JP2004237496A - 染色木材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】茶等の植物由来の成分を含有する含浸液を木材に含浸させ、含浸後の木材に光照射して木材を赤褐色に染色する。染色木材は、アルデヒドの放出抑制能を有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物原料から製造される茶、ハーブなどの植物に含まれる成分を用いて染色される染色木材及びその製造方法に関し、特に、植物由来の成分による機能を保持し、色ムラなく染色され、食品や飲料の製造におけるリサイクルの促進に有効な染色木材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料製造分野においては、緑茶や中国茶等の茶に含まれる機能性成分の研究が盛んに行われており、機能性成分の性質を利用した茶の新たな用途開発が進められている。例えば、緑茶に含まれているカテキンは、その抗菌性や消臭性を利用して種々の製品に組み込むことが提案されており、下記特許文献1では、茶抽出成分である茶ポリフェノールを固着させた繊維が黄色ブドウ球菌、特にMRSA、緑濃菌、大腸菌及び肺炎桿菌に対する抗菌作用を有することを記載している。又、狭義の茶ではないハーブティ、各種穀物茶やコーヒー等の植物由来の成分についても、芳香、消臭のみならず種々の機能について研究が進められている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−328443号公報
また、大量に排出される茶殻、コーヒー殻、野菜の搾り屑などの植物性廃棄物は、堆肥化や、木質材への組み込みによる再生材の製造等、様々な用途への適用が検討されている。例えば、茶殻を利用したものとして、合成樹脂材料に茶殻を配合して形成した薄いシート材から加工される成型容器(参照:特許文献2)や、茶殻を充填した枕(参照:特許文献3)などが提案されている。
【0004】
【特許文献2】
特開平6−159399号公報
【0005】
【特許文献3】
特開平10−276880号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような機能性成分に関して提案される用途の多くは、美容・健康効果や消臭・芳香、抗菌等の機能性に着目したものであるが、これらの成分は劣化による変色や機能低下を生じ易いものが多く、屋内使用される雑貨類や消耗品等への利用ではさほどこの点について問題視されなくても、屋外使用されるものや使用寿命の長い製品への適用については、外観の変化や短期間での機能消失により、上記成分の添加コストに見合う商品価値が見出せない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、露光及び長期使用に対する耐性を要する用途に茶成分をはじめとする植物由来の成分を適用して、その機能を効果的に発揮させることを可能とすることを目的とする。
【0008】
また、外観に優れ、植物由来の成分の機能を備える染色木材及び植物由来の成分を利用した染色木材の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、植物由来の成分の新規用途を開発し、飲料製造において生じる植物性廃棄物を利用して優れたリサイクル製品を提供することにより、廃棄物の再資源化を活性化することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、染色木材の製造方法は、植物由来の成分を含有する含浸液を木材に含浸させる含浸工程と、含浸後の木材に光照射して木材を染色する光染色工程とを有することを要旨とする。
【0011】
上記製造方法において、前記含浸工程は、雰囲気圧を減少させて木材を脱気する脱気工程と、脱気した木材を前記含浸液に接触させて該含浸液の木材に対する接触圧によって該含浸液を木材に浸透させる浸透工程とを有し、前記光照射は、紫外線又は太陽光の照射とすることができる。
【0012】
上記浸透工程における含浸液の接触圧はゲージ圧で0〜30kg/cm2とすることができる。
【0013】
上記浸透工程において、木材は前記含浸液に浸漬され、前記含浸液の木材に対する接触圧は増減変動されることにより、含浸度合が増す。
【0014】
上記植物由来の成分は、茶、穀物茶、薬用植物及びコーヒーからなる群より選択される植物の成分であり、前記木材は、松、杉、桐、桧、ヒバ、カラマツ、クリ、カバ、樫、シイ、ポプラ、柳、ラワン、スプルース及び竹からなる群より選択される。
【0015】
上記含浸液が含有する植物由来の成分は、植物由来飲料の製造において生じる抽出残、抽出粕、圧搾残又は洗浄液から回収されるものも使用可能である。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、染色木材は、植物由来の成分が内部に浸透した木材の表面が、光照射により該植物由来の成分で染色されることを要旨とする。
【0017】
上記植物由来の成分にタンニンを含むもので製造した染色木材では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドといった揮発性有機物質の放出が抑制される。
【0018】
上記構成に従って、植物由来の成分を利用して、色ムラが少ない染色木材が提供され、染色木材は、抗菌性や有機物質放出抑制等の植物由来の成分の機能を長期間発揮する。
【0019】
【発明の実施の形態】
植物を原料として製造される植物由来飲料には、緑茶(日本茶)、中国茶、紅茶等の茶樹由来の「狭義の茶」や、穀物茶(麦茶、蕎麦茶、玄米茶等)、種子飲料(コーヒー、コーラ等)、薬用植物茶(レモングラス、ペパーミント、カモミール、グァバ、ウコン、バナバ、朝鮮人参等の飲料)などがあり、各々、有用な機能を有する植物由来の成分を含んでいる。これらは、程度の差はあっても着色性を有する点で共通している。
【0020】
本願発明者は、飲料製造による廃棄物である茶殻を木質繊維に配合して製造する木質ボードが、茶成分による抗菌性のみならず、茶殻によるホルムアルデヒドの放出抑制機能をも有することを見出している。但し、茶殻を配合した木質ボードは、強度を付与するのに限界があるので、上記のような茶成分の機能を有する高強度の木質材料を得るには、木材に茶成分を導入する方が適している。従って、所望の強度を有する木材に茶の抽出物を塗布又は噴霧することによって所望の木質材料が得られることが期待される。ところが、このような方法では、木材表面に液ダレの跡や色斑が生じるために商品価値が低く、しかも、木材表面の茶成分は光により劣化して機能を失い易い。又、露光による変色も生じる。これらを改善するには、茶成分を木材内部に染み込ませる必要がある。木材は繊維性であるので、茶成分を含む液体を木材に接触させることによって容易に茶成分を木材内部に供給できると予想されるが、実際には、長時間接触させても深くまで浸透しない。同様のことが、茶以外の飲料用植物を含む各種植物から得られる成分を利用する場合にも当てはまる。
【0021】
そこで、本発明では、雰囲気圧を低下させて減圧または真空にすることにより木材中の空気の脱気を行ってから雰囲気圧を増加して植物由来の成分(つまり、植物に含まれる成分、及び、植物が加熱(蒸し、焙煎等)や発酵等の飲食品製造工程を含む加工工程を経ることによって生じる成分。以下、これらを総じて植物由来成分と記載する)を含浸させることにより、木材の内部深くまで植物由来成分を浸透させる。これにより、木材が外気や光に曝されても、木材内部の植物由来成分が品質劣化せずにその機能を長時間発揮する。また、色ムラや液ダレを生じるほどの量の植物由来成分を木材表面に残留させる必要もない。
【0022】
更に、木材表面の植物由来成分の光による品質変化及び変色については、これを逆に染色として利用して表面の色彩を定着させ、光照射による表面染色を施した染色木材として提供することにより、使用中の変色という問題を解決することができる。
【0023】
即ち、本発明においては、木材中の空気を脱気して植物由来成分を含んだ含浸液を含浸し、含浸木材に光照射して含浸木材の表面を染色する。光照射した木材は、その表面が光照射により変化した植物由来成分によって染色され、内部には変化していない植物由来成分が保持され、その機能が損なわれることなく長期間発揮される。また、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドといった揮発性有機物質に対しては、無光染色木材に比べて長時間放出抑制機能を発揮する。
【0024】
本発明の染色木材の製造に用いられる植物は、安全性や環境面を考慮して、飲食可能植物が好適であり、例として、茶、ペパーミント、レモンバーム、レモングラス、カモミール、ホワイトホアハウンド、グアバ、ウコン、バナバ、ミモサ、ケブラチョ、ガンビア、アカシア、チェストナット、タラ、ミラボラム、スマック、サイプレス、サンダルウッド、ゼラニウム、ベルガモット、マージョラム、ユーカリ、ラベンダー、ローズマリー、ハイビスカス、クローブ、ベニバナ、アイ、サフラン、アカネ、クチナシ、キハダ、クワ、ケルメス、コチニールや、各種野菜(人参、朝鮮人参、キャベツ、ムラサキイモ、ムラサキキャベツ、ホウレンソウ等)、果実(レモン、オレンジ、リンゴ等)などが挙げられる。植物由来成分にタンニンが含まれると、含浸木材にアルデヒド類の放出抑制機能が備わり、このような植物としては、茶、ペパーミント、レモンバーム、ホワイトホアハウンド、グアバ、ウコン、バナバ、ミモサ、ケブラチョ、ガンビア、アカシア、チェストナット、タラ、ミラボラム、スマック等がある。含浸木材に芳香性を付与するには、レモングラス、カモミール、ラベンダー、ローズマリー等のハーブ類や、サイプレス、サンダルウッド、ゼラニウム、ベルガモット、マージョラム、ユーカリ、各種野菜(人参、朝鮮人参、キャベツ、ムラサキイモ、ムラサキキャベツ、ホウレンソウ等)、果実(レモン、オレンジ、リンゴ等)などが用いられる。
【0025】
以下においては、本発明の染色木材及びその製造方法の一実施形態として、植物が「狭義の茶」である場合の染色木材(つまり茶染色木材)及びその製造方法について詳細に説明する。
【0026】
本発明において用いる木材は、一般的に建材や構造材料などとして使用される、いわゆる木材である。木材の樹種としては、例えば、松、杉、桐、桧、ヒバ、カラマツ等の針葉樹や、クリ、カバ、カシ、シイ、ポプラ、柳等の広葉樹、ラワン、スプルース等の南洋材や竹などが挙げられるが、特に樹種は問わない。必要とされる強度及び性質に応じて適宜選択して用いられる。工業廃材や建築廃材などの木質廃材を利用してもよい。木質廃材は、異物及び汚染を除去するために、使用する前に選別及び洗浄を行うことが好ましい。
【0027】
茶染色木材の製造において、木材に含浸する茶成分には、茶葉から抽出される抽出物が用いられる。抽出に用いる茶葉は、茶樹の葉及び茎から製造される狭義の茶を指すが、茶原料の茶樹部位、茶製造における茶の発酵程度などによって限定されるものではない。また、蒸し茶、釜炒り茶など加工方法の異なるものであってもよい。例えば、玉露、煎茶、番茶、釜入り茶、ほうじ茶等の緑茶(日本茶)、ウーロン茶、ジャスミン茶、プーアール茶等の中国茶や紅茶などが挙げられる。また、玄米茶、フレーバーティや混合茶などのような殻物・香味料など茶以外の原料が混合されているものや複数種の茶の混合物を一緒に取り扱ってもよい。あるいは、飲料茶を製造した後の抽出残渣である茶殻、抽出粕、抽出残液、洗浄液等から回収される茶成分を用いてもよい。抽出方法は、常法として用いられている各種方法が許容され、抽出溶媒としては、水(湯)や、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、クロロホルム等の極性溶媒などを使用することができ、必要に応じて加熱等により温度を調整すればよい。
【0028】
茶成分の含浸は、上記抽出溶媒によって茶葉から抽出される茶成分を含有する液体を含浸液として用いて行う。茶葉から得た抽出液をそのまま使用しても、あるいは、抽出液を一旦濃縮して得た抽出分から溶媒を用いて含浸液を調製して使用してもよい。含浸液を調製するための溶媒としては、環境安全性及び抽出コストの点から、水(冷水、温水、熱水)が好ましい。茶飲料製造時の残液や洗浄水を用いて含浸液を調製してもよい。含浸液の茶成分濃度が高ければ、木材に含浸される茶成分の量が増加する。
【0029】
茶成分を含浸する木材は、雰囲気圧を減少させて木材中の空気を脱気することによって含浸液が内部深くまで浸透し易くなり、脱気した木材が含浸液と接触した状態で含浸液の接触圧によって含浸液が浸透する。例えば、木材を含浸液に浸漬した状態で雰囲気を減圧又は真空にして木材を脱気した後に、雰囲気圧を常圧〜加圧に増加させると含浸液の接触圧が増加して含浸液が浸透する。あるいは、減圧又は真空下で脱気した状態の木材に含浸液を投入して木材を浸漬し、雰囲気圧を上昇させることにより木材に対する含浸液の接触圧を増加して浸透させてもよい。この際、雰囲気圧を真空〜減圧の範囲と常圧〜加圧の範囲との間を往復するように繰り返し上下変動させると含浸液の接触圧の上下変動によって含浸度が高まる。含浸液を浸透させるための含浸液の接触圧は、ゲージ圧で0〜30kg/cm2程度が好ましい。含浸に要する時間は浸透させる深さに依存し、例えば、脱気後24時間の常圧での含浸によって植物由来の成分を直径30mmの柱状パイン材の中心まで浸透させることができる。木材を含浸液に単に浸漬したのみでは、72時間経過後であっても植物由来の成分を1mm以上の深さに浸透させるのは困難である。
【0030】
茶成分を含浸した木材は、必要に応じて、表面を水で洗浄する等により木材表面の余分な含浸液を除去する。この後、木材を乾燥して含浸液の溶媒を除去する。乾燥は、雰囲気を軽く減圧したり、加熱を伴ってもよく、加熱する場合の温度は、50℃から100℃程度までが好ましい。
【0031】
乾燥後の木材は、光照射により木材表面の茶成分を変化させて木材を染色し、色彩を定着させる。光照射による染色は、1〜500nmの波長領域の放射によって可能であり、可視光域の波長で染色可能であるが、染色時間を短くするためには紫外線域の波長が好ましい。5分〜72時間程度の紫外線照射によって染色が可能であるが、色彩がほぼ一定になる6時間以上の紫外線照射が好ましい。紫外線は太陽光にも含まれるので、紫外線ランプのみならず太陽光によっても好適に光染色ができる。光照射によって木材表面は赤褐色に染色され、色ムラは非常に少ない。光染色後の木材の色合いは、長時間の露光に耐え、変化が小さい。
【0032】
このようにして内部深くまで茶成分を含浸し光染色した茶染色木材は、表面の茶成分の機能は失っても、内部の茶成分が長期間機能を発揮する。内部の茶成分は露光や雰囲気による影響を受け難い。木材に含浸される茶成分には、カテキン等の緑茶ポリフェノールやサポニン、タンニン等の有機物が含まれ、有機物質に対する捕捉能を有する。従って、茶成分を含浸した木材では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物質の揮発、放散が抑制される。故に、このような有機物質を添加剤や溶剤として含んだ接着剤や塗料、表面処理剤等を使用することにより有機物質が木材に残留した場合でも、木材の利用時における木材からの有機物質の放散が抑制される。
【0033】
又、茶成分を含浸した木材は、抗菌性及び消臭機能も有しており、特にアンモニア脱臭率については90%以上の値を示し、他の悪臭物質に対する消臭効果も通常の木材と比較して遜色がないことから、抗菌・脱臭ボードとして極めて優れている。したがって、抗菌断熱材などの住宅建材、医療用建材、獣医療・ペット関連用の抗菌・消臭建材などに特に適している。そして、これら染色木材をチップ状にすることにより、インシュレーションボード、MDF、ハードボード、パーティクルボード等の木質ボードの原料にすることも可能である。
【0034】
また、光照射した茶染色木材は、表面の染色により安定した外観を与えるので、木質廃材を利用しても見栄えのする木材製品を提供することができる。しかも、塗工と異なり、表面に傷を生じても露光による変色によって傷を目立たなくし易い。従って、本発明の茶染色木材の製造方法は、木質廃材の再生利用に極めて有用である。また、茶染色木材の製造に使用する茶成分は、茶飲料製造後の茶殻や洗液、洗浄残等から回収したものであってよいので、ゼロエミッションの推進の点でも好ましい。
【0035】
茶成分の含浸液の代わりに他の植物由来の成分を含有する含浸液を用いて上述の植物染色木材の製造方法を行えば、各植物由来成分が含浸された植物染色木材が得られる。含浸液としては、飲料用植物の場合、例えば、一般的な飲料製造工程により得られる植物由来飲料の成分を含む液、具体的には、原料植物の抽出分又は搾汁液あるいは原料植物に蒸煮、発酵、焙煎等の加工処理を施した飲料原料の抽出分等を含んだ液が用いられる。飲食用でない生の植物あるいは乾燥植物から抽出又は圧搾等を経て得られる植物由来成分を用いて含浸液を調製してもよい。必要に応じて、濃度や成分が異なる含浸液を混合したり、組み合せて用いてもよい。含浸液は、含浸成分が木材繊維間に浸入可能な状態であれば乳液のような分散形態であっても使用可能である。含浸液に含まれる植物由来成分は、飲料製造後の抽出殻・粕や圧搾残・粕、洗浄水等から植物由来成分を回収して利用してもよい。植物由来の成分により光染色される色彩は、植物の種類によって濃度の差はあるが、概して赤褐色系である。木材に含浸した各植物由来飲料の成分にタンニンが含まれていれば、染色木材はアルデヒド類の放出抑制機能を発揮する。
【0036】
【実施例】
[植物由来成分液の調製]
緑茶粉砕物5gを沸騰した蒸留水1Lに投入して10分間抽出した後、濾過により緑茶成分液(5g/L)を調製した。
【0037】
又、緑茶粉砕物10gを用いて、上記と同様の方法により、緑茶成分液(10g/L)を調製した。
【0038】
更に、紅茶、ウーロン茶、玄米茶、レモングラス、ペパーミント、ジャスミン茶及びグァバ葉茶の各々を10g用いて、上記と同様の方法により、各々の植物由来成分液(10g/L)を調製した。
【0039】
[浸漬による浸透状態の観察]
乾燥パイン材(5cm×5cm×12mm)を緑茶成分液(10g/L)に3秒、10分、12時間、24時間、48時間又は72時間浸漬した後、取り出して105℃の乾燥機で乾燥した。得られたパイン材の中央部を切断して切口に乳酸鉄水溶液を噴霧した。切口において、乳酸鉄と緑茶成分(ポリフェノール)との反応により黒色に変化した部分の状態を観察し、厚さを測定した。結果を表1に示す。
【0040】
表1の結果から、緑茶成分は、浸漬によって殆ど木材内部に浸透していないことが明らかである。
【0041】
尚、表1中のパイン材のいずれも、表面の緑茶成分の色ムラはなかった。又、比較のために、緑茶成分液をパイン材に噴霧したところ、パイン材の表面は緑茶成分で均一には被覆されず、液ダレによる色ムラを生じた。
【0042】
【表1】
[含浸による浸透状態の観察]
表2に記載する厚さの乾燥パイン材(5cm×5cm)及び直径30mmの柱状パイン材を緑茶成分液(10g/L)に浸漬した状態でデシケータ中に封入し、真空にして12時間静置した後、デシケータ内を常圧に戻して24時間静置した。パイン材を取り出して、表面を水で洗浄した後、105℃の乾燥機で乾燥した。
【0043】
得られたパイン材の中央部を切断して切口に乳酸鉄水溶液を噴霧した。切口において、乳酸鉄と緑茶成分(ポリフェノール)との反応により黒色に変化した部分の状態を観察した。結果を表2に示す。
【0044】
又、同様のパイン材を用いて、前述の浸漬(3秒間)による浸透を行って、切口の乳酸鉄による黒色変化を観察した。
【0045】
表2の結果から、緑茶成分は、雰囲気圧を調整して含浸することによって木材内部に深くまで浸透することが解る。
【0046】
【表2】
[UV光照射による木材の染色]
前述に従ってパイン材及び緑茶成分液(10g/L)を用いて調製された浸漬パイン材及び含浸パイン材、並びに、非処理パイン材の表面の色彩(L値、a値及びb値)を、48時間又は72時間のUV光照射(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)前後において、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0047】
又、含浸パイン材を用いて、UV光照射時間を10分、1時間、6時間及び48時間に変更した場合の照射後の木材の色彩を同様に測定した。
【0048】
上記の結果を表3に示す。尚、色彩において、L値は明暗(100(明、白)〜0(暗、黒))、a値及びb値は色調(a値:+(赤)〜0(灰)〜−(緑)、b値:+(黄)〜0(灰)〜−(青))を示す。
【0049】
表3の結果によれば、パイン材そのものは48時間程度のUV照射では色の変化が少なく、緑茶成分のUV照射による変化がa値に現れることが解る。a値の変化は、UV照射によって木材が赤褐色に染色されることを示している。また、浸漬材より含浸材の方が変化つまり染色性が大きい。
【0050】
【表3】
[緑茶成分へのUV照射の影響]
前述に従ってパイン材及び緑茶成分液(10g/L)を用いて調製された浸漬パイン材及び含浸パイン材、並びに、非処理パイン材を用意し、48時間又は72時間のUV光照射の前又は後に表面に乳酸鉄水溶液を噴霧して、乳酸鉄と緑茶成分(ポリフェノール)との反応による変化を観察した。結果を表4に示す。
【0051】
また、前述で調製したグァバ葉成分液を用いて、同様にパイン材へ含浸したグァバ含浸材を作成し、上記と同様に48時間又は72時間のUV光照射の前又は後において表面に乳酸鉄水溶液を噴霧し、乳酸鉄との反応による変化を観察した。結果を表4に示す。
【0052】
緑茶成分は、UV照射によって木材を赤褐色に染色すると、この変質により乳酸鉄との反応を示さない。表4から明らかなように、緑茶成分液に浸漬した場合には、緑茶成分が表面のみに存在するので、UV照射によって全て変質して乳酸鉄と反応しなくなるが、含浸材の場合には、内部の緑茶成分が変質せずに残存し、これと反応することがわかる。また、グァバ葉茶の成分も、緑茶成分と同様の反応を示し、含浸により木材内部に浸透したグァバ葉茶の成分が残存する。
【0053】
【表4】
[植物由来成分液を用いたUV光染色]
前述で調製したペパーミント、レモングラス及びグァバの植物由来成分液(10g/L)を用いて、前述の含浸方法に従って乾燥パイン材(5cm×5cm×12mm)に各植物由来成分液を含浸し、得られた含浸パイン材にUV光照射を24時間行って、UV光照射前後における表面の色彩(L値、a値及びb値)を分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0054】
表5の結果から解るように、いずれの植物由来成分においても、UV光照射によってa値が上昇し、木材が赤褐色に染色される。
【0055】
【表5】
[杉材のUV光染色]
前述で調製した緑茶成分液(10g/L及び5g/L)、紅茶、ウーロン茶及び玄米茶の成分液(各10g/L)を用いて、前述の含浸方法に従って乾燥杉材(5cm×5cm×12mm)に各植物由来成分液を含浸し、得られた含浸杉材にUV光照射を24時間行って、UV光照射前後における表面の色彩(L値、a値及びb値)を分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を表6に示す。
【0056】
表6の結果から解るように、いずれの植物由来成分の場合においても光照射によりa値が上昇し、赤褐色に染色される。また、杉材は、植物由来成分による染色での変化が大きい。
【0057】
【表6】
[木材の色落ち]
前述で調製した緑茶成分液(10g/L及び5g/L)を用いて、前述の含浸方法に従って乾燥杉材(5cm×5cm×12mm)に緑茶成分液を含浸した。得られた含浸杉材にUV光照射(24時間)を行った場合と行わなかった場合の各々について、含浸杉材を5Bのろ紙上に静置して5mlの蒸留水を加えて48時間静置した後、ろ紙の色彩(L値)を分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定して、この数値により色落ちを評価した。結果を表7に示す。
【0058】
L値は、数値が高いほど明るく白色に近いことを示し、使用前のろ紙のL値は94.39である。表7の結果から、UV照射した杉材の場合の方が、UV照射しなかった杉材の場合よりもろ紙のL値が高く白色に近い。つまり、含浸された成分が光照射によって木材に固定され、水に浸漬したことによる含浸成分の流出及び木材の色落ちが抑制される。
【0059】
【表7】
[ホルムアルデヒドの放出抑制]
(サンプル調製)
緑茶粉砕物1gを沸騰した蒸留水1Lに投入して10分間攪拌しながら抽出した後、濾過により緑茶成分液(1g/L)を調製した。
【0060】
テドラーバッグ内にホルムアルデヒド濃度が10ppmの空気と松材(5cm×10cm×10mm)とを封入して1週間放置した後に松材を取り出し、以下のサンプル調製に用いた。
【0061】
まず、調製した緑茶成分液(1g/L)に松材を投入して、前述の含浸方法と同様にデシケータ中で圧力を制御して緑茶成分液を含浸した後、105℃で乾燥して含浸松材のサンプルを得た。
【0062】
上述の含浸松材のサンプルの一部を取り出し、UV光(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)を24時間照射してUV照射含浸松材のサンプルを作成した。
【0063】
また、上記緑茶成分液(1g/L)及び前述において調製した緑茶成分液(5g/L)を用いて、上記サンプル調製用の松材を緑茶成分液に3秒間浸漬した後に105℃で乾燥して、浸漬松材(1g/L)及び浸漬松材(5g/L)のサンプルを各々得た。
【0064】
更に、コントロールとして、緑茶成分液の代わりに蒸留水を用いて含浸及び乾燥を行った松材を準備した。
【0065】
尚、上記サンプルのうち、UV光照射していないサンプルは全て暗室にて24時間保存してから以下の試験に用いた。
【0066】
(ホルムアルデヒド放出試験)
テドラーバック中に松材サンプルと空気とを封入して、60℃の恒温槽内で24時間加熱した後、取り出したテドラーバック内の空気をホルムアルデヒド検知管(ガステック社製)を用いて測定し、放出ホルムアルデヒド量を定量した。結果を表8に示す。
【0067】
表8の結果より、松材に含まれる緑茶成分の量が増加すれば、ホルムアルデヒドの放出量が減少し、放出抑制能が強くなることが解る。従って、飲料成分液が低濃度であっても木材に含ませる飲料成分量を増加することができる圧力を制御による含浸は、ホルムアルデヒド放出抑制木材の製造において非常に重要である。
【0068】
また、UV光照射後の含浸木材は、ホルムアルデヒドの放出が更に減少している。
【0069】
【表8】
[グァバ葉茶成分によるホルムアルデヒドの放出抑制]
(サンプル調製)
グァバ葉茶粉砕物1gを沸騰した蒸留水1Lに投入して10分間攪拌しながら抽出した後、濾過によりグァバ緑茶成分液(1g/L)を調製した。
【0070】
テドラーバッグ内にホルムアルデヒド濃度が10ppmの空気と松材(5cm×10cm×10mm)とを封入して1週間放置した後に松材を取り出し、以下のサンプル調製に用いた。
【0071】
まず、調製したグァバ成分液(1g/L)に松材を投入して、前述の含浸方法と同様にデシケータ中で圧力を制御して緑茶成分液を含浸した後、105℃で乾燥して含浸松材のサンプルを得た。
【0072】
上述の含浸松材のサンプルの一部を取り出し、UV光(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)を24時間照射してUV照射含浸松材のサンプルを作成した。
【0073】
また、上記グァバ葉茶成分液(1g/L)及び前述において調製したグァバ葉茶成分液(5g/L)を用いて、上記サンプル調製用の松材をグァバ葉茶成分液に3秒間浸漬した後に105℃で乾燥して、浸漬松材(1g/L)及び浸漬松材(5g/L)のサンプルを各々得た。
【0074】
更に、コントロールとして、グァバ葉茶成分液の代わりに蒸留水を用いて含浸及び乾燥を行った松材を準備した。
【0075】
尚、上記サンプルのうち、UV光照射していないサンプルは全て暗室にて24時間保存してから以下の試験に用いた。
【0076】
(ホルムアルデヒド放出試験)
テドラーバック中に松材サンプルと空気とを封入して、60℃の恒温槽内で24時間加熱した後、取り出したテドラーバック内の空気をホルムアルデヒド検知管(ガステック社製)を用いて測定し、放出ホルムアルデヒド量を定量した。結果を表9に示す。
【0077】
表9の結果より、グァバ成分にもホルムアルデヒドの放出抑制機能があり、松材に含まれるグァバ成分の量が増加すれば、ホルムアルデヒドの放出量が減少し、放出抑制能が強くなることが解る。従って、飲料成分液が低能度であっても木材に含ませる飲料成分量を増加することができる圧力制御による含浸は、ホルムアルデヒド放出抑制木材の製造において非常に重要である。
【0078】
また、UV光照射後の含浸木材は、ホルムアルデヒドの放出が更に減少している。
【0079】
【表9】
[アセトアルデヒドの放出抑制]
シックハウス症候群の原因物質としてホルムアルデヒドが有名であるが、他の揮発物質についても同様の症状が確認されている。アセトアルデヒドは木材中に多く含まれる揮発性成分であり、シックハウス症候群の原因物質として人体に悪影響を及ぼす可能性がある。ここでは、木材に含まれるアセトアルデヒドの放出量に対する緑茶成分の影響を調べた。
【0080】
(サンプル調製)
緑茶粉砕物10gを沸騰した蒸留水1Lに投入して10分間攪拌しながら抽出した後、濾過により緑茶成分液(10g/L)を調製した。
【0081】
テドラーバッグ内にアセトアルデヒド濃度が100ppmの空気と松材(15cm×15cm×15mm、6枚を1セットとした)とを封入して1週間放置した後に松材を取り出し、調製した緑茶成分液(10g/L)に投入して、前述の含浸方法と同様にデシケータ中で圧力を制御して緑茶成分液を含浸した後、105℃で乾燥した。乾燥後の松材に、UV光(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)を24時間照射してUV照射含浸松材のサンプルを作成した。
【0082】
また、コントロールとして、緑茶成分液の代わりに蒸留水を用いて含浸及び乾燥を行った松材を準備した。
【0083】
(アセトアルデヒド放出試験)
デシケータ中に松材サンプルを入れて、40℃の恒温槽内で1週間(168時間)加熱した後、デシケータ内の空気をDNPH捕集管で吸引捕集しながら窒素ガスをデシケータに補充し、捕集された空気は、20L毎を目安として3回に分けて熱イオン化検出器(FTD)付ガスクロマトグラフによりアセトアルデヒド量を定量した。結果を表10に示す。
【0084】
表10の結果より、緑茶成分を含浸した木材が、アセトアルデヒドについても放出抑制能を有することが明らかである。
【0085】
【表10】
[抗菌性]
(サンプル調製)
緑茶粉砕物10gを沸騰した蒸留水1Lに投入して10分間攪拌しながら抽出した後、濾過により緑茶成分液(10g/L)を調製した。
【0086】
松材(5cm×5cm×1mm)を沸騰水で洗浄した後、105℃で乾燥した。この松材を、調製した緑茶成分液に投入して、前述の含浸方法と同様にデシケータ中で圧力を制御して緑茶成分液を含浸した後、105℃で乾燥し、含浸松材のサンプルを得た。
【0087】
含浸松材のサンプルに、UV光(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)を48時間照射してUV照射含浸松材のサンプルを作成した。
【0088】
また、コントロールとして、緑茶成分液の代わりに蒸留水を用いて含浸及び乾燥を行った松材を準備した。
【0089】
(抗菌性試験)
松材サンプルをリン酸緩衝液(1/15M、pH7.2)に12時間浸漬した後、抗菌製品技術協議会の「フィルム密着法」に従って、1/500普通ブイヨンで調製した黄色ブドウ球菌をサンプル表面に滴下し、プラスチックフィルムで密着被覆して35℃で24時間保持した後、サンプル上の菌液について生菌数の変化を測定した。
【0090】
抗菌試験の結果を表11に示す。尚、表10中、「<10」は「不検出」を意味する。
【0091】
表11の結果によれば、含浸松材はUV光照射を行ったものも行わなかったものも共に、生菌数が測定限界以下となり、UV光を照射しても緑茶成分による抗菌性が低下しないことが明らかである。つまり、木材表面の緑茶成分が変質しても、内部に浸透した緑茶成分が十分有効に作用することを意味する。
【0092】
【表11】
[植物由来成分の芳香]
香りの少ない木材チップを沸騰水に投入して洗浄し、取り出した木材チップを乾燥した。
【0093】
前述の植物由来成分液の調製においてグァバ葉茶、レモングラス、ペパーミント、紅茶及びジャスミン茶を用いて得られた各々の植物由来成分液(10g/L)に木材チップを浸漬した状態でデシケータ中に封入し、真空にして12時間静置した後、デシケータ内を常圧に戻して24時間静置した。木材チップ材を取り出して、表面を水で洗浄した後、105℃の乾燥機で乾燥した。得られた木材チップについて、72時間のUV光照射前後における香りの有無を調べた。
【0094】
又、同様に洗浄・乾燥を行った木材チップ及び植物由来成分液を用い、木材チップを植物由来成分液に3秒間浸漬した後に105℃の乾燥機で乾燥し、得られた木材チップについて、72時間のUV光照射前後における植物由来成分の香りの有無を調べた。
【0095】
上記の結果を表12に示す。尚、表中、「○」は「香りがある」を、「△」は「僅かに香りがある」を、×は「香りがしない」を示す。
【0096】
表12の結果によれば、木材チップ表面の植物由来成分がUV光の照射により変化して芳香を失うため、浸漬材においては照射後に殆ど芳香は残らないが、含浸材においては内部に浸透した植物由来成分による芳香がUV光の影響を受けることなく残存することが解る。
【0097】
【表12】
[太陽光照射による木材の染色]
前述に従ってパイン材及び緑茶成分液(10g/L)を用いて調製された含浸パイン材及び非処理パイン材の表面の色彩(L値、a値及びb値)を、36時間の太陽光照射(晴天日の自然太陽光へ露光時間が合計36時間になるまで繰り返し曝した)前後において、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。この結果を表13に示す。
【0098】
表13の結果によれば、a値の変化は、太陽光照射によっても木材が赤褐色に染色されることを示している。
【0099】
【表13】
[竹材の含浸による浸透状態の観察]
孟宗竹から表皮(緑色部分)を取り除いて得た厚さ1mm又は5mmの竹材(寸法:4cm×1cm)を緑茶成分液(10g/L)に浸漬した状態でデシケータ中に封入し、真空にして12時間静置した後、デシケータ内を常圧に戻して24時間静置した。竹材を取り出して、表面を水で洗浄した後、105℃の乾燥機で乾燥した。
【0100】
得られた竹材の中央部を切断して切口に乳酸鉄水溶液を噴霧した。切口において、乳酸鉄と緑茶成分(ポリフェノール)との反応により黒色に変化した部分の状態を観察した。結果を表14に示す。
【0101】
又、同様の竹材を用いて、前述の浸漬(3秒間)による浸透を行って、切口の乳酸鉄による黒色変化を観察した。
【0102】
表14の結果から、緑茶成分は、雰囲気圧を調整して含浸することによって竹材内部に深くまで浸透することが解る。
【0103】
【表14】
[UV光照射による竹材の染色]
前述に従って竹材及び緑茶成分液(10g/L)を用いて調製された浸漬竹材及び含浸竹材、並びに、非処理竹材の表面の色彩(L値、a値及びb値)を、248時間のUV光照射(市販の捕虫器用紫外線蛍光灯15W、蛍光灯とサンプルとの距離:13.5cm)前後において、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。この結果を表15に示す。
【0104】
表15の結果によれば、浸漬竹材よりも含浸竹材の方がUV照射によってa値が大きくなり、赤褐色に染色されることを示している。
【0105】
【表15】
[竹材の緑茶成分へのUV照射の影響]
前述に従って竹材及び緑茶成分液(10g/L)を用いて調製された浸漬竹材及び含浸竹材、並びに、非処理竹材を用意し、48時間又は72時間のUV光照射の前又は後に表面に乳酸鉄水溶液を噴霧して、乳酸鉄と緑茶成分(ポリフェノール)との反応による変化を観察した。結果を表16に示す。
【0106】
また、前述で調製したグァバ葉成分液を用いて、同様に竹材へ含浸したグァバ含浸材を作成し、上記と同様に48時間又は72時間のUV光照射の前又は後において表面に乳酸鉄水溶液を噴霧し、乳酸鉄との反応による変化を観察した。結果を表16に示す。
【0107】
表16から明らかなように、緑茶成分液に浸漬した場合には、緑茶成分が表面のみに存在するので、UV照射によって全て変質して乳酸鉄と反応しなくなるが、含浸材の場合には、内部の緑茶成分が変質せずに残存し、これと反応することがわかる。また、グァバ葉茶の成分も、緑茶成分と同様の反応を示し、含浸により竹内部に浸透したグァバ葉茶の成分が残存する。
【0108】
【表16】
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、植物由来の成分を用いた染色により色ムラがない美観を備え、強度を有する染色木材及びその製造方法が提供される。又、植物由来の成分に依る抗菌性、有機物質の捕捉能、消臭等の機能が長期間発揮される染色木材及びその製造方法が提供される。
Claims (8)
- 植物由来の成分を含有する含浸液を木材に含浸させる含浸工程と、含浸後の木材に光照射して木材を染色する光染色工程とを有することを特徴とする染色木材の製造方法。
- 前記含浸工程は、雰囲気圧を減少させて木材を脱気する脱気工程と、脱気した木材を前記含浸液に接触させて該含浸液の木材に対する接触圧によって該含浸液を木材に浸透させる浸透工程とを有し、前記光照射は、紫外線又は太陽光の照射である請求項1記載の製造方法。
- 前記浸透工程における含浸液の接触圧はゲージ圧で0〜30kg/cm2である請求項2に記載の製造方法。
- 前記浸透工程において、木材は前記含浸液に浸漬され、前記含浸液の木材に対する接触圧は増減変動される請求項2又は3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記植物由来の成分は、茶、穀物、薬用植物及びコーヒーからなる群より選択される植物の成分であり、前記木材は、松、杉、桐、桧、ヒバ、カラマツ、クリ、カバ、樫、シイ、ポプラ、柳、ラワン、スプルース及び竹からなる群より選択される木材である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記含浸液が含有する植物由来の成分は、植物由来飲料の製造において生じる抽出残、抽出粕、圧搾残又は洗浄液から回収される請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 植物由来の成分が内部に浸透した木材の表面が、光照射により該植物由来の成分で染色されることを特徴とする染色木材。
- 前記植物由来の成分がタンニンを含み、揮発性有機物質の放出が抑制される請求項7記載の染色木材。
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