JP2004237744A - 発熱抵抗体とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い抵抗率を有し抵抗の温度変化率が小さい発熱抵抗体と、その高抵抗率を経時的に安定して確保できる製造方法を提供することである。
【解決手段】 発熱抵抗体として、組成の成分元素に少なくともTaとSiとOとNとHとを含み、好ましくは、組成の成分元素の内、Nのモル%M2が「5モル%≦M2≦25モル%」で、SiとTaのモル比Si/Taが「0.35<Si/Ta<0.80」で、且つ、Oのモル%M1が「25モル%≦M1≦45モル%」の範囲内で、Ta:Si:O:Nのモル比が一定であり、且つ、Hの含有率が4モル%以上である。
【選択図】 図18

Description

本発明は、発熱抵抗体とその製造方法に関する。
従来より、発熱抵抗体は抵抗率が大きくなると抵抗の温度変化率が大きくなる傾向がある。発熱抵抗体の発熱エネルギーを利用する装置の場合、発熱抵抗体の抵抗値が温度によって大きく変化するようでは発熱抵抗体を発熱駆動する制御がなかなか困難である。従来の抵抗体材料としては、酸化物や窒化物、これらに金属を加えたものや、更に他のものを加えた4元系の抵抗体等がある。例を上げると、Si−N−Ir−(Ru)系、Si−N−Ir−(Pt)系、Si−N−Ir−Ru−Pt系、Si−O−Ir−(Ru)系、Si−O−Ir−(Pt)系、Si−O−Ir−Ru−Pt系、Si−C−Ir−(Ru)系、Si−C−Ir−(Pt)系、Si−C−Ir−Ru−Pt系等、発熱抵抗体の組成として実に数多くの組成が提案されているが、その抵抗の温度に対する変化率は、発熱抵抗体として用いるのにて適した程度に小さいものではなかった。
近年、広く使用されているサーマルインクジェットプリンタにも、その印字ヘッドに発熱抵抗体が用いられている。そのインクジェットプリンタヘッドには、発熱抵抗体の発熱面に平行な方向へインクを吐出するものと、発熱抵抗体の発熱面に垂直な方向にインクを吐出するものと、二通りの構成がある。
特許文献1には、TaN0.8hexからなる抵抗層上にSiN膜からなる保護膜が成膜され、保護膜上にTa等の耐キャビテーション膜が堆積され、それから約400℃にてH2 雰囲気中でアニールが行われることが示され、またSiN膜がTaN0.8hexの変質を抑制することが示されている。
図18(a),(b),(c) は発熱抵抗体の発熱面に平行な方向へインクを吐出する構成のもの、同図(d),(e),(f) は発熱抵抗体の発熱面に垂直な方向にインクを吐出する構成のものを、それぞれ模式的に示している。同図(a) 又は(d) に示すように、シリコン基板1上には発熱抵抗体2が形成されており、そのシリコン基板1と所定の間隔をなしてオリフィス板3が配置されている。そして、同図(a) では発熱抵抗体2の側方に、同図(d) では発熱抵抗体2に対向してインク吐出ノズル4が形成されている。上記の発熱抵抗体2は不図示の電極に接続されており、発熱抵抗体2が設けられているインク流路にはインク5が常時供給されている。
このインク吐出ノズル4からインク滴を吐出させるには、先ず、同図(b) 又は(e) に示すように、画像情報に応じた通電により、(1)発熱抵抗体2を熱してこの発熱抵抗体2上に核気泡を発生させ、(2)この核気泡が合体して膜気泡6が発生し、(3)この膜気泡6が断熱膨脹して成長し周囲のインクを押し遣り、これによりインク吐出ノズル4からインク5−1が押し出され、この押し出されたインク5−1は、同図(c) 又は(f) に示すように、インク滴5−2となってインク吐出ノズル4から紙面に向けて吐出される。この後、(4)上記の膜気泡が収縮し、(5)ついには膜気泡が消滅し、次の発熱抵抗体の加熱を待機する。この一連の工程(1)〜(5)は瞬時に行われる。
ところで、上記の工程(1)〜(3)には、膜沸騰現象が利用されている。膜沸騰現象は、例えば鉄の焼き入れのように高温に加熱された物体を液体中に漬けた場合と、液体と接する物体の表面温度を急激に上げた場合とに発現するが、インクジェットプリンタヘッドに用いられる膜沸騰現象は後者の「液体と接する物体の表面温度を急激に上げる」方法によっている。この膜沸騰現象において、上記の液体中に発生した気泡が消滅するときに起きる現象は、キャビテーションと呼ばれている。
図19(a),(b) は、上記のインク滴の吐出に係る気泡の成長と消滅の過程を模式的に示す図である。同図(a) は実験的に水深1mm(ミリメータ)のオープンプール8に設定した発熱抵抗体2と、これによる気泡の成長と消滅の過程を0〜6μs(マイクロ秒)まで、1μs毎に示している。また、同図(b) は発熱抵抗体2への通電タイミングを示している。
同図(a) に示すように、0〜1μsで発熱体2が加熱され、1〜2μsで核気泡が成長し、2μsから3μsに至る間にインク滴を吐出する気泡が発生し、3μsでは既にその気泡の収縮が始まっている。そして6μsで気泡が消滅するまでの間に気泡内部の圧力が急激に低下し、同図の矢印a−1、a−2、a−3で示すにように負圧を伴うキャビテーションが発生する。
そして、このキャビテーションによる破壊力は発熱抵抗体2を設置面から引き剥がそうとする力として働く。その衝撃力は、上記の水深1mmのオープンプールの場合、1000ton/cm2 に達すると言われている。インクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体の面積はおよそ40μm×40μmであるが、この面積比で換算すると、その衝撃力はおよそ16Kg(キログラム)という値になる。
また、発熱抵抗体の抵抗値については、発熱抵抗体の駆動回路で許容される電流お上限値から、所定値以上の抵抗率を備えることが要求される。特に、駆動回路と発熱抵抗体が同一基板上に設置されるモノシリックタイプのインクジェットヘッドでは、ドライバ用トランジスタの電流上限値は100mA程度であるから、4mΩcm以上の抵抗率が要求される、通常、4mΩcm以上の抵抗率は、金属の発熱抵抗体では得られない。
このような稼動環境下にあるモノリシック型サーマルインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体には、抵抗率の値が金属的でないこと、具体的には4mΩcm以上、好ましく5mΩcm以上の高い抵抗率を有すること、抵抗の温度変化率が小さいこと、具体的には0.05%/℃以下、好ましくはゼロ%に近いものであること、及びキャビテーション耐性が良いこと、具体的にはオープンプール試験で一億パルス以上の耐性を有することの3点が要望される。
上記の抵抗率については、更に詳述すると、例えば、ドライバ用トランジスタの電流値の上限を100mA程度、使用電力を1パルスあたり1Wとすると、抵抗の値は100Ωとなる。通常の抵抗体は金属的なものが多く、その抵抗率は1mΩcm以下であるものが多い。
特開平9−70973号公報
このような抵抗体をインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体として用いようとすると、その発熱抵抗体を一般的な正方形状のパターンに形成した場合には発熱抵抗体の厚みを1000Å程度にしないと所望の発熱エネルギーが得られない。これでは薄すぎて、発熱抵抗体の寿命が極めて短くなるという問題を有している。
上記の発熱抵抗体としては、比較的優れた特性を有すると見られるTa−Si−O系の発熱抵抗体があるが、これとても4mΩcmの発熱抵抗体に形成して実験してみると、水のオープンプールで一億パルスまで寿命が持たないという不満の残るものであり、また、抵抗値の温度変化率は0.05%/℃であり許容し得る程に十分小さいとは言い難いものであった。
したがって、このTa−Si−O系の発熱抵抗体をインクジェットプリンタヘッドに用いる場合には、インクによる腐蝕と上述のキャビテーション損傷の発生を防止するために、発熱抵抗体の表面を10000Å程度の保護膜で覆って保護する必要がある。そうすると、発熱抵抗体の発熱エネルギーの効率が悪くなり、その分だけ大きな発熱駆動のための電力が必要となる。したがって、低消費電力の要望に対処できないという問題を有していた。
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、高い抵抗率を有し抵抗の温度変化率が小さい発熱抵抗体と、その高抵抗率を経時的に安定して確保できる製造方法を提供することである。
以下に、本発明に係る発熱抵抗体の構成を述べる。先ず、請求項1記載の発明の発熱抵抗体は、組成の成分元素に少なくともTaとSiとOとNとHとを含むことを特徴とする。
本発明によれば、Ta−Si−O−N−H系の5元素から成る発熱抵抗体とすることにより、所望の高い抵抗率を経時及び温度変化に対して安定して備える発熱抵抗体を量産化が可能な程度に再現性良く製造することができる。
前記組成の成分元素の内、前記Nのモル%M2が「5モル%≦M2≦25モル%」で、SiとTaのモル比Si/Taが「0.35<Si/Ta<0.80」で、且つ、前記Oのモル%M1が「25モル%≦M1≦45モル%」の範囲内で、Ta:Si:O:Nのモル比が一定であり、且つ、前記Hの含有率が4モル%以上であることが好ましい。
本発明に係る発熱抵抗体の製造方法は、
TaとSiとOとNとHからなる発熱抵抗体の製造方法であって、
酸素ガス、窒素ガス、及び水蒸気又は水素ガスを所定の割合で含む雰囲気中でTaとSiからなるターゲットを使用してスパッタリングにより成膜することを特徴とする。
また、本発明によれば、上記製法により良好な発熱抵抗体を得ることができる。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、Ta−Si−O−N−H系の5元素から成る発熱抵抗体とすることにより、所望の高い抵抗率を経時及び温度変化に対して安定することができる。
また、本発明によれば、酸素ガス、窒素ガス、及び水蒸気又は水素ガスを所定の割合で含む雰囲気中でTaとSiからなるターゲットを使用してスパッタリングすることによって良好な発熱抵抗体を再現性良く製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの印字ヘッドの発熱抵抗体とその近傍の構成を模式的に示す断面図である。同図に示す印字ヘッド10は、所謂ルーフシュータ型のサーマルインクジェットプリンタの印字ヘッドである。この印字ヘッド10は、チップ基板11の表面に図示していないが厚さ1〜2μmの酸化膜(SiO2 )を形成してある。
その酸化膜の上に薄膜形成技術を用いてTa(タンタル)−Si(シリコン)−O(酸素)−N(窒素)の少なくとも4元素からなる発熱抵抗体膜12が形成されている。この発熱抵抗体膜12はフォトリソグラフィー技術によってストライプ状にパターニングされており、そのストライプ状の発熱抵抗体膜12上の発熱部13となる領域の両側(図では左右)に、Ti−W等のバリア層を介在させてAuなどによる電極膜が同じくストライプ状にパターニングされ、これらが一方は個別配線電極14として配置され、他方は給電共通電極15として配置されている。
このようなストライプ状の発熱抵抗体膜12上の発熱部13となる領域の両側に配線電極14及び15が積層されて成る複数条の発熱素子が所定の間隔で平行に図面垂直方向に並設形成されている。
複数条の発熱素子が形成されたチップ基板11上に、個々の発熱部13に対応するインク供給路を形成すべく、感光性ポリイミドなどの有機材料からなる隔壁部材がコーティングにより高さ20μm程度に形成され、これがフォトリソグラフィー技術によりパターン化された後、300℃〜400℃の熱を30分〜60分加えるキュア(乾燥硬化、焼成)が行われ、高さ10μm程度の上記感光性ポリイミドによる隔壁16が形成されている。
そして、発熱素子及び隔壁16が形成されたチップ基板11の最上層にオリフィス板17が積層され、そのオリフィス板17の上記発熱部13に対向する位置に、不図示の金属マスクを用いたドライエッチングにより形成されたインク吐出ノズル18が貫通している。上記の発熱部13は、例えば40μm程度の微細な間隔で配置されており、この発熱部13に、オリフィス板17と給電共通電極15間に形成された隔壁16の厚さと同じ10μmの高さのインク流路19を通じてインクが供給される。
同図に示すように、発熱部13は、通常みられる厚さ10000Åもある保護膜などを備えておらず、インク流路19を介して供給されるインクに対して直接接触するように露出している。
この発熱部13を形成している発熱抵抗体膜12は、上述したように成分元素として少なくともTaとSiとOとNとを含んでいる。ここで各元素の組成比の好適範囲は、SiとTaのモル比Si/Taが「0.35<Si/Ta<0.80」でより好ましくは「0.35<Si/Ta<0.45」であり、更にOのモル%M1が「25モル%≦M1≦45モル%」であり、且つNのモル%M2が「5モル%≦M2≦25モル%」である。
また、この発熱抵抗体膜12は、アモルファス構造をなしており、X線回折分析において発現する光強度のピークの角度が37.5度以下で、且つ抵抗率が4mΩcm以上であり、更に、0.5〜1eVの光の吸収係数が70000/cm未満である。
上記のTa、Si、O及びNからなる四元組成の発熱抵抗体は、発熱抵抗体として比較的優れた特性を有するとされるTa−Si−O系を母体として、様々な他の元素を組み合わせて四元組成の発熱抵抗体を試作し、それらの特性を実験により調査した結果に基づいて得られたものである。
図2は、上記の実験・調査において選別された四元組成の夫々異なるモル%で形成された3種類の試料を示す図表である。同図に示す試料番号1、2及び3の各試料は、いずれも組成の成分元素はTa、Si、O及びNからなり、同図表は各試料毎に各成分元素Ta、Si、O及びNのモル%、SiとTaのモル比Si/Ta、O+Nのモル%、及び抵抗率(mΩcm)を示している。
同図の試料番号1の試料はTaのモル%が42.5%、Siのモル%が17.4%、Oのモル%が32.2%、Nのモル%が8.0%、Si/Taのモル比が0.4、O+Nのモル%が40.2%、及び抵抗率が6.5mΩcmである。
また、試料番号2の試料はTaのモル%が43.9%、Siのモル%が19.4%、Oのモル%が29.4%、Nのモル%が7.0%、Si/Taのモル比が0.4、O+Nのモル%が37.4%、及び抵抗率が5.6mΩcmである。
また、試料番号3の試料はTaのモル%が27.7%、Siのモル%が17.9%、Oのモル%が40%、Nのモル%が15%、Si/Taのモル比が0.6、O+Nのモル%が54.7%、及び抵抗率が31mΩcmである。
なお、これらの成分元素Ta、Si、O及びNの測定量には多少の誤差を伴っており、したがって、これから算出された上記Ta、Si、O及びNのモル%の値は、これらを足した合計値が正確に100にはなっていない。即ち、試料(1)では4成分のモル%の値を足すと合計が100.1%、試料(2)では合計が99.7%、試料(3)では合計が100.6%となっている。
図3は、上記の本発明の発熱抵抗体に想到する根拠を示す図である。同図は、Ta−Si−O系の発熱抵抗体の成分比率の異なる6種類の試料及びTa−Si−Al−O系の発熱抵抗体の成分比率の異なる2種類の試料を夫々X線回折分析にかけたときにおいてX線強度のブロードなピークが発現する角度(以下、ピーク角度という)2θと、そのときの試料の抵抗率の関係を示す特性曲線である。なお、θはブラッグの反射角である。同図は横軸にピーク角度2θの値を角度degで示し、縦軸に抵抗率mΩcmを対数尺で示している。
同図に示すTa−Si−O系の試料の特性曲線aのみでなく、これにAlを含む系の試料の特性曲線bを見ても分かるように、2θと抵抗率には明らかな相関がある。また、実験中に認められた大まかな傾向としては、酸素量が増加すると2θが小さくなる傾向が挙げられる。これを本発明者は以下の様に解釈した。
アモルファス特有のブロードなピークは、アモルファスの最隣接原子の配列を現す構造因子(逆格子空間)を反映する。例えば3元ABC化合物は、A−A、A−B、B−B、A−C、B−C及びC−Cの6種類の構造因子の和からなり、これをフーリエ変換すると平均原子配列がわかる。
したがって、ピーク角度は平均原子配列を反映する。即ち図3に示されるようにピーク角度の2θは抵抗率と相関があり、更におおよその傾向として、酸素量が増加すると2θは小さくなる。このことから、ピーク角度がTa−O、Si−O、Al−O等の陽イオンと酸素の平均原子距離と配位数をある程度反映していると考えるに至った。これは、Ta−Ta、Ta−Siの平均原子距離も酸素濃度で変化し、反映をしていると考えることができるものである。
例えば、図3のTa−Si−O系の試料の特性曲線aにおける低抵抗側(同図の右下部分)で観測値のばらつきが大きくなるのは上記の考えと矛盾しない。なぜなら、通常、低抵抗側では、陰イオンの数が少ないため陽イオン間の配列の影響が大きくなるからである。
このように、X線回折分析のピーク角度は最近接原子間の結合を反映するために、発熱抵抗体の強度や、耐キャビテーション性を反映する可能性が高い。又抵抗率も試料のバンド構造すなわち原子の結合状態をある程度反映すると考えられる。
次に発明者は、図3に示す2つの特性曲線a及びbにおいて、特性曲線bが特性曲線aと平行にならず2θの高角度側(図の右方)が特性曲線aよりも高抵抗側(図の上方)に離れている、つまり、Ta−Si−O系の特性曲線aに比較して、Alを含むTa−Si−Al−O系の試料の特性曲線bは、2θの高角度側で抵抗率が高抵抗側にずれるということに注目した。
これは、Siの四価又はTaの五価に比べて、価数が少ない原子(Alの価数は三価)の存在によると考えられる。したがって、価数の変化をもたらす元素が重要であると考えた。事実、Ta−Si−O系でもSiが増加すると少し高抵抗になることが判明している。これは、Siリッチな試料では測定値が高角度側で高抵抗側にバラツクことを予想させるものである。
本発明者はTa−Si−O及びTa−Si−Al−O系を、(Ta−Si)−O及び(Ta−Si−Al)−O、つまり、陽イオンと陰イオンの組み合わせとしてとらえて考察を進め、以下の様に推理した。
先ず、価数の少ない原子を入れた場合、同一2θでの抵抗は高くなる。また、同一の2θにあって金属的でない領域でより抵抗の高くなる試料は、電子の局在性も強く、化学結合の強い可能性がある。これは耐キャビテーション性の向上を期待させる。
次に、ピーク角度2θの小さい物質は抵抗率の温度に対する変化(温度係数)が小さいことが発明者の実験で確認されている。
従って、抵抗率が大きく且つ2θの小さいことが本発明の発熱抵抗体の材料物質として要求される必要な物性条件となるのであるが、金属の場合は抵抗の温度係数が小さいことは元々期待されるものの残念ながら前述したように発熱抵抗体として適するような高抵抗率は得られない。そこで、非金属的物質であれば、2θが小さくて且つ高抵抗率な材料が存在する可能性があると考えられる。
更に、(Ta−Si−Al)−Oの相関特性bから分かるように、(Ta−Si−α)−Oでは、2θの低角度側での抵抗率を4mΩcm以上に大きくすることは難しそうであることから、陰イオンでの変化、すなわち、(Ta−Si)−(O−β)での新材料を見つけ出す必要があった。酸素はマイナス二価であるので、マイナス三価の窒素を導入した場合、高抵抗領域の試料が得やすく、また上記の金属的でない領域(2θのピーク角度が37.5deg以下)で、より抵抗の高くなる(抵抗率が4mΩcm以上)材料が得られる可能性がある、と考えて、Ta−Si−O−N系の成膜を行った。Ta−Si−O−N膜は、TaとSiのストライプターゲットを使用し、Arに酸素と窒素を混合し、この雰囲気でDCスパッタすることによって作成した。
このときのスパッタ装置の到達真空度は0.5×1.33×10E−4Pa、スパッタ電力は1kW、成膜速度は24Å/min、基板には分析用としてSi基板を使用し、表面に1μmのSiO2 を形成したSi基板(Si+SiO2 :1μm基板)を耐パルス試験用として同一バッチ内に置いた。
上記のスパッタリング工程により得られたTa−Si−O−N系膜をアニール処理することにより、抵抗率や抵抗の対温度変化率等の各特性が安定化された発熱抵抗体が得られる。
図4は、上記成膜したTa−Si−O−N膜のX線回折分析の測定結果を示す図である。同図に示すX線強度のパターンは単一のブロードピークを持ち、アモルフアス構造であることを示している。尚、同図は、図3に示した試料番号3の試料の測定結果を示している。また、X線強度の単位は任意単位(arbitrary unit)である。
図5は、図2の表に示したTa−Si−O−N膜の3点の試料について上記ピーク角度(2θ)の位置と抵抗率との関係を示した特性図であり、比較参考のために図3に示したTa−Si−O系の特性曲線a及びTa−Si−Al−O系の特性曲線bも合わせて示している。図5に見られるように、これら3点の発熱抵抗体は、サーマルインクジェットの発熱抵抗体として好適な2θが37.5以下で抵抗率が4mΩcm以上の範囲に存在している。
図2に示した試料番号1〜3の試料は、Si基板上に作成した。分析には、RBS(ラザフォード後方散乱分光計)を使用した。ただしこのRBSは、軽い元素である窒素の検出がなかなか困難であるので、結果としての検出値が低くなる試料番号1及び2の試料の窒素の定量は、ESCA(X線光電子分光計の一種)によって得たものである。
図6は、これらのTa−Si−O−Nの発熱抵抗体の抵抗と温度との関係を示す図である。尚、同図には比較参考のため、従来の2種類のTa−Si−Oの発熱抵抗体の抵抗と温度の関係も示している。即ち、同図に示す特性曲線dは本発明のTa−Si−O−Nの図2の試料番号2の試料の特性曲線であり、図6の特性曲線eは従来のTa−Si−Oの発熱抵抗体で室温抵抗が4mΩcmのもの、特性曲線fは従来のTa−Si−Oの発熱抵抗体で室温抵抗が2mΩcmのものである。同図は横軸に温度(℃)を示し、縦軸に室温で規格化した抵抗「R(室温)」と測定温度Tに応じて変化した抵抗「R(T)」との比を示している。
測定には同一バッチのSi+SiO2:1μm基板に成膜した試料を用い、オープンプールの試験の場合と同様にパターニングした。尚、本発明のTa−Si−O−N発熱抵抗体膜の形状は40μm角である。抵抗及び温度の測定は以下の方法で行った。
電気抵抗値は、上記のパターニングした発熱抵抗体に定電流を流し、デジタルボルトメータで電圧測定した。また、温度は、発熱抵抗体に流す上記の定電流量を各種変化させて抵抗体を加熱してその温度を変化させながら測定した。この温度は、微小領域が測定可能な赤外放射温度計により測定した。図6に示すように、特性曲線e又はfに示す従来の発熱抵抗体の抵抗の温度変化率がいずれも大きいのに対して、特性曲線dに示す本発明のTa−Si−O−Nの発熱抵抗体の抵抗の対温度変化率は、400℃で10%以内であり、抵抗率が5mΩcm以上であるにも拘らず、変化率0.025%/℃以下であって極めて変化率が小さいことが分かる。
図7は、上記Ta−Si−O−N発熱抵抗体膜の石英基板上における光の吸収特性を示す図である。これは、上記Ta−Si−O−N発熱抵抗体膜の特性を他の面から検証する目的で行ったものであり、石英基板に1200Å、600Åの膜を図2の試料番号2の試料と同一条件で作成し、その試料の光の透過率から吸収係数を求めた結果を示したものである。
同図は横軸に光のエネルギー「eV」を示し、縦軸に光の吸収係数「cm−1」を示している。同図は、0.5eVから1eVの範囲で吸収係数は小さく、それより右方の高エネルギー領域では吸収係数が順次大きくなっていくことを示している。この図に見られるように、吸収係数がゼロに近い範囲はなく明確な光学ギャップは存在しなかった。
しかしながら、ここに見られる全体の振る舞いは、バンドギャップの存在を示唆している。つまり、ここに示される光学特性と上述した温度係数が小さい(温度変化率が0.025%/℃以下)ことを考えると、本発明の発熱抵抗体は縮退半導体的である。すなわち、電気の担体となる自由電子または正孔のエネルギー分布が縮退したフェルミ分布をなしている半導体に酷似している。
次に、図2に示す試料番号1の試料と同一バッチで酸化膜付きSi基板に作成したTa−Si−O−N試料に、配線用のW−Ti膜とAu膜を形成し、パターンニングしたものを切り出して、耐キャビテーション性を評価するために水のオープンプールの試験を行った。
この水のオープンプールにおける発熱抵抗体としての試料の形状は25μm角、膜の厚さは4800Åである。また、印加パルスの周波数は10kHz、パルス幅は1μsecである。これらのパルス幅及び周波数は、同一条件で試作した発熱抵抗体を用いたインクジェットプリンタヘッドのインク吐出性能より決定した。
図8は、上記水のオープンプールでの測定結果を示す図であり、図2に示した試料番号1の試料と同一バッチで成膜した試料の測定結果を示す図である。同図は横軸に印加パルス回数を示し、縦軸に抵抗値を単位「Ω」で示している。同図に示すように、ch0〜ch65までの9素子のうち、いずれも1億回の印加パルスで断線したものはなく、良好な結果が得られた。また、この試料を取り出して電子顕微鏡で調べたが大きなダメージは観察されていない。
図9は、上記水のオープンプールでの測定結果を示す図であり、図2に示した試料番号2の試料と同一バッチで成膜した試料の測定結果を示す図である。同図も横軸に印加パルス回数を示し、縦軸に抵抗値を単位「Ω」で示している。同図に示す例は、試料が断線するまでパルスを印加したものである。同図に示すように、ch0〜ch65までの9素子のうち、最初の断線は2億パルスで発生している。
ここで、上記のようなオープンプール試験は、耐キャビテーション試験としては破壊試験に近い過酷な試験であることは良く知られている。すなわち、このような苛酷なオープンプール試験で断線の発生する印加パルスの回数が一億パルス以上であるということは、インクジェットプリンタヘッドの抵抗体の耐久性としてはパーマネントレベルであることを意味している。
上記の試験結果に示される耐キャビテーション性に優れた図2の試料(1)及び(2)は、同図に示したように、抵抗率は5mΩcm以上であり、インクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体として要求される水準を十分に満たしているものである。
本発明者は、更に念の為、上記試料(2)と同一バッチの試料に隔壁を形成しその上にオリフィス板を張り付けた後このオリフィス板に吐出ノズルを形成して評価用のインクジェットヘッドを試作した。そして、水とインクの吐出を実行させて、上記試料(2)の発熱抵抗体としての耐キャビテーション性の面から見た劣化の程度を調べる試験を行った。ここではこの試験を、オープンプール試験と比較対照するためクローズプール試験と呼ぶことにする。
図10は、試料(2)の水のクローズプール試験の結果と水のオープンプール試験の結果をまとめて示す図表である。この発熱抵抗体としての試料(2)は、保護膜のない構造であるにも拘らず、同図に示すように、水の吐出においてオープンプール試験で2億回以上、及びクローズプール試験で10億回以上の耐キャビテーション性を示しており、これはオープンプール試験での印加パルス目標値である1億回、及びクローズプール試験での印加パルス目標値である10億回を満たしている。
また、特には図示しないが、インク(黒色インク)を使用した場合では、発熱抵抗体以外の構造材の劣化により、3億回程度のパルス試験しか行うことがきなかったが、その直後の観察において発熱抵抗体の劣化は認められなかった。
このように、Ta−Si−O−N系の抵抗体膜が、インクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体として極めて優れた性質を持つものであることが判明したことから、本発明者は、Ta−Si−O−N系発熱抵抗体を構成する各元素の組成比の好適範囲を特定すべく、組成比の異なるTa−Si−O−N系膜を更に作成して実験を繰り返した。
図11は、図2に示した試料番号1〜3の試料に更に試料番号4〜11の試料を追加して一覧にした図表である。追加試料は、上述の実験結果から得られた経験に基づいて、組成比を適宜異ならせて調製したものである。
又、図11には、これらの試料に対する図8、図9に示した1億パルス試験と、X線回析ピーク角2θ(図4参照)の観察結果を示してある。これら11点の試料の内、試料番号7、10及び11の試料が1億パルス試験の結果でサーマルインクジェットプリンタの発熱抵抗体として不適格である。これらの試料は、Oのモル%、Nのモル%、又はSiとTaのモル比において、いずれかの値(網点表示値)が、1億パルス試験に合格した他の試料の持つ値に比較して上か下に大きく離れていることが分かる。
これらの内、1億パルス試験に合格した残りの試料、つまり試料番号1〜6、8、及び9の試料のデータ及びこれまでの他の実験結果から総合的に、Oのモル%をM1として「25モル%≦M1≦45モル%」であるもの、Nのモル%をM2として「5モル%≦M2≦25モル%」であるもの、そして、SiとTaのモル比Si/Taが「0.35<Si/Ta<0.80」であるものが、発熱抵抗体として優れているということができる。
図12は、図5に示したX線回折分析において発現するブロードなピークの角度と、そのときの試料の抵抗率の関係を示す特性曲線に、上記の試料番号4〜11の試料を追加して示したものである。図12では、1億パルス試験に合格した試料を黒丸ドットで示し、1億パルス試験で不適格と判明した試料を白丸ドットで示している。
前述した図3や図5では、発熱抵抗体として好適なピーク角度と抵抗率との相関範囲は、ピーク角度2θが37.5deg以下、抵抗率が4mΩcm以上の範囲であると述べたが、図12で見ると、上記の1億パルス試験で不適格と判明した試料番号7、10及び11の試料も上記の2θのピーク角度が37.5deg以下、抵抗率が4mΩcm以上の範囲に入っている。したがって、上記の範囲は発熱抵抗体としての必要条件としての好適範囲であり、サーマルインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体として耐キャビテーション性等の耐久性を考慮した場合は十分な条件とは言えない。
ところで、Ta−Si−O−N系の発熱抵抗体膜は成膜後、抵抗値が時間と共に変化する傾向がある。このような抵抗値の変化は、これを用いる装置全体の信頼性や設計に深刻な問題をもたらすが、図3の説明において簡単に触れたように、スパッタリング工程により得られたTa−Si−O−N系膜の発熱抵抗体は、これをアニール処理することにより、抵抗率や抵抗の対温度変化率等の各特性がより安定することが実験の結果判明している。
したがって、Ta−Si−O−N系膜の発熱抵抗体の安定した抵抗値を得るためには、アニール処理が製造工程上の重要な要素になるものと考えられる。以下、そのTa−Si−O−N系膜の発熱抵抗体に対するアニール処理について詳述する。
先ず、スパッタリング装置により、Ta板に所定の量のSi(例えばTa:Si=3:1)を埋め込んだターゲットを使用し、装置内部を1.33×10-4Pa以下に排気して、アルゴンガスを所定量導入し、スパッタを行った。基板温度は約200℃、成膜速度は約20Å/secである。
このような方法で、熱酸化膜を形成したSi基板に膜厚4800ÅのTa−Si−O−N膜を形成した。これらの試料がX線回折によってアモルフアスであることが確認されたことは前述した。そして、このままでは、上記のように抵抗値が時間と共に変化するという不具合が発生するが、成膜直後にアニールすると、抵抗特性が安定する。
図13は、Ta−Si−O−N系膜で成膜直後にアニールしたものとアニールしなかったものの各抵抗値の経時変化を示す特性図である。この試料は図11に示すNo4の試料であり、その成分組成は、Taが42.0%、Siが16.0%、Oが30.0%、Nが12.0%である。この試料に対するアニールは、大気中で温度400℃で行った。
同図(b) は、横軸には長い経過時間を見るために時間を対数目盛で示しており、縦軸には、成膜直後の初期状態(便宜的に対数目盛り1で表わす)の抵抗値を100とし、これを基準としてその後の抵抗値の変化を、基準値100に対する相対抵抗値として示している。そして、上記成膜直後のままのものを黒丸ドットの曲線hで示し、これをアニールしたものを黒四角ドットの曲線gで示している。
同図(b) に示すように、一方の黒丸ドットの曲線hで示すアニールしていない発熱抵抗体膜は時間の経過とともに抵抗値が増大する。これに対して他方の黒四角ドットの曲線gで示すアニールした発熱抵抗体膜はアニールによって抵抗値が20〜30%増加するが、その後は時間の経過に拘わりなく一定の抵抗値を維持している。
このアニールによる酸化膜の存在や酸素の拡散を調査するために、オージェ電子分光法(Auger electron spectroscopy)による深さ方向分析を行ったが、膜厚30Å〜50Å、つまり膜厚全体の僅か0.1%の自然酸化膜のみであり、アニールによる酸化膜や酸素(O)の拡散は認められなかった。したがって、アニールによる抵抗率の増加は、酸化では説明できないことになる。
しかし、いずれにしても、成膜後にアニール処理なしのTa−Si−0−N膜は、抵抗値が不安定である。ここで、更に実際の印字ヘッドに近いオープンプールでのステップアップストレス試験(SST)によって、アニール処理有りとアニール処理無しの効果の違いを調査した。このSSTに用いた試料の発熱抵抗体膜は、No4(図11参照)の試料とほぼ同一条件で作成した。
図14は、上記アニール処理有りの試料とアニール処理無しの試料のSST試験結果を示す特性図である。同図は、横軸に2μsecのパルスを10kHzで印加したときの印加パルスエネルギーを、μJ単位で示しており、縦軸に抵抗の変化率を%単位で示している。アニール処理有りの試料の膜厚は3600Åであり、黒丸ドットの曲線iで示している。アニール処理無しの試料の膜厚は7000Åであり、黒四角ドットの曲線jで示している。いずれも発熱面のサイズは25μm角である。
上記の印加パルスは、インクを吐出するための膜気泡の発泡条件の下限近傍となる1.2μJのところから、耐性の上限となる試料(発熱抵抗体膜)の変色が始まる5μJ近傍まで行って、この間の初期抵抗値に対する変化率を調査した。通常、試料は他の特性が同一であれば膜厚の厚い試料の方が丈夫である。しかしながら、同図に示すように、試料が変色した時点での抵抗値の変化率は、膜厚の厚いアニール処理無しの試料のほうが、より抵抗率の変化が大きい。
また、実際のインクの吐出に適用される印加パルスエネルギーの実用範囲は同図の破線kで示す2μJ近傍から同じく破線mで示す3μJ近傍までであり、この間での抵抗値の変化率をみても、黒丸ドットの曲線iで示すアニール有りの試料は抵抗値に変化が無く安定しており、黒四角ドットの曲線jで示すアニール無しの試料は抵抗値が一旦低くなってからやや上昇するという不安定な経過を示している。
このように、図13に示した経時的な変化だけでなく、実用を想定した印加パルスによる試験結果においても、Ta−Si−O−N膜の成膜後のアニールが極めて有用であることが判明した。
尚、上記の試料作成及びアニールの条件は次の通りである。すなわちTa−Si−O−N発熱抵抗体膜はスパッタリングにより形成、スパッタリング条件は、ターゲットはTa板に所定量のSiを埋め込んだもの、排気真空度は1.33×10-4Pa以下、基板温度は200℃、導入ガスはAr、成膜速度は20Å/sec、その後に配線電極膜を成膜、更に配線電極のパターニングと発熱抵抗体のパターニング、最後に発熱抵抗体のアニール処理、アニール条件は、雰囲気は大気、温度は400℃、時間は10分、である。
ところで、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体を駆動する電極は、図1では図示を省略したが、二層構造になっている。これは、電極を発熱抵抗膜に重ねて構成する都合上、発熱抵抗膜との接着性が良いことが好ましいが、電極として最適なAuは発熱抵抗体として最適なTa−Si−O−N膜とは接着性が良くない。そこでAuとTa−Si−O−Nの両方に接着性が良いW−Ti膜を下地にしてAu膜を形成する。つまり、電極は密着膜のW−Tiと電極膜のAuとの二層構造になっている。
ところが、インクが弱電解質の性質を有しているため、電極がインク中に露出した状態であると、二層構造の電極間に、接触電位差によって電子の仕事関数の小さい金属から大きい金属に向かってトンネル効果と呼ばれる電子の移動が発生する。
このような電子の移動は本来は両金属中の電子の電気化学的ポテンシャルが等しくなるところで平衝に達するが、上部層の電極膜Auと下地層の電極膜W−Tiの場合は、その側壁がインクという電解質の中に存在するため平衝反応に到達することが無く、アノード溶解反応が連続的に生じて接合部から腐蝕反応(電蝕作用)がどんどん進行してついには印字ヘッドの構造破壊を引き起こす虞がある。
また、インク中に電流が流れることによりインクが電気分解されて気泡が発生したり、インク吐出させた後に気泡が収縮する際のキャビテーションにより発熱抵抗体が破壊される虞もある。
したがって、そのような電蝕作用や電気分解及びキャビテーション破壊を防止するため、発熱抵抗体及び電極部分を保護膜で被覆する必要がある。この保護膜としては、Ta−Si−O等の酸化物絶縁保護膜が特に優れている。
図15(a) 〜(d) は、発熱抵抗体及び電極部分を保護膜で被覆する構造を説明する図である。図15(a) は、図1の印字ヘッド10の発熱部13、個別配線電極14及び給電共通電極15をTa−Si−Oの保護膜21で被覆した状態を示す図であり、図15(b) は、その電極(個別配線電極14、給電共通電極15)部分の構成を詳細に示す図である。図15(b) に示すように電極部分は上述したようにW−Tiからなる密着膜22とAuからなる電極膜23の二層構造になっている。
ところが、この上に、図15(a) に示すようにTa−Si−Oの保護膜21を被着させようとすると、Ta−Si−OとAuとの接着性がよくないために、保護膜21が剥離し易くなる。保護膜21が剥離するとインクの電気分解や発熱抵抗体膜のキャビテーション破壊等を引き起こす。
したがって、図15(c) に示すように、この場合も、Au(電極膜23)とTa−Si−O(保護膜21)の両方に接着性が良いW−Ti膜24を電極膜上に被着させた上で、この上から、図15(d) に示すように、Ta−Si−Oの保護膜21で被覆する。これによって電極及び発熱抵抗体膜が、インクによる腐蝕やキャビテーション等のダメージから保護されることになる。
ところが、図15(c) のようにW−Tiの密着膜24を電極上に被着させた状態で、発熱部13つまり上述した発熱抵抗体膜の大気中でのアニールを行うと、高温下でラジカル原子となった大気中の酸素が密着膜24の表面を酸化して酸化膜を形成する。この酸化膜はTa−Si−Oの保護膜21との密着性が劣悪であり、W−Tiの密着膜24が密着層としての用を成さなくなるという問題が発生する。
しかし本発明のTa−Si−O−N膜の発熱抵抗体に対するアニール処理は、上記のような保護膜21を形成する場合でも密着膜が有効に働くように、密着膜24が酸化されない環境でアニール処理を行う。以下、これを本発明方法の第2の実施の形態として説明する。
先ず、密着膜に対するラジカル酸素の作用を回避するために、アニール処理を不活性ガス中で行うことにする。不活性ガスは、希ガスと呼ばれる0族元素のHe、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnの6元素にN2 ガス等を加えた反応性に乏しい気体の総称であるが、このうち汎用されているN2 とArを用いることにした。処理手順と条件は次の通りである。
(1)Ta−Si−O−N発熱抵抗体膜の成膜
(2)密着膜(W−Ti)を成膜
(3)電極膜(Au)の成膜
(4)密着膜(W−Ti)を成膜
(5)配線電極層(W−Ti、Au、W−Ti)のパターニング
(6)発熱抵抗体膜のパターニング
(7)発熱抵抗体膜のアニール処理
・雰囲気:N2 (不活性ガス)中
・温度 :350℃〜450℃
・時間 :10〜30分
(8)酸化物絶縁保護膜(Ta−Si−O)の成膜
(9)酸化物絶縁保護膜(Ta−Si−O)のパターニング
すなわち、N2 の雰囲気中で発熱低抗体膜のアニール処理を行っているので密着膜24が酸化されず、Ta−Si−Oの酸化物絶縁保護膜21が良好に配線電極層に密着して形成される。
尚、アニール処理の雰囲気としてArガスを使用する場合も、使用ガスが異なるだけで、他の処理条件は上記のN2 ガスを雰囲気に用いる場合と同様でる。また、他の方法として、密着膜24をラジカル酸素に接触させないようにすれば良いので、発熱抵抗体の成膜後のスパッタリングチャンバ内で、真空状態で、上記の成膜に連続してアニール処理を行うようにしてもよい。真空状態でのアニール処理は、輻射熱を用いることによって可能である。
また、同様に密着膜24をラジカル酸素に接触させないようにすれば良いのであるから、先にTa−Si−Oの酸化物絶縁保護膜を成膜してしまってから、アニール処理を行ってもよい。これであると、大気中でのアニール処理が可能である。
これを第3の実施の形態として、処理手順と条件を下記に示す。
(1)Ta−Si−O−N発熱抵抗体膜の成膜
(2)密着膜(W−Ti)を成膜
(3)電極膜(Au)の成膜
(4)密着膜(W−Ti)を成膜
(5)配線電極層(W−Ti、Au、W−Ti)のパターニング
(6)発熱抵抗体のパターニング
(7)酸化物絶縁保護膜(Ta−Si−O)の成膜
(8)酸化物絶縁保護膜(Ta−Si−O)のパターニング
(9)発熱低抗体膜のアニール処理
・雰囲気:大気中
・温度 :350℃〜450℃
・時間 :10〜30分
図16は、上述した雰囲気が大気中の場合、N2 ガス中の場合、Arガス中の場合、及びTa−Si−Oの酸化物絶縁保護膜の成膜・パターニング後に大気中で行う場合(以下、これを「保護膜付き大気中」という)の、アニール処理の雰囲気の条件のみを変更した4通りの試験結果を示す図である。同図は、横軸にアニール温度(℃)を示し、縦軸に発熱抵抗体膜のシート抵抗値の増加率(%)を示している。また、このアニール時間は10分間である。
同図に示すように、雰囲気が大気中(黒丸ドットの曲線)、N2 ガス中(黒三角ドットの曲線)、Arガス中(白三角ドットの曲線)、及び保護膜付き大気中(バツ印ドットの曲線)のいずれの場合も、温度200℃から400℃までは、シート抵抗値の増加率はほぼ同じ割合で直線的に増加していく。そして、400℃を超えたあたりから増加率がやや低下する。なお、抵抗値の増加率は低下しても抵抗値は引き続き増加している。同図から、アニール処理による抵抗値安定効果は、熱のみが関与し、雰囲気によらないことが判明する。
アニール温度の好適範囲の下限値は350℃とするのがよい。その根拠は、発熱抵抗体膜そのものが発熱駆動時には300℃を超えるから、アニール処理温度が300℃以下ではアニール処理する意味が無いからである。また上限値については、同図から400℃以上では、温度が高いほど抵抗値の増加率が小さくなることからアニール温度が高いほど変化の小さい安定した抵抗値が得られると考えられる。しかし、600℃より高い温度でアニール処理するとサーマルインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体としての耐キャビテーション性が低下することが分かっているので、耐キャビテーション性の確保という点から、サーマルインクジェットプリンタヘッドの発熱抵抗体のアニール処理の上限値は600℃とするのがよい。また、発熱抵抗体と駆動回路を同一シリコン基板上に形成するモノリシック型インクジェットプリンタヘッドの場合は、これらの発熱抵抗体膜や電極が形成されているシリコン基板にモノリシックに形成されているLSIの拡散層の耐久限度が通常400℃で延べ1時間程度であるから、450℃がアニール処理温度の上限値となる。
図17は、上記同様に雰囲気が大気中、N2 ガス中、Arガス中、及び保護膜付き大気中の4通りの試験結果において、アニール時間と相対抵抗値との関係を示す図である。同図は横軸にアニール時間(分)を示し、縦軸に初期値を100とした相対抵抗値を示している。尚、アニール温度は400℃である。
同図に示すように、雰囲気が大気中(白丸ドットの曲線)、N2 ガス中(白三角ドットの曲線)、Arガス中(黒三角ドットの曲線)、及び保護膜付き大気中(バツ印ドットの曲線)のいずれの場合も、アニール開始から時間4分までは急速に抵抗値が上昇して、その後は、時間100分まで僅かながら上昇傾向を示すがその後時間30分までの経過を見ても殆ど変化が無くほぼ抵抗値が安定したものと判断できる。
上述のデータより、本発明の発熱抵抗体膜をアニール処理する際のアニール時間は10分〜30分が好適である。即ち、抵抗値の際立った上昇傾向がほぼ止まる10分までを下限とし、モノリシック型サーマルインクジェットプリンタヘッドの場合のLSIが作り込まれたシリコン基板の耐久限度が400℃で延べ1時間であること等を考慮すれば、抵抗値が一定の値で略安定する30分を上限値とするのが妥当である。
このように、Ta−Si−O−N発熱抵抗体膜の抵抗値の安定化はアニール処理によって得られる。そして、アニール処理の効果は雰囲気の違いや表面被覆層の有無に影響されないので、発熱素子に保護膜を被覆する場合は、不活性ガス中或いは保護膜を被着した後にアニール処理を行うことにより、発熱素子と保護膜間の密着層膜が大気中でアニールする場合の酸化作用により劣化する不具合が防止され、保護膜が強固に固着された信頼性の高いサーマルインクジェットプリンタヘッドが得られる。
次に、本発明の他の実施形態として、上述したTa、Si、O、Nの4元素にHを加えた5元素からなる発熱抵抗体について、詳述する。
本発明の発熱抵抗体をTa、Si、O、N、Hの5元素構成にすると、上述したTa、Si、O、Nの4元素の構成の高抵抗率を備えるTa−Si−O−N系発熱抵抗体の場合にややもすると見られる組成比が同じでも抵抗率にばらつきが出るという再現性の難点が改善され、所望の高抵抗率を安定して備えると共にキャビテーション耐性に優れた上述の発熱抵抗体を極めて再現性で良く製造することができる。
先ず、Taモル%:Siモル%:Oモル%:Nモル%が例えばほぼ30:20:36:14の割合の発熱抵抗体が得られるように、適切なTaとSiの含有比を備えたストライプターゲットを使用し、ガスにはAr、O2 、及びN2 の割合を適宜に調節して、DCマグネトロンスパッタにより、試料をSi基板に成膜し、組成をRBSで分析した。
そうすると、組成がほぼ同一でありながら、抵抗率が2倍程度異なる試料が観察された。つまり成膜条件は同一であっても成膜ロットによって抵抗率がばらつくことが判明した。そして、更に抵抗率が4mΩcm未満の低抵抗の膜の再現性良く製造できるが、抵抗率が4mΩcm以上の高抵抗の膜は製造の再現性に難点のあることが判明した。もちろん、OやNの陰イオンの量を増加させると、より高抵抗率になるが、製造の再現性に難点があることには変わりは無い。
そこで上記と同様の高抵抗率の試料を石英基板に成膜し、その光の透過率を測定した。膜厚は600Å、1200Åの2種類である。その測定結果から光の吸収係数を求めると、特には図示しないが、0.78eVに極小を持ち、1eVから急速に大きくなる図7に示す特性曲線と類似の特性が観察された。これは、バンドギャップの存在を予感させるデータである。尚、参考までに付言すると、反射率は3eVで27.1%であった。
このような試料膜の振る舞いは以下のように推定される。即ち、上記試料膜は基本的バンドギャップを有する半導体であり、非常に多くの局在レベルが存在する状態であると考えられる。フェルミレベルの位置は不明であるが、価電子帯あるいは伝導帯の中に入ることも十分考えられる。この場合は、縮退半導体的であり、温度係数は小さいが正負両方の可能性を有すると思われる。
また局在レベルにフェルミレベルの位置がある場合は、ホッピング伝導的になる。そして、Ta−Si−O−N系のものは室温以上の温度で弱い負の温度係数を持つことも判明している。したがって、いずれの場合もホッピング伝導的である可能性がある。
このように、ホッピング伝導を仮定したバンド構造を考えることができるのなら、状態密度の小さい局在レベルをホッピングで電流が流れることになり、不純物やそれによるダングリンボンドの数の減少により、その局在レベルの状態密度は減少し、電流のキャリヤも減少すると考えられる。
この考え方に従うならば、ダングリングボンドを積極的に少なくすることによって抵抗を高抵抗にコントロール可能なはずである。そこで、以下に述べる方法により、試料膜への水素導入を試みた。
先ず、(1)適当な大きさのSUS板を水につけた後に大気中に放置して自然乾燥させ、(2)このSUS板をスパッタ装置の成膜室に取り付け、通常の基板(シリコン、水晶、ガラスなど)をセットし、(3)装置内を例えば真空度1.3-4Pa以下まで真空にし、(4)スパッタ開始直前にSUS板を例えば150℃に加熱することによりSUS板に残留していた水分を蒸発させて水素を含むガスつまり水蒸気を含む雰囲気を形成し、(5)通常のスパッタを開始する、という手順で、試料の発熱抵抗体膜を成膜する。
このとき、上記加熱後のスパッタ成膜直前の水蒸気の分圧は、たとえば1.3-4Paになる。この方法で、Ta:Si:O:Nのモル比が30:20:36:14である発熱抵抗体膜が得られるようにターゲットのTa:SiやAr、O2 、及びN2 の導入ガスの割合を一定にしたままSUS板の加熱温度を変化させ、発熱抵抗体膜への水素導入量を変化させることを試みた。
図18(a) は、上記のようにして得られた試料番号1〜4の4種類の試料の組成及び抵抗率を示す図表である。4種類の試料は共にTa:Si:O:Nの組成比は同一であっても、水素の割合が異なるので、5元素として全体の組成比を見た場合は、Ta、Si、O及びNの割合が変化している。
同図表の5元素の成分比は、まず、RBS分析でTa:Si:O:Nの割合がほぼ同一であることを確認した後に、更にHFS(Hydrogen Forward Scattering analysis)分析を行うことにより得られた。
このRBS分析及びHFS分析には、Si基板に成膜した試料を用い、且つ抵抗率の測定には、Si上に1μmの厚さの熱酸化膜が形成されている基板上に成膜した試料を用いた。分析条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275MeV、検出角度はHFSの場合は30°、RBSの場合は160°、HBSのイオンビーム照射角度は試料法線から75°である。
同様にして、図18(b) 及び同図(c) に示すように、Ta:Si:O:Nのモル比を28:20:35:17に一定にしたもの、及び25:15:40:20に一定にしたものを、水素の割合を異ならせてそれぞれ4種類の試料を作成した。
そして、水素濃度と抵抗率の関係を調べると、同図(a),(b),(c) に示すように、予想した通り、水素濃度が増加するにつれて抵抗率が増加する傾向を示した。すなわち、水素モル%(H欄)を、3.0、3.5、4.8、9.5、と増加させるにつれて、抵抗率が、同図(a) の場合では2.4、3.3、5.0、5.9、同図(b) の場合では3.0、3.6、5.7、6.3、同図(c) の場合では3.6、4.1、6.5、7.7と増加している。
図19は、上記図表18(a),(b),(c) に示したTa:Si:O:Nのモル比が同一な3つのグループの各4種類の試料についての抵抗率と水素濃度との関係を示す特性図である。同図は縦軸に抵抗率をmΩcmで示し、横軸に水素濃度をモル%で示している。同図の黒点を結んで示す曲線は図18(a) に示す図表の試料、△点を結んで示す曲線は図18(b) に示す図表の試料、×点を結んで示す曲線は図18(c) に示す試料である。
この図19に示すように、水素濃度が3モル%近傍では抵抗率が小さく、水素濃度が4モル%以上になると抵抗率は急激に上昇する。そして、水素濃度が10モル%でほぼ飽和状態になる傾向が判明する。すなわち、水素濃度が4モル%以上になるようにして成膜すると所望の抵抗率が4mΩcm以上の高抵抗発熱抵抗体が得られることが判明する。
図20は、上記のように水素を含み高抵抗率化した試料膜の耐パルス試験の結果を示す図である。この試料膜は水素を4.8モル%含み、抵抗値は130Ωである。この耐パルス試験はオープンプールで行い、試料素子(発熱抵抗体)の大きさは25μm角であり、その膜厚は4300Åであり、印加パルスの周波数は10kHz、そのパルス幅は1μsecである。同図に示すように、ch02〜ch66の65個のチャンネル内の選択した9チャンネルの試料素子(同一組成の試料膜で形成した)で1億回の印加パルスで断線したものはない。
図21も同様に水素を含んで高抵抗率化した試料膜の耐パルス試験の結果を示す図である。この例では水素を9.5モル%含み、抵抗値は180Ωである。他の条件は図4と同様であり、この場合も選択した9チャンネルの試料素子はいずれも一億パルスで断線はなく、良好な結果が得られた。
なお、上述したスパッタリング工程において、雰囲気中に水蒸気ではなく、水素ガスそのものを導入することによっても、所望の高抵抗率の発熱抵抗体を製造することができる。前述した水蒸気による方法も水素ガスそのものを導入する方法も、スパッタリング雰囲気中の水素濃度の制御は比較的容易であり、所望の抵抗率が4mΩcm以上で好ましくは5mΩcm以上の高抵抗率の発熱抵抗体を再現性良く容易に製造することができる。
また、本実施形態のTa、Si、O、NとHの5元素からなる発熱抵抗体に対しては、アニール処理を行わなくても高抵抗率が経時的に安定して得られるが、経時及び温度変化に対してより安定した高抵抗率の発熱抵抗体を再現性良く製造するには、アニール処理を行ったほうが良い。
以上のようにして、経時的に安定して確保できる高い抵抗率を有し抵抗の温度変化率が小さくキャビテーション耐性が良いばかりでなく、製造工程において再現性の良いインクジェットプリンタに好適な発熱抵抗体とその熱抵抗体の製造方法が実現可能となる。
尚、本発明の発熱抵抗体はサーマルインクジェットヘッドの発熱抵抗体以外の種々の発熱抵抗体としても適用可能であることは勿論である。
一実施の形態におけるインクジェットプリンタの印字ヘッドの発熱抵抗体とその近傍の構成を模式的に示す断面図である。 実験・調査において最終的に選別された四元組成の異なるモル比で形成された3種類の試料を示す図表である。 本発明の根拠となるTa−Si−O系及びTa−Si−Al−O系の夫々成分比率の異なる試料をX線回折分析にかけて発現するピーク角度と抵抗率の関係を示す図である。 本発明のTa−Si−O−N膜の試料をX線回折分析により測定した結果を示す図である。 本発明のTa−Si−O−N膜のX線回折分析におけるピーク角度(2θ)の位置と抵抗率との関係特性図を従来例と共に示す図である。 本発明のTa−Si−O−N膜の抵抗と温度との関係を従来例と共に示す図である。 本発明のTa−Si−O−N膜の石英基板上における光の吸収特性を示す図である。 水のオープンプールでの測定結果を示す図であり試料番号1の試料と同一バッチで成膜した試料の測定結果を示す図である。 水のオープンプールでの測定結果を示す図であり試料番号2の試料と同一バッチで成膜した試料の測定結果を示す図である。 試料(2)のクローズプール試験の結果をオープンプール試験の結果と共にまとめて示す図表である。 四元組成の異なるモル比で作成された試料番号1〜3の試料に更に試料番号4〜11の試料を追加して一覧にした図表である。 X線回折分析において発現するブロードなピークの角度とそのときの試料の抵抗率の関係を示す特性曲線に試料番号1〜11の試料を追加して示した特性図である。 Ta−Si−O−N系膜試料で、成膜直後にアニールしたものとアニールしなかったものとの各抵抗値の経時変化を示す特性図である。 アニール処理有りの試料とアニール処理無しの試料のSST試験結果を示す特性図である。 (a) 〜(d) は発熱抵抗体及び電極部分を保護膜で被覆する構造を説明する図である。 4通りの雰囲気によるアニール処理の試験結果における温度とシート抵抗値増加率との関係を示す図である。 4通りの雰囲気によるアニール処理の試験結果におけるアニール時間と相対抵抗値との関係を示す図である。 (a),(b),(c) はTa:Si:O:Nの組成が同一な3つのグループの各4種類の試料についての抵抗率と水素濃度との関係を示す図表である。 図18(a),(b),(c) に示す試料の抵抗率と水素濃度との関係を示す特性図である。 水素を含み高抵抗率化した一試料膜の耐パルス試験の結果を示す図(その1)である。 水素を含み高抵抗率化した他の一試料膜の耐パルス試験の結果を示す図(その2)である。 (a),(b),(c) は発熱抵抗体の発熱面に平行な方向へインクを吐出する構成、(d),(e),(f) は発熱抵抗体の発熱面に垂直な方向にインクを吐出する構成のものを夫々模式的に示す図である。 (a) はオープンプールにおけるインク滴の吐出に係る気泡の成長と消滅の過程を1μs毎に模式的に示す図、(b) はその発熱抵抗体への通電タイミングを示す図である。
符号の説明
1 … シリコン基板
2 … 発熱抵抗体
3 … オリフィス板
4 … インク吐出ノズル
5、5−1 … インク
5−2 … インク滴
8 … オープンプール
10 … 印字ヘッド
11 … チップ基板
12 … 発熱抵抗体膜
13 … 発熱部
14 … 個別配線電極
15 … 給電共通電極
16 … 隔壁
17 … オリフィス板
18 … インク吐出ノズル
19 … インク流路
21 … 保護膜
22 … 密着膜
23 … 電極膜
24 … 密着膜

Claims (3)

  1. 組成の成分元素に少なくともTaとSiとOとNとHとを含むことを特徴とする発熱抵抗体。
  2. 前記組成の成分元素の内、前記Nのモル%M2が「5モル%≦M2≦25モル%」で、SiとTaのモル比Si/Taが「0.35<Si/Ta<0.80」で、且つ、前記Oのモル%M1が「25モル%≦M1≦45モル%」の範囲内で、Ta:Si:O:Nのモル比が一定であり、且つ、前記Hの含有率が4モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の発熱抵抗体。
  3. TaとSiとOとNとHからなる発熱抵抗体の製造方法であって、
    酸素ガス、窒素ガス、及び水蒸気又は水素ガスを所定の割合で含む雰囲気中でTaとSiからなるターゲットを使用してスパッタリングにより成膜することを特徴とする発熱抵抗体の製造方法。
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