JP2004239677A - シアフォース検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】チューニングフォークを用いる方式において、加振を行うための圧電体を不要とし、構造を簡単化して製作を容易にし、コストを下げるとともに検出感度を高くする。
【解決手段】シアフォース検出部材(15)を取り付けた音叉型振動子(10)を共振させて前記検出部材先端を試料に接近させ、音叉型振動子に誘起される電圧を検出する装置において、音叉型振動子の一方の振動体(11)に加振用電極、他方の振動体(12)に検出用電極をそれぞれ形成し、加振用電極に加振電圧を印加して両振動体を共振させ、検出用電極から誘起電圧を測定するようにしたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は走査型近接場光学顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡のプローブ先端と試料との距離制御に使用できるシアフォース検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型近接場光学顕微鏡は、光ファイバーの先端をエッチングし、先端にアルミ等の高反射率の金属コートを行い、先端部分に光学波長(1μm〜400nm)より小さな径の開口を形成したものである。この光ファイバーに光を導入すると、先端部分に近接場領域が出現する。近接場光は、ファイバー先端からの距離に応じて指数関数的に弱くなり、一般に近接場領域は導入した波長と同程度の滲みだしを持つ。近接場光を励起した状態で試料と光ファイバー先端の距離を近接場領域以下(1μm〜400nm)に近づけると、近接場光は試料によって反射、透過、吸収が起こり、光が発生する(far field 光と呼ばれている)。この状態で試料表面と光ファイバーの距離を一定に保ちながら光ファイバーを試料表面上で走査し、このときに発生する光(far field 光)の強度を画像化すると試料表面の持つ光学的特性を知ることができる。
【0003】
試料表面と光ファイバー間の距離を一定に保つために、現在までに様々な手法が考案されている。例えば、光ファイバーと試料間にバイアス電圧を印加してそのとき流れるトンネル電流を一定に保つSTM方式、チューニングフォーク方式を用いて光ファイバー先端を共振させて試料に近づけ、共振振幅が一定になるように制御するシアフォース方式が考案されている(非特許文献1)。
【0004】
図7はシアフォース方式を説明する図である。
音叉型に切り出された水晶振動子1のフォーク状振動体の各面には2つの電極2、3を取り付け、光ファイバー4を一方の電極2に貼り付ける(なお、図では水晶振動子の表面と裏面に貼り付けた電極が分かるように、90°回転した2つの状態の斜視図が示されている)。
【0005】
水晶振動子1の底面に貼り付けた他の圧電体(図示せず)で、図の矢印A方向に振動させると、音叉状の振動子は、共振点(約30KHz程度)の周波数の時に左右に最大の振幅で共振する。このときの振動子に誘起される電圧を電極2、3間で測定する。この共振状態で光ファイバー先端を試料に近づけていくと、光ファイバーと試料間の距離が数10nm以下になるとシアフォースが働き光ファイバーの振幅が小さくなり、この影響により音叉状の水晶振動子の共振振幅が減少し、測定される電圧振幅も減少する。この電圧振幅を一定に保つように試料と光ファイバー間の距離を制御することにより、試料と光ファイバーの距離を一定に保つことができるようになる。
【0006】
【非特許文献1】Khaled Karai and Robert D .Grober Piezoelectric tip−sample distance control for near field optical microscope Appl.Phys.Lett.66(14), 3 April 1995 pp1842−1844)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来のチューニングフォークを用いる方式では、検出用のチューニングフォークと、チューニングフォーク自体を加振するための圧電体の2つが必要となっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、チューニングフォークを用いる方式において、加振を行うための圧電体を不要とし、構造を簡単化して製作を容易にし、コストを下げるとともに検出感度を高くすることを目的とする。
そのために本発明のシアフォース検出装置は、シアフォース検出部材を取り付けた音叉型振動子を共振させて前記検出部材先端を試料に接近させ、音叉型振動子に誘起される電圧を検出する装置において、音叉型振動子の一方の振動体に加振用電極、他方の振動体に検出用電極をそれぞれ形成し、加振用電極に加振電圧を印加して両振動体を共振させ、検出用電極から誘起電圧を測定するようにしたことを特徴とする。
また、本発明のシアフォース検出装置は、前記シアフォース検出部材が、光ファイバーまたは探針であることを特徴とする。
また、本発明は、上記シアフォース検出装置を備えた走査型近接場光学顕微鏡を特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1はシアフォース検出装置の例を説明する図で、図1(a)は斜視図、図1(b)は平断面図である。なお、図6の場合と同様に、図1(a)において水晶振動子は90°回転した2つの状態を図示している。
音叉状に切り出した水晶振動子10は2つのフォーク状振動体のうち、一方の振動体11を加振用、他方の振動体12を検出用とするようにそれぞれ電極を分割して蒸着する。すなわち、図1(b)に示すように、断面矩形の加振用の振動体11の各面に電極を蒸着し、対向する面の電極同士を接続してそれぞれ加振用の発振器13に接続する。同様に、断面矩形の検出用の振動体12の各面に電極を蒸着し、対向する面の電極同士を接続してそれぞれ検出用のロックインアンプ14に接続する。なお、ロックインアンプ14には、発振器13から別途参照用の信号を供給して位相検波(同期検波)するようになっている。また、ロックインアンプに接続される検出用の振動体12には、シアフォース検出部材として光ファイバー15を接着剤等で固定してチューニングフォークを形成する。
【0010】
発振器13から加振用電圧を印加すると、振動体11が左右方向に振動し、これに同期して振動体12も左右方向に振動し、共振点の周波数の時に左右に最大の振幅で共振する。このときの検出用振動体12に誘起される電圧をロックインアンプ14で測定する。この共振状態で光ファイバー15の先端を試料に近づけていくと、光ファイバーと試料間の距離が数10nm以下になるとシアフォースが働き光ファイバーの振幅、振動体の振幅が小さくなって測定される電圧振幅も小さくなる。この電圧振幅の変化をモニタすることによりシアフォースを検出することができる。そして、測定される電圧振幅を一定に保つように試料と光ファイバー間の距離を制御することにより、走査型近接場光学顕微鏡に利用することができる。なお、far field 光は試料表面の持つ光学的特性を知る情報として使用される。
【0011】
図2は図1の構造を有するシアフォース検出装置を用いて構成した走査型近接場光学顕微鏡の一例を示す図である。
発振器13から水晶振動子10に加振用電圧を印加すると、加振用振動体11、検出用振動体12が振動し、共振点の周波数で共振する。この共振状態で光ファイバー15の先端を試料20に近づけていき、光ファイバーと試料間の距離が数10nm以下になるとシアフォースが働き光ファイバーの振幅が小さくなり、この影響により振動子の共振振幅が減少し、検出される電圧振幅も減少する。検出された電圧はロックインアンプ14を通してエラーアンプ17に加えられ、参照電圧との差が演算される。
【0012】
圧電素子(スキャナ)21は試料をZ方向に動かすZ圧電素子22、試料をXY面において走査するX圧電素子23、Y圧電素子24からなっており、それぞれ圧電素子駆動電源(Z方向)25、圧電素子駆動電源(X方向)26、圧電素子駆動電源(Y方向)27により駆動される。そして、X圧電素子23とY圧電素子24に走査波形信号を加えて試料をXY面において走査する。
【0013】
エラーアンプ17の出力を圧電素子駆動電源25に加えてZ圧電素子22を駆動し、光ファイバーと試料間の距離を一定に保つようにする。すなわち、光ファイバーと試料間を一定距離(一定のシアフォース)とするように参照電圧を設定し、光ファイバーと試料間の距離が一定距離からずれるとシアフォースも変化し、検出される電圧は参照電圧に対して増減し、その差電圧が圧電素子駆動電源25に加えられ、Z圧電素子22は光ファイバーと試料間の距離が一定距離となるように伸縮する。例えば、光ファイバーと試料間の距離が短くなった場合には、圧電素子22が縮み、光ファイバーから試料を離して距離が一定に保たれる。このように走査型近接場光学顕微鏡は、光ファイバーと試料間に作用するシアフォースを一定に保持するフィードバック制御下で試料表面上を圧電素子駆動電源26、27を用いて走査し、この時のZ駆動電圧を距離換算した凹凸情報に基づいて画像化する。
【0014】
図3は本実施形態の走査型近接場光学顕微鏡の測定結果を示す図である。
横軸に発振器出力の周波数、縦軸にロックインアンプの出力を示している。共振は、約33KHz付近に存在し、100Hzの周波数範囲内で変化している。
【0015】
図4は図6に示した従来方式を用いた場合の測定結果を示す図である。
横軸に圧電体の加振周波数、縦軸に測定電圧値を示している。共振点は約31KHz付近にあるが、共振時の周波数範囲は400〜500Hzの幅をもっており、チューニングフォークに圧電体を貼り付けているため図3に比して特性がなまっていることが分かる。
この図3、図4から本発明の電極分割方式を用いた方がQ値が高く、より高感度で測定できることが分かる。
図5は本実施形態の走査型近接場光学顕微鏡でメッシュの試料を観察したときの凹凸像を示している。これにより、図1で説明した方式のチューニングフォークを使用し、シアフォース方式で凹凸像が良好に得られることが確認できた。
【0016】
図6はシアフォース検出装置の他の例を説明する図である。
この例は基本的構成は図1の場合と同じで、シアフォース検出部材として光ファイバーの代わりに検出用振動体の端部にチップ(探針)16を取り付けた点のみ異なっている。この例においても、発振器13から加振用電圧を印加すると、振動体11が左右方向に振動し、これに同期して振動体12も左右方向に振動し、共振点の周波数の時に左右に最大の振幅で共振する。このときの検出用振動体12に誘起される電圧をロックインアンプ14で測定する。この共振状態でチップ16の先端を試料に近づけていくと、チップと試料間の距離が数10nm以下になるとシアフォースが働きチップの振幅、振動体の振幅が小さくなって測定される電圧振幅も小さくなる。この電圧振幅の変化をモニタすることによりシアフォースを検出することができる。そして、測定される電圧振幅を一定に保つように試料とチップ間の距離を制御することにより、走査型プローブ顕微鏡に利用することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、従来のチューニングフォークを用いる方式に比して、加振を行うための圧電体を必要としないので、構造が簡単で製作が容易になり、安価となる。また、チューニングフォーク自体に圧電体を貼り付ける必要がないため、検出感度を向上させることができる。
また、従来のチューニングフォークの電極の形状を変えるだけで本発明を実現することができ、チューニングフォーク自体の作製は、従来の技術をそのまま使用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】シアフォース検出装置の例を説明する図である。
【図2】図1の構造を有するシアフォース検出装置を用いて構成した走査型近接場光学顕微鏡の一例を示す図である。
【図3】電極分割方式を用いた場合の測定結果を示す図である。
【図4】従来方式を用いた場合の測定結果を示す図である。
【図5】本実施形態のチューニングフォークを使用して、メッシュの試料を観察したときの凹凸像を示図である。
【図6】シアフォース検出装置の他の例を説明する図である。
【図7】シアフォース方式を説明する図である。
【符号の説明】
10…水晶振動子、11…加振用の振動体、12…検出用の振動体、13…発振器、14…ロックインアンプ、15…光ファイバー、16…チップ(探針)、17…エラーアンプ、20…試料、21…圧電素子(スキャナー)、22〜24…圧電素子、25〜27…圧電素子駆動電源。

Claims (3)

  1. シアフォース検出部材を取り付けた音叉型振動子を共振させて前記検出部材先端を試料に接近させ、音叉型振動子に誘起される電圧を検出する装置において、
    音叉型振動子の一方の振動体に加振用電極、他方の振動体に検出用電極をそれぞれ形成し、加振用電極に加振電圧を印加して両振動体を共振させ、検出用電極から誘起電圧を測定するようにしたことを特徴とするシアフォース検出装置。
  2. 前記シアフォース検出部材は、光ファイバーまたは探針であることを特徴とする請求項1記載のシアフォース検出装置。
  3. 請求項1又は2に記載されたシアフォース検出装置を備えた走査型近接場光学顕微鏡。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009035910A1 (en) * 2007-09-11 2009-03-19 Honeywell International Inc. Magnetic shear force sensor
JP2016080493A (ja) * 2014-10-16 2016-05-16 日本分光株式会社 微細構造測定用プローブおよび微細構造測定装置

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