JP2004244354A - 鞘翅目昆虫幼虫の防除剤及び防除方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、人畜に対する安全性が高く、効果的に鞘翅目昆虫幼虫を防除することができる新規な鞘翅目昆虫幼虫の防除剤、及び該防除剤を用いる防除方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、シクロデキストリンを有効成分とすることを特徴とする鞘翅目昆虫幼虫の防除剤である。また、本発明はシクロデキストリンを有効成分とする鞘翅目昆虫幼虫の防除剤を鞘翅目昆虫幼虫に作用させることを特徴とする鞘翅目昆虫幼虫の防除方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鞘翅目昆虫幼虫の防除剤及び防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鞘翅目昆虫の幼虫は、サツマイモや落花生などの農作物や、シバ、花卉などの園芸作物、及び樹木等の広範囲な植物を食害し、多大な被害を与えることが知られている害虫である。該幼虫に対する防除剤として従来から種々の化学農薬が開発され、既に使用されているが、必ずしも人畜に対し安全とは言えないものであった。例えば、シバオサゾウムシやドウガネブイブイの幼虫に対する防除剤として使用されている化学農薬としては、ダイアジノン乳剤及び粒剤、カルホス乳剤、フォース粒剤、MPP(フェンチオン)乳剤等が挙げられる。これらは劇物に指定されており、人畜に対する安全性は十分ではない。
従って、大量使用した際の自然環境や人体に対する悪影響が懸念されており、環境問題が重要視される昨今、より環境に優しい防除剤の開発が切望されていた。
【0003】
鞘翅目を含む広範な昆虫種に対し防除効果を有する有効成分をシクロデキストリンで包接することを特徴とする害虫防除剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)が、シクロデキストリンそのものの鞘翅目昆虫に対する防除効果については記載も示唆もない。
また、β−シクロデキストリンをヒトやイヌなどのダイエット食品に使用するといった事例も知られている(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)が、このことから直ちに鞘翅目昆虫防除への利用が示唆されるものではない。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−113504号公報
【特許文献2】
特開2000−116337号公報
【非特許文献1】
古瀬充宏「バイオサイエンスとインダストリー」2000年、第58巻、第9号、635−638頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、人畜に対する安全性が高く、効果的に鞘翅目昆虫幼虫を防除することができる新規な鞘翅目昆虫幼虫の防除剤、及び該防除剤を用いる防除方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シクロデキストリンが、鞘翅目昆虫幼虫に対して殺虫効果あるいは生育抑制効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シクロデキストリンを有効成分とする鞘翅目昆虫幼虫の防除剤である。
また、本発明は、前記防除剤を、鞘翅目昆虫幼虫に作用させる鞘翅目昆虫幼虫の防除方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、シクロデキストリンを有効成分とする鞘翅目昆虫幼虫の防除剤である。本発明で使用するシクロデキストリンは、公知いずれのシクロデキストリンであってもよく、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが挙げられる。これらのうち、鞘翅目昆虫幼虫に対する高い防除効果を示すことから、β−シクロデキストリンが好ましい。また、これらは化学修飾されていても良い。化学修飾としては、例えばアルキル化、アセチル化、グリコシル化などが挙げられる。
【0008】
本発明の防除剤は鞘翅目昆虫の幼虫に対して殺虫効果及び生育抑制効果を発揮する。ただし、本発明では殺虫効果及び生育抑制効果を併せて防除効果というものとする。鞘翅目昆虫としては、オサゾウムシ科、コガネムシ科、ハムシ科に属する昆虫などが挙げられ、中でもオサゾウムシ科、コガネムシ科に属する昆虫幼虫により優れた防除効果を示し、さらにオサゾウムシ科シバオサゾウムシ、コガネムシ科ドウガネブイブイの幼虫に対し最も優れた防除効果を示す。
【0009】
本発明の防除剤は、有効成分であるシクロデキストリンを単独で使用することもできるが、通常は農薬に用いられる慣用の添加剤、即ち、担体、界面活性剤、粘度調節剤、分散剤、粘着付与剤などを配合して使用することが好ましい。また、他の薬剤、すなわち誘引剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、肥料又は土壌改良資材等と混合して施用、あるいは混合せずに交互施用または同時施用することもできる。
【0010】
前記防除剤中に含まれるシクロデキストリンの含有率は、鞘翅目昆虫幼虫に防除効果を示す範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、施用に際して水和剤、乳剤では1〜20質量%となるよう調製することが好ましく、粉剤、粒剤では1〜50質量%となるよう調製することが好ましい。
【0011】
次に、本発明は、上述のようなシクロデキストリンを有効成分とする防除剤を、鞘翅目昆虫幼虫に作用させる鞘翅目昆虫幼虫の防除方法である。
防除剤の施用方法としては、剤型や対象作物等によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用、土壌混和施用又は土壌潅注施用等の方法を挙げることができる。また、種子や根に塗布あるいはこれを被覆して施用することも可能である。
前記防除剤の施用量は、鞘翅目昆虫の種類、適用植物の種類及び剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば空中散布する場合、有効成分として1ヘクタールあたり0.1〜1,000kg、好ましくは1〜100kgとなるようにすればよい。
【0012】
本発明の防除剤に使用される有効成分のシクロデキストリンは、食品添加物、化粧品、医薬品などに利用されている物質であるため、前記施用濃度の範囲内であれば人畜に無害であり、従来の化学農薬に比べ格段に安全性が高いものと考えられる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
直径5cmのプラスチックシャーレに濾紙を敷き、その上に、和光純薬社製β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」という。)0.5gと日本農産工業社製の人工飼料「シルクメイト」3gとを練りまぜた人工餌を乗せた。
オサゾウムシ科シバオサゾウムシの幼虫(体長約2mm)をシャーレに1頭ずつ放し、25℃で飼育した。対照試験区としてβ−CD未添加のシクルメイトを用い、同様の操作を行った。各区5連で試験を行った。
【0014】
14日間経過した時点で、幼虫殺虫率及び生存幼虫の平均体長測定を行った。結果を表1に示す。β−CD添加区では一部の幼虫の死亡が観察され、また、体長測定から摂食阻害に起因すると思われる生育抑制が認められた。
【0015】
【表1】
Figure 2004244354
【0016】
(実施例2)
直径約5cmのフードカップに腐葉土を10g入れ、β−CD0.5gを加えて良く混和した。コガネムシ科ドウガネブイブイ1令幼虫(平均体重26.7mg)をフードカップに一頭ずつ放し、25℃で飼育した。対照試験区にはβ−CD未添加の腐葉土を用い、同様の操作を行った。各区5連で試験した。
【0017】
22日間経過した時点で、幼虫殺虫率及び生存幼虫の平均体重測定を行った。その結果を表2に示す。β−CD添加区では80%の幼虫殺虫率が得られ、また生存していた幼虫も体重が増加していないことから摂食阻害に起因すると思われる生育抑制が認められた。
【0018】
【表2】
Figure 2004244354
【0019】
【発明の効果】
本発明は、シクロデキストリンを有効成分とすることにより、鞘翅目昆虫幼虫に対して防除効果を示し、かつ安全性の高い防除剤を提供することができる。本発明の鞘翅目昆虫幼虫の防除剤は、オサゾウムシ科及びコガネムシ科の昆虫幼虫に対して優れた防除効果を示す。また、本発明は、シクロデキストリンを有効成分とする防除剤を鞘翅目昆虫幼虫に作用させることにより、人畜に対する安全性を阻害することなく鞘翅目昆虫幼虫を防除することができる防除方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. シクロデキストリンを有効成分とすることを特徴とする鞘翅目昆虫幼虫の防除剤。
  2. 鞘翅目昆虫幼虫が、オサゾウムシ科及びコガネムシ科の昆虫幼虫である請求項1に記載の鞘翅目昆虫幼虫の防除剤。
  3. 請求項1又は2に記載の防除剤を鞘翅目昆虫幼虫に作用させることを特徴とする鞘翅目昆虫幼虫の防除方法。
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