JP2004243682A - 書込ヘッドおよびこれを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造を容易にしつつ、書込電極の凸部のばらつきを抑制して書込電極を像担持体へより均一にかつより安定して当接させる。
【解決手段】可撓性の基材3aに独立に配線された複数の導電パターン9が形成されている。これらの導電パターン9の電極部上に、Niの例えば無電解めっきにより書込電極3b1,3b2の凸部がそれぞれ形成されている。このNiめっきにより凸部の高さのばらつきが小さくなり、書込電極3b1,3b2は像担持体2に均一にかつ安定して当接する。これにより、書込電極3b1,3b2の像担持体2への当接圧が均一になり、良好な静電潜像を像担持体2に書き込むことができる。
【選択図】 図4
【解決手段】可撓性の基材3aに独立に配線された複数の導電パターン9が形成されている。これらの導電パターン9の電極部上に、Niの例えば無電解めっきにより書込電極3b1,3b2の凸部がそれぞれ形成されている。このNiめっきにより凸部の高さのばらつきが小さくなり、書込電極3b1,3b2は像担持体2に均一にかつ安定して当接する。これにより、書込電極3b1,3b2の像担持体2への当接圧が均一になり、良好な静電潜像を像担持体2に書き込むことができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、像担持体に静電潜像を書き込む複数の書込電極が可撓性の基材に支持されて構成される書込ヘッドおよびこれを用いた画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、一般的に帯電装置により感光体の表面を一様帯電し、この一様帯電された感光体の表面にレーザ光あるいはLEDランプ光等の露光装置の光を露光することにより、感光体の表面に静電潜像を書き込むようになっている。そして、感光体の表面の静電潜像を現像装置で現像して感光体の表面に現像剤像を形成し、この現像剤像を転写装置によって紙等の転写材に転写して、画像を形成している。
このような従来の一般的な画像形成装置では、静電潜像の書込装置である露光装置がレーザ光発生装置あるいはLEDランプ光発生装置等によって構成されているため、画像形成装置が大型でかつ複雑な構成となっている。
【0003】
そこで、静電潜像の書込装置として、電極により像担持体の表面に静電潜像を書き込むことで、レーザ光やLEDランプ光を用いずに装置をより小型にしかつより簡単な構成にした画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示されている画像形成装置は、複数の書込電極を可撓性の基材にドラム状の像担持体2の回転軸方向(主走査方向)に並べて配置した状態で支持し、これらの書込電極を基材の弾性力で像担持体の電荷注入層の表面に軽い押圧力で当接させている。そして、画像情報の入力信号により対応する書込電極に所定の電圧を供給して像担持体の電荷注入層の表面に帯電することで、像担持体に静電潜像を形成するようにしている。その場合、基材の弾性力で書込電極が像担持体に軽い押圧力で当接することで、像担持体に対する書込電極の当接を安定させて、書込電極による像担持体への潜像の書込を安定して確実に行うようにしている。
【0004】
また、特許文献1には、書込電極材料としてチタン、亜鉛、鉄、銅、Ni、白金等の金属が開示されているとともに、可撓性の基材上に書込電極を設ける方法として、基材表面に書込電極形状に対応した凹部をエッチング等の方法により形成し、この凹部に書込電極材料を真空蒸着、めっき等の方法により充填して形成する方法、あるいは、基材上に金属箔を貼着したり、また、金属膜を蒸着、めっき等の方法により積層した後に電極形状にパターニングして形成する方法が開示されている。
【特許文献1】
特開2002−229223号公報(段落番号[0027]および[0028])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されているように可撓性の基材上に書込電極を設けた場合、基材上の書込電極と、潜像書込時に、ラインデータ、書込タイミング信号および高圧電力が導電パターンを介して供給されるドライバとの電気的接続作業を行う必要がある。このため、書込ヘッドの製造が面倒になってこの製造に手間がかかる。
【0006】
また、書込電極を可撓性基材の平面内に設定すると、書込電極は像担持体へ安定して当接しない。したがって、書込電極を可撓性基材の平面から突出した凸部として構成するのがよい。そこで、書込電極の凸部を単純に金属膜のめっきで形成した場合、書込電極を構成する凸部の高さがばらついたり、凸部の高さ勾配が発生してしまう。このように書込電極の凸部の高さがばらつくと、書込電極の像担持体への当接が不安定になり、像担持体に書き込まれた静電潜像に部分的に潜像むらが生じ、良好な静電潜像が得られなくなる。
【0007】
しかも、電解めっき法により書込電極の凸部を形成すると、凸部に高さ勾配が生じるようになる。このような高さ勾配を有している書込電極を像担持体に当接させた場合、主走査方向に配列された複数の書込電極が均一にかつ安定して像担持体に当接することが難しくなる。このため、複数の書込電極の像担持体への当接圧に差異が生じ、書き込まれた静電潜像およびそのトナー像のいずれにも濃度むらが生じてしまう。
【0008】
一方、従来像担持体をディップ法で基材に塗布液を塗布することで製造しているが、このディップ法による塗布では、塗布膜の膜厚に若干の膜厚むらが生じる。
この膜厚むらは、従来のスプレー法等の他の塗布方法よる膜厚むらに比べると非常に小さいが、ディップ法による塗布の特有の現象として一定方向に対して若干の膜厚の勾配を有している。このため、このような膜厚の勾配を有している像担持体に書込電極を当接させた場合、主走査方向に配列された複数の書込電極が均一にかつ安定して像担持体に当接することが難しくなる。このため、前述と同様に複数の書込電極の像担持体への当接圧に差異が生じ、書き込まれた静電潜像およびそのトナー像のいずれにも濃度むらが生じてしまう。
【0009】
しかも、書込電極の当接圧において、像担持体の主走査方向(像担持体の軸方向)に当接圧の左右のばらつきがあると、書込ヘッドがスキューしてしまい、良好かつ正確な静電潜像形成が難しくなる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造を容易にしつつ、書込電極の凸部のばらつきを抑制して書込電極を像担持体へより均一にかつより安定して当接させることのできる書込ヘッドを提供することである。
また、本発明の他の目的は、書込電極の凸部の高さ勾配および像担持体の膜厚勾配があっても、書込電極を像担持体へより均一にかつより安定して当接させることで、良好な静電潜像を形成することのできる画像形成装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、請求項1の発明の書込ヘッドは、静電潜像が形成される像担持体に前記静電潜像を書き込む複数の書込電極が可撓性の基材に主走査方向に独立して配置されて構成される構成される書込ヘッドにおいて、前記複数の書込電極が、それぞれ、前記可撓性の基材に独立に配線された電極部上にニッケルめっき(Niめっき)により形成された凸部からなることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、前記Niめっきが無電解めっきで行われることを特徴としている。
【0012】
更に、請求項3の発明の画像形成装置は、請求項1または2記載の書込ヘッドと、前記像担持体と、前記像担持体の前記静電潜像を現像剤で現像する現像装置とを少なくとも備え、前記像担持体が、誘電性樹脂に導電性微粒子を独立分散させた塗布液を像担持体の基材にディップ法によりコーティングしたコーティング膜を有し、前記書込電極が前記像担持体のコーティング膜に接触して前記静電潜像を書き込むことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項4の発明は、前記書込ヘッドが、その前記凸部の高さ勾配と前記像担持体のコーティング膜の膜厚勾配とが互いに逆方向となる当接方向で前記像担持体のコーティング膜に接触して配置されていることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記導電性微粒子が、Mo、W、Ta、Au、Ptのいずれか1つからなることを特徴としている。
【0014】
【発明の作用および効果】
このように構成された請求項1および2の各発明の書込ヘッドによれば、可撓性の基材に独立に配線された電極部上にNiめっきにより形成された書込電極の凸部を形成しているので、書込電極とドライバとの電気的接続作業が簡単になり、書込ヘッドの製造に手間がかからなくなる。しかも、配線の電極部上にNiめっきをすることで、めっきによる凸部の高さのばらつきをより一層抑制することができる。
【0015】
また、書込電極の凸部をNiめっき(ニッケルめっき)により形成しているので、Niめっきの濃度勾配が比較的小さいことから凸部の高さのばらつき(膜厚のばらつき)を抑制できる。これにより、各書込電極を像担持体2により均一にかつ安定して当接させることができる。したがって、Niめっきによる凸部からなる書込電極を用いることで、良好な潜像を安定して形成することができる。
特に、請求項2の発明によれば、Niめっきを無電解めっきで行うことで、めっきの高さ(凸部の高さ)のばらつきを効果的に小さくできる。
【0016】
更に、請求項3ないし5の各発明の画像形成装置によれば、像担持体がディップ法でコーティングされて、静電潜像が形成されるコーティングを有しているので、スプレー法等で製造された像担持体2よりも膜厚むらおよび膜厚勾配を小さくできる。これにより、ディップ法で製造された像担持体に、前述のNiめっきで形成された凸部からなる書込電極を接触させて潜像を書き込むことで、より効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。その結果、良好な濃度のトナー像を安定して形成することができるようになる。
【0017】
特に、請求項4の発明によれば、書込ヘッドの凸部の高さ勾配と像担持体のコーティング膜の膜厚勾配とが互いに逆方向となる当接方向で、書込ヘッドが像担持体のコーティング膜に接触しているので、書込ヘッドをより均一にかつより安定して像担持体に当接させることができる。良好な静電潜像をより一層効果的に安定して形成することができるようになる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、導電性微粒子として、Mo、W、Ta、Au、Ptのいずれか1つが用いられる。これらの金属は、他の金属より分散性が高いため、像担持体を形成したときの膜厚のばらつきを比較的小さくできる。したがって、更に効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施の形態の一例の基本構成を模式的に示す図、図2は図1に示す画像形成装置の部分斜視図、図3は図1における矢印III方向からみた像担持体の部分拡大図、図4はこの例の一部を模式的に示す部分図である。
【0020】
図1および図2に示すように、この例の本発明に係る画像形成装置1は、進行(回動)可能に設けられ静電潜像および現像剤像が形成される像担持体2と、像担持体2に接触してこの像担持体2に静電潜像を書き込む書込装置3と、像担持体2上の静電潜像を現像剤担持体である現像ローラ4aに担持・搬送された現像剤(不図示)で現像する現像装置4と、この現像装置4で現像された像担持体2上の現像剤像を紙等の転写材5に転写ローラ6aで転写する転写装置6と、像担持体2上の転写残りトナーを除去して像担持体2上をクリーニングするクリーニングブレード7aを有するクリーナ7とを少なくとも備えている。
以下の説明においては、像担持体2は接地されているものとして説明するが、これは説明の便宜上であって、本発明は像担持体2が接地されることに限定されるものではない。
【0021】
像担持体2は、中心部近くに位置し、接地されているアルミニウム等の導電性材料からなる基材2aと、この基材2aの外周に形成された誘電性樹脂からなる誘電層2bと、この誘電層2bの表層部に形成された導電性膜からなる電荷注入層2cとからドラム状に形成されている。なお、像担持体2はベルト状に形成することもできる。
【0022】
図3に示すように、電荷注入層2cは、一例として誘電層2bの表層部に相互に電気的に独立分散して配置された多数の電荷注入部2dを備えている。これらの多数の電荷注入部2dは、例えば、電気的に独立分散して配置された局所的導電性部分からなる、海に浮かんだ島のような導電性の海島構造を構成している。各電荷注入部2dの表面はこの電荷注入部2d以外の他の部分、すなわち誘電層2bの表層部の表面と面一またはほぼ面一にされている。
【0023】
誘電層2bはコンデンサー内部の役目を果たし、電荷をスポットに像担持体2の電荷注入部2dに載せる機能を有する必要があるので、所定の電気抵抗(例えば、1015Ω以下等)に設定されることが好ましい。この誘電層2bに用いられる誘電体としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)等の樹脂を用いることができる。
【0024】
一方、電荷注入部2dの材質は、電気抵抗が誘電層2bより小さい抵抗領域(例えば、最大1010Ω程度以下等)の材料が用いられる。その場合、電荷注入部2dの電気抵抗が大き過ぎると、書込に時定数遅れの影響が出て潜像書込不良が起こるので、電荷注入部2dの電気抵抗は、プロセススピードが速いほど小さい方が好ましい。
【0025】
この電荷注入部2dに用いられる導電性材料として、導電性樹脂あるいは導電性フィラーが用いられる。これらの導電性樹脂/導電性フィラーに用いられる材料としては、ポリアセチレンにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの、ポリチオフィンにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの、ポリピロールにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの等の導電性高分子粉末の導電性微粒子、およびこれらのうち、適宜の材料を組み合わせたものを用いることができる。その場合、導電性微粒子/導電性フィラーの含有量は10〜100%wtとして抵抗調整したものである。
【0026】
電荷注入部2dに用いる導電性微粒子2eとして、Mo、W、Ta、AuおよびPtのいずれかを用いると、他の金属微粒子よりも分散性が高いため、像担持体2を形成した際に膜厚のばらつきを比較的小さくできるため、これらの金属は本発明のような接触式の書込ヘッド3dを用いた画像形成装置の像担持体2にとって好ましい。
【0027】
なお、電荷注入層2cは、必ずしも前述のような誘電層2bの表面に多数の導電性微粒子2eを独立分散して海島構造に配置する構成にする必要はなく、複数の書込電極3bによる静電潜像の書込を行うことができる構成であれば、例えば誘電層2bの全体に多数の導電性微粒子2′を独立分散させて誘電層2b自体で電荷注入層2cを構成する等、どのような構成にすることもできる。
【0028】
また、このように構成された像担持体1は、図5に示すディップ法により、基材2aの外周面に誘電層2bおよび電荷注入層2cの塗布膜(コーティング膜)を形成して製造することができる。このディップ法は従来から公知の塗膜形成法であり、塗液中に基材2aを浸漬した後、基材2aを引き上げることで、基材2aの表面に塗液がコーティングされたコーティング膜を形成する方法である。
【0029】
ディップ法による塗膜形成法によっても、図6(a)および(b)に示すように膜厚むらおよび膜厚勾配が若干生じるが、これらの膜厚むらおよび膜厚勾配は、従来公知のスプレー法等による塗膜形成法よりは小さい。
像担持体2は図示しないモータによって駆動されることで、図1に矢印で示すように時計方向に回転するようになっている。
【0030】
図1および図2に示すように、書込装置3は、FPC(Flexible Print Circuitの略、以下FPCと称す)あるいはPET(ポリエチレンテレフタレートの略、以下PETと称す)等の絶縁性が高くかつ比較的柔らかく弾性のある可撓性の基材3aと、基材3aに支持されかつこの基材3aの撓みによる弱い弾性復元力で像担持体2上に軽く押圧されて当接し、静電潜像を書き込む複数の書込電極3bと、基材3aの書込電極3bと反対側の端部側を画像形成装置本体(不図示)に固定支持している固定支持部3cと、基材3aに支持された書込電極3bを作動制御するドライバIC(以下、単にドライバともいう)8とからなっている。
【0031】
基材3aは像担持体2の軸方向(幅方向)に像担持体2の電荷注入層2cの軸方向長さとほぼ同じ長さの矩形の板状に形成されている。この基材3aは、図1において左方から像担持体2の進行方向(回転方向;図1に矢印で示す時計方向)と同方向に延びるようにして設けられている。なお、基材3aは、逆に図1において右方から像担持体2の進行方向と対向して延びるようにして設けることもできる。
【0032】
図2に示すように、基材3aの固定支持側と反対の自由端側(像担持体2の進行方向下流側)に書込ヘッド部3dが設けられており、この書込ヘッド部3dは複数の書込電極3bを像担持体2の軸方向(幅方向)に配列した配列パターンを有している。この配列パターンでは、複数の書込電極3bが像担持体2の軸方向(像担持体2の進行方向と直交する方向;主走査方向)に独立にかつ整列されて配置した列が、図4に示すように像担持体2の進行方向に2列に設定されている。
【0033】
そして、基材3aの自由端側の1列目の複数の書込電極3b1により1列目の書込ヘッド3d1が構成され、また、基材3aの固定支持側の2列目の複数の書込電極3b2により2列目の書込ヘッド3d2が構成されている。これらの2列の書込ヘッド3d1,3d2により、この例の画像形成装置1の書込ヘッド部3dが構成されている。
【0034】
図3に二点鎖線で示すように、基材3aの自由端側の1列目の書込電極3b1および基材3aの固定支持側の2列目の書込電極3b2において、互いに隣接する各書込電極3b1,3b2どうしが像担持体2の軸方向と直交する方向(つまり、像担持体2の進行方向;副走査方向)にオーバーラップするように配列されている。このような書込電極3bの配列パターンでは、書込電極3bからの像担持体2の電荷注入部2dへの電荷注入または像担持体2の電荷注入部2dからの書込電極3bへの電荷注入で書き込まれない非帯電部または非除電部は形成されなく、像担持体2の電荷注入部2dの表面の全面が帯電または除電可能となっている。
【0035】
図2および図4に示すように、基材3a上には断面矩形状の薄い平板状の複数の導電パターン9が、例えばエッチング等の従来の薄膜パターン形成方法と同様の方法で互い電気的に独立に形成されている。そして、図4に示すように、基材3aの自由端部側の導電パターン9の端部は電極部とされ、これらの電極部に、それぞれ書込電極3b1,3b2が形成されている。これらの書込電極3b1,3b2は、いずれも導電パターン9の電極部にNiめっきにより基材3aから像担持体2に向かって突出する円柱形状の凸部として形成されている。その場合、Niめっきとしては、無電解めっきおよび電解めっきのいずれでもよいが、無電解めっきによる方がめっきの高さ(凸部の高さ)のばらつきが小さいので好ましい。これらの書込電極3b1,3b2の先端は、いずれも可撓性の基材3aの弾性により小さい押圧力で像担持体2に同時に当接している。
【0036】
ところで、このNiめっきでも、図6(a)および(b)に示すように濃度勾配(膜厚勾配)が生じるが、他の金属のめっきよりも濃度勾配が小さい。一方、前述のようにディップ法により製造された像担持体2でも小さな膜厚勾配が生じている。したがって、図6(b)に示すように、Niめっきの膜厚の小さい側が像担持体2の膜厚の小さい側に、またNiめっきの膜厚の大きい側が像担持体2の膜厚の大きい側に当接させると、膜厚の小さい側の書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に弱く当接し、膜厚の大きい側の書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に強く当接して、各書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に不均一にかつ不安定に当接するようになる。このため、必ずしも良好な静電潜像の形成が行われない場合が生じる。
【0037】
そこで、図6(a)に示すように、Niめっきの膜厚の小さい側が像担持体2の膜厚の大きい側に、またNiめっきの膜厚の大きい側が像担持体2の膜厚の小さい側に当接させるようにする。これにより、膜厚の大小にあまり関係なく、書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2により均一にかつより安定して当接するようになり、当接圧が均一になって良好な静電潜像が安定して形成されるようになる。
【0038】
更に、図2および図4に示すように、所定数のドライバ8が基材3aの上面にそれぞれ像担持体2の軸方向(基材3aの幅方向)に整列されて設けられている(図2および図4には、基材3aの上面に設けられた1個のドライバ8のみが図示されている。)。
そして、この例では、各列の隣接する各所定数の書込電極3b1,3b2を1つのドライバ8に接続した組が複数組、像担持体2の軸方向(像担持体2の進行方向と直交方向)に配列されている(これらの組の一例として、図2に図示されている)。その場合、各ドライバ8と対応する各書込電極3bとが導電パターン9により各書込電極3b毎に独立して電気的に接続されているとともに、図示しないが、同様に各ドライバ8が基材3a上に形成された、導電パターン9と同様の導電パターンにより電気的に接続されている。
【0039】
そして、潜像書込時に、ラインデータ、書込タイミング信号および高圧電力が導電パターンを介して各ドライバ8に供給されるようになっており、更に、各ドライバ8から対応する各列の書込ヘッド3d1,3d2の各書込電極3b1,3b2にそれぞれ所定の電圧V1,V2が導電パターン9を介して選択的に供給されるようになっている。
各書込電極3bへのこれらの所定電圧の選択的供給については前述の特許文献1に開示されている選択的供給と同じであるとともに、本発明に直接関係しないので、ここではその説明は省略する。
なお、ドライバ8は基材3aの下面のみに設けることもできるし、基材3aの上下面に設けることもできる。
【0040】
書込装置3による像担持体2への潜像書込は、電荷注入部2dと書込電極3bとの間での電荷の注入により行われるとともに、この電荷の注入は、多数の電荷注入部2dに書込電極3bが接触することにより行われるようになっている。その場合、電荷の注入は、前述のように電荷が書込電極3bから電荷注入部2dに注入される場合と電荷が電荷注入部2dから書込電極3bに注入される場合とがあり、前者の場合には像担持体2が帯電されて現像器4により正規現像が行われ、また後者の場合には像担持体2が除電されて現像器4により反転現像が行われることは言うまでもない。
【0041】
電荷注入部2dに用いられる導電性微粒子2eの大きさと書込電極3bの大きさとは潜像形成に大いに関係している。すなわち、書込電極3bの電荷注入層2cへの接触面積が導電性微粒子2eの断面積より大きいと、電荷が注入される電荷注入層2cの部分が導電性微粒子2eであることから、書込電極3bの接触部分の導電性微粒子2eは確実に電荷注入されるので、像担持体2に書き込まれる静電潜像は確実に再現することができ、潜像書込の精度が向上する。
そして、書込装置3の各書込電極3bが電荷注入部2dに接触して、これらの書込電極3bと電荷注入部2dとの間で電荷注入が支配的に行われるようになっている。
【0042】
なお、書込電極3bを構成する凸部の形状は円柱形状に限定されることなく、球の一部、円錐、截頭円錐台、楕円柱(横断面が楕円の柱体)、楕円錐(横断面が楕円の錐体)、截頭楕円錐台(横断面が楕円の截頭錐体)、長円柱(横断面が長円の柱体)、長円錐(横断面が長円の錐体)、截頭長円錐台(横断面が長円の截頭錐体)、三角柱、三角錐、截頭三角錐台、四角柱、四角錐、截頭四角錐台、5角以上の多角柱、5角以上の多角錐、および5角以上の截頭多角錐台等の形状に形成することもできる。
【0043】
また、書込電極3bの電気抵抗は所定の抵抗領域(例えば、1010Ω以下等)に設定される。電気抵抗が大き過ぎると、前述の電荷注入部2dの場合と同様に、書込電極3bでの時定数遅れの影響による潜像書込不良が起こるので、電気抵抗は、プロセススピードが速いほど小さい方が好ましい。
【0044】
この例の画像形成装置1によれば、可撓性の基材3aに独立に配線された導電パターン9の電極部上にNiめっきにより形成された書込電極3bの凸部を形成しているので、書込電極3bとドライバ8との電気的接続作業が簡単になり、書込ヘッド3dの製造に手間がかからなくなる。しかも、配線の電極部上にNiめっきをすることで、めっきによる凸部の高さのばらつきをより一層抑制することができる。
また、各書込電極3b1,3b2の凸部をNiめっきにより形成しているので、Niめっきの濃度勾配が比較的小さいことから凸部の高さのばらつき(膜厚のばらつき)を抑制できる。これにより、各書込電極3b1,3b2を像担持体2により均一にかつ安定して当接させることができる。したがって、Niめっきによる凸部からなる書込電極3bを用いることで、良好な潜像を安定して形成することができ、その結果トナー像も良好にかつ安定して形成することができる。
【0045】
特に、ディップ法で製造された像担持体(ドラム、ベルト等)2が、スプレー法等で製造された像担持体2よりも膜厚むらおよび膜厚勾配が小さいため、ディップ法で製造された像担持体2に、前述のNiめっきで形成された凸部からなる書込電極3b1,3b2を接触させて潜像を書き込むことで、より効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。
【0046】
なお、本発明の像担持体2は、前述の誘電層2bの表層部に電荷注入層2cを形成したものに限定されることなく、例えば、図7に示すように誘電層2bの全体に導電性微粒子2eを独立分散させた基材2aの外周に誘電層2bと電荷注入層とを一緒にして単層に形成した単層型のドラムまたはベルトに適用することもできる。
【0047】
(実施例および比較例)
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
(めっきの種類による書込ヘッドの比較)
実施例1〜10および比較例1〜20では、めっき法およびめっきに用いる金属等のめっきの種類による書込ヘッドを種々作製し、それらの書込ヘッドを用いて試験をし、比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類をそれぞれ表1および表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
めっきの種類による書込ヘッドの比較試験に用いた書込ヘッドおよび像担持体は次のようにして作製した。すなわち、FPCに、各実施例および各比較例について表1および表2に示す金属めっきを同じく表1および表2に示すめっき法でめっきを行って、それぞれ書込電極3bの凸部を形成する。次いで、エッチングを行って、配線間距離42μmおよび配線幅42μmの凸部付きの配線パターンを作製することで、書込ヘッドを製造した。その場合、表1および表2に示すように金属めっきのめっき厚を、各実施例および各比較例のいずれに対しても5μm、10μm、15μm、20μmおよび25μmの数基準とした。
【0051】
また、試験に用いた像担持体は、直径φ30mmのドラムで、誘電性樹脂としてのポリカーボネート樹脂に導電性微粒子2eとしてのMo微粒子を混合して独立分散させたドラムを採用した。膜厚は20μmとし、ポリカーボネート樹脂とMoとの混合比は2.5:0.8(重量比)とした。本実施例として採用したこの像担持体は、図7に示す単層型のドラムである。更に、ドラム幅は紙A4相当の幅とし、書込ヘッドの印字幅は180mmとした。更に、像担持体の周速は100mm/secとした。
【0052】
そして、このように製造された書込ヘッドおよび像担持体を用い、縦万線画像パターン、横万線画像パターンを書込ヘッドにより像担持体上に静電潜像として書き込み、像担持体上の静電潜像を非磁性一成分トナーを用いて現像装置で現像し、このトナー像を転写ローラ上に搬送されるA4紙に転写した。そして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、O.D.値は、X−rite938(X−rite社製)を用いて測定した。また、誘電性樹脂2bと導電性微粒子2eとが独立分散された塗布膜(コーティング膜)の膜厚の測定は、ダイヤルゲージにより接触方式測定方法により測定した。すなわち、ダイヤルゲージで塗布膜形成前の像担持体2の基材の外径および塗布膜形成後の像担持体2の外径をそれぞれ測定し、測定した塗布膜形成後の像担持体2の外径から塗布膜形成前の像担持体2の基材の外径を差し引いた値の2分の1の値を膜厚とした。
更に、目視による濃度のばらつきの評価方法は、50人の評価者に対して印字した画像の評価テストを実施し、45人以上が良とした評価した場合を良上、40人以上が良とした評価した場合を良、およびそれ以外を不良とした。表1および表2にそれらの結果を示す。
【0053】
表1および表2に示すように、めっきの種類は、実施例1〜5がNiの無電解めっき、実施例6〜10がNiの電解めっき、比較例1〜5がCuの無電解めっき、比較例6〜10がCuの電解めっき、比較例11〜15がZnの無電解めっき、比較例16〜20がZnの電解めっきである。
【0054】
めっき厚は、実施例1〜5のNiの無電解めっき、実施例6〜10のNiの電解めっき、比較例1〜5のCuの無電解めっき、比較例6〜10のCuの電解めっき、比較例11〜15のZnの無電解めっき、比較例16〜20のZnの電解めっきにおいて、いずれも、実施例および比較例の番号の順にそれぞれ5μm、10μm、15μm、20μm、25μmに設定した。
【0055】
実施例の左右の高さのばらつきは、それぞれ、実施例1〜5の無電解Niめっきでは、0.1μm〜0.2μmときわめて小さく、また、実施例6〜10の電解Niめっきでは、0.2μm〜0.3μmと比較的小さい。これに対して、比較例の左右の高さのばらつきは、それぞれ、比較例1〜5の無電解Cuめっきでは、0.5μm〜0.6μm(1.2μmがあるが、これは測定上の問題であると思われる)とNiめっきより大きく、また、比較例6〜10の電解Cuめっきでは、0.5μm〜1.8μmとかなり大きく、更に、比較例11〜15の無電解Znめっきでは、0.6μm〜0.7μmと無電解Cuめっきよりは大きくなる傾向にあるが電解Cuめっきよりは小さくなる傾向にあり、更に、比較例16〜15の電解Znめっきでは、0.6μm〜2.0μmと最も大きくなる傾向にある。
【0056】
更に、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例1〜5の無電解Niめっきでは、0.00〜0.01ときわめて小さく、また、実施例6〜10の電解Niめっきでは、0.01〜0.02と比較的小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例1〜5の無電解Cuめっきでは、0.03〜0.1とNiめっきより大きく、また、比較例6〜10の電解Cuめっきでは、0.05〜0.19とかなり大きく、更に、比較例11〜15の無電解Znめっきでは、0.01〜0.04と無電解Cuめっきよりは小さくなる傾向にあり、更に、比較例16〜15の電解Znめっきでは、0.02〜0.2と最も大きくなる傾向にある。
【0057】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例1〜10ではいずれもほとんどなく、非常に良い良上の結果が得られ、また、比較例1〜4、11〜13、16、17でもいずれもほとんどなく、非常に良い良上の結果が得られ、更に、比較例5、8、14、15ではわずかに認められたが、画像に実質の影響を与えない程度であり、良の結果が得られ、更に、比較例9、10、18〜20ではかなり認められ、不良の結果が得られた。
【0058】
以上の結果から、めっきの膜厚のばらつき(高さのばらつき)が小さいとともに、濃度のばらつきが小さいめっきの種類は、無電解Niめっきが最も良く、以下、電解Niめっき、無電解Cuめっき、無電解Znめっき、電解Cuめっき、電解Znめっきの順に良いことが確認された。なお、実用に供し得るのは、無電解Niめっき、電解Niめっき、無電解Cuめっき、および無電解Znめっきである。特に、無電解Niめっきおよび電解Niめっきは、めっきの膜厚のばらつきおよび濃度のばらつきがともにきわめて小さいので、実用上最も好ましい。
【0059】
(ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体との比較)
実施例10〜11および比較例21〜22では、ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体の比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類および塗布方法をそれぞれ表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
塗布方法による像担持体との比較試験に用いた書込ヘッドおよび像担持体は次のようにして作製した。すなわち、FPCに、各実施例および各比較例について表3に示す金属めっきを同じく3に示すめっき法でめっきを行って、それぞれ書込電極3bの凸部を形成する。次いで、エッチングを行って、配線間距離42μmおよび配線幅42μmの凸部付きの配線パターンを作製することで、書込ヘッドを製造した。その場合、表3に示すように金属めっきのめっき厚を、各実施例および各比較例のいずれに対しても10μmとした。
【0062】
また、試験に用いた像担持体は、直径φ30mmのドラムで、誘電性樹脂としてのポリカーボネート樹脂に導電性微粒子としてのMo微粒子を混合したドラムを採用した。膜厚は20μmとし、ポリカーボネート樹脂とMoとの混合比は2.5:0.8(重量比)とした。本実施例として採用したこの像担持体は、図7に示す単層型のドラムである。そして、ポリカーボネート樹脂とMo微粒子とを混合した塗布液を基材にディップ法とスプレー法とにより塗布した。各塗布法による表面粗さのプロフィルは図8に示すとおりである。図8から明らかなように、表面粗さの振れはスプレー塗布の方が大きいことが分かる。
更に、ドラム幅は紙A4相当の幅とし、書込ヘッドの印字幅は180mmとした。更に、像担持体の周速は100mm/secとした。
【0063】
そして、このように製造された書込ヘッドおよび像担持体を用い、縦万線画像パターン、横万線画像パターンを書込ヘッドにより像担持体上に静電潜像として書き込み、像担持体上の静電潜像を非磁性一成分トナーを用いて現像装置で現像し、このトナー像を転写ローラ上に搬送されるA4紙に転写した。そして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、O.D.値は、X−rite938(X−rite社製)を用い2て測定した。また、膜厚はダイヤルゲージで測定した。更に、目視による濃度のばらつきの評価方法は前述と同様である。表3にそれらの結果を示す。
【0064】
表3に示すように、書込電極3bの凸部のめっきの種類は、実施例11および比較例21がNiの無電解めっきであり、また実施例12および比較例22がNiの電解めっきである。
また、像担持体の塗布は、実施例11および12がディップ塗布であり、また、比較例21および22がスプレー塗布である。
【0065】
更に、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例11および12では0.01および0.02ときわめて小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例21および22では0.11および0.20と、実施例11および12より大きい。
【0066】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例11および12ではいずれもほとんどなく、良の結果が得られ、また、比較例21および22ではいずれもかなり認められ、不良の結果が得られた。
以上の結果から、良好な濃度の画像を得るための像担持体の塗布は、ディップ塗布の方がスプレー塗布よりも良いことが確認された。
【0067】
(ディップ塗布およびスプレー塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較)
実施例13〜22および比較例23〜42では、ディップ塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類および塗布方法をそれぞれ表4ないし表6に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
実施例の書込ヘッドのめっきの種類は、実施例13ないし17では無電解Niめっきであり、また実施例18ないし22では電解Niめっきである。
また、ディップ塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較試験に用いた像担持体は、図8に示すプロフィルを有するディップ塗布およびスプレー塗布による像担持体と同じである。その場合、実施例の像担持体は、実施例13および実施例18では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたディップ塗布、また、実施例14および実施例19では導電性微粒子としてW微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例15および実施例20では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例16および実施例21では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例17および実施例22では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたディップ塗布である。
【0072】
一方、比較例の書込ヘッドのめっきの種類は、実施例23ないし32では無電解Niめっきであり、また実施例33ないし42では電解Niめっきである。
また、比較例の像担持体は、比較例23および比較例33では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたディップ塗布、比較例24および比較例34では導電性微粒子としてW微粒子を用いたスプレー塗布、比較例25および比較例35では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたディップ塗布、比較例26および比較例36では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたスプレー塗布、比較例27および比較例37では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたディップ塗布、比較例28および比較例38では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたスプレー塗布、比較例29および比較例39では導電性微粒子としてW微粒子を用いたスプレー塗布、比較例30および比較例40では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたスプレー塗布、比較例31および比較例41では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたスプレー塗布、比較例32および比較例42では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたスプレー塗布である。
【0073】
また、書込ヘッドと像担持体との当接方向は、実施例13〜22では図6(a)に示すNiめっきからなる凸部の高さ(めっき厚)の小さい(低い)側が像担持体2の膜厚の大きい側に、またNiめっきの凸部の高さの大きい(高い)側が像担持体2の膜厚の小さい側に当接する方向、つまり高さ勾配および膜厚勾配が互いに逆方向の当接方向であり、比較例23〜27および比較例33〜37では図6(b)に示すNiめっきの凸部の高さの低い側が像担持体2の膜厚の小さい側に、またNiめっきの凸部の高さの大きい側が像担持体2の膜厚の大きい側に当接する方向、つまり膜厚勾配が同方向の当接方向である。更に、比較例28〜32および比較例38〜42ではスプレー塗布であるため、当接方向は方向性がない。
【0074】
更に、本実験で用いた実験装置、実験方法、測定装置、測定方法および評価方法は、いずれも前述の(めっきの種類による書込ヘッドの比較)および(ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体との比較)と同じであり、同様にして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。表4ないし表6にそれらの結果を示す。
【0075】
実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例13〜22では0.01〜0.03ときわめて小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例23〜27および比較例33〜37では0.08〜0.10と比較的大きく、また、比較例28〜32および比較例38〜42では0.21〜0.30とかなり大きい。
【0076】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例13〜22ではいずれもほとんど認められなく、良上の結果が得られ、また、比較例23〜27および比較例33〜37でもいずれも少ししか認められなく、良の結果が得られ、更に比較例28〜32および比較例38〜42ではかなり認められ、不良の結果が得られた。
【0077】
以上の結果から、良好な濃度の画像を得るための像担持体と書込ヘッドとの当接方向は、ディップ塗布による像担持体で図6(a)に示す当接方向が最も良く、次いでディップ塗布による像担持体で図6(b)に示す当接方向が良く、スプレー塗布による像担持体で当接方向の方向性がないのが最も悪いことが確認された。なお、図6(b)に示す当接方向の場合も実用に供し得るが、良好な濃度の画像を安定して得るためには、図6(a)に示す当接方向が実用上最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施の形態の例の基本構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の部分斜視図である。
【図3】図1における矢印III方向からみた像担持体の部分拡大図である。
【図4】この例の一部を模式的に示す部分図である。
【図5】ディップ法による塗膜形成を説明する図である。
【図6】書込ヘッドと像担持体との当接方向を示し、(a)は互いに膜厚勾配が逆方向である当接方向を示す図、(b)は互いに膜厚勾配が同方向である当接方向を示す図である。
【図7】誘電層の全体に導電性微粒子を独立分散させた単層型の像担持体の部分断面図である。
【図8】ディップ法による塗膜形成とスプレー法による塗膜形成とにおける像担持体のプロフィルを示す図である。
【符号の説明】
1…画像形成装置、2…像担持体、2a…基材、2b…誘電性樹脂、2e…導電性微粒子、3…書込装置、3a…基材、3b,3b1,3b2…書込電極、3d…書込ヘッド部、3d1,3d2…書込ヘッド、4…現像装置、5…転写材、6…転写装置、7…クリーナ、8…ドライバIC、9…導電パターン
【発明の属する技術分野】
本発明は、像担持体に静電潜像を書き込む複数の書込電極が可撓性の基材に支持されて構成される書込ヘッドおよびこれを用いた画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、一般的に帯電装置により感光体の表面を一様帯電し、この一様帯電された感光体の表面にレーザ光あるいはLEDランプ光等の露光装置の光を露光することにより、感光体の表面に静電潜像を書き込むようになっている。そして、感光体の表面の静電潜像を現像装置で現像して感光体の表面に現像剤像を形成し、この現像剤像を転写装置によって紙等の転写材に転写して、画像を形成している。
このような従来の一般的な画像形成装置では、静電潜像の書込装置である露光装置がレーザ光発生装置あるいはLEDランプ光発生装置等によって構成されているため、画像形成装置が大型でかつ複雑な構成となっている。
【0003】
そこで、静電潜像の書込装置として、電極により像担持体の表面に静電潜像を書き込むことで、レーザ光やLEDランプ光を用いずに装置をより小型にしかつより簡単な構成にした画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示されている画像形成装置は、複数の書込電極を可撓性の基材にドラム状の像担持体2の回転軸方向(主走査方向)に並べて配置した状態で支持し、これらの書込電極を基材の弾性力で像担持体の電荷注入層の表面に軽い押圧力で当接させている。そして、画像情報の入力信号により対応する書込電極に所定の電圧を供給して像担持体の電荷注入層の表面に帯電することで、像担持体に静電潜像を形成するようにしている。その場合、基材の弾性力で書込電極が像担持体に軽い押圧力で当接することで、像担持体に対する書込電極の当接を安定させて、書込電極による像担持体への潜像の書込を安定して確実に行うようにしている。
【0004】
また、特許文献1には、書込電極材料としてチタン、亜鉛、鉄、銅、Ni、白金等の金属が開示されているとともに、可撓性の基材上に書込電極を設ける方法として、基材表面に書込電極形状に対応した凹部をエッチング等の方法により形成し、この凹部に書込電極材料を真空蒸着、めっき等の方法により充填して形成する方法、あるいは、基材上に金属箔を貼着したり、また、金属膜を蒸着、めっき等の方法により積層した後に電極形状にパターニングして形成する方法が開示されている。
【特許文献1】
特開2002−229223号公報(段落番号[0027]および[0028])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されているように可撓性の基材上に書込電極を設けた場合、基材上の書込電極と、潜像書込時に、ラインデータ、書込タイミング信号および高圧電力が導電パターンを介して供給されるドライバとの電気的接続作業を行う必要がある。このため、書込ヘッドの製造が面倒になってこの製造に手間がかかる。
【0006】
また、書込電極を可撓性基材の平面内に設定すると、書込電極は像担持体へ安定して当接しない。したがって、書込電極を可撓性基材の平面から突出した凸部として構成するのがよい。そこで、書込電極の凸部を単純に金属膜のめっきで形成した場合、書込電極を構成する凸部の高さがばらついたり、凸部の高さ勾配が発生してしまう。このように書込電極の凸部の高さがばらつくと、書込電極の像担持体への当接が不安定になり、像担持体に書き込まれた静電潜像に部分的に潜像むらが生じ、良好な静電潜像が得られなくなる。
【0007】
しかも、電解めっき法により書込電極の凸部を形成すると、凸部に高さ勾配が生じるようになる。このような高さ勾配を有している書込電極を像担持体に当接させた場合、主走査方向に配列された複数の書込電極が均一にかつ安定して像担持体に当接することが難しくなる。このため、複数の書込電極の像担持体への当接圧に差異が生じ、書き込まれた静電潜像およびそのトナー像のいずれにも濃度むらが生じてしまう。
【0008】
一方、従来像担持体をディップ法で基材に塗布液を塗布することで製造しているが、このディップ法による塗布では、塗布膜の膜厚に若干の膜厚むらが生じる。
この膜厚むらは、従来のスプレー法等の他の塗布方法よる膜厚むらに比べると非常に小さいが、ディップ法による塗布の特有の現象として一定方向に対して若干の膜厚の勾配を有している。このため、このような膜厚の勾配を有している像担持体に書込電極を当接させた場合、主走査方向に配列された複数の書込電極が均一にかつ安定して像担持体に当接することが難しくなる。このため、前述と同様に複数の書込電極の像担持体への当接圧に差異が生じ、書き込まれた静電潜像およびそのトナー像のいずれにも濃度むらが生じてしまう。
【0009】
しかも、書込電極の当接圧において、像担持体の主走査方向(像担持体の軸方向)に当接圧の左右のばらつきがあると、書込ヘッドがスキューしてしまい、良好かつ正確な静電潜像形成が難しくなる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造を容易にしつつ、書込電極の凸部のばらつきを抑制して書込電極を像担持体へより均一にかつより安定して当接させることのできる書込ヘッドを提供することである。
また、本発明の他の目的は、書込電極の凸部の高さ勾配および像担持体の膜厚勾配があっても、書込電極を像担持体へより均一にかつより安定して当接させることで、良好な静電潜像を形成することのできる画像形成装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、請求項1の発明の書込ヘッドは、静電潜像が形成される像担持体に前記静電潜像を書き込む複数の書込電極が可撓性の基材に主走査方向に独立して配置されて構成される構成される書込ヘッドにおいて、前記複数の書込電極が、それぞれ、前記可撓性の基材に独立に配線された電極部上にニッケルめっき(Niめっき)により形成された凸部からなることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、前記Niめっきが無電解めっきで行われることを特徴としている。
【0012】
更に、請求項3の発明の画像形成装置は、請求項1または2記載の書込ヘッドと、前記像担持体と、前記像担持体の前記静電潜像を現像剤で現像する現像装置とを少なくとも備え、前記像担持体が、誘電性樹脂に導電性微粒子を独立分散させた塗布液を像担持体の基材にディップ法によりコーティングしたコーティング膜を有し、前記書込電極が前記像担持体のコーティング膜に接触して前記静電潜像を書き込むことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項4の発明は、前記書込ヘッドが、その前記凸部の高さ勾配と前記像担持体のコーティング膜の膜厚勾配とが互いに逆方向となる当接方向で前記像担持体のコーティング膜に接触して配置されていることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記導電性微粒子が、Mo、W、Ta、Au、Ptのいずれか1つからなることを特徴としている。
【0014】
【発明の作用および効果】
このように構成された請求項1および2の各発明の書込ヘッドによれば、可撓性の基材に独立に配線された電極部上にNiめっきにより形成された書込電極の凸部を形成しているので、書込電極とドライバとの電気的接続作業が簡単になり、書込ヘッドの製造に手間がかからなくなる。しかも、配線の電極部上にNiめっきをすることで、めっきによる凸部の高さのばらつきをより一層抑制することができる。
【0015】
また、書込電極の凸部をNiめっき(ニッケルめっき)により形成しているので、Niめっきの濃度勾配が比較的小さいことから凸部の高さのばらつき(膜厚のばらつき)を抑制できる。これにより、各書込電極を像担持体2により均一にかつ安定して当接させることができる。したがって、Niめっきによる凸部からなる書込電極を用いることで、良好な潜像を安定して形成することができる。
特に、請求項2の発明によれば、Niめっきを無電解めっきで行うことで、めっきの高さ(凸部の高さ)のばらつきを効果的に小さくできる。
【0016】
更に、請求項3ないし5の各発明の画像形成装置によれば、像担持体がディップ法でコーティングされて、静電潜像が形成されるコーティングを有しているので、スプレー法等で製造された像担持体2よりも膜厚むらおよび膜厚勾配を小さくできる。これにより、ディップ法で製造された像担持体に、前述のNiめっきで形成された凸部からなる書込電極を接触させて潜像を書き込むことで、より効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。その結果、良好な濃度のトナー像を安定して形成することができるようになる。
【0017】
特に、請求項4の発明によれば、書込ヘッドの凸部の高さ勾配と像担持体のコーティング膜の膜厚勾配とが互いに逆方向となる当接方向で、書込ヘッドが像担持体のコーティング膜に接触しているので、書込ヘッドをより均一にかつより安定して像担持体に当接させることができる。良好な静電潜像をより一層効果的に安定して形成することができるようになる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、導電性微粒子として、Mo、W、Ta、Au、Ptのいずれか1つが用いられる。これらの金属は、他の金属より分散性が高いため、像担持体を形成したときの膜厚のばらつきを比較的小さくできる。したがって、更に効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施の形態の一例の基本構成を模式的に示す図、図2は図1に示す画像形成装置の部分斜視図、図3は図1における矢印III方向からみた像担持体の部分拡大図、図4はこの例の一部を模式的に示す部分図である。
【0020】
図1および図2に示すように、この例の本発明に係る画像形成装置1は、進行(回動)可能に設けられ静電潜像および現像剤像が形成される像担持体2と、像担持体2に接触してこの像担持体2に静電潜像を書き込む書込装置3と、像担持体2上の静電潜像を現像剤担持体である現像ローラ4aに担持・搬送された現像剤(不図示)で現像する現像装置4と、この現像装置4で現像された像担持体2上の現像剤像を紙等の転写材5に転写ローラ6aで転写する転写装置6と、像担持体2上の転写残りトナーを除去して像担持体2上をクリーニングするクリーニングブレード7aを有するクリーナ7とを少なくとも備えている。
以下の説明においては、像担持体2は接地されているものとして説明するが、これは説明の便宜上であって、本発明は像担持体2が接地されることに限定されるものではない。
【0021】
像担持体2は、中心部近くに位置し、接地されているアルミニウム等の導電性材料からなる基材2aと、この基材2aの外周に形成された誘電性樹脂からなる誘電層2bと、この誘電層2bの表層部に形成された導電性膜からなる電荷注入層2cとからドラム状に形成されている。なお、像担持体2はベルト状に形成することもできる。
【0022】
図3に示すように、電荷注入層2cは、一例として誘電層2bの表層部に相互に電気的に独立分散して配置された多数の電荷注入部2dを備えている。これらの多数の電荷注入部2dは、例えば、電気的に独立分散して配置された局所的導電性部分からなる、海に浮かんだ島のような導電性の海島構造を構成している。各電荷注入部2dの表面はこの電荷注入部2d以外の他の部分、すなわち誘電層2bの表層部の表面と面一またはほぼ面一にされている。
【0023】
誘電層2bはコンデンサー内部の役目を果たし、電荷をスポットに像担持体2の電荷注入部2dに載せる機能を有する必要があるので、所定の電気抵抗(例えば、1015Ω以下等)に設定されることが好ましい。この誘電層2bに用いられる誘電体としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)等の樹脂を用いることができる。
【0024】
一方、電荷注入部2dの材質は、電気抵抗が誘電層2bより小さい抵抗領域(例えば、最大1010Ω程度以下等)の材料が用いられる。その場合、電荷注入部2dの電気抵抗が大き過ぎると、書込に時定数遅れの影響が出て潜像書込不良が起こるので、電荷注入部2dの電気抵抗は、プロセススピードが速いほど小さい方が好ましい。
【0025】
この電荷注入部2dに用いられる導電性材料として、導電性樹脂あるいは導電性フィラーが用いられる。これらの導電性樹脂/導電性フィラーに用いられる材料としては、ポリアセチレンにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの、ポリチオフィンにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの、ポリピロールにヨウ素をドーピングして高分子錯体にしたもの等の導電性高分子粉末の導電性微粒子、およびこれらのうち、適宜の材料を組み合わせたものを用いることができる。その場合、導電性微粒子/導電性フィラーの含有量は10〜100%wtとして抵抗調整したものである。
【0026】
電荷注入部2dに用いる導電性微粒子2eとして、Mo、W、Ta、AuおよびPtのいずれかを用いると、他の金属微粒子よりも分散性が高いため、像担持体2を形成した際に膜厚のばらつきを比較的小さくできるため、これらの金属は本発明のような接触式の書込ヘッド3dを用いた画像形成装置の像担持体2にとって好ましい。
【0027】
なお、電荷注入層2cは、必ずしも前述のような誘電層2bの表面に多数の導電性微粒子2eを独立分散して海島構造に配置する構成にする必要はなく、複数の書込電極3bによる静電潜像の書込を行うことができる構成であれば、例えば誘電層2bの全体に多数の導電性微粒子2′を独立分散させて誘電層2b自体で電荷注入層2cを構成する等、どのような構成にすることもできる。
【0028】
また、このように構成された像担持体1は、図5に示すディップ法により、基材2aの外周面に誘電層2bおよび電荷注入層2cの塗布膜(コーティング膜)を形成して製造することができる。このディップ法は従来から公知の塗膜形成法であり、塗液中に基材2aを浸漬した後、基材2aを引き上げることで、基材2aの表面に塗液がコーティングされたコーティング膜を形成する方法である。
【0029】
ディップ法による塗膜形成法によっても、図6(a)および(b)に示すように膜厚むらおよび膜厚勾配が若干生じるが、これらの膜厚むらおよび膜厚勾配は、従来公知のスプレー法等による塗膜形成法よりは小さい。
像担持体2は図示しないモータによって駆動されることで、図1に矢印で示すように時計方向に回転するようになっている。
【0030】
図1および図2に示すように、書込装置3は、FPC(Flexible Print Circuitの略、以下FPCと称す)あるいはPET(ポリエチレンテレフタレートの略、以下PETと称す)等の絶縁性が高くかつ比較的柔らかく弾性のある可撓性の基材3aと、基材3aに支持されかつこの基材3aの撓みによる弱い弾性復元力で像担持体2上に軽く押圧されて当接し、静電潜像を書き込む複数の書込電極3bと、基材3aの書込電極3bと反対側の端部側を画像形成装置本体(不図示)に固定支持している固定支持部3cと、基材3aに支持された書込電極3bを作動制御するドライバIC(以下、単にドライバともいう)8とからなっている。
【0031】
基材3aは像担持体2の軸方向(幅方向)に像担持体2の電荷注入層2cの軸方向長さとほぼ同じ長さの矩形の板状に形成されている。この基材3aは、図1において左方から像担持体2の進行方向(回転方向;図1に矢印で示す時計方向)と同方向に延びるようにして設けられている。なお、基材3aは、逆に図1において右方から像担持体2の進行方向と対向して延びるようにして設けることもできる。
【0032】
図2に示すように、基材3aの固定支持側と反対の自由端側(像担持体2の進行方向下流側)に書込ヘッド部3dが設けられており、この書込ヘッド部3dは複数の書込電極3bを像担持体2の軸方向(幅方向)に配列した配列パターンを有している。この配列パターンでは、複数の書込電極3bが像担持体2の軸方向(像担持体2の進行方向と直交する方向;主走査方向)に独立にかつ整列されて配置した列が、図4に示すように像担持体2の進行方向に2列に設定されている。
【0033】
そして、基材3aの自由端側の1列目の複数の書込電極3b1により1列目の書込ヘッド3d1が構成され、また、基材3aの固定支持側の2列目の複数の書込電極3b2により2列目の書込ヘッド3d2が構成されている。これらの2列の書込ヘッド3d1,3d2により、この例の画像形成装置1の書込ヘッド部3dが構成されている。
【0034】
図3に二点鎖線で示すように、基材3aの自由端側の1列目の書込電極3b1および基材3aの固定支持側の2列目の書込電極3b2において、互いに隣接する各書込電極3b1,3b2どうしが像担持体2の軸方向と直交する方向(つまり、像担持体2の進行方向;副走査方向)にオーバーラップするように配列されている。このような書込電極3bの配列パターンでは、書込電極3bからの像担持体2の電荷注入部2dへの電荷注入または像担持体2の電荷注入部2dからの書込電極3bへの電荷注入で書き込まれない非帯電部または非除電部は形成されなく、像担持体2の電荷注入部2dの表面の全面が帯電または除電可能となっている。
【0035】
図2および図4に示すように、基材3a上には断面矩形状の薄い平板状の複数の導電パターン9が、例えばエッチング等の従来の薄膜パターン形成方法と同様の方法で互い電気的に独立に形成されている。そして、図4に示すように、基材3aの自由端部側の導電パターン9の端部は電極部とされ、これらの電極部に、それぞれ書込電極3b1,3b2が形成されている。これらの書込電極3b1,3b2は、いずれも導電パターン9の電極部にNiめっきにより基材3aから像担持体2に向かって突出する円柱形状の凸部として形成されている。その場合、Niめっきとしては、無電解めっきおよび電解めっきのいずれでもよいが、無電解めっきによる方がめっきの高さ(凸部の高さ)のばらつきが小さいので好ましい。これらの書込電極3b1,3b2の先端は、いずれも可撓性の基材3aの弾性により小さい押圧力で像担持体2に同時に当接している。
【0036】
ところで、このNiめっきでも、図6(a)および(b)に示すように濃度勾配(膜厚勾配)が生じるが、他の金属のめっきよりも濃度勾配が小さい。一方、前述のようにディップ法により製造された像担持体2でも小さな膜厚勾配が生じている。したがって、図6(b)に示すように、Niめっきの膜厚の小さい側が像担持体2の膜厚の小さい側に、またNiめっきの膜厚の大きい側が像担持体2の膜厚の大きい側に当接させると、膜厚の小さい側の書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に弱く当接し、膜厚の大きい側の書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に強く当接して、各書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2に不均一にかつ不安定に当接するようになる。このため、必ずしも良好な静電潜像の形成が行われない場合が生じる。
【0037】
そこで、図6(a)に示すように、Niめっきの膜厚の小さい側が像担持体2の膜厚の大きい側に、またNiめっきの膜厚の大きい側が像担持体2の膜厚の小さい側に当接させるようにする。これにより、膜厚の大小にあまり関係なく、書込電極3b1,3b2の先端が像担持体2により均一にかつより安定して当接するようになり、当接圧が均一になって良好な静電潜像が安定して形成されるようになる。
【0038】
更に、図2および図4に示すように、所定数のドライバ8が基材3aの上面にそれぞれ像担持体2の軸方向(基材3aの幅方向)に整列されて設けられている(図2および図4には、基材3aの上面に設けられた1個のドライバ8のみが図示されている。)。
そして、この例では、各列の隣接する各所定数の書込電極3b1,3b2を1つのドライバ8に接続した組が複数組、像担持体2の軸方向(像担持体2の進行方向と直交方向)に配列されている(これらの組の一例として、図2に図示されている)。その場合、各ドライバ8と対応する各書込電極3bとが導電パターン9により各書込電極3b毎に独立して電気的に接続されているとともに、図示しないが、同様に各ドライバ8が基材3a上に形成された、導電パターン9と同様の導電パターンにより電気的に接続されている。
【0039】
そして、潜像書込時に、ラインデータ、書込タイミング信号および高圧電力が導電パターンを介して各ドライバ8に供給されるようになっており、更に、各ドライバ8から対応する各列の書込ヘッド3d1,3d2の各書込電極3b1,3b2にそれぞれ所定の電圧V1,V2が導電パターン9を介して選択的に供給されるようになっている。
各書込電極3bへのこれらの所定電圧の選択的供給については前述の特許文献1に開示されている選択的供給と同じであるとともに、本発明に直接関係しないので、ここではその説明は省略する。
なお、ドライバ8は基材3aの下面のみに設けることもできるし、基材3aの上下面に設けることもできる。
【0040】
書込装置3による像担持体2への潜像書込は、電荷注入部2dと書込電極3bとの間での電荷の注入により行われるとともに、この電荷の注入は、多数の電荷注入部2dに書込電極3bが接触することにより行われるようになっている。その場合、電荷の注入は、前述のように電荷が書込電極3bから電荷注入部2dに注入される場合と電荷が電荷注入部2dから書込電極3bに注入される場合とがあり、前者の場合には像担持体2が帯電されて現像器4により正規現像が行われ、また後者の場合には像担持体2が除電されて現像器4により反転現像が行われることは言うまでもない。
【0041】
電荷注入部2dに用いられる導電性微粒子2eの大きさと書込電極3bの大きさとは潜像形成に大いに関係している。すなわち、書込電極3bの電荷注入層2cへの接触面積が導電性微粒子2eの断面積より大きいと、電荷が注入される電荷注入層2cの部分が導電性微粒子2eであることから、書込電極3bの接触部分の導電性微粒子2eは確実に電荷注入されるので、像担持体2に書き込まれる静電潜像は確実に再現することができ、潜像書込の精度が向上する。
そして、書込装置3の各書込電極3bが電荷注入部2dに接触して、これらの書込電極3bと電荷注入部2dとの間で電荷注入が支配的に行われるようになっている。
【0042】
なお、書込電極3bを構成する凸部の形状は円柱形状に限定されることなく、球の一部、円錐、截頭円錐台、楕円柱(横断面が楕円の柱体)、楕円錐(横断面が楕円の錐体)、截頭楕円錐台(横断面が楕円の截頭錐体)、長円柱(横断面が長円の柱体)、長円錐(横断面が長円の錐体)、截頭長円錐台(横断面が長円の截頭錐体)、三角柱、三角錐、截頭三角錐台、四角柱、四角錐、截頭四角錐台、5角以上の多角柱、5角以上の多角錐、および5角以上の截頭多角錐台等の形状に形成することもできる。
【0043】
また、書込電極3bの電気抵抗は所定の抵抗領域(例えば、1010Ω以下等)に設定される。電気抵抗が大き過ぎると、前述の電荷注入部2dの場合と同様に、書込電極3bでの時定数遅れの影響による潜像書込不良が起こるので、電気抵抗は、プロセススピードが速いほど小さい方が好ましい。
【0044】
この例の画像形成装置1によれば、可撓性の基材3aに独立に配線された導電パターン9の電極部上にNiめっきにより形成された書込電極3bの凸部を形成しているので、書込電極3bとドライバ8との電気的接続作業が簡単になり、書込ヘッド3dの製造に手間がかからなくなる。しかも、配線の電極部上にNiめっきをすることで、めっきによる凸部の高さのばらつきをより一層抑制することができる。
また、各書込電極3b1,3b2の凸部をNiめっきにより形成しているので、Niめっきの濃度勾配が比較的小さいことから凸部の高さのばらつき(膜厚のばらつき)を抑制できる。これにより、各書込電極3b1,3b2を像担持体2により均一にかつ安定して当接させることができる。したがって、Niめっきによる凸部からなる書込電極3bを用いることで、良好な潜像を安定して形成することができ、その結果トナー像も良好にかつ安定して形成することができる。
【0045】
特に、ディップ法で製造された像担持体(ドラム、ベルト等)2が、スプレー法等で製造された像担持体2よりも膜厚むらおよび膜厚勾配が小さいため、ディップ法で製造された像担持体2に、前述のNiめっきで形成された凸部からなる書込電極3b1,3b2を接触させて潜像を書き込むことで、より効果的に良好な静電潜像を安定して形成することができる。
【0046】
なお、本発明の像担持体2は、前述の誘電層2bの表層部に電荷注入層2cを形成したものに限定されることなく、例えば、図7に示すように誘電層2bの全体に導電性微粒子2eを独立分散させた基材2aの外周に誘電層2bと電荷注入層とを一緒にして単層に形成した単層型のドラムまたはベルトに適用することもできる。
【0047】
(実施例および比較例)
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
(めっきの種類による書込ヘッドの比較)
実施例1〜10および比較例1〜20では、めっき法およびめっきに用いる金属等のめっきの種類による書込ヘッドを種々作製し、それらの書込ヘッドを用いて試験をし、比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類をそれぞれ表1および表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
めっきの種類による書込ヘッドの比較試験に用いた書込ヘッドおよび像担持体は次のようにして作製した。すなわち、FPCに、各実施例および各比較例について表1および表2に示す金属めっきを同じく表1および表2に示すめっき法でめっきを行って、それぞれ書込電極3bの凸部を形成する。次いで、エッチングを行って、配線間距離42μmおよび配線幅42μmの凸部付きの配線パターンを作製することで、書込ヘッドを製造した。その場合、表1および表2に示すように金属めっきのめっき厚を、各実施例および各比較例のいずれに対しても5μm、10μm、15μm、20μmおよび25μmの数基準とした。
【0051】
また、試験に用いた像担持体は、直径φ30mmのドラムで、誘電性樹脂としてのポリカーボネート樹脂に導電性微粒子2eとしてのMo微粒子を混合して独立分散させたドラムを採用した。膜厚は20μmとし、ポリカーボネート樹脂とMoとの混合比は2.5:0.8(重量比)とした。本実施例として採用したこの像担持体は、図7に示す単層型のドラムである。更に、ドラム幅は紙A4相当の幅とし、書込ヘッドの印字幅は180mmとした。更に、像担持体の周速は100mm/secとした。
【0052】
そして、このように製造された書込ヘッドおよび像担持体を用い、縦万線画像パターン、横万線画像パターンを書込ヘッドにより像担持体上に静電潜像として書き込み、像担持体上の静電潜像を非磁性一成分トナーを用いて現像装置で現像し、このトナー像を転写ローラ上に搬送されるA4紙に転写した。そして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、O.D.値は、X−rite938(X−rite社製)を用いて測定した。また、誘電性樹脂2bと導電性微粒子2eとが独立分散された塗布膜(コーティング膜)の膜厚の測定は、ダイヤルゲージにより接触方式測定方法により測定した。すなわち、ダイヤルゲージで塗布膜形成前の像担持体2の基材の外径および塗布膜形成後の像担持体2の外径をそれぞれ測定し、測定した塗布膜形成後の像担持体2の外径から塗布膜形成前の像担持体2の基材の外径を差し引いた値の2分の1の値を膜厚とした。
更に、目視による濃度のばらつきの評価方法は、50人の評価者に対して印字した画像の評価テストを実施し、45人以上が良とした評価した場合を良上、40人以上が良とした評価した場合を良、およびそれ以外を不良とした。表1および表2にそれらの結果を示す。
【0053】
表1および表2に示すように、めっきの種類は、実施例1〜5がNiの無電解めっき、実施例6〜10がNiの電解めっき、比較例1〜5がCuの無電解めっき、比較例6〜10がCuの電解めっき、比較例11〜15がZnの無電解めっき、比較例16〜20がZnの電解めっきである。
【0054】
めっき厚は、実施例1〜5のNiの無電解めっき、実施例6〜10のNiの電解めっき、比較例1〜5のCuの無電解めっき、比較例6〜10のCuの電解めっき、比較例11〜15のZnの無電解めっき、比較例16〜20のZnの電解めっきにおいて、いずれも、実施例および比較例の番号の順にそれぞれ5μm、10μm、15μm、20μm、25μmに設定した。
【0055】
実施例の左右の高さのばらつきは、それぞれ、実施例1〜5の無電解Niめっきでは、0.1μm〜0.2μmときわめて小さく、また、実施例6〜10の電解Niめっきでは、0.2μm〜0.3μmと比較的小さい。これに対して、比較例の左右の高さのばらつきは、それぞれ、比較例1〜5の無電解Cuめっきでは、0.5μm〜0.6μm(1.2μmがあるが、これは測定上の問題であると思われる)とNiめっきより大きく、また、比較例6〜10の電解Cuめっきでは、0.5μm〜1.8μmとかなり大きく、更に、比較例11〜15の無電解Znめっきでは、0.6μm〜0.7μmと無電解Cuめっきよりは大きくなる傾向にあるが電解Cuめっきよりは小さくなる傾向にあり、更に、比較例16〜15の電解Znめっきでは、0.6μm〜2.0μmと最も大きくなる傾向にある。
【0056】
更に、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例1〜5の無電解Niめっきでは、0.00〜0.01ときわめて小さく、また、実施例6〜10の電解Niめっきでは、0.01〜0.02と比較的小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例1〜5の無電解Cuめっきでは、0.03〜0.1とNiめっきより大きく、また、比較例6〜10の電解Cuめっきでは、0.05〜0.19とかなり大きく、更に、比較例11〜15の無電解Znめっきでは、0.01〜0.04と無電解Cuめっきよりは小さくなる傾向にあり、更に、比較例16〜15の電解Znめっきでは、0.02〜0.2と最も大きくなる傾向にある。
【0057】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例1〜10ではいずれもほとんどなく、非常に良い良上の結果が得られ、また、比較例1〜4、11〜13、16、17でもいずれもほとんどなく、非常に良い良上の結果が得られ、更に、比較例5、8、14、15ではわずかに認められたが、画像に実質の影響を与えない程度であり、良の結果が得られ、更に、比較例9、10、18〜20ではかなり認められ、不良の結果が得られた。
【0058】
以上の結果から、めっきの膜厚のばらつき(高さのばらつき)が小さいとともに、濃度のばらつきが小さいめっきの種類は、無電解Niめっきが最も良く、以下、電解Niめっき、無電解Cuめっき、無電解Znめっき、電解Cuめっき、電解Znめっきの順に良いことが確認された。なお、実用に供し得るのは、無電解Niめっき、電解Niめっき、無電解Cuめっき、および無電解Znめっきである。特に、無電解Niめっきおよび電解Niめっきは、めっきの膜厚のばらつきおよび濃度のばらつきがともにきわめて小さいので、実用上最も好ましい。
【0059】
(ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体との比較)
実施例10〜11および比較例21〜22では、ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体の比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類および塗布方法をそれぞれ表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
塗布方法による像担持体との比較試験に用いた書込ヘッドおよび像担持体は次のようにして作製した。すなわち、FPCに、各実施例および各比較例について表3に示す金属めっきを同じく3に示すめっき法でめっきを行って、それぞれ書込電極3bの凸部を形成する。次いで、エッチングを行って、配線間距離42μmおよび配線幅42μmの凸部付きの配線パターンを作製することで、書込ヘッドを製造した。その場合、表3に示すように金属めっきのめっき厚を、各実施例および各比較例のいずれに対しても10μmとした。
【0062】
また、試験に用いた像担持体は、直径φ30mmのドラムで、誘電性樹脂としてのポリカーボネート樹脂に導電性微粒子としてのMo微粒子を混合したドラムを採用した。膜厚は20μmとし、ポリカーボネート樹脂とMoとの混合比は2.5:0.8(重量比)とした。本実施例として採用したこの像担持体は、図7に示す単層型のドラムである。そして、ポリカーボネート樹脂とMo微粒子とを混合した塗布液を基材にディップ法とスプレー法とにより塗布した。各塗布法による表面粗さのプロフィルは図8に示すとおりである。図8から明らかなように、表面粗さの振れはスプレー塗布の方が大きいことが分かる。
更に、ドラム幅は紙A4相当の幅とし、書込ヘッドの印字幅は180mmとした。更に、像担持体の周速は100mm/secとした。
【0063】
そして、このように製造された書込ヘッドおよび像担持体を用い、縦万線画像パターン、横万線画像パターンを書込ヘッドにより像担持体上に静電潜像として書き込み、像担持体上の静電潜像を非磁性一成分トナーを用いて現像装置で現像し、このトナー像を転写ローラ上に搬送されるA4紙に転写した。そして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、O.D.値は、X−rite938(X−rite社製)を用い2て測定した。また、膜厚はダイヤルゲージで測定した。更に、目視による濃度のばらつきの評価方法は前述と同様である。表3にそれらの結果を示す。
【0064】
表3に示すように、書込電極3bの凸部のめっきの種類は、実施例11および比較例21がNiの無電解めっきであり、また実施例12および比較例22がNiの電解めっきである。
また、像担持体の塗布は、実施例11および12がディップ塗布であり、また、比較例21および22がスプレー塗布である。
【0065】
更に、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例11および12では0.01および0.02ときわめて小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例21および22では0.11および0.20と、実施例11および12より大きい。
【0066】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例11および12ではいずれもほとんどなく、良の結果が得られ、また、比較例21および22ではいずれもかなり認められ、不良の結果が得られた。
以上の結果から、良好な濃度の画像を得るための像担持体の塗布は、ディップ塗布の方がスプレー塗布よりも良いことが確認された。
【0067】
(ディップ塗布およびスプレー塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較)
実施例13〜22および比較例23〜42では、ディップ塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較検討を行った。各実施例および各比較例におけるめっきの種類および塗布方法をそれぞれ表4ないし表6に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
実施例の書込ヘッドのめっきの種類は、実施例13ないし17では無電解Niめっきであり、また実施例18ないし22では電解Niめっきである。
また、ディップ塗布による像担持体とめっきによる書込ヘッドとの当接方向の比較試験に用いた像担持体は、図8に示すプロフィルを有するディップ塗布およびスプレー塗布による像担持体と同じである。その場合、実施例の像担持体は、実施例13および実施例18では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたディップ塗布、また、実施例14および実施例19では導電性微粒子としてW微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例15および実施例20では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例16および実施例21では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたディップ塗布、更に、実施例17および実施例22では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたディップ塗布である。
【0072】
一方、比較例の書込ヘッドのめっきの種類は、実施例23ないし32では無電解Niめっきであり、また実施例33ないし42では電解Niめっきである。
また、比較例の像担持体は、比較例23および比較例33では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたディップ塗布、比較例24および比較例34では導電性微粒子としてW微粒子を用いたスプレー塗布、比較例25および比較例35では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたディップ塗布、比較例26および比較例36では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたスプレー塗布、比較例27および比較例37では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたディップ塗布、比較例28および比較例38では導電性微粒子としてMo微粒子を用いたスプレー塗布、比較例29および比較例39では導電性微粒子としてW微粒子を用いたスプレー塗布、比較例30および比較例40では導電性微粒子としてTa微粒子を用いたスプレー塗布、比較例31および比較例41では導電性微粒子としてAu微粒子を用いたスプレー塗布、比較例32および比較例42では導電性微粒子としてPt微粒子を用いたスプレー塗布である。
【0073】
また、書込ヘッドと像担持体との当接方向は、実施例13〜22では図6(a)に示すNiめっきからなる凸部の高さ(めっき厚)の小さい(低い)側が像担持体2の膜厚の大きい側に、またNiめっきの凸部の高さの大きい(高い)側が像担持体2の膜厚の小さい側に当接する方向、つまり高さ勾配および膜厚勾配が互いに逆方向の当接方向であり、比較例23〜27および比較例33〜37では図6(b)に示すNiめっきの凸部の高さの低い側が像担持体2の膜厚の小さい側に、またNiめっきの凸部の高さの大きい側が像担持体2の膜厚の大きい側に当接する方向、つまり膜厚勾配が同方向の当接方向である。更に、比較例28〜32および比較例38〜42ではスプレー塗布であるため、当接方向は方向性がない。
【0074】
更に、本実験で用いた実験装置、実験方法、測定装置、測定方法および評価方法は、いずれも前述の(めっきの種類による書込ヘッドの比較)および(ディップ法塗布による像担持体とスプレー法塗布による像担持体との比較)と同じであり、同様にして、紙に転写されたトナー像の画像データのO.D.値を測定すること、および目視による濃度のばらつきを観察することで、各実施例および各比較例について比較検討を行った。その場合、トナー像の左右のO.D.値を測定し、O.D.値の左右差を求めた。表4ないし表6にそれらの結果を示す。
【0075】
実施例のO.D.値の左右差は、それぞれ、実施例13〜22では0.01〜0.03ときわめて小さい。これに対して、比較例のO.D.値の左右差は、それぞれ、比較例23〜27および比較例33〜37では0.08〜0.10と比較的大きく、また、比較例28〜32および比較例38〜42では0.21〜0.30とかなり大きい。
【0076】
更に、目視による濃度のばらつきは、実施例13〜22ではいずれもほとんど認められなく、良上の結果が得られ、また、比較例23〜27および比較例33〜37でもいずれも少ししか認められなく、良の結果が得られ、更に比較例28〜32および比較例38〜42ではかなり認められ、不良の結果が得られた。
【0077】
以上の結果から、良好な濃度の画像を得るための像担持体と書込ヘッドとの当接方向は、ディップ塗布による像担持体で図6(a)に示す当接方向が最も良く、次いでディップ塗布による像担持体で図6(b)に示す当接方向が良く、スプレー塗布による像担持体で当接方向の方向性がないのが最も悪いことが確認された。なお、図6(b)に示す当接方向の場合も実用に供し得るが、良好な濃度の画像を安定して得るためには、図6(a)に示す当接方向が実用上最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施の形態の例の基本構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の部分斜視図である。
【図3】図1における矢印III方向からみた像担持体の部分拡大図である。
【図4】この例の一部を模式的に示す部分図である。
【図5】ディップ法による塗膜形成を説明する図である。
【図6】書込ヘッドと像担持体との当接方向を示し、(a)は互いに膜厚勾配が逆方向である当接方向を示す図、(b)は互いに膜厚勾配が同方向である当接方向を示す図である。
【図7】誘電層の全体に導電性微粒子を独立分散させた単層型の像担持体の部分断面図である。
【図8】ディップ法による塗膜形成とスプレー法による塗膜形成とにおける像担持体のプロフィルを示す図である。
【符号の説明】
1…画像形成装置、2…像担持体、2a…基材、2b…誘電性樹脂、2e…導電性微粒子、3…書込装置、3a…基材、3b,3b1,3b2…書込電極、3d…書込ヘッド部、3d1,3d2…書込ヘッド、4…現像装置、5…転写材、6…転写装置、7…クリーナ、8…ドライバIC、9…導電パターン
Claims (5)
- 静電潜像が形成される像担持体に前記静電潜像を書き込む複数の書込電極が可撓性の基材に主走査方向に独立して配置されて構成される書込ヘッドにおいて、
前記複数の書込電極は、それぞれ、前記可撓性の基材に独立に配線された電極部上にニッケルめっき(Niめっき)により形成された凸部からなることを特徴とする書込ヘッド。 - 前記Niめっきは無電解めっきで行われることを特徴とする請求項1記載の書込ヘッド。
- 請求項1または2記載の書込ヘッドと、前記像担持体と、前記像担持体の前記静電潜像を現像剤で現像する現像装置とを少なくとも備え、
前記像担持体が、誘電性樹脂に導電性微粒子を独立分散させた塗布液を像担持体の基材にディップ法によりコーティングしたコーティング膜を有し、
前記書込電極が前記像担持体のコーティング膜に接触して前記静電潜像を書き込むことを特徴とする画像形成装置。 - 前記書込ヘッドは、その前記凸部の高さ勾配と前記像担持体のコーティング膜の膜厚勾配とが互いに逆方向となる当接方向で前記像担持体のコーティング膜に接触して配置されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
- 前記導電性微粒子は、Mo、W、Ta、Au、Ptのいずれか1つからなることを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置。
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JP2003036797A JP2004243682A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 書込ヘッドおよびこれを用いた画像形成装置 |
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CN100461981C (zh) * | 2006-04-29 | 2009-02-11 | 中国科学院上海微系统与信息技术研究所 | 一种基于聚合物基底的凸起电极、制作方法及应用 |
JP2009186917A (ja) * | 2008-02-08 | 2009-08-20 | Sharp Corp | 電子写真感光体 |
JP2010026537A (ja) * | 2005-10-28 | 2010-02-04 | Kyocera Corp | 画像形成装置 |
-
2003
- 2003-02-14 JP JP2003036797A patent/JP2004243682A/ja active Pending
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