JP2004241486A - 半導体結晶化方法および薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents

半導体結晶化方法および薄膜トランジスタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】半導体の所望の領域を均質性良く結晶化する。
【解決手段】ガラス基板1上に下地SiO膜2を介してa−Si膜3を成膜し、このa−Si膜3を対向する2本のスリット4を有するアイランド状に加工する。そのスリット4に、分離絶縁膜7と保温膜8とを積層した分離層6を形成した後、a−Si膜3に対して、分離層6の一端側から他端側へ向かう方向にCWレーザをスキャン照射する。分離層6に挟まれた領域(チャネル形成領域5)では、分離層6の温度上昇によりその冷却速度が遅くなり、大きな結晶粒が形成されるようになる。さらに、分離層6に挟まれた領域への粒界の進入はその分離層6によってブロックされるため、この領域を均質性良く結晶化することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体結晶化方法に関し、特に液晶表示装置などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)やTFTの動作層などに用いられる半導体を結晶化するための半導体結晶化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TFTの動作層には、近年、高移動度が得られ周辺回路の同時形成が可能なポリシリコン(p−Si)の利用が実用化され始めている。p−Si膜を用いたTFTは、通常はガラス基板上に下地絶縁膜を介して成膜したアモルファスシリコン(a−Si)膜に、紫外波長・短パルスのエキシマレーザを照射し、a−Si膜を溶融結晶化させてp−Si膜を形成することによって得られる。
【0003】
図22は従来の半導体結晶化方法の説明図、図23は従来の半導体結晶化方法により得られる結晶化後の半導体の走査型電子顕微鏡写真の一例である。半導体の結晶化は、ここでは図22に示すように、300mm×300mmのガラス基板上にSiO膜などの下地絶縁膜を介して全面に成膜したa−Si膜100に対し、波長308nmでパルス持続時間40ナノ秒(ns)のXeClエキシマレーザを、ビームサイズ100mm×1mm、50μmステップでスキャン照射することによって行なっている。この方法の場合、核はa−Si膜100中でランダムに発生し易く、上記のレーザ照射条件では、図23に示すように、核から等方的に成長した結晶粒が粒径1μm弱程度の略多角形状を呈するようになる。
【0004】
このようなエキシマレーザ結晶化によって得られるp−Si膜を用いてTFTを形成した場合には、そのチャネルに多数の結晶粒が存在してしまう。一般に、チャネル内に存在する結晶粒の粒径が大きく、チャネル内に粒界が少ない場合には、チャネルを移動する電子の移動度は比較的大きくなる。これに対し、チャネル内に存在する結晶粒の粒径が小さく、チャネル内に粒界が多数存在する場合には、逆に電子の移動度は小さくなってしまう。そのため、エキシマレーザ結晶化では、形成されるTFTの特性にばらつきが生じてしまう場合がある。さらに、粒界には欠陥が多く、チャネル内に粒界が存在することで、TFT特性は抑えられてしまう。
【0005】
最近では、a−Si膜に対してCW(Continuous Wave)レーザを照射することにより、ガラス基板上に大粒径の結晶粒からなるp−Si膜を得ようとする試みもなされている(非特許文献1参照)。CWレーザを用いたp−Si膜の形成では、a−Si膜に対して常時一定のレーザスキャン照射が行われることでスキャン方向と同方向に結晶成長が起こり、結晶成長距離が長く、大きな単結晶域を得ることができる。そのため、a−Si膜に対してTFTのチャネルの電子走行方向となる方向にCWレーザをスキャン照射すれば、電子走行方向に略平行に成長した大きな結晶粒をより多く形成することができる。さらに、チャネルを電子走行方向に対して垂直方向に横切るような粒界が形成されにくいため、電子移動度を向上させることが可能になる。
【0006】
【非特許文献1】
佐々木伸夫、外6名,「CWラテラル結晶化(CLC)技術による移動度500cm/Vsを超える新低温ポリSiTFT技術」,電子情報通信学会論文誌,電子情報通信学会,2002年8月,Vol.J85−C,No.8,p.601−608
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、CWレーザを用いたp−Si膜の形成においては、チャネルの電子走行方向に成長した結晶粒を多く形成することはできるが、結晶化にあたってa−Si膜のいずれの領域に単結晶域が形成されるかを予測することは難しく、a−Si膜の所望の領域に選択的に単結晶域を形成することは困難である。そのため、TFTのチャネルを形成する領域に単結晶が形成されるとは限らず、TFTのチャネル内に電子走行方向に略平行な粒界が存在してしまう場合もあり得る。このように、TFTの電子移動度の更なる向上には未だ解決すべき課題が残されている。特に、液晶表示装置において、複数のTFTを有する画素領域およびその周辺回路がガラス基板上に形成されるいわゆるシステム・オン・パネルを実現するためには、TFTのチャネルとなる領域を均質性良く確実に単結晶化してTFTを形成することのできる結晶化方法の確立が望まれる。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、半導体の所望の領域を単結晶化することのできる半導体結晶化方法およびTFTの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す構成から実現可能な半導体結晶化方法が提供される。本発明の半導体結晶化方法は、半導体を成膜し、前記半導体の一部の領域を挟むように対向する分離層を形成し、前記半導体に対して前記分離層の一端側から他端側へ向かう方向にレーザをスキャン照射することを特徴とする。
【0010】
このような半導体結晶化方法では、図1に示すように、例えば絶縁性のガラス基板1上に半導体としてa−Si膜3を成膜し、このa−Si膜3の所望の領域(一部の領域、例えばTFT形成におけるチャネル形成領域5)を挟むように対向する分離層6を形成し、a−Si膜3に対して分離層6の一端側から他端側へ向かう方向にレーザをスキャン照射する。a−Si膜3の縁部やその近傍では、レーザスキャン照射後の周囲への熱拡散のためその冷却速度が速く、微結晶が形成され易い。これに対し、分離層6に挟まれた領域では、レーザスキャン照射によって分離層6も温度上昇することでその冷却速度が遅くなり、大きな結晶粒が形成されるようになる。さらに、a−Si膜3の縁部やその近傍から分離層6に挟まれた領域に向かって成長する結晶粒の粒界は、分離層6によってその領域内への進入がブロックされる。分離層6の間隔が十分に狭ければ、この分離層6に挟まれた領域は単結晶になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の半導体結晶化方法をTFT形成に適用した場合を例に、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は半導体結晶化方法の原理説明図、図2は結晶化する半導体の平面模式図である。ただし、図1は、図2のA−A断面の位置に対応する断面模式図である。
【0013】
第1の実施の形態の半導体結晶化では、まず、図1および図2に示すように、ガラス基板1上に下地SiO膜2を介して形成された半導体であるa−Si膜3をアイランド状に加工するとともに、そのアイランド内に2本のスリット4を対向して形成する。これらのスリット4は、a−Si膜3の一部の領域、例えばa−Si膜3の結晶化によりTFTのチャネルとして形成される領域(チャネル形成領域)5を挟むようにして形成される。さらに、これらのスリット4は、図2に示すように、後述するようにスリット4の一端側から他端側へ向かう方向にa−Si膜3に対して行なわれるCWレーザのスキャン照射の際にCWレーザが先に到達する一端側に間隔が狭くなった部分が設けられて、対称に形成される。
【0014】
次いで、加工後に空間になっているスリット4の領域に分離層6を形成する。この分離層6は、図1に示したように、SiOからなる分離絶縁膜7とp−Siからなる保温膜8とがスリット4の領域に積層された構造となるよう形成される。
【0015】
分離層6の形成後は、a−Si膜3に対してCWレーザを一定のエネルギおよびスキャン速度で分離層6の一端側から他端側へ向かう方向(図2の矢印方向)にスキャン照射することにより、a−Si膜3をアイランドの一方の縁部側から他方の縁部側に向かって結晶化していく。
【0016】
図3はレーザスキャン照射後の半導体の状態を示す平面模式図である。a−Si膜3に対してCWレーザを分離層6の一端側から他端側へ向かう方向にスキャン照射すると、レーザ加熱によってa−Si膜3は溶融し、結晶化される。この結晶化の際には、アイランドの縁部やその近傍は、アイランド周辺への熱拡散のためその冷却速度が速く、微結晶9が形成され易い。一方、分離層6に挟まれたチャネル形成領域5では、CWレーザの照射条件(エネルギやスキャン速度)を適当に選ぶことにより、その冷却速度を十分に遅くすることができる。これは、レーザ加熱による分離層6の温度上昇によって、チャネル形成領域5、特にそのエッジ部での急速な温度低下が抑えられるためであり、その結果、チャネル形成領域5での微結晶の形成が抑制されるようになる。スリット4に分離層6を形成せずに空間としておきa−Si膜3に対してCWレーザをスキャン照射すると、チャネル形成領域5の冷却が速く、チャネル形成領域5のエッジ部で核発生が起こり易く、チャネル形成領域5に微結晶や粒界が形成される場合がある。上記のように、スリット4に分離層6を形成することにより、CWレーザのスキャン照射で分離層6が加熱され、チャネル形成領域5の冷却が遅くなり、そのエッジ部での核発生が抑制されるようになる。
【0017】
さらに、分離層6は、その一端側で分離層6の間隔が狭くなっているため、ここでアイランドの一方の縁部側から他方の縁部側に向かってチャネル形成領域5内を成長していく結晶粒が選択されるようになる。それにより、チャネル形成領域5内に多数の結晶粒が成長するのを回避することができ、チャネル形成領域5内の粒界の数を減少させることができるようになる。また、チャネル形成領域5を横切ろうとする粒界10は、分離層6によってチャネル形成領域5内への進入がブロックされ、チャネル形成領域5には分離層6と略平行に成長する結晶粒が形成されるようになる。
【0018】
このような半導体結晶化によれば、数μmの幅で数十μmの長さの比較的大きな結晶粒を形成することができ、分離層6の間隔が十分に狭ければ、チャネル形成領域5を単結晶化することができる。
【0019】
a−Si膜3の結晶化後には、TFTのパターンがエッチングなどにより形成される。図4はTFTパターンの一例である。TFTのチャネル幅およびチャネル長さは、通常はこの第1の実施の形態の半導体結晶化方法により得られる結晶粒の大きさに比べて小さく、形成するTFTのチャネル幅およびチャネル長さに応じた間隔および長さで分離層6を形成すれば、チャネルを単結晶で構成することができる。上記の半導体結晶化方法を用いてチャネル形成領域5を単結晶化し、図4に示すように、このチャネル形成領域5がTFTのチャネルとなるようにTFTパターン11を形成することにより、高移動度のTFTを形成することができる。
【0020】
なお、CWレーザによる結晶化技術は、これまで主にSOI(Silicon On Insulator)の分野で研究がなされてきたが、ガラス基板1では熱的に耐えないといわれてきた。確かに、a−Si膜3がガラス基板1の全面に成膜されている状態でCWレーザを照射すると、a−Si膜3の温度上昇とともにガラス基板1の温度も上昇し、クラックの発生やガラス基板1中の不純物のa−Si膜3への拡散などが観察される。しかし、上記のようにa−Si膜3をあらかじめアイランド状に加工しておくことにより、ガラス基板1の温度上昇は抑えられ、クラックの発生などを回避することができる。
【0021】
次に、第1の実施の形態の半導体結晶化方法を用いたTFT形成を、図5から図9を参照して具体的に説明する。図5はスリット形成工程の断面模式図、図6はスリット形成工程の一部平面模式図、図7は分離絶縁膜および保温膜の形成工程の断面模式図、図8は露光工程の断面模式図、図9はエッチング工程の断面模式図である。ただし、図5から図9において、図1に示した要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明の詳細は省略する。
【0022】
まず、図5に示すように、ガラス基板1上に、下地SiO膜2を膜厚約200nmで成膜した後、この下地SiO膜2上にa−Si膜3を膜厚約100nmで成膜する。続いて、a−Si膜3にドライエッチングを施し、図5および図6に示すように、a−Si膜3を、対向する2本のスリット4を有するアイランド状に加工する。アイランドは、例えば縦100μm〜200μm程度、横50μm〜70μm程度の大きさにa−Si膜3を加工して形成し、スリット4は、例えば幅1μm〜2μm程度となるように形成する。このスリット4は、図6に示したように、その一端側で間隔が狭くなるようにして対称に形成する。また、スリット4の間隔および長さは、形成するTFTのチャネル幅およびチャネル長さに応じた間隔および長さとする。
【0023】
スリット4の形成後は、図7に示すように、下地SiO膜2、a−Si膜3およびスリット4上に、SiOを膜厚約50nmで成膜して分離絶縁膜7を形成する。さらに、この分離絶縁膜7上に、a−Siを膜厚約100nmで成膜し、公知のNi添加SPC法により温度550℃で熱処理してp−Si化して保温膜8を形成する。
【0024】
次いで、図8に示すように、保温膜8表面にネガレジスト12を塗布し、アイランド状に加工されたa−Si膜3の部分が開口されているマスク13を用い、ガラス基板1の背面側からg線(波長436nm)を露光する。通常、露光に用いられるg線は、a−Siとp−Siとで吸収係数が約1桁異なり、a−Siにはほとんど吸収されるが、p−Siは透過する割合が高い。したがって、ガラス基板1の背面側からg線を露光した場合には、a−Si膜3上方のネガレジスト12は感光されず、スリット4上方のネガレジスト12だけが感光され、現像後には、図9に示すようなレジストパターンが形成されるようになる。
【0025】
レジストパターン形成後は、そのレジストパターンをマスクにしたドライエッチングにより保温膜8および分離絶縁膜7をエッチングする。レジストパターンの除去後、スリット4の領域には、上記図1に示したような分離絶縁膜7と保温膜8とが積層された分離層6が対向して形成される。
【0026】
この状態でCWレーザ、例えばNd:YAGレーザ(2ω,波長532nm)を、エネルギ6W、ビーム径400μm×40μm、スキャン速度20cm/sで、a−Si膜3に対して分離層6の一端側から他端側へ向かう方向にスキャン照射する。ここで、CWレーザのスキャン照射は、ガラス基板1の背面側からでも、分離層6が形成されている表面側からでも、いずれも問題なくa−Si膜3を結晶化することができる。
【0027】
a−Si膜3の結晶化後はドライエッチングによりTFTパターンを形成し、以降、公知の方法によりゲート絶縁膜およびゲート電極を形成し、不純物を導入して活性化した後、ソース・ドレイン電極を形成してTFTとすればよい。
【0028】
このようにしてTFTを形成すれば、そのチャネルを形成すべき所望の領域を分離層6で挟んでその領域を単結晶化することが可能であるため、結晶粒径や粒界に起因するTFT特性のばらつきを抑えることができるようになる。また、良好なTFT特性が得られるため、駆動回路一体型の高品質な液晶表示装置も実現可能となる。
【0029】
なお、分離層6が形成されるスリットの形状は、上記図6のように一端側の間隔を狭くしたもののほか、以下の図10〜図13に第1〜第4の変形例としてそれぞれ示すような形状とすることもできる。
【0030】
図10はスリット形状の第1の変形例を示す図である。この図10に示す対向する2本のスリット4aは対称関係にあり、スリット4aの一端側、他端側の両端部で間隔が狭くなった形状になっている。このような形状のスリット4aに分離層が形成され、a−Si膜3に対して図10の矢印方向にCWレーザがスキャン照射されると、スリット4aの間隔が狭くなっている部分でチャネル形成領域5内を成長していく結晶粒が選択されるようになる。この図10に示したスリット4aのような形状とした場合には、CWレーザのスキャン照射方向は、図10の矢印方向と反対方向であってもよい。
【0031】
図11はスリット形状の第2の変形例を示す図である。この図11に示す対向する2本のスリット4bは対称関係にあり、CWレーザが先に到達する一端側の間隔が狭く、一端側から他端側に向かって緩やかに間隔が広がった形状になっている。このような形状のスリット4bに分離層が形成される。このスリット4bの場合も上記図10のスリット4aと同様、a−Si膜3に対して図11の矢印方向にCWレーザがスキャン照射されると、スリット4bの間隔が狭くなっている部分でチャネル形成領域5内を成長していく結晶粒が選択されるようになる。
【0032】
図12はスリット形状の第3の変形例を示す図である。この図12に示す対向する2本のスリット4c,4dは非対称関係にあり、直線形状のスリット4cと略L字形状のスリット4dとが並設されている。スリット4c,4dは、スリット4c,4dの間隔が狭くなっている部分からスリット4c,4dが延びる方向と、図12に矢印で示したCWレーザのスキャン照射方向とが平行にならないように形成されている。このようなスリット4c,4dに分離層を形成して、a−Si膜3に対してCWレーザをスキャン照射した場合には、スリット4c,4dの間隔が狭くなっている部分でチャネル形成領域5に成長する結晶粒が選択される。さらに、スリット4c,4dの間隔が狭くなっている部分からチャネル形成領域5内にスキャン照射方向に生じる粒界が進入しても、その粒界はスリット4dにぶつかって途切れるようになる。したがって、TFTのチャネルを単結晶で形成する歩留りが向上するようになる。
【0033】
図13はスリット形状の第4の変形例を示す図である。この図13に示す対向する2本のスリット4e,4fは非対称関係にあり、L字形状のスリット4eと直線形状のスリット4fとが並設されている。これらのスリット4e,4fに分離層を形成して、a−Si膜3に対して図13の矢印方向にCWレーザをスキャン照射した場合には、スリット4e,4fの間隔が狭くなった部分でチャネル形成領域5内に成長する結晶粒が選択される。また、チャネル形成領域5にスキャン照射方向に略平行に生じる粒界が進入するのを防止できる。さらに、チャネル形成領域5への結晶粒の進入方向と、CWレーザのスキャン照射方向とが平行でないため、スリット4e,4fの間隔が狭くなっている部分からチャネル形成領域5内に粒界が進入しても、その粒界はスリット4eにぶつかって途切れるようになる。したがって、TFTのチャネルを単結晶で形成する歩留りが向上するようになる。
【0034】
以上の説明では、a−Si膜のアイランド内に、対向する1組のスリットを形成してこのスリットの領域に分離層を形成し、分離層で挟まれた領域に単体のTFTのチャネルを形成する場合について述べたが、第1の実施の形態の半導体結晶化方法は回路形成にも適用可能である。図14は回路形成への応用例を示す図である。例えば、図14に示すように、a−Si膜3で形成されたひとつのアイランド内に2組のスリット、例えば上記図12に示した形状の1組のスリット4c,4dを並設し、各組のスリット4c,4d間を単結晶化する。そして、それぞれの単結晶域にTFTパターン11aを形成すれば、CMOSインバータが形成可能である。このように、ひとつのアイランド内に複数組のスリットを設け、TFTが形成される領域をすべて選択的に単結晶化することも可能である。形成する回路構成によってスリットの配置を最適化すれば、単結晶TFTによる回路が形成可能である。なお、スリット形状は、勿論、図14に示した形状に限らず、上記図1,図10,図11,図13に例示した形状とすることが可能である。
【0035】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、a−Si膜にスリットを形成せずに、a−Si膜の所定の領域を変質させ、その領域を分離層とする点で第1の実施の形態と相違する。以下、第2の実施の形態の半導体結晶化方法を、TFT形成に適用した場合を例に、図15から図21を参照して具体的に説明する。図15はa−Si膜形成工程の一部平面模式図、図16は図15のB−B断面の位置に対応する断面模式図、図17はレジスト形成工程の一部平面模式図、図18は図17のC−C断面の位置に対応する断面模式図、図19は分離層形成工程の一部平面模式図、図20は図19のD−D断面の位置に対応する断面模式図、図21はレーザスキャン照射工程の一部平面模式図である。
【0036】
第2の実施の形態の半導体結晶化では、まず、図16に示すように、ガラス基板21上に下地SiO膜22を介してa−Si膜23を成膜し、これを図15および図16に示すように、アイランド状に加工する。アイランドは、例えば縦100μm〜200μm程度、横50μm〜70μm程度の大きさに加工する。
【0037】
次いで、図17および図18に示すように、下地SiO膜22およびa−Si膜23上に、対向する2本のスリット24aを有するマスク24を形成する。このマスク24は、レジストで形成しても、SiO膜(膜厚約50nm)で形成しても、Mo(膜厚約300nm)のような金属薄膜で形成してもよい。マスク24のスリット24aは、例えば幅1μm〜2μm程度となるように形成する。このスリット24aは、図17に示したようにその間隔が一端側で狭くなるように対称に形成される。スリット24aの間隔および長さは、形成するTFTのチャネル幅およびチャネル長さに応じた間隔および長さとする。マスク24の形成後は、図18に示したように、そのスリット24aからa−Si膜23の露出部分に酸素イオンをイオン注入する。
【0038】
イオン注入後、マスク24を除去して熱処理を施し、図19および図20に示すように、a−Si膜23の酸素イオンがイオン注入された部分を酸化膜(SiO膜)に変質させる。この変質後に得られる酸化膜の細線が、対向する分離層26となり、分離層26に挟まれた領域がチャネル形成領域25となる。
【0039】
このようにして分離層26を形成した後、a−Si膜23に対してCWレーザを図21の矢印方向にスキャン照射する。このレーザスキャン照射は、ガラス基板21の背面側からでも、分離層26が形成された表面側からでも可能であり、また、レーザ照射条件は第1の実施の形態の場合と同程度でよい。
【0040】
レーザ加熱によってa−Si膜23が溶融結晶化される際には、埋め込み形成された分離層26の温度も上昇し、チャネル形成領域25のエッジ部の温度低下が抑えられ、核発生が抑制される。さらに、この分離層26が存在することにより、チャネル形成領域25内に成長する結晶粒が選択され、また、チャネル形成領域25を横切ろうとする粒界がブロックされる。これにより、チャネル形成領域25には分離層26に略平行に成長する結晶粒が形成され、チャネル形成領域25を単結晶化することができる。
【0041】
その後、チャネル形成領域25がTFTのチャネルとなるようにドライエッチングにより加工し、TFTパターンを形成する。以降は、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成し、公知の方法でTFTを形成すればよい。
【0042】
なお、この第2の実施の形態におけるマスク24のスリット24aの形状を、第1の実施の形態において図10〜図13に変形例として例示したスリット形状と同様の形状に変更することもできる。これにより、それぞれのスリット形状に応じた分離層26を形成することができ、上記図10〜図13で述べたのと同様の効果を得ることができる。また、第1の実施の形態において図14に示したように、第2の実施の形態の半導体結晶化方法を回路形成に適用することも可能である。
【0043】
また、以上の説明では、絶縁基板であるガラス基板上に、結晶化する半導体としてa−Si膜を成膜したが、a−Si膜のほか、半導体としてp−Si膜を成膜し、これにCWレーザをスキャン照射してチャネル形成領域を単結晶化するようにしてもよい。
【0044】
また、以上の説明では、半導体結晶化方法をTFT形成に適用した場合を例にして述べたが、本発明はTFT形成に限らずそのほかの半導体の結晶化にも広く用いることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、半導体の一部の領域を挟むように対向する分離層を形成した後、その半導体に対して、分離層の一端側から他端側へ向かう方向にレーザをスキャン照射することにより、この半導体を結晶化するようにした。これにより、分離層で挟んだ所望の半導体領域を選択的に均質性良く結晶化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体結晶化方法の原理説明図である。
【図2】結晶化する半導体の平面模式図である。
【図3】レーザスキャン照射後の半導体の状態を示す平面模式図である。
【図4】TFTパターンの一例である。
【図5】スリット形成工程の断面模式図である。
【図6】スリット形成工程の一部平面模式図である。
【図7】分離絶縁膜および保温膜の形成工程の断面模式図である。
【図8】露光工程の断面模式図である。
【図9】エッチング工程の断面模式図である。
【図10】スリット形状の第1の変形例を示す図である。
【図11】スリット形状の第2の変形例を示す図である。
【図12】スリット形状の第3の変形例を示す図である。
【図13】スリット形状の第4の変形例を示す図である。
【図14】回路形成への応用例を示す図である。
【図15】a−Si膜形成工程の一部平面模式図である。
【図16】図15のB−B断面の位置に対応する断面模式図である。
【図17】レジスト形成工程の一部平面模式図である。
【図18】図17のC−C断面の位置に対応する断面模式図である。
【図19】分離層形成工程の一部平面模式図である。
【図20】図19のD−D断面の位置に対応する断面模式図である。
【図21】レーザスキャン照射工程の一部平面模式図である。
【図22】従来の半導体結晶化方法の説明図である。
【図23】従来の半導体結晶化方法により得られる結晶化後の半導体の走査型電子顕微鏡写真の一例である。
【符号の説明】
1,21 ガラス基板
2,22 下地SiO
3,23 a−Si膜
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f,24a スリット
5,25 チャネル形成領域
6,26 分離層
7 分離絶縁膜
8 保温膜
9 微結晶
10 粒界
11,11a TFTパターン
12 ネガレジスト
13,24 マスク

Claims (5)

  1. 半導体を結晶化する半導体結晶化方法において、
    半導体を成膜し、
    前記半導体の一部の領域を挟むように対向する分離層を形成し、
    前記半導体に対して前記分離層の一端側から他端側へ向かう方向にレーザをスキャン照射することを特徴とする半導体結晶化方法。
  2. 前記半導体の前記一部の領域を挟むように対向する前記分離層を形成する際には、
    対向する前記分離層の間隔が前記一端側で狭くなるように前記分離層を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体結晶化方法。
  3. 前記半導体の前記一部の領域を挟むように対向する前記分離層を形成する際には、
    前記半導体に前記一部の領域を挟むように対向するスリットを形成し、
    前記半導体および前記スリット上に分離絶縁膜を形成し、
    前記分離絶縁膜上に保温膜を形成し、
    前記分離絶縁膜および前記保温膜を前記スリットの領域にのみ残して除去することによって、前記分離層を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体結晶化方法。
  4. 前記半導体の前記一部の領域を挟むように対向する前記分離層を形成する際には、
    前記分離層を形成すべき領域の前記半導体を変質させることによって、前記分離層を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体結晶化方法。
  5. 結晶化されたチャネルを有する薄膜トランジスタの製造方法において、
    絶縁基板上に半導体を成膜する工程と、
    前記半導体の薄膜トランジスタのチャネルとなる領域を挟むように対向する分離層を形成する工程と、
    前記半導体に対して前記分離層の一端側から他端側へ向かう方向にレーザをスキャン照射し前記薄膜トランジスタのチャネルとなる領域を結晶化する工程と、
    を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
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