JP2004238232A - 炭酸カルシウムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、緑液に、特定のカチオン性高分子凝集剤を添加することにより、あるいは該カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸塩法またはソーダ法蒸解によるパルプ製造工程の蒸解液である白液を製造する苛性化工程において、製紙用原料として有用な炭酸カルシウムを製造する方法に関するものである。更に詳しくは、緑液に特定の凝集剤を添加することにより緑液を清澄化し、該清澄緑液と酸化カルシウムまたは消石灰との苛性化反応で、高白色の炭酸カルシウムを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷あるいは筆記用に使用される紙には、白色度、不透明度、平滑性、筆記性、手触り、印刷適性等の改良を目的として通常、填料が内添されている。この抄紙方法としては、填料にタルク、クレー、酸化チタン等を使用してpH=4.5付近で紙を抄くいわゆる酸性抄紙と、pH=7〜8.5の中性〜弱アルカリ性領域で紙を抄く中性抄紙とがある。中性抄紙では、輸入品で高価なタルク、クレーに代えて、国産の炭酸カルシウムを填料として使用することができるという特徴がある。
【0003】
酸性で抄紙した紙は経年により劣化が進行するという欠点があることから、この紙の保存性等の問題から、中性抄紙によって抄造される中性紙が近年、注目されるようになった。また、中性紙には、この他にも紙質、コスト、環境対策等の面でもメリットが多いことから、中性抄紙への移行が進んでおり、今後もその普及が拡大する情勢にある。
【0004】
このように、中性紙の需要が高まっている中で、填料としての炭酸カルシウムの位置付けは非常に重要である。この中性抄紙に填料として用いられる炭酸カルシウムには、天然の石灰石を乾式あるいは湿式で機械粉砕して製造する重質炭酸カルシウムと、化学的方法によって製造する軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウムとも称される)がある。
【0005】
軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、次の方法が知られている。
(1)石灰の焼成装置などから発生する二酸化炭素を含有したガスと、石灰乳との反応。
(2)アンモニアソーダ法における炭酸アンモニウムと塩化カルシウムとの反応。
(3)炭酸ナトリウムの苛性化によって水酸化ナトリウムを製造するという、石灰乳と炭酸ナトリウムとの反応。
これらの方法のうち、(1)は、反応系が比較的単純であり、様々な用途毎に目的に合った炭酸カルシウムを製造する方法について広く研究が進み、石灰メーカーから市販されている商品も数多く見られる。しかしながら、この方法は炭酸カルシウムが唯一の生産物であることから、製造コストが非常に高くなるため、安価な紙には使用しにくく、その使用量が大きく制限されている。一方、(2)、(3)においては、その主生産物を得る製造法が新たな方法に転換されたり、生成する炭酸カルシウムが副産物であることから不純物含量が多い、などの理由で、その利用方法についてはあまり検討されていないのが実状である。
【0006】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程において、蒸解薬品を回収・再生する苛性化工程で白液を製造する際に生成する炭酸カルシウムは副産物であり、これを製紙用原料として使用する方法では、安価な炭酸カルシウムを得ることができる。硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程では、木材からパルプ繊維を取り出すために、木材チップに水酸化ナトリウムや硫化ナトリウムを溶解した白液を添加して高温、高圧下で蒸解する。パルプ繊維は固相として分離精製され、蒸解廃液(黒液)は濃縮された後、回収ボイラーで燃焼される。その場合、リグニンやヘミセルロースなどの有機性の木材溶出成分は熱源となり、薬液中の無機成分は炭酸ナトリウムや硫化ソーダとの混合物を主成分とするスメルトとして回収される。スメルトは、弱液と呼ぶ白液成分が一部溶解した水溶液に溶解して粗緑液とする。この粗緑液は、ボイラーで発生した未燃の炭素粒子や蒸解の際に木材から溶出して来た不溶性の不純物等を含むため、沈降分離法や濾過分離法により、不純物を分離し系外に排出すると共に、緑液をある程度清澄化している。この清澄緑液と酸化カルシウムとを混合して、下記[1]、[2]式で示す消和と苛性化の二段反応により、炭酸ナトリウムは水酸化ナトリウムに転換され、白液が再生されると同時に炭酸カルシウムが副生する。反応[2]で生成する炭酸カルシウムはロータリーキルンなどの焼成炉で重油を燃料として焼成され、下記[3]で示す反応で酸化カルシウムに再生され、苛性化工程で循環使用されてきた。
CaO+H2O→Ca(OH)2 [1]
Ca(OH)2+Na2CO3→CaCO3+2NaOH [2]
CaCO3→CaO+CO2 [3]
【0007】
ここで生成する炭酸カルシウムは、主生産物である白液を製造する際の副産物であるため、製紙原料として使用した場合、非常に低コストで利用できる。また、閉鎖系である苛性化工程のカルシウム循環サイクルから、炭酸カルシウムを系外に抜き取ることによって、系内の清浄化及び循環石灰の高純度化が達成され、上記[1]、[2]の反応性向上や白液の清澄性向上、さらには廃棄物の低減が期待できる。しかし、従来この方法は上記[2]の苛性化反応が本来の目的であるため、苛性化反応に必要な酸化カルシウムを再生し、該酸化カルシウムを循環使用することが最重要とされたため、副生する炭酸カルシウムを製紙の原料として利用することに関してはあまり注意が払われていなかった。
【0008】
従来から、前述のように粗緑液中の不純物であるドレッグスを系外に除去していたが、この処理では比較的容易に分離できる不純物を除去し、循環するカルシウムの純度を高めることに重点が置かれていた。従って、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度向上を目的にした高度な清澄化方法に関しては詳細な検討が行われていなかった。このドレッグスの除去技術としては凝集沈殿方法が設備費や運転コストの面で有利なため一般に広く実施されて来たが、粗緑液は通常90℃と言った高温で、且つ高濃度のアルカリを含むため、この厳しい使用環境に適合する凝集剤は限定され、ポリアクリルアミドを加水分解法で変性したアニオン性ポリアクリルアミドが主に使用されてきた。しかし、これら従来のアニオン性高分子凝集剤は粗緑液中の不純物粒子の凝集力には優れているものの、特に微粒の不純物粒子やコロイド状の不純物粒子を捕捉する能力が不充分で、この方法で清澄化した緑液にはなお多くの不純物が含有されるため、得られる清澄緑液は、その名が示すように緑色を呈しており、従ってこの清澄化緑液を酸化カルシウムで苛性化して得られる炭酸カルシウムは不純物によって着色し、高白色度の苛性化軽質炭酸カルシウムを得ることができなかった。
【0009】
苛性化工程で副生する軽質炭酸カルシウム(以下、苛性化軽質炭酸カルシウムと記述する)の白色度向上を課題とした従来の技術としては、例えば、▲1▼苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーにハイドロサルファイトを添加し、その後、リン酸塩を添加する技術が開示されている(特許文献1参照。)。また、▲2▼苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーにハイドロサルファイトを添加し、その後、界面活性剤を添加する技術が開示されている(特許文献2参照。)。しかし、これらの技術では、着色成分が苛性化軽質炭酸カルシウムに残留するため、これを填料や顔料に利用した場合、再発色の恐れが有る。
【0010】
更に、▲3▼緑液に空気を吹き込んで浮上した不純物を凝集・除去し、続いて苛性化反応を行う緑液清澄化技術が開示されている(特許文献3参照。)。また、▲4▼緑液の清澄化処理方法として苛性化工程において添加する酸化カルシウムを二段に分割し、前段の添加で生成した炭酸カルシウムを不純物と共に系外に除去し、これにより清澄化された緑液と、後段で添加する酸化カルシウムとの反応で、高白色の苛性化軽質炭酸カルシウムを得る技術が開示されている(特許文献4参照。)。しかし、▲3▼の技術では、浮上分離装置等の特別の設備が必要となって、経費が嵩むばかりでなく、還元性の硫化ナトリウムの空気酸化によって硫化度の低下を来してしまうので、好ましくない。▲4▼の酸化カルシウム二段添加方法では、不純物除去の観点からは優れた効果を期待できるが、二段に分割添加する酸化カルシウム毎に生成する苛性化軽カルを分離、洗浄する装置が必要になり、好ましくない。
【0011】
本発明者らは、苛性化工程で副生する炭酸カルシウムを製紙用原料として使用すべく、副生炭酸カルシウムの高品質化技術について研究し、特定条件下の苛性化反応により、米粒状、紡錘状、針状、イガグリ状と言った特有の形状を有する高品質な軽質炭酸カルシウムを製造する技術を確立し、これを出願し、特許登録(特許文献5、6参照)または公開されている(特許文献7〜12参照。)。しかし、これら改良法で製造した炭酸カルシウムに関しても、製造工程がクラフトパルプ製造工程の一部であるため、クラフトパルプ製造工程の変動の影響を受けやすく、得られる軽質炭酸カルシウムの白色度が不安定であるという根本的な問題を抱えていた。
【0012】
【特許文献1】
特開昭51−47597号
【特許文献2】
特開昭51−47598号
【特許文献3】
特開昭61−53112号
【特許文献4】
特開平1−226719号
【特許文献5】
特許第3227421号明細書
【特許文献6】
特許第3227422号明細書
【特許文献7】
特開2000−264628号
【特許文献8】
特開2000−264629号
【特許文献9】
特開2000−264630号
【特許文献10】
特開2000−199720号
【特許文献11】
特開2001−199721号
【特許文献12】
特開2002−284522号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の蒸解用白液を再生する苛性化工程において、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を向上させる技術の提供にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、緑液に、特定のカチオン性高分子凝集剤を添加することにより、あるいは該カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者等は苛性化軽質炭酸カルシウムの高白色度化について検討した結果、
▲1▼アニオン性高分子凝集剤やノニオン性高分子凝集剤といった従来から使用されてきた凝集剤に比べ、カチオン性高分子凝集剤が優れた緑液清澄効果を示すこと。
▲2▼高温且つ高アルカリ条件下では一般的なカチオン性高分子凝集剤の凝集効果の持続が不充分であり、緑液クラリファイヤーなどの分離装置内で緑液が滞留している間に、その凝集効力が低下し、緑液清澄化が不安定となること。
▲3▼(メタ)アクリル酸エステル系化合物とアクリルアミドとの共重合物やポリアミン系化合物から選択された特定のカチオン系高分子凝集剤が凝集能力、及び高温且つ高アルカリ条件下でも凝集能力を持続できること。
▲4▼前記特定のカチオン系高分子凝集剤を添加して処理した緑液は極めて清澄となり、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度は高く、しかも白色度が安定していること。
▲5▼更に、従来から使用されてきたアニオン性高分子凝集剤で凝集沈澱処理した清澄緑液に、前記特定のカチオン性高分子凝集剤を添加して凝集沈澱処理を施すと、格段に清澄度が向上すること。
などを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明で使用する緑液は、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程で発生する黒液を回収ボイラーで燃焼し、燃焼後、残留する炭酸ナトリウム、硫化ナトリウムなどを主成分とする無機分であるスメルトを弱液に溶解した粗緑液である。
【0017】
本発明で使用するカチオン系高分子凝集剤は、共重合物やポリアミン系化合物から選択される。共重合物の一方のモノマーである(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、例えばアクリロイルオキシアルキル(トリアルキル)アンモニウム硫酸塩、メタクリロイルオキシアルキル(トリアルキル)アンモニウムクロライドなどのアクリル酸エステル系化合物、またはメタクリル酸エステル系化合物である。共重合物としては、アクリル酸エステル系化合物とアクリルアミドとを公知の方法により共重合させたもの、またはメタクリル酸エステル系化合物とアクリルアミドとを公知の方法により共重合させたものが挙げられ、その重量平均分子量は5万〜1000万程度が好ましく、100万〜1000万程度がより好ましい。
【0018】
ポリアミン系化合物としては、例えばジアルキルアミンアルキルアクリレート、ジアルキルアミンアルキルメタクリレートなどのアミン系化合物を公知の方法により重合させたものが挙げられ、その重量平均分子量は1万〜100万程度が好ましく、1万〜50万程度がより好ましい。なお、上記共重合物やポリアミン系化合物はそれぞれ単独で用いても良く、両者を併用しても良い。
【0019】
更に前記特定のカチオン性凝集剤の使用に加えて、アニオン性凝集剤の併用はカチオン性高分子凝集剤を単独で使用する場合に比べ、凝集物の沈降性が更に改善される点で有利である。このアニオン系凝集剤としては、例えばポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリメタクリルアミドの部分加水分解物又はその共重合物などが挙げられる。ポリアクリルアミドの部分加水分解物をアニオン系高分子凝集剤として用いる場合、その重量平均分子量は5万〜3000万程度が好ましく、500万から2000万程度がより好ましい。
【0020】
前記のカチオン系高分子凝集剤を緑液に添加する場所としては、カチオン系共重合物および/またはポリアミン系化合物を既存の緑液クラリファイヤーなどの分離装置の入り口で緑液に添加する。共重合物とポリアミン系化合物とを併用する場合には、分離装置の入り口で緑液に別々に添加する。
【0021】
前記特定のカチオン性凝集剤の使用に加えて、アニオン性凝集剤の併用する場合は、アニオン性凝集剤を添加して凝集処理した後の緑液に、カチオン性凝集剤を添加して凝集することが好ましい。この場合、まずアニオン性凝集剤を緑液に添加混合後し、次いでカチオン性凝集剤を添加する。添加は既存の緑液クラリファイヤーなどの分離装置の入り口までに終了させることが好ましい。また、既存の緑液クラリファイヤーの後に同様な分離装置を新設し、前段のクラリファイヤー入り口でアニオン性凝集剤を添加しある程度清澄化した後、後段の分離装置入り口で該緑液にカチオン性凝集剤を添加しても良い。
【0022】
緑液の清澄化の程度は、吸光光度計の波長675nmにおける吸光度(−logT)で定義すると、吸光度0.001〜0.05が好ましい。更に好ましくは0.001〜0.04、最適には0.001〜0.03である。この吸光度の緑液が得られるようにカチオン性高分子凝集剤、あるいはアニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤を添加する。また、該清澄化緑液に酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを添加し苛性化して得られる軽質炭酸カルシウムの白色度は、95.0〜99.0%が好ましく、96.0〜99.0%が更に好ましい。
【0023】
苛性化工程では、酸化カルシウムの緑液への添加に代えて、酸化カルシウムを水で消和した水酸化カルシウムを粉体またはスラリー状で添加することも可能である。
【0024】
苛性化反応の条件としては従来からの苛性化反応条件で実施することができる。また、従来の技術で前述した特許第3227421号明細書、特許第3227422号明細書、特開2000−264628号、特開2000−264629号、特開2000−264630号、特開2000−199720号、特開2001−199721号、特開2002−284522号で記載の苛性化反応条件と本発明の高白色度炭酸カルシウムの製造技術とを組み合わせれば、特定形状であり、プラスチックワイヤー摩耗度が低いなどの特性を有し、かつ高白色度の苛性化軽質炭酸カルシウムを製造することが可能である。
【0025】
本発明で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、必要に応じて、湿式あるいは乾式粉砕により、粒子径を調整後、填料や顔料として使用することもできる。
【0026】
本発明によって、苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が向上するため、苛性化軽質炭酸カルシウムを抄紙用填料や顔料として利用できる範囲が大幅に広がる。この付随効果として、白液製造工程からの苛性化軽質炭酸カルシウムの抜き取り量が増大し、工程内を循環する石灰に蓄積し易い不純物を低減できると共に、焼成用キルンの負荷を低減できる。更には、工程から炭酸カルシウムを全量抜き取ることができれば、キルン停止も可能となり、苛性化工程での主生産物である白液の生産コストを大幅に削減することが可能となる。
【0027】
本発明により粗緑液が高度に清澄化されるメカニズムについては充分に解明されていないが、緑液中の懸濁粒子の大きさや表面電荷によって高分子凝集剤の分子量及びイオン性の作用に違いが有るものと推測される。つまり、比較的大きな懸濁粒子は従来使用されてきた高分子量の凝集剤で捕捉できるが、比較的小さい懸濁粒子やコロイド状粒子の捕捉には低分子領域のカチオン性凝集剤が有効であると推論している。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例をあげて、詳細に説明するが、当然ながら本発明は実施例のみに限定されるものではない。
[供試緑液]
日本製紙株式会社のクラフトパルプ製造プラントの苛性化工程から採取した。組成は、Na2CO3=95g/L、Na2S=25g/L、NaOH=12g/L(いずれもNa2O換算値)であった。
[試験法]
(1)酸化カルシウム中の炭酸カルシウム含量:金属中炭素分析装置(堀場製作所EMIA−100)により、二酸化炭素量を測定し、その量より炭酸カルシウム含量を計算した。
(2)生成炭酸カルシウムのISO白色度:乾燥粉体を加圧式錠剤成形器でペレットとし、分光測色計(CMS−35SPX、株式会社村上色彩技術研究所製、紫外光無し、D65光源、10度視野)で測定した。
(3)生成炭酸カルシウムの平均粒子径:生成物を水洗浄・濾過し、水で希釈後、レーザー回折式粒度分布計(シーラス社モデル715)で平均粒子径を測定した。短径、長径については、生成物を水洗濾過し乾燥後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−5300)で実測した。
(4)生成炭酸カルシウムの形態観察:生成物を水洗濾過し乾燥後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−5300)で形態観察した。
(5)結晶系:Rigaku製X線回折RAD−2Cにより測定した。
(6)ワイヤー摩耗測定は、日本フィルコン式摩耗試験装置で測定。
・日本フィルコンCOS−60ポリエステルワイヤー
・スラリー濃度:2重量%
・荷重:1250g
・摩耗時間:90分間
・摩耗量:摩耗試験前後のワイヤー重量減量(mg)
【0029】
【実施例1】
緑液1,000mLを、加温用マントルヒーターを備えた1,000mLセパラブルフラスコに計り取り、撹拌機(撹拌速度120rpm,Kyoei Power Stairrer Type PS−2N)で撹拌し、90℃に保持した。この緑液にアクリロイルオキシアルキル(トリアルキル)アンモニウム硫酸塩とアクリルアミドとの共重合物(分子量:300万、0.1%重量固形分濃度の水溶液)を5mg添加し、0.5時間撹拌した。その後、撹拌機を停止し、0.5時間静置して凝集物を沈降させ、清澄緑液を回収した。この清澄緑液の波長645nmにおける吸光度を吸光光度計(株式会社日立製作所:V−3210)で測定すると共に、その中から500mLを、加温用マントルヒーターを備えた500mLセパラブルフラスコに計り取り、撹拌機(撹拌速度120rpm,Kyoei Power Stairrer TypePS−2N)で撹拌し、70℃に保持した。引き続き、酸化カルシウム(宇部マテリアル社製)35gを添加後、90℃で2時間苛性化した。苛性化反応液から苛性化軽質炭酸カルシウムをろ過分離し、充分洗浄後105℃で乾燥し、苛性化軽質炭酸カルシウム粉末約60gを回収した。回収した苛性化軽質炭酸カルシウムの粉体のISO白色度を測定した。清澄化緑液の吸光度および粉体苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度測定結果を表1に示す。
【0030】
【実施例2】
実施例1のカチオン性高分子凝集剤の添加に先立って、アニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミドアニオン変性物:分子量500万)を2mg添加し、5分間混合した。これ以外は実施例1と同様にして粉体状炭酸カルシウムを回収した。清澄化緑液の吸光度と回収した粉体状炭酸カルシウムの白色度測定結果を表1に示した。
【0031】
【比較例1】
緑液に添加する高分子凝集剤を実施例1のカチオン性高分子凝集剤に代えて、アニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミドアニオン変性物:分子量500万)を5mg添加した以外は実施例1と同様にして粉体状炭酸カルシウムを回収した。清澄化緑液の吸光度と回収した粉体状炭酸カルシウムの白色度測定結果を表1に示した。
【0032】
【比較例2】
合成緑液として炭酸ナトリウム(試薬1級)と硫化ナトリウム(試薬1級)を、実施例1の緑液と同じ濃度に溶解した水溶液を使用し凝集剤を添加しないで苛性化した以外は実施例1と同様にして炭酸カルシウムを得た。合成緑液の吸光度と回収した粉体状炭酸カルシウムの白色度測定結果を表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
清澄化緑液の吸光度と生成した苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度は、実施例1で、それぞれ0.045、95.2%であり、比較例1では、それぞれ0.103、93.2%であった。カチオン性高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤に比べ、緑液の清澄作用に優れ、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が高くなることが解る。実施例2はアニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤を併用したケースであり、吸光度、炭酸カルシウム白色度はそれぞれ0.025、97.1%であり、実施例1に比べて、緑液が更に清澄比され、炭酸カルシウムの白色度が一段と高くなることが解る。また、比較例2ではそれぞれ0.004、97.4%であり、実施例2の場合では試薬並みの緑液清澄度が得られ、炭酸カルシウムの白色度も極めて高くなることが解る。
【0035】
本発明の高白色度の苛性化軽質炭酸カルシウムに、プラスチックワイヤー摩耗適性を付与する目的で、特定の苛性化反応条件下で特定形状としたケースを、以下の実施例で示す。
【0036】
【実施例3】
本発明の技術と、特許第3227421号の紡錘状・針状の苛性化軽質炭酸カルシウムの製造技術とを組み合わせた実施例である。緑液は実施例2で得られた清澄化緑液を使用した。1Lの4ツ口フラスコ容器に、炭酸カルシウム含有率1.6%の酸化カルシウム50gと、pH=13.1の弱液を用い、酸化カルシウム濃度が30重量%になる割合で混合後、消和させて水酸化カルシウムのスラリー液をつくり、緑液添加速度0.22cc/min/g(酸化カルシウム)、添加時間60分、温度80℃、撹拌速度450rpm(Kyoei Power Stairrer Type PS−2N)の条件で苛性化反応を行わせた。反応液から生成した炭酸カルシウムを吸引ろ過回収し、水道水で充分洗浄後脱水し、105℃の送風乾燥機中で乾燥し、粉体状の炭酸カルシウムを得た。生成反応物の白色度、平均粒子径、プラスチックワイヤー摩耗度の測定および形態観察などを行った。結果を表2に示す。
【0037】
【比較例3】
緑液を比較例1で得られたものに代えた以外は実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
【0038】
【実施例4】
本発明の技術と、特許第3227422号の紡錘状・米粒状の苛性化軽質炭酸カルシウムの製造技術とを組み合わせた実施例である。緑液は実施例2で得られた清澄化緑液を使用した。1Lの4ツ口フラスコ容器に、炭酸カルシウム含有率1.6%の酸化カルシウム50gと、緑液を用い、酸化カルシウム濃度が30重量%になる割合で混合後、消和させて水酸化カルシウムのスラリー液をつくり、緑液添加速度0.22cc/min/g(酸化カルシウム)、添加時間60分、温度80℃、撹拌速度450rpm(Kyoei Power Stairrer Type PS−2N)の条件で苛性化反応を行わせた。反応液から生成した炭酸カルシウムを吸引ろ過回収し、水道水で充分洗浄後脱水し、105℃の送風乾燥機中で乾燥し、粉体状の炭酸カルシウムを得た。生成反応物の白色度、平均粒子径、プラスチックワイヤー摩耗度の測定および形態観察などを行った。結果を表2に示す。
【0039】
【比較例4】
緑液を比較例1で得られたものに代えた以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0040】
【実施例5】
本発明の技術と、特開2000−264628号のイガグリ状の苛性化軽質炭酸カルシウムの製造技術とを組み合わせた実施例である。緑液は実施例2で得られた清澄化緑液を使用した。炭酸カルシウム含有率1.6%の酸化カルシウムと水のモル比が、酸化カルシウム:水=1:1.4で消和して得られた水酸化カルシウムのスラリー液に、pH=6.8の水を加えて、水酸化カルシウム濃度30重量%のスラリー液を得た。これを、1Lの4ツ口フラスコ容器に入れ、緑液(添加速度0.22cc/min/g(酸化カルシウム)、添加時間60分、温度50℃、撹拌速度250rpm(Kyoei Power Stairrer Type PS−2N)の条件で苛性化反応を行わせた。反応液から生成した炭酸カルシウムを吸引ろ過回収し、水道水で充分洗浄後脱水し、105℃の送風乾燥機中で乾燥し、粉体状の炭酸カルシウムを得た。生成反応物の白色度、平均粒子径、プラスチックワイヤー摩耗度の測定および形態観察などを行った。結果を表2に示す。
【0041】
【比較例5】
緑液を比較例1で得られたものに代えた以外は実施例5と同様に行った。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例3で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、比較例3と同様なアラゴナイト系針状結晶であり、プラスチックワイヤー摩耗度も同様に低い。しかし、緑液の清澄化度が高いので苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が4.2%高くなっている。実施例4で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、比較例4と同様なカルサイト系米粒状結晶であり、プラスチックワイヤー摩耗度も同様に低い。しかし、緑液の清澄化度が高いので苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が4.0%高くなっている。実施例5で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、比較例4と同様なアラゴナイト系イガグリ状結晶であり、プラスチックワイヤー摩耗度も同様に低い。しかし、緑液の清澄化度が高いので苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が4.6%高くなっている。
【0044】
【発明の効果】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の蒸解用白液を再生する苛性化工程において、緑液に、特定のカチオン性高分子凝集剤を添加することにより、あるいは該カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。
Claims (2)
- 製紙用の炭酸カルシウムの製造方法であって、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の緑液を白液に再生する苛性化工程の反応において、吸光光度計の波長675nmにおける吸光度が0.001〜0.05である清澄化された緑液と、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとを混合して得られることを特徴とする苛性化軽質炭酸カルシウムの製造方法。
- 苛性化軽質炭酸カルシウムのISO白色度が95〜99%であることを特徴とする請求項1記載の炭酸カルシウムの製造方法。
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