JP2004240259A - 液晶調光デバイス及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】透過状態における透明度が高く、しかも低電圧で高コントラストを実現する液晶調光デバイス、及びその液晶調光デバイスを用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明は、それぞれ電極3を備えた一対の基板2と、上記両基板間に封入された液晶層5を備える。液晶層5は、非光重合性ゲル化剤が添加されることにより、ドメイン6に分れてゲル化した液晶材料を含む。上記液晶材料は、誘電率異方性が負であって、上記電極3に電圧が印加されていない状態で、上記基板2に対して垂直方向に配向していることを特徴とする液晶調光デバイス、及びその液晶調光デバイスを用いた液晶表示装置である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、それぞれ電極3を備えた一対の基板2と、上記両基板間に封入された液晶層5を備える。液晶層5は、非光重合性ゲル化剤が添加されることにより、ドメイン6に分れてゲル化した液晶材料を含む。上記液晶材料は、誘電率異方性が負であって、上記電極3に電圧が印加されていない状態で、上記基板2に対して垂直方向に配向していることを特徴とする液晶調光デバイス、及びその液晶調光デバイスを用いた液晶表示装置である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル化された液晶材料からなる液晶層を調光層として備えた液晶調光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透過光若しくは反射光の散乱と透過の切り替えを行う液晶調光デバイスとしては、高分子分散型液晶素子が知られている。高分子分散型液晶表示素子は、光散乱効果を応用したものであるため、偏光子を必要としない。そのため、高分子分散型液晶表示素子は、視野角が広く明るいといった利点がある。また、液晶層が高分子材料と液晶材料の複合体であるため、大画面化が比較的容易である。これらにより、大面積ディスプレイや投写型ディスプレイの分野を中心に、高分子分散型液晶表示素子の研究開発が進められている。
【0003】
高分子分散型液晶素子は、典型的には光重合法により製造される。即ち、電極を有する2枚の基板間に光重合性モノマーと液晶との混合物を導入し、相溶状態で露光することにより相分離を誘起させて調光層を形成する方法で製造される(例えば、特許文献1,特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの方法は、上記光重合性モノマーを重合させる工程で、紫外線による露光工程が必須であった。そのため、紫外線を照射すると、液晶が紫外線によるダメージを受けて表示素子としての信頼性が低下するおそれがあった。また、ブラックマトリクス層のような遮光部がパターニングされたカラーフィルターを通して紫外線が露光された場合、遮光部の陰となる領域に存在するモノマーは、未重合のまま液晶層内に残留してしまい、表示素子の信頼性を低下されるおそれもあった。
【0005】
一方、紫外線による露光を必要としない散乱・透過切り替え素子も開示されている。例えば、ゲル化剤を液晶中に添加し、それが能動的に形成する液晶性ゲルを無配向処理のセルに封入した液晶ゲル表示デバイスが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−340587号公報
【特許文献2】
特開平7−17910号公報
【特許文献3】
特開平7−69983号公報
【特許文献4】
特開2000−239663号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、元来、高分子分散型液晶表示素子は駆動電圧が高い上、前記特許文献4に開示された液晶ゲル表示デバイスにおいては、ゲルネットワークに強くアンカリングされたネットワーク近傍の液晶分子の電場応答性が悪いという問題があった。そのため、特許文献4の液晶表示素子は、初期状態で生じている光散乱が透過状態でも残り易い傾向にあり、良好な透過状態を得るのに高電圧を要する。従って、通常の駆動電圧では十分な透明状態が得られず、特に良好な透明状態が必要となる反射型表示素子においては、コントラストが低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、煩雑で且つ、液晶表示の信頼性低下の原因となる紫外線露光による光重合プロセスが不要であるとともに、その透過状態における透明度が高く、しかも低電圧で高コントラストを実現する液晶・ゲル化剤混合物を使用した液晶調光デバイス、及びその液晶調光デバイスを用いた液晶表示装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、誘電率異方性が負である液晶材料をゲル化剤でゲル化し、電圧が印加されていない状態で基板に対し垂直方向に配向するように封入した。
【0010】
具体的に本発明は、それぞれ電極を備えた一対の基板と、上記両基板間に封入された液晶層を備え、液晶層は、非光重合性ゲル化剤が添加されることにより、ドメインに分れてゲル化した液晶材料を含み、上記液晶材料は、誘電率異方性が負であって、上記電極に電圧が印加されていない状態で、上記基板に対して垂直方向に配向していることを特徴とする液晶調光デバイスである。
【0011】
本発明は、それぞれ電極を備えた一対の基板間に封入された液晶層に電圧を印可することにより、透過状態を散乱状態に切り替える液晶調光デバイスである。
【0012】
本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負である。誘電率異方性が負である液晶材料は、電極間に電圧が印加されていない状態において、液晶分子の分子長軸方向が基板に対して垂直方向を向くように配向する。また、上記電極間に電圧が印加されると、上記液晶分子はその分子長軸方向が上記基板に水平な方向を向くように配向する性質を有する。
【0013】
本発明において、上記液晶材料は、ゲル化剤が添加されることにより流動性を失い、ドメインに分れてゲル化している。本発明に係るゲル化剤は、主として水素結合等非共有性結合により不規則な3次元網目構造を構築する。従って、本発明に係るゲル化剤は、紫外線を照射することなく、液晶材料をゲル化することができる。ここで、液晶材料のドメインとは、液晶分子の配向がある程度揃っている領域をいう。
【0014】
従って、本発明に係る液晶材料は、電極間に電圧が印加されていない状態において、上記基板に対して垂直方向に配向した状態でゲル化している。そのため、本発明に係る液晶調光デバイスは、電圧が印加されていない状態において、各ドメイン間の屈折率の差がなく透過光の散乱を生じることがない。従って、透明度の極めて高い透過状態を実現することができる。一方、電極間に電圧が印加されると、上記液晶材料は上記基板に対して平行な向きに配向しようとする。しかし、本発明において、液晶層はドメインに分れているため、ドメイン毎に液晶材料の水平配向の程度に差が生じる。これにより、ドメイン間に屈折率の差が生じ、光の散乱を大きくすることができる。
【0015】
上記液晶調光デバイスは、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の対向面に、垂直配向膜が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負であるため、液体状態で基板間に注入され液晶層に相転移すると、垂直配向膜が形成されていなくても液晶分子は基板に対して垂直方向に配向する傾向を示す。上記基板の対向面に垂直配向膜が形成されることにより、基板間に注入された液晶材料の液晶分子の配向方向を基板に対して完全に垂直方向に揃えることができる。その結果、液晶調光デバイスの透過状態における透明度を向上させることができる。
【0017】
上記液晶調光デバイスは、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の対向面に、配向分割処理が施された配向膜が形成されることが好ましい。
【0018】
本発明において、基板の対向面に配向分割処理が施された配向膜が形成されることにより、基板間に電圧が印加された際、上記垂直配向した液晶分子が倒れる方向に異方性が生じ、透過光の散乱強度が大きくなる。従って、本発明に係る液晶調光デバイスは、配向分割処理が施されていないものに比較して、高いコントラストを得ることができる。
【0019】
上記液晶調光デバイスにおいて、上記ゲル化剤のゲル化温度は、上記液晶材料のネマチック・アイソトロピック転移点(以下、「TNI」ともいう。)より低いことが好ましい。
【0020】
本発明において、加熱され液体状態にある液晶材料とゲル化剤の混合物を基板間に注入し冷却した場合、混合物の温度がTNIに達すると上記液晶材料は液晶相に相転移する。この際、液晶分子は、ゲル化剤の制約を受けることなく、基板に対して垂直に配向する。続いて、混合物の温度がゲル化温度に達すると、上記ゲル化剤は架橋して3次元網目構造を形成し、上記基板間の液晶材料をゲル化する。既に上記液晶材料は基板に対して垂直に配向しているため、上記ゲル化剤は、上記液晶材料の配向方向を保ちつつ、液晶材料をドメインに分けてゲル化することができる。
【0021】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記液晶層において、液晶材料のドメインは、その大きさが0.3μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0022】
液晶材料のドメインの大きさが0.3μm未満であれば、透過光に使用される光の波長がドメインの大きさよりも大きくなってしまい、デバイスの散乱状態で十分な光に散乱が得られない。一方、上記ドメインの大きさが10μmより大きいと、該ドメインが基板間の距離に近づくことから、部分的にモノドメインとなる領域が生じる。モノドメイン領域では、液晶分子の配向方向によって光の散乱が生じにくいおそれがある。従って、ドメインの大きさが上記範囲にある場合、本発明の液晶調光デバイスは、散乱状態で光を十分に散乱することができる。
【0023】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記液晶層において、上記ゲル化剤は、線幅0.3μm以下の3次元網目構造を形成することが好ましい。
【0024】
上記3次元網目構造の線幅が0.3μm以下であれば、その線幅は透過光に使用される光の波長以下となる。そのため、本発明に係る液晶調光デバイスが透過状態にある場合、透過光が上記ゲル化剤の形成する3次元網目構造体自体で屈折することがない。そのため、透過状態において高い透明度を確保することができる。
【0025】
本発明に係る液晶調光デバイスの液晶層は、カイラル剤を含むものであってもよい。電極間に電圧が印加されると垂直方向に配向した液晶分子は、基板に対して平行な方向に配向する。上記液晶層にカイラル剤が添加されていると、液晶分子が垂直方向から平行方向へ倒れる向きが不規則になる。従って、液晶調光デバイスが散乱状態にあるときの液晶層の散乱強度が大きくなり、コントラストの高い調光が可能となる。
【0026】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記ゲル化剤は、分子内に、上記垂直方向に配向した液晶材料に沿って配向可能な分子構造を有することが好ましい。
【0027】
これにより、上記ゲル化剤が形成する3次元網目構造自体の屈折率特性と液晶材料が形成するドメインの屈折率特性が近似することになる。その結果、上記液晶調光デバイスの透過状態における透明度を向上させることができる。
【0028】
本発明に係る液晶表示装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶調光デバイスと、反射板とを組合せてなる反射型液晶表示装置である。上記反射板は、上記液晶調光デバイスが透過状態にあるとき、使用視角範囲で黒表示を保証するものである。
【0029】
本発明に係る液晶表示装置は、反射型液晶表示装置であり、表示面側から入射した光を反射板によって反射することにより表示を可能にするものである。上記反射板は、使用視角範囲で黒表示を保証するものである。即ち、上記液晶調光デバイスが透過状態にあるとき、反射板は入射光を観察者の目に入らないように反射させる。従って、この状態で観察者には、画面が黒表示として認識される。一方、上記液晶調光デバイスが散乱状態にあるとき、入射光は、液晶調光デバイスの液晶層にて散乱され観察者のみに入射する。従って、この状態で観察者には、画面が白表示として認識される。本発明において、上記液晶調光デバイスは、透過状態において透明性が極めて高いため、上記液晶表示装置に使用されると、コントラストの高い黒白表示を可能とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1に示す液晶調光デバイス1は、それぞれ電極を備えた一対の基板と、両基板間に封入された液晶層5を備える。本実施形態において、上記基板はガラス製の透明基板2であり、両透明基板2、2の対向面には、電極としてITO(Indium Tin Oxide)製の透明電極3、3が形成されている。更に、両透明電極3、3の対向面には、垂直配向膜4、4が形成されている。
【0032】
上記基板間には、液晶層5の層厚を一定に保持するためのスペーサー(図示せず。)を介在させてもよい。液晶層5の層厚は、本液晶調光デバイス1の使用目的に応じて適宜に選択されるが、液晶層5が透明になる透過状態と光を散乱して不透明になる散乱状態との十分なコントラストを得るために、1〜50μmの範囲が好ましく、3〜25μmの範囲が特に好ましい。
【0033】
上記液晶層5は、液晶材料にゲル化剤が添加された混合物を含む。上記ゲル化剤は架橋することにより3次元網目構造7を形成し、液晶層5を多数のドメイン6に分割している。各ドメイン6を構成する液晶材料の液晶分子8は、電極間に電圧が印加されていない状態(以下、「無印加状態」ともいう。)において、基板2、2に対し垂直方向に配向している。一方、電極間に電圧が印加された状態(以下、「印加状態」ともいう。)において、各ドメインを構成する液晶分子8は、一部ゲル化剤の形成する3次元網目構造にアンカリングされた分子を除き、基板2、2に対して平行な向きに配向している。
【0034】
本発明において用いられる液晶材料としては、従来より液晶デイスプレイに用いられている誘電率異方性が負の液晶分子を使用することができる。例えば、ネマチック相を示す1,4−フェニルシクロヘキサン系、1,4−transシクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種液晶分子の側方水素原子をフッ素原子などの極性基で置換した液晶化合物、またはこれらの複数の液晶分子の混合物が挙げられる。
【0035】
本発明において用いられるゲル化剤としては、一般的には、分子内に分子間水素結合を形成し得る結合基、例えば−CONH−基、または−NH−基と−CO−基との組合せを2組以上有するものが選択される。即ち、アミド基、ウレタン基、ウレア基などがこれに相当するが、−NH−基と−CO−基との間に数個の極性の小さい原子によるメチレン基、エチレン基などを介しても構わない。これら結合基は、他の分子内に存在する水素原子との間で順次水素結合を形成し、3次元網目構造を形成している。
【0036】
また、本発明に係るゲル化剤は、炭素数が4以上のアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリールアルキル基またはアリールオキシアルキル基などの親有機基を有することが好ましい。特に好ましくは、炭素数6〜20のアルキル基または不飽和2重結合を含むアルキレン基である。これらを1種単独、または2種以上を有していてもよい。
【0037】
即ち、ゲル化剤として適当な物質は、一般式が下の式で表されるような、ゲル化剤が分子内に分子間で水素結合が可能な基及びアルキル基などの親有機基のそれぞれを少なくとも2個有する化合物、またはこれら化合物の2種類以上の混合物である。
【0038】
(R−A−)n X nは2以上の整数
R:親有機基部位(長鎖アルキル基、アルキレン基など)
A:分子間水素結合部位(アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合など)
X:連結部位(テトラメチレン基、o−シクロヘキシル基など)
【0039】
具体的なゲル化剤としては、例として下記化学式で示されるような化合物を挙げることができる。
nC18H37−CO−NH−CH2CH2−NH−CO−nC18H37
なお、分子構造中に複数個存在する親有機基部位、及び分子間水素結合部位は同じ構造である必要はなく、分子構造が非対称であっても構わない。
【0040】
本発明において、液晶材料をゲル化させるのに必要な上記ゲル化剤の量は、液晶分子及びゲル化剤の種類にもよるが、液晶分子とゲル化剤との総和に対して好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%使用される。液晶材料とゲル化剤から液晶ゲル化混合物を得る方法として、これらの混合物を加熱して均一な等方性溶液とした後、冷却して光学的に異方性の液晶ゲルとする方法がある。この液晶ゲル化混合物は、再加熱することにより等方性溶液に戻り、再冷却すれば再度液晶ゲル化混合物が得られる。このように本発明のゲル状物質は、熱可逆性である。
【0041】
本発明において、上記液晶材料やゲル化剤は適宜組合せて使用することができるが、液晶材料がゲル化した状態で液晶分子が基板に対して垂直方向に配向していることが透明性を確保する上で必要となる。そのためには、ゲル化剤のゲル化温度が液晶材料のTNI(ネマチック・アイソトロピック転移点)の温度より低くなるように両者を選択して組合せる。
【0042】
このように組合せることにより、以下のようにして本発明に係る液晶層5を得ることができる。即ち、上記液晶材料とゲル化剤との混合物を加熱して等方液体状態とし、これを基板間に注入する。そこから降温した場合、まず、混合物の温度がTNIに達すると上記液晶材料は液晶層に相転移し、ゲル化剤の制約を受けることなく上記基板に対して垂直方向に配向する。更に降温して混合物の温度がゲル化温度に達すると、上記ゲル化剤は分子間水素結合により架橋して液晶材料をゲル化する。この際、液晶材料は既に基板に対し垂直方向に配向している。そのため、ゲル化剤は液晶材料の配向方向を保ちつつ、液晶材料をドメインに分けてゲル化することができる。
【0043】
このように本発明の液晶ゲル化混合物は、上記基板間で各基板2、2に対して液晶分子が垂直配向するように注入される。本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負であるため、基板間に注入されると液晶分子が基板に対して垂直に配向する傾向がある。しかし、液晶分子の垂直配向を確実にするため、液晶調光デバイスに一般的に用いられている垂直配向膜を使用することが好ましい。例えば、垂直配向膜は、プレチルト角を発現するための脂肪族、脂環族、フッ素系の官能基を導入したポリアミック酸、ポリイミドなどからなる配向剤を基板表面に塗膜したり、シランカップリング剤を基板表面に被膜する等して形成される。
【0044】
上記基板間に液晶ゲル化混合物が注入された液晶調光デバイスは、無印加状態において、ほぼ透明な外観を示す。これは、図2に示す従来の高分子分散型液晶表示デバイスが、無印加状態で散乱状態を示すのと相反する。従来の高分子分散型液晶表示デバイスは、液晶材料の誘電率異方性が正であること、また基板に配向処理が施されていないことから、上記高分子ゲル化剤が形成するゲルネットワーク(3次元網目構造)に沿って液晶分子がランダムに配向するドメインを形成する。従って、無印加状態において、各ドメイン間には屈折率の差が生じている。これにより透過光が散乱されるためである。
【0045】
一方、本発明に係る液晶調光デバイス1が、無印加状態で透明度の高い透過状態を呈するのは、以下の理由による。
【0046】
即ち、本発明に係る液晶調光デバイス1の液晶分子8は、無印加状態で基板2、2に対して垂直方向に配向している。液晶材料に添加されたゲル化材料は、該液晶分子8の合間を縫うように3次元網目構造7を形成する。このように形成される3次元網目構造7は、面内方向には特に方向性を持たないランダムな構造を取るが、基板2、2に対し垂直な方向には液晶配向を保持する構造を取る。従って、ゲル化剤が形成する3次元網目構造7によって液晶層5には液晶材料のドメイン6が形成されるが、それらのドメイン6を構成する液晶分子8は、すべて同じ垂直方向に向きが揃っている。そのため、無印加状態において各ドメイン間に屈折率の差は生じず、透過光はほとんど散乱せずに透過する。よって、本発明に係る無印加状態で液晶調光デバイスは透明な外観を呈す。
【0047】
また、本発明の液晶ゲル化混合物は、印加される電場の強度の変化に応じて配向が変化する電場応答性を示す。即ち、印加される電場の強度に応じて、垂直配向していた液晶分子8は次第に基板に対して倒れるように配向変化を起こす。
【0048】
このとき、液晶分子8の倒れる方向は、液晶層中に形成された3次元網目構造7に強く影響を受け、各ドメイン6を構成する液晶分子8はそれぞれ面内方向でランダムな方向に倒れることになる。これにより、液晶層5に電場を印加することにより、各ドメイン間に屈折率差が生じ、光透過率の高い透過状態から光透過率の低い散乱状態に光学的な変化が起こる。本発明に係る液晶調光デバイスは、この光学的変化を利用し、透過と散乱を切り替えて表示する調光デバイスとして用いられることができる。
【0049】
本発明に係る液晶材料のドメインは、上記に述べたような原理の通り、印加状態で屈折率の差を生じ、光を散乱して不透明化する。ここで、より強い光の散乱を得るためには、上記3次元網目構造7が形成する各ドメイン6の大きさが、光の波長オーダー若しくはそれより1桁上のオーダーとなることが好ましい。即ち、3次元網目構造7により直径0.3以上、10μm以下のドメイン6が形成されていることが好ましいといえる。
【0050】
また、無印加状態における液晶調光デバイス1の透明性確保の観点からすると、上記3次元網目構造自体は光散乱を生じないことが好ましい。しかし、上記3次元網目構造自体がある程度以上太く形成されると、それ自体が固有の屈折率を持つ構造体として無視できなくなる。従って、液晶調光デバイス1の透過状態において、各ドメイン6を良好に透過した光が3次元網目構造自体によって散乱されてしまい、透明度を低下させるおそれがある。そのため、上記ゲル化剤が形成する3次元網目構造7はできるだけ細く形成されることが望ましく、具体的に3次元網目構造7の線幅は、0.3μm以下に細く形成されていることが好ましい。
【0051】
本発明に係るゲル化剤は、その分子内に上記基板に垂直に配向した液晶分子8に沿って配向可能な分子構造を有することが好ましい。ここで、ある一定方向に配向した液晶材料に沿って配向可能な分子構造を「液晶骨格」という。本発明において液晶骨格を有するゲル化剤を用いることで、以下のような効果が期待できる。上記3次元網目構造7は、光の透過状態で光散乱を生じないように、理想的にはその線幅が0.3μm以下の構造体として形成されることが好ましい。しかし、液晶材料とゲル化剤の種類や組成、ゲル化条件などにより、3次元網目構造は線幅の太い構造体に形成される場合もあり得る。そうなると、3次元網目構造は可視光線に対して固有の屈折率を有する構造物と無視できなくなり、光散乱の要因となってしまう。
【0052】
そのような場合、上記液晶骨格10を有するゲル化剤を使用することことにより、3次元網目構造7の中で該液晶骨格部分が通常の液晶材料と同様の屈折率特性を備えた領域を形成する。図5に示すように、ゲル化剤の液晶骨格10を、液晶層5を構成する液晶分子8に沿って配向できるように設計することによって、その液晶骨格10が形成する領域の屈折率と液晶層の屈折率をXYZ軸方向の3方向で一致させることができる。これにより、3次元網目構造7の線幅が多少大きくなった場合であっても、3次元網目構造自体で生じる光散乱を低減させることができ、惹いては透過状態における液晶調光デバイス1の透明度を高く維持することができる。
【0053】
本発明に係る液晶層5にカイラル剤を添加することも可能である。図6は、本発明において基板間に注入された液晶ゲル化混合物にカイラル剤を添加した場合の効果を表す図である。無印加状態において液晶分子8は、カイラル剤添加の効果により若干のチルト角を有して捩れながら垂直方向に配向している。言い換えれば、垂直方向に配向している液晶分子8は、基板2に対して垂直方向の高さに応じて、その長軸がそれぞれ異なる面方位にチルト角を有する状態で配向している。
【0054】
この状態で基板間に電界が印加された場合、各液晶分子はそれぞれのチルト方位に倒れようとする。本発明において、液晶層は3次元網目構造のより多数のドメインに分けられているため、印加状態で各ドメイン毎に液晶分子8の倒れる方位が異なり、各ドメイン毎の屈折率の差をより大きくすることができる。従って、本発明に係る液晶調光デバイス1は、印加状態において効果的に散乱状態が得られ、高いコントラストを実現することができる。
【0055】
この場合、液晶セルのセル厚をd、液晶材料が360°捩れるピッチをpとした場合、d/p(d/pは、液晶セルのセル厚中において液晶が何回転捩ねじれているかを示す指標となる。)が1/2以上、2以下となるようにカイラル剤を調整することが好ましい。上記の通りカイラル剤を適当量添加することにより、電界が印加された状態で液晶分子があらゆる方向へ不規則に倒れるため、より強い散乱状態を得ることができる。ただし、必要以上にカイラル剤の添加量が多いと、透明であるべき無印加状態においてもドメイン化しようとする傾向が強くなり、これが透明性を損なうため適当でない。また、駆動電圧が高くなる等の不都合を生じるおそれがある。逆に添加量が少なくても上記効果が現れない。従って、カイラル剤の添加量は、上記程度が好ましい。
【0056】
また、本発明において、液晶調光デバイス1の散乱状態における散乱強度を向上させる目的で、上記基板表面に液晶分子8が複数の方向にチルト角を持つように配向分割処理を施すことも可能である。この処理を施すことによって、印加状態における液晶分子8の倒れる向きが基板の配向方向に規定され、基板表面同様に分割されることにより強い散乱状態を得ることができる。本発明において配向分割処理は、液晶のドメイン6と同程度の大きさ程度で施されるのが好ましい。これは分割領域が液晶のドメイン6よりも大きいと、一つの配向領域に複数のドメイン6の液晶分子8が規制されてしまう。そうなると、印加状態で複数のドメイン6の液晶分子8が同方向に倒れてしまい、散乱強度が却って弱くなるおそれがあるからである。
【0057】
該配向分割処理は、上下両基板2、2に施した方が大きな効果が得られるが、上下いずれか一方の基板だけに施すことも可能である。配向分割の手法としては、マスクを用いて複数回ラビングするマスクラビング法、光配向膜にフォトマスクを用いて偏光及び照射量の異なる紫外線を当てるUV配向分割法、複数種のポリマーからなる混合配向膜を塗り、その相分離を利用するポリマーアロイ配向膜法などが挙げられる。
【0058】
図7は配向分割のパターンの一例であり、それぞれ隣接するパターン同士で液晶分子のチルト角が異なる方位となるように(1)ストライプ状や(2)ブロック状にパターンと配向方向を決定して配向分割処理を行う。
【0059】
以上、説明した本発明に係る液晶調光デバイスは、従来の高分子分散型液晶調光デバイスと同様な用途、例えば腕時計の表示装置、ショーウインドウの視野遮断スクリーン、装飾照明、プロジェクション等の液晶表示装置に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0061】
(液晶ゲル化混合物の調製)
本発明に係る液晶材料として誘電率異方性が負のネマチック液晶化合物19.8gとゲル化剤としてN,N−エチレンビスオクタデシルアミド0.2gを調合し、混合物が等方性液体状態となる100℃のオーブンで約30分加熱することで均一な液体が得られた。この液体をオーブン内で除冷することにより、まず、上記液晶材料が液体相から液晶層に相転移し、続いて、ゲル化剤に架橋反応が起こってゲル化剤と液晶分子からなる均一な液晶ゲル化混合物を調製することができた。
【0062】
このように得られた液晶ゲル化混合物の相変化挙動を観察したところ、ゲル化剤が上記N,N−エチレンビスオクタデシルアミドの場合、ゲル化剤モル分率が0.3〜5.0モル%、室温78℃で、光学異方性を有する液晶ゲル化混合物が熱可逆的に生成することが認められた。この液晶ゲル化混合物は室温では安定に液晶ゲル状態を示し、流動性は認められなかった。
【0063】
(液晶調光デバイスの作成)
次に上記方法で調製された液晶ゲル化混合物からなる液晶層を有する液晶調光デバイスを作成した。
【0064】
垂直配向膜を塗布した透明電極を有する2枚のガラス基板に、粒径15μmのスペーサーを散布し、シール剤で貼り合わせた。上記液晶ゲル化混合物を加温して流動性のある等方性液体状態とし、毛細管現象により上記基板間に注入した。その後、注入口を封止して上記ガラス基板を室温まで放冷した。基板間の混合物は上記のように液晶ゲル化混合物に変化した。このように液晶ゲル化混合物を液晶層として有する液晶調光デバイスは、無印加状態において極めて透明度の高い透過状態を呈していた。
【0065】
(液晶調光デバイスの電場応答性の評価駆動電圧とコントラスト)
上記方法で得られた本発明に係る液晶調光デバイスと、比較例として従来一般に用いられている液晶材料E8を用いて作成した液晶調光デバイスについて、透過率−電圧曲線を測定した。図3に示す透過率−電圧曲線は、液晶調光デバイスに印加される電圧の変化に伴って、液晶調光デバイスを透過するバックライト光の割合を測定したものである。光源はXeランプによる白色光を用いた。
【0066】
得られた電圧−透過率曲線から以下のように駆動電圧、最大透過率及びコントラストを算出し、本発明に係る液晶調光デバイスと従来の液晶調光デバイスとの比較を行った。
【0067】
(1)駆動電圧:電圧無印加時の調光層の光透過率をT0とし、印加電圧の増大に伴って光透過率が変化しなくなったときの透過率をT100として、透過率−電圧曲線から、変化率が10%となる電圧V10、及び変化率が90%となる電圧V90を測定した。
(2)Tmax:電圧無印加時における透過率T0であり、液晶調光デバイスが実現できる透明性の最大値を示す。なお、比較例のTmaxは電圧30Vにおける透過率をT100とした。
(3)コントラスト:光透過率T100及びT0の比、T0/T100をコントラストとして評価した。なお、比較例のコントラストは、実施例とは誘電率異方性の極性が逆であることからT100/T0として求めた。
【0068】
本発明
(1)駆動電圧 V10: 1.5V、 V90: 9V
(2)Tmax 82.9%
(3)コントラスト T0/T100: 4.4
比較例
(1)駆動電圧 V10: 2.5V、 V90: 20.5V
(2)Tmax 75.4%
(3)コントラスト T100/T0: 87.7
【0069】
本発明では従来例と比べて透過測定系におけるコントラストは低いが、透過状態における透明性の高い液晶層が得られた。
【0070】
(液晶調光デバイスの透明性の視野角度依存性)
図4は本発明及び比較例において、その液晶層の透明性の視野角度依存性を示したグラフである。即ち、図4のグラフは、液晶調光デバイスを見る角度によって光の透過率がどのように変化するかを示している。上記本発明に係る液晶調光デバイス及び上記比較例に係る液晶調光デバイスを用いて測定を行った。
【0071】
その際、バックライト光の基板面に対する入射角度を連続的に傾けて測定した。受光器はバックライトと連動させて傾けて受光できるようにし、その透過率を測定することで、上記調光デバイスの透明性を評価した。図4のグラフの横軸は、バックライトと受光器を結んだ直線が、調光デバイスの基板面の垂直方向からの傾き角を示している。
【0072】
本発明に係る液晶調光デバイスでは、最も高い透明性が実現できる無印加状態で測定を行った。図4から分かるように、本発明に係る液晶調光デバイスは、視野角度がが50°傾いても約80%と言う高い透過率を保持しており、優れた透明性を示した。一方、比較例に係る液晶調光デバイスは電場が印加された状態で透過状態が実現されるので、該液晶層のV90である20Vを印加した状態で測定した。この比較例では、基板に対して垂直方向から光を受光したときは75.4%という比較的高い透過率を示した。しかし、視野角度を傾けるにしたがって透過率が低くなり、視野角度が50°に達すると透過率は40%にも満たなかった。
【0073】
比較例で透過率の視野角度依存性が大きくなるのは、図2を用いて以下のように説明できる。即ち、比較例に係る液晶層では、無印加状態において各ドメインを構成する液晶分子がドメイン間で不規則な方向を向いている。また、高分子ゲルネットワーク近傍の液晶分子は、上記ゲルネットワークの親有機基に強くアンカリングされているため、印加される電場に対して応答し難い。従って、印加される電場が弱い状態では、ドメインの中央付近の液晶分子は電場方向に応答するが、ゲルネットワーク近傍の液晶分子は応答できない状態になる。その結果、これらの液晶分子が調光層内で異なる屈折率構造体のように振る舞い、光を散乱させる因子となる。一方、本発明においては、図1に示すように、初期状態の液晶配向がほぼ揃った状態で透過状態が実現されるため良好な透明性が得られる。
【0074】
(液晶ゲルの応答時間の評価)
本実施例に係る液晶ゲル化混合物の電場応答性について、上記透過率の測定方法を利用して駆動時の応答時間を測定した。即ち、無印加時の液晶調光デバイスの光透過率(T0)を100%とし、所定の電圧を印加した状態において、光透過率が変化しなくなったときの透過率(T100)を0%とする。電圧印加開始時から光透過率が10%に変化するまでに要する時間をτr、光透過率が0%から90%に変化するまでに要する時間をτd(応答時間msec)として評価した。その結果、本実施例について以下の応答時間を得た。
【0075】
τr:2.7msec 、 τd:48.1msec
【0076】
一般にツイストネマチック液晶の応答時間は、τr+τd=50msecといわれていることから、本実施例に係る液晶調光デバイスは、ツイストネマチック液晶調光デバイスとほぼ同程度の応答時間であるといえる。
【0077】
(3次元網目構造の形態)
本実施例に係る液晶ゲル化混合物が形成する3次元網目構造の形態について観察した。上記液晶ゲル化混合物を含む液晶層をヘキサンに浸し、静かに液晶材料のみを洗い流した。残ったゲル化剤によって形成された3次元網目構造のみを電子顕微鏡で観察したところ、線幅が0.01〜0.2μm程度の3次元網目構造が観察された。また、3次元網目構造は、1〜5μm程度の空間を多数形成していた。この空間には液晶材料が充填されてドメインを形成していたものと推測される。
【0078】
(液晶調光デバイスの作成)
誘電率異方性が負のネマチック液晶化合物(メルク社製)9.8gと、下記の化学式で表されるゲル化剤0.2g、及びこれにピッチが10μmとなる量のコレステリルナノエートを調合し、混合物が等方性液体状態となる100℃のオーブンで30分ほど加熱することで均一な液体とした。この液体を上記垂直配向膜を塗布した透明電極を有するガラス基板間に10μmの厚さで注入した。この状態で室温まで放冷することにより、液晶ゲル化混合物からなる液晶層を有する液晶調光デバイスを作成した。液晶調光デバイスは、無印加状態で透明度の高い透過状態を呈していた。この液晶調光デバイスに所定の電場を印加することにより、液晶層は散乱状態に変化して不透明化した。
【0079】
ゲル化剤の化学式
nC6H13−φ−φ−O−C6H12−CO−NH−(CH2)4−NH−CO−C6H12−O−φ−φ−nC6H13
(液晶調光デバイスの反射型液晶表示装置への適用)
図8は、本実施例に係る液晶調光デバイスを使用した液晶表示装置の概略断面図である。本実施例の液晶表示装置は、本発明に係る液晶調光デバイス1と、「使用視覚範囲で黒表示を保証する」反射板11とを組合せて構成されている。即ち、本発明に係る液晶表示装置は、上記液晶調光デバイス1の背面に上記反射板11を積層配置して構成されている。
【0080】
該反射板11は、上記液晶調光デバイス1が透過状態にあるとき、基板の表示面側から入射した入射光を反射して、再び表示面側に反射する。このとき反射板11は、反射光を観察者の目に入らない角度で反射するように構成されている。従って、上記液晶調光デバイス1が透過状態にあるとき、入射光が観察者の目に入射されることはない。そのため、観察者は画面の表示を黒表示として認識する。
【0081】
一方、上記液晶調光デバイス1が散乱状態にあるとき、入射光は、液晶調光デバイスの液晶層5で散乱し、観察者の目に入射される。従って、この状態で観察者は画面を白表示として認識する。
【0082】
このような使用視角範囲で黒表示を保証する反射板は、代表的なものとしてマイクロ再帰性反射板がある。マイクロ再帰性反射板は、入射光を該入射光と平行に反射して射出する性質を有している。観察者の目の位置に光源はあり得ないため、外部から反射板に入射される光はすべて入射された方向に反射されて射出される。このような反射板を使用することにより、観察者は使用視角範囲で黒表示を保証されることになる。マイクロ再帰性反射板には、コーナーキューブアレイ、微小球アレイ、マイクロレンズアレイなどがある。
【0083】
本発明において、上記液晶調光デバイス1は、透過状態において透明性が極めて高いため、上記液晶表示装置に使用されると、極めて鮮明な黒表示を可能にする。また、上記液晶調光デバイス1は、低電圧で良好な散乱状態を実現することができるため、表示品位の高い白表示をも可能とする。よって、本実施例に係る液晶表示装置はコントラストの高い白黒表示を実現することができる。
【0084】
具体的に、本実施例に係る液晶表示装置のコントラスト比と駆動電圧を検証するために、上記実施例に係る液晶表示装置と従来の高分子分散型液晶材料を使用した液晶表示装置を作成して比較した。両液晶表示装置には、上記反射板11としてマイクロ再帰性反射板を用い、これを樹脂で平坦化したものを各液晶調光デバイスと積層一体化した。
【0085】
上記電極に印加される電圧を変化させて、各液晶表示装置の表示面側の光度を反射率として測定した。反射率は積分球光度計を用い、拡散光をバックライトとして基板の垂直方向の値を測定した。
【0086】
図9は、測定結果を示すグラフ図である。図9のグラフ図から分かるように、本実施例に係る液晶表示装置は無印加状態で最も反射率が小さく、印加電圧が高くなるに伴って反射率が上昇している。一方、比較例に係る液晶表示装置は無印加状態で最も反射率が大きく、印加電圧が高くなるに伴って反射率が低下している。各液晶表示装置について、実用的な印加電圧の範囲で最も明るい状態を明状態とし、最も暗い状態を暗状態とした。それぞれ明状態と暗状態における反射率を求め、暗状態の反射率に対する明状態の反射率の比をコントラスト比として求めた。
【0087】
本発明
明状態:27(印加電圧15V)
暗状態:1.5、(無印加状態)
コントラスト比:18
比較例
明状態:28(無印加状態)
暗状態:5(印加電圧30V)
コントラスト比:5.6
【0088】
上記結果から分かるように、本実施例に係る液晶表示装置は、明状態における反射率は比較例と殆んど変わらないが、暗状態において反射率の大きな改善が見られ、極めて鮮明な黒表示を実現することができることが分かる。その結果、本実施例に係る液晶表示装置において、コントラスト比が大きく改善した。これは、本実施例に係る液晶調光デバイスの透過状態における透明性が極めて高く、入射光の散乱がほとんどないことを反映したものである。
【0089】
また、本実施例に係る液晶調光デバイスは、印加電圧が15V程度で比較例に係る液晶表示装置の明状態を実現できた。一方、比較例に係る液晶表示装置は、無印加状態で実用的な明状態を得ることができるが、30V程度の電圧を印加した状態においても鮮明な暗状態が得られなかった。このように、本実施例に係る液晶表示装置は、低電圧の印加により高いコントラスト比を実現できた。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、散乱状態と透過状態を切り替えて表示する液晶調光デバイスにおいて、透過状態における透明性を向上させることができる。この液晶調光デバイスをを反射型液晶表示装置に適用することでコントラストの高い反射型表示を低電圧で実現することができる。
【0091】
また、本発明によれば、ゲル化剤として非光重合性ゲル化剤を使用しているため、煩雑で且つ、液晶表示の信頼性低下の原因となる紫外線露光による光重合プロセスが不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図2】比較例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図3】電極間に印加される電圧と透過率との関係を示したグラフ図である。
【図4】基板に対する入射及び受光角度と透過率との関係を示したグラフ図である。
【図5】本発明の1実施例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図6】カイラル剤の添加効果を示す概念図である。
【図7】配向膜の配向分割の例を示す概念図である。
【図8】本発明の1実施例に係る液晶表示装置の概略断面図である。
【図9】反射型液晶表示装置の印加電圧と反射率との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 液晶調光デバイス
2 透明基板
3 透明電極
4 垂直配向膜
5 液晶層
6 ドメイン
7 3次元網目構造
8 液晶分子
9 バックライト
10 液晶骨格
11 反射板
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル化された液晶材料からなる液晶層を調光層として備えた液晶調光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透過光若しくは反射光の散乱と透過の切り替えを行う液晶調光デバイスとしては、高分子分散型液晶素子が知られている。高分子分散型液晶表示素子は、光散乱効果を応用したものであるため、偏光子を必要としない。そのため、高分子分散型液晶表示素子は、視野角が広く明るいといった利点がある。また、液晶層が高分子材料と液晶材料の複合体であるため、大画面化が比較的容易である。これらにより、大面積ディスプレイや投写型ディスプレイの分野を中心に、高分子分散型液晶表示素子の研究開発が進められている。
【0003】
高分子分散型液晶素子は、典型的には光重合法により製造される。即ち、電極を有する2枚の基板間に光重合性モノマーと液晶との混合物を導入し、相溶状態で露光することにより相分離を誘起させて調光層を形成する方法で製造される(例えば、特許文献1,特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの方法は、上記光重合性モノマーを重合させる工程で、紫外線による露光工程が必須であった。そのため、紫外線を照射すると、液晶が紫外線によるダメージを受けて表示素子としての信頼性が低下するおそれがあった。また、ブラックマトリクス層のような遮光部がパターニングされたカラーフィルターを通して紫外線が露光された場合、遮光部の陰となる領域に存在するモノマーは、未重合のまま液晶層内に残留してしまい、表示素子の信頼性を低下されるおそれもあった。
【0005】
一方、紫外線による露光を必要としない散乱・透過切り替え素子も開示されている。例えば、ゲル化剤を液晶中に添加し、それが能動的に形成する液晶性ゲルを無配向処理のセルに封入した液晶ゲル表示デバイスが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−340587号公報
【特許文献2】
特開平7−17910号公報
【特許文献3】
特開平7−69983号公報
【特許文献4】
特開2000−239663号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、元来、高分子分散型液晶表示素子は駆動電圧が高い上、前記特許文献4に開示された液晶ゲル表示デバイスにおいては、ゲルネットワークに強くアンカリングされたネットワーク近傍の液晶分子の電場応答性が悪いという問題があった。そのため、特許文献4の液晶表示素子は、初期状態で生じている光散乱が透過状態でも残り易い傾向にあり、良好な透過状態を得るのに高電圧を要する。従って、通常の駆動電圧では十分な透明状態が得られず、特に良好な透明状態が必要となる反射型表示素子においては、コントラストが低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、煩雑で且つ、液晶表示の信頼性低下の原因となる紫外線露光による光重合プロセスが不要であるとともに、その透過状態における透明度が高く、しかも低電圧で高コントラストを実現する液晶・ゲル化剤混合物を使用した液晶調光デバイス、及びその液晶調光デバイスを用いた液晶表示装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、誘電率異方性が負である液晶材料をゲル化剤でゲル化し、電圧が印加されていない状態で基板に対し垂直方向に配向するように封入した。
【0010】
具体的に本発明は、それぞれ電極を備えた一対の基板と、上記両基板間に封入された液晶層を備え、液晶層は、非光重合性ゲル化剤が添加されることにより、ドメインに分れてゲル化した液晶材料を含み、上記液晶材料は、誘電率異方性が負であって、上記電極に電圧が印加されていない状態で、上記基板に対して垂直方向に配向していることを特徴とする液晶調光デバイスである。
【0011】
本発明は、それぞれ電極を備えた一対の基板間に封入された液晶層に電圧を印可することにより、透過状態を散乱状態に切り替える液晶調光デバイスである。
【0012】
本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負である。誘電率異方性が負である液晶材料は、電極間に電圧が印加されていない状態において、液晶分子の分子長軸方向が基板に対して垂直方向を向くように配向する。また、上記電極間に電圧が印加されると、上記液晶分子はその分子長軸方向が上記基板に水平な方向を向くように配向する性質を有する。
【0013】
本発明において、上記液晶材料は、ゲル化剤が添加されることにより流動性を失い、ドメインに分れてゲル化している。本発明に係るゲル化剤は、主として水素結合等非共有性結合により不規則な3次元網目構造を構築する。従って、本発明に係るゲル化剤は、紫外線を照射することなく、液晶材料をゲル化することができる。ここで、液晶材料のドメインとは、液晶分子の配向がある程度揃っている領域をいう。
【0014】
従って、本発明に係る液晶材料は、電極間に電圧が印加されていない状態において、上記基板に対して垂直方向に配向した状態でゲル化している。そのため、本発明に係る液晶調光デバイスは、電圧が印加されていない状態において、各ドメイン間の屈折率の差がなく透過光の散乱を生じることがない。従って、透明度の極めて高い透過状態を実現することができる。一方、電極間に電圧が印加されると、上記液晶材料は上記基板に対して平行な向きに配向しようとする。しかし、本発明において、液晶層はドメインに分れているため、ドメイン毎に液晶材料の水平配向の程度に差が生じる。これにより、ドメイン間に屈折率の差が生じ、光の散乱を大きくすることができる。
【0015】
上記液晶調光デバイスは、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の対向面に、垂直配向膜が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負であるため、液体状態で基板間に注入され液晶層に相転移すると、垂直配向膜が形成されていなくても液晶分子は基板に対して垂直方向に配向する傾向を示す。上記基板の対向面に垂直配向膜が形成されることにより、基板間に注入された液晶材料の液晶分子の配向方向を基板に対して完全に垂直方向に揃えることができる。その結果、液晶調光デバイスの透過状態における透明度を向上させることができる。
【0017】
上記液晶調光デバイスは、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の対向面に、配向分割処理が施された配向膜が形成されることが好ましい。
【0018】
本発明において、基板の対向面に配向分割処理が施された配向膜が形成されることにより、基板間に電圧が印加された際、上記垂直配向した液晶分子が倒れる方向に異方性が生じ、透過光の散乱強度が大きくなる。従って、本発明に係る液晶調光デバイスは、配向分割処理が施されていないものに比較して、高いコントラストを得ることができる。
【0019】
上記液晶調光デバイスにおいて、上記ゲル化剤のゲル化温度は、上記液晶材料のネマチック・アイソトロピック転移点(以下、「TNI」ともいう。)より低いことが好ましい。
【0020】
本発明において、加熱され液体状態にある液晶材料とゲル化剤の混合物を基板間に注入し冷却した場合、混合物の温度がTNIに達すると上記液晶材料は液晶相に相転移する。この際、液晶分子は、ゲル化剤の制約を受けることなく、基板に対して垂直に配向する。続いて、混合物の温度がゲル化温度に達すると、上記ゲル化剤は架橋して3次元網目構造を形成し、上記基板間の液晶材料をゲル化する。既に上記液晶材料は基板に対して垂直に配向しているため、上記ゲル化剤は、上記液晶材料の配向方向を保ちつつ、液晶材料をドメインに分けてゲル化することができる。
【0021】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記液晶層において、液晶材料のドメインは、その大きさが0.3μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0022】
液晶材料のドメインの大きさが0.3μm未満であれば、透過光に使用される光の波長がドメインの大きさよりも大きくなってしまい、デバイスの散乱状態で十分な光に散乱が得られない。一方、上記ドメインの大きさが10μmより大きいと、該ドメインが基板間の距離に近づくことから、部分的にモノドメインとなる領域が生じる。モノドメイン領域では、液晶分子の配向方向によって光の散乱が生じにくいおそれがある。従って、ドメインの大きさが上記範囲にある場合、本発明の液晶調光デバイスは、散乱状態で光を十分に散乱することができる。
【0023】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記液晶層において、上記ゲル化剤は、線幅0.3μm以下の3次元網目構造を形成することが好ましい。
【0024】
上記3次元網目構造の線幅が0.3μm以下であれば、その線幅は透過光に使用される光の波長以下となる。そのため、本発明に係る液晶調光デバイスが透過状態にある場合、透過光が上記ゲル化剤の形成する3次元網目構造体自体で屈折することがない。そのため、透過状態において高い透明度を確保することができる。
【0025】
本発明に係る液晶調光デバイスの液晶層は、カイラル剤を含むものであってもよい。電極間に電圧が印加されると垂直方向に配向した液晶分子は、基板に対して平行な方向に配向する。上記液晶層にカイラル剤が添加されていると、液晶分子が垂直方向から平行方向へ倒れる向きが不規則になる。従って、液晶調光デバイスが散乱状態にあるときの液晶層の散乱強度が大きくなり、コントラストの高い調光が可能となる。
【0026】
本発明に係る液晶調光デバイスの上記ゲル化剤は、分子内に、上記垂直方向に配向した液晶材料に沿って配向可能な分子構造を有することが好ましい。
【0027】
これにより、上記ゲル化剤が形成する3次元網目構造自体の屈折率特性と液晶材料が形成するドメインの屈折率特性が近似することになる。その結果、上記液晶調光デバイスの透過状態における透明度を向上させることができる。
【0028】
本発明に係る液晶表示装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶調光デバイスと、反射板とを組合せてなる反射型液晶表示装置である。上記反射板は、上記液晶調光デバイスが透過状態にあるとき、使用視角範囲で黒表示を保証するものである。
【0029】
本発明に係る液晶表示装置は、反射型液晶表示装置であり、表示面側から入射した光を反射板によって反射することにより表示を可能にするものである。上記反射板は、使用視角範囲で黒表示を保証するものである。即ち、上記液晶調光デバイスが透過状態にあるとき、反射板は入射光を観察者の目に入らないように反射させる。従って、この状態で観察者には、画面が黒表示として認識される。一方、上記液晶調光デバイスが散乱状態にあるとき、入射光は、液晶調光デバイスの液晶層にて散乱され観察者のみに入射する。従って、この状態で観察者には、画面が白表示として認識される。本発明において、上記液晶調光デバイスは、透過状態において透明性が極めて高いため、上記液晶表示装置に使用されると、コントラストの高い黒白表示を可能とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1に示す液晶調光デバイス1は、それぞれ電極を備えた一対の基板と、両基板間に封入された液晶層5を備える。本実施形態において、上記基板はガラス製の透明基板2であり、両透明基板2、2の対向面には、電極としてITO(Indium Tin Oxide)製の透明電極3、3が形成されている。更に、両透明電極3、3の対向面には、垂直配向膜4、4が形成されている。
【0032】
上記基板間には、液晶層5の層厚を一定に保持するためのスペーサー(図示せず。)を介在させてもよい。液晶層5の層厚は、本液晶調光デバイス1の使用目的に応じて適宜に選択されるが、液晶層5が透明になる透過状態と光を散乱して不透明になる散乱状態との十分なコントラストを得るために、1〜50μmの範囲が好ましく、3〜25μmの範囲が特に好ましい。
【0033】
上記液晶層5は、液晶材料にゲル化剤が添加された混合物を含む。上記ゲル化剤は架橋することにより3次元網目構造7を形成し、液晶層5を多数のドメイン6に分割している。各ドメイン6を構成する液晶材料の液晶分子8は、電極間に電圧が印加されていない状態(以下、「無印加状態」ともいう。)において、基板2、2に対し垂直方向に配向している。一方、電極間に電圧が印加された状態(以下、「印加状態」ともいう。)において、各ドメインを構成する液晶分子8は、一部ゲル化剤の形成する3次元網目構造にアンカリングされた分子を除き、基板2、2に対して平行な向きに配向している。
【0034】
本発明において用いられる液晶材料としては、従来より液晶デイスプレイに用いられている誘電率異方性が負の液晶分子を使用することができる。例えば、ネマチック相を示す1,4−フェニルシクロヘキサン系、1,4−transシクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種液晶分子の側方水素原子をフッ素原子などの極性基で置換した液晶化合物、またはこれらの複数の液晶分子の混合物が挙げられる。
【0035】
本発明において用いられるゲル化剤としては、一般的には、分子内に分子間水素結合を形成し得る結合基、例えば−CONH−基、または−NH−基と−CO−基との組合せを2組以上有するものが選択される。即ち、アミド基、ウレタン基、ウレア基などがこれに相当するが、−NH−基と−CO−基との間に数個の極性の小さい原子によるメチレン基、エチレン基などを介しても構わない。これら結合基は、他の分子内に存在する水素原子との間で順次水素結合を形成し、3次元網目構造を形成している。
【0036】
また、本発明に係るゲル化剤は、炭素数が4以上のアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリールアルキル基またはアリールオキシアルキル基などの親有機基を有することが好ましい。特に好ましくは、炭素数6〜20のアルキル基または不飽和2重結合を含むアルキレン基である。これらを1種単独、または2種以上を有していてもよい。
【0037】
即ち、ゲル化剤として適当な物質は、一般式が下の式で表されるような、ゲル化剤が分子内に分子間で水素結合が可能な基及びアルキル基などの親有機基のそれぞれを少なくとも2個有する化合物、またはこれら化合物の2種類以上の混合物である。
【0038】
(R−A−)n X nは2以上の整数
R:親有機基部位(長鎖アルキル基、アルキレン基など)
A:分子間水素結合部位(アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合など)
X:連結部位(テトラメチレン基、o−シクロヘキシル基など)
【0039】
具体的なゲル化剤としては、例として下記化学式で示されるような化合物を挙げることができる。
nC18H37−CO−NH−CH2CH2−NH−CO−nC18H37
なお、分子構造中に複数個存在する親有機基部位、及び分子間水素結合部位は同じ構造である必要はなく、分子構造が非対称であっても構わない。
【0040】
本発明において、液晶材料をゲル化させるのに必要な上記ゲル化剤の量は、液晶分子及びゲル化剤の種類にもよるが、液晶分子とゲル化剤との総和に対して好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%使用される。液晶材料とゲル化剤から液晶ゲル化混合物を得る方法として、これらの混合物を加熱して均一な等方性溶液とした後、冷却して光学的に異方性の液晶ゲルとする方法がある。この液晶ゲル化混合物は、再加熱することにより等方性溶液に戻り、再冷却すれば再度液晶ゲル化混合物が得られる。このように本発明のゲル状物質は、熱可逆性である。
【0041】
本発明において、上記液晶材料やゲル化剤は適宜組合せて使用することができるが、液晶材料がゲル化した状態で液晶分子が基板に対して垂直方向に配向していることが透明性を確保する上で必要となる。そのためには、ゲル化剤のゲル化温度が液晶材料のTNI(ネマチック・アイソトロピック転移点)の温度より低くなるように両者を選択して組合せる。
【0042】
このように組合せることにより、以下のようにして本発明に係る液晶層5を得ることができる。即ち、上記液晶材料とゲル化剤との混合物を加熱して等方液体状態とし、これを基板間に注入する。そこから降温した場合、まず、混合物の温度がTNIに達すると上記液晶材料は液晶層に相転移し、ゲル化剤の制約を受けることなく上記基板に対して垂直方向に配向する。更に降温して混合物の温度がゲル化温度に達すると、上記ゲル化剤は分子間水素結合により架橋して液晶材料をゲル化する。この際、液晶材料は既に基板に対し垂直方向に配向している。そのため、ゲル化剤は液晶材料の配向方向を保ちつつ、液晶材料をドメインに分けてゲル化することができる。
【0043】
このように本発明の液晶ゲル化混合物は、上記基板間で各基板2、2に対して液晶分子が垂直配向するように注入される。本発明に係る液晶材料は、誘電率異方性が負であるため、基板間に注入されると液晶分子が基板に対して垂直に配向する傾向がある。しかし、液晶分子の垂直配向を確実にするため、液晶調光デバイスに一般的に用いられている垂直配向膜を使用することが好ましい。例えば、垂直配向膜は、プレチルト角を発現するための脂肪族、脂環族、フッ素系の官能基を導入したポリアミック酸、ポリイミドなどからなる配向剤を基板表面に塗膜したり、シランカップリング剤を基板表面に被膜する等して形成される。
【0044】
上記基板間に液晶ゲル化混合物が注入された液晶調光デバイスは、無印加状態において、ほぼ透明な外観を示す。これは、図2に示す従来の高分子分散型液晶表示デバイスが、無印加状態で散乱状態を示すのと相反する。従来の高分子分散型液晶表示デバイスは、液晶材料の誘電率異方性が正であること、また基板に配向処理が施されていないことから、上記高分子ゲル化剤が形成するゲルネットワーク(3次元網目構造)に沿って液晶分子がランダムに配向するドメインを形成する。従って、無印加状態において、各ドメイン間には屈折率の差が生じている。これにより透過光が散乱されるためである。
【0045】
一方、本発明に係る液晶調光デバイス1が、無印加状態で透明度の高い透過状態を呈するのは、以下の理由による。
【0046】
即ち、本発明に係る液晶調光デバイス1の液晶分子8は、無印加状態で基板2、2に対して垂直方向に配向している。液晶材料に添加されたゲル化材料は、該液晶分子8の合間を縫うように3次元網目構造7を形成する。このように形成される3次元網目構造7は、面内方向には特に方向性を持たないランダムな構造を取るが、基板2、2に対し垂直な方向には液晶配向を保持する構造を取る。従って、ゲル化剤が形成する3次元網目構造7によって液晶層5には液晶材料のドメイン6が形成されるが、それらのドメイン6を構成する液晶分子8は、すべて同じ垂直方向に向きが揃っている。そのため、無印加状態において各ドメイン間に屈折率の差は生じず、透過光はほとんど散乱せずに透過する。よって、本発明に係る無印加状態で液晶調光デバイスは透明な外観を呈す。
【0047】
また、本発明の液晶ゲル化混合物は、印加される電場の強度の変化に応じて配向が変化する電場応答性を示す。即ち、印加される電場の強度に応じて、垂直配向していた液晶分子8は次第に基板に対して倒れるように配向変化を起こす。
【0048】
このとき、液晶分子8の倒れる方向は、液晶層中に形成された3次元網目構造7に強く影響を受け、各ドメイン6を構成する液晶分子8はそれぞれ面内方向でランダムな方向に倒れることになる。これにより、液晶層5に電場を印加することにより、各ドメイン間に屈折率差が生じ、光透過率の高い透過状態から光透過率の低い散乱状態に光学的な変化が起こる。本発明に係る液晶調光デバイスは、この光学的変化を利用し、透過と散乱を切り替えて表示する調光デバイスとして用いられることができる。
【0049】
本発明に係る液晶材料のドメインは、上記に述べたような原理の通り、印加状態で屈折率の差を生じ、光を散乱して不透明化する。ここで、より強い光の散乱を得るためには、上記3次元網目構造7が形成する各ドメイン6の大きさが、光の波長オーダー若しくはそれより1桁上のオーダーとなることが好ましい。即ち、3次元網目構造7により直径0.3以上、10μm以下のドメイン6が形成されていることが好ましいといえる。
【0050】
また、無印加状態における液晶調光デバイス1の透明性確保の観点からすると、上記3次元網目構造自体は光散乱を生じないことが好ましい。しかし、上記3次元網目構造自体がある程度以上太く形成されると、それ自体が固有の屈折率を持つ構造体として無視できなくなる。従って、液晶調光デバイス1の透過状態において、各ドメイン6を良好に透過した光が3次元網目構造自体によって散乱されてしまい、透明度を低下させるおそれがある。そのため、上記ゲル化剤が形成する3次元網目構造7はできるだけ細く形成されることが望ましく、具体的に3次元網目構造7の線幅は、0.3μm以下に細く形成されていることが好ましい。
【0051】
本発明に係るゲル化剤は、その分子内に上記基板に垂直に配向した液晶分子8に沿って配向可能な分子構造を有することが好ましい。ここで、ある一定方向に配向した液晶材料に沿って配向可能な分子構造を「液晶骨格」という。本発明において液晶骨格を有するゲル化剤を用いることで、以下のような効果が期待できる。上記3次元網目構造7は、光の透過状態で光散乱を生じないように、理想的にはその線幅が0.3μm以下の構造体として形成されることが好ましい。しかし、液晶材料とゲル化剤の種類や組成、ゲル化条件などにより、3次元網目構造は線幅の太い構造体に形成される場合もあり得る。そうなると、3次元網目構造は可視光線に対して固有の屈折率を有する構造物と無視できなくなり、光散乱の要因となってしまう。
【0052】
そのような場合、上記液晶骨格10を有するゲル化剤を使用することことにより、3次元網目構造7の中で該液晶骨格部分が通常の液晶材料と同様の屈折率特性を備えた領域を形成する。図5に示すように、ゲル化剤の液晶骨格10を、液晶層5を構成する液晶分子8に沿って配向できるように設計することによって、その液晶骨格10が形成する領域の屈折率と液晶層の屈折率をXYZ軸方向の3方向で一致させることができる。これにより、3次元網目構造7の線幅が多少大きくなった場合であっても、3次元網目構造自体で生じる光散乱を低減させることができ、惹いては透過状態における液晶調光デバイス1の透明度を高く維持することができる。
【0053】
本発明に係る液晶層5にカイラル剤を添加することも可能である。図6は、本発明において基板間に注入された液晶ゲル化混合物にカイラル剤を添加した場合の効果を表す図である。無印加状態において液晶分子8は、カイラル剤添加の効果により若干のチルト角を有して捩れながら垂直方向に配向している。言い換えれば、垂直方向に配向している液晶分子8は、基板2に対して垂直方向の高さに応じて、その長軸がそれぞれ異なる面方位にチルト角を有する状態で配向している。
【0054】
この状態で基板間に電界が印加された場合、各液晶分子はそれぞれのチルト方位に倒れようとする。本発明において、液晶層は3次元網目構造のより多数のドメインに分けられているため、印加状態で各ドメイン毎に液晶分子8の倒れる方位が異なり、各ドメイン毎の屈折率の差をより大きくすることができる。従って、本発明に係る液晶調光デバイス1は、印加状態において効果的に散乱状態が得られ、高いコントラストを実現することができる。
【0055】
この場合、液晶セルのセル厚をd、液晶材料が360°捩れるピッチをpとした場合、d/p(d/pは、液晶セルのセル厚中において液晶が何回転捩ねじれているかを示す指標となる。)が1/2以上、2以下となるようにカイラル剤を調整することが好ましい。上記の通りカイラル剤を適当量添加することにより、電界が印加された状態で液晶分子があらゆる方向へ不規則に倒れるため、より強い散乱状態を得ることができる。ただし、必要以上にカイラル剤の添加量が多いと、透明であるべき無印加状態においてもドメイン化しようとする傾向が強くなり、これが透明性を損なうため適当でない。また、駆動電圧が高くなる等の不都合を生じるおそれがある。逆に添加量が少なくても上記効果が現れない。従って、カイラル剤の添加量は、上記程度が好ましい。
【0056】
また、本発明において、液晶調光デバイス1の散乱状態における散乱強度を向上させる目的で、上記基板表面に液晶分子8が複数の方向にチルト角を持つように配向分割処理を施すことも可能である。この処理を施すことによって、印加状態における液晶分子8の倒れる向きが基板の配向方向に規定され、基板表面同様に分割されることにより強い散乱状態を得ることができる。本発明において配向分割処理は、液晶のドメイン6と同程度の大きさ程度で施されるのが好ましい。これは分割領域が液晶のドメイン6よりも大きいと、一つの配向領域に複数のドメイン6の液晶分子8が規制されてしまう。そうなると、印加状態で複数のドメイン6の液晶分子8が同方向に倒れてしまい、散乱強度が却って弱くなるおそれがあるからである。
【0057】
該配向分割処理は、上下両基板2、2に施した方が大きな効果が得られるが、上下いずれか一方の基板だけに施すことも可能である。配向分割の手法としては、マスクを用いて複数回ラビングするマスクラビング法、光配向膜にフォトマスクを用いて偏光及び照射量の異なる紫外線を当てるUV配向分割法、複数種のポリマーからなる混合配向膜を塗り、その相分離を利用するポリマーアロイ配向膜法などが挙げられる。
【0058】
図7は配向分割のパターンの一例であり、それぞれ隣接するパターン同士で液晶分子のチルト角が異なる方位となるように(1)ストライプ状や(2)ブロック状にパターンと配向方向を決定して配向分割処理を行う。
【0059】
以上、説明した本発明に係る液晶調光デバイスは、従来の高分子分散型液晶調光デバイスと同様な用途、例えば腕時計の表示装置、ショーウインドウの視野遮断スクリーン、装飾照明、プロジェクション等の液晶表示装置に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0061】
(液晶ゲル化混合物の調製)
本発明に係る液晶材料として誘電率異方性が負のネマチック液晶化合物19.8gとゲル化剤としてN,N−エチレンビスオクタデシルアミド0.2gを調合し、混合物が等方性液体状態となる100℃のオーブンで約30分加熱することで均一な液体が得られた。この液体をオーブン内で除冷することにより、まず、上記液晶材料が液体相から液晶層に相転移し、続いて、ゲル化剤に架橋反応が起こってゲル化剤と液晶分子からなる均一な液晶ゲル化混合物を調製することができた。
【0062】
このように得られた液晶ゲル化混合物の相変化挙動を観察したところ、ゲル化剤が上記N,N−エチレンビスオクタデシルアミドの場合、ゲル化剤モル分率が0.3〜5.0モル%、室温78℃で、光学異方性を有する液晶ゲル化混合物が熱可逆的に生成することが認められた。この液晶ゲル化混合物は室温では安定に液晶ゲル状態を示し、流動性は認められなかった。
【0063】
(液晶調光デバイスの作成)
次に上記方法で調製された液晶ゲル化混合物からなる液晶層を有する液晶調光デバイスを作成した。
【0064】
垂直配向膜を塗布した透明電極を有する2枚のガラス基板に、粒径15μmのスペーサーを散布し、シール剤で貼り合わせた。上記液晶ゲル化混合物を加温して流動性のある等方性液体状態とし、毛細管現象により上記基板間に注入した。その後、注入口を封止して上記ガラス基板を室温まで放冷した。基板間の混合物は上記のように液晶ゲル化混合物に変化した。このように液晶ゲル化混合物を液晶層として有する液晶調光デバイスは、無印加状態において極めて透明度の高い透過状態を呈していた。
【0065】
(液晶調光デバイスの電場応答性の評価駆動電圧とコントラスト)
上記方法で得られた本発明に係る液晶調光デバイスと、比較例として従来一般に用いられている液晶材料E8を用いて作成した液晶調光デバイスについて、透過率−電圧曲線を測定した。図3に示す透過率−電圧曲線は、液晶調光デバイスに印加される電圧の変化に伴って、液晶調光デバイスを透過するバックライト光の割合を測定したものである。光源はXeランプによる白色光を用いた。
【0066】
得られた電圧−透過率曲線から以下のように駆動電圧、最大透過率及びコントラストを算出し、本発明に係る液晶調光デバイスと従来の液晶調光デバイスとの比較を行った。
【0067】
(1)駆動電圧:電圧無印加時の調光層の光透過率をT0とし、印加電圧の増大に伴って光透過率が変化しなくなったときの透過率をT100として、透過率−電圧曲線から、変化率が10%となる電圧V10、及び変化率が90%となる電圧V90を測定した。
(2)Tmax:電圧無印加時における透過率T0であり、液晶調光デバイスが実現できる透明性の最大値を示す。なお、比較例のTmaxは電圧30Vにおける透過率をT100とした。
(3)コントラスト:光透過率T100及びT0の比、T0/T100をコントラストとして評価した。なお、比較例のコントラストは、実施例とは誘電率異方性の極性が逆であることからT100/T0として求めた。
【0068】
本発明
(1)駆動電圧 V10: 1.5V、 V90: 9V
(2)Tmax 82.9%
(3)コントラスト T0/T100: 4.4
比較例
(1)駆動電圧 V10: 2.5V、 V90: 20.5V
(2)Tmax 75.4%
(3)コントラスト T100/T0: 87.7
【0069】
本発明では従来例と比べて透過測定系におけるコントラストは低いが、透過状態における透明性の高い液晶層が得られた。
【0070】
(液晶調光デバイスの透明性の視野角度依存性)
図4は本発明及び比較例において、その液晶層の透明性の視野角度依存性を示したグラフである。即ち、図4のグラフは、液晶調光デバイスを見る角度によって光の透過率がどのように変化するかを示している。上記本発明に係る液晶調光デバイス及び上記比較例に係る液晶調光デバイスを用いて測定を行った。
【0071】
その際、バックライト光の基板面に対する入射角度を連続的に傾けて測定した。受光器はバックライトと連動させて傾けて受光できるようにし、その透過率を測定することで、上記調光デバイスの透明性を評価した。図4のグラフの横軸は、バックライトと受光器を結んだ直線が、調光デバイスの基板面の垂直方向からの傾き角を示している。
【0072】
本発明に係る液晶調光デバイスでは、最も高い透明性が実現できる無印加状態で測定を行った。図4から分かるように、本発明に係る液晶調光デバイスは、視野角度がが50°傾いても約80%と言う高い透過率を保持しており、優れた透明性を示した。一方、比較例に係る液晶調光デバイスは電場が印加された状態で透過状態が実現されるので、該液晶層のV90である20Vを印加した状態で測定した。この比較例では、基板に対して垂直方向から光を受光したときは75.4%という比較的高い透過率を示した。しかし、視野角度を傾けるにしたがって透過率が低くなり、視野角度が50°に達すると透過率は40%にも満たなかった。
【0073】
比較例で透過率の視野角度依存性が大きくなるのは、図2を用いて以下のように説明できる。即ち、比較例に係る液晶層では、無印加状態において各ドメインを構成する液晶分子がドメイン間で不規則な方向を向いている。また、高分子ゲルネットワーク近傍の液晶分子は、上記ゲルネットワークの親有機基に強くアンカリングされているため、印加される電場に対して応答し難い。従って、印加される電場が弱い状態では、ドメインの中央付近の液晶分子は電場方向に応答するが、ゲルネットワーク近傍の液晶分子は応答できない状態になる。その結果、これらの液晶分子が調光層内で異なる屈折率構造体のように振る舞い、光を散乱させる因子となる。一方、本発明においては、図1に示すように、初期状態の液晶配向がほぼ揃った状態で透過状態が実現されるため良好な透明性が得られる。
【0074】
(液晶ゲルの応答時間の評価)
本実施例に係る液晶ゲル化混合物の電場応答性について、上記透過率の測定方法を利用して駆動時の応答時間を測定した。即ち、無印加時の液晶調光デバイスの光透過率(T0)を100%とし、所定の電圧を印加した状態において、光透過率が変化しなくなったときの透過率(T100)を0%とする。電圧印加開始時から光透過率が10%に変化するまでに要する時間をτr、光透過率が0%から90%に変化するまでに要する時間をτd(応答時間msec)として評価した。その結果、本実施例について以下の応答時間を得た。
【0075】
τr:2.7msec 、 τd:48.1msec
【0076】
一般にツイストネマチック液晶の応答時間は、τr+τd=50msecといわれていることから、本実施例に係る液晶調光デバイスは、ツイストネマチック液晶調光デバイスとほぼ同程度の応答時間であるといえる。
【0077】
(3次元網目構造の形態)
本実施例に係る液晶ゲル化混合物が形成する3次元網目構造の形態について観察した。上記液晶ゲル化混合物を含む液晶層をヘキサンに浸し、静かに液晶材料のみを洗い流した。残ったゲル化剤によって形成された3次元網目構造のみを電子顕微鏡で観察したところ、線幅が0.01〜0.2μm程度の3次元網目構造が観察された。また、3次元網目構造は、1〜5μm程度の空間を多数形成していた。この空間には液晶材料が充填されてドメインを形成していたものと推測される。
【0078】
(液晶調光デバイスの作成)
誘電率異方性が負のネマチック液晶化合物(メルク社製)9.8gと、下記の化学式で表されるゲル化剤0.2g、及びこれにピッチが10μmとなる量のコレステリルナノエートを調合し、混合物が等方性液体状態となる100℃のオーブンで30分ほど加熱することで均一な液体とした。この液体を上記垂直配向膜を塗布した透明電極を有するガラス基板間に10μmの厚さで注入した。この状態で室温まで放冷することにより、液晶ゲル化混合物からなる液晶層を有する液晶調光デバイスを作成した。液晶調光デバイスは、無印加状態で透明度の高い透過状態を呈していた。この液晶調光デバイスに所定の電場を印加することにより、液晶層は散乱状態に変化して不透明化した。
【0079】
ゲル化剤の化学式
nC6H13−φ−φ−O−C6H12−CO−NH−(CH2)4−NH−CO−C6H12−O−φ−φ−nC6H13
(液晶調光デバイスの反射型液晶表示装置への適用)
図8は、本実施例に係る液晶調光デバイスを使用した液晶表示装置の概略断面図である。本実施例の液晶表示装置は、本発明に係る液晶調光デバイス1と、「使用視覚範囲で黒表示を保証する」反射板11とを組合せて構成されている。即ち、本発明に係る液晶表示装置は、上記液晶調光デバイス1の背面に上記反射板11を積層配置して構成されている。
【0080】
該反射板11は、上記液晶調光デバイス1が透過状態にあるとき、基板の表示面側から入射した入射光を反射して、再び表示面側に反射する。このとき反射板11は、反射光を観察者の目に入らない角度で反射するように構成されている。従って、上記液晶調光デバイス1が透過状態にあるとき、入射光が観察者の目に入射されることはない。そのため、観察者は画面の表示を黒表示として認識する。
【0081】
一方、上記液晶調光デバイス1が散乱状態にあるとき、入射光は、液晶調光デバイスの液晶層5で散乱し、観察者の目に入射される。従って、この状態で観察者は画面を白表示として認識する。
【0082】
このような使用視角範囲で黒表示を保証する反射板は、代表的なものとしてマイクロ再帰性反射板がある。マイクロ再帰性反射板は、入射光を該入射光と平行に反射して射出する性質を有している。観察者の目の位置に光源はあり得ないため、外部から反射板に入射される光はすべて入射された方向に反射されて射出される。このような反射板を使用することにより、観察者は使用視角範囲で黒表示を保証されることになる。マイクロ再帰性反射板には、コーナーキューブアレイ、微小球アレイ、マイクロレンズアレイなどがある。
【0083】
本発明において、上記液晶調光デバイス1は、透過状態において透明性が極めて高いため、上記液晶表示装置に使用されると、極めて鮮明な黒表示を可能にする。また、上記液晶調光デバイス1は、低電圧で良好な散乱状態を実現することができるため、表示品位の高い白表示をも可能とする。よって、本実施例に係る液晶表示装置はコントラストの高い白黒表示を実現することができる。
【0084】
具体的に、本実施例に係る液晶表示装置のコントラスト比と駆動電圧を検証するために、上記実施例に係る液晶表示装置と従来の高分子分散型液晶材料を使用した液晶表示装置を作成して比較した。両液晶表示装置には、上記反射板11としてマイクロ再帰性反射板を用い、これを樹脂で平坦化したものを各液晶調光デバイスと積層一体化した。
【0085】
上記電極に印加される電圧を変化させて、各液晶表示装置の表示面側の光度を反射率として測定した。反射率は積分球光度計を用い、拡散光をバックライトとして基板の垂直方向の値を測定した。
【0086】
図9は、測定結果を示すグラフ図である。図9のグラフ図から分かるように、本実施例に係る液晶表示装置は無印加状態で最も反射率が小さく、印加電圧が高くなるに伴って反射率が上昇している。一方、比較例に係る液晶表示装置は無印加状態で最も反射率が大きく、印加電圧が高くなるに伴って反射率が低下している。各液晶表示装置について、実用的な印加電圧の範囲で最も明るい状態を明状態とし、最も暗い状態を暗状態とした。それぞれ明状態と暗状態における反射率を求め、暗状態の反射率に対する明状態の反射率の比をコントラスト比として求めた。
【0087】
本発明
明状態:27(印加電圧15V)
暗状態:1.5、(無印加状態)
コントラスト比:18
比較例
明状態:28(無印加状態)
暗状態:5(印加電圧30V)
コントラスト比:5.6
【0088】
上記結果から分かるように、本実施例に係る液晶表示装置は、明状態における反射率は比較例と殆んど変わらないが、暗状態において反射率の大きな改善が見られ、極めて鮮明な黒表示を実現することができることが分かる。その結果、本実施例に係る液晶表示装置において、コントラスト比が大きく改善した。これは、本実施例に係る液晶調光デバイスの透過状態における透明性が極めて高く、入射光の散乱がほとんどないことを反映したものである。
【0089】
また、本実施例に係る液晶調光デバイスは、印加電圧が15V程度で比較例に係る液晶表示装置の明状態を実現できた。一方、比較例に係る液晶表示装置は、無印加状態で実用的な明状態を得ることができるが、30V程度の電圧を印加した状態においても鮮明な暗状態が得られなかった。このように、本実施例に係る液晶表示装置は、低電圧の印加により高いコントラスト比を実現できた。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、散乱状態と透過状態を切り替えて表示する液晶調光デバイスにおいて、透過状態における透明性を向上させることができる。この液晶調光デバイスをを反射型液晶表示装置に適用することでコントラストの高い反射型表示を低電圧で実現することができる。
【0091】
また、本発明によれば、ゲル化剤として非光重合性ゲル化剤を使用しているため、煩雑で且つ、液晶表示の信頼性低下の原因となる紫外線露光による光重合プロセスが不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図2】比較例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図3】電極間に印加される電圧と透過率との関係を示したグラフ図である。
【図4】基板に対する入射及び受光角度と透過率との関係を示したグラフ図である。
【図5】本発明の1実施例に係る液晶調光デバイスの概略断面図である。
【図6】カイラル剤の添加効果を示す概念図である。
【図7】配向膜の配向分割の例を示す概念図である。
【図8】本発明の1実施例に係る液晶表示装置の概略断面図である。
【図9】反射型液晶表示装置の印加電圧と反射率との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 液晶調光デバイス
2 透明基板
3 透明電極
4 垂直配向膜
5 液晶層
6 ドメイン
7 3次元網目構造
8 液晶分子
9 バックライト
10 液晶骨格
11 反射板
Claims (9)
- それぞれ電極を備えた一対の基板と、上記両基板間に封入された液晶層を備え、
液晶層は、非光重合性ゲル化剤が添加されることにより、ドメインに分れてゲル化した液晶材料を含み、
上記液晶材料は、誘電率異方性が負であって、上記電極に電圧が印加されていない状態で、上記基板に対して垂直方向に配向していることを特徴とする液晶調光デバイス。 - 上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板の対向面には、垂直配向膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶調光デバイス。
- 上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板の対向面には、配向分割処理が施された配向膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶調光デバイス。
- 上記ゲル化剤のゲル化温度は、上記液晶材料のネマチック・アイソトロピック転移点より低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶調光デバイス。
- 上記液晶層において、液晶材料のドメインは、その大きさが0.3μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶調光デバイス。
- 上記液晶層において、上記ゲル化剤は、線幅0.3μm以下の3次元網目構造を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶調光デバイス。
- 上記液晶層は、カイラル剤を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶調光デバイス。
- 上記ゲル化剤は、分子内に、上記垂直方向に配向した液晶材料に沿って配向可能な分子構造を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶調光デバイス。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶調光デバイスと、反射板とを組合せてなる反射型液晶表示装置であって、
上記反射板は、上記液晶調光デバイスが透過状態にあるとき、使用視角範囲で黒表示を保証するものであることを特徴とする液晶表示装置。
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-
2003
- 2003-02-07 JP JP2003030513A patent/JP2004240259A/ja active Pending
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