JP2004239713A - 放射線画像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】気相成長法により形成した輝尽性蛍光体層への透湿を低減させ、放射線画像変換パネルの封止を完全に行うことにより、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した放射線画像変換パネルが、該輝尽性蛍光体の表面を覆って一体として蒸着形成された有機膜を備え、更に、少なくとも該蛍光体層側が金属酸化物を蒸着したフィルムで被覆されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した放射線画像変換パネルが、該輝尽性蛍光体の表面を覆って一体として蒸着形成された有機膜を備え、更に、少なくとも該蛍光体層側が金属酸化物を蒸着したフィルムで被覆されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層上の表面を覆って一体として有機膜を蒸着形成し、さらにパネル全体を蒸着フィルムにより封止した放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、輝尽性蛍光体を利用した放射線像変換パネルにより放射線像を画像化する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
これは、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に開示された様に支持体上に輝尽性蛍光体層を形成した放射線像変換パネルを使用するものである。この放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線をあてて被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて潜像(蓄積像)を形成し、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光(レーザ光が用いられる)で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを放射させて光に変換し、この光の強弱を読みとって画像を得る。この画像はCRT等各種のディスプレイ上に再生してもよいし、又ハードコピーとして再生してもよい。
【0004】
この放射線像変換方法に用いられる放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層として、例えば特開昭61−142497号等において行われている様な、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0005】
又、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0006】
又、特開平2−58000号においては、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが提案されている。
【0007】
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする試みにおいては、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0008】
しかしながら、これらの気相成長(堆積)法により形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体の多くは、一般に吸湿性が高く、このため、一般的な環境条件下に放置すると、徐々に空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに、性能の著しい劣化を招くことが知られている。
【0009】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化物ハロゲン化物系蛍光体粒子を結着剤中に分散し形成した輝尽性蛍光体層を、金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムをもちいてバリアを形成し封止することにより輝尽性蛍光体層の吸湿を防止する方法については知られている。
【0010】
しかしながら、前記気相堆積法によって形成された輝尽性蛍光体結晶は、特に材料の吸湿性が大きいため、また、結着剤による保護がないために、向上効果は認められるものの、前記のように金属酸化物などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムを用いた封止方法では不十分であり、より吸湿防止を完全にする方法が必要であった。
【0011】
吸湿性の蛍光体の水蒸気からの保護については、例えば、例えば、特許文献2に、シンチレータ材料であるCsI等の蛍光体を水蒸気から保護するためにポリパラキシリレン膜とシリカ等の防湿膜とを順次CVD法により成膜した積層膜を用いる例が記載されているが、輝尽性蛍光体結晶の吸湿による特性低下は、シンチレータ用の蛍光体結晶材料に比べてもかなり大きいため、このような構成によっても輝尽性蛍光体結晶に対しては十分な防湿性を得ることができない。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−344598号公報
【0013】
【特許文献2】
特開2001−235548号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、気相成長法により形成した輝尽性蛍光体層への透湿を低減させ、放射線画像変換パネルの封止を完全に行うことにより、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0016】
1.支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した放射線画像変換パネルが、該輝尽性蛍光体の表面を覆って一体として蒸着形成された有機膜を備え、更に、少なくとも該蛍光体層側が金属酸化物を蒸着したフィルムで被覆されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0017】
2.有機膜がポリパラキシリレン膜であることを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
3.輝尽性蛍光体が前記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
4.前記一般式(1)におけるM1がK、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることを特徴とする前記3に記載の放射線画像変換パネル。
【0020】
5.前記一般式(1)におけるXがBrおよびIから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であることを特徴とする前記3または4に記載の放射線画像変換パネル。
【0021】
6.前記一般式(1)におけるM2がBe、Mg、Ca、Sr、およびBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0022】
7.前記一般式(1)におけるM3がY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることを特徴とする前記3〜6のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0023】
8.前記一般式(1)におけるbが0≦b≦10−2であることを特徴とする前記3〜7のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0024】
9.前記一般式(1)におけるAがEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする前記3〜8のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0025】
10.輝尽性蛍光体が柱状結晶を有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0026】
11.柱状結晶が主成分として下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することを特徴とする前記10に記載の放射線画像変換パネル。
【0027】
一般式(2)
CsX:A
式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。
【0028】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体上に輝尽性蛍光体を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した輝尽性蛍光体層表面に、これを覆うように支持体と一体として撥水性の高い有機膜を蒸着形成したのち、さらに、該有機膜を有する輝尽性蛍光体層および支持体を一体として覆うように、金属酸化物を蒸着したフィルムを用いて封止することにより防湿性の高い放射線画像変換パネルを得るというものである。
【0029】
輝尽性蛍光体の吸湿による、放射線画像変換パネルの性能の劣化を防止するために、輝尽性蛍光体層および支持体を防湿性保護フィルムで覆って封止し、水分の浸入を防ぐことは、知られている。例えば、前記特許文献1(特開平11−344598号公報)に記載された放射線画像変換パネルにおいては、図1に示されるように、輝尽性蛍光体層11を有する支持体12を一体として金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムからなる防湿性保護フィルム13および14で覆って水分を封止している。
【0030】
この封止方法により、もちろん効果はみられるものの、このような封止方法では、潮解性のつよい、例えば、アルカリハライド系輝尽性蛍光体、特にCsBr,I系の蛍光体において顕著であるが、吸水による蛍光体の輝尽発光特性の低下を十分に抑えられず、十分な耐用年数が得られないないことが判明した。これは、上記輝尽性蛍光体の潮解性が特に大きいことのほか、吸水による蛍光体の輝尽発光特性の低下も大きいためであると考えられる。
【0031】
シリカ、アルミナ等の金属酸化物を蒸着したフィルムの枚数を増やしたり、また防湿性を高めるために金属酸化物膜の膜厚を増加させるなどの手段は鮮鋭性の低下を引き起こす。従って、鮮鋭性等、画質の低下なしに、防湿性を向上させる方法が必要とされている。また、気相堆積法により形成した輝尽性蛍光体柱状結晶の表面は、実際は平滑でないこと、また柱状結晶間には間隙等もあり、上記防湿性保護フィルムと結晶表面とに介在する微少な間隙が密着性を阻害することも、徐々に放射線画像変換パネルの性能劣化が進む原因の一つのと考えられた。
【0032】
本発明においては、従って、金属酸化物を蒸着したフィルム(防湿性保護フィルム)による輝尽性蛍光体層が形成された支持体(輝尽性蛍光体プレート)の封止を行う際に、0.5〜60μm、好ましくは1.0〜40μm膜厚の有機膜を輝尽性蛍光体層柱状結晶表面および支持体プレート全面を一体として覆うように、CVD法によって形成し、該有機膜を形成した後、前記金属酸化物を蒸着したフィルム(金属酸化物膜を有する)による封止を行うものである。
【0033】
該有機膜としては、防湿性能の高い、ポリパラキシリレン膜が好ましく、ポリパラキシリレン膜は、CVD法(気相成長法)により、蒸着によって形成することができる。
【0034】
従って、本発明においては、輝尽性蛍光体層を気相堆積法により、例えばガラス等の支持体上に形成し、該輝尽性蛍光体層が形成された支持体(輝尽性蛍光体プレート)をCVD装置中に導入し、CVD法(気相成長法)を用いて、蒸着によって輝尽性蛍光体層表面および支持体プレート裏面、一体として、ポリパレキシリレン膜で、輝尽性蛍光体プレートを覆った後、前記金属酸化物を蒸着したフィルム(防湿性保護フィルム)を輝尽性蛍光体プレートの上面および下面にかさね、これを一体に封止するものである。
【0035】
有機膜としては、前述の通り、ポリパラキシリレン膜が好ましいが、ポリパラキシリレン、ポリモノクロロキシリレン、ポリジクロロキシリレン等のキシリレン系樹脂有機膜が好ましい。10μm程度のキシリレン膜であれば、水蒸気の透過率が非常に低いと共に、分光透過率が高く輝尽発光光の吸収も少ない。
【0036】
気相堆積法により形成した輝尽性蛍光体層は、柱状の形態を有しており、蛍光体層の表面は柱状結晶間の隙間等もあり、また表面が完全に平滑ではないこともあり、該防湿保護フィルムのみによる封止では、防湿性保護フィルムとの密着性にも問題あったが、このような有機膜のCVD法による形成によって、より均一な密着が行われる。
【0037】
前記金属酸化物を蒸着したフィルム(膜)としては、1Å〜100Åの厚みで少なくとも1層以上の金属酸化物膜を1〜30μmの樹脂フィルム上に蒸着形成したフィルムであり、例えば、シリカやアルミナ等の無機酸化物層を蒸着により形成し防湿性を高めたポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムである。これらは安価で加工性や透明性に優れ、防湿性及び酸素透過性が温度や湿度の影響を受けづらいため、環境によらず安定した画像品質を要求される医療用輝尽性蛍光体プレート用の防湿性保護フィルムとして適している。これらの蒸着フィルムは近年、透明で中身の確認ができることや、熱安定性が高くレトルト殺菌ができる。電子レンジによる中身の加熱が可能等の利点を生かして主に食品分野で不透明なアルミニウムラミネートフィルムの代替えとして普及してきた。
【0038】
金属酸化物を蒸着したフィルムとしては、例えばアルミナ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)としてVMPET等があり、これは東洋メタライジング社等から入手できる。
【0039】
本発明に使用する前記金属酸化物を蒸着したフィルムは、必要とされる防湿性にあわせ、異なった複数の蒸着層を有するフィルムを用いたり、複数枚積層することで更に防湿性を向上させることができる。
【0040】
また本発明において、前記蒸着フィルムは、保護層として或いは他の機能をもたせるため、又、防湿性をさらに高めるため、材質の異なった別の樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン等他の樹脂フィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに2種類以上積層して、防湿性保護フィルムとして用いることも好ましい。この場合の積層方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネートまたは共押し出しコーティングラミネートなどの方法があげられる。
【0041】
前記蒸着フィルムおよびその他の樹脂フィルムを積層する方法については、ドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用するが、接着剤層厚は2.5μmより大きくする必要がある。但し接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺などが発生することがあるためより好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0042】
樹脂フィルムを積層化するためには、ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法及び共押出しラミネーション法も使用でき、上記ドライラミネート方式との併用も可能である。
【0043】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し基材に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0044】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより基材上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0045】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用されるが、基材との接着性を増すために基材にあらかじめ接着促進剤を塗設しておくことがある。
【0046】
この接着促進剤としては、有機チタン系、ポリエチレンイミン系、イソシアネート系、ポリエステル系等があるが、一般にこれらの接着促進剤層は基材フィルムの表面に微細な凹凸をつけ溶融ポリマーの拡散性を向上する目的のものであり本発明で言う2.5μm以下の硬化性接着剤層には含まれない。
【0047】
共押出しラミネーション法とは異種又は同種の熱可塑性樹脂を2個以上の押出し機から、それぞれの樹脂を同時に押し出して、特別に設計されたダイスの内部又は外部で積層され、製膜と同時に多層フィルムを形成することをいう。
【0048】
一般に共押出しラミネーションに使用される樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、Ny(ナイロン)、ION(アイオノマー)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、POL(ポリオレフィン)等が挙げられる。
【0049】
このように、本発明の放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体プレートを水分から封止し保護するために、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムを防湿性保護フィルムとして用いるが、積層フィルムの場合、金属酸化物層を有するフィルムと他の樹脂フィルム間或いは複数の金属酸化物を蒸着したフィルム間を接着する接着剤層は、厚さ2.5μm以下であり、硬化性の、熱や紫外線による架橋反応を伴う、具体的には主剤と硬化剤を混合して使用する2液反応型や分子構造中に反応基を有する1液型のビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系等の接着剤層を用いることが好ましい。これらの接着剤は一般にはドライラミネーション等で頻繁に使用されるものである。
【0050】
但し、ホットメルト系接着剤は、経時硬化タイプを除けばここで言う硬化性の接着剤層に含まれない。
【0051】
これら防湿性保護フィルムの厚さは、実用上は1μm〜300μmまでである。良好な耐湿性と耐衝撃性を得るためには5μm以上が好ましく、特に10μm以上の防湿性保護フィルムにより封止した場合、耐久性、耐用性に優れた変換パネルが得られて一層好ましい。
【0052】
しかしながら一方で防湿性フィルムとして用いる場合にも膜厚をあまり大きくしないことが鮮鋭性の上からは重要である。鮮鋭性が低下しない範囲で用いるには、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む防湿性保護フィルム全体で300μm、好ましくは150μm以下である。
【0053】
防湿性保護フィルムは輝尽励起光及び輝尽発光を効率よく透過するために、広い波長範囲で高い透過率を示すことが望ましく、透過率は60%以上、好ましくは80%以上である。
【0054】
また、表面にMgF2などの反射防止層を設けると、輝尽励起光及び輝尽性発光を効率よく透過すると共に鮮鋭性の低下を小さくする効果もあり好ましい。
【0055】
又、鮮鋭性の向上のため、防湿性保護フィルムに、例えばリン酸鉛等の着色剤を含有させ着色し、輝尽励起光を吸収する機能をもたせてもよい。
【0056】
その為に、輝尽励起光を吸収する色材(顔料又は色素)で着色したフィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに積層したり、どちらか一方の面に色素乃至顔料を含有する層を塗布により設ける方法もある。
【0057】
着色したフィルムの製造方法としては、色材を練り込んだプラスチックフィルムやプラスチックフィルムの表面に色材(顔料又は染料)を含有する層を塗布等によって形成する方法があり、着色したプラスチックフィルムを接着剤等を用いて均一に防湿性保護フィルムに貼り合わせる方法で着色することが出来る。
【0058】
〈輝尽性蛍光体〉
輝尽性蛍光体層を形成する輝尽性蛍光体としては、例えば特開昭61−236890号に記載されている二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体等があり、例えば、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、特には輝尽性蛍光体がEu付加BaFI化合物等が挙げられるが、本発明の放射線画像変換パネルに好ましく用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば、特開昭48−80487号に記載されているBaSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80488号記載のMgSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80489号に記載されているSrSO4:Axで表される蛍光体、特開昭51−29889号に記載されているNa2SO4、CaSO4及びBaSO4等にMn、Dy及びTbの中少なくとも1種を添加した蛍光体、特開昭52−30487号に記載されているBeO、LiF、MgSO4及びCaF2等の蛍光体、特開昭53−39277号に記載されているLi2B4O7:Cu,Ag等の蛍光体、特開昭54−47883号に記載されているLi2O・(Be2O2)x:Cu,Ag等の蛍光体、米国特許第3,859,527号に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、La2O2S:Eu,Sm及び(Zn,Cd)S:Mnxで表される蛍光体があげられる。又、特開昭55−12142号に記載されているZnS:Cu,Pb蛍光体、一般式がBaO・xAl2O3:Euであげられるアルミン酸バリウム蛍光体、及び、一般式がM(II)O・xSiO2:Aで表されるアルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体があげられる。
【0059】
又、特開昭55−12143号に記載されている一般式が(Ba1−x−yMgxCay)Fx:Eu2+で表されるアルカリ土類フッ化ハロゲン化物蛍光体、特開昭55−12144号に記載されている一般式がLnOX:xAで表される蛍光体、特開昭55−12145号に記載されている一般式が(Ba1−xM(II)x)Fx:yAで表される蛍光体、特開昭55−84389号に記載されている一般式がBaFX:xCe,yAで表される蛍光体、特開昭55−160078号に記載されている一般式がM(II)FX・xA:yLnで表される希土類元素賦活二価金属フルオロハライド蛍光体、一般式ZnS:A、CdS:A、(Zn,Cd)S:A,Xで表される蛍光体、特開昭59−38278号に記載されている下記いずれかの一般式
xM3(PO4)2・NX2:yA
xM3(PO4)2:yA
で表される蛍光体、特開昭59−155487号に記載されている下記いずれかの一般式
nReX3・mAX′2:xEu
nReX3・mAX′2:xEu,ySm
で表される蛍光体等、又、特開昭61−228400号に記載されている一般式M(I)X:xBiで表されるビスマス賦活アルカリハライド蛍光体等が好ましいのものとしてあげられる。
【0060】
しかしながら、特開昭61−72087号、特開平2−58000号等に記載されたような、下記一般式(1)で表されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体が特に好ましい。
【0061】
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、又、a,b及びeは、それぞれ0≦a<0.5,0≦b<0.5,0<e≦0.2の範囲の数値を表す。
【0062】
これら一般式(1)において、M1はK、RbおよびCsからなる群から選ばれることが好ましく、XはBrおよびIからなる群から選ばれることが好ましい。
【0063】
また、M2はBe、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれることが好ましく、M3はY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれることが好ましい。更に、bとしては0≦b≦0.01であることが好ましく、AはEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれることが好ましい。
【0064】
これらのアルカリハライド系輝尽性蛍光体は気相堆積法により基板上に成膜することで、基板の法線方向に対し一定の傾きをもった(勿論、傾きがなく、基板面に対して垂直でもよいが)細長い柱状結晶を形成する。この様な柱状結晶の形成により、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑えることができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性がよいことがこれらの蛍光体を用いたときの特徴である。アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0065】
本発明において、特に好ましいのはこれらの中でも下記一般式(2)で表される蛍光体である。
【0066】
一般式(2)
CsX:A
式中、XはBr又はIを表し、AはEu,In,Ga又はCeを表す。
【0067】
中でもCsBr系蛍光体が特に輝度が高く高画質であり、また本発明の製造方法による基板或いは基板との付着性(接着性)の向上効果も高く好ましい。
【0068】
本発明において好ましい、これらの輝尽性蛍光体を用いて得られる柱状結晶、即ち各々の結晶がある間隙をおいて柱状に成長している結晶は、前記、特開平2−58000号に記載された方法により得ることができる。
【0069】
即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法によって独立した細長い柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を得ることができる。
【0070】
例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させることにより、基板面に対してほぼ垂直柱状の結晶を得ることが出来る。
【0071】
これらの場合において、基板と坩堝との最短部の間隔は輝尽性蛍光体の平均飛程に合わせて概ね10cm〜60cmに設置するのが適当である。
【0072】
蒸発源となる輝尽性蛍光体は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から輝尽性蛍光体を蒸発させる方法は電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法にて蒸発させることもできる。
【0073】
また、蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0074】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後、あとから賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体をCsBrとした場合、CsBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるInをドープしてもよい。即ち、結晶が独立しているため、膜が厚くとも充分にドープ可能であるし、結晶成長が起こりにくいので、MTFは低下しないからである。
【0075】
ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことが出来る。
【0076】
〈蛍光体層厚み、結晶の大きさ等〉
これらの方法により形成した柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層の層厚は目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、50μm〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、50μm〜800μmから選ばれるのがより好ましい。
【0077】
これらの柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層において変調伝達関数(MTF)をよくするためには、柱状結晶の大きさ(柱状結晶を基板と平行な面から観察したときの各柱状結晶の断面積の円換算した直径の平均値であり、少なくとも100個以上の柱状結晶を視野中に含む顕微鏡写真から計算する)は0.5〜50μm程度がよく、更に好ましくは、0.5〜20μmである。即ち、柱状結晶が0.5μmより細い場合は、柱状結晶により輝尽励起光が散乱される為にMTFが低下するし、柱状結晶が50μm以上の場合も輝尽励起光の指向性が低下し、MTFは低下する。
【0078】
該輝尽性蛍光体を気相成長(堆積)させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法がある。
【0079】
蒸着法は基板(支持体)を蒸着装置内に設置したのち、装置内を排気すると同時に窒素等の不活性なガスを導入口から導入して1.333Pa〜1.33×10−3Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着を行うことも可能である。また蒸着法においては、輝尽性蛍光体原料を複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。更に蒸着法においては、蒸着時に必要に応じて基板(支持体)を冷却或いは加熱してもよい。また、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0080】
スパッタ法は前記蒸着法と同様に基板をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して真空とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.33Pa〜1.33×10−3Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより基板表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに堆積させる。このスパッタ工程では蒸着法と同様に複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、それぞれを用いて同時或いは順次、前記ターゲットをスパッタリングして輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時或いは順次スパッタリングして、基板上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成する事も可能であるし、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて基板を冷却或いは加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0081】
CVD法は目的とする輝尽性蛍光体或いは輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、基板上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を基板の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い柱状結晶に気相成長させることが可能である。
【0082】
これらの柱状結晶は前記の通り特開平2−58000号に記載された方法、即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法で得ることができる。
【0083】
図2は支持体12上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す図である。11は形成される輝尽性蛍光体柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を模式的に表している。輝尽性蛍光体の蒸気流Vの基板面の法線方向(P)に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の基板面の法線方向(P)に対する角度はθ1で表される。入射角度θ2に依存して一定の角度θ1で柱状結晶が形成される。形成された柱状結晶の角度は、輝尽性蛍光体材料によってそれぞれ異なり、例えば、アルカリハライド系蛍光体のうち、本発明において特に好ましいCsBr系蛍光体の場合には、例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させる(即ちθ2が0〜5度)ことにより、基板面に対してほぼ垂直柱状(θ1がほぼ0度)の結晶を得ることが出来る。
【0084】
この様にして基板上に形成した輝尽性蛍光体層11は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0085】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となる。又高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
【0086】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属など、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0087】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも一種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも一種である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させうる。
【0088】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0089】
また、色材は、有機若しくは無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料があげられる。
【0090】
〈支持体〉
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体(基板)としては水分の透過性の低いものが好ましく、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0091】
また、本発明においては、基板と輝尽性蛍光体の接着性を向上させるために、必要に応じて基板の表面に予め接着層を設けてもよい。
【0092】
これら基板の厚みは用いる基板の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80μm〜1000μmである。
【0093】
また、アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0094】
これらの気相堆積法によって形成した蛍光体柱状結晶は水分に弱いことから、前記金属酸化物蒸着層を有するフィルムを含む防水性保護フィルムを用い封止する前に、本発明においては、該輝尽性蛍光体の表面を覆って前記輝尽性蛍光体プレート全体を一体として覆う有機膜を蒸着形成する。
【0095】
以下、輝尽性蛍光体層が支持体上に気相成長により形成された輝尽性蛍光体プレートへのCVD法による有機膜の製造について、以下図面を参照して説明する。図3は、本発明に係るポリパラキシリレン膜の蒸着に用いる蒸着装置の一例を示す構成図である。
【0096】
この蒸着装置は、ポリパラキシリレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室1、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室2、ラジカル化された状態のジパラキシリレンを輝尽性蛍光体プレートに蒸着させる蒸着室3、防臭、冷却を行う冷却室4及び真空ポンプを有する排気系5を備えて構成されている。ここで、蒸着室3は、図4に示すように熱分解室2においてラジカル化されたポリパラキシリレンを導入する導入口3a及び余分なポリパラキシリレンを排出する排出口3bを有すると共に、ポリパラキシリレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)3cを有する。
【0097】
この蒸着装置においては、まず、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12(輝尽性蛍光体蛍光体プレート)を蒸着室3のターンテーブル3c上に試料支持針20により支持する。即ち、図4及び図5に示すように支持体12の底面を、略正三角形を形成するように配置された試料支持針20により支持し、ターンテーブル3c上に配置する。この試料支持針20が試料支持体を構成する。ここで試料支持針20は、一端に鋭く尖った試料支持部20aを有すると共に他端にターンテーブル3cの上面に接する円板状の設置部20bを有している。なお、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、図6に示すように、ガラス製等の支持体12(厚さ0.5mm)の一方の表面に、前記柱状結晶を蒸着法によって例えば400μmの厚さで成長させ形成したものである。
【0098】
次に、この輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12を配置したターンテーブル3cを蒸着室3内に導入し、気化室1において175℃に加熱して気化させ、熱分解室2において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口3aから蒸着室3に導入して、輝尽性蛍光体層11及び支持体12の全面にポリパラキシリレン膜10を、例えば10μmの厚さで蒸着する(図5参照)。即ち、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、ターンテーブル3c上において試料支持針20の試料支持部20aの先端部のみで支持されているため、輝尽性蛍光体層11の表面及び支持体12の表面のみならず支持体12の裏面等にもポリパラキシリレン膜10を蒸着させることができる。
【0099】
なお、この場合に、蒸着室3内は真空度13Pa程度に維持されている。又、ターンテーブル3cは、第1のポリパラキシリレン膜10が均一に蒸着されるように、例えば4rpmの速度で回転させている。また、余分なポリパラキシリレンは、排出口3bから排出され、防臭、冷却を行う冷却室4及び真空ポンプを有する排気系5に導かれる。
【0100】
このようにして、輝尽性蛍光体層11及び支持体12の全面にポリパラキシリレン膜10を蒸着する。この工程により本発明に係る輝尽性蛍光体層を有する支持体(基板)への有機膜形成工程が終了する。
【0101】
このようにして輝尽性蛍光体層を有する支持体(基板)に一体としてポリパラキシリレン膜10を形成したところを図7に示す。
【0102】
以上説明したポリパラキシリレン膜の蒸着方法によれば、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、ターンテーブル3c上において試料支持針20の試料支持部20aの先端部のみで支持されているため、支持体12の底面と試料支持部20aの先端部との接触面積が小さくなることから、支持体12の裏面等にもポリパラキシリレン膜を均一に蒸着させることができる。また、ポリパラキシリレン膜10を蒸着させた後に、支持体12をターンテーブル3c上から容易に取り上げることができる。
【0103】
また、支持針による微少なピンホールを防止するために、ポリパラキシリレン膜10の蒸着を二度以上に分けて行い、ポリパラキシリレン膜を蒸着する際にそれぞれ、試料支持針20により支持体12を支持する位置をずらすようにして支持体12を支持することが好ましい。このように二度に分けて蒸着する際に試料支持針20により支持体12を支持した位置をずらすことで、ポリパラキシリレン膜のピンホールをなくし、剥がれを防止することができ、また、輝尽性蛍光体層の耐湿性をさらに向上させることができる。
【0104】
本発明において、ポリパラキシリレン膜等からなる有機膜は前述のように、0.5〜60μm、好ましくは1.0〜40μm膜厚で形成するのが好ましい。
【0105】
なお、上述の説明においては、輝尽性蛍光体層11が形成された支持体12を3本の試料支持針20により支持しているが、4本以上の試料支持針により支持するようにしても良い。
【0106】
また、上述の説明においては、試料支持針20が一端に鋭く尖った試料支持部20aを有すると共に他端に円板状の設置部20bを有しているが、試料支持針20の形状は、支持体12の底面との接触面積が小さく、かつ、ターンテーブル3c上において支持体12を安定に支持できるものであれば、その形状は適宜変更可能である。
【0107】
〈スペーサ〉
本発明においては、輝尽性蛍光体層を支持体上に形成した蛍光体プレートに、輝尽性蛍光体表面及び輝尽性蛍光体表面のみならず支持体の裏面まで一体として、ポリパラキシリレン膜のような撥水性の有機膜を形成した後、該有機膜を有する輝尽性蛍光体プレートに、さらに、前記蒸着形成された金属酸化物層を有するフィルム或いはこれを含む複数の積層された樹脂フィルムからなる防湿性保護フィルムにより封止する。
【0108】
前記輝尽性蛍光体層を有するプレートを前記防湿性保護フィルムにより封止するには既知のいかなる方法も使用できるが、例えば、蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間に挟み周縁部をインパルスシーラーで加熱融着する方法や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0109】
前記図1は、このようにして防湿性保護フィルムを用いて輝尽性蛍光体プレートを一体として封止した1例である。
【0110】
上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0111】
本発明の金属酸化物層が蒸着形成された防湿性保護フィルムにより蛍光体シートを封止するにあたっては、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることで防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される。
【0112】
これら上記熱融着性樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等があげられるがこれに限られたものではない。
【0113】
また、熱融着性を有する樹脂層中にシリカ、チタン、ゼオライト等の無機微粒子を0.01質量%〜1.0質量%含有させておくことにより、熱融着による蛍光体シートの封止作業によって生じる、大きな周期の画像ムラを防止でき好ましい。0.01質量%以下では効果は少なく、1.0質量%以上では積層保護フィルムの透明性やヘイズ値の劣化を伴う。
【0114】
防湿性保護フィルムと前記輝尽性蛍光体およびその表面に設けられた有機膜との密着部分の接着性を向上させる目的で、防湿性保護フィルムとの接着面にさらに下引き層を設けたり、粗面化処理を施すこともできる。
【0115】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて、蛍光体プレートの支持体側の防湿保護フィルムは光学的には不透明であってもかまわないため、防湿性の向上のために、支持体側の防湿保護フィルムについてはアルミラミネートフィルムとすることが好ましい。
【0116】
ラミネートに使用するアルミ箔フィルムとしてはピンホール等による防湿性劣化の点から9μm以上あることが望ましい。また支持体側の防湿保護フィルムも蛍光体面側の防湿保護フィルムと同様に、膜厚200μm以下、であることが望ましい。即ち、図1において、支持体面側の防湿性保護フィルム14について1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることが好ましい。これにより確実に水分の侵入を低減できる。
【0117】
本発明の放射線画像変換パネルの防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層の熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面は接着しても実質的に接着していなくてもかまわないが、前記有機層の形成により密着性は向上する。
【0118】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて防湿性保護フィルムの膜厚が200μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのと後述のインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては200μm以下が望ましい。
【0119】
〈低屈折率層〉
又、本発明においては、上記構成中において低屈折率層を設けてもよい。低屈折率層は防湿性保護フィルムを構成する樹脂材料よりも屈折率の低い素材からなり、この層が存在することにより、保護層や防湿性保護フィルムを厚くしても鮮鋭性の低下を小さくすることができる。例えば以下に示す物質を用いる事ができ、蒸着等気相成長法で形成された薄膜の状態で用いるのが好ましい。
【0120】
或いは、以下の様な液体層を用いることもできる。
【0121】
又、本発明の低屈折率層として、空気、窒素、アルゴンなどの気体層や真空層など屈折率が実質的に1である層を用いると、鮮鋭性の低下を防止する効果が高く特に好ましい。
【0122】
本発明の低屈折率層の厚さは0.05μmから3mmまでが実用的である。
本発明の低屈折率層は、輝尽層と密着状態にあってもよいし、離れていてもよい。低屈折率層と輝尽層を密着させるためには、接着剤を用いるのが1つの方法であるが、その場合、接着剤の屈折率は輝尽層の屈折率または低屈折率層の屈折率に近いことが好ましい。
【0123】
〈撮影方法〉
図8に、本発明の放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を概略的に示す。
【0124】
即ち、図8において、21は放射線発生装置、22は被写体、23は本発明に係わる放射線画像変換パネル、24は(レーザ等の)輝尽励起光源、25は該変換パネルにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置、26は25で検出された信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は輝尽励起光と輝尽蛍光とを分離し、輝尽蛍光のみを透過させるフィルタである。尚、25以降は23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、上記に限定されるものではない。
【0125】
図8に示されるように、放射線発生装置21からの放射線(R)は被写体22を通して放射線画像変換パネル23に入射する(RI)。この入射した放射線はパネル23の輝尽層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透過像の蓄積像が形成される。
【0126】
次にこの蓄積像を輝尽励起光源24からの輝尽励起光で励起して輝尽発光として放出せしめる。
【0127】
放射される輝尽発光の強弱は蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を例えば光電子倍増管等の光電変換装置25で光電変換し、画像再成装置26によって画像として再生し画像表示装置27によって表示することにより、被写体の放射線透過像を観察することができる。
【0128】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0129】
実施例
《輝尽性蛍光体プレートの作製》
1mm厚、面積410mm×410mmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体(基板)の表面に図9に示す気相堆積装置を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0130】
尚、蒸着にあたっては、前記支持体を前記気相堆積装置内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)をプレス成形し水冷したルツボ(図示していいない)にいれ蒸着源とした。
【0131】
その後、気相堆積装置内を排気口にポンプを接続して排気し、更にガス導入口から窒素を導入して(流量1000sccm(sccm:standard cc/min(1×10−6m3/min)))、装置内の真空度を6.65×10−3Paに維持した後、蒸着源を650℃に加熱し、ガラス支持体(基板)の一方の面に、CsBr:0.0001Euからなるアルカリハライド蛍光体を支持体表面の法線方向から(すなわち、スリットと蒸着源を支持体の法線方向にあわせ(θ2=約0度))、支持体と蒸発源の距離(d)を60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行なった。輝尽性蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、蛍光体プレートを作製した。
【0132】
次いで、蛍光体プレートを5cm×5cmの正方形に断裁し、前記図3、4で示される蒸着装置を用い、表1に示すようにポリパラキシリレン膜の厚みを変化させ輝尽性蛍光体層および支持体裏面に一体として蒸着により形成した。
【0133】
即ち、断裁したサンプルを前記ターンテーブル3c上に配置して、蒸着室3内に導入し、気化室において175℃に加熱して気化させ、熱分解室2において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口3aから蒸着室3に導入して、輝尽性蛍光体層11および支持体12の全面に蒸着する。
【0134】
尚、蒸着は2回に分けて実施し、試料支持針20により支持体12を支える位置をずらして、キシリレン膜のピンホール、ハガレを防止する様にした。キシリレン膜の厚みは、それぞれトータルで5,10,20,50μmとした試料をそれぞれ用意した。
【0135】
次いで、ポリパラキシリレン膜を蒸着形成した輝尽性蛍光体プレートを、輝尽性蛍光体層側には、PET12///VMPET70///PE15///LDPE30の構成からなるアルミナ蒸着フィルムVMPETを含む積層フィルム(各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表し、“///”はドライラミネーション接着層を意味し、“///”は接着層の厚みが3.0μmであることを示す。尚、使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤である。)を、蛍光体プレートの支持体面側の保護フィルムはキャステングポリプロピレン(CPP)30μm///アルミフィルム9μm///ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルム(“///”は接着層をあらわし、この場合の接着層の厚みは3.0μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した)を用い、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着することで、それぞれ封止した(封止フィルム1重)。
【0136】
上記において、
PET ;ポリエチレンテレフタレート
VMPET;アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート(東洋メタライジング社製)
PE ;ポリエチレン
LDPE ;低密度ポリエチレン
CPP ;キャステングポリプロピレン
を表す。
【0137】
尚、融着部から蛍光体プレート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0138】
こうして実施例1〜4の放射線画像変換パネルサンプルを作製した。
また、前記蛍光体層を形成した支持体をポリパラキシリレン膜による被覆を行わなかった以外は同様にして、前記蒸着フィルムを含む積層膜により封止した放射線画像変換パネルを作製し比較例1とした。
【0139】
また、ポリパラキシリレン膜による被覆を行わなかった蛍光体プレートについては、前記のVMPETを積層したPET12///VMPET70///VMPET70///PE15///LDPE30の構成からなる積層フィルムを蛍光体側に用いて、前記同様に封止し放射線画像変換パネルのもう一つの比較例2を作製した(封止フィルム2重)。
【0140】
このようにして得られた放射線画像変換パネルについて以下の方法により評価した。
【0141】
(放射線画像変換パネルの評価)
鮮鋭性については、放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後パネルHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。下記の表1には空間周波数2サイクルにおけるMTF値2lp/mm(%)が示されている。この場合MTF値が高いほど鮮鋭性がよい。
【0142】
(耐湿性の評価)
上記蛍光体シートの封止後の各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を蛍光体プレート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し初期感度とした。次いで、上記各放射線画像変換パネルを、40℃、相対湿度90%の高湿環境下に保存した後、取り出して再度、感度を測定し、初期感度に対し80%に感度が低下するまでの時間を測定した。
【0143】
【表1】
【0144】
ポリパラキシリレン膜を形成した放射線画像変換パネルはポリパラキシリレン膜を設けなかった放射線画像変換パネルに比べ、耐湿性に優れることがわかる。また、ポリパラキシリレン膜は厚みがある方が耐湿性が向上するが、厚みが大きくなると鮮鋭性がやや低下することもわかった。ちなみに、比較例2は、ポリパラキシリレン膜を設けずに金属酸化物の蒸着層を有するフィルムを2重に用いて封止したものであるが、確かに耐湿性は向上するものの、鮮鋭性の低下が大きいことがわかる。
【0145】
【発明の効果】
気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層を有機膜と蒸着フィルムにより封止した耐用年数の長い放射線画像変換パネルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属酸化物を蒸着したフィルムで覆って水分を封止した放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。
【図2】支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。
【図3】本発明に係るポリパラキシリレン膜の蒸着に用いる蒸着装置の一例を示す構成図である。
【図4】図3の蒸着装置の蒸着室の概略図である。
【図5】図3の蒸着装置のターンテーブル上での支持体の支持状態を示す図である。
【図6】柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を支持体上に気相堆積法により形成したところを示す図である。
【図7】柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を有する支持体を一体としてポリパラキシリレン膜によって覆ったところを示す図である。
【図8】本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
【図9】支持体上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
1 気化室
2 熱分解室
3 蒸着室
4 冷却室
5 排気系
10 ポリパラキシリレン膜
11 輝尽性蛍光体層
12 支持体
13,14 防湿性保護フィルム
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
V 蒸気流
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層上の表面を覆って一体として有機膜を蒸着形成し、さらにパネル全体を蒸着フィルムにより封止した放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、輝尽性蛍光体を利用した放射線像変換パネルにより放射線像を画像化する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
これは、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に開示された様に支持体上に輝尽性蛍光体層を形成した放射線像変換パネルを使用するものである。この放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線をあてて被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて潜像(蓄積像)を形成し、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光(レーザ光が用いられる)で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを放射させて光に変換し、この光の強弱を読みとって画像を得る。この画像はCRT等各種のディスプレイ上に再生してもよいし、又ハードコピーとして再生してもよい。
【0004】
この放射線像変換方法に用いられる放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層として、例えば特開昭61−142497号等において行われている様な、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0005】
又、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0006】
又、特開平2−58000号においては、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが提案されている。
【0007】
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする試みにおいては、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0008】
しかしながら、これらの気相成長(堆積)法により形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体の多くは、一般に吸湿性が高く、このため、一般的な環境条件下に放置すると、徐々に空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに、性能の著しい劣化を招くことが知られている。
【0009】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化物ハロゲン化物系蛍光体粒子を結着剤中に分散し形成した輝尽性蛍光体層を、金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムをもちいてバリアを形成し封止することにより輝尽性蛍光体層の吸湿を防止する方法については知られている。
【0010】
しかしながら、前記気相堆積法によって形成された輝尽性蛍光体結晶は、特に材料の吸湿性が大きいため、また、結着剤による保護がないために、向上効果は認められるものの、前記のように金属酸化物などの薄膜を蒸着した防湿性保護フィルムを用いた封止方法では不十分であり、より吸湿防止を完全にする方法が必要であった。
【0011】
吸湿性の蛍光体の水蒸気からの保護については、例えば、例えば、特許文献2に、シンチレータ材料であるCsI等の蛍光体を水蒸気から保護するためにポリパラキシリレン膜とシリカ等の防湿膜とを順次CVD法により成膜した積層膜を用いる例が記載されているが、輝尽性蛍光体結晶の吸湿による特性低下は、シンチレータ用の蛍光体結晶材料に比べてもかなり大きいため、このような構成によっても輝尽性蛍光体結晶に対しては十分な防湿性を得ることができない。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−344598号公報
【0013】
【特許文献2】
特開2001−235548号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、気相成長法により形成した輝尽性蛍光体層への透湿を低減させ、放射線画像変換パネルの封止を完全に行うことにより、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0016】
1.支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した放射線画像変換パネルが、該輝尽性蛍光体の表面を覆って一体として蒸着形成された有機膜を備え、更に、少なくとも該蛍光体層側が金属酸化物を蒸着したフィルムで被覆されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0017】
2.有機膜がポリパラキシリレン膜であることを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
3.輝尽性蛍光体が前記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
4.前記一般式(1)におけるM1がK、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることを特徴とする前記3に記載の放射線画像変換パネル。
【0020】
5.前記一般式(1)におけるXがBrおよびIから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であることを特徴とする前記3または4に記載の放射線画像変換パネル。
【0021】
6.前記一般式(1)におけるM2がBe、Mg、Ca、Sr、およびBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0022】
7.前記一般式(1)におけるM3がY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることを特徴とする前記3〜6のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0023】
8.前記一般式(1)におけるbが0≦b≦10−2であることを特徴とする前記3〜7のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0024】
9.前記一般式(1)におけるAがEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする前記3〜8のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0025】
10.輝尽性蛍光体が柱状結晶を有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0026】
11.柱状結晶が主成分として下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することを特徴とする前記10に記載の放射線画像変換パネル。
【0027】
一般式(2)
CsX:A
式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。
【0028】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体上に輝尽性蛍光体を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した輝尽性蛍光体層表面に、これを覆うように支持体と一体として撥水性の高い有機膜を蒸着形成したのち、さらに、該有機膜を有する輝尽性蛍光体層および支持体を一体として覆うように、金属酸化物を蒸着したフィルムを用いて封止することにより防湿性の高い放射線画像変換パネルを得るというものである。
【0029】
輝尽性蛍光体の吸湿による、放射線画像変換パネルの性能の劣化を防止するために、輝尽性蛍光体層および支持体を防湿性保護フィルムで覆って封止し、水分の浸入を防ぐことは、知られている。例えば、前記特許文献1(特開平11−344598号公報)に記載された放射線画像変換パネルにおいては、図1に示されるように、輝尽性蛍光体層11を有する支持体12を一体として金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムからなる防湿性保護フィルム13および14で覆って水分を封止している。
【0030】
この封止方法により、もちろん効果はみられるものの、このような封止方法では、潮解性のつよい、例えば、アルカリハライド系輝尽性蛍光体、特にCsBr,I系の蛍光体において顕著であるが、吸水による蛍光体の輝尽発光特性の低下を十分に抑えられず、十分な耐用年数が得られないないことが判明した。これは、上記輝尽性蛍光体の潮解性が特に大きいことのほか、吸水による蛍光体の輝尽発光特性の低下も大きいためであると考えられる。
【0031】
シリカ、アルミナ等の金属酸化物を蒸着したフィルムの枚数を増やしたり、また防湿性を高めるために金属酸化物膜の膜厚を増加させるなどの手段は鮮鋭性の低下を引き起こす。従って、鮮鋭性等、画質の低下なしに、防湿性を向上させる方法が必要とされている。また、気相堆積法により形成した輝尽性蛍光体柱状結晶の表面は、実際は平滑でないこと、また柱状結晶間には間隙等もあり、上記防湿性保護フィルムと結晶表面とに介在する微少な間隙が密着性を阻害することも、徐々に放射線画像変換パネルの性能劣化が進む原因の一つのと考えられた。
【0032】
本発明においては、従って、金属酸化物を蒸着したフィルム(防湿性保護フィルム)による輝尽性蛍光体層が形成された支持体(輝尽性蛍光体プレート)の封止を行う際に、0.5〜60μm、好ましくは1.0〜40μm膜厚の有機膜を輝尽性蛍光体層柱状結晶表面および支持体プレート全面を一体として覆うように、CVD法によって形成し、該有機膜を形成した後、前記金属酸化物を蒸着したフィルム(金属酸化物膜を有する)による封止を行うものである。
【0033】
該有機膜としては、防湿性能の高い、ポリパラキシリレン膜が好ましく、ポリパラキシリレン膜は、CVD法(気相成長法)により、蒸着によって形成することができる。
【0034】
従って、本発明においては、輝尽性蛍光体層を気相堆積法により、例えばガラス等の支持体上に形成し、該輝尽性蛍光体層が形成された支持体(輝尽性蛍光体プレート)をCVD装置中に導入し、CVD法(気相成長法)を用いて、蒸着によって輝尽性蛍光体層表面および支持体プレート裏面、一体として、ポリパレキシリレン膜で、輝尽性蛍光体プレートを覆った後、前記金属酸化物を蒸着したフィルム(防湿性保護フィルム)を輝尽性蛍光体プレートの上面および下面にかさね、これを一体に封止するものである。
【0035】
有機膜としては、前述の通り、ポリパラキシリレン膜が好ましいが、ポリパラキシリレン、ポリモノクロロキシリレン、ポリジクロロキシリレン等のキシリレン系樹脂有機膜が好ましい。10μm程度のキシリレン膜であれば、水蒸気の透過率が非常に低いと共に、分光透過率が高く輝尽発光光の吸収も少ない。
【0036】
気相堆積法により形成した輝尽性蛍光体層は、柱状の形態を有しており、蛍光体層の表面は柱状結晶間の隙間等もあり、また表面が完全に平滑ではないこともあり、該防湿保護フィルムのみによる封止では、防湿性保護フィルムとの密着性にも問題あったが、このような有機膜のCVD法による形成によって、より均一な密着が行われる。
【0037】
前記金属酸化物を蒸着したフィルム(膜)としては、1Å〜100Åの厚みで少なくとも1層以上の金属酸化物膜を1〜30μmの樹脂フィルム上に蒸着形成したフィルムであり、例えば、シリカやアルミナ等の無機酸化物層を蒸着により形成し防湿性を高めたポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムである。これらは安価で加工性や透明性に優れ、防湿性及び酸素透過性が温度や湿度の影響を受けづらいため、環境によらず安定した画像品質を要求される医療用輝尽性蛍光体プレート用の防湿性保護フィルムとして適している。これらの蒸着フィルムは近年、透明で中身の確認ができることや、熱安定性が高くレトルト殺菌ができる。電子レンジによる中身の加熱が可能等の利点を生かして主に食品分野で不透明なアルミニウムラミネートフィルムの代替えとして普及してきた。
【0038】
金属酸化物を蒸着したフィルムとしては、例えばアルミナ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)としてVMPET等があり、これは東洋メタライジング社等から入手できる。
【0039】
本発明に使用する前記金属酸化物を蒸着したフィルムは、必要とされる防湿性にあわせ、異なった複数の蒸着層を有するフィルムを用いたり、複数枚積層することで更に防湿性を向上させることができる。
【0040】
また本発明において、前記蒸着フィルムは、保護層として或いは他の機能をもたせるため、又、防湿性をさらに高めるため、材質の異なった別の樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン等他の樹脂フィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに2種類以上積層して、防湿性保護フィルムとして用いることも好ましい。この場合の積層方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネートまたは共押し出しコーティングラミネートなどの方法があげられる。
【0041】
前記蒸着フィルムおよびその他の樹脂フィルムを積層する方法については、ドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用するが、接着剤層厚は2.5μmより大きくする必要がある。但し接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺などが発生することがあるためより好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0042】
樹脂フィルムを積層化するためには、ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法及び共押出しラミネーション法も使用でき、上記ドライラミネート方式との併用も可能である。
【0043】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し基材に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0044】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより基材上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0045】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用されるが、基材との接着性を増すために基材にあらかじめ接着促進剤を塗設しておくことがある。
【0046】
この接着促進剤としては、有機チタン系、ポリエチレンイミン系、イソシアネート系、ポリエステル系等があるが、一般にこれらの接着促進剤層は基材フィルムの表面に微細な凹凸をつけ溶融ポリマーの拡散性を向上する目的のものであり本発明で言う2.5μm以下の硬化性接着剤層には含まれない。
【0047】
共押出しラミネーション法とは異種又は同種の熱可塑性樹脂を2個以上の押出し機から、それぞれの樹脂を同時に押し出して、特別に設計されたダイスの内部又は外部で積層され、製膜と同時に多層フィルムを形成することをいう。
【0048】
一般に共押出しラミネーションに使用される樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、Ny(ナイロン)、ION(アイオノマー)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、POL(ポリオレフィン)等が挙げられる。
【0049】
このように、本発明の放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体プレートを水分から封止し保護するために、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムを防湿性保護フィルムとして用いるが、積層フィルムの場合、金属酸化物層を有するフィルムと他の樹脂フィルム間或いは複数の金属酸化物を蒸着したフィルム間を接着する接着剤層は、厚さ2.5μm以下であり、硬化性の、熱や紫外線による架橋反応を伴う、具体的には主剤と硬化剤を混合して使用する2液反応型や分子構造中に反応基を有する1液型のビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系等の接着剤層を用いることが好ましい。これらの接着剤は一般にはドライラミネーション等で頻繁に使用されるものである。
【0050】
但し、ホットメルト系接着剤は、経時硬化タイプを除けばここで言う硬化性の接着剤層に含まれない。
【0051】
これら防湿性保護フィルムの厚さは、実用上は1μm〜300μmまでである。良好な耐湿性と耐衝撃性を得るためには5μm以上が好ましく、特に10μm以上の防湿性保護フィルムにより封止した場合、耐久性、耐用性に優れた変換パネルが得られて一層好ましい。
【0052】
しかしながら一方で防湿性フィルムとして用いる場合にも膜厚をあまり大きくしないことが鮮鋭性の上からは重要である。鮮鋭性が低下しない範囲で用いるには、金属酸化物を蒸着したフィルムを含む防湿性保護フィルム全体で300μm、好ましくは150μm以下である。
【0053】
防湿性保護フィルムは輝尽励起光及び輝尽発光を効率よく透過するために、広い波長範囲で高い透過率を示すことが望ましく、透過率は60%以上、好ましくは80%以上である。
【0054】
また、表面にMgF2などの反射防止層を設けると、輝尽励起光及び輝尽性発光を効率よく透過すると共に鮮鋭性の低下を小さくする効果もあり好ましい。
【0055】
又、鮮鋭性の向上のため、防湿性保護フィルムに、例えばリン酸鉛等の着色剤を含有させ着色し、輝尽励起光を吸収する機能をもたせてもよい。
【0056】
その為に、輝尽励起光を吸収する色材(顔料又は色素)で着色したフィルムを、前記金属酸化物を蒸着したフィルムに積層したり、どちらか一方の面に色素乃至顔料を含有する層を塗布により設ける方法もある。
【0057】
着色したフィルムの製造方法としては、色材を練り込んだプラスチックフィルムやプラスチックフィルムの表面に色材(顔料又は染料)を含有する層を塗布等によって形成する方法があり、着色したプラスチックフィルムを接着剤等を用いて均一に防湿性保護フィルムに貼り合わせる方法で着色することが出来る。
【0058】
〈輝尽性蛍光体〉
輝尽性蛍光体層を形成する輝尽性蛍光体としては、例えば特開昭61−236890号に記載されている二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体等があり、例えば、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、特には輝尽性蛍光体がEu付加BaFI化合物等が挙げられるが、本発明の放射線画像変換パネルに好ましく用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば、特開昭48−80487号に記載されているBaSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80488号記載のMgSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80489号に記載されているSrSO4:Axで表される蛍光体、特開昭51−29889号に記載されているNa2SO4、CaSO4及びBaSO4等にMn、Dy及びTbの中少なくとも1種を添加した蛍光体、特開昭52−30487号に記載されているBeO、LiF、MgSO4及びCaF2等の蛍光体、特開昭53−39277号に記載されているLi2B4O7:Cu,Ag等の蛍光体、特開昭54−47883号に記載されているLi2O・(Be2O2)x:Cu,Ag等の蛍光体、米国特許第3,859,527号に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、La2O2S:Eu,Sm及び(Zn,Cd)S:Mnxで表される蛍光体があげられる。又、特開昭55−12142号に記載されているZnS:Cu,Pb蛍光体、一般式がBaO・xAl2O3:Euであげられるアルミン酸バリウム蛍光体、及び、一般式がM(II)O・xSiO2:Aで表されるアルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体があげられる。
【0059】
又、特開昭55−12143号に記載されている一般式が(Ba1−x−yMgxCay)Fx:Eu2+で表されるアルカリ土類フッ化ハロゲン化物蛍光体、特開昭55−12144号に記載されている一般式がLnOX:xAで表される蛍光体、特開昭55−12145号に記載されている一般式が(Ba1−xM(II)x)Fx:yAで表される蛍光体、特開昭55−84389号に記載されている一般式がBaFX:xCe,yAで表される蛍光体、特開昭55−160078号に記載されている一般式がM(II)FX・xA:yLnで表される希土類元素賦活二価金属フルオロハライド蛍光体、一般式ZnS:A、CdS:A、(Zn,Cd)S:A,Xで表される蛍光体、特開昭59−38278号に記載されている下記いずれかの一般式
xM3(PO4)2・NX2:yA
xM3(PO4)2:yA
で表される蛍光体、特開昭59−155487号に記載されている下記いずれかの一般式
nReX3・mAX′2:xEu
nReX3・mAX′2:xEu,ySm
で表される蛍光体等、又、特開昭61−228400号に記載されている一般式M(I)X:xBiで表されるビスマス賦活アルカリハライド蛍光体等が好ましいのものとしてあげられる。
【0060】
しかしながら、特開昭61−72087号、特開平2−58000号等に記載されたような、下記一般式(1)で表されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体が特に好ましい。
【0061】
一般式(1)
M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属であり、M3はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、AはEu,Tb,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、又、a,b及びeは、それぞれ0≦a<0.5,0≦b<0.5,0<e≦0.2の範囲の数値を表す。
【0062】
これら一般式(1)において、M1はK、RbおよびCsからなる群から選ばれることが好ましく、XはBrおよびIからなる群から選ばれることが好ましい。
【0063】
また、M2はBe、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれることが好ましく、M3はY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれることが好ましい。更に、bとしては0≦b≦0.01であることが好ましく、AはEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれることが好ましい。
【0064】
これらのアルカリハライド系輝尽性蛍光体は気相堆積法により基板上に成膜することで、基板の法線方向に対し一定の傾きをもった(勿論、傾きがなく、基板面に対して垂直でもよいが)細長い柱状結晶を形成する。この様な柱状結晶の形成により、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑えることができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性がよいことがこれらの蛍光体を用いたときの特徴である。アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0065】
本発明において、特に好ましいのはこれらの中でも下記一般式(2)で表される蛍光体である。
【0066】
一般式(2)
CsX:A
式中、XはBr又はIを表し、AはEu,In,Ga又はCeを表す。
【0067】
中でもCsBr系蛍光体が特に輝度が高く高画質であり、また本発明の製造方法による基板或いは基板との付着性(接着性)の向上効果も高く好ましい。
【0068】
本発明において好ましい、これらの輝尽性蛍光体を用いて得られる柱状結晶、即ち各々の結晶がある間隙をおいて柱状に成長している結晶は、前記、特開平2−58000号に記載された方法により得ることができる。
【0069】
即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法によって独立した細長い柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を得ることができる。
【0070】
例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させることにより、基板面に対してほぼ垂直柱状の結晶を得ることが出来る。
【0071】
これらの場合において、基板と坩堝との最短部の間隔は輝尽性蛍光体の平均飛程に合わせて概ね10cm〜60cmに設置するのが適当である。
【0072】
蒸発源となる輝尽性蛍光体は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から輝尽性蛍光体を蒸発させる方法は電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法にて蒸発させることもできる。
【0073】
また、蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0074】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後、あとから賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体をCsBrとした場合、CsBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるInをドープしてもよい。即ち、結晶が独立しているため、膜が厚くとも充分にドープ可能であるし、結晶成長が起こりにくいので、MTFは低下しないからである。
【0075】
ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことが出来る。
【0076】
〈蛍光体層厚み、結晶の大きさ等〉
これらの方法により形成した柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層の層厚は目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、50μm〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、50μm〜800μmから選ばれるのがより好ましい。
【0077】
これらの柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層において変調伝達関数(MTF)をよくするためには、柱状結晶の大きさ(柱状結晶を基板と平行な面から観察したときの各柱状結晶の断面積の円換算した直径の平均値であり、少なくとも100個以上の柱状結晶を視野中に含む顕微鏡写真から計算する)は0.5〜50μm程度がよく、更に好ましくは、0.5〜20μmである。即ち、柱状結晶が0.5μmより細い場合は、柱状結晶により輝尽励起光が散乱される為にMTFが低下するし、柱状結晶が50μm以上の場合も輝尽励起光の指向性が低下し、MTFは低下する。
【0078】
該輝尽性蛍光体を気相成長(堆積)させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法がある。
【0079】
蒸着法は基板(支持体)を蒸着装置内に設置したのち、装置内を排気すると同時に窒素等の不活性なガスを導入口から導入して1.333Pa〜1.33×10−3Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着を行うことも可能である。また蒸着法においては、輝尽性蛍光体原料を複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。更に蒸着法においては、蒸着時に必要に応じて基板(支持体)を冷却或いは加熱してもよい。また、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0080】
スパッタ法は前記蒸着法と同様に基板をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して真空とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.33Pa〜1.33×10−3Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより基板表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに堆積させる。このスパッタ工程では蒸着法と同様に複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、それぞれを用いて同時或いは順次、前記ターゲットをスパッタリングして輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時或いは順次スパッタリングして、基板上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成する事も可能であるし、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて基板を冷却或いは加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0081】
CVD法は目的とする輝尽性蛍光体或いは輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、基板上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を基板の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い柱状結晶に気相成長させることが可能である。
【0082】
これらの柱状結晶は前記の通り特開平2−58000号に記載された方法、即ち、基板上に輝尽性蛍光体の蒸気又は該原料を供給し、蒸着等の気相成長(堆積)させる方法で得ることができる。
【0083】
図2は支持体12上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す図である。11は形成される輝尽性蛍光体柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を模式的に表している。輝尽性蛍光体の蒸気流Vの基板面の法線方向(P)に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の基板面の法線方向(P)に対する角度はθ1で表される。入射角度θ2に依存して一定の角度θ1で柱状結晶が形成される。形成された柱状結晶の角度は、輝尽性蛍光体材料によってそれぞれ異なり、例えば、アルカリハライド系蛍光体のうち、本発明において特に好ましいCsBr系蛍光体の場合には、例えば、蒸着時の輝尽性蛍光体の蒸気流を基板に垂直な方向に対し0〜5度の範囲で入射させる(即ちθ2が0〜5度)ことにより、基板面に対してほぼ垂直柱状(θ1がほぼ0度)の結晶を得ることが出来る。
【0084】
この様にして基板上に形成した輝尽性蛍光体層11は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0085】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となる。又高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
【0086】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属など、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0087】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも一種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも一種である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させうる。
【0088】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0089】
また、色材は、有機若しくは無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料があげられる。
【0090】
〈支持体〉
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体(基板)としては水分の透過性の低いものが好ましく、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0091】
また、本発明においては、基板と輝尽性蛍光体の接着性を向上させるために、必要に応じて基板の表面に予め接着層を設けてもよい。
【0092】
これら基板の厚みは用いる基板の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80μm〜1000μmである。
【0093】
また、アルカリハライド系輝尽性蛍光体のなかでもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質であり好ましい。
【0094】
これらの気相堆積法によって形成した蛍光体柱状結晶は水分に弱いことから、前記金属酸化物蒸着層を有するフィルムを含む防水性保護フィルムを用い封止する前に、本発明においては、該輝尽性蛍光体の表面を覆って前記輝尽性蛍光体プレート全体を一体として覆う有機膜を蒸着形成する。
【0095】
以下、輝尽性蛍光体層が支持体上に気相成長により形成された輝尽性蛍光体プレートへのCVD法による有機膜の製造について、以下図面を参照して説明する。図3は、本発明に係るポリパラキシリレン膜の蒸着に用いる蒸着装置の一例を示す構成図である。
【0096】
この蒸着装置は、ポリパラキシリレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室1、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室2、ラジカル化された状態のジパラキシリレンを輝尽性蛍光体プレートに蒸着させる蒸着室3、防臭、冷却を行う冷却室4及び真空ポンプを有する排気系5を備えて構成されている。ここで、蒸着室3は、図4に示すように熱分解室2においてラジカル化されたポリパラキシリレンを導入する導入口3a及び余分なポリパラキシリレンを排出する排出口3bを有すると共に、ポリパラキシリレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)3cを有する。
【0097】
この蒸着装置においては、まず、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12(輝尽性蛍光体蛍光体プレート)を蒸着室3のターンテーブル3c上に試料支持針20により支持する。即ち、図4及び図5に示すように支持体12の底面を、略正三角形を形成するように配置された試料支持針20により支持し、ターンテーブル3c上に配置する。この試料支持針20が試料支持体を構成する。ここで試料支持針20は、一端に鋭く尖った試料支持部20aを有すると共に他端にターンテーブル3cの上面に接する円板状の設置部20bを有している。なお、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、図6に示すように、ガラス製等の支持体12(厚さ0.5mm)の一方の表面に、前記柱状結晶を蒸着法によって例えば400μmの厚さで成長させ形成したものである。
【0098】
次に、この輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12を配置したターンテーブル3cを蒸着室3内に導入し、気化室1において175℃に加熱して気化させ、熱分解室2において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口3aから蒸着室3に導入して、輝尽性蛍光体層11及び支持体12の全面にポリパラキシリレン膜10を、例えば10μmの厚さで蒸着する(図5参照)。即ち、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、ターンテーブル3c上において試料支持針20の試料支持部20aの先端部のみで支持されているため、輝尽性蛍光体層11の表面及び支持体12の表面のみならず支持体12の裏面等にもポリパラキシリレン膜10を蒸着させることができる。
【0099】
なお、この場合に、蒸着室3内は真空度13Pa程度に維持されている。又、ターンテーブル3cは、第1のポリパラキシリレン膜10が均一に蒸着されるように、例えば4rpmの速度で回転させている。また、余分なポリパラキシリレンは、排出口3bから排出され、防臭、冷却を行う冷却室4及び真空ポンプを有する排気系5に導かれる。
【0100】
このようにして、輝尽性蛍光体層11及び支持体12の全面にポリパラキシリレン膜10を蒸着する。この工程により本発明に係る輝尽性蛍光体層を有する支持体(基板)への有機膜形成工程が終了する。
【0101】
このようにして輝尽性蛍光体層を有する支持体(基板)に一体としてポリパラキシリレン膜10を形成したところを図7に示す。
【0102】
以上説明したポリパラキシリレン膜の蒸着方法によれば、輝尽性蛍光体層11を形成した支持体12は、ターンテーブル3c上において試料支持針20の試料支持部20aの先端部のみで支持されているため、支持体12の底面と試料支持部20aの先端部との接触面積が小さくなることから、支持体12の裏面等にもポリパラキシリレン膜を均一に蒸着させることができる。また、ポリパラキシリレン膜10を蒸着させた後に、支持体12をターンテーブル3c上から容易に取り上げることができる。
【0103】
また、支持針による微少なピンホールを防止するために、ポリパラキシリレン膜10の蒸着を二度以上に分けて行い、ポリパラキシリレン膜を蒸着する際にそれぞれ、試料支持針20により支持体12を支持する位置をずらすようにして支持体12を支持することが好ましい。このように二度に分けて蒸着する際に試料支持針20により支持体12を支持した位置をずらすことで、ポリパラキシリレン膜のピンホールをなくし、剥がれを防止することができ、また、輝尽性蛍光体層の耐湿性をさらに向上させることができる。
【0104】
本発明において、ポリパラキシリレン膜等からなる有機膜は前述のように、0.5〜60μm、好ましくは1.0〜40μm膜厚で形成するのが好ましい。
【0105】
なお、上述の説明においては、輝尽性蛍光体層11が形成された支持体12を3本の試料支持針20により支持しているが、4本以上の試料支持針により支持するようにしても良い。
【0106】
また、上述の説明においては、試料支持針20が一端に鋭く尖った試料支持部20aを有すると共に他端に円板状の設置部20bを有しているが、試料支持針20の形状は、支持体12の底面との接触面積が小さく、かつ、ターンテーブル3c上において支持体12を安定に支持できるものであれば、その形状は適宜変更可能である。
【0107】
〈スペーサ〉
本発明においては、輝尽性蛍光体層を支持体上に形成した蛍光体プレートに、輝尽性蛍光体表面及び輝尽性蛍光体表面のみならず支持体の裏面まで一体として、ポリパラキシリレン膜のような撥水性の有機膜を形成した後、該有機膜を有する輝尽性蛍光体プレートに、さらに、前記蒸着形成された金属酸化物層を有するフィルム或いはこれを含む複数の積層された樹脂フィルムからなる防湿性保護フィルムにより封止する。
【0108】
前記輝尽性蛍光体層を有するプレートを前記防湿性保護フィルムにより封止するには既知のいかなる方法も使用できるが、例えば、蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間に挟み周縁部をインパルスシーラーで加熱融着する方法や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0109】
前記図1は、このようにして防湿性保護フィルムを用いて輝尽性蛍光体プレートを一体として封止した1例である。
【0110】
上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0111】
本発明の金属酸化物層が蒸着形成された防湿性保護フィルムにより蛍光体シートを封止するにあたっては、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることで防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される。
【0112】
これら上記熱融着性樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等があげられるがこれに限られたものではない。
【0113】
また、熱融着性を有する樹脂層中にシリカ、チタン、ゼオライト等の無機微粒子を0.01質量%〜1.0質量%含有させておくことにより、熱融着による蛍光体シートの封止作業によって生じる、大きな周期の画像ムラを防止でき好ましい。0.01質量%以下では効果は少なく、1.0質量%以上では積層保護フィルムの透明性やヘイズ値の劣化を伴う。
【0114】
防湿性保護フィルムと前記輝尽性蛍光体およびその表面に設けられた有機膜との密着部分の接着性を向上させる目的で、防湿性保護フィルムとの接着面にさらに下引き層を設けたり、粗面化処理を施すこともできる。
【0115】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて、蛍光体プレートの支持体側の防湿保護フィルムは光学的には不透明であってもかまわないため、防湿性の向上のために、支持体側の防湿保護フィルムについてはアルミラミネートフィルムとすることが好ましい。
【0116】
ラミネートに使用するアルミ箔フィルムとしてはピンホール等による防湿性劣化の点から9μm以上あることが望ましい。また支持体側の防湿保護フィルムも蛍光体面側の防湿保護フィルムと同様に、膜厚200μm以下、であることが望ましい。即ち、図1において、支持体面側の防湿性保護フィルム14について1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることが好ましい。これにより確実に水分の侵入を低減できる。
【0117】
本発明の放射線画像変換パネルの防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層の熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面は接着しても実質的に接着していなくてもかまわないが、前記有機層の形成により密着性は向上する。
【0118】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて防湿性保護フィルムの膜厚が200μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのと後述のインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては200μm以下が望ましい。
【0119】
〈低屈折率層〉
又、本発明においては、上記構成中において低屈折率層を設けてもよい。低屈折率層は防湿性保護フィルムを構成する樹脂材料よりも屈折率の低い素材からなり、この層が存在することにより、保護層や防湿性保護フィルムを厚くしても鮮鋭性の低下を小さくすることができる。例えば以下に示す物質を用いる事ができ、蒸着等気相成長法で形成された薄膜の状態で用いるのが好ましい。
【0120】
或いは、以下の様な液体層を用いることもできる。
【0121】
又、本発明の低屈折率層として、空気、窒素、アルゴンなどの気体層や真空層など屈折率が実質的に1である層を用いると、鮮鋭性の低下を防止する効果が高く特に好ましい。
【0122】
本発明の低屈折率層の厚さは0.05μmから3mmまでが実用的である。
本発明の低屈折率層は、輝尽層と密着状態にあってもよいし、離れていてもよい。低屈折率層と輝尽層を密着させるためには、接着剤を用いるのが1つの方法であるが、その場合、接着剤の屈折率は輝尽層の屈折率または低屈折率層の屈折率に近いことが好ましい。
【0123】
〈撮影方法〉
図8に、本発明の放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を概略的に示す。
【0124】
即ち、図8において、21は放射線発生装置、22は被写体、23は本発明に係わる放射線画像変換パネル、24は(レーザ等の)輝尽励起光源、25は該変換パネルにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置、26は25で検出された信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は輝尽励起光と輝尽蛍光とを分離し、輝尽蛍光のみを透過させるフィルタである。尚、25以降は23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、上記に限定されるものではない。
【0125】
図8に示されるように、放射線発生装置21からの放射線(R)は被写体22を通して放射線画像変換パネル23に入射する(RI)。この入射した放射線はパネル23の輝尽層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透過像の蓄積像が形成される。
【0126】
次にこの蓄積像を輝尽励起光源24からの輝尽励起光で励起して輝尽発光として放出せしめる。
【0127】
放射される輝尽発光の強弱は蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を例えば光電子倍増管等の光電変換装置25で光電変換し、画像再成装置26によって画像として再生し画像表示装置27によって表示することにより、被写体の放射線透過像を観察することができる。
【0128】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0129】
実施例
《輝尽性蛍光体プレートの作製》
1mm厚、面積410mm×410mmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体(基板)の表面に図9に示す気相堆積装置を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0130】
尚、蒸着にあたっては、前記支持体を前記気相堆積装置内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)をプレス成形し水冷したルツボ(図示していいない)にいれ蒸着源とした。
【0131】
その後、気相堆積装置内を排気口にポンプを接続して排気し、更にガス導入口から窒素を導入して(流量1000sccm(sccm:standard cc/min(1×10−6m3/min)))、装置内の真空度を6.65×10−3Paに維持した後、蒸着源を650℃に加熱し、ガラス支持体(基板)の一方の面に、CsBr:0.0001Euからなるアルカリハライド蛍光体を支持体表面の法線方向から(すなわち、スリットと蒸着源を支持体の法線方向にあわせ(θ2=約0度))、支持体と蒸発源の距離(d)を60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行なった。輝尽性蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、蛍光体プレートを作製した。
【0132】
次いで、蛍光体プレートを5cm×5cmの正方形に断裁し、前記図3、4で示される蒸着装置を用い、表1に示すようにポリパラキシリレン膜の厚みを変化させ輝尽性蛍光体層および支持体裏面に一体として蒸着により形成した。
【0133】
即ち、断裁したサンプルを前記ターンテーブル3c上に配置して、蒸着室3内に導入し、気化室において175℃に加熱して気化させ、熱分解室2において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口3aから蒸着室3に導入して、輝尽性蛍光体層11および支持体12の全面に蒸着する。
【0134】
尚、蒸着は2回に分けて実施し、試料支持針20により支持体12を支える位置をずらして、キシリレン膜のピンホール、ハガレを防止する様にした。キシリレン膜の厚みは、それぞれトータルで5,10,20,50μmとした試料をそれぞれ用意した。
【0135】
次いで、ポリパラキシリレン膜を蒸着形成した輝尽性蛍光体プレートを、輝尽性蛍光体層側には、PET12///VMPET70///PE15///LDPE30の構成からなるアルミナ蒸着フィルムVMPETを含む積層フィルム(各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表し、“///”はドライラミネーション接着層を意味し、“///”は接着層の厚みが3.0μmであることを示す。尚、使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤である。)を、蛍光体プレートの支持体面側の保護フィルムはキャステングポリプロピレン(CPP)30μm///アルミフィルム9μm///ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルム(“///”は接着層をあらわし、この場合の接着層の厚みは3.0μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した)を用い、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着することで、それぞれ封止した(封止フィルム1重)。
【0136】
上記において、
PET ;ポリエチレンテレフタレート
VMPET;アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート(東洋メタライジング社製)
PE ;ポリエチレン
LDPE ;低密度ポリエチレン
CPP ;キャステングポリプロピレン
を表す。
【0137】
尚、融着部から蛍光体プレート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0138】
こうして実施例1〜4の放射線画像変換パネルサンプルを作製した。
また、前記蛍光体層を形成した支持体をポリパラキシリレン膜による被覆を行わなかった以外は同様にして、前記蒸着フィルムを含む積層膜により封止した放射線画像変換パネルを作製し比較例1とした。
【0139】
また、ポリパラキシリレン膜による被覆を行わなかった蛍光体プレートについては、前記のVMPETを積層したPET12///VMPET70///VMPET70///PE15///LDPE30の構成からなる積層フィルムを蛍光体側に用いて、前記同様に封止し放射線画像変換パネルのもう一つの比較例2を作製した(封止フィルム2重)。
【0140】
このようにして得られた放射線画像変換パネルについて以下の方法により評価した。
【0141】
(放射線画像変換パネルの評価)
鮮鋭性については、放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後パネルHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。下記の表1には空間周波数2サイクルにおけるMTF値2lp/mm(%)が示されている。この場合MTF値が高いほど鮮鋭性がよい。
【0142】
(耐湿性の評価)
上記蛍光体シートの封止後の各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を蛍光体プレート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し初期感度とした。次いで、上記各放射線画像変換パネルを、40℃、相対湿度90%の高湿環境下に保存した後、取り出して再度、感度を測定し、初期感度に対し80%に感度が低下するまでの時間を測定した。
【0143】
【表1】
【0144】
ポリパラキシリレン膜を形成した放射線画像変換パネルはポリパラキシリレン膜を設けなかった放射線画像変換パネルに比べ、耐湿性に優れることがわかる。また、ポリパラキシリレン膜は厚みがある方が耐湿性が向上するが、厚みが大きくなると鮮鋭性がやや低下することもわかった。ちなみに、比較例2は、ポリパラキシリレン膜を設けずに金属酸化物の蒸着層を有するフィルムを2重に用いて封止したものであるが、確かに耐湿性は向上するものの、鮮鋭性の低下が大きいことがわかる。
【0145】
【発明の効果】
気相堆積により形成された輝尽性蛍光体層を有機膜と蒸着フィルムにより封止した耐用年数の長い放射線画像変換パネルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属酸化物を蒸着したフィルムで覆って水分を封止した放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。
【図2】支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。
【図3】本発明に係るポリパラキシリレン膜の蒸着に用いる蒸着装置の一例を示す構成図である。
【図4】図3の蒸着装置の蒸着室の概略図である。
【図5】図3の蒸着装置のターンテーブル上での支持体の支持状態を示す図である。
【図6】柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を支持体上に気相堆積法により形成したところを示す図である。
【図7】柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層を有する支持体を一体としてポリパラキシリレン膜によって覆ったところを示す図である。
【図8】本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
【図9】支持体上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
1 気化室
2 熱分解室
3 蒸着室
4 冷却室
5 排気系
10 ポリパラキシリレン膜
11 輝尽性蛍光体層
12 支持体
13,14 防湿性保護フィルム
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
V 蒸気流
Claims (11)
- 支持体上に輝尽性蛍光体層を気相堆積により50μm以上の膜厚で形成した放射線画像変換パネルが、該輝尽性蛍光体の表面を覆って一体として蒸着形成された有機膜を備え、更に、少なくとも該蛍光体層側が金属酸化物を蒸着したフィルムで被覆されていることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 有機膜がポリパラキシリレン膜であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
- 輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1) M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X′およびX″はF、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ga、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、CuおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、また、a、bおよびeは、それぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕 - 一般式(1)におけるM1がK、RbおよびCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であることを特徴とする請求項3に記載の放射線画像変換パネル。
- 一般式(1)におけるXがBrおよびIから選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子であることを特徴とする請求項3または4に記載の放射線画像変換パネル。
- 一般式(1)におけるM2がBe、Mg、Ca、Sr、およびBaから選ばれる少なくとも一種の二価金属であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 一般式(1)におけるM3がY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 一般式(1)におけるbが0≦b≦10−2であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 一般式(1)におけるAがEu、Cs、Sm、TlおよびNaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 輝尽性蛍光体が柱状結晶を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 柱状結晶が主成分として下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することを特徴とする請求項10に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(2)
CsX:A
〔式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、GaまたはCeを表す。〕
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