JP2004244380A - キノロンカルボン酸の製造中間体および製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の製造中間体および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キノロンカルボン酸の各種誘導体は、合成抗菌薬として医療に汎用されているが、耐性菌の発現や副作用が治療上の大きな問題となっている。そのような問題の解決を図る目的で、多くのキノロンカルボン酸誘導体が合成され、既存のキノロン剤に耐性を示す菌に対する抗菌活性や安全性面に優れたキノロン化合物が研究されている。
式(1)
【化17】
【0003】
で表わされる化合物(以下、化合物(1)という。他の番号により示される化合物についても同じ。)は、強力な抗菌活性を有する(特許文献1等)。特に下式
【化18】
【0004】
で表わされる化合物は耐性菌にも高い抗菌活性を有し、さらに、医薬品として問題となるような一般毒性はもとより光毒性についても著しく軽減され、副作用の問題を解決できると期待される化合物である(特許文献2等)。
【0005】
しかしながら、従来の化合物(1)の製造方法で用いられてきた中間体は物性面等で工業的に適しておらず、また、収率面でも満足できる収率で化合物(1)を得ることができないという問題があり、その解決策が求められてきた。
【0006】
化合物(1)は、式(2)
【化19】
【0007】
で表わされる化合物に、例えば、式(7)
【化20】
【0008】
で表わされる化合物、または式(8)
【化21】
【0009】
で表わされる化合物を反応させることで製造できる(特許文献1等)。
【0010】
しかしながら、化合物(7)および化合物(8)はともに吸湿性を有するため、吸湿や分解を避けるためには温度・湿度を一定条件に保持した場所での保存が必要である。また、大量製造時において正確な秤量を行うためには、秤量室内の空気を一定の温度・湿度に保持した上で迅速に秤量操作を行う必要があった。以上のように、化合物(7)および化合物(8)は、工業的に取り扱うには不適切な物性を有している。
【0011】
また、化合物(7)を化合物(2)に相当する下式
【化22】
【0012】
で表わされる化合物と反応させた場合は、化合物(1)の収率が61%程度であって、さらに優れた収率を達成できる方法が望まれていたという問題もあった(特許文献2)。
【0013】
さらに、化合物(7)および(8)自体の製造にも以下のような問題があった。化合物(7)および(8)の大量製造の最終段階においては、これらを晶析し、濾過して得ている。工業的には晶析缶で晶析した結晶を母液とともに濾過機へ排出するが、晶析時に結晶が缶底に沈殿して固化したり、缶壁に結晶が付着したりして、排出後も相当量の結晶が晶析缶に残存する場合がある。このような場合に通常は適量の有機溶媒を使用して晶析缶に残存した結晶をスラリー状態にして濾過機へ流し込み、収量および収率を確保する。また、同時にスラリー液中の有機溶媒により結晶を洗浄して純度を向上させる。洗浄操作は、結晶が晶析缶に残存しなくとも純度向上のために有機溶媒を用いて実施するのが好ましい。しかしながら、化合物(7)の結晶は通常の有機溶媒への溶解度が低く、洗浄操作では純度が有効に向上しない。逆に化合物(8)の結晶は通常の有機溶媒への溶解度が高く、上記の残存結晶のスラリー化およびスラリー液または有機溶媒による結晶の洗浄操作により、結晶が溶解して収率が大幅に低下するという問題があった。
【0014】
上記のように、化合物(1)の7位置換基導入用の製造中間体として、保存、取り扱い、製造、または精製の容易な化合物であって、化合物(1)を収率良く得られるような化合物が熱望されていた。
【特許文献1】特開2002−201191
【特許文献2】WO 01/72738
【発明が解決しようとする課題】本発明は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の7位置換基導入用の製造中間体として、保存、取り扱い、製造、または精製の容易な化合物であって、化合物(1)を収率良く得られるような化合物およびその製造方法並びにその製造中間体を用いたキノロンカルボン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の7位置換基導入用の製造中間体について鋭意検討し、イミノ構造を持つ化合物が、所望の物性を有し、保存、取り扱い、製造、または精製が容易であって、キノロンカルボン酸の効率的な製造方法に適していることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、
式(3)
【化23】
【0017】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(4)
【化24】
【0018】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物;
R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
nが2である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(6)
【化25】
【0019】
(式中、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式
【化26】
【0020】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物を反応させることを特徴とする式(3)
【化27】
【0021】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(2)
【化28】
【0022】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(3)
【化29】
【0023】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を所望により脱保護した後、塩基存在下で反応させることを特徴とする式(4)
【化30】
【0024】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(4)
【化31】
【0025】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
【化32】
【0026】
(式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、チオール基または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(6)
【化33】
【0027】
(式中、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(5)
【化34】
【0028】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物を反応させて、得られた式(3)
【化35】
【0029】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を、所望により脱保護した後、式(2)
【化36】
【0030】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に塩基存在下で反応させて、得られた式(4)
【化37】
【0031】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
【化38】
【0032】
(式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である上記の製造方法;
nが2である上記の製造方法等
に関する。
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0033】
化合物(3)について説明する。化合物(3)は式(3)で表わされる。
【化39】
【0034】
式(3)中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。ここで、アリール基が有していてもよい置換基としては、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基等を挙げることができ、置換位置は問わず、1種以上が1個から4個置換していてもよい。
R21およびR22としては、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方が炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である場合が好ましく、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である場合がより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、iープロピル基、n―ブチル基、セカンダリーブチル基、またはt−ブチル基であることが望ましい。置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としてはフェニル基が好ましい。
ここで、R21およびR22とが各々異なる基である場合、例えば、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方がフェニル基である場合には、下式のように2個の幾何異性体があり得る。
【化40】
【0035】
本発明の化合物(3)においては、E体またはZ体のいずれであってもよい。
R23は、水素原子または保護基を意味する。R23が保護基の場合は、所望に応じて化合物(2)と化合物(3)との反応に先立って脱保護するか、反応と同時に脱保護するかを選択すればよい。
保護基としては、窒素原子の保護基として汎用されているものであれば、特に限定されないが、第三級ブトキシカルボニル基(Boc基)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基、第三級ブチル基等のアルキル基、1−フェニルエチル基、ベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、テトラヒドロフラニル基等のアルコキシアルキル基、またはトリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の置換シリル基を挙げることができる。これらのうちでは、ベンジル基またはアセチル基が好ましい。
nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。このうち、nが2の場合が好ましい。
化合物(3)の立体配置は、下式のものが好ましい。
【化41】
【0036】
化合物(3)におけるR21、R22、R23、n、および立体配置に関する説明は、本明細書中で、特に明記しなくとも、他の化合物においても同様である。
次に、化合物(4)について説明する。化合物(4)は式(4)で表わされる。
【化42】
【0037】
式(4)中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味するが、水素原子が好ましい。
R21およびR22については化合物(3)におけるR21およびR22に関する説明と同様であり、E体またはZ体のいずれでもよいことも化合物(3)と同様である。
Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味するが、AとしてはC−X2が好ましく、X2としてはハロゲン原子または炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては塩素原子が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基としてはメトキシ基が好ましい。X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味するが、フッ素原子が好ましい。
Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味するが、水素原子または
−B(Y)2
で表わされる基が好ましい。ここで、Yとしてはフッ素原子が好ましい。
【0038】
化合物(1)におけるR21、R22、R23、A、X1、X2、Y、Z、およびnの説明は、本明細書中で、特に明記しなくとも、他の化合物においても同様である。
【0039】
化合物(3)の製造方法について説明する。化合物(3)は以下の工程で収率よく合成することができる。
【化43】
【0040】
すなわち、化合物(6)とケトンもしくはアルデヒド化合物(5)とを無溶媒で、もしくは溶媒中で所望に応じて酸もしくは塩基および/または脱水剤の存在下に反応させればよい。酸は化合物(6)のR23が保護基である場合に必要な場合がある。塩基は化合物(6)が酸付加塩である場合に必要である場合がある。脱水剤は反応の進行を促進するため等の目的で使用することができる。使用する溶媒は反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール等を挙げることができ、i−プロパノールが好ましい。塩基としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(固体、水溶液、もしくはアルコール溶液)が挙げられるが、トリエチルアミンが好ましい。脱水剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブ等が挙げられ、硫酸ナトリウムが好ましい。反応温度は、反応液の凝固点から沸点の間で任意に選択可能であるが、好ましくは室温から反応液の沸点の間である。
特に、R21およびR22の一方が水素原子であって、他方がフェニル基である場合の化合物(3)は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒中で、容易に晶析させることができ、得られる結晶の性状がよく、濾過性も非常に良好である。さらに得られた結晶を酢酸エチルまたはイソプロピルエーテル等の溶媒でスラリー精製を行なうこともでき、純度向上のための精製がきわめて容易である。また、得られた化合物(3)の結晶は、吸湿性を示さなかった。
次に、化合物(4)の製造方法について説明する。製造条件としては、化合物(2)と化合物(3)とを塩基存在下溶媒中で反応させればよい。化合物(3)は、遊離塩基であってもよいし、無機酸または有機酸との塩であってもよいが、保護基を有している場合は、化合物(2)との反応前あるいは反応と同時に脱保護する必要がある。化合物(3)は、反応の完全な終了のためには1当量以上を用いることが好ましい。化合物(3)が遊離塩基の場合には、塩基を1当量以上用いることが好ましく、2当量以上用いる方がより好ましい。化合物(3)が塩である場合には、その塩を遊離塩基とするのに必要な当量に加えて、反応により生成するフッ化水素の捕捉に必要な当量以上の塩基を用いるのがよい。化合物(3)の塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマール酸等の無機酸もしくは有機酸の塩を挙げることができる。また、それらの塩は、水和物または溶媒和物となっていてもよい。塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(水溶液もしくはアルコール溶液)を挙げることができるが、トリエチルアミンが好ましい。反応溶媒としては、反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等を挙げることができ、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。反応温度は、反応液の凝固点から沸点の間で任意に選択可能であるが、好ましくは室温から反応液の沸点の間である。また、反応時間は、原料消失を確認するまでであるが、通常は1時間から100時間であり、好ましくは1時間から72時間である。
なお、化合物(2)のZがジフルオロボリル基(−BF2)等の下式
−B(Y)2
【0041】
で表される基である場合には、所望に応じて脱ホウ素キレート化処理も同時に行なってよい。脱ホウ素キレート化処理は、化合物(2)への化合物(3)の導入反応を上記の溶媒中で上記の塩基を添加して数時間50℃以上に加熱することにより、行なえばよい。
【0042】
化合物(1)の製造方法について説明する。化合物(4)から化合物(1)の製造においては、Zがジフルオロボリル基(−BF2)等の下式
−B(Y)2
【0043】
で表される基である場合に、脱ホウ素キレート化処理が必要である。脱ホウ素キレート化処理は、化合物(4)を溶媒に溶解し、所望に応じて塩基を添加して数時間加熱すればよい。ここで、溶媒は反応を阻害しなければ特に限定されないが、加熱時に化合物(4)を溶解できるものが好ましく、例えば、水、メチルアルコール、エタノール、イソプロパノール等の極性溶媒またはこれらの混合溶媒が挙げられるが、水とイソプロパノールの混合溶媒が好ましい。所望に応じて添加する塩基としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(水溶液もしくはアルコール溶液)が挙げられるが、トリエチルアミンまたはアンモニアが好ましい。ここで、化合物(4)は単離精製したものを用いる必要はなく、化合物(2)とアミン(3)の反応液をそのまま使用してもよく、あるいは、化合物(4)の抽出液自体もしくは抽出液から溶媒を留去して得た濃縮残渣を使用してもよい。
【0044】
下式
【化44】
【0045】
で表わされる基は、アミノ基が置換イミノ基として保護されている構造であり、これを脱保護するためには酸性条件下で加水分解する酸処理を行なえばよい。ここで、使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸、または、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられ、塩酸が好ましい。使用する溶媒は、酸の種類や濃度などにより適宜選択すれば良いが、加熱時に化合物(4)を溶解させるものが好ましく、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。酸処理の温度としては、使用する酸の種類や濃度あるいは溶媒に応じて、−30〜100℃までの温度を適宜選択すればよい。
このようにしてアミノ基の脱保護が達成できるが、その際に保護基の導入のために使用した化合物(5)を回収することが可能である。すなわち、脱保護のための酸処理後に化合物(1)を水相に溶解させ、化合物(1)が難溶である溶媒で化合物(5)を抽出し、所望により蒸留することにより、化合物(5)を高い回収率で回収することができる。化合物(5)の抽出溶媒としてはトルエン、イソプロピルエーテル、酢酸エチル等の非極性溶媒が好ましく、イソプロピルエーテルがより好ましい。
【0046】
上記の製造方法において、化合物(1)は遊離体として得てもよいし、塩として得てもよい。塩の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等の無機酸もしくは有機酸の酸付加塩、あるいはナトリウム、カリウム、カルシウムまたはリチウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボキシル基の塩等が挙げることができる。さらには、化合物(1)が遊離体または塩のいずれの場合においても、溶媒和物として得てもよく、溶媒和物としては、水、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン等の溶媒和物の他に、空気中の水分を吸収して形成された水和物等を挙げることができる。
【0047】
【実施例】本発明の化合物およびその製造方法並びにそれらの化合物を中間体とするキノロンカルボン酸誘導体の製造方法を具体例で以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1] 7−(R)−N−[フェニルメチリデン]−5−アザスピロ[2,4]ヘプタン−7−アミン(3)
5−アザ−スピロ[2,4]ヘプト−7−イルアミン 2塩酸塩(1.85g)を50mlのナス型フラスコに入れ、イソプロピルアルコール(9.25ml)、トリエチルアミン(3.03g)を連続的に入れ、40℃で2時間攪拌した。その後ベンズアルデヒド(1.06g)を滴下し、さらに40℃で8時間攪拌した。硫酸ナトリウム(1.4g)を加え30分攪拌したところで、攪拌を停止した。ろ過により硫酸ナトリウムをろ取し、ろ液を溶媒留去した。溶媒留去後、酢酸エチル(10ml)を入れ、室温で6時間攪拌した。攪拌後ろ取し、表題化合物1.87g(収率93.7%)で表題化合物を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.68−0.75(m、4H),3.01−3.11(m、2H)、3.34−3.40−4.00(m、1H)、3.50−3.54(m、1H)、3.60−3.83(m、2H)、7.34−7.38(m、3H)、7.67−7.89(m、2H)、8.17(s、1H))
[実施例2] 6−フルオロ−1−[(1S,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソ−7−((7R)−7− { [フェニルメチリデン]アミン } −5−アザスピロ [ 2,4 ] へプト−5−イル)−1 , 4−ジヒドロ−3−キノロンカルボン酸(2)
3−{[(ジフルオロボリル)オキシ]カルボニル}−6,7−ジフルオロ−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソキノリン(1.8g)を50mlのナス型フラスコに入れ、7−(R)−N−[フェニルメチリデン]−5−アザスピロ[2,4]ヘプタン−7−アミン(1.1g)とN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)を連続的に入れ、攪拌を開始した。続いて、トリエチルアミン(2.7ml)を添加し、60℃まで昇温し攪拌を続けた。1時間攪拌後、室温まで放冷し水(20ml)を加え3時間攪拌した。さらに0℃で1時間攪拌し、結晶をろ取、乾燥し表題化合物2.57g(収率95%)で得た。
[実施例3] 7−{7−(S)−アミノ−5−アザスピロ[2.4]ヘプト−5−イル}−6−フルオロ−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(1)
6−フルオロ−1−[(1S,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソ−7−((7R)−7−{[フェニルメチリデン]アミン}−5−アザスピロ[2,4]ヘプト−5−イル)−1,4−ジヒドロ−3−キノロンカルボン酸(270mg)を水(2.7ml)とイソプロピルアルコール(1.3ml)との混合溶媒中に入れ、6規定塩酸(0.1ml)を入れて60℃で6時間加熱攪拌した。反応終了後、イソプロパノールを留去し、水3(ml)を足し、ジイソプロピルエーテル(10ml)で洗浄した。水相のHPLC定量を行なったところ、表題化合物188.7mg(収率93%)であった。水相にイソプロパノール(10ml)を入れて溶媒留去を3度繰り返し、最後にイロプロパノール(10ml)と6規定塩酸を入れ、60度に加熱し2時間攪拌した。その後室温に放冷し、さらに0℃で3時間攪拌し、析出した結晶をろ取した。乾燥後、表題化合物160.9mg(収率70%)を得た。なお、ベンズアルデヒドは洗浄に用いたイソプロピルエーテル溶液45mg(回収率85%)として回収した。
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の製造中間体および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キノロンカルボン酸の各種誘導体は、合成抗菌薬として医療に汎用されているが、耐性菌の発現や副作用が治療上の大きな問題となっている。そのような問題の解決を図る目的で、多くのキノロンカルボン酸誘導体が合成され、既存のキノロン剤に耐性を示す菌に対する抗菌活性や安全性面に優れたキノロン化合物が研究されている。
式(1)
【化17】
【0003】
で表わされる化合物(以下、化合物(1)という。他の番号により示される化合物についても同じ。)は、強力な抗菌活性を有する(特許文献1等)。特に下式
【化18】
【0004】
で表わされる化合物は耐性菌にも高い抗菌活性を有し、さらに、医薬品として問題となるような一般毒性はもとより光毒性についても著しく軽減され、副作用の問題を解決できると期待される化合物である(特許文献2等)。
【0005】
しかしながら、従来の化合物(1)の製造方法で用いられてきた中間体は物性面等で工業的に適しておらず、また、収率面でも満足できる収率で化合物(1)を得ることができないという問題があり、その解決策が求められてきた。
【0006】
化合物(1)は、式(2)
【化19】
【0007】
で表わされる化合物に、例えば、式(7)
【化20】
【0008】
で表わされる化合物、または式(8)
【化21】
【0009】
で表わされる化合物を反応させることで製造できる(特許文献1等)。
【0010】
しかしながら、化合物(7)および化合物(8)はともに吸湿性を有するため、吸湿や分解を避けるためには温度・湿度を一定条件に保持した場所での保存が必要である。また、大量製造時において正確な秤量を行うためには、秤量室内の空気を一定の温度・湿度に保持した上で迅速に秤量操作を行う必要があった。以上のように、化合物(7)および化合物(8)は、工業的に取り扱うには不適切な物性を有している。
【0011】
また、化合物(7)を化合物(2)に相当する下式
【化22】
【0012】
で表わされる化合物と反応させた場合は、化合物(1)の収率が61%程度であって、さらに優れた収率を達成できる方法が望まれていたという問題もあった(特許文献2)。
【0013】
さらに、化合物(7)および(8)自体の製造にも以下のような問題があった。化合物(7)および(8)の大量製造の最終段階においては、これらを晶析し、濾過して得ている。工業的には晶析缶で晶析した結晶を母液とともに濾過機へ排出するが、晶析時に結晶が缶底に沈殿して固化したり、缶壁に結晶が付着したりして、排出後も相当量の結晶が晶析缶に残存する場合がある。このような場合に通常は適量の有機溶媒を使用して晶析缶に残存した結晶をスラリー状態にして濾過機へ流し込み、収量および収率を確保する。また、同時にスラリー液中の有機溶媒により結晶を洗浄して純度を向上させる。洗浄操作は、結晶が晶析缶に残存しなくとも純度向上のために有機溶媒を用いて実施するのが好ましい。しかしながら、化合物(7)の結晶は通常の有機溶媒への溶解度が低く、洗浄操作では純度が有効に向上しない。逆に化合物(8)の結晶は通常の有機溶媒への溶解度が高く、上記の残存結晶のスラリー化およびスラリー液または有機溶媒による結晶の洗浄操作により、結晶が溶解して収率が大幅に低下するという問題があった。
【0014】
上記のように、化合物(1)の7位置換基導入用の製造中間体として、保存、取り扱い、製造、または精製の容易な化合物であって、化合物(1)を収率良く得られるような化合物が熱望されていた。
【特許文献1】特開2002−201191
【特許文献2】WO 01/72738
【発明が解決しようとする課題】本発明は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の7位置換基導入用の製造中間体として、保存、取り扱い、製造、または精製の容易な化合物であって、化合物(1)を収率良く得られるような化合物およびその製造方法並びにその製造中間体を用いたキノロンカルボン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、抗菌性化合物であるキノロンカルボン酸の7位置換基導入用の製造中間体について鋭意検討し、イミノ構造を持つ化合物が、所望の物性を有し、保存、取り扱い、製造、または精製が容易であって、キノロンカルボン酸の効率的な製造方法に適していることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、
式(3)
【化23】
【0017】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(4)
【化24】
【0018】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物;
R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
nが2である上記の化合物、その塩、またはそれらの水和物;
式(6)
【化25】
【0019】
(式中、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式
【化26】
【0020】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物を反応させることを特徴とする式(3)
【化27】
【0021】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(2)
【化28】
【0022】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(3)
【化29】
【0023】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を所望により脱保護した後、塩基存在下で反応させることを特徴とする式(4)
【化30】
【0024】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(4)
【化31】
【0025】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
【化32】
【0026】
(式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、チオール基または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
式(6)
【化33】
【0027】
(式中、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(5)
【化34】
【0028】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物を反応させて、得られた式(3)
【化35】
【0029】
(式中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、R23は、水素原子または保護基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を、所望により脱保護した後、式(2)
【化36】
【0030】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に塩基存在下で反応させて、得られた式(4)
【化37】
【0031】
[式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
【化38】
【0032】
(式中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味し、Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X1は、ハロゲン原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。)で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法;
R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である上記の製造方法;
nが2である上記の製造方法等
に関する。
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0033】
化合物(3)について説明する。化合物(3)は式(3)で表わされる。
【化39】
【0034】
式(3)中、R21およびR22は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。ここで、アリール基が有していてもよい置換基としては、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基等を挙げることができ、置換位置は問わず、1種以上が1個から4個置換していてもよい。
R21およびR22としては、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方が炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である場合が好ましく、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である場合がより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、iープロピル基、n―ブチル基、セカンダリーブチル基、またはt−ブチル基であることが望ましい。置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としてはフェニル基が好ましい。
ここで、R21およびR22とが各々異なる基である場合、例えば、R21およびR22の一方が、水素原子であって、他方がフェニル基である場合には、下式のように2個の幾何異性体があり得る。
【化40】
【0035】
本発明の化合物(3)においては、E体またはZ体のいずれであってもよい。
R23は、水素原子または保護基を意味する。R23が保護基の場合は、所望に応じて化合物(2)と化合物(3)との反応に先立って脱保護するか、反応と同時に脱保護するかを選択すればよい。
保護基としては、窒素原子の保護基として汎用されているものであれば、特に限定されないが、第三級ブトキシカルボニル基(Boc基)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基、第三級ブチル基等のアルキル基、1−フェニルエチル基、ベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、テトラヒドロフラニル基等のアルコキシアルキル基、またはトリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の置換シリル基を挙げることができる。これらのうちでは、ベンジル基またはアセチル基が好ましい。
nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。このうち、nが2の場合が好ましい。
化合物(3)の立体配置は、下式のものが好ましい。
【化41】
【0036】
化合物(3)におけるR21、R22、R23、n、および立体配置に関する説明は、本明細書中で、特に明記しなくとも、他の化合物においても同様である。
次に、化合物(4)について説明する。化合物(4)は式(4)で表わされる。
【化42】
【0037】
式(4)中、R1は、アミノ基、メチルアミノ基、水酸基、メルカプト基、または水素原子を意味するが、水素原子が好ましい。
R21およびR22については化合物(3)におけるR21およびR22に関する説明と同様であり、E体またはZ体のいずれでもよいことも化合物(3)と同様である。
Aは、C−X2または窒素原子を意味し、X2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチル基、または水素原子を意味するが、AとしてはC−X2が好ましく、X2としてはハロゲン原子または炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては塩素原子が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基としてはメトキシ基が好ましい。X1は、水素原子またはハロゲン原子を意味するが、フッ素原子が好ましい。
Zは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または下式
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味するが、水素原子または
−B(Y)2
で表わされる基が好ましい。ここで、Yとしてはフッ素原子が好ましい。
【0038】
化合物(1)におけるR21、R22、R23、A、X1、X2、Y、Z、およびnの説明は、本明細書中で、特に明記しなくとも、他の化合物においても同様である。
【0039】
化合物(3)の製造方法について説明する。化合物(3)は以下の工程で収率よく合成することができる。
【化43】
【0040】
すなわち、化合物(6)とケトンもしくはアルデヒド化合物(5)とを無溶媒で、もしくは溶媒中で所望に応じて酸もしくは塩基および/または脱水剤の存在下に反応させればよい。酸は化合物(6)のR23が保護基である場合に必要な場合がある。塩基は化合物(6)が酸付加塩である場合に必要である場合がある。脱水剤は反応の進行を促進するため等の目的で使用することができる。使用する溶媒は反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール等を挙げることができ、i−プロパノールが好ましい。塩基としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(固体、水溶液、もしくはアルコール溶液)が挙げられるが、トリエチルアミンが好ましい。脱水剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブ等が挙げられ、硫酸ナトリウムが好ましい。反応温度は、反応液の凝固点から沸点の間で任意に選択可能であるが、好ましくは室温から反応液の沸点の間である。
特に、R21およびR22の一方が水素原子であって、他方がフェニル基である場合の化合物(3)は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒中で、容易に晶析させることができ、得られる結晶の性状がよく、濾過性も非常に良好である。さらに得られた結晶を酢酸エチルまたはイソプロピルエーテル等の溶媒でスラリー精製を行なうこともでき、純度向上のための精製がきわめて容易である。また、得られた化合物(3)の結晶は、吸湿性を示さなかった。
次に、化合物(4)の製造方法について説明する。製造条件としては、化合物(2)と化合物(3)とを塩基存在下溶媒中で反応させればよい。化合物(3)は、遊離塩基であってもよいし、無機酸または有機酸との塩であってもよいが、保護基を有している場合は、化合物(2)との反応前あるいは反応と同時に脱保護する必要がある。化合物(3)は、反応の完全な終了のためには1当量以上を用いることが好ましい。化合物(3)が遊離塩基の場合には、塩基を1当量以上用いることが好ましく、2当量以上用いる方がより好ましい。化合物(3)が塩である場合には、その塩を遊離塩基とするのに必要な当量に加えて、反応により生成するフッ化水素の捕捉に必要な当量以上の塩基を用いるのがよい。化合物(3)の塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマール酸等の無機酸もしくは有機酸の塩を挙げることができる。また、それらの塩は、水和物または溶媒和物となっていてもよい。塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(水溶液もしくはアルコール溶液)を挙げることができるが、トリエチルアミンが好ましい。反応溶媒としては、反応を阻害しなければ特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等を挙げることができ、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。反応温度は、反応液の凝固点から沸点の間で任意に選択可能であるが、好ましくは室温から反応液の沸点の間である。また、反応時間は、原料消失を確認するまでであるが、通常は1時間から100時間であり、好ましくは1時間から72時間である。
なお、化合物(2)のZがジフルオロボリル基(−BF2)等の下式
−B(Y)2
【0041】
で表される基である場合には、所望に応じて脱ホウ素キレート化処理も同時に行なってよい。脱ホウ素キレート化処理は、化合物(2)への化合物(3)の導入反応を上記の溶媒中で上記の塩基を添加して数時間50℃以上に加熱することにより、行なえばよい。
【0042】
化合物(1)の製造方法について説明する。化合物(4)から化合物(1)の製造においては、Zがジフルオロボリル基(−BF2)等の下式
−B(Y)2
【0043】
で表される基である場合に、脱ホウ素キレート化処理が必要である。脱ホウ素キレート化処理は、化合物(4)を溶媒に溶解し、所望に応じて塩基を添加して数時間加熱すればよい。ここで、溶媒は反応を阻害しなければ特に限定されないが、加熱時に化合物(4)を溶解できるものが好ましく、例えば、水、メチルアルコール、エタノール、イソプロパノール等の極性溶媒またはこれらの混合溶媒が挙げられるが、水とイソプロパノールの混合溶媒が好ましい。所望に応じて添加する塩基としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基、またはアンモニア、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基(水溶液もしくはアルコール溶液)が挙げられるが、トリエチルアミンまたはアンモニアが好ましい。ここで、化合物(4)は単離精製したものを用いる必要はなく、化合物(2)とアミン(3)の反応液をそのまま使用してもよく、あるいは、化合物(4)の抽出液自体もしくは抽出液から溶媒を留去して得た濃縮残渣を使用してもよい。
【0044】
下式
【化44】
【0045】
で表わされる基は、アミノ基が置換イミノ基として保護されている構造であり、これを脱保護するためには酸性条件下で加水分解する酸処理を行なえばよい。ここで、使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸、または、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられ、塩酸が好ましい。使用する溶媒は、酸の種類や濃度などにより適宜選択すれば良いが、加熱時に化合物(4)を溶解させるものが好ましく、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。酸処理の温度としては、使用する酸の種類や濃度あるいは溶媒に応じて、−30〜100℃までの温度を適宜選択すればよい。
このようにしてアミノ基の脱保護が達成できるが、その際に保護基の導入のために使用した化合物(5)を回収することが可能である。すなわち、脱保護のための酸処理後に化合物(1)を水相に溶解させ、化合物(1)が難溶である溶媒で化合物(5)を抽出し、所望により蒸留することにより、化合物(5)を高い回収率で回収することができる。化合物(5)の抽出溶媒としてはトルエン、イソプロピルエーテル、酢酸エチル等の非極性溶媒が好ましく、イソプロピルエーテルがより好ましい。
【0046】
上記の製造方法において、化合物(1)は遊離体として得てもよいし、塩として得てもよい。塩の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等の無機酸もしくは有機酸の酸付加塩、あるいはナトリウム、カリウム、カルシウムまたはリチウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボキシル基の塩等が挙げることができる。さらには、化合物(1)が遊離体または塩のいずれの場合においても、溶媒和物として得てもよく、溶媒和物としては、水、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン等の溶媒和物の他に、空気中の水分を吸収して形成された水和物等を挙げることができる。
【0047】
【実施例】本発明の化合物およびその製造方法並びにそれらの化合物を中間体とするキノロンカルボン酸誘導体の製造方法を具体例で以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1] 7−(R)−N−[フェニルメチリデン]−5−アザスピロ[2,4]ヘプタン−7−アミン(3)
5−アザ−スピロ[2,4]ヘプト−7−イルアミン 2塩酸塩(1.85g)を50mlのナス型フラスコに入れ、イソプロピルアルコール(9.25ml)、トリエチルアミン(3.03g)を連続的に入れ、40℃で2時間攪拌した。その後ベンズアルデヒド(1.06g)を滴下し、さらに40℃で8時間攪拌した。硫酸ナトリウム(1.4g)を加え30分攪拌したところで、攪拌を停止した。ろ過により硫酸ナトリウムをろ取し、ろ液を溶媒留去した。溶媒留去後、酢酸エチル(10ml)を入れ、室温で6時間攪拌した。攪拌後ろ取し、表題化合物1.87g(収率93.7%)で表題化合物を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.68−0.75(m、4H),3.01−3.11(m、2H)、3.34−3.40−4.00(m、1H)、3.50−3.54(m、1H)、3.60−3.83(m、2H)、7.34−7.38(m、3H)、7.67−7.89(m、2H)、8.17(s、1H))
[実施例2] 6−フルオロ−1−[(1S,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソ−7−((7R)−7− { [フェニルメチリデン]アミン } −5−アザスピロ [ 2,4 ] へプト−5−イル)−1 , 4−ジヒドロ−3−キノロンカルボン酸(2)
3−{[(ジフルオロボリル)オキシ]カルボニル}−6,7−ジフルオロ−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソキノリン(1.8g)を50mlのナス型フラスコに入れ、7−(R)−N−[フェニルメチリデン]−5−アザスピロ[2,4]ヘプタン−7−アミン(1.1g)とN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)を連続的に入れ、攪拌を開始した。続いて、トリエチルアミン(2.7ml)を添加し、60℃まで昇温し攪拌を続けた。1時間攪拌後、室温まで放冷し水(20ml)を加え3時間攪拌した。さらに0℃で1時間攪拌し、結晶をろ取、乾燥し表題化合物2.57g(収率95%)で得た。
[実施例3] 7−{7−(S)−アミノ−5−アザスピロ[2.4]ヘプト−5−イル}−6−フルオロ−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(1)
6−フルオロ−1−[(1S,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−4−オキソ−7−((7R)−7−{[フェニルメチリデン]アミン}−5−アザスピロ[2,4]ヘプト−5−イル)−1,4−ジヒドロ−3−キノロンカルボン酸(270mg)を水(2.7ml)とイソプロピルアルコール(1.3ml)との混合溶媒中に入れ、6規定塩酸(0.1ml)を入れて60℃で6時間加熱攪拌した。反応終了後、イソプロパノールを留去し、水3(ml)を足し、ジイソプロピルエーテル(10ml)で洗浄した。水相のHPLC定量を行なったところ、表題化合物188.7mg(収率93%)であった。水相にイソプロパノール(10ml)を入れて溶媒留去を3度繰り返し、最後にイロプロパノール(10ml)と6規定塩酸を入れ、60度に加熱し2時間攪拌した。その後室温に放冷し、さらに0℃で3時間攪拌し、析出した結晶をろ取した。乾燥後、表題化合物160.9mg(収率70%)を得た。なお、ベンズアルデヒドは洗浄に用いたイソプロピルエーテル溶液45mg(回収率85%)として回収した。
Claims (10)
- 式(4)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物。 - R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である請求項1または2に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
- nが2である請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、その塩、またはそれらの水和物。
- 式(6)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式
で表わされる化合物を反応させることを特徴とする式(3)
- 式(2)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(3)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法。 - 式(4)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
- 式(6)
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に式(5)
で表わされる化合物を反応させて、得られた式(3)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、X3は、ハロゲン原子を意味する。]
で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物に塩基存在下で反応させて、得られた式(4)
−B(Y)2
(Yは、フッ素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基を意味する。)で表わされる基を意味し、nは、2〜5のいずれかの整数を意味する。]で表わされる化合物、その塩、またはそれらの水和物を酸で処理する工程と所望に応じて塩基で処理する工程とからなる式(1)
- R21およびR22の一方が水素原子であって、他方が置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基である請求項5から8のいずれか1項に記載の製造方法。
- nが2である請求項5から9のいずれか1項に記載の製造方法。
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