JP2004238264A - 金属化層を有するセラミックス焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ビア部を形成したセラミックス基板において、ビアやビア周辺のセラミックスにクラックが発生することのないセラミックス焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス粉末を主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に金属粉末と溶剤を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有するセラミックス焼結体を製造する方法において、スルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行い、該ペースト転写防止シートの吸水率が1%以下であることを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法並びに得られた焼結体の表面を研削又は研磨したセラミックス焼結体である。
【選択図】 なし
【解決手段】セラミックス粉末を主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に金属粉末と溶剤を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有するセラミックス焼結体を製造する方法において、スルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行い、該ペースト転写防止シートの吸水率が1%以下であることを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法並びに得られた焼結体の表面を研削又は研磨したセラミックス焼結体である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体やIC用の基板、パッケージとして有用な、金属化層を有するセラミックス焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からアルミナ焼結体やガラスセラミックス等を用いたIC用の基板、パッケージ等が用いられてきた。これらは一般的にセラミックス粉末からドクターブレード等で作製したグリーンシート上に、WやCu等の金属粉末を用いたペーストを塗布し配線パターンを形成し、同時焼成することによって作製される。これらのセラミックスは通常セラミックスと金属の焼結温度が近い材料を選択しており、良好な焼結体を得ている。
【0003】
一方、最近これらの材料以外の高機能セラミックスを用いたセラミックス基板やパッケージへの要求が高まっている。例えば、高熱伝導率を有する窒化アルミニウムは、放熱性に優れ、電気絶縁性や機械的強度がともに優れているため、発熱量の大きな半導体やICを有する基板、パッケージ材料として期待されている。同時焼成する金属材料としてはWが用いられるが、窒化アルミニウムの焼結温度が2000℃程度と高く、1500℃程度で焼結されるWと大きく焼結温度が異なる。このようにセラミックスと金属の焼結温度が大きく異なる材料を同時焼結した場合、金属化層にクラックが生じたり、金属化層がセラミックスから剥がれたりしやすい。特に、多層構造の基板やパッケージにおいて、層間の導通を確保するための導通孔(ビア)に、これらの不良が発生しやすい。
【0004】
これに対しては、従来セラミックスと金属の焼結温度を近づけるために、金属中にセラミックスを分散させることが行われてきた。例えば窒化アルミニウムに関して、特許文献1では、金属化層をW、Mo及びこれらの硼化物、炭化物から選ばれた1種または2種の100重量部と、窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウム基材と同成分の0.1〜50重量部とからなるように構成することにより、接合強度を高められるとある。また、特許文献2では金属化層を平均粒径1.0乃至1.5μmのW粉末に窒化アルミニウム質焼結体と実質的に同一組成からなる無機物を3.0乃至10.0重量%含有した構成とすることにより、接合強度を高められるとある。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−291480号公報
【特許文献2】
特開平4−83783号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来取られていた方策を用いても、ビア部の欠陥を完全には避けることができないと言う問題が発生した。すなわち、多層構造の基板やパッケージとして、窒化アルミニウムのような高機能セラミックスを用いた場合、ビア周辺の研磨等を行った後に、観察を行った場合、ビアにクラックが生じているという問題が発生した。これらのクラックは研磨等を行わない限りは表面上に現れないが、実使用やそれを模擬した信頼性試験によって、クラックが進展する可能性があり、製品として使用することができない。
【0007】
また、ビアを形成した基板や、これを多層化した多層基板の表面を研削または研磨した後に、その表面に厚膜や薄膜にて回路形成や抵抗形成し、基板、パッケージとして用いることも多いが、この場合は、研削または研磨によってビアにクラックが露出するため、製品として使用できない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ビア部のクラックを防ぐことができる、金属化層を有するセラミックス焼結体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属化層を有するセラミックス焼結体、およびその製造方法は、以下のとおりである。
(1)セラミックス粉末を主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に金属粉末と溶剤を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有するセラミックス焼結体を製造する方法において、スルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行う方法であって、該ペースト転写防止シートの吸水率が1%以下であることを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
【0010】
(2)前記ペースト転写防止シートの吸水率が0.1%以下であることを特徴とする(1)記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(3)前記ペースト転写防止シートがポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンのいずれかであることを特徴とする(1)または(2)記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(4)前記セラミックスが窒化アルミニウムであり、金属粉末がタングステン(W)であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の製造方法で作製した金属化層を有するセラミックス焼結体の表面を研削または研磨したことを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるセラミックス材料としては、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸バリウム等が挙げられる。以下に、セラミックス材料として窒化アルミニウムを取り上げ、詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いる窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウムを主成分に、焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物を0.1〜10wt%程度添加したものである。成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合し、造粒後プレス等で成形を行っても良いし、混合後、ドクターブレード法でグリーンシートを作製しても良い。また、押し出し法等も適用することができる。ただし、スルーホールやビアを形成する場合は、グリーンシートを用いて、窒化アルミニウムとビアを同時に焼結する同時焼成を行うのが一般的である。多層構造とする際も、グリーンシートを用いることが多く、焼結前に積層し同時焼成する必要がある。
【0013】
以下に、主にグリーンシートを用いた同時焼成の作製方法について説明する。グリーンシートには必要に応じて、パンチ等を用いてスルーホールを形成する。このスルーホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用することができる。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用することができる。
【0014】
ビア充填、回路印刷に用いるペーストは、金属粉末、樹脂結合剤、溶剤からなる。また、必要に応じて窒化アルミニウムとの接着増強用の無機物を混合しても良い。本発明では前記金属粉末としてWを用いることが好ましい。グリーンシートは窒化アルミニウムと導体組成を同時に焼結する必要があるが、窒化アルミニウムとWは焼結温度を近くすることができ、さらに熱膨張率も近いため、金属粉末としてWを用いることが好ましいのである。
【0015】
また、ペースト中の樹脂結合剤は、通常、W粉末や無機物粉末等の粉末の合計を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。混合方法であるが、まず粉末と溶剤だけをポットミルやボールミル、ライカイ機等を用いて混合する。その後、三本ロール等を用いて樹脂結合剤を混合する。
【0016】
また、用いるW粉末であるが、窒化アルミニウムとWの焼結温度を近づけるためには、W粉末の平均粒径を1μm以上、5μm以下にすることが好ましい。W粒径を数種類混合して用いることも多いが、その場合、1μm以上、5μm以下の平均粒径のWを50wt%以上用いることが好ましい。W粉末の平均粒径が1μmより小さくなると、Wの焼結開始温度が窒化アルミニウムの焼結温度に比べて低くなりすぎるため、Wや窒化アルミニウムとWの界面にクラックが生じやすくなる。一方、W粉末の平均粒径が5μmより大きくなると、Wの焼結性が著しく悪化し、窒化アルミニウムの焼結温度でWの焼結が充分に行われないため、好ましくない。
【0017】
また、スルーホールにペーストを充填する際には、スクリーン印刷を用いることを例に取ると、グリーンシートのペーストを充填する面とは逆の面にペーストがスクリーン印刷機に転写されるのを防止する、ペースト転写防止シートを載置する。このペースト転写防止シートが無ければ、スルーホールを充填したペーストはグリーンシートを突き抜けて、スクリーン印刷機のグリーンシートを載置している台座まで達するため、スクリーン印刷機が汚れてしまう。ペースト転写防止シートはスクリーン印刷機のグリーンシートを載置している台座とグリーンシート間に載置するため、スクリーン印刷機の汚れを防止することができる。このペースト転写防止シートはスルーホールにペーストを充填した後は、グリーンシートから剥がす。
【0018】
このようにスルーホールにWペーストを充填した後、必要に応じてグリーンシートを積層する。積層はシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50℃〜80℃程度に熱しながら、5MPa〜10MPa程度の圧力を10分〜20分程度かけることにより、熱圧着する。シート間には必要に応じて溶剤や接着剤を塗布してもよい。
【0019】
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、窒化アルミニウムのグリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの媒体を除去するために、例えば300℃〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。
【0020】
焼結は非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1600℃〜2000℃であり、焼結時間は1時間〜5時間程度に設定される。
【0021】
このように焼結された窒化アルミニウム焼結体は、次に必要に応じて基板表面の研削または研磨加工を行う。研削または研磨の方法は公知の技術を適宜用いることができる。通常は、ラッピング、ポリッシング、バレル研磨、サンドブラスト、研削盤等による方法が用いられる。基板の表面粗さは目的により異なるが、特に研磨後薄膜法でパターンを形成する場合は、中心線平均粗さ(Ra)0.8μm以下、より好ましくは、0.05μm以下にすることにより、薄膜法による金属化層と窒化アルミニウムの密着強度を高めることができるため好ましい。
【0022】
このように窒化アルミニウム焼結体表面を研削または研磨した後に、必要に応じて厚膜法や薄膜法で導電パターンを形成する。導電パターンの形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、化学的気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング法、溶射法、スクリーン印刷法等の公知の技術を用いることができる。これらの中で、薄膜法を用いた場合、導電パターンのパターニング方法としては、パターン形状によって公知の技術を使い分けることができる。例えば、メタルマスク法、湿式エッチング法、ドライエッチング法、リフトオフ法等を用いることができる。
【0023】
また、導電パターンを形成する構成金属としては、Ti、Cr、Mo、W、Al、Ta、Ni−Cr等の公知のものを用いることができる。また、これらの金属は単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。さらに単層で導電パターンを形成しても良いし、2層以上を積層して用いても良い。
【0024】
スパッタリング法や蒸着法等の薄膜法を用いるときは、3層程度を積層して用いることが多い。窒化アルミニウムと接する第一層には、上述のような公知の金属を用いることができるが、高い密着強度を安定して得ることができるTiを用いることが多い。また、第一層の上に積層する第二層にも公知の金属を用いることができるが、3層以上の導電パターンとして用いる時には、第一層と第三層との間で元素が拡散するのを防止するために、Pt、Ni、Mo、W、Pd等を用いることが多い。さらに、第二層上に第三層を積層する場合も公知の金属を用いることができるが、Pt、Au等が電気伝導性が良好で、耐食性にも優れているため用いることが多い。また、これら薄膜法で3層程度の積層導電パターンを形成した後に、さらにメッキ法等でNi、Au等の導電パターンを積層することもある。
【0025】
また、前記の導電パターンのあるパターン間を一定の抵抗値に保つために、ある規定の抵抗値で電気的に接続する抵抗体パターンを形成しても良い。抵抗体パターンの形成方法は前記薄膜法の形成方法等を用いることができる。抵抗体パターンの種類については、公知のものを用いることができるが、抵抗値の安定性の観点からTa−N、Ni−Cr等を用いることが多い。
【0026】
この抵抗体パターンは、抵抗値の経時変化や温度変化を抑制するために、抵抗体表面に酸化皮膜を形成することが多い。これには公知の方法を用いることができるが、陽極酸化法等を用いることが多い。さらに、抵抗値の調整を行うことがある。これにも公知の方法を用いることができるが、レーザートリミング法等を用いることが多い。
【0027】
以上のような工程で窒化アルミニウム焼結体を用いた基板や多層基板、パッケージが作製されるが、ビアクラックが、どの工程で生じているかを調査した結果、クラックはスルーホールにペーストを充填した後に、その芽が生じており、焼結によってクラックが大きく成長することも判った。これは、特に窒化アルミニウム等の高機能セラミックスに顕著に認められる。これらのセラミックスは1800℃〜2000℃といった高温で焼結される。一方、これらのセラミックスの回路材料として用いられる高融点金属のWは1400℃〜1500℃で焼結が開始されるため、二つの材料の焼結温度が大きく異なる。このような材料を同時焼成すると、まず、Wから収縮を開始するため、スルーホールでも充填されたWがまず収縮を開始する。しかし、セラミックスは収縮を開始しないため、スルーホールの外径は小さくならず、Wは外側を拘束されたまま収縮することになる。そのため、スルーホールにペースト充填した際に生じた、クラックの芽が大きくなりやすい。
【0028】
また、窒化アルミニウム等の高機能セラミックスでは焼結時に生成する液相量が、一般的なアルミナ等に比べると極端に少ない場合が多い。アルミナであれば、上述したような焼結中のクラックの成長は、元々二つの焼結温度がほぼ等しいため生じにくいが、もし生じたとしても焼結中に生じる液相がクラックに流れ込んで、クラックを埋めるため、焼結後クラックが生じることが少ない。しかしながら、液相量が少なければ、このような現象は生じることはないため、液相量が少ない窒化アルミニウム等の高機能セラミックスにはクラックが生じやすいのである。
【0029】
このように、ビアやビア周辺のクラックを無くすには、スルーホールにペーストを充填した時点で、その芽を無くす必要があるが、さらに詳細にクラックの芽がどこの工程で生じているかを調査した。その結果、スルーホールにペースト充填した直後に既に芽が生じることを突き止めた。スクリーン印刷機等でスルーホールにペーストを充填した後、グリーンシートをペースト転写防止シートから剥がすが、その時ペースト転写防止シートにスルーホールに充填したペーストの一部が付着する。その付着量が多く、ビアクラックの芽となっていることを突き止めたのである。
【0030】
ビアクラックを防止するには、ペースト転写防止シートへのペースト付着量を少なくする必要がある。そのための手法を検討した結果、ペースト転写防止シートの吸水率が大きく関係することが判った。一般的に、ペースト転写防止シートには紙が用いられるが、紙は吸水性が高いため、スルーホールにペーストを充填し、スルーホールを突き抜けたペーストがペースト転写防止シートに達すると、ペーストの溶剤を吸い込む。そのため、スルーホールに充填されたペースト転写防止シート付近のペーストは乾燥が早く進むのに対して、その他の部分はほとんど乾燥していないことになる。このような状態で、グリーンシートからペースト転写防止用のシートを剥がした場合、スルーホール中のペーストの乾燥が進んだ部分だけが脱落しやすいため、この部分がペースト転写防止用のシートに付着してしまう。これがビアクラックの芽となるのである。
【0031】
このように、ビアクラックを防止するには、スルーホールにペーストを充填してから、ペースト転写防止シートをグリーンシートから剥がすまでの間、スルーホール中のペーストの乾燥を防止する必要がある。そのためには、紙と言った吸水性の高いものではなく、吸水率の低いものを用いる必要がある。
【0032】
ペースト転写防止シートの吸水率を種々検討した結果、吸水率を1%以下にする必要があることが判った。紙の吸水率は種類によっても異なるが、通常100%以上、最低でも10%以上である。ここでの吸水率はJIS K6911に準拠して測定した値である。ペースト転写防止シートの吸水率が1%より大きければ、上述のようなスルーホール中のペーストの乾燥を避けることができない。
【0033】
さらに、ペースト転写防止シートの吸水率は0.1%以下であることが、さらに好ましい。これによって、ビアクラックの発生確率をさらに低めることができる。このような吸水率を満たす材料としては、ポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレン等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料をペースト転写防止シートとして用いることによって、ビアクラックの発生を有効に押さえることができる。
【0034】
また、ペースト転写防止シートは、スクリーン印刷機等に固定して用いても、固定しなくても構わない。固定して用いる方法としては、例えばポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレン等の片面に接着剤を塗布したようなテープ材料を適当な大きさに切断して、スクリーン印刷機に貼り付けて使用する方法が考えられる。スルーホールにペーストを充填すると、ペースト転写防止シートはペーストで汚れるが、この方法の場合は、ペーストを充填する度に、布等で付着したペーストの汚れを拭き取る必要がある。ペースト転写防止シートには吸水性がほとんど無いので、付着した汚れは簡単に落とすことができる。
【0035】
スクリーン印刷機等に固定して用いない方法は、例えば、ペースト転写防止シートをグリーンシートより一回り小さく切断しておき、スルーホールにペースト充填する際に、グリーンシートとスクリーン印刷機の間に挟み込む方法が挙げられる。この時、ペースト転写防止シートはグリーンシートより小さく、グリーンシートに形成されたスルーホールが存在する範囲よりは大きい必要がある。また、この方法では、多数のペースト転写防止シートを用意しておき、スルーホールにペースト充填する度に、新しいペースト転写防止シートを使用するという手法を用いることができる。
【0036】
以上のような方法で、スルーホールにペーストを充填する際に、ペースト転写防止シートの吸水率を低くすることによって、ビアクラックを防ぐことができ、基板や多層基板、パッケージの信頼性試験や実使用時に発生する不良や、表面を研削または研磨した後のビアクラック不良を防ぐことができる。
【0037】
前記のごとく、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム等のセラミックス基板は、基板や多層基板、パッケージのビアクラックを防ぐことができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜2
97重量部の窒化アルミニウム粉末と3重量部のY2O3粉末を混合し、ポリビニルブチラールを樹脂結合剤、ジブチルフタレートを可塑剤として、それぞれ10重量部、5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。これを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜いた後、パンチャーにてφ0.25mmのスルーホールを形成した。なお、一枚のグリーンシートにスルーホールを1000個形成した。
【0039】
このスルーホールにWペーストを充填した。平均粒径が2.0μmのW粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、溶媒として5重量部のブチルカルビトールを用いてペーストを作製した。混合にはポットミルと三本ロールを用いた。その後、ペーストをスクリーン印刷機にてスルーホールに充填した。
【0040】
スクリーン印刷機によりペースト充填を行う際に、グリーンシートをスクリーンシート機に設置する台座とグリーンシート間に様々なペースト転写防止シートを挟み込んだ。ペースト転写防止シートの大きさは90mm×90mmとし、グリーンシートのスルーホールが形成されているエリアの大きさよりは大きかった。また、ペースト転写防止シートとしては、硫酸紙(吸水率>1%)、ポリプロピレン(吸水率<0.1%、3mm、24h、測定はJIS K6911に準拠)、ポリスチレン(吸水率<0.1%、3mm、24h)、ポリエチレン(吸水率<0.1%、3mm、24h)、ポリエステル(吸水率=0.5%、3mm、24h)、ナイロン(吸水率=2%、3mm、24h)を用いた。
【0041】
次に、印刷後のシートを2枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを2枚重ねてセットし、プレス機にて50℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。
【0042】
その後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行った。
【0043】
焼結後、ビア部分にはφ0.2mmのスルーホールに金属化層が形成されていた。次に、ビア部分にクラックや空孔が発生していないかを確認するために、焼結した窒化アルミニウム基板表面を両面から0.3mm程度研磨し、電子顕微鏡にてクラックや空孔の有無を1000倍にて確認した。これらの評価結果をペースト転写防止シート材質とともに表1に示す。なお、同じ条件で作製した基板を10枚用意しており、表中の「クラックが生じた基板の発生確率」は、1枚の基板中にある1000個のビアに1つでもクラックが生じていた基板の発生確率を示している。
【0044】
【表1】
【0045】
ペースト転写防止シートの吸水率を1%以下(実施例1〜4)にすることによって、ビアクラックの発生確率を大きく低下させることができるのが判る。特に吸水率が0.1%以下のシート(実施例1〜3)では、ビアクラックは全く発生しなかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックスグリーンシートのスルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行い、該ペースト転写防止シートの吸水率を1%以下、さらに好ましくは0.1%とすることで、基板や多層基板、パッケージのビアクラック、研削または研磨後のビアやビアクラックやを防ぐことができる。このため、本セラミックス焼結体はIC用の基板、パッケージとして好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体やIC用の基板、パッケージとして有用な、金属化層を有するセラミックス焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からアルミナ焼結体やガラスセラミックス等を用いたIC用の基板、パッケージ等が用いられてきた。これらは一般的にセラミックス粉末からドクターブレード等で作製したグリーンシート上に、WやCu等の金属粉末を用いたペーストを塗布し配線パターンを形成し、同時焼成することによって作製される。これらのセラミックスは通常セラミックスと金属の焼結温度が近い材料を選択しており、良好な焼結体を得ている。
【0003】
一方、最近これらの材料以外の高機能セラミックスを用いたセラミックス基板やパッケージへの要求が高まっている。例えば、高熱伝導率を有する窒化アルミニウムは、放熱性に優れ、電気絶縁性や機械的強度がともに優れているため、発熱量の大きな半導体やICを有する基板、パッケージ材料として期待されている。同時焼成する金属材料としてはWが用いられるが、窒化アルミニウムの焼結温度が2000℃程度と高く、1500℃程度で焼結されるWと大きく焼結温度が異なる。このようにセラミックスと金属の焼結温度が大きく異なる材料を同時焼結した場合、金属化層にクラックが生じたり、金属化層がセラミックスから剥がれたりしやすい。特に、多層構造の基板やパッケージにおいて、層間の導通を確保するための導通孔(ビア)に、これらの不良が発生しやすい。
【0004】
これに対しては、従来セラミックスと金属の焼結温度を近づけるために、金属中にセラミックスを分散させることが行われてきた。例えば窒化アルミニウムに関して、特許文献1では、金属化層をW、Mo及びこれらの硼化物、炭化物から選ばれた1種または2種の100重量部と、窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウム基材と同成分の0.1〜50重量部とからなるように構成することにより、接合強度を高められるとある。また、特許文献2では金属化層を平均粒径1.0乃至1.5μmのW粉末に窒化アルミニウム質焼結体と実質的に同一組成からなる無機物を3.0乃至10.0重量%含有した構成とすることにより、接合強度を高められるとある。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−291480号公報
【特許文献2】
特開平4−83783号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来取られていた方策を用いても、ビア部の欠陥を完全には避けることができないと言う問題が発生した。すなわち、多層構造の基板やパッケージとして、窒化アルミニウムのような高機能セラミックスを用いた場合、ビア周辺の研磨等を行った後に、観察を行った場合、ビアにクラックが生じているという問題が発生した。これらのクラックは研磨等を行わない限りは表面上に現れないが、実使用やそれを模擬した信頼性試験によって、クラックが進展する可能性があり、製品として使用することができない。
【0007】
また、ビアを形成した基板や、これを多層化した多層基板の表面を研削または研磨した後に、その表面に厚膜や薄膜にて回路形成や抵抗形成し、基板、パッケージとして用いることも多いが、この場合は、研削または研磨によってビアにクラックが露出するため、製品として使用できない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ビア部のクラックを防ぐことができる、金属化層を有するセラミックス焼結体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属化層を有するセラミックス焼結体、およびその製造方法は、以下のとおりである。
(1)セラミックス粉末を主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に金属粉末と溶剤を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有するセラミックス焼結体を製造する方法において、スルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行う方法であって、該ペースト転写防止シートの吸水率が1%以下であることを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
【0010】
(2)前記ペースト転写防止シートの吸水率が0.1%以下であることを特徴とする(1)記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(3)前記ペースト転写防止シートがポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンのいずれかであることを特徴とする(1)または(2)記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(4)前記セラミックスが窒化アルミニウムであり、金属粉末がタングステン(W)であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の製造方法で作製した金属化層を有するセラミックス焼結体の表面を研削または研磨したことを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるセラミックス材料としては、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸バリウム等が挙げられる。以下に、セラミックス材料として窒化アルミニウムを取り上げ、詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いる窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウムを主成分に、焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物を0.1〜10wt%程度添加したものである。成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合し、造粒後プレス等で成形を行っても良いし、混合後、ドクターブレード法でグリーンシートを作製しても良い。また、押し出し法等も適用することができる。ただし、スルーホールやビアを形成する場合は、グリーンシートを用いて、窒化アルミニウムとビアを同時に焼結する同時焼成を行うのが一般的である。多層構造とする際も、グリーンシートを用いることが多く、焼結前に積層し同時焼成する必要がある。
【0013】
以下に、主にグリーンシートを用いた同時焼成の作製方法について説明する。グリーンシートには必要に応じて、パンチ等を用いてスルーホールを形成する。このスルーホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用することができる。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用することができる。
【0014】
ビア充填、回路印刷に用いるペーストは、金属粉末、樹脂結合剤、溶剤からなる。また、必要に応じて窒化アルミニウムとの接着増強用の無機物を混合しても良い。本発明では前記金属粉末としてWを用いることが好ましい。グリーンシートは窒化アルミニウムと導体組成を同時に焼結する必要があるが、窒化アルミニウムとWは焼結温度を近くすることができ、さらに熱膨張率も近いため、金属粉末としてWを用いることが好ましいのである。
【0015】
また、ペースト中の樹脂結合剤は、通常、W粉末や無機物粉末等の粉末の合計を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。混合方法であるが、まず粉末と溶剤だけをポットミルやボールミル、ライカイ機等を用いて混合する。その後、三本ロール等を用いて樹脂結合剤を混合する。
【0016】
また、用いるW粉末であるが、窒化アルミニウムとWの焼結温度を近づけるためには、W粉末の平均粒径を1μm以上、5μm以下にすることが好ましい。W粒径を数種類混合して用いることも多いが、その場合、1μm以上、5μm以下の平均粒径のWを50wt%以上用いることが好ましい。W粉末の平均粒径が1μmより小さくなると、Wの焼結開始温度が窒化アルミニウムの焼結温度に比べて低くなりすぎるため、Wや窒化アルミニウムとWの界面にクラックが生じやすくなる。一方、W粉末の平均粒径が5μmより大きくなると、Wの焼結性が著しく悪化し、窒化アルミニウムの焼結温度でWの焼結が充分に行われないため、好ましくない。
【0017】
また、スルーホールにペーストを充填する際には、スクリーン印刷を用いることを例に取ると、グリーンシートのペーストを充填する面とは逆の面にペーストがスクリーン印刷機に転写されるのを防止する、ペースト転写防止シートを載置する。このペースト転写防止シートが無ければ、スルーホールを充填したペーストはグリーンシートを突き抜けて、スクリーン印刷機のグリーンシートを載置している台座まで達するため、スクリーン印刷機が汚れてしまう。ペースト転写防止シートはスクリーン印刷機のグリーンシートを載置している台座とグリーンシート間に載置するため、スクリーン印刷機の汚れを防止することができる。このペースト転写防止シートはスルーホールにペーストを充填した後は、グリーンシートから剥がす。
【0018】
このようにスルーホールにWペーストを充填した後、必要に応じてグリーンシートを積層する。積層はシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50℃〜80℃程度に熱しながら、5MPa〜10MPa程度の圧力を10分〜20分程度かけることにより、熱圧着する。シート間には必要に応じて溶剤や接着剤を塗布してもよい。
【0019】
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、窒化アルミニウムのグリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの媒体を除去するために、例えば300℃〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。
【0020】
焼結は非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1600℃〜2000℃であり、焼結時間は1時間〜5時間程度に設定される。
【0021】
このように焼結された窒化アルミニウム焼結体は、次に必要に応じて基板表面の研削または研磨加工を行う。研削または研磨の方法は公知の技術を適宜用いることができる。通常は、ラッピング、ポリッシング、バレル研磨、サンドブラスト、研削盤等による方法が用いられる。基板の表面粗さは目的により異なるが、特に研磨後薄膜法でパターンを形成する場合は、中心線平均粗さ(Ra)0.8μm以下、より好ましくは、0.05μm以下にすることにより、薄膜法による金属化層と窒化アルミニウムの密着強度を高めることができるため好ましい。
【0022】
このように窒化アルミニウム焼結体表面を研削または研磨した後に、必要に応じて厚膜法や薄膜法で導電パターンを形成する。導電パターンの形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、化学的気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング法、溶射法、スクリーン印刷法等の公知の技術を用いることができる。これらの中で、薄膜法を用いた場合、導電パターンのパターニング方法としては、パターン形状によって公知の技術を使い分けることができる。例えば、メタルマスク法、湿式エッチング法、ドライエッチング法、リフトオフ法等を用いることができる。
【0023】
また、導電パターンを形成する構成金属としては、Ti、Cr、Mo、W、Al、Ta、Ni−Cr等の公知のものを用いることができる。また、これらの金属は単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。さらに単層で導電パターンを形成しても良いし、2層以上を積層して用いても良い。
【0024】
スパッタリング法や蒸着法等の薄膜法を用いるときは、3層程度を積層して用いることが多い。窒化アルミニウムと接する第一層には、上述のような公知の金属を用いることができるが、高い密着強度を安定して得ることができるTiを用いることが多い。また、第一層の上に積層する第二層にも公知の金属を用いることができるが、3層以上の導電パターンとして用いる時には、第一層と第三層との間で元素が拡散するのを防止するために、Pt、Ni、Mo、W、Pd等を用いることが多い。さらに、第二層上に第三層を積層する場合も公知の金属を用いることができるが、Pt、Au等が電気伝導性が良好で、耐食性にも優れているため用いることが多い。また、これら薄膜法で3層程度の積層導電パターンを形成した後に、さらにメッキ法等でNi、Au等の導電パターンを積層することもある。
【0025】
また、前記の導電パターンのあるパターン間を一定の抵抗値に保つために、ある規定の抵抗値で電気的に接続する抵抗体パターンを形成しても良い。抵抗体パターンの形成方法は前記薄膜法の形成方法等を用いることができる。抵抗体パターンの種類については、公知のものを用いることができるが、抵抗値の安定性の観点からTa−N、Ni−Cr等を用いることが多い。
【0026】
この抵抗体パターンは、抵抗値の経時変化や温度変化を抑制するために、抵抗体表面に酸化皮膜を形成することが多い。これには公知の方法を用いることができるが、陽極酸化法等を用いることが多い。さらに、抵抗値の調整を行うことがある。これにも公知の方法を用いることができるが、レーザートリミング法等を用いることが多い。
【0027】
以上のような工程で窒化アルミニウム焼結体を用いた基板や多層基板、パッケージが作製されるが、ビアクラックが、どの工程で生じているかを調査した結果、クラックはスルーホールにペーストを充填した後に、その芽が生じており、焼結によってクラックが大きく成長することも判った。これは、特に窒化アルミニウム等の高機能セラミックスに顕著に認められる。これらのセラミックスは1800℃〜2000℃といった高温で焼結される。一方、これらのセラミックスの回路材料として用いられる高融点金属のWは1400℃〜1500℃で焼結が開始されるため、二つの材料の焼結温度が大きく異なる。このような材料を同時焼成すると、まず、Wから収縮を開始するため、スルーホールでも充填されたWがまず収縮を開始する。しかし、セラミックスは収縮を開始しないため、スルーホールの外径は小さくならず、Wは外側を拘束されたまま収縮することになる。そのため、スルーホールにペースト充填した際に生じた、クラックの芽が大きくなりやすい。
【0028】
また、窒化アルミニウム等の高機能セラミックスでは焼結時に生成する液相量が、一般的なアルミナ等に比べると極端に少ない場合が多い。アルミナであれば、上述したような焼結中のクラックの成長は、元々二つの焼結温度がほぼ等しいため生じにくいが、もし生じたとしても焼結中に生じる液相がクラックに流れ込んで、クラックを埋めるため、焼結後クラックが生じることが少ない。しかしながら、液相量が少なければ、このような現象は生じることはないため、液相量が少ない窒化アルミニウム等の高機能セラミックスにはクラックが生じやすいのである。
【0029】
このように、ビアやビア周辺のクラックを無くすには、スルーホールにペーストを充填した時点で、その芽を無くす必要があるが、さらに詳細にクラックの芽がどこの工程で生じているかを調査した。その結果、スルーホールにペースト充填した直後に既に芽が生じることを突き止めた。スクリーン印刷機等でスルーホールにペーストを充填した後、グリーンシートをペースト転写防止シートから剥がすが、その時ペースト転写防止シートにスルーホールに充填したペーストの一部が付着する。その付着量が多く、ビアクラックの芽となっていることを突き止めたのである。
【0030】
ビアクラックを防止するには、ペースト転写防止シートへのペースト付着量を少なくする必要がある。そのための手法を検討した結果、ペースト転写防止シートの吸水率が大きく関係することが判った。一般的に、ペースト転写防止シートには紙が用いられるが、紙は吸水性が高いため、スルーホールにペーストを充填し、スルーホールを突き抜けたペーストがペースト転写防止シートに達すると、ペーストの溶剤を吸い込む。そのため、スルーホールに充填されたペースト転写防止シート付近のペーストは乾燥が早く進むのに対して、その他の部分はほとんど乾燥していないことになる。このような状態で、グリーンシートからペースト転写防止用のシートを剥がした場合、スルーホール中のペーストの乾燥が進んだ部分だけが脱落しやすいため、この部分がペースト転写防止用のシートに付着してしまう。これがビアクラックの芽となるのである。
【0031】
このように、ビアクラックを防止するには、スルーホールにペーストを充填してから、ペースト転写防止シートをグリーンシートから剥がすまでの間、スルーホール中のペーストの乾燥を防止する必要がある。そのためには、紙と言った吸水性の高いものではなく、吸水率の低いものを用いる必要がある。
【0032】
ペースト転写防止シートの吸水率を種々検討した結果、吸水率を1%以下にする必要があることが判った。紙の吸水率は種類によっても異なるが、通常100%以上、最低でも10%以上である。ここでの吸水率はJIS K6911に準拠して測定した値である。ペースト転写防止シートの吸水率が1%より大きければ、上述のようなスルーホール中のペーストの乾燥を避けることができない。
【0033】
さらに、ペースト転写防止シートの吸水率は0.1%以下であることが、さらに好ましい。これによって、ビアクラックの発生確率をさらに低めることができる。このような吸水率を満たす材料としては、ポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレン等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料をペースト転写防止シートとして用いることによって、ビアクラックの発生を有効に押さえることができる。
【0034】
また、ペースト転写防止シートは、スクリーン印刷機等に固定して用いても、固定しなくても構わない。固定して用いる方法としては、例えばポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレン等の片面に接着剤を塗布したようなテープ材料を適当な大きさに切断して、スクリーン印刷機に貼り付けて使用する方法が考えられる。スルーホールにペーストを充填すると、ペースト転写防止シートはペーストで汚れるが、この方法の場合は、ペーストを充填する度に、布等で付着したペーストの汚れを拭き取る必要がある。ペースト転写防止シートには吸水性がほとんど無いので、付着した汚れは簡単に落とすことができる。
【0035】
スクリーン印刷機等に固定して用いない方法は、例えば、ペースト転写防止シートをグリーンシートより一回り小さく切断しておき、スルーホールにペースト充填する際に、グリーンシートとスクリーン印刷機の間に挟み込む方法が挙げられる。この時、ペースト転写防止シートはグリーンシートより小さく、グリーンシートに形成されたスルーホールが存在する範囲よりは大きい必要がある。また、この方法では、多数のペースト転写防止シートを用意しておき、スルーホールにペースト充填する度に、新しいペースト転写防止シートを使用するという手法を用いることができる。
【0036】
以上のような方法で、スルーホールにペーストを充填する際に、ペースト転写防止シートの吸水率を低くすることによって、ビアクラックを防ぐことができ、基板や多層基板、パッケージの信頼性試験や実使用時に発生する不良や、表面を研削または研磨した後のビアクラック不良を防ぐことができる。
【0037】
前記のごとく、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム等のセラミックス基板は、基板や多層基板、パッケージのビアクラックを防ぐことができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜2
97重量部の窒化アルミニウム粉末と3重量部のY2O3粉末を混合し、ポリビニルブチラールを樹脂結合剤、ジブチルフタレートを可塑剤として、それぞれ10重量部、5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。これを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜いた後、パンチャーにてφ0.25mmのスルーホールを形成した。なお、一枚のグリーンシートにスルーホールを1000個形成した。
【0039】
このスルーホールにWペーストを充填した。平均粒径が2.0μmのW粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、溶媒として5重量部のブチルカルビトールを用いてペーストを作製した。混合にはポットミルと三本ロールを用いた。その後、ペーストをスクリーン印刷機にてスルーホールに充填した。
【0040】
スクリーン印刷機によりペースト充填を行う際に、グリーンシートをスクリーンシート機に設置する台座とグリーンシート間に様々なペースト転写防止シートを挟み込んだ。ペースト転写防止シートの大きさは90mm×90mmとし、グリーンシートのスルーホールが形成されているエリアの大きさよりは大きかった。また、ペースト転写防止シートとしては、硫酸紙(吸水率>1%)、ポリプロピレン(吸水率<0.1%、3mm、24h、測定はJIS K6911に準拠)、ポリスチレン(吸水率<0.1%、3mm、24h)、ポリエチレン(吸水率<0.1%、3mm、24h)、ポリエステル(吸水率=0.5%、3mm、24h)、ナイロン(吸水率=2%、3mm、24h)を用いた。
【0041】
次に、印刷後のシートを2枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを2枚重ねてセットし、プレス機にて50℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。
【0042】
その後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行った。
【0043】
焼結後、ビア部分にはφ0.2mmのスルーホールに金属化層が形成されていた。次に、ビア部分にクラックや空孔が発生していないかを確認するために、焼結した窒化アルミニウム基板表面を両面から0.3mm程度研磨し、電子顕微鏡にてクラックや空孔の有無を1000倍にて確認した。これらの評価結果をペースト転写防止シート材質とともに表1に示す。なお、同じ条件で作製した基板を10枚用意しており、表中の「クラックが生じた基板の発生確率」は、1枚の基板中にある1000個のビアに1つでもクラックが生じていた基板の発生確率を示している。
【0044】
【表1】
【0045】
ペースト転写防止シートの吸水率を1%以下(実施例1〜4)にすることによって、ビアクラックの発生確率を大きく低下させることができるのが判る。特に吸水率が0.1%以下のシート(実施例1〜3)では、ビアクラックは全く発生しなかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックスグリーンシートのスルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行い、該ペースト転写防止シートの吸水率を1%以下、さらに好ましくは0.1%とすることで、基板や多層基板、パッケージのビアクラック、研削または研磨後のビアやビアクラックやを防ぐことができる。このため、本セラミックス焼結体はIC用の基板、パッケージとして好適に用いることができる。
Claims (5)
- セラミックス粉末を主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に金属粉末と溶剤を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有するセラミックス焼結体を製造する方法において、スルーホールにペーストを充填する際に、グリーンシートのペースト充填を行う面と逆側の面に、ペースト転写防止シートを載置してから、ペースト充填を行う方法であって、該ペースト転写防止シートの吸水率が1%以下であることを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
- 前記ペースト転写防止シートの吸水率が0.1%以下であることを特徴とする請求項1記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
- 前記ペースト転写防止シートがポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
- 前記セラミックスが窒化アルミニウムであり、金属粉末がタングステン(W)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属化層を有するセラミックス焼結体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法で作製した金属化層を有するセラミックス焼結体の表面を研削または研磨したことを特徴とする金属化層を有するセラミックス焼結体。
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CN106810266A (zh) * | 2016-12-14 | 2017-06-09 | 宜兴市华井科技有限公司 | 一种氮化硅陶瓷吹气管开孔方法 |
-
2003
- 2003-02-07 JP JP2003030566A patent/JP2004238264A/ja active Pending
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