JP2004245853A - 光ファイバアレイ及び受光素子モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】切削加工によってスリットを形成しても、光ファイバ7が位置ずれしたり、変位することなく、光信号を良好に伝搬させることを可能とする。
【解決手段】光ファイバ7を収容するV溝2が上面に形成された保持基板3と、V溝2内に充填されて光ファイバ7を固定する接着剤8と、光ファイバ7を横切る方向に切断するように保持基板3上に切削加工されたスリット15とを備える。V溝2が45°以上95°以下の角度となっている。
【選択図】 図1
【解決手段】光ファイバ7を収容するV溝2が上面に形成された保持基板3と、V溝2内に充填されて光ファイバ7を固定する接着剤8と、光ファイバ7を横切る方向に切断するように保持基板3上に切削加工されたスリット15とを備える。V溝2が45°以上95°以下の角度となっている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信に用いられる光ファイバアレイ及び受光素子モジュールに関し、特に、光ファイバから特定波長の光をフィルタリングしたり、モニタリングのために光の一部を取り出すためのスリットを有する光ファイバアレイ及び受光素子モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、DWDM通信、WDM通信等の光通信に用いられる光ファイバアレイ1の一例を示し、例えば、特開2001−343547号公報に記載されている。この光ファイバアレイ1においては、上面に複数条のV溝2が平行に形成されたシリコン基板等からなる保持板3と、保持板3におけるV溝2形成Vの上面を押さえ付ける蓋板4とによって保持部材5が形成されている。テープファイバ6からの光ファイバ7は保持板3の個々のV溝2内に収容されており、V溝2内に接着剤を充填すると共に蓋板4を被せてV溝2に押し付けることにより位置決めされた状態で保持部材5に固定される。
【0003】
このような構造の光ファイバアレイに対し、光ファイバからの光の一部をモニタリングしたり、特定波長光だけを通過または反射させる場合には、光ファイバ7を横切るようにスリットを形成し、このスリット内にバンドパスフィルタや半透過・半反射を行うハーフミラーとしての平板状の光学部材を挿入する構造の光ファイバアレイが用いられる。
【0004】
図9及び図10は、このような構造の従来の光ファイバアレイ11を示す。この光ファイバアレイ11では、V溝2が形成されたシリコン基板等からなる保持基板3の上面にフォトダイオード等の受光素子14が固定される。V溝2内には光ファイバ7が収容され、V溝2内に充填された接着剤8によってV溝2内に固定される。また、保持基板3の上面に形成されたスリット15により、光ファイバ7はV溝2内で横切る方向に切断される。
【0005】
スリット15はダイシングソー等の切削工具によって機械的に加工されるものであり、光ファイバ7を太さ方向で切断する深さとなるように保持基板3の上面に形成される。また、スリット15は光ファイバ7の光軸と適宜の角度(例えば、45°や60°の角度)となるように形成され、内部には光学部材16が挿入されて固定される。
【0006】
光学部材16は、誘電体多層膜等からなる光学薄膜が平板状のガラス基板の表面に形成された構造となっており、光学薄膜が光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15の斜面に沿った状態でスリット15内に挿入される。なお、光学部材16は紫外線硬化樹脂等からなる接着剤によってスリット15内に固定されるものである。
【0007】
受光素子14はスリット15を跨ることにより、光学部材16の上部に位置するように保持基板3の上面に固定される。保持部材3の上面には、外部回路との相互接続を行う電極19がパターン形成されており、受光素子14は導電性樹脂20によって電極19と電気的に接続される。
【0008】
このような構造において、図10の矢印Aで示すように、光ファイバ7からの光が光学部材16に達することにより、表面の光学薄膜によって光の一部または特定の波長光が反射される。反射された光は受光素子14に達して電気信号に変換され、電極19から外部回路に出力される(特許文献1参照)。
【0009】
このような構造では、受光素子14を保持基板3の上面に固定する関係から、図8に示す蓋板4は用いられることがなく、光ファイバ7は接着剤8の固定力だけによってV溝2内に固定されるようになっている。なお、図9及び図10においては、光ファイバ7が1本だけが示されているが、図8に示すように複数本を用いることも可能であり、この場合には、V溝2が光ファイバ7の数に相当した本数となる。また、この場合には、スリット15は全ての光ファイバ7を切断するように形成されると共に、受光素子14に対してもそれぞれの光ファイバ7からの反射光を受光する受光部が対応するように形成されるものである。
【0010】
【特許文献1】
国際公開WO97/06458号パンフレット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような光信号の取り出しを行う構造の光ファイバアレイの製造は、光ファイバをV溝に挿入し、蓋板のない状態で接着剤を硬化して光ファイバをV溝内に固定し、その後、保持基板及び光ファイバを同時に切削してスリットを加工する手順で行われる。しかしながら、この場合には、次の問題を有している。
【0012】
(1)蓋板を用いることなく、光ファイバを接着剤によってV溝に固定する構造のため固定強度が弱い。通常の取り扱い程度の場合には、接着剤だけで光ファイバの固定状態を維持することができるが、光信号の取り出しを行う構造の光ファイバアレイでは、接着剤による光ファイバの固定後に、切削加工によってスリットを形成するため、接着剤として切削に耐え得るだけの接着強度が必要となる。そして、スリットの切削加工中に光ファイバが動くと、IN側及びOUT側となるスリット前後の光ファイバの相対位置がずれるため、IN側から出射しOUT側に入射する光の損失が大きくなり、光信号の伝搬効率が低下する。
【0013】
(2)スリットが光ファイバ(すなわち、V溝)を横切るように形成されるところから、スリットの切削加工はV溝の長さ方向と略直交する方向にブレード(砥石)を移動させることにより行われる。この方向の移動では、光ファイバに対してV溝に沿った斜め方向への移動分力が作用し、光ファイバが同方向に移動する。この移動により、光ファイバの位置決め状態が変位して、光が洩れ易くなる。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、切削加工によってスリットを形成しても、光ファイバが位置ずれしたり、変位することなく、光信号を良好に伝搬させることが可能な光ファイバアレイ及び受光素子モジュールを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の光ファイバアレイは、光ファイバを収容するV溝が上面に形成された保持基板と、V溝内に充填されて光ファイバを固定する接着剤と、光ファイバを横切る方向に切断するように保持基板上に切削加工されたスリットとを備え、前記V溝が45°以上95°以下の角度となっていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、V溝を45°〜95°の範囲の角度とすることにより、V溝に充填する接着剤の量を大きく確保することができると共に、砥石による切削時の移動に起因したV溝に沿った移動分力を小さくすることができる。これらにより、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなくなると共に、V溝内での変位を防止することができ、光信号を良好に伝搬することができる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の光ファイバアレイであって、前記V溝の上面が開放状態となっていることを特徴とする。
【0018】
このようにV溝の上面を開放状態としても、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなく、しかもV溝内での変位がない。従って、光ファイバを透過する光の透過効率も高く、且つ受光素子の配置の自由度が増大する。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の光ファイバアレイであって、前記保持基板が透明なガラスであることを特徴とする。
【0020】
保持基板として、透明なガラスを用いることにより、保持基板の硬度が光ファイバと同程度の硬度となるため、スリットを形成するための切削を同一条件とすることができる。これにより、光ファイバの切断を適正に行うことができ、良好な加工品質とすることができる。
【0021】
また、紫外線を透過するため、スリット内に挿入される光学部材の固定を行う接着剤として紫外線硬化樹脂を用いることができる。このため、硬化のための加熱が不要となって熱の悪影響を防止することができるばかりでなく、硬化の際のハンドリングを容易に行うことができる。
【0022】
請求項4の発明の受光素子モジュールは、前記保持基板が透明なガラスからなる請求項1または2記載の光ファイバアレイと、この光ファイバアレイにおけるスリット上部に紫外線硬化樹脂により固定された受光素子とを備えていることを特徴とする。
【0023】
この発明では、紫外線硬化樹脂を用いることにより受光素子が光ファイバアレイの上面に固定されるものである。紫外線硬化樹脂に対しては、受光素子側から紫外線を照射することにより部分的に硬化させて受光素子を仮固定する。その後、保持基板を通して紫外線を硬化することにより、完全に硬化させて受光素子を固定する。これにより、受光素子の調心を行いながら受光素子を固定することができるため、目的の位置に正確に受光素子を固定することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。図1〜図4は、本発明の一実施形態を示し、図1はV溝の角度に応じた分力の変化を、図2はV溝の断面形状を、図3及び図4はスリットを形成する状態をそれぞれ示す。なお、これらの図において、図8〜図10に示す部材と同一の部材には、同じ符号を付してある。
【0025】
この実施形態の光ファイバアレイは、図8にも示すように複数条のV溝2が上面に平行に形成された保持基板3を備えている。保持基板3はダイシングソー等の砥石による切削が可能な材料が使用されるが、その中でも、後述するように透明なガラスが良好である。
【0026】
それぞれのV溝2は光ファイバ7が個々に挿入されることにより光ファイバ7を収容した状態で固定するものであり、光ファイバ7の固定のため、V溝2内には、接着剤8が充填される。接着剤8としては、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂その他のものを適宜使用することができる。
【0027】
以上に加えて、この実施形態の光ファイバアレイは、図9及び図10に示すスリット15及び受光素子14を備えている。
【0028】
スリット15は保持基板3の上面におけるV溝2の形成領域に形成される。また、スリット15は、V溝2に固定されている光ファイバ7を横切って光ファイバ7を切断するものであり、V溝2に光ファイバ7を収容して固定した後に、光ファイバ7を横切るように保持基板3に形成される。
【0029】
このスリット15は、光ファイバ7を切断する深さと相当するような深さとなるように保持基板3の上面に形成されるものであり、このため、使用する光ファイバ7の径によって深さが異なっており、200〜300μmの範囲で適宜選択される。また、スリット15の幅は、光ファイバ7を通過する通過光を低損失とする関係から30〜100μmの範囲内で適宜選択される。
【0030】
図3及び図4において、符号9は、スリット15を形成するための砥石であり、矢印Bで示す方向に回転駆動されながら矢印Cで示す保持基板3の横断方向に移動することにより、全ての光ファイバ7を光軸方向と直交する方向に切断しながら、保持基板3にスリット15を切削加工する。
【0031】
このようなスリット15には、光ファイバ7の光を後述する受光素子14に反射させるための光学部材16(図10参照)が挿入される。光学部材16は、平板状のガラス基板の表面に、誘電体多層膜等からなる光学薄膜が形成された構造となっており、光学薄膜が光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15内に挿入されて固定される。この場合、光ファイバ7の光を反射して受光素子14に入射させるため、光学部材16は所定の角度(例えば、30°〜70°の角度)を有した斜め状態でスリット15内に挿入されるものであり、光学部材16を支持するスリット15も同様な角度を有した斜め状態となるように切削加工される。
【0032】
このような光学部材16は、紫外線硬化樹脂からなる接着剤によってスリット15内に固定されるものである。紫外線硬化樹脂は光を透過するため、光ファイバ7の光を効率良く光学部材16に導くことが可能なためであり、また、熱を加えなくても硬化するため、光学部材16やその他の部材に熱の悪影響を与えることがないためである。
【0033】
受光素子14は並んでいる全ての光ファイバ7を覆うように保持基板3の上面に固定される。この受光素子14の下面には、各光ファイバ7からの反射光を受光する受光部が各光ファイバに対応するように形成されている。なお、受光素子14は、図10と同様に導電性樹脂20によって電極19と接続されており、受光した光を電気信号に変換した後、電極19を介して外部回路に出力するようになっている。
【0034】
この実施形態では、受光素子14を保持基板3の上面に取り付けるため、保持基板3の上面には、図8に示すような蓋板4が取り付けられることがなく、V溝2は上面が開放状態となっている。従って、光ファイバ7は接着剤8の固定力だけによってV溝2内に固定されている。このような状態に対し、図3及び図4に示すように、砥石9が回転しながら移動してスリット15を切削加工すると、光ファイバ7に対して横方向への負荷が作用し、この負荷によって光ファイバ7がV溝2に沿って移動することがある。
【0035】
本発明者は、切削加工時における光ファイバ7の移動がV溝2の角度αに関係していることを見出したものである。この関係を図1(a)及び(b)により説明すると、符号F1は砥石9の切削加工による負荷である。
【0036】
この負荷F1はV溝2の斜面と直交する第1の分力F2と、V溝2の斜面に沿った第2の分力F3とに分解され、第2の分力F3が光ファイバ7をV溝2に沿って移動させる移動力となる。砥石9からの負荷F1が一定の場合、この第2の分力F3は、V溝2の角度αの大きさに比例した大きさとなる。すなわち、V溝2の角度αが小さいと、図1(a)で示すように光ファイバ7の移動力F3が小さくなって光ファイバ7の拘束力が大きくなる。この図1(a)では、V溝2の角度αを50°に設定した場合を示している。一方、V溝2の角度αが大きいと、図1(b)で示すように光ファイバ7の移動力F3が大きくなって光ファイバ7の拘束力が低下する。図1(b)では、V溝2の角度αを120°に設定した場合を示すものである。
【0037】
以上のV溝2に沿った移動力F3に加えて、V溝2内に充填される接着剤8の充填量が光ファイバ7の固定力に影響するものである。すなわち、V溝2内への接着剤8の充填量が多い場合には、光ファイバ7の接着強度を大きく確保することができ、接着剤8の充填量が少なくなるのにつれて、光ファイバ7の接着強度が小さくなるものである。
【0038】
しかも、かかる接着剤8の充填量は、V溝2の角度αに関係している。これを図2により説明すると、同図(a)はV溝2の角度αを小さく(α=30°)設定した場合、同図(b)はV溝の角度αを大きく(α=90°)設定した場合を示す。なお、これらの図においては、V溝2の上面(保持基板3の上面)から光ファイバ7の頂部までの距離及びV溝2の底面から光ファイバ7の底部までの距離を同じとなるように設定している。
【0039】
図2における(a)及び(b)の比較から判るように、V溝2の角度αが小さい場合((a)の場合)には、接着剤8の充填量が少なく、このため光ファイバ7の接着強度が小さくなり、光ファイバ7がV溝2内で移動し易くなっている。これに対し、V溝2の角度αが大きい場合((b)の場合)には、接着剤8の充填量が多くなって光ファイバ7の接着強度が大きくなり、光ファイバ7の拘束力が大きくなる。
【0040】
以上のV溝2の角度αの大きさに応じた光ファイバ7の移動力と、接着剤8の充填量との2要素を考慮して、V溝2の角度を変えながら、砥石9によるスリット15の切削加工を行って光ファイバ7の移動の有無を観察した結果を表1に示す。表1から、V溝2が45°以上95°以下の角度の場合に、光ファイバ7が移動することがなく、これにより、光ファイバのIN側からOUT側への光信号の損失が少なく、高効率な光信号の伝搬を行うことができるばかりでなく、V溝2内での光ファイバ7の変位がなくなることが判る。
【0041】
【表1】
この実施形態において、保持基板3としてガラスを用いることが好ましい。上述したように、保持基板3及び保持基板3に取り付けられた光ファイバ7を同時に切削加工することによりスリット15が形成されるようになっている。このような同時加工において、保持基板3と光ファイバ7との硬度が大きく異なると、加工条件を双方に合わせることができず、加工品質が低下する。これに加えて、切削加工を行う対象体積は、光ファイバ7よりも保持基板3の方が大きく、切削条件を光ファイバ7に合わせると、保持基板3を適正に切削加工することができなくなる。この実施形態のように、保持基板3としてガラスを用いる場合には、石英からなるファイバ7と硬度等の物性が近似しているため、加工条件を合わせることができ、良好な加工品質を得ることが可能となる。
【0042】
また、光学部材16の固定のために、紫外線硬化樹脂を用いるのに対し、保持基板3がガラスの場合、紫外線を透過するため、紫外線硬化樹脂を円滑に硬化させることが可能となる。
【0043】
さらに、受光素子14を保持基板3上に固定する際の接着剤として、紫外線硬化樹脂を用いる場合のハンドリングを容易に行うことが可能となる。すなわち、保持基板3がガラスの場合、紫外線を透過するため、受光素子14を調心した後、受光素子14側から紫外線を照射することにより部分的に硬化して仮固定し、その後、反転して保持基板3の裏側から紫外線を照射して完全に硬化するハンドリングが可能となるものである。
【0044】
図5及び図6は、本発明の一実施形態の受光素子モジュール30を示し、以上の光ファイバアレイ31と、光ファイバアレイ31上に固定されたフォトダイオードアレイからなる受光素子32とを備えている。
【0045】
光ファイバアレイ31は、リボンファイバ34からの光ファイバ7をそれぞれ収容する複数条のV溝2が上面に形成された保持基板3を有している。保持基板3は透明なガラスによって形成されており、光ファイバ7及びV溝2を横断するスリット15が上面に形成され、このスリット15内に光学部材16が挿入された状態で上述と同様に、接着剤によって固定されている。光学部材16は光ファイバ7の光を受光素子32に反射するものであり、このための光学薄膜16aが平板状のガラス基板16bの表面に形成され、この光学薄膜16aが光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15内に挿入されている。なお、V溝2については、45°〜95°の角度となるように形成されるものである。図6において、矢印Hは、光ファイバ7内の光の伝播方向である。
【0046】
受光素子32は以上の光ファイバアレイ31におけるスリット15(すなわち光学部材16)の上部に位置するように保持基板3に固定される。この固定は、紫外線硬化樹脂35によって行われる。なお、受光素子32の上方には、金等のバンプ36によって受光素子32と接続されたサブマウント基板37が配置されている。サブマウント基板37は、アルミナ等のセラミックスによって形成されており、受光素子32の周囲に立ち上がり状に配置された透明なスペーサ38に支持された状態となっている。
【0047】
この実施形態では、受光素子32を光ファイバアレイ31に固定するために紫外線硬化樹脂35を用いていることから生産性が高く、しかも特性の良好なモジュールとすることができる。すなわち、スリット15上に受光素子32を搭載する場合、受光素子32及びサブマウント基板37が紫外線を透過しないため、受光素子32側から紫外線を照射しても紫外線硬化樹脂35を硬化することができないため、調心装置(図示省略)上での受光素子32の固定に長時間を要しているのに対し、保持基板3が透明なガラスの場合には、紫外線を透過するため、調心装置上で受光素子32を調心した後、受光素子32側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂35を部分的に硬化させることができる。この部分的な硬化により、受光素子32を短時間で仮固定することができる。
【0048】
その後、モジュールの全体を調心装置から外し、反転させた状態で保持基板3の裏側から紫外線を照射する。この照射によって紫外線硬化樹脂35が完全に硬化するため、受光素子32を本固定することができる。
【0049】
従って、この実施形態では調心装置を制約する時間が短く、生産性が良好となるのに加え、調心後に短時間で仮固定することができるため、調心状態のままで固定することができ、受光素子32を目的の位置に確実に固定することが可能となる。これにより、受光素子32の特性を十分に発揮させることができる。
【0050】
図7は、本発明の別の実施形態における光ファイバアレイを示す。この光ファイバアレイは複数のV溝が形成された保持基板3と、それぞれのV溝に収容されることにより位置決め状態で固定される複数の光ファイバ7とを備えており、光ファイバ7を切断するスリット15が切削加工によって保持基板3の上面に形成される。
【0051】
スリット15の形成に際しては、砥石9を高速回転させながら保持基板3に切り込むことにより行われる。この形態では、ダミー部材21を砥石9の切り込み側に配置するものである。このダミー部材21に対しては保持基板3と同様に、砥石9の切り込みが行われる。
【0052】
このように砥石9の切り込み側にダミー部材21を設け、ダミー部材21に切り込んだ後に保持基板3に切り込んでスリット15を切削加工する場合には、保持基板3への切り込みの際に加工負荷が大きく変化することがないと共に、砥石9の回転ブレもなくなっている。このため、円滑な状態でスリット15を形成することができ、スリット15へ加工負荷を軽減することができる。なお、ダミー部材21としては、加工が施される保持基板3と同じ材質を用いることが加工負荷の観点から好ましい。
【0053】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、V溝に充填する接着剤の量を大きく確保することができると共に、ブレードによる切削時の移動に起因したV溝に沿った移動分力を小さくすることができるため、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなくなると共に、V溝内での変位を防止することができ、光信号を良好に伝搬することができる。
【0054】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、V溝の開放部分に対して受光素子を配置することができるため、受光素子の配置の自由度が増大する。
【0055】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明に加えて、光ファイバの切断を適正に行うことができ、良好な加工品質とすることができ、しかも接着剤として紫外線硬化樹脂を用いることができるため、硬化のための加熱が不要となって熱の悪影響を防止することができるばかりでなく、硬化の際のハンドリングを容易に行うことができる。
【0056】
請求項4の発明によれば、紫外線硬化樹脂の部分的な硬化による受光素子の仮固定を行った後、紫外線硬化樹脂の完全硬化によって受光素子の固定を行うことができるため、調心を行いながらの受光素子の固定が可能となり、目的の位置に正確に受光素子を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は本発明の光ファイバアレイの一実施形態における切削加工の際のV溝の角度による移動力の変化を示す断面図である。
【図2】(a),(b)はV溝の角度による接着剤の充填量の変化を示す断面図である。
【図3】砥石による切削加工を示す正面図である。
【図4】砥石による切削加工を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の受光素子モジュールの一実施形態の斜視図である。
【図6】受光素子モジュールの断面図である。
【図7】本発明の別の実施形態における切削加工を示す平面図である。
【図8】光ファイバアレイの一例の斜視図である。
【図9】従来の光ファイバアレイの斜視図である。
【図10】従来の光ファイバアレイの断面図である。
【符号の説明】
2 V溝
3 保持基板
7 光ファイバ
8 接着剤
9 砥石
14 32 受光素子
15 スリット
16 光学部材
30 受光素子モジュール
31 光ファイバアレイ
35 紫外線硬化樹脂
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信に用いられる光ファイバアレイ及び受光素子モジュールに関し、特に、光ファイバから特定波長の光をフィルタリングしたり、モニタリングのために光の一部を取り出すためのスリットを有する光ファイバアレイ及び受光素子モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、DWDM通信、WDM通信等の光通信に用いられる光ファイバアレイ1の一例を示し、例えば、特開2001−343547号公報に記載されている。この光ファイバアレイ1においては、上面に複数条のV溝2が平行に形成されたシリコン基板等からなる保持板3と、保持板3におけるV溝2形成Vの上面を押さえ付ける蓋板4とによって保持部材5が形成されている。テープファイバ6からの光ファイバ7は保持板3の個々のV溝2内に収容されており、V溝2内に接着剤を充填すると共に蓋板4を被せてV溝2に押し付けることにより位置決めされた状態で保持部材5に固定される。
【0003】
このような構造の光ファイバアレイに対し、光ファイバからの光の一部をモニタリングしたり、特定波長光だけを通過または反射させる場合には、光ファイバ7を横切るようにスリットを形成し、このスリット内にバンドパスフィルタや半透過・半反射を行うハーフミラーとしての平板状の光学部材を挿入する構造の光ファイバアレイが用いられる。
【0004】
図9及び図10は、このような構造の従来の光ファイバアレイ11を示す。この光ファイバアレイ11では、V溝2が形成されたシリコン基板等からなる保持基板3の上面にフォトダイオード等の受光素子14が固定される。V溝2内には光ファイバ7が収容され、V溝2内に充填された接着剤8によってV溝2内に固定される。また、保持基板3の上面に形成されたスリット15により、光ファイバ7はV溝2内で横切る方向に切断される。
【0005】
スリット15はダイシングソー等の切削工具によって機械的に加工されるものであり、光ファイバ7を太さ方向で切断する深さとなるように保持基板3の上面に形成される。また、スリット15は光ファイバ7の光軸と適宜の角度(例えば、45°や60°の角度)となるように形成され、内部には光学部材16が挿入されて固定される。
【0006】
光学部材16は、誘電体多層膜等からなる光学薄膜が平板状のガラス基板の表面に形成された構造となっており、光学薄膜が光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15の斜面に沿った状態でスリット15内に挿入される。なお、光学部材16は紫外線硬化樹脂等からなる接着剤によってスリット15内に固定されるものである。
【0007】
受光素子14はスリット15を跨ることにより、光学部材16の上部に位置するように保持基板3の上面に固定される。保持部材3の上面には、外部回路との相互接続を行う電極19がパターン形成されており、受光素子14は導電性樹脂20によって電極19と電気的に接続される。
【0008】
このような構造において、図10の矢印Aで示すように、光ファイバ7からの光が光学部材16に達することにより、表面の光学薄膜によって光の一部または特定の波長光が反射される。反射された光は受光素子14に達して電気信号に変換され、電極19から外部回路に出力される(特許文献1参照)。
【0009】
このような構造では、受光素子14を保持基板3の上面に固定する関係から、図8に示す蓋板4は用いられることがなく、光ファイバ7は接着剤8の固定力だけによってV溝2内に固定されるようになっている。なお、図9及び図10においては、光ファイバ7が1本だけが示されているが、図8に示すように複数本を用いることも可能であり、この場合には、V溝2が光ファイバ7の数に相当した本数となる。また、この場合には、スリット15は全ての光ファイバ7を切断するように形成されると共に、受光素子14に対してもそれぞれの光ファイバ7からの反射光を受光する受光部が対応するように形成されるものである。
【0010】
【特許文献1】
国際公開WO97/06458号パンフレット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような光信号の取り出しを行う構造の光ファイバアレイの製造は、光ファイバをV溝に挿入し、蓋板のない状態で接着剤を硬化して光ファイバをV溝内に固定し、その後、保持基板及び光ファイバを同時に切削してスリットを加工する手順で行われる。しかしながら、この場合には、次の問題を有している。
【0012】
(1)蓋板を用いることなく、光ファイバを接着剤によってV溝に固定する構造のため固定強度が弱い。通常の取り扱い程度の場合には、接着剤だけで光ファイバの固定状態を維持することができるが、光信号の取り出しを行う構造の光ファイバアレイでは、接着剤による光ファイバの固定後に、切削加工によってスリットを形成するため、接着剤として切削に耐え得るだけの接着強度が必要となる。そして、スリットの切削加工中に光ファイバが動くと、IN側及びOUT側となるスリット前後の光ファイバの相対位置がずれるため、IN側から出射しOUT側に入射する光の損失が大きくなり、光信号の伝搬効率が低下する。
【0013】
(2)スリットが光ファイバ(すなわち、V溝)を横切るように形成されるところから、スリットの切削加工はV溝の長さ方向と略直交する方向にブレード(砥石)を移動させることにより行われる。この方向の移動では、光ファイバに対してV溝に沿った斜め方向への移動分力が作用し、光ファイバが同方向に移動する。この移動により、光ファイバの位置決め状態が変位して、光が洩れ易くなる。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、切削加工によってスリットを形成しても、光ファイバが位置ずれしたり、変位することなく、光信号を良好に伝搬させることが可能な光ファイバアレイ及び受光素子モジュールを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の光ファイバアレイは、光ファイバを収容するV溝が上面に形成された保持基板と、V溝内に充填されて光ファイバを固定する接着剤と、光ファイバを横切る方向に切断するように保持基板上に切削加工されたスリットとを備え、前記V溝が45°以上95°以下の角度となっていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、V溝を45°〜95°の範囲の角度とすることにより、V溝に充填する接着剤の量を大きく確保することができると共に、砥石による切削時の移動に起因したV溝に沿った移動分力を小さくすることができる。これらにより、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなくなると共に、V溝内での変位を防止することができ、光信号を良好に伝搬することができる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の光ファイバアレイであって、前記V溝の上面が開放状態となっていることを特徴とする。
【0018】
このようにV溝の上面を開放状態としても、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなく、しかもV溝内での変位がない。従って、光ファイバを透過する光の透過効率も高く、且つ受光素子の配置の自由度が増大する。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の光ファイバアレイであって、前記保持基板が透明なガラスであることを特徴とする。
【0020】
保持基板として、透明なガラスを用いることにより、保持基板の硬度が光ファイバと同程度の硬度となるため、スリットを形成するための切削を同一条件とすることができる。これにより、光ファイバの切断を適正に行うことができ、良好な加工品質とすることができる。
【0021】
また、紫外線を透過するため、スリット内に挿入される光学部材の固定を行う接着剤として紫外線硬化樹脂を用いることができる。このため、硬化のための加熱が不要となって熱の悪影響を防止することができるばかりでなく、硬化の際のハンドリングを容易に行うことができる。
【0022】
請求項4の発明の受光素子モジュールは、前記保持基板が透明なガラスからなる請求項1または2記載の光ファイバアレイと、この光ファイバアレイにおけるスリット上部に紫外線硬化樹脂により固定された受光素子とを備えていることを特徴とする。
【0023】
この発明では、紫外線硬化樹脂を用いることにより受光素子が光ファイバアレイの上面に固定されるものである。紫外線硬化樹脂に対しては、受光素子側から紫外線を照射することにより部分的に硬化させて受光素子を仮固定する。その後、保持基板を通して紫外線を硬化することにより、完全に硬化させて受光素子を固定する。これにより、受光素子の調心を行いながら受光素子を固定することができるため、目的の位置に正確に受光素子を固定することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。図1〜図4は、本発明の一実施形態を示し、図1はV溝の角度に応じた分力の変化を、図2はV溝の断面形状を、図3及び図4はスリットを形成する状態をそれぞれ示す。なお、これらの図において、図8〜図10に示す部材と同一の部材には、同じ符号を付してある。
【0025】
この実施形態の光ファイバアレイは、図8にも示すように複数条のV溝2が上面に平行に形成された保持基板3を備えている。保持基板3はダイシングソー等の砥石による切削が可能な材料が使用されるが、その中でも、後述するように透明なガラスが良好である。
【0026】
それぞれのV溝2は光ファイバ7が個々に挿入されることにより光ファイバ7を収容した状態で固定するものであり、光ファイバ7の固定のため、V溝2内には、接着剤8が充填される。接着剤8としては、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂その他のものを適宜使用することができる。
【0027】
以上に加えて、この実施形態の光ファイバアレイは、図9及び図10に示すスリット15及び受光素子14を備えている。
【0028】
スリット15は保持基板3の上面におけるV溝2の形成領域に形成される。また、スリット15は、V溝2に固定されている光ファイバ7を横切って光ファイバ7を切断するものであり、V溝2に光ファイバ7を収容して固定した後に、光ファイバ7を横切るように保持基板3に形成される。
【0029】
このスリット15は、光ファイバ7を切断する深さと相当するような深さとなるように保持基板3の上面に形成されるものであり、このため、使用する光ファイバ7の径によって深さが異なっており、200〜300μmの範囲で適宜選択される。また、スリット15の幅は、光ファイバ7を通過する通過光を低損失とする関係から30〜100μmの範囲内で適宜選択される。
【0030】
図3及び図4において、符号9は、スリット15を形成するための砥石であり、矢印Bで示す方向に回転駆動されながら矢印Cで示す保持基板3の横断方向に移動することにより、全ての光ファイバ7を光軸方向と直交する方向に切断しながら、保持基板3にスリット15を切削加工する。
【0031】
このようなスリット15には、光ファイバ7の光を後述する受光素子14に反射させるための光学部材16(図10参照)が挿入される。光学部材16は、平板状のガラス基板の表面に、誘電体多層膜等からなる光学薄膜が形成された構造となっており、光学薄膜が光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15内に挿入されて固定される。この場合、光ファイバ7の光を反射して受光素子14に入射させるため、光学部材16は所定の角度(例えば、30°〜70°の角度)を有した斜め状態でスリット15内に挿入されるものであり、光学部材16を支持するスリット15も同様な角度を有した斜め状態となるように切削加工される。
【0032】
このような光学部材16は、紫外線硬化樹脂からなる接着剤によってスリット15内に固定されるものである。紫外線硬化樹脂は光を透過するため、光ファイバ7の光を効率良く光学部材16に導くことが可能なためであり、また、熱を加えなくても硬化するため、光学部材16やその他の部材に熱の悪影響を与えることがないためである。
【0033】
受光素子14は並んでいる全ての光ファイバ7を覆うように保持基板3の上面に固定される。この受光素子14の下面には、各光ファイバ7からの反射光を受光する受光部が各光ファイバに対応するように形成されている。なお、受光素子14は、図10と同様に導電性樹脂20によって電極19と接続されており、受光した光を電気信号に変換した後、電極19を介して外部回路に出力するようになっている。
【0034】
この実施形態では、受光素子14を保持基板3の上面に取り付けるため、保持基板3の上面には、図8に示すような蓋板4が取り付けられることがなく、V溝2は上面が開放状態となっている。従って、光ファイバ7は接着剤8の固定力だけによってV溝2内に固定されている。このような状態に対し、図3及び図4に示すように、砥石9が回転しながら移動してスリット15を切削加工すると、光ファイバ7に対して横方向への負荷が作用し、この負荷によって光ファイバ7がV溝2に沿って移動することがある。
【0035】
本発明者は、切削加工時における光ファイバ7の移動がV溝2の角度αに関係していることを見出したものである。この関係を図1(a)及び(b)により説明すると、符号F1は砥石9の切削加工による負荷である。
【0036】
この負荷F1はV溝2の斜面と直交する第1の分力F2と、V溝2の斜面に沿った第2の分力F3とに分解され、第2の分力F3が光ファイバ7をV溝2に沿って移動させる移動力となる。砥石9からの負荷F1が一定の場合、この第2の分力F3は、V溝2の角度αの大きさに比例した大きさとなる。すなわち、V溝2の角度αが小さいと、図1(a)で示すように光ファイバ7の移動力F3が小さくなって光ファイバ7の拘束力が大きくなる。この図1(a)では、V溝2の角度αを50°に設定した場合を示している。一方、V溝2の角度αが大きいと、図1(b)で示すように光ファイバ7の移動力F3が大きくなって光ファイバ7の拘束力が低下する。図1(b)では、V溝2の角度αを120°に設定した場合を示すものである。
【0037】
以上のV溝2に沿った移動力F3に加えて、V溝2内に充填される接着剤8の充填量が光ファイバ7の固定力に影響するものである。すなわち、V溝2内への接着剤8の充填量が多い場合には、光ファイバ7の接着強度を大きく確保することができ、接着剤8の充填量が少なくなるのにつれて、光ファイバ7の接着強度が小さくなるものである。
【0038】
しかも、かかる接着剤8の充填量は、V溝2の角度αに関係している。これを図2により説明すると、同図(a)はV溝2の角度αを小さく(α=30°)設定した場合、同図(b)はV溝の角度αを大きく(α=90°)設定した場合を示す。なお、これらの図においては、V溝2の上面(保持基板3の上面)から光ファイバ7の頂部までの距離及びV溝2の底面から光ファイバ7の底部までの距離を同じとなるように設定している。
【0039】
図2における(a)及び(b)の比較から判るように、V溝2の角度αが小さい場合((a)の場合)には、接着剤8の充填量が少なく、このため光ファイバ7の接着強度が小さくなり、光ファイバ7がV溝2内で移動し易くなっている。これに対し、V溝2の角度αが大きい場合((b)の場合)には、接着剤8の充填量が多くなって光ファイバ7の接着強度が大きくなり、光ファイバ7の拘束力が大きくなる。
【0040】
以上のV溝2の角度αの大きさに応じた光ファイバ7の移動力と、接着剤8の充填量との2要素を考慮して、V溝2の角度を変えながら、砥石9によるスリット15の切削加工を行って光ファイバ7の移動の有無を観察した結果を表1に示す。表1から、V溝2が45°以上95°以下の角度の場合に、光ファイバ7が移動することがなく、これにより、光ファイバのIN側からOUT側への光信号の損失が少なく、高効率な光信号の伝搬を行うことができるばかりでなく、V溝2内での光ファイバ7の変位がなくなることが判る。
【0041】
【表1】
この実施形態において、保持基板3としてガラスを用いることが好ましい。上述したように、保持基板3及び保持基板3に取り付けられた光ファイバ7を同時に切削加工することによりスリット15が形成されるようになっている。このような同時加工において、保持基板3と光ファイバ7との硬度が大きく異なると、加工条件を双方に合わせることができず、加工品質が低下する。これに加えて、切削加工を行う対象体積は、光ファイバ7よりも保持基板3の方が大きく、切削条件を光ファイバ7に合わせると、保持基板3を適正に切削加工することができなくなる。この実施形態のように、保持基板3としてガラスを用いる場合には、石英からなるファイバ7と硬度等の物性が近似しているため、加工条件を合わせることができ、良好な加工品質を得ることが可能となる。
【0042】
また、光学部材16の固定のために、紫外線硬化樹脂を用いるのに対し、保持基板3がガラスの場合、紫外線を透過するため、紫外線硬化樹脂を円滑に硬化させることが可能となる。
【0043】
さらに、受光素子14を保持基板3上に固定する際の接着剤として、紫外線硬化樹脂を用いる場合のハンドリングを容易に行うことが可能となる。すなわち、保持基板3がガラスの場合、紫外線を透過するため、受光素子14を調心した後、受光素子14側から紫外線を照射することにより部分的に硬化して仮固定し、その後、反転して保持基板3の裏側から紫外線を照射して完全に硬化するハンドリングが可能となるものである。
【0044】
図5及び図6は、本発明の一実施形態の受光素子モジュール30を示し、以上の光ファイバアレイ31と、光ファイバアレイ31上に固定されたフォトダイオードアレイからなる受光素子32とを備えている。
【0045】
光ファイバアレイ31は、リボンファイバ34からの光ファイバ7をそれぞれ収容する複数条のV溝2が上面に形成された保持基板3を有している。保持基板3は透明なガラスによって形成されており、光ファイバ7及びV溝2を横断するスリット15が上面に形成され、このスリット15内に光学部材16が挿入された状態で上述と同様に、接着剤によって固定されている。光学部材16は光ファイバ7の光を受光素子32に反射するものであり、このための光学薄膜16aが平板状のガラス基板16bの表面に形成され、この光学薄膜16aが光ファイバ7の入射側に位置するようにスリット15内に挿入されている。なお、V溝2については、45°〜95°の角度となるように形成されるものである。図6において、矢印Hは、光ファイバ7内の光の伝播方向である。
【0046】
受光素子32は以上の光ファイバアレイ31におけるスリット15(すなわち光学部材16)の上部に位置するように保持基板3に固定される。この固定は、紫外線硬化樹脂35によって行われる。なお、受光素子32の上方には、金等のバンプ36によって受光素子32と接続されたサブマウント基板37が配置されている。サブマウント基板37は、アルミナ等のセラミックスによって形成されており、受光素子32の周囲に立ち上がり状に配置された透明なスペーサ38に支持された状態となっている。
【0047】
この実施形態では、受光素子32を光ファイバアレイ31に固定するために紫外線硬化樹脂35を用いていることから生産性が高く、しかも特性の良好なモジュールとすることができる。すなわち、スリット15上に受光素子32を搭載する場合、受光素子32及びサブマウント基板37が紫外線を透過しないため、受光素子32側から紫外線を照射しても紫外線硬化樹脂35を硬化することができないため、調心装置(図示省略)上での受光素子32の固定に長時間を要しているのに対し、保持基板3が透明なガラスの場合には、紫外線を透過するため、調心装置上で受光素子32を調心した後、受光素子32側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂35を部分的に硬化させることができる。この部分的な硬化により、受光素子32を短時間で仮固定することができる。
【0048】
その後、モジュールの全体を調心装置から外し、反転させた状態で保持基板3の裏側から紫外線を照射する。この照射によって紫外線硬化樹脂35が完全に硬化するため、受光素子32を本固定することができる。
【0049】
従って、この実施形態では調心装置を制約する時間が短く、生産性が良好となるのに加え、調心後に短時間で仮固定することができるため、調心状態のままで固定することができ、受光素子32を目的の位置に確実に固定することが可能となる。これにより、受光素子32の特性を十分に発揮させることができる。
【0050】
図7は、本発明の別の実施形態における光ファイバアレイを示す。この光ファイバアレイは複数のV溝が形成された保持基板3と、それぞれのV溝に収容されることにより位置決め状態で固定される複数の光ファイバ7とを備えており、光ファイバ7を切断するスリット15が切削加工によって保持基板3の上面に形成される。
【0051】
スリット15の形成に際しては、砥石9を高速回転させながら保持基板3に切り込むことにより行われる。この形態では、ダミー部材21を砥石9の切り込み側に配置するものである。このダミー部材21に対しては保持基板3と同様に、砥石9の切り込みが行われる。
【0052】
このように砥石9の切り込み側にダミー部材21を設け、ダミー部材21に切り込んだ後に保持基板3に切り込んでスリット15を切削加工する場合には、保持基板3への切り込みの際に加工負荷が大きく変化することがないと共に、砥石9の回転ブレもなくなっている。このため、円滑な状態でスリット15を形成することができ、スリット15へ加工負荷を軽減することができる。なお、ダミー部材21としては、加工が施される保持基板3と同じ材質を用いることが加工負荷の観点から好ましい。
【0053】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、V溝に充填する接着剤の量を大きく確保することができると共に、ブレードによる切削時の移動に起因したV溝に沿った移動分力を小さくすることができるため、スリット前後における光ファイバの相対位置のずれがなくなると共に、V溝内での変位を防止することができ、光信号を良好に伝搬することができる。
【0054】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、V溝の開放部分に対して受光素子を配置することができるため、受光素子の配置の自由度が増大する。
【0055】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明に加えて、光ファイバの切断を適正に行うことができ、良好な加工品質とすることができ、しかも接着剤として紫外線硬化樹脂を用いることができるため、硬化のための加熱が不要となって熱の悪影響を防止することができるばかりでなく、硬化の際のハンドリングを容易に行うことができる。
【0056】
請求項4の発明によれば、紫外線硬化樹脂の部分的な硬化による受光素子の仮固定を行った後、紫外線硬化樹脂の完全硬化によって受光素子の固定を行うことができるため、調心を行いながらの受光素子の固定が可能となり、目的の位置に正確に受光素子を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は本発明の光ファイバアレイの一実施形態における切削加工の際のV溝の角度による移動力の変化を示す断面図である。
【図2】(a),(b)はV溝の角度による接着剤の充填量の変化を示す断面図である。
【図3】砥石による切削加工を示す正面図である。
【図4】砥石による切削加工を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の受光素子モジュールの一実施形態の斜視図である。
【図6】受光素子モジュールの断面図である。
【図7】本発明の別の実施形態における切削加工を示す平面図である。
【図8】光ファイバアレイの一例の斜視図である。
【図9】従来の光ファイバアレイの斜視図である。
【図10】従来の光ファイバアレイの断面図である。
【符号の説明】
2 V溝
3 保持基板
7 光ファイバ
8 接着剤
9 砥石
14 32 受光素子
15 スリット
16 光学部材
30 受光素子モジュール
31 光ファイバアレイ
35 紫外線硬化樹脂
Claims (4)
- 光ファイバを収容するV溝が上面に形成された保持基板と、V溝内に充填されて光ファイバを固定する接着剤と、光ファイバを横切る方向に切断するように保持基板上に切削加工されたスリットとを備え、前記V溝が45°以上95°以下の角度となっていることを特徴とする光ファイバアレイ。
- 前記V溝の上面が開放状態となっていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバアレイ。
- 前記保持基板が透明なガラスであることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバアレイ。
- 前記保持基板が透明なガラスからなる請求項1または2記載の光ファイバアレイと、この光ファイバアレイにおけるスリット上部に紫外線硬化樹脂により固定された受光素子とを備えていることを特徴とする受光素子モジュール。
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