JP2004239293A - 密封玉軸受および圧縮機、送風機 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受幅の拡大等を行うことなく、軸受からのグリース漏洩を効果的に防止した転がり軸受とこの転がり軸受を用いた圧縮機や送風機を提供する。
【解決手段】密封玉軸受9は、混合流体に対応する空間V1(冠型保持器31のポケット41)側に第1シール33が装着されている。第1シール33は、外輪25の端部に固着された弾性シール51と、内輪21の端部に固着されたスリンガー53とからなっている。スリンガー53は、内輪21に嵌合する円筒部61と、円筒部61の端部から外径方向に延設されて第1シール33との間にラビリンス63を形成する環状部65とからなっている。弾性シール51は、スリンガー53の円筒部61に摺接する第1,第2リップ71,73と、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップ75とを有している。
【選択図】 図2
【解決手段】密封玉軸受9は、混合流体に対応する空間V1(冠型保持器31のポケット41)側に第1シール33が装着されている。第1シール33は、外輪25の端部に固着された弾性シール51と、内輪21の端部に固着されたスリンガー53とからなっている。スリンガー53は、内輪21に嵌合する円筒部61と、円筒部61の端部から外径方向に延設されて第1シール33との間にラビリンス63を形成する環状部65とからなっている。弾性シール51は、スリンガー53の円筒部61に摺接する第1,第2リップ71,73と、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップ75とを有している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封玉軸受および圧縮機、送風機に係り、詳しくは軸受幅の拡大等を行うことなく、軸受からのグリース漏洩を効果的に防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池や化学プラント、産業機械等では、圧縮性流体の圧縮や送風に多様の圧縮機や送風機が用いられており、その回転軸は深溝玉軸受等の転がり軸受により支持されることが多い。そして、転がり軸受としては、組立性やメンテナンス性等に優れることから、図6に示したような密封玉軸受が一般的に用いられている。
【0003】
図6の密封玉軸受9は、内輪21と外輪25との間に転動体として複数個の鋼球29を介装させると共に、各鋼球29を所定の角度間隔で保持する合成樹脂製の冠型保持器31を有している。外輪25の両端部にはそれぞれ弾性シール81が固着されており、これら弾性シール81のリップ83が内輪21の両端部に形成されたシール溝85に摺接している。図6中、符号V1,V2は弾性シール81の内側の空間をそれぞれ示し、符号Gは封入されたグリースを示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した密封玉軸受9では、圧縮機や送風機の運転に伴い、回転軸に固着された内輪21が回転すると、鋼球29や冠型保持器31も同時に回転してグリースGが攪拌される。この際、弾性シール81の内側では、一方(冠型保持器31のポケット側)の空間V1の容積より他方(冠型保持器31の連結環側)の空間V2の容積が小さく、空間V2ではグリースGが弾性シール81側に押し出され、リップ83とシール溝85との摺接面から外部に漏洩する虞が大きかった。一方、空間V1は空間V2に比べて容積が大きくグリースGの外部への漏洩が起こり難いため、空間V1に対応する面を気体側に向けて密封玉軸受9を組み込むようにしていた。
【0005】
ところが、上述した密封玉軸受9では、グリースGの封入量が多すぎた場合を始め、外部から水や油が侵入した場合や、振動が大きい場合、温度が高い場合等には、空間V1側からも少量のグリースGが外部に漏洩する虞があった。燃料電池用の空気圧縮機においては、軸受から漏洩したグリースが空気に混入して燃料電池セルを汚損すると、それが極く少量であっても燃料電池の効率低下がもたらされる。このような事態を防ぐべく、弾性シールの材質・形状や封入するグリースの選定に意が払われてきたが、グリースの漏洩を完全に防止することができなかった。一方、空間V1,V2の容積を拡大するべく、軸受幅を拡張することも考慮されたが、この場合には内輪や外輪に汎用品が使用できなくなる他、装置の大型化や重量増加も避けられなくなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、軸受幅の拡大等を行うことなく、軸受からのグリース漏洩を効果的に防止した転がり軸受とこの転がり軸受を用いた圧縮機や送風機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、外周側に内軌道面を有する内輪と、内周側に外軌道面を有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装され、前記内軌道面と前記外軌道面とに転接する多数の転動体と、これら転動体の保持に供され、一方の側面に当該転動体が嵌入するポケットを形成する複数の保持爪が突設され、他方の側面に当該複数の保持爪を連結する連結環が設けられた合成樹脂製の冠型保持器と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器のポケット側の密封に供される第1シールと、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器の連結環側の密封に供される第2シールとを備えた密封玉軸受において、前記第1シールが、前記内輪に固着され、当該内輪に嵌合する筒部と当該筒部の側端から外径方向に延設された環状部とを有するスリンガーと、前記外輪に固着され、当該スリンガーに摺接するリップを有する弾性シールとを構成要素とするものを提案する。
【0008】
また、請求項2の発明では、請求項1の密封玉軸受において、前記弾性シールが、前記スリンガーの筒部に摺接するリップと、前記スリンガーの環状部に摺接するリップとを有するものを提案する。
【0009】
また、請求項3の発明では、請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられた圧縮機を提案する。
【0010】
また、請求項4の発明では、請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられた送風機を提案する。
【0011】
本発明の密封玉軸受によれば、弾性シールのリップとスリンガーとの摺接によりグリースの漏洩が起こり難くなると共に、弾性シールとスリンガーの環状部とにより形成されたラビリンスにより外部から軸受へ異物が侵入し難くなる。また、弾性シールにスリンガーの環状部に摺接するリップが設けられたものでは、異物の侵入防止効果が更に高まる。また、これらの密封玉軸受を用いた圧縮機や送風機にあっては、グリースの漏洩に起因する装置の汚損等が起こり難くなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る空気圧縮機の要部縦断面図であり、図2は同密封玉軸受の要部縦断面図である。空気圧縮機(以下、単に圧縮機と記す)1は、燃料電池の酸素(空気)供給に供される同軸タービン駆動(あるいは、電動)の遠心式であり、インペラハウジング3と、回転軸5の端部に固着されたインペラ7と、回転軸5を回動自在に支持する密封玉軸受9とを有している。
【0013】
第1実施形態の圧縮機1では、インペラハウジング3の吸入ポート11から取り込まれた空気(酸素および窒素)と水蒸気との混合流体が、吐出ポート13から燃料電池セル(図示せず)側に圧送される。尚、燃料電池では、燃料電池セル内での反応速度を高めるべく、圧縮機1や混合流体が所定温度以上に昇温されている。尚、本実施形態の圧縮機1は、低中荷重下で比較的低中速で運転される。
【0014】
図2に示したように、密封玉軸受9は、内輪21の外軌道面23と外輪25の内軌道面27とに転動体たる多数個の鋼球29を転接させたもので、鋼球29を所定の間隔に保持する冠型保持器31と、第1,第2シール33,35とを備えている。図2中、符号V1,V2は第1,第2シール33,35の内側の空間をそれぞれ示し、符号Gは封入されたグリースを示している。
【0015】
冠型保持器31は、図3に縦断面を示したように、一方の側面に鋼球29が嵌入するポケット41を形成する複数の保持爪43が突設され、他方の側面に各保持爪43を連結する連結環45が設けられている。
【0016】
本実施形態の場合、混合流体に対応する空間V1(冠型保持器31のポケット41)側に第1シール33が装着され、空間V2(冠型保持器31の連結環45)側に第2シール35が装着されている。第1シール33は、外輪25の端部に固着された弾性シール51と、内輪21の端部に固着されたスリンガー53とからなっている。また、第2シール35は、前述した従来装置と同様に、単体の弾性シールである。尚、内輪21には、スリンガー53や第2シール35が嵌合あるいは摺接する部位に、段付きのシール面57が形成されている。
【0017】
スリンガー53は、内輪21に嵌合する円筒部61と、円筒部61の端部から外径方向に延設されて第1シール33との間にラビリンス63を形成する環状部65とからなっている。また、弾性シール51は、スリンガー53の円筒部61に摺接する第1,第2リップ71,73と、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップ75とを有している。第1リップ71と第2リップ73とは、鋼球29側とスリンガー53の環状部65とに向けてそれぞれ傾斜している。また、第3リップ75は、外輪25側に向けて傾斜している。
【0018】
以下、第1実施形態の作用を述べる。
燃料電池に電力を発生させるべく圧縮機1が運転を開始すると、回転軸5に駆動されてインペラ7が回転し、吸入ポート11から比較的高温高湿の混合流体がインペラハウジング3内に流入する。これにより、密封玉軸受9からは、保持器31による攪拌に温度上昇や振動も相俟って、グリースGを第1シール33を介して漏洩させる作用が働く。また、インペラハウジング3からは、比較的高温の混合流体を第1シール33を介して密封玉軸受9内に侵入させる作用が働く。
【0019】
ところが、本実施形態の場合、グリースGの漏洩は、鋼球29側に向けて傾斜した第1リップ71が漏洩圧力によってスリンガー53の円筒部61に押し付けられるため、空間V1が空間V2より広いことも相俟って効果的に防止される。また、混合流体の侵入は、スリンガー53の環状部65に向けて傾斜した第2リップ73が混合流体の侵入圧力によってスリンガー53の円筒部61に押し付けられるため、ラビリンス63と第3リップ75の作用も相俟ってやはり効果的に防止される。
【0020】
図4は第2実施形態に係る組軸受の要部縦断面図である。本実施形態の組軸受77は第1実施形態と同一の密封玉軸受9を2個組み合わせたものであり、両密封玉軸受9は第1シール33が外側に位置するように配置されている。本実施形態の組軸受77は、その両側面が流体に接触する場合に採用され、第1実施形態と同様にグリースGの漏洩や流体の侵入が効果的に防止される。尚、第2,第3実施形態においては、図が煩雑になることを避けるべく、符号の表記を一部省略する。
【0021】
図5は第3実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。本実施形態の密封玉軸受9においても、第1実施形態と略同様の構成が取られているが、回転抵抗を低減させるべく、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップが省略されている。第3実施形態の作用および効果は第1実施形態と略同様である。
【0022】
上記各実施形態では、密封玉軸受9や組軸受91からのグリースGの漏洩が効果的に防止されるため、燃料電池セル等の汚損され難くなり、燃料電池の効率低下が長期に亘って抑制されるようになった。
【0023】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態は、本発明を燃料電池の遠心式空気圧縮機用の密封玉軸受に適用したものであるが、化学プラントや産業機械等に用いられる種々の圧縮機や送風機等の軸受に適用してもよい。また、弾性シールやスリンガーの具体的形状等についても、上記実施形態での例示に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、設計上あるいは仕様上の要求等により適宜変更可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の密封玉軸受によれば、外周側に内軌道面を有する内輪と、内周側に外軌道面を有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装され、前記内軌道面と前記外軌道面とに転接する多数の転動体と、これら転動体の保持に供され、一方の側面に当該転動体が嵌入するポケットを形成する複数の保持爪が突設され、他方の側面に当該複数の保持爪を連結する連結環が設けられた合成樹脂製の冠型保持器と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器のポケット側の密封に供される第1シールと、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器の連結環側の密封に供される第2シールとを備えた密封玉軸受において、前記第1シールが、前記内輪に固着され、当該内輪に嵌合する筒部と当該筒部の側端から外径方向に延設された環状部とを有するスリンガーと、前記外輪に固着され、当該スリンガーに摺接するリップを有する弾性シールとを構成要素とするようにしたため、弾性シールのリップとスリンガーとの摺接によりグリースの漏洩が起こり難くなると共に、弾性シールとスリンガーの環状部とにより形成されたラビリンスにより外部から軸受へ異物が侵入し難くなる。また、弾性シールにスリンガーの環状部に摺接するリップが設けられたものでは、異物の侵入防止効果が更に高まる。また、これらの密封玉軸受を用いた圧縮機や送風機にあっては、グリースの漏洩に起因する装置の汚損等が起こり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気圧縮機の要部縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る冠型保持器の縦断面図である。
【図4】第2実施形態に係る組軸受の要部縦断面図である。
【図5】第3実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。
【図6】従来のグリース封入式密封玉軸受の要部縦断面図である。
【符号の説明】
1‥‥空気圧縮機
3‥‥インペラハウジング
5‥‥回転軸
7‥‥インペラ
9‥‥密封玉軸受
21‥‥内輪
23‥‥外軌道面
25‥‥外輪
27‥‥内軌道面
29‥‥鋼球
31‥‥冠型保持器
33‥‥第1シール33
35‥‥第1シール35
41‥‥ポケット
43‥‥爪
45‥‥連結環
51‥‥弾性シール
53‥‥スリンガー
61‥‥円筒部
63‥‥ラビリンス
65‥‥環状部
71‥‥第1リップ
73‥‥第2リップ
75‥‥第3リップ
77‥‥組軸受
V1,V2‥‥空間
G‥‥グリース
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封玉軸受および圧縮機、送風機に係り、詳しくは軸受幅の拡大等を行うことなく、軸受からのグリース漏洩を効果的に防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池や化学プラント、産業機械等では、圧縮性流体の圧縮や送風に多様の圧縮機や送風機が用いられており、その回転軸は深溝玉軸受等の転がり軸受により支持されることが多い。そして、転がり軸受としては、組立性やメンテナンス性等に優れることから、図6に示したような密封玉軸受が一般的に用いられている。
【0003】
図6の密封玉軸受9は、内輪21と外輪25との間に転動体として複数個の鋼球29を介装させると共に、各鋼球29を所定の角度間隔で保持する合成樹脂製の冠型保持器31を有している。外輪25の両端部にはそれぞれ弾性シール81が固着されており、これら弾性シール81のリップ83が内輪21の両端部に形成されたシール溝85に摺接している。図6中、符号V1,V2は弾性シール81の内側の空間をそれぞれ示し、符号Gは封入されたグリースを示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した密封玉軸受9では、圧縮機や送風機の運転に伴い、回転軸に固着された内輪21が回転すると、鋼球29や冠型保持器31も同時に回転してグリースGが攪拌される。この際、弾性シール81の内側では、一方(冠型保持器31のポケット側)の空間V1の容積より他方(冠型保持器31の連結環側)の空間V2の容積が小さく、空間V2ではグリースGが弾性シール81側に押し出され、リップ83とシール溝85との摺接面から外部に漏洩する虞が大きかった。一方、空間V1は空間V2に比べて容積が大きくグリースGの外部への漏洩が起こり難いため、空間V1に対応する面を気体側に向けて密封玉軸受9を組み込むようにしていた。
【0005】
ところが、上述した密封玉軸受9では、グリースGの封入量が多すぎた場合を始め、外部から水や油が侵入した場合や、振動が大きい場合、温度が高い場合等には、空間V1側からも少量のグリースGが外部に漏洩する虞があった。燃料電池用の空気圧縮機においては、軸受から漏洩したグリースが空気に混入して燃料電池セルを汚損すると、それが極く少量であっても燃料電池の効率低下がもたらされる。このような事態を防ぐべく、弾性シールの材質・形状や封入するグリースの選定に意が払われてきたが、グリースの漏洩を完全に防止することができなかった。一方、空間V1,V2の容積を拡大するべく、軸受幅を拡張することも考慮されたが、この場合には内輪や外輪に汎用品が使用できなくなる他、装置の大型化や重量増加も避けられなくなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、軸受幅の拡大等を行うことなく、軸受からのグリース漏洩を効果的に防止した転がり軸受とこの転がり軸受を用いた圧縮機や送風機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、外周側に内軌道面を有する内輪と、内周側に外軌道面を有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装され、前記内軌道面と前記外軌道面とに転接する多数の転動体と、これら転動体の保持に供され、一方の側面に当該転動体が嵌入するポケットを形成する複数の保持爪が突設され、他方の側面に当該複数の保持爪を連結する連結環が設けられた合成樹脂製の冠型保持器と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器のポケット側の密封に供される第1シールと、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器の連結環側の密封に供される第2シールとを備えた密封玉軸受において、前記第1シールが、前記内輪に固着され、当該内輪に嵌合する筒部と当該筒部の側端から外径方向に延設された環状部とを有するスリンガーと、前記外輪に固着され、当該スリンガーに摺接するリップを有する弾性シールとを構成要素とするものを提案する。
【0008】
また、請求項2の発明では、請求項1の密封玉軸受において、前記弾性シールが、前記スリンガーの筒部に摺接するリップと、前記スリンガーの環状部に摺接するリップとを有するものを提案する。
【0009】
また、請求項3の発明では、請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられた圧縮機を提案する。
【0010】
また、請求項4の発明では、請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられた送風機を提案する。
【0011】
本発明の密封玉軸受によれば、弾性シールのリップとスリンガーとの摺接によりグリースの漏洩が起こり難くなると共に、弾性シールとスリンガーの環状部とにより形成されたラビリンスにより外部から軸受へ異物が侵入し難くなる。また、弾性シールにスリンガーの環状部に摺接するリップが設けられたものでは、異物の侵入防止効果が更に高まる。また、これらの密封玉軸受を用いた圧縮機や送風機にあっては、グリースの漏洩に起因する装置の汚損等が起こり難くなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る空気圧縮機の要部縦断面図であり、図2は同密封玉軸受の要部縦断面図である。空気圧縮機(以下、単に圧縮機と記す)1は、燃料電池の酸素(空気)供給に供される同軸タービン駆動(あるいは、電動)の遠心式であり、インペラハウジング3と、回転軸5の端部に固着されたインペラ7と、回転軸5を回動自在に支持する密封玉軸受9とを有している。
【0013】
第1実施形態の圧縮機1では、インペラハウジング3の吸入ポート11から取り込まれた空気(酸素および窒素)と水蒸気との混合流体が、吐出ポート13から燃料電池セル(図示せず)側に圧送される。尚、燃料電池では、燃料電池セル内での反応速度を高めるべく、圧縮機1や混合流体が所定温度以上に昇温されている。尚、本実施形態の圧縮機1は、低中荷重下で比較的低中速で運転される。
【0014】
図2に示したように、密封玉軸受9は、内輪21の外軌道面23と外輪25の内軌道面27とに転動体たる多数個の鋼球29を転接させたもので、鋼球29を所定の間隔に保持する冠型保持器31と、第1,第2シール33,35とを備えている。図2中、符号V1,V2は第1,第2シール33,35の内側の空間をそれぞれ示し、符号Gは封入されたグリースを示している。
【0015】
冠型保持器31は、図3に縦断面を示したように、一方の側面に鋼球29が嵌入するポケット41を形成する複数の保持爪43が突設され、他方の側面に各保持爪43を連結する連結環45が設けられている。
【0016】
本実施形態の場合、混合流体に対応する空間V1(冠型保持器31のポケット41)側に第1シール33が装着され、空間V2(冠型保持器31の連結環45)側に第2シール35が装着されている。第1シール33は、外輪25の端部に固着された弾性シール51と、内輪21の端部に固着されたスリンガー53とからなっている。また、第2シール35は、前述した従来装置と同様に、単体の弾性シールである。尚、内輪21には、スリンガー53や第2シール35が嵌合あるいは摺接する部位に、段付きのシール面57が形成されている。
【0017】
スリンガー53は、内輪21に嵌合する円筒部61と、円筒部61の端部から外径方向に延設されて第1シール33との間にラビリンス63を形成する環状部65とからなっている。また、弾性シール51は、スリンガー53の円筒部61に摺接する第1,第2リップ71,73と、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップ75とを有している。第1リップ71と第2リップ73とは、鋼球29側とスリンガー53の環状部65とに向けてそれぞれ傾斜している。また、第3リップ75は、外輪25側に向けて傾斜している。
【0018】
以下、第1実施形態の作用を述べる。
燃料電池に電力を発生させるべく圧縮機1が運転を開始すると、回転軸5に駆動されてインペラ7が回転し、吸入ポート11から比較的高温高湿の混合流体がインペラハウジング3内に流入する。これにより、密封玉軸受9からは、保持器31による攪拌に温度上昇や振動も相俟って、グリースGを第1シール33を介して漏洩させる作用が働く。また、インペラハウジング3からは、比較的高温の混合流体を第1シール33を介して密封玉軸受9内に侵入させる作用が働く。
【0019】
ところが、本実施形態の場合、グリースGの漏洩は、鋼球29側に向けて傾斜した第1リップ71が漏洩圧力によってスリンガー53の円筒部61に押し付けられるため、空間V1が空間V2より広いことも相俟って効果的に防止される。また、混合流体の侵入は、スリンガー53の環状部65に向けて傾斜した第2リップ73が混合流体の侵入圧力によってスリンガー53の円筒部61に押し付けられるため、ラビリンス63と第3リップ75の作用も相俟ってやはり効果的に防止される。
【0020】
図4は第2実施形態に係る組軸受の要部縦断面図である。本実施形態の組軸受77は第1実施形態と同一の密封玉軸受9を2個組み合わせたものであり、両密封玉軸受9は第1シール33が外側に位置するように配置されている。本実施形態の組軸受77は、その両側面が流体に接触する場合に採用され、第1実施形態と同様にグリースGの漏洩や流体の侵入が効果的に防止される。尚、第2,第3実施形態においては、図が煩雑になることを避けるべく、符号の表記を一部省略する。
【0021】
図5は第3実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。本実施形態の密封玉軸受9においても、第1実施形態と略同様の構成が取られているが、回転抵抗を低減させるべく、スリンガー53の環状部65に摺接する第3リップが省略されている。第3実施形態の作用および効果は第1実施形態と略同様である。
【0022】
上記各実施形態では、密封玉軸受9や組軸受91からのグリースGの漏洩が効果的に防止されるため、燃料電池セル等の汚損され難くなり、燃料電池の効率低下が長期に亘って抑制されるようになった。
【0023】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態は、本発明を燃料電池の遠心式空気圧縮機用の密封玉軸受に適用したものであるが、化学プラントや産業機械等に用いられる種々の圧縮機や送風機等の軸受に適用してもよい。また、弾性シールやスリンガーの具体的形状等についても、上記実施形態での例示に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、設計上あるいは仕様上の要求等により適宜変更可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の密封玉軸受によれば、外周側に内軌道面を有する内輪と、内周側に外軌道面を有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介装され、前記内軌道面と前記外軌道面とに転接する多数の転動体と、これら転動体の保持に供され、一方の側面に当該転動体が嵌入するポケットを形成する複数の保持爪が突設され、他方の側面に当該複数の保持爪を連結する連結環が設けられた合成樹脂製の冠型保持器と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器のポケット側の密封に供される第1シールと、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器の連結環側の密封に供される第2シールとを備えた密封玉軸受において、前記第1シールが、前記内輪に固着され、当該内輪に嵌合する筒部と当該筒部の側端から外径方向に延設された環状部とを有するスリンガーと、前記外輪に固着され、当該スリンガーに摺接するリップを有する弾性シールとを構成要素とするようにしたため、弾性シールのリップとスリンガーとの摺接によりグリースの漏洩が起こり難くなると共に、弾性シールとスリンガーの環状部とにより形成されたラビリンスにより外部から軸受へ異物が侵入し難くなる。また、弾性シールにスリンガーの環状部に摺接するリップが設けられたものでは、異物の侵入防止効果が更に高まる。また、これらの密封玉軸受を用いた圧縮機や送風機にあっては、グリースの漏洩に起因する装置の汚損等が起こり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気圧縮機の要部縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る冠型保持器の縦断面図である。
【図4】第2実施形態に係る組軸受の要部縦断面図である。
【図5】第3実施形態に係る密封玉軸受の要部縦断面図である。
【図6】従来のグリース封入式密封玉軸受の要部縦断面図である。
【符号の説明】
1‥‥空気圧縮機
3‥‥インペラハウジング
5‥‥回転軸
7‥‥インペラ
9‥‥密封玉軸受
21‥‥内輪
23‥‥外軌道面
25‥‥外輪
27‥‥内軌道面
29‥‥鋼球
31‥‥冠型保持器
33‥‥第1シール33
35‥‥第1シール35
41‥‥ポケット
43‥‥爪
45‥‥連結環
51‥‥弾性シール
53‥‥スリンガー
61‥‥円筒部
63‥‥ラビリンス
65‥‥環状部
71‥‥第1リップ
73‥‥第2リップ
75‥‥第3リップ
77‥‥組軸受
V1,V2‥‥空間
G‥‥グリース
Claims (4)
- 外周側に内軌道面を有する内輪と、
内周側に外軌道面を有する外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に介装され、前記内軌道面と前記外軌道面とに転接する多数の転動体と、
これら転動体の保持に供され、一方の側面に当該転動体が嵌入するポケットを形成する複数の保持爪が突設され、他方の側面に当該複数の保持爪を連結する連結環が設けられた合成樹脂製の冠型保持器と、
前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器のポケット側の密封に供される第1シールと、
前記内輪と前記外輪との間に設けられ、当該冠型保持器の連結環側の密封に供される第2シールと
を備えた密封玉軸受において、
前記第1シールが、
前記内輪に固着され、当該内輪に嵌合する筒部と当該筒部の側端から外径方向に延設された環状部とを有するスリンガーと、
前記外輪に固着され、当該スリンガーに摺接するリップを有する弾性シールとを構成要素とすることを特徴とする密封玉軸受。 - 前記弾性シールが、前記スリンガーの筒部に摺接するリップと、前記スリンガーの環状部に摺接するリップとを有することを特徴とする、請求項1記載の密封玉軸受。
- 請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられたことを特徴とする圧縮機。
- 請求項1または2記載の密封玉軸受が用いられたことを特徴とする送風機。
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2003
- 2003-02-03 JP JP2003026231A patent/JP2004239293A/ja not_active Withdrawn
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