JP2004239380A - 樹脂製プーリ - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト転走面の真円度を維持しつつ、プーリの温度上昇を抑えることのできる樹脂製プーリを提供する。
【解決手段】環状円板部3の端面に配置された補強リブ4aおよび4bを、どちらか一方の円筒部(外側円筒部1あるいは内側円筒部2)にのみ連結され、このプーリの径方向に略沿って他方の円筒部に向かって伸びる形状に形成するとともに、これら外側円筒部1から内側円筒部2に向かって伸びる補強リブ4aと、内側円筒部2から外側円筒部1に向かって伸びる補強リブ4bとを、周方向に互い違いとなるように、等間隔で交互に配置する。以上の補強リブ構成により、ベルト転走面となる外側円筒部外周面1xの十分な真円度を確保しつつ放熱効果を高めることができ、もってプーリの温度上昇によるトラブルを防止することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂を用いて一体に成形されたプーリに関し、更に詳しくは、放熱効果が高く、かつ、ベルト転走面の真円度が良好な樹脂製プーリに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用エンジンのカムシャフトや補機類は、無端ベルトによる動力伝達によって回転駆動されている。このような無端ベルトを用いた動力伝達機構においては、クランクシャフトに繋がる駆動プーリあるいは補機類等に繋がる従動プーリから外れた無端ベルトの一部に、樹脂製のアイドラプーリやガイドプーリ、あるいはテンションプーリ等を設け、これらに無端ベルトを掛け渡すことによって、駆動プーリおよび従動プーリに対する巻き付け角度の維持や張力の付与を行っている。
【0003】
図4は、従来の樹脂製プーリを軸方向から見た正面図であり、図5は、図4のA−A矢視断面図である。
この樹脂製プーリは、図4に示すように、同心状に配置された外側円筒部1と、内側円筒部2と、これら外側円筒部1と内側円筒部2とを一体に連結する環状円板部3を主体として形成されている。また、この環状円板部3の両端面には、このプーリの径方向に沿って外側円筒部1と内側円筒部2とを連結する複数の放射状補強リブ5,5,・・・が形成されている。なお、この樹脂製プーリの内側円筒部(ボス部)2の内周には、このプーリを回転自在に支持する転がり軸受等が配置されているとともに、外側円筒部1の外周面1xには、図示しない無端ベルト等が掛け渡されることとなる。
【0004】
図5の一部断面図に示すように、ベルト転走面(外周面1x)を有する外側円筒部1は、内側円筒部2に比べて幅広に形成されているとともに、これら径方向に離間した外側円筒部1と内側円筒部2との間に配置された環状円板部3は、外側円筒部1の軸方向中央から内側円筒部2の軸方向中央にかけて形成されている。また、環状円板部3の端面に配置された補強リブ5,5は、外側円筒部1の内周面1yと内側円筒部2の外周面1xの端部間に形成されており、一方の端面3a側の補強リブ5と他方の端面3b側の補強リブ5とは、周方向に同位相となる位置に、それぞれが対となるように形成されている。
【0005】
以上のような構成の樹脂製プーリの材質としては、例えばガラス繊維などの強化繊維を配合したポリアミド樹脂等を用いたものが採用されており、この例におけるプーリのように、転がり軸受の外輪外周面に射出成形することにより一体に形成されているものが多い。
【0006】
なお、樹脂製プーリは成形後に収縮を起こすことが知られているが、内側円筒部に比べ径が大きくかつ肉薄の外側円筒部は、補強リブによって支えられている部位(支持部位)と支えられていない部位(非支持部位)との収縮率が異なり、成形後の放冷によって真円度が悪化してしまう場合がある。そのため、この外側円筒部における周方向の収縮率差を緩和すべく、環状円板部に配置される補強リブの形状及び配置に関し、種々の提案及び考案等がなされている(例えば、特許文献1および特許文献2等を参照。)。
【0007】
【特許文献1】実開平4−106551号公報
【特許文献2】特開2001−90811号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のような樹脂製プーリにおいては、合成樹脂を材料として形成されているため、金属製のプーリに比べて放熱性が悪いという問題があった。
【0009】
樹脂製プーリが蓄熱により高温となってしまった場合は、この熱がプーリの回転に種々の悪影響を与えてしまう。例えば、従来の放射状補強リブを有する樹脂製プーリにおいては、プーリの外側円筒部の剛性が、補強リブによって支えられている部位(支持部位)と支えられていない部位(非支持部位)とで異なり、ベルトからの荷重が、これら補強リブと内側円筒部(ボス部)との結合点に集中してしまうことが知られている。また、これら支持部位と非支持部位との間には、補強リブの有無による熱膨張率の差が生じるため、蓄熱による温度上昇によって外側円筒部外周面(ベルト転走面)の真円度が低下し、上述の荷重の集中がより顕著になってしまう場合もある。
【0010】
また、内側円筒部の内周に転がり軸受を配置した樹脂製プーリの場合は、蓄熱によって軸受内部に封入されているグリースの温度が上昇し、このグリースの劣化を早めてしまう。更にまた、前述のようなベルト転走面の真円度の悪化による荷重の周方向の偏りが生じた場合には、この軸受内部の外輪軌道が変形してしまい、プーリの振動や軸受からの異音あるいは軸受寿命の低下等のトラブルが発生することもある。
【0011】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、ベルト転走面の真円度を維持しつつ、プーリの温度上昇を抑えることのできる樹脂製プーリを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに同心状に設けられた外側円筒部と内側円筒部と、これら外側円筒部と内側円筒部とを連結する環状円板部と、この環状円板部の両端面にそれぞれ配置された複数の補強リブとが、樹脂を用いて一体に成形されてなる樹脂製プーリにおいて、前記補強リブは、前記外側円筒部あるいは前記内側円筒部のどちらか一方にのみ連結され、他方の円筒部に向かって伸びる形状に形成されているとともに、これら前記外側円筒部から前記内側円筒部に向かって伸びる補強リブと、前記内側円筒部から前記外側円筒部に向かって伸びる補強リブとが、周方向に交互に配置されていることを特徴とする。
【0013】
環状円板部の端面に補強リブを有する樹脂製プーリにおいて、この樹脂製プーリの放熱性を高めるためには、プーリ側面の表面積をいかに大きくするかという点が重要となる。しかしながら、従来からの樹脂製プーリにおける補強リブの考え方の援用として、外側円筒部から内側円筒部に繋がる放射状の補強リブの本数を増やしただけでは、外側円筒部の周方向の剛性差を緩和しきれず、ベルト転走面の十分な真円度を確保できない可能性がある。そこで、本発明は、外側円筒部の真円度を確保しつつプーリの放熱効果を高める手段として、外側円筒部と内側円筒部との間に、周方向に互い違いとなる多数の補強リブを形成し、これらを放熱フィンとして利用する方法を採用するものである。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、補強リブのそれぞれを、外側円筒部あるいは内側円筒部のどちらか一方にのみ連結され、他方の円筒部に向かって伸びる形状に形成することにより、ベルト転走面となる外側円筒部外周面の十分な真円度を確保することができる。言い換えれば、これらの補強リブを一方の円筒部から他方の円筒部にまで連続しない形状に形成することによって、これらの補強リブが径方向に突っ張らなくなり、外側円筒部の周方向の剛性差を小さくすることができる。
【0015】
また、これら前記外側円筒部から前記内側円筒部に向かって伸びる補強リブと、前記内側円筒部から前記外側円筒部に向かって伸びる補強リブとを、周方向に交互に配置したことにより、外側円筒部の周方向の剛性差を拡大させることなく、補強リブの本数を増やすことができる。また、補強リブの本数が増えるのと同時に、プーリ側面の表面積を拡大することができる。従って、本発明の樹脂製プーリは、外側円筒部の真円度を悪化させることなく、プーリの放熱効果を高めることができる。
【0016】
なお、本発明において環状円板部の両端面に設けられる補強リブの本数は、特に限定されるものではないが、このプーリの放熱効果と強度を高めるためには、周方向にできるだけ多くの補強リブを設けた方が有利である。また、これらの補強リブは、周方向に交互に等間隔で配置することが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における樹脂製プーリを軸方向から見た正面図である。なお、従来例と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
【0018】
この樹脂製プーリも、従来例と同様、同心状に配置された外側円筒部1と、内側円筒部2と、これら外側円筒部1と内側円筒部2とを一体に連結する環状円板部3を主体として形成されている。また、この環状円板部3の両端面には、このプーリの径方向に沿って外側円筒部1と内側円筒部2とを連結する複数の直線状補強リブ4aおよび4bが形成されている。なお、この樹脂製プーリの内側円筒部(ボス部)2の内周にも、従来例と同様の転がり軸受等が配置されているとともに、外側円筒部1の外周面1xには、図示しない無端ベルト等が掛け渡されることとなる。
【0019】
なお、この樹脂製プーリを構成する合成樹脂材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド6−6樹脂、フェノール樹脂あるいはポリアセタール樹脂等を使用することができる。また、これらの合成樹脂には、必要に応じてガラス繊維等の強化繊維を混合しても良い。
【0020】
本実施の形態における樹脂製プーリの特徴は、どちらか一方の円筒部にのみ連結され、このプーリの径方向に略沿って他方の円筒部に向かって直線状に伸びる補強リブ4aおよび4bが、環状円板部3の端面に多数形成されているとともに、これら外側円筒部1から内側円筒部2に向かって伸びる補強リブ4aと、内側円筒部2から外側円筒部1に向かって伸びる補強リブ4bとが、周方向に互い違いとなるように、等間隔で交互に配置されている点である。
【0021】
以上の補強リブ構成により、この樹脂製プーリは、従来の樹脂製プーリに比べ、プーリ側面の表面積が大幅に増加するとともに、このプーリの回転によって、これら多数の補強リブ4a,4bが放熱フィンとして機能するようになる。従って、本実施の形態における樹脂製プーリは、プーリ自身の放熱効果が高いばかりでなく、内周に配置される転がり軸受を冷却する効果も奏することができる。
【0022】
また、この樹脂製プーリは、外側円筒部1における補強リブ4aによって支えられている部位(支持部位)と支えられていない部位(非支持部位)との剛性差が小さい。すなわち、この補強リブ構成によって、プーリ成形後の周方向の収縮率の差、およびプーリの温度上昇時における周方向の熱膨張率の差も、同時に緩和することができる。従って、本実施の形態における樹脂製プーリは、プーリ温度の上下に左右されず、ベルト転走面となる外側円筒部外周面1xの十分な真円度を維持することが可能となる。
【0023】
また更に、このプーリは、ベルトからの荷重が補強リブ4bと内側円筒部2の結合点に集中することなく、その応力を周方向に分散させて支持することができる。従って、本実施の形態における樹脂製プーリは、内周に配置された転がり軸受の外輪軌道の局部的な変形を招くことなく、回転時の振動や異音等の発生を防止する効果も合わせて奏することができる。
【0024】
なお、本実施の形態においては、環状円板部3の端面に形成された補強リブ4aおよび4bの形状を、プーリの径方向に略沿って伸びる直線状としたが、本発明における補強リブの形状はこれに限定されず、周方向の剛性差を拡大させないように、それぞれが径方向に接続されない形状であれば、どのような形状でも良い。例えば、図2のように、更に表面積を拡大させるために補強リブ4c,4dの先端部に周方向の突出部位を設けたり、あるいは図3のように、補強リブ4e,4fを途中で屈曲させて形成したりしても良い。また、外側円筒部の周方向の剛性差を更に小さくするために、環状円板部3における一方の端面側の補強リブと他方の端面側の補強リブとを、周方向に互いに異なる位相となるように形成しても良い。
【0025】
更にまた、本実施の形態においては、プーリの軸受部として転がり軸受を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、金属製のボスであっても良い。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の補強リブ構成によれば、外側円筒部の周方向の剛性差の緩和と、プーリ側面の表面積の拡大とを両立することができる。従って、この樹脂製プーリは、ベルト転走面となる外側円筒部外周面の十分な真円度を確保しつつ放熱効果を高めることができ、もってプーリの温度上昇によるトラブルを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における樹脂製プーリを軸方向から見た正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の樹脂製プーリにおける別の補強リブ構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の樹脂製プーリにおける更に別の補強リブ構成を示す正面図である。
【図4】従来の樹脂製プーリを軸方向から見た正面図である。
【図5】従来の樹脂製プーリにおける補強リブ構成を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 外側円筒部
1x 外周面
1y 内周面
2 内側円筒部
2x 外周面
2y 内周面
3 環状円板部
3a,3b 端面
4a,4b 補強リブ
4c,4d 補強リブ
4e,4f 補強リブ
5 補強リブ

Claims (1)

  1. 互いに同心状に設けられた外側円筒部と内側円筒部と、これら外側円筒部と内側円筒部とを連結する環状円板部と、この環状円板部の両端面にそれぞれ配置された複数の補強リブとが、樹脂を用いて一体に成形されてなる樹脂製プーリにおいて、
    前記補強リブは、前記外側円筒部あるいは前記内側円筒部のどちらか一方にのみ連結され、他方の円筒部に向かって伸びる形状に形成されているとともに、これら前記外側円筒部から前記内側円筒部に向かって伸びる補強リブと、前記内側円筒部から前記外側円筒部に向かって伸びる補強リブとが、周方向に交互に配置されていることを特徴とする樹脂製プーリ。
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