性能に応じて適宜使用することができる。
【0017】
本発明で用いるジオール成分は、炭素数4〜8の脂肪族ジオールを全カルボン酸成分100モル部に対して60モル部以上含有するものである。これは、炭素数が4以上の成分を60モル部以上用いることによりポリエステル樹脂の結晶化を抑制でき、透明性、光沢性に有効である傾向にあるためであり、炭素数8以下とすることにより得られる樹脂の柔軟性が増し、トナーの定着性が良好となる傾向にあるためである。炭素数4〜8の脂肪族ジオールの含有量は、好ましくは70モル部以上である。
【0018】
本発明における炭素数4〜8の脂肪族ジオール成分を構成するジオールとしては、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。なかでも、ネオペンチルグリコールは、紙との親和性が高く、低温定着性に優れる樹脂が得られるため、特に好ましい。なお、本発明で用いる炭素数4〜8の脂肪族ジオール成分には脂環式ジオールは含まれない。
【0019】
本発明において使用可能な他のジオール成分の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等の炭素数3以下の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等からの成分が挙げられる。これらは本発明の目的を損なわない範囲で適宜使用することができる。
【0020】
本発明におけるトナー用線状ポリエステル樹脂は、これらのジカルボン酸成分およびジオール成分を、エステル化反応またはエステル交換反応、および縮合反応を経る公知の方法で重合して得ることができる。
【0021】
ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマンニウム等の重合触媒を用いることができる。また、離型剤成分の存在下で重合を行い、樹脂と離型剤成分とを分散または反応させてもよい。
【0022】
このようにして得られた本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂は、質量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000の範囲である必要がある。これは、Mwを4,000以上とすることで樹脂の強度が十分となる傾向にあるためである。好ましくは、5,000以上である。また、Mwを10,000以下とすることで低温定着性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは、8,000以下である。
【0023】
さらに、本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂は、軟化温度が90〜120℃の範囲にある必要がある。これは、軟化温度を90℃以上とすることで、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは、95℃以上である。また、軟化温度を120℃以下とすることで、トナーの低温定着性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは、110℃以下である。
【0024】
また、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が40〜70℃の範囲にある必要がある。これは、ガラス転移温度を40℃以上とすることで、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは、50℃以上である。また、ガラス転移温度を70℃以下とすることで、トナーの低温定着性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは65℃以下である。
【0025】
さらに、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、酸価が0.5〜30mgKOH/gの範囲であることが好ましい。これは、酸価が0.5mgKOH/g未満である樹脂はその生産性が低い傾向にあるためである。より好ましくは、1mgKOH/g以上である。また、酸価が30mgKOH/gを超えると得られるトナー画像の安定性が低下する傾向にあるためである。より好ましくは、25mgKOH/g以下である。
【0026】
本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂は、バインダー樹脂として使用され、これに着色剤、離型剤、荷電制御剤、流動改質剤、磁性体等を配合することによって、トナーを得ることができる。バインダー樹脂としては、本発明の樹脂を1種または2種類以上組み合わせて使用することができ、またさらに本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂成分を併用してもよい。
【0027】
本発明において得られたトナー用線状ポリエステル樹脂を用いてトナーを製造する際に用いることができるその他の樹脂成分としては、例えば、公知の非線状ポリエステル樹脂、線状ポリエステル樹脂、環状オレフィン、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種以上を選択して使用することができ、これらの樹脂と本発明のポリエステル樹脂とを混合して使用することにより、公知の樹脂の低温定着性を向上させ得るものである。
【0028】
本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂とその他の樹脂を混合してバインダー樹脂として用いる場合、本発明のトナー用線状ポリエステル樹脂をトナーの5質量%以上の量で含有するように配合量を調整することが好ましい。これは、5質量%以上の量で用いることで目的の効果を発揮することができるためである。好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0029】
本発明のトナーに使用できる着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料もしくは顔料などを挙げることができ、これらの染料や顔料をそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。フルカラートナーの場合には、イエローとしてベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料など、マゼンタとしてキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料など、シアンとしてフタロシアニンブルーなどが挙げられる。着色剤は、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー中に2〜10質量%の量で使用されるのが好ましい。
【0030】
本発明のトナーに使用できる離型剤成分としては、例えば、ライスワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの離型剤成分は、トナー中に0.1〜10質量%含有されるのが好ましい。これは、離型剤成分の含有量を0.1質量%以上とすることでトナーの非オフセット性が良好となる傾向にあるためであり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、10質量%以下とすることでトナーの光沢性や画像安定性が良好となる傾向にあるためであり、より好ましくは8重量%以下である。
【0031】
本発明のトナーに使用できる荷電制御剤としては、正帯電制御剤として4級アンモニウム塩や塩基性もしくは電子供与性の有機物質等が挙げられ、負帯電制御剤として金属キレート類、含金属染料、酸性もしくは電子求引性の有機物質等が挙げられる。カラートナーの場合には、帯電制御剤が無色ないし淡色で、トナーへの色調障害がないことが重要であり、サリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物等が挙げられる。これらの荷電制御剤は、トナー中に0.5〜5質量%の量で使用されるのが好ましい。これは、荷電制御剤を0.5質量%以上とすることによってトナーの帯電量が充分なレベルとなり、5質量%以下とすることによって荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にあるためである。
【0032】
また、本発明のトナーに使用できる流動改質剤などの添加剤としては、微粉末のシリカ、アルミナ、チタニア等の流動性向上剤、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末、スチレン樹脂、アクリル樹脂などの抵抗調節剤、滑剤などが挙げられ、これらは内添剤または外添剤として使用される。これらの添加剤は、トナー中に0.05〜10質量%の量で使用することができる。これらの添加剤の使用量を0.05質量%以上とすることによってトナーの性能改質効果が充分に得られる傾向にあり、10質量%を以下とすることによってトナーの画像安定性が良好となる傾向にあるためである。
【0033】
本発明のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤の何れの現像剤としても使用できる。磁性1成分現像剤として用いる場合には、磁性体を含有し、磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金の他、化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。これらの磁性体は、トナー中に40〜60質量%の範囲で使用することができる。磁性体の使用量を40質量%以上とすることによってトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、60質量%以下とすることによってトナーの定着性が良好となる傾向にあるためである。また、2成分現像剤として用いる場合、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、一般に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを利用することができる。
【0034】
本発明のトナーは、例えば、上述のトナー用ポリエステル樹脂、および他の樹脂成分、着色剤、荷電制御剤、流動改質剤、磁性体等を混合した後、2軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造することができる。特に、混練工程においては、押出機のシリンダー内温度がポリエステル系樹脂の軟化温度よりも高い温度で混練するのが好ましい。また、上記工程において、微粉砕〜分級後にトナー粒子を球形にするなどの処理を行ってもよい。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の実施の態様がこれに限定されるものではない。また、本実施例で示される樹脂やトナーの評価方法は以下の通りである。
【0036】
樹脂評価方法
1)質量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによる測定値であり、TSKgel/GMHXLカラム(東ソー社製)3本から構成される東ソー社製HCL−8020により測定し、ポリスチレン換算により求めた。
【0037】
2)軟化温度
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)下に、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を軟化温度とした。
【0038】
3)ガラス転移温度
サンプルをメルトクエンチした後、示差走差熱量計を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時の、チャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0039】
トナー評価方法
4)低温定着性、耐HOS(ホットオフセット)性、145℃定着性の評価法ローラー速度100mm/秒に設定した温度変更可能である定着ローラーを用いて未定着画像を紙に定着させて評価した。
【0040】
・低温定着性
コールドオフセットの発生しない最低ローラー温度を定着開始温度とし、以下の基準にて低温定着性を判断した。
【0041】
◎(非常に良好):定着開始温度が125℃以下
○(良好) :定着開始温度が125℃を超え、135℃以下
△(使用可能) :定着開始温度が135℃を超え、145℃以下
×(劣る) :定着開始温度が145℃を超える
・耐HOS性
定着ローラーにトナーが移行する最低ローラー温度をHOS発生温度と定め、以下の基準を用いて耐HOS性を判断した。
【0042】
◎(非常に良好):HOS発生温度が200℃以上
○(良好) :HOS発生温度が185℃以上200℃未満
△(使用可能) :HOS発生温度が175℃以上185℃未満
×(劣る) :HOS発生温度が175℃未満
・145℃定着性
定着ローラーの温度を145℃に設定して定着させた画像を、JIS512の砂消しゴムにて9回擦り、試験前後の画像濃度をマクベス社製画像濃度計にて測定し、定着率を
試験後の画像濃度/試験前の画像濃度 ×100 (%)
として算出し、以下の基準により評価した。
【0043】
◎(非常に良好):80%以上の定着率
○(良好) :75%以上80%未満の定着率
△(使用可能) :70%以上75%未満の定着率
×(劣る) :70%未満の定着率 または145℃でCOSが発生し測定不可
5)耐ブロッキング性
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを50℃に保温された乾燥機中に約24時間放置し、トナーの凝集程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
【0044】
◎(非常に良好):サンプル瓶を逆さにするだけで分散する
○(良好):サンプル瓶を逆さにし、1〜2回叩くと分散する
△(使用可能):サンプル瓶を逆さにし、3〜4叩くと分散する
×(劣る):サンプル瓶を逆さにし、5回以上叩くと分散する
トナー用線状ポリエステル樹脂の合成
合成例1
表1に示す仕込み組成のモノマー成分等と、全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出し、エステル化反応が開始してから約8時間後、水の留出がなくなり、反応を終了した。次いで、反応系内の温度を下げて230℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を1.0mmHgとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、反応系内の樹脂の軟化温度を追跡して所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定の軟化温度を示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、窒素により加圧して約2時間かけて反応物を取り出し、さらに2時間かけて徐々に冷却し、樹脂1を得た。得られた樹脂の液体ガスクロマトグラフィーによる組成分析の結果および樹脂物性値を同じく表1に示す。
【0045】
合成例2〜8
モノマー成分およびその仕込み組成を表1に記載した内容に変更した以外は合成例1と同様にして樹脂2〜8を得た。樹脂組成および特性値を同じく表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1
上記で得られた樹脂1を用いて、トナー化を行った。トナーの配合には、樹脂1を93質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)を3質量部、カルナバワックス(東洋ペトロライド社製)3質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−84)1質量部を使用し、ヘンシェルミキサーで30分間混合した。次いで、得られた混合物を2軸混練機で2回溶融混練した。溶融混練は内温を樹脂の軟化温度に設定して行った。混練後、冷却してトナー魂を得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を5μmとした。得られた微粉末に対して、0.25%のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、トナーを得た。得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0048】
得られたトナーは、低温定着性、145℃定着性は非常に良好で、耐ブロッキング性も良好であり、耐HOS性は使用可能レベルで性能バランスの良いトナーであった。
【0049】
実施例2〜4、比較例1〜4
樹脂分を樹脂2〜8に変更した以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。評価結果を表2に示す。
【0050】
実施例2、3のトナーは低温定着性が非常に優れ、性能バランスの良いトナーであった。実施例4のトナーは使用可能レベルのトナーであった。比較例1、2、3のトナーは145℃定着性が劣り、比較例4のトナーは耐HOS性、耐ブロッキング性が劣っていた。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例5
トナーの配合に、樹脂1を74.4重量部、ポリエステルA(テレフタル酸(57モル部)/イソフタル酸(40モル部)/アジピン酸(3モル部)/エチレングリコール(85モル部)/1,4−シクロヘキサンジメタノール(15モル部)からなる、軟化温度170℃、Mw41,000、Tg59.1℃、酸価2.1mgKOH/gの線状ポリエステル樹脂)を18.6重量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)を3重量部、カルナバワックス(東洋ペトロライド社製)3重量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−84)1重量部を使用した以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。評価結果を表3に示す。
【0053】
得られたトナーは、低温定着性、145℃定着性は非常に良好で、耐HOS性、耐ブロッキング性も良好な、性能バランスの非常に良いトナーであった。
【0054】
実施例6〜14、比較例5〜7
トナー中の樹脂分を表3に記載した内容とした以外は実施例5と同様にしてトナーを製造した。樹脂成分中、ポリエステルBはテレフタル酸(97モル部)/アジピン酸(3モル部)/エチレングリコール(85モル部)/1,4−シクロヘキサンジメタノール(15モル部)からなる、軟化温度163℃、Mw34,000、Tg56.6℃、酸価1.0mgKOH/gの線状ポリエステル樹脂であり、ポリエステルCはテレフタル酸(62モル部)/イソフタル酸(20モル部)/トリメリット酸(18モル部)/ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(60モル部)/ポリオキシエチレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(20モル部)/エチレングリコール(30モル部)からなる、軟化温度125℃、Tg62.0℃、酸価8.0mgKOH/gの非線状ポリエステル樹脂であり、ポリエステルDはテレフタル酸(62モル部)/イソフタル酸(20モル部)/トリメリット酸(18モル部)/ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(60モル部)/ポリオキシエチレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(20モル部)/エチレングリコール(25モル部)からなる、軟化温度141℃、Tg63.1℃、酸価7.5mgKOH/gの非線状ポリエステル樹脂であり、St/Ac樹脂はスチレン(80重量部)/n−ブチルアクリレート(20重量部)からなる、軟化温度127℃、Tg60.0℃、酸価0.2mgKOH/gの樹脂であり、環状オレフィンは軟化温度126℃、Tg67.0℃、酸価0mgKOH/gの樹脂である。評価結果を表3に示す。
【0055】
実施例7、8、9のトナーは低温定着性または145℃定着性が非常に良好で性能バランスの良いトナーであった。実施例6、10のトナーは、低温定着性が良好で性能バランスが良く、実施例11、12のトナーは低温定着性が使用可能レベルであった。さらに、ポリエステル以外の樹脂成分を含有する実施例13、14においても低温定着性の良好なトナーが得られた。一方、線状ポリエステル樹脂を含有しない比較例5のトナーは、低温定着性、145℃定着性が劣り、本発明における特定のジオール成分を有しない線状ポリエステル樹脂を用いた比較例6、7のトナーは、比較例6のトナーでは耐HOS性が劣り、比較例7のトナーでは145℃定着性が劣っており、性能バランスの良いトナーとはならなかった。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂中に特定のジオール成分を有することによって、低温定着性に優れたトナーを提供できるトナー用線状ポリエステル樹脂を得ることができる。
Claims (4)
- ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる線状ポリエステル樹脂であって、芳香族ジカルボン酸を全カルボン酸成分中50モル%以上及び炭素数4〜8の脂肪族ジオールを全カルボン酸成分100モル部に対して60モル部以上含有し、該ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000の範囲にあり、ガラス転移温度が40〜70℃の範囲にあり、軟化温度が90〜120℃の範囲にあるトナー用線状ポリエステル樹脂。
- 炭素数4〜8の脂肪族ジオールが、ネオペンチルグリコールである、請求項1に記載のトナー用線状ポリエステル樹脂。
- 酸価が0.5〜30mgKOH/gの範囲にある、請求項1または2に記載のトナー用線状ポリエステル樹脂。
- 請求項1〜3のいずれかに記載したトナー用線状ポリエステル樹脂をトナー中に5質量%以上の量で含有するトナー。
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