JP2004237494A - 中空成形機の多層クロスヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】不可分一体をなすハウジングの内部に複数のスリーブ部材を配置し、ダイリップに連通する流路を形成しているため、同一のスリーブ部材を装備したままで成形条件を変更すると、パリソンの各層に偏肉が発生する。
【解決手段】ハウジングを各スリーブ部材21〜25に対応させて複数の分割ハウジング11〜15に分割させて、対応する分割ハウジング11〜15とスリーブ部材21〜25とを一体に固定し、かつ、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25が上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して少なくとも対応する樹脂流入口52〜55を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段62〜65によつて連結して設け、成形条件の変更に伴い、分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25を相対移動させ、パリソン41の層の偏肉を調節する。
【選択図】 図1
【解決手段】ハウジングを各スリーブ部材21〜25に対応させて複数の分割ハウジング11〜15に分割させて、対応する分割ハウジング11〜15とスリーブ部材21〜25とを一体に固定し、かつ、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25が上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して少なくとも対応する樹脂流入口52〜55を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段62〜65によつて連結して設け、成形条件の変更に伴い、分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25を相対移動させ、パリソン41の層の偏肉を調節する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空成形機の多層クロスヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来の多層クロスヘッドとして、図5に示すものが知られている。多層クロスヘッド1は、全体として円筒状をなすハウジング100の内部に、樹脂の流路に応じて中心軸線方向に複数に分割された第1〜第5スリーブ部材21,22,23,24,25が配設されている。このスリーブ部材21〜25の内部中心には、円筒状の中子30が配設され、この中子30の内部には、先端にコア38が取付けられたスピンドル37が上下の摺動可能に配設されている。スピンドル37は、基盤に固設されるスピンドル支え36に支持され、中心軸線方向の位置調節が可能である。
【0003】
ハウジング100には、各スリーブ部材21〜25に対応させて樹脂流入口151,152,153,154,155が形成され、各樹脂流入口151〜155は、接続部材121〜125を介して押出機2,2A,2Bに接続され、ハウジング100の内部に所定の溶融樹脂を送り込むことが可能になつている。199は、溶融樹脂が流れる部分を加熱するヒータである。ハウジング100の樹脂流入口151〜155から内部に送り込まれた溶融樹脂は、各スリーブ部材21〜25のマニホルド91〜95に流入する。
【0004】
第1〜第5スリーブ部材21〜25は、それぞれ環状をなしてハウジング100の内面に固定され、最下端の第5スリーブ部材25には、ボルトによつて固設されたダイホルダ35により、ダイス34が取付けられている。33は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けたダイス調節ボルトであり、ダイス調節ボルト33の螺合量の調節によりダイス34を放射方向に移動させ、ダイス34とコア38との間の吐出隙間32を調節し、円筒状をなす多層パリソン41の偏肉を調整することができる。
【0005】
各スリーブ部材21〜25は、それぞれ固定される第1〜第4スペーサ111,112,113,114との間及び下側のスリーブ部材22〜25との間並びにハウジング100との間に副流路を形成し、各副流路は、中子30、スピンドル37及びコア38の外周に区画される主流路に次々に合流して吐出隙間32に連通している。中子30は、第1スリーブ部材21の上面に固設する中子支え79に螺着され、ロックナット78によりロックされている。押え部材43は、ハウジング100の上面に固定されて中子支え79を固定し、かつ、ヘッドサポート42に固定されている。
【0006】
複数の押出機2,2A,2Bによつて溶融混練された樹脂は、第1〜第5接続部材121,122,123,124,125を通り、ハウジング100の樹脂流入口151〜155に流入する。第1接続部材121から樹脂流入口151に入つた溶融樹脂は、第1スリーブ部材21のマニホルド91で下向きに流れを変えて、第1スペーサ111と第1スリーブ部材21との間及び第1スリーブ部材21と第2スリーブ部材22との間を流れ、また、中子30と第2〜第5スリーブ部材22〜25との間の主流路を下方に向かつて流れ、吐出隙間32に至る。この樹脂が、多層をなす円筒状のパリソン41の最も内側の層となる。そして、第2〜第5接続部材122〜125においても、同様に樹脂が押出機2,2A,2Bから流入し、下方に向かつて流れ、内側から外側へ重なり、ダイス34とコア38との間に至り、パリソン41の層を形成する。
【0007】
パリソン41の各層の厚さ構成は、各スリーブ部材21〜25の溝深さ、つまり流路隙間、押出量等の成形条件によつて決定される。
【0008】
しかしながら、このような従来の中空成形機の多層クロスヘッドにあつては、不可分一体をなすハウジング100の内部に複数のスリーブ部材21〜25を配置し、各樹脂流入口151〜155から吐出隙間32に連通する流路を形成している。このスリーブ部材21〜25は、不可分一体をなすハウジング100の内部に移動不可能に装備されるものとして、それぞれが一つの樹脂の所定の粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件において適正となるように、マニホルド91〜95を含む溝(流路隙間)の深さなどの形状が決定されて作られている。
【0009】
このため、同一のスリーブ部材21〜25を装備したままで、成形品の大きさ、厚さ等の変更に伴い、パリソン41の樹脂の種類は勿論、粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件を変更すると、各層の円周方向の圧力分布が変わりパリソン41の各層に偏肉が発生する。
【0010】
偏肉が発生したパリソン41をブロー成形すると、容器等の成形品で偏肉が拡大されるため、所要の強度が得られず、また、各層の内のバリヤ層の樹脂が破れて必要な性能が得られず、更に、容器が破損するなどの不具合を生じ、良好な成形品を成形できない。このため、多層クロスヘッドは、成形条件の限定された製品を形成する専用機となつている。
【0011】
そこで、成形条件の変更に際しては、スリーブ部材21〜25を適正な溝深さ(流路隙間)及びマニホルド91〜95の形状を有するものに変更するという煩雑な作業を伴つている。このように、パリソン41の各層の円周方向での厚さは、樹脂の種類、粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件によつて変化するため、成形条件の変更に伴いスリーブ部材21〜25を交換し、マニホルド91〜95及び流路の形状によつて均一になるようにしている。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、パリソンの各層の偏肉調節機構を付加することにより、成形条件の変更に際し、装備しているスリーブ部材を有効活用しながらパリソンの各層の偏肉を簡単に調節して、均一かつ所望の肉厚にすることができる中空成形機の多層クロスヘッドを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、その構成は、次の通りである。
請求項1の発明は、ハウジングの内部に、樹脂の流路に応じて複数に分割されたスリーブ部材21〜25が中心軸線方向に配設され、隣接するスリーブ部材21〜25によつて区画される流路を、各スリーブ部材21〜25に対応するハウジングの樹脂流入口51〜55に連通させると共に、該流路が合流して吐出隙間32に接続し、複数の押出機(2,2A,2B)から接続部材を介して樹脂流入口51〜55に流入させた溶融樹脂を、吐出隙間32から多層のパリソン41として流出させる中空成形機の多層クロスヘッドにおいて、
前記ハウジングを各スリーブ部材21〜25に対応させて中心軸線方向に複数の分割ハウジング11〜15に分割させて、対応する分割ハウジング11〜15とスリーブ部材21〜25とを一体に固定し、かつ、
下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25の上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対する少なくとも対応する樹脂流入口51〜54を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段62〜65により、隣接する分割ハウジング11〜15及びスリーブ部材21〜25同士を連結して設け、
成形条件の変更に伴い、下側の分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25を相対的に移動させ、前記パリソン41の層の偏肉を調節可能であることを特徴とする中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項2の発明は、全ての押出機(2,2A,2B)及び最上端の分割ハウジング11が固定配置され、最上端の分割ハウジング11よりも下側の分割ハウジング12〜15に接続する接続部材82〜85が、接続する分割ハウジング12〜15の径方向への調節移動を吸収する可撓性を有していることを特徴とする請求項1の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項3の発明は、連結手段62〜65が、上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に形成する通孔(68)に遊挿された状態で他方の分割ハウジング12〜15に螺着される連結ボルト62〜65を有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項4の発明は、連結ボルト62〜65が、弾性体(67)を介して上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に支持され、弾性体(67)を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で上下に隣接する分割ハウジング12〜15の他方に螺着されていることを特徴とする請求項3の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項5の発明は、上側の分割ハウジング11〜14に螺合する少なくとも2本の調節ボルト71〜74が設けられ、各調節ボルト71〜74の螺合量の調節により、下側の分割ハウジング12〜15を径方向に調節移動させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の中空成形機の多層クロスヘッドである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1,図2は、本発明に係る中空成形機の多層クロスヘッドの1実施の形態を示す。図中において符号1は多層クロスヘッドを示し、2,2A,2Bは押出機を示す。多層クロスヘッド1は、全体として円筒状をなすように組立てたハウジング10の内部に、樹脂の流路に応じて中心軸線方向に複数に分割された第1〜第5スリーブ部材21,22,23,24,25を一体に備える。このスリーブ部材21〜25の内部中心には、円筒状の中子30が配設され、この中子30の内部には、先端にコア38が取付けられたスピンドル37が上下の摺動可能に配設されている。中子30は、第1スリーブ部材21の上面に固設する中子支え44に螺着され、ロックナット45によりロックされている。スピンドル37は、基盤に固設されるスピンドル支え36に、中心軸線方向の位置調節が可能に固設されている。
【0015】
この多層クロスヘッド1は、複数原料が重なり合つて5層をなす円筒状のパリソン41を成形する。1例として、パリソン41は、内層(HDPE)、接着層(変性PE)、バリヤ層(EVOH)、接着層(変性PE)、外層(HDPE)からなり、ブロー成形により、各層の厚さの比が同じ5層をなす成形品を形成する。例えば、内層:40%、接着層:2%、バリヤ層:3%、接着層:2%、外層:53%の構成比の厚さとする。内層及び外層を形成する合成樹脂は1つの押出機2Aから供給され、バリヤ層の両側の接着層を形成する合成樹脂は1つの押出機2Bから供給され、バリヤ層を形成する合成樹脂は1つの押出機2から供給される。
【0016】
このため、ハウジング10は、上側から順次に円環状の第1〜第5分割ハウジング11〜15を複数段に分割して有している。第1分割ハウジング11は、図外の基盤に固設されるヘッドサポート42にスリーブ押え43を介してボルト60,61によつて固定して取付けられ、第2分割ハウジング12は、第1分割ハウジング11の下面に連結ボルト62によつて取付けられ、第3分割ハウジング13は、第2分割ハウジング12の下面に連結ボルト63によつて取付けられ、第4分割ハウジング14は、第3分割ハウジング13の下面に連結ボルト64によつて取付けられ、第5分割ハウジング15は、第4分割ハウジング14の下面に連結ボルト65によつて取付けられている。
【0017】
連結ボルト62〜65は、多段に配置されて各段で一体をなす各分割ハウジング11〜15及びスリーブ部材21〜25の上下に隣接するもの同士の間で、所定の圧接力を維持したままで、樹脂流入口51〜54を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段を構成している。すなわち、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25が、所定の圧接力を維持したままで、上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して、少なくとも上側の対応する分割ハウジング11〜14の樹脂流入口51〜54を含む径方向へ相対的に移動し、下側のスリーブ部材22〜25と上側に隣接するスリーブ部材21〜24との間の流路を調節する。
【0018】
上下に隣接する分割ハウジング11〜15同士の間を連結する連結ボルト62〜65は、最下端の分割ハウジング15を除く各分割ハウジング11〜14に形成した大きな通孔(図4に符号68を付す部分)に遊挿され、下側に位置する分割ハウジング12〜15に螺着されている。これらの連結ボルト62〜65は、樹脂漏れが発生しないように所定の締め付けトルクが与えられ、かつ、連結ボルト62〜65を弛めることなく、下側に位置する分割ハウジング12〜15の径方向の調節移動が可能である。70は、ヒータであり、複数の押出機2,2A,2Bから押し出される溶融樹脂の周囲を適宜に加熱している。そして、上側の分割ハウジング11〜14は、下側のスリーブ部材22〜25を介して下側の分割ハウジング12〜15に圧接している。
【0019】
最下端の分割ハウジング15を除く各分割ハウジング11〜14の下部には、調節ボルト71〜74が螺合され、各調節ボルト71〜74の螺合量の調節により、下側の分割ハウジング12〜15を放射方向に押圧させて往復移動させることができる。なお、各調節ボルト71〜74は、各分割ハウジング11〜14の周方向に等間隔(90°毎)に4本備えられているが、少なくとも各接続部材81〜84の中心軸線を含む径方向(上側に隣接する分割ハウジング11〜14の樹脂流入口51〜54を含む径方向)に下側の分割ハウジング12〜15を往復移動させるように2本備えられればよい。調節ボルト71〜74は、下側に隣接する分割ハウジング12〜15の移動機構を構成している。
【0020】
最下端の分割ハウジング15には、ボルト39によつて固設されたダイホルダ35により、調節リング18及びダイス34が上下に重ね合わせて取付けられている。75は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けた調節ボルトであり、調節ボルト75の螺合量の調節により上側位置の調節リング18を放射方向に往復移動させ、第5スリーブ部材25の外面と調節リング18との間の流路を流れる樹脂の偏肉を調節する。また、33は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けたダイス調節ボルトであり、ダイス調節ボルト33の螺合量の調節により下側位置のダイス34を放射方向に往復移動させ、ダイス34とコア38との間の吐出隙間32から流出するパリソン41の偏肉を調整することができる。なお、調節ボルト75は、少なくとも接続部材85の中心軸線を含む径方向(上側に隣接する分割ハウジング15の樹脂流入口55を含む径方向)に調節リング18を往復移動させるように2本備えられればよい。この調節ボルト75は、調節リング18の移動機構を構成している。
【0021】
従つて、調節リング18は、上側の一体をなす分割ハウジング15及びスリーブ部材25に対して少なくとも該上側のスリーブ部材25の対応する樹脂流入口55を含む径方向への相対的調節移動が許容されている。この調節リング18の相対的調節移動は、ダイス34の調節移動と同様に行われ、通常、露出する連結手段であるボルト39を弛めて行う。
【0022】
また、最上端の分割ハウジング11を除く各分割ハウジング12〜15の樹脂流入口52〜55には、可撓性を有する第2〜第5接続部材82〜85が接続され、接続する各分割ハウジング12〜15の調節移動を許容し、その内部に押出機2,2A,2Bからの所定の溶融樹脂を送り込むことが可能になつている。
【0023】
具体的には、第3接続部材83のように、可撓管の外周をヒータ70によつて覆つた接続部材83により、押出機2からの溶融樹脂を分割ハウジング13の樹脂流入口53から内部に供給することができるようになつている。なお、最上端の第1分割ハウジング11は、ヘッドサポート42に固定されて調節移動しないため、分割ハウジング11の樹脂流入口51に接続する第1接続部材81は可撓性を有する必要がなく、従来例と同様の接続部材81によつて固定配置される押出機2Aが接続されればよい。同様に、中心の中子30も移動せず、樹脂流路に対して芯となる。
【0024】
可撓性を有する各接続部材82〜85は、例えば押出機2,2A,2Bから押し出される溶融樹脂の圧力に十分耐え得る薄肉の直線状のパイプ材(例えばステンレス製)を、U字状乃至S字状に湾曲させて曲げ加工を施したものであり、両端が偏心しながらの伸縮変形が可能となつている。従つて、各接続部材82〜85の内面は、同径の円形断面を有し、内部に樹脂溜まりとなる凹部を有していない。各分割ハウジング11〜15の樹脂流入口51〜55から内部に送り込まれた溶融樹脂は、各スリーブ部材21〜25の溝状のマニホルド91〜95に流入する。
【0025】
押出機2は、公知の構造を有し、図2に示すようにシリンダ2aの内部に備えるスクリュ2bによつて溶融・混練した樹脂をブレーカプレート2cを通して接続フランジ2d及び第3接続部材83内に送り出し、第3分割ハウジング13の内部に供給することができる。第3接続部材83以外の第1及び第5接続部材81,85には、同様の構造の押出機2Aが接続し、第2及び第4接続部材82,84には、同様の構造の押出機2Bが接続している。全ての押出機2,2A,2Bは、固定配置されている。
【0026】
中子30は、第1スリーブ部材21を液密に貫通し、第1スリーブ部材21よりも下方に、各副流路の下端が次々に合流する主流路を形成している。すなわち、各スリーブ部材21〜25は、それぞれが一体に係止固定される分割ハウジング11〜15との間、並びに下側に隣接するスリーブ部材22〜25との間又は調節リング18との間に環状の副流路を形成し、これらの副流路は、中子30及びスピンドル37の外周に形成される環状の主流路に次々に合流している。各副流路の上端は、環状のマニホルド91〜95を介して上側位置の各スリーブ部材21〜25に対応するハウジング11〜15の樹脂流入口51〜55にそれぞれ連通し、また、主流路の下端部は、中子30から突出するスピンドル37とダイス34との間を経て、コア38とダイス34との間の吐出隙間32に連通している。この吐出隙間32から多層のパリソン41が流出する。
【0027】
次に、作用について説明する。
スリーブ部材21〜25は、中心軸線を合致させて配置したとき、それぞれが一つの樹脂の所定の粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件において適正なように、溝深さ(流路隙間)及びマニホルド91〜95の形状が決定されて作られている。このスリーブ部材21〜25を装備する状態で、一つの組み合わせの樹脂が複数の押出機2,2A,2Bから押し出され、各接続部材81〜85を通つて各マニホルド91〜95に入り、各副流路を流下しながら主流路に入り、次第に合流し、多層をなして吐出隙間32から円筒状のパリソン41となつて流出する。パリソン41は、図外の金型に受け取ると共に所定長さにカットし、図外の吹き込み装置によつてブロー成形し、容器等の成形品に成形される。
【0028】
そして、一つの組み合わせの樹脂による成形を終了し、樹脂の種類を含む成形条件を変更することに伴つて生ずるパリソン41の各層の偏肉は、次のようにして修正することができる。すなわち、各調節ボルト71〜74を各分割ハウジング11〜14に螺入又は螺出させ、下側の分割ハウジング12〜15をそれぞれのスリーブ部材22〜25と一体に放射方向に調節移動させる。このとき、一体をなす下側の分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25は、所定の圧接力を維持したままで、スリーブ部材22〜25の上面が上側の分割ハウジング11〜14の下面に対して摺動する。なお、この摺動面に滑り軸受部材を介在させ、摺動を円滑にさせることもできる。
【0029】
少なくとも分割ハウジング12〜15の樹脂流入口51〜54を含む径方向への調節移動を行わせれば、一体をなすスリーブ部材22〜25によつて区画される副流路の外形が樹脂流入口51〜54を含む径方向に対する左右で対称をなすままで変更されるので、多層をなすパリソン41の各層の円周方向での偏肉を調節して、均一な肉厚に修正することができる。
【0030】
各分割ハウジング11〜14の円周方向に等配に設けた4本の各調節ボルト71〜74を螺入又は螺出させれば、下側の分割ハウジング12〜15が全周で放射方向に移動し、下側の分割ハウジング12〜15と一体をなすスリーブ部材22〜25によつて区画される副流路の外形が全周で変化するので、各層の円周方向での圧力分布を変更させてパリソン41の各層の偏肉を良好に解消させることができる。
【0031】
このとき、連結ボルト62〜65によつて連結されて下側に位置する分割ハウジング12〜15は、連結ボルト62〜65と一体に、上側に位置する分割ハウジング11〜14に対して移動する。各連結ボルト62〜65は、上側の各分割ハウジング11〜14に形成した通孔に遊挿状態であるので、連結ボルト62〜65を弛めることなく、所定の圧接力を維持したままで、上下に隣接する分割ハウジング11〜15同士の間の径方向の相対移動がなされる。すなわち、連結ボルト62〜65の頭部が、上側に位置する分割ハウジング11〜14に対して圧接状態を維持したままで、摺動する。なお、偏肉調節に伴う分割ハウジング12〜15、スリーブ部材22〜25及び連結ボルト62〜65の一体的な移動量は、1mm以下程度である。
【0032】
調節ボルト71〜74の押し付け力により、分割ハウジング12〜15が円周方向に芯となる中子30に対して偏心して動くとき、可撓性を有する各接続部材82〜85が伸縮して偏心移動を許容する。従つて、多層クロスヘッド1の全体及び押出機2,2A,2Bは移動させる必要がない。
【0033】
パリソン41の各層の偏肉調節に際し、第1分割ハウジング11及びスリーブ部材21は移動させないので、第1接続部材81が伸縮変形することはない。第1分割ハウジング11内の第1スリーブ部材21のマニホルド91から副流路を流れる溶融樹脂は、次位の第2スリーブ部材22の調節移動により、偏肉調節がなされる。
【0034】
このようにパリソン41の各層の偏肉調節は、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及び及びスリーブ部材22〜25を上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して移動させて行われるので、偏肉調節の作業を簡素化するために、上位置の第2分割ハウジング12から調節移動を開始し、最後に第5分割ハウジング15の調節移動を行う。
【0035】
最下端の分割ハウジング15の樹脂流入口55から流入する溶融樹脂の偏肉調節は、調節ボルト75によつて調節リング18を放射方向に移動させ、最下端の第5スリーブ部材25の外面と調節リング18との間を調節してなされる。また、パリソン41全体の偏肉調節は、ダイス調節ボルト33によつてダイス34を放射方向に移動させ、ダイス34とコア38との間を調節してなされる。
【0036】
パリソン41全体の肉厚の決定は、従来例と同様にスピンドル37を介してコア38を上下動させダイス34との間の吐出隙間32を調節してなされる。
【0037】
図3,図4には、上下位置の分割ハウジング11〜15の連結構造の構造例を示し、上記1実施の形態と同一機能部分には同一符号を付してある。
【0038】
すなわち、連結ボルト62〜65は、図4に示すように各分割ハウジング11〜14に形成した大きな通孔68の上端部に中径孔68a及び大径孔68bを形成し、中径孔68aに弾性体である皿ばね67を収容し、大径孔68bに環状の押さえリング66を収容してある。
【0039】
連結ボルト62〜65は、押さえリング66、皿ばね67及び通孔68を順次に遊挿させ、所定の締付トルクを与えて下側の分割ハウジング12〜15に螺着させる。連結ボルト62〜65をねじ込んで行くと、皿ばね67が次第に弾性変形し、所定の締付トルクを与えた状態で、中径孔68aと大径孔68bとの間の環状段面に押さえリング66が圧接する。このとき、上側の分割ハウジング11〜14は、下側のスリーブ部材22〜25を介して下側の分割ハウジング12〜15に圧接している。98は副流路を示し、99は主流路を示す。
【0040】
しかして、連結ボルト62〜65は、その頭部が押さえリング66及び皿ばね67を介して上側の分割ハウジング11〜14に支持され、皿ばね67を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で、下側の分割ハウジング12〜15に螺着している。
【0041】
押さえリング66は、滑動面つまり連結ボルト62〜65の頭部と接触する表面を硬化処理し、滑動し易くすることができる。押さえリング66自体を滑り軸受材料で形成し、滑り軸受材料の滑り面に連結ボルト62〜65の頭部を圧接させることもできる。
【0042】
なお、圧接力が大きすぎて調節ボルト71〜74の調節移動が不可能なときは、クロスヘッド1を分解し、清掃した後、再組立てすることになり、煩雑な作業を伴うことになる。これは、各連結ボルト62〜65が、クロスヘッド1の内部となるように組み込まれ、放熱部を減少させる構造になつているので、緩んだボルトを増し締めすることができないためである。
【0043】
このような分割ハウジング11〜15の連結構造によれば、隣接する分割ハウジング11〜15同士の間、具体的には上側の分割ハウジング11〜14と下側のスリーブ部材22〜25との間の圧接力が適正になり、樹脂が漏れることを防止しながら、圧接力が大きすぎて調節移動ができなくなるという不具合を防止することができる。従つて、熟練を要することなく、偏肉調節が可能になる。上側の分割ハウジング11〜14と下側のスリーブ部材22〜25との間の圧接箇所に滑り軸受部材を介在させ、周方向の調節移動を円滑にすることもできる。
【0044】
また、クロスヘッド1の使用により、比較的細い各連結ボルト62〜65が熱膨張しながら伸びて、圧接力が弱まる傾向にある。これに対し、各連結ボルト62〜65が熱膨張を伴つて伸びたとき、皿ばね67の復元弾性力が連結ボルト62〜65に作用しているので、圧接力が弱まつて樹脂が漏れることが良好に防止される。従つて、各連結ボルト62〜65の締め付け力を著しく低減(例えば半減以下)させることができる。円周方向に等配で複数本(4本)設けた各連結ボルト62〜65の熱膨張を伴う伸びの影響も、皿ばね67の復元弾性力により円周方向の各連結ボルト62〜65で均等になる。なお、皿ばね67は、コイルばねに代えることができる。
【0045】
ところで、上記1実施の形態にあつては、5層のパリソン41を成形する多層クロスヘッド1としたが、複数層を成形する多層クロスヘッド1に本発明を広く適用できることは勿論である。また、連結手段である連結ボルト62〜65は、上下に隣接する分割ハウジング11〜15を所定の締付トルクを与えて締め付ければよく、下側の分割ハウジング12〜15の通孔(68)を遊挿させて、上側の分割ハウジング11〜14に螺着させることもできる。従つて、連結ボルト62〜65は、上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に圧接支持され、上下に隣接する分割ハウジング12〜15の他方に螺着させて、所定の締付トルクを与えればよい。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明によつて理解されるように、本発明に係る中空成形機の多層クロスヘッドによれば、次の効果を奏することができる。
所定の成形条件でパリソンの各層の流路を形成して成形を行つた後、この成形条件の範囲外の成形を行うとき、パリソンの各層に偏肉が起こり、不良となることを回避することができる。すなわち、各層の偏肉調節機構により、一体をなす分割ハウジング及びスリーブ部材を調節移動させて樹脂流路を偏心させることにより、同一のスリーブ部材を装備させたままで、多様な樹脂への対応、広い製品サイズへの対応等が可能となり、中空成形機の成形条件を自由に変更することが可能となつた。
【0047】
このように、成形条件毎に、スリーブ部材等の部品を備える必要がなく、1種類のスリーブ部材により、多様な成形ができる。その結果、各種のスリーブ部材を準備する場合と比較して、コストダウンが図れる。また、成形条件の変更に伴い、樹脂流路を形成するスリーブ部材の交換を行うための分解・組立て・段取り時間等の作業時間を削減できるので、中空成形の作業効率が向上する。
【0048】
請求項2の発明によれば、可撓性を有して伸縮偏心が可能な接続部材により、分割ハウジングと押出機とを接続しているので、一体をなす分割ハウジング及びスリーブ部材が偏肉調節の際にスムースに摺動する。これにより、分割ハウジング、スリーブ部材等の摺動部の摩耗、損傷を減少させ、メンテナンスを軽減させることができる。
【0049】
請求項4の発明によれば、連結ボルトが、弾性体を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で上下に隣接する分割ハウジングを連結するので、連結ボルトの締め付け力を簡単に適正に維持することができる。すなわち、熱膨張を伴う伸びにより連結ボルトが弛んで樹脂漏れを生ずることを避けるため、連結ボルトを強く締め付け過ぎ、偏肉調節ができなくなる、という不具合を防止できる。また、連結ボルトの締め付け力が小さく過ぎて樹脂漏れする、という不具合も防止できる。その結果、不具合解消のためにクロスヘッドを分解・清掃・再組立てする作業を削減できる。加えて、連結ボルトの締め付けに特殊な技能が不要になり、誰でも簡単に組付けすることが可能になると共に、特殊な技能を要することなく簡単に短時間で偏肉調節することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態に係る中空成形機の多層クロスヘッドを示す断面図。
【図2】同じく押出機の要部を示す断面図。
【図3】同じく分割ハウジングの連結構造の構造例を示すための図1と同様の断面図。
【図4】同じく分割ハウジングの連結構造の構造例の要部を示す断面図。
【図5】従来の中空成形機の多層クロスヘッドを示す断面図。
【符号の説明】
1:多層クロスヘッド、2,2A,2B:押出機、11〜15:分割ハウジング、18:調節リング、21〜25:スリーブ部材、30:中子、32:吐出隙間、33:ダイス調節ボルト、34:ダイス、37:スピンドル、38:コア、41:パリソン、51〜55:樹脂流入口、62〜65:連結ボルト(連結手段)、66:押さえリング、67:皿ばね(弾性体)、68:通孔、71〜74:調節ボルト、75:調節ボルト、81〜85:接続部材、98:副流路(流路)、99:主流路(流路)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空成形機の多層クロスヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来の多層クロスヘッドとして、図5に示すものが知られている。多層クロスヘッド1は、全体として円筒状をなすハウジング100の内部に、樹脂の流路に応じて中心軸線方向に複数に分割された第1〜第5スリーブ部材21,22,23,24,25が配設されている。このスリーブ部材21〜25の内部中心には、円筒状の中子30が配設され、この中子30の内部には、先端にコア38が取付けられたスピンドル37が上下の摺動可能に配設されている。スピンドル37は、基盤に固設されるスピンドル支え36に支持され、中心軸線方向の位置調節が可能である。
【0003】
ハウジング100には、各スリーブ部材21〜25に対応させて樹脂流入口151,152,153,154,155が形成され、各樹脂流入口151〜155は、接続部材121〜125を介して押出機2,2A,2Bに接続され、ハウジング100の内部に所定の溶融樹脂を送り込むことが可能になつている。199は、溶融樹脂が流れる部分を加熱するヒータである。ハウジング100の樹脂流入口151〜155から内部に送り込まれた溶融樹脂は、各スリーブ部材21〜25のマニホルド91〜95に流入する。
【0004】
第1〜第5スリーブ部材21〜25は、それぞれ環状をなしてハウジング100の内面に固定され、最下端の第5スリーブ部材25には、ボルトによつて固設されたダイホルダ35により、ダイス34が取付けられている。33は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けたダイス調節ボルトであり、ダイス調節ボルト33の螺合量の調節によりダイス34を放射方向に移動させ、ダイス34とコア38との間の吐出隙間32を調節し、円筒状をなす多層パリソン41の偏肉を調整することができる。
【0005】
各スリーブ部材21〜25は、それぞれ固定される第1〜第4スペーサ111,112,113,114との間及び下側のスリーブ部材22〜25との間並びにハウジング100との間に副流路を形成し、各副流路は、中子30、スピンドル37及びコア38の外周に区画される主流路に次々に合流して吐出隙間32に連通している。中子30は、第1スリーブ部材21の上面に固設する中子支え79に螺着され、ロックナット78によりロックされている。押え部材43は、ハウジング100の上面に固定されて中子支え79を固定し、かつ、ヘッドサポート42に固定されている。
【0006】
複数の押出機2,2A,2Bによつて溶融混練された樹脂は、第1〜第5接続部材121,122,123,124,125を通り、ハウジング100の樹脂流入口151〜155に流入する。第1接続部材121から樹脂流入口151に入つた溶融樹脂は、第1スリーブ部材21のマニホルド91で下向きに流れを変えて、第1スペーサ111と第1スリーブ部材21との間及び第1スリーブ部材21と第2スリーブ部材22との間を流れ、また、中子30と第2〜第5スリーブ部材22〜25との間の主流路を下方に向かつて流れ、吐出隙間32に至る。この樹脂が、多層をなす円筒状のパリソン41の最も内側の層となる。そして、第2〜第5接続部材122〜125においても、同様に樹脂が押出機2,2A,2Bから流入し、下方に向かつて流れ、内側から外側へ重なり、ダイス34とコア38との間に至り、パリソン41の層を形成する。
【0007】
パリソン41の各層の厚さ構成は、各スリーブ部材21〜25の溝深さ、つまり流路隙間、押出量等の成形条件によつて決定される。
【0008】
しかしながら、このような従来の中空成形機の多層クロスヘッドにあつては、不可分一体をなすハウジング100の内部に複数のスリーブ部材21〜25を配置し、各樹脂流入口151〜155から吐出隙間32に連通する流路を形成している。このスリーブ部材21〜25は、不可分一体をなすハウジング100の内部に移動不可能に装備されるものとして、それぞれが一つの樹脂の所定の粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件において適正となるように、マニホルド91〜95を含む溝(流路隙間)の深さなどの形状が決定されて作られている。
【0009】
このため、同一のスリーブ部材21〜25を装備したままで、成形品の大きさ、厚さ等の変更に伴い、パリソン41の樹脂の種類は勿論、粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件を変更すると、各層の円周方向の圧力分布が変わりパリソン41の各層に偏肉が発生する。
【0010】
偏肉が発生したパリソン41をブロー成形すると、容器等の成形品で偏肉が拡大されるため、所要の強度が得られず、また、各層の内のバリヤ層の樹脂が破れて必要な性能が得られず、更に、容器が破損するなどの不具合を生じ、良好な成形品を成形できない。このため、多層クロスヘッドは、成形条件の限定された製品を形成する専用機となつている。
【0011】
そこで、成形条件の変更に際しては、スリーブ部材21〜25を適正な溝深さ(流路隙間)及びマニホルド91〜95の形状を有するものに変更するという煩雑な作業を伴つている。このように、パリソン41の各層の円周方向での厚さは、樹脂の種類、粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件によつて変化するため、成形条件の変更に伴いスリーブ部材21〜25を交換し、マニホルド91〜95及び流路の形状によつて均一になるようにしている。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、パリソンの各層の偏肉調節機構を付加することにより、成形条件の変更に際し、装備しているスリーブ部材を有効活用しながらパリソンの各層の偏肉を簡単に調節して、均一かつ所望の肉厚にすることができる中空成形機の多層クロスヘッドを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、その構成は、次の通りである。
請求項1の発明は、ハウジングの内部に、樹脂の流路に応じて複数に分割されたスリーブ部材21〜25が中心軸線方向に配設され、隣接するスリーブ部材21〜25によつて区画される流路を、各スリーブ部材21〜25に対応するハウジングの樹脂流入口51〜55に連通させると共に、該流路が合流して吐出隙間32に接続し、複数の押出機(2,2A,2B)から接続部材を介して樹脂流入口51〜55に流入させた溶融樹脂を、吐出隙間32から多層のパリソン41として流出させる中空成形機の多層クロスヘッドにおいて、
前記ハウジングを各スリーブ部材21〜25に対応させて中心軸線方向に複数の分割ハウジング11〜15に分割させて、対応する分割ハウジング11〜15とスリーブ部材21〜25とを一体に固定し、かつ、
下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25の上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対する少なくとも対応する樹脂流入口51〜54を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段62〜65により、隣接する分割ハウジング11〜15及びスリーブ部材21〜25同士を連結して設け、
成形条件の変更に伴い、下側の分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25を相対的に移動させ、前記パリソン41の層の偏肉を調節可能であることを特徴とする中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項2の発明は、全ての押出機(2,2A,2B)及び最上端の分割ハウジング11が固定配置され、最上端の分割ハウジング11よりも下側の分割ハウジング12〜15に接続する接続部材82〜85が、接続する分割ハウジング12〜15の径方向への調節移動を吸収する可撓性を有していることを特徴とする請求項1の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項3の発明は、連結手段62〜65が、上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に形成する通孔(68)に遊挿された状態で他方の分割ハウジング12〜15に螺着される連結ボルト62〜65を有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項4の発明は、連結ボルト62〜65が、弾性体(67)を介して上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に支持され、弾性体(67)を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で上下に隣接する分割ハウジング12〜15の他方に螺着されていることを特徴とする請求項3の中空成形機の多層クロスヘッドである。
請求項5の発明は、上側の分割ハウジング11〜14に螺合する少なくとも2本の調節ボルト71〜74が設けられ、各調節ボルト71〜74の螺合量の調節により、下側の分割ハウジング12〜15を径方向に調節移動させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の中空成形機の多層クロスヘッドである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1,図2は、本発明に係る中空成形機の多層クロスヘッドの1実施の形態を示す。図中において符号1は多層クロスヘッドを示し、2,2A,2Bは押出機を示す。多層クロスヘッド1は、全体として円筒状をなすように組立てたハウジング10の内部に、樹脂の流路に応じて中心軸線方向に複数に分割された第1〜第5スリーブ部材21,22,23,24,25を一体に備える。このスリーブ部材21〜25の内部中心には、円筒状の中子30が配設され、この中子30の内部には、先端にコア38が取付けられたスピンドル37が上下の摺動可能に配設されている。中子30は、第1スリーブ部材21の上面に固設する中子支え44に螺着され、ロックナット45によりロックされている。スピンドル37は、基盤に固設されるスピンドル支え36に、中心軸線方向の位置調節が可能に固設されている。
【0015】
この多層クロスヘッド1は、複数原料が重なり合つて5層をなす円筒状のパリソン41を成形する。1例として、パリソン41は、内層(HDPE)、接着層(変性PE)、バリヤ層(EVOH)、接着層(変性PE)、外層(HDPE)からなり、ブロー成形により、各層の厚さの比が同じ5層をなす成形品を形成する。例えば、内層:40%、接着層:2%、バリヤ層:3%、接着層:2%、外層:53%の構成比の厚さとする。内層及び外層を形成する合成樹脂は1つの押出機2Aから供給され、バリヤ層の両側の接着層を形成する合成樹脂は1つの押出機2Bから供給され、バリヤ層を形成する合成樹脂は1つの押出機2から供給される。
【0016】
このため、ハウジング10は、上側から順次に円環状の第1〜第5分割ハウジング11〜15を複数段に分割して有している。第1分割ハウジング11は、図外の基盤に固設されるヘッドサポート42にスリーブ押え43を介してボルト60,61によつて固定して取付けられ、第2分割ハウジング12は、第1分割ハウジング11の下面に連結ボルト62によつて取付けられ、第3分割ハウジング13は、第2分割ハウジング12の下面に連結ボルト63によつて取付けられ、第4分割ハウジング14は、第3分割ハウジング13の下面に連結ボルト64によつて取付けられ、第5分割ハウジング15は、第4分割ハウジング14の下面に連結ボルト65によつて取付けられている。
【0017】
連結ボルト62〜65は、多段に配置されて各段で一体をなす各分割ハウジング11〜15及びスリーブ部材21〜25の上下に隣接するもの同士の間で、所定の圧接力を維持したままで、樹脂流入口51〜54を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段を構成している。すなわち、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25が、所定の圧接力を維持したままで、上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して、少なくとも上側の対応する分割ハウジング11〜14の樹脂流入口51〜54を含む径方向へ相対的に移動し、下側のスリーブ部材22〜25と上側に隣接するスリーブ部材21〜24との間の流路を調節する。
【0018】
上下に隣接する分割ハウジング11〜15同士の間を連結する連結ボルト62〜65は、最下端の分割ハウジング15を除く各分割ハウジング11〜14に形成した大きな通孔(図4に符号68を付す部分)に遊挿され、下側に位置する分割ハウジング12〜15に螺着されている。これらの連結ボルト62〜65は、樹脂漏れが発生しないように所定の締め付けトルクが与えられ、かつ、連結ボルト62〜65を弛めることなく、下側に位置する分割ハウジング12〜15の径方向の調節移動が可能である。70は、ヒータであり、複数の押出機2,2A,2Bから押し出される溶融樹脂の周囲を適宜に加熱している。そして、上側の分割ハウジング11〜14は、下側のスリーブ部材22〜25を介して下側の分割ハウジング12〜15に圧接している。
【0019】
最下端の分割ハウジング15を除く各分割ハウジング11〜14の下部には、調節ボルト71〜74が螺合され、各調節ボルト71〜74の螺合量の調節により、下側の分割ハウジング12〜15を放射方向に押圧させて往復移動させることができる。なお、各調節ボルト71〜74は、各分割ハウジング11〜14の周方向に等間隔(90°毎)に4本備えられているが、少なくとも各接続部材81〜84の中心軸線を含む径方向(上側に隣接する分割ハウジング11〜14の樹脂流入口51〜54を含む径方向)に下側の分割ハウジング12〜15を往復移動させるように2本備えられればよい。調節ボルト71〜74は、下側に隣接する分割ハウジング12〜15の移動機構を構成している。
【0020】
最下端の分割ハウジング15には、ボルト39によつて固設されたダイホルダ35により、調節リング18及びダイス34が上下に重ね合わせて取付けられている。75は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けた調節ボルトであり、調節ボルト75の螺合量の調節により上側位置の調節リング18を放射方向に往復移動させ、第5スリーブ部材25の外面と調節リング18との間の流路を流れる樹脂の偏肉を調節する。また、33は、ダイホルダ35に螺合させて周方向に等間隔で複数本(4本)設けたダイス調節ボルトであり、ダイス調節ボルト33の螺合量の調節により下側位置のダイス34を放射方向に往復移動させ、ダイス34とコア38との間の吐出隙間32から流出するパリソン41の偏肉を調整することができる。なお、調節ボルト75は、少なくとも接続部材85の中心軸線を含む径方向(上側に隣接する分割ハウジング15の樹脂流入口55を含む径方向)に調節リング18を往復移動させるように2本備えられればよい。この調節ボルト75は、調節リング18の移動機構を構成している。
【0021】
従つて、調節リング18は、上側の一体をなす分割ハウジング15及びスリーブ部材25に対して少なくとも該上側のスリーブ部材25の対応する樹脂流入口55を含む径方向への相対的調節移動が許容されている。この調節リング18の相対的調節移動は、ダイス34の調節移動と同様に行われ、通常、露出する連結手段であるボルト39を弛めて行う。
【0022】
また、最上端の分割ハウジング11を除く各分割ハウジング12〜15の樹脂流入口52〜55には、可撓性を有する第2〜第5接続部材82〜85が接続され、接続する各分割ハウジング12〜15の調節移動を許容し、その内部に押出機2,2A,2Bからの所定の溶融樹脂を送り込むことが可能になつている。
【0023】
具体的には、第3接続部材83のように、可撓管の外周をヒータ70によつて覆つた接続部材83により、押出機2からの溶融樹脂を分割ハウジング13の樹脂流入口53から内部に供給することができるようになつている。なお、最上端の第1分割ハウジング11は、ヘッドサポート42に固定されて調節移動しないため、分割ハウジング11の樹脂流入口51に接続する第1接続部材81は可撓性を有する必要がなく、従来例と同様の接続部材81によつて固定配置される押出機2Aが接続されればよい。同様に、中心の中子30も移動せず、樹脂流路に対して芯となる。
【0024】
可撓性を有する各接続部材82〜85は、例えば押出機2,2A,2Bから押し出される溶融樹脂の圧力に十分耐え得る薄肉の直線状のパイプ材(例えばステンレス製)を、U字状乃至S字状に湾曲させて曲げ加工を施したものであり、両端が偏心しながらの伸縮変形が可能となつている。従つて、各接続部材82〜85の内面は、同径の円形断面を有し、内部に樹脂溜まりとなる凹部を有していない。各分割ハウジング11〜15の樹脂流入口51〜55から内部に送り込まれた溶融樹脂は、各スリーブ部材21〜25の溝状のマニホルド91〜95に流入する。
【0025】
押出機2は、公知の構造を有し、図2に示すようにシリンダ2aの内部に備えるスクリュ2bによつて溶融・混練した樹脂をブレーカプレート2cを通して接続フランジ2d及び第3接続部材83内に送り出し、第3分割ハウジング13の内部に供給することができる。第3接続部材83以外の第1及び第5接続部材81,85には、同様の構造の押出機2Aが接続し、第2及び第4接続部材82,84には、同様の構造の押出機2Bが接続している。全ての押出機2,2A,2Bは、固定配置されている。
【0026】
中子30は、第1スリーブ部材21を液密に貫通し、第1スリーブ部材21よりも下方に、各副流路の下端が次々に合流する主流路を形成している。すなわち、各スリーブ部材21〜25は、それぞれが一体に係止固定される分割ハウジング11〜15との間、並びに下側に隣接するスリーブ部材22〜25との間又は調節リング18との間に環状の副流路を形成し、これらの副流路は、中子30及びスピンドル37の外周に形成される環状の主流路に次々に合流している。各副流路の上端は、環状のマニホルド91〜95を介して上側位置の各スリーブ部材21〜25に対応するハウジング11〜15の樹脂流入口51〜55にそれぞれ連通し、また、主流路の下端部は、中子30から突出するスピンドル37とダイス34との間を経て、コア38とダイス34との間の吐出隙間32に連通している。この吐出隙間32から多層のパリソン41が流出する。
【0027】
次に、作用について説明する。
スリーブ部材21〜25は、中心軸線を合致させて配置したとき、それぞれが一つの樹脂の所定の粘度(樹脂温度)、押出量(流出速度)、樹脂圧力等の成形条件において適正なように、溝深さ(流路隙間)及びマニホルド91〜95の形状が決定されて作られている。このスリーブ部材21〜25を装備する状態で、一つの組み合わせの樹脂が複数の押出機2,2A,2Bから押し出され、各接続部材81〜85を通つて各マニホルド91〜95に入り、各副流路を流下しながら主流路に入り、次第に合流し、多層をなして吐出隙間32から円筒状のパリソン41となつて流出する。パリソン41は、図外の金型に受け取ると共に所定長さにカットし、図外の吹き込み装置によつてブロー成形し、容器等の成形品に成形される。
【0028】
そして、一つの組み合わせの樹脂による成形を終了し、樹脂の種類を含む成形条件を変更することに伴つて生ずるパリソン41の各層の偏肉は、次のようにして修正することができる。すなわち、各調節ボルト71〜74を各分割ハウジング11〜14に螺入又は螺出させ、下側の分割ハウジング12〜15をそれぞれのスリーブ部材22〜25と一体に放射方向に調節移動させる。このとき、一体をなす下側の分割ハウジング12〜15及びスリーブ部材22〜25は、所定の圧接力を維持したままで、スリーブ部材22〜25の上面が上側の分割ハウジング11〜14の下面に対して摺動する。なお、この摺動面に滑り軸受部材を介在させ、摺動を円滑にさせることもできる。
【0029】
少なくとも分割ハウジング12〜15の樹脂流入口51〜54を含む径方向への調節移動を行わせれば、一体をなすスリーブ部材22〜25によつて区画される副流路の外形が樹脂流入口51〜54を含む径方向に対する左右で対称をなすままで変更されるので、多層をなすパリソン41の各層の円周方向での偏肉を調節して、均一な肉厚に修正することができる。
【0030】
各分割ハウジング11〜14の円周方向に等配に設けた4本の各調節ボルト71〜74を螺入又は螺出させれば、下側の分割ハウジング12〜15が全周で放射方向に移動し、下側の分割ハウジング12〜15と一体をなすスリーブ部材22〜25によつて区画される副流路の外形が全周で変化するので、各層の円周方向での圧力分布を変更させてパリソン41の各層の偏肉を良好に解消させることができる。
【0031】
このとき、連結ボルト62〜65によつて連結されて下側に位置する分割ハウジング12〜15は、連結ボルト62〜65と一体に、上側に位置する分割ハウジング11〜14に対して移動する。各連結ボルト62〜65は、上側の各分割ハウジング11〜14に形成した通孔に遊挿状態であるので、連結ボルト62〜65を弛めることなく、所定の圧接力を維持したままで、上下に隣接する分割ハウジング11〜15同士の間の径方向の相対移動がなされる。すなわち、連結ボルト62〜65の頭部が、上側に位置する分割ハウジング11〜14に対して圧接状態を維持したままで、摺動する。なお、偏肉調節に伴う分割ハウジング12〜15、スリーブ部材22〜25及び連結ボルト62〜65の一体的な移動量は、1mm以下程度である。
【0032】
調節ボルト71〜74の押し付け力により、分割ハウジング12〜15が円周方向に芯となる中子30に対して偏心して動くとき、可撓性を有する各接続部材82〜85が伸縮して偏心移動を許容する。従つて、多層クロスヘッド1の全体及び押出機2,2A,2Bは移動させる必要がない。
【0033】
パリソン41の各層の偏肉調節に際し、第1分割ハウジング11及びスリーブ部材21は移動させないので、第1接続部材81が伸縮変形することはない。第1分割ハウジング11内の第1スリーブ部材21のマニホルド91から副流路を流れる溶融樹脂は、次位の第2スリーブ部材22の調節移動により、偏肉調節がなされる。
【0034】
このようにパリソン41の各層の偏肉調節は、下側の一体をなす分割ハウジング12〜15及び及びスリーブ部材22〜25を上側の一体をなす分割ハウジング11〜14及びスリーブ部材21〜24に対して移動させて行われるので、偏肉調節の作業を簡素化するために、上位置の第2分割ハウジング12から調節移動を開始し、最後に第5分割ハウジング15の調節移動を行う。
【0035】
最下端の分割ハウジング15の樹脂流入口55から流入する溶融樹脂の偏肉調節は、調節ボルト75によつて調節リング18を放射方向に移動させ、最下端の第5スリーブ部材25の外面と調節リング18との間を調節してなされる。また、パリソン41全体の偏肉調節は、ダイス調節ボルト33によつてダイス34を放射方向に移動させ、ダイス34とコア38との間を調節してなされる。
【0036】
パリソン41全体の肉厚の決定は、従来例と同様にスピンドル37を介してコア38を上下動させダイス34との間の吐出隙間32を調節してなされる。
【0037】
図3,図4には、上下位置の分割ハウジング11〜15の連結構造の構造例を示し、上記1実施の形態と同一機能部分には同一符号を付してある。
【0038】
すなわち、連結ボルト62〜65は、図4に示すように各分割ハウジング11〜14に形成した大きな通孔68の上端部に中径孔68a及び大径孔68bを形成し、中径孔68aに弾性体である皿ばね67を収容し、大径孔68bに環状の押さえリング66を収容してある。
【0039】
連結ボルト62〜65は、押さえリング66、皿ばね67及び通孔68を順次に遊挿させ、所定の締付トルクを与えて下側の分割ハウジング12〜15に螺着させる。連結ボルト62〜65をねじ込んで行くと、皿ばね67が次第に弾性変形し、所定の締付トルクを与えた状態で、中径孔68aと大径孔68bとの間の環状段面に押さえリング66が圧接する。このとき、上側の分割ハウジング11〜14は、下側のスリーブ部材22〜25を介して下側の分割ハウジング12〜15に圧接している。98は副流路を示し、99は主流路を示す。
【0040】
しかして、連結ボルト62〜65は、その頭部が押さえリング66及び皿ばね67を介して上側の分割ハウジング11〜14に支持され、皿ばね67を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で、下側の分割ハウジング12〜15に螺着している。
【0041】
押さえリング66は、滑動面つまり連結ボルト62〜65の頭部と接触する表面を硬化処理し、滑動し易くすることができる。押さえリング66自体を滑り軸受材料で形成し、滑り軸受材料の滑り面に連結ボルト62〜65の頭部を圧接させることもできる。
【0042】
なお、圧接力が大きすぎて調節ボルト71〜74の調節移動が不可能なときは、クロスヘッド1を分解し、清掃した後、再組立てすることになり、煩雑な作業を伴うことになる。これは、各連結ボルト62〜65が、クロスヘッド1の内部となるように組み込まれ、放熱部を減少させる構造になつているので、緩んだボルトを増し締めすることができないためである。
【0043】
このような分割ハウジング11〜15の連結構造によれば、隣接する分割ハウジング11〜15同士の間、具体的には上側の分割ハウジング11〜14と下側のスリーブ部材22〜25との間の圧接力が適正になり、樹脂が漏れることを防止しながら、圧接力が大きすぎて調節移動ができなくなるという不具合を防止することができる。従つて、熟練を要することなく、偏肉調節が可能になる。上側の分割ハウジング11〜14と下側のスリーブ部材22〜25との間の圧接箇所に滑り軸受部材を介在させ、周方向の調節移動を円滑にすることもできる。
【0044】
また、クロスヘッド1の使用により、比較的細い各連結ボルト62〜65が熱膨張しながら伸びて、圧接力が弱まる傾向にある。これに対し、各連結ボルト62〜65が熱膨張を伴つて伸びたとき、皿ばね67の復元弾性力が連結ボルト62〜65に作用しているので、圧接力が弱まつて樹脂が漏れることが良好に防止される。従つて、各連結ボルト62〜65の締め付け力を著しく低減(例えば半減以下)させることができる。円周方向に等配で複数本(4本)設けた各連結ボルト62〜65の熱膨張を伴う伸びの影響も、皿ばね67の復元弾性力により円周方向の各連結ボルト62〜65で均等になる。なお、皿ばね67は、コイルばねに代えることができる。
【0045】
ところで、上記1実施の形態にあつては、5層のパリソン41を成形する多層クロスヘッド1としたが、複数層を成形する多層クロスヘッド1に本発明を広く適用できることは勿論である。また、連結手段である連結ボルト62〜65は、上下に隣接する分割ハウジング11〜15を所定の締付トルクを与えて締め付ければよく、下側の分割ハウジング12〜15の通孔(68)を遊挿させて、上側の分割ハウジング11〜14に螺着させることもできる。従つて、連結ボルト62〜65は、上下に隣接する分割ハウジング11〜14の一方に圧接支持され、上下に隣接する分割ハウジング12〜15の他方に螺着させて、所定の締付トルクを与えればよい。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明によつて理解されるように、本発明に係る中空成形機の多層クロスヘッドによれば、次の効果を奏することができる。
所定の成形条件でパリソンの各層の流路を形成して成形を行つた後、この成形条件の範囲外の成形を行うとき、パリソンの各層に偏肉が起こり、不良となることを回避することができる。すなわち、各層の偏肉調節機構により、一体をなす分割ハウジング及びスリーブ部材を調節移動させて樹脂流路を偏心させることにより、同一のスリーブ部材を装備させたままで、多様な樹脂への対応、広い製品サイズへの対応等が可能となり、中空成形機の成形条件を自由に変更することが可能となつた。
【0047】
このように、成形条件毎に、スリーブ部材等の部品を備える必要がなく、1種類のスリーブ部材により、多様な成形ができる。その結果、各種のスリーブ部材を準備する場合と比較して、コストダウンが図れる。また、成形条件の変更に伴い、樹脂流路を形成するスリーブ部材の交換を行うための分解・組立て・段取り時間等の作業時間を削減できるので、中空成形の作業効率が向上する。
【0048】
請求項2の発明によれば、可撓性を有して伸縮偏心が可能な接続部材により、分割ハウジングと押出機とを接続しているので、一体をなす分割ハウジング及びスリーブ部材が偏肉調節の際にスムースに摺動する。これにより、分割ハウジング、スリーブ部材等の摺動部の摩耗、損傷を減少させ、メンテナンスを軽減させることができる。
【0049】
請求項4の発明によれば、連結ボルトが、弾性体を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で上下に隣接する分割ハウジングを連結するので、連結ボルトの締め付け力を簡単に適正に維持することができる。すなわち、熱膨張を伴う伸びにより連結ボルトが弛んで樹脂漏れを生ずることを避けるため、連結ボルトを強く締め付け過ぎ、偏肉調節ができなくなる、という不具合を防止できる。また、連結ボルトの締め付け力が小さく過ぎて樹脂漏れする、という不具合も防止できる。その結果、不具合解消のためにクロスヘッドを分解・清掃・再組立てする作業を削減できる。加えて、連結ボルトの締め付けに特殊な技能が不要になり、誰でも簡単に組付けすることが可能になると共に、特殊な技能を要することなく簡単に短時間で偏肉調節することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態に係る中空成形機の多層クロスヘッドを示す断面図。
【図2】同じく押出機の要部を示す断面図。
【図3】同じく分割ハウジングの連結構造の構造例を示すための図1と同様の断面図。
【図4】同じく分割ハウジングの連結構造の構造例の要部を示す断面図。
【図5】従来の中空成形機の多層クロスヘッドを示す断面図。
【符号の説明】
1:多層クロスヘッド、2,2A,2B:押出機、11〜15:分割ハウジング、18:調節リング、21〜25:スリーブ部材、30:中子、32:吐出隙間、33:ダイス調節ボルト、34:ダイス、37:スピンドル、38:コア、41:パリソン、51〜55:樹脂流入口、62〜65:連結ボルト(連結手段)、66:押さえリング、67:皿ばね(弾性体)、68:通孔、71〜74:調節ボルト、75:調節ボルト、81〜85:接続部材、98:副流路(流路)、99:主流路(流路)。
Claims (5)
- ハウジングの内部に、樹脂の流路に応じて複数に分割されたスリーブ部材(21〜25)が中心軸線方向に配設され、隣接するスリーブ部材(21〜25)によつて区画される流路を、各スリーブ部材(21〜25)に対応するハウジングの樹脂流入口(51〜55)に連通させると共に、該流路が合流して吐出隙間(32)に接続し、複数の押出機(2,2A,2B)から接続部材を介して樹脂流入口(51〜55)に流入させた溶融樹脂を、吐出隙間(32)から多層のパリソン(41)として流出させる中空成形機の多層クロスヘッドにおいて、
前記ハウジングを各スリーブ部材(21〜25)に対応させて中心軸線方向に複数の分割ハウジング(11〜15)に分割させて、対応する分割ハウジング(11〜15)とスリーブ部材(21〜25)とを一体に固定し、かつ、
下側の一体をなす分割ハウジング(12〜15)及びスリーブ部材(22〜25)の上側の一体をなす分割ハウジング(11〜14)及びスリーブ部材(21〜24)に対する少なくとも対応する樹脂流入口(51〜54)を含む径方向への相対的調節移動を許容する連結手段(62〜65)により、隣接する分割ハウジング(11〜15)及びスリーブ部材(21〜25)同士を連結して設け、
成形条件の変更に伴い、下側の分割ハウジング(12〜15)及びスリーブ部材(22〜25)を相対的に移動させ、前記パリソン(41)の層の偏肉を調節可能であることを特徴とする中空成形機の多層クロスヘッド。 - 全ての押出機(2,2A,2B)及び最上端の分割ハウジング(11)が固定配置され、最上端の分割ハウジング(11)よりも下側の分割ハウジング(12〜15)に接続する接続部材(82〜85)が、接続する分割ハウジング(12〜15)の径方向への調節移動を吸収する可撓性を有していることを特徴とする請求項1の中空成形機の多層クロスヘッド。
- 連結手段(62〜65)が、上下に隣接する分割ハウジング(11〜14)の一方に形成する通孔(68)に遊挿された状態で他方の分割ハウジング(12〜15)に螺着される連結ボルト(62〜65)を有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機の多層クロスヘッド。
- 連結ボルト(62〜65)が、弾性体(67)を介して上下に隣接する分割ハウジング(11〜14)の一方に支持され、弾性体(67)を弾性変形させて所定の締付トルクを与えた状態で上下に隣接する分割ハウジング(12〜15)の他方に螺着されていることを特徴とする請求項3の中空成形機の多層クロスヘッド。
- 上側の分割ハウジング(11〜14)に螺合する少なくとも2本の調節ボルト(71〜74)が設けられ、各調節ボルト(71〜74)の螺合量の調節により、下側の分割ハウジング(12〜15)を径方向に調節移動させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の中空成形機の多層クロスヘッド。
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