JP2004237413A - 放電加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】粉末混入状態を維持するために加工機側に複雑な機構を必要せずに、混入よる効果を十分に発揮できる濃度で加工液中に分散した状態で高精度な加工をすることのできる放電加工装置を提供する。
【解決手段】放電加工装置は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番する。
【選択図】 図1
【解決手段】放電加工装置は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は加工液に固体粉末を混入し、放電加工および研磨加工を行う粉末混入放電加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放電加工装置は、放電加工液中にシリコンなどの平均粒径が1〜50μm程度の微粉末を混入させて加工面品質を向上させる放電加工方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
しかし、これらの放電加工方法では、加工屑の除去に特別な装置を必要としたり、混入粉末の沈降を防止する手段が必要となるなどの問題があった。
そこで、さらに平均粒径0.5〜1.3μmの微細粉末を炭化水素油に対して重量比で0.5〜10%の割合で混合した加工液を用いることによりこれらの問題の解決を図る方法が提案されている。通常、加工機が装備している濾過装置は粒径数μm以上の加工屑を除去するから、上記濾過装置が微細粉末を除去するおそれは少ない。したがって、加工屑の除去に関する特別な構成は不要である。また、粒径が1μm程度以下の微細粉末は加工液中でコロイド状に懸濁可能であるから、混入粉末の沈降にはかなりの時間を要する。したがって、混入粉末の沈降を防止する手段を省略しても支障を来たさない場合が多い。さらに、混入粉末の粒径が小さいと放電ギャップが狭くなり、加工精度が向上する(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5315087号明細書
【特許文献2】
特開平7−108419号公報
【特許文献3】
特開平8−150515号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、混入粉末の粒径が小さいほど粉末混入の放電加工での効果が顕著となることは明らかであるにもかかわらず、混入粉末の粒径をこれ以上小さくすることは非常に困難と考えられていた。なぜなら、混入による効果が得られるほどの濃度で微細な粒子を加工液に混入した場合、混入粉末の粒径が小さくなるほど加工液の絶縁性が損なわれるからである。
【0005】
微細粒子が重力やファンデルワールス力に打ち勝ち、液中でコロイド分散状態を維持するには、粒子への帯電が必要である。例えば、「放電加工における極間粒子の挙動に関する研究」、電気加工学会誌29巻、61号、19〜27頁(以下参考文献と称す。)に記載されるように、帯電量は粒子の表面積に比例する。したがって、混入粉末を球状と仮定すると単位体積当たりの帯電量は粒径に反比例する。例えば粒径10nmの場合には粒径10μmの場合の1000倍の帯電量となる。他方、上記参考文献に記載されているように、加工液の粘性により、液中に電位差を与えた場合の粒子の移動速度は粒径にさほど影響されない。絶縁液中の電荷の移動は、これら帯電粒子の移動に起因するから、混入粉末濃度が一定の場合には、極間の電気抵抗は混入粉末の帯電量にほぼ反比例し、したがって粒径に比例する。例えば、粉末を混入した絶縁液中に電圧をかけると、粒径10nmの場合には粒径10μmの場合の1000倍の漏れ電流が流れることになる。実際には、加工電源の出力インピーダンスは無限に低くはないから、漏れ電流が大幅に増加すると極間電圧が低下し、放電が生じなくなる。漏れ電流を減少させるには粒子の濃度を下げざるを得ず、上述の例に倣えば粒径10nmの場合には濃度を1/1000にまで低下させる必要がある。しかるに、粉末混入放電加工で常用される粉末混入濃度範囲内では、粉末混入濃度が高いほど粒子混入の効果が発揮されるから、あまりに低い濃度の場合には混入による実質的な効果がほとんど得られない。
【0006】
すなわち、混入粉末の平均粒径が小さすぎる場合には、加工液への混入による効果が得られるほどの濃度で懸濁すると加工液の絶縁性が損なわれて放電が発生せず、逆に放電加工が可能となるほどの電圧を印加するためには混入濃度を大幅に低下させる必要が生じるため、実際には粉末混入の効果がほとんど得られない。したがって、加工屑の除去や混入粉末の沈降の問題と加工精度の面からは混入粉末の平均粒径が小さいほど望ましいにもかかわらず、混入粉末の平均粒径はこれ以上小さくできないという問題があった。
【0007】
さらに、混入粉末が不導体の場合には、混入粉末が電気泳動により工具電極もしくは被加工体に引きつけられてそのまま堆積するため、工具電極や被加工体が混入粉末の堆積物に覆われてしまい、放電加工の継続が不可能な状態となる。したがって、混入粉末は導電性または半導電性の物質に限定される問題もあった。
【0008】
なお、特表平1−500983号公報では、特殊なフレーク形状を有する導電性粒子を混入した放電加工方法について開示している。この方法は、混入粉末の平均粒径範囲を10nm〜50μmと非常に幅広く指定しており、コロイド状に懸濁可能な範囲を一部含んでいる。しかし、混入粉末の濃度が10−4〜0.1体積%、好ましくは10−3〜10−2体積%の範囲内で有効とされており、従来の粉末混入放電加工方法にて常用されている濃度範囲(重量比で数%〜十数%)に比較して著しく低い。すなわち、特表平1−500983号公報は、通常の粉末を混入した場合には効果が得られないほど希薄な混入濃度であっても、特殊な形状の導電性粒子を混入する場合に限っては効果が得られることを示しているに過ぎず、一般的な形状の粉末を常用される濃度で混入した加工液を想定したものではない。したがって、高濃度の懸濁液を使用する際の絶縁性の低下の問題は考慮されていない。
【0009】
この発明の目的は、粉末混入状態を維持するために加工機側に複雑な機構を必要せずに、混入よる効果を十分に発揮できる濃度で加工液中に分散した状態で高精度な加工をすることのできる放電加工機を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる放電加工機は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番する。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の第1の実施の形態1の放電加工装置の構成図である。図2は図1の被加工体の平均電圧と正極性パルス比設定器の出力との関係を示すグラフである。図3は図1の被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。図4は図1の被加工体の平均電圧、被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。図1の放電加工装置は工具電極としてワイヤを用いたワイヤ放電加工装置と、ワイヤを研磨工具として用いた研磨装置とを併せ備えている。
【0012】
放電加工装置は、ワイヤ供給装置1と、ワイヤ電極2と、制御装置3と、駆動装置4と、被加工体5と、加工液供給装置6と、加工液7と、加工液濾過装置8と、導電度調整装置9と、加工液温度調整装置10と、粉末濃度調整器11と、平均電圧測定器12と、正極性パルス比設定器13と、加工電源14と、スイッチ15と、非平衡電圧電源16とを備えている。
【0013】
ワイヤ供給装置1は、適切な速度でワイヤ電極2を繰り出し、走行させつつ、ワイヤ電極2に適切な張力を与える。制御装置3は、駆動装置4を制御してワイヤ電極2と被加工体5とをNCプログラムに記述したプログラム軌道に沿って相対的に移動させる。加工液供給装置6は、ワイヤ電極2と被加工体5とが対向する微小間隙に加工液7を供給する。加工液濾過装置8は、加工液7に混入する粒径数μm以上の加工屑を除去する。導電度調整装置9は、加工液7の導電度を測定し、一定値以上の場合に加工液をイオン交換樹脂塔内に流通させて加工液7の導電度を調整する。加工液温度調整装置10は、加工液の温度を調節する。
【0014】
加工液7の主成分はワイヤ放電加工にて通常使用される程度まで水の中に溶解しているイオンをイオン交換樹脂で交換して導電度が下げられた脱イオン水である。この脱イオン水に平均粒径1μm以下の酸化アルミニウム粉末を混入粉末として混入され、加工液7はコロイド状の懸濁液となっている。酸化アルミニウム粉末は、Nanophase Technologies社製の平均粒径30nm程度の酸化アルミニウム粉末である。粉末の混入の割合は、粉末混入の効果を十分発揮させるために、混入粉末は体積比で0.1%以上、望ましくは0.5%以上(通常、混入粉末の比重は2以上であるので、重量比では1%以上)の濃度で懸濁させる必要があり、体積比で5%程度までは、混入粉末が高濃度に混入されるほど効果が高い。混入粉末の粒子の粒径が十分小さいので、加工液濾過装置8により混入粉末が除去されることはない。
【0015】
粉末濃度調整器11は、流路内を流れる懸濁液に光を照射して透過光の強度から混入粉末の濃度を検出し、濃度が薄ければ粉末もしくは高濃度の懸濁液を追加投入して混入粉末の濃度を一定に維持する。
【0016】
平均電圧測定器12は、最低でも1kHz以下、望ましくは10kHz以下の周波数範囲において、ワイヤ電極2を基準とした被加工体5の電圧の平均値を測定する。カットオフ周波数10kHzのローパスフィルタを通過させたギャップ電圧波形をA/D変換して平均電圧を求める。
【0017】
正極性パルス比設定器13は、図2−(a)、図2−(b)に示すように平均電圧測定器12により測定された平均電圧に逆比例する値を出力する。平均電圧がゼロボルトであれば0.5を出力し、平均電圧がゼロボルトより正で大きいほど小さな値を出力し、平均電圧がゼロボルトより負で小さいほど大きな値を出力する。
【0018】
加工電源14は、図3−(a)および図3−(b)に示すようにワイヤ電極2と被加工体5の間に正極性および逆極性のパルス電圧を印加して放電を発生させる。ワイヤ放電加工ではパルス幅は長くても2μsec程度が適当である。図2−(b)に示すような正極性パルス比設定器13の出力に従って、正極性パルス数と逆極性パルス数との比率を変化してパルスを発生させる。例えば、正極性パルス比設定器13の出力がそれぞれ0.75、0.5、0.25の場合には、正極性パルスと逆極性パルスの発生比率をそれぞれ3:1、1:1、1:3となるように放電パルスを発生する。ここで、正極性パルスとはワイヤ電極2を基準とした被加工体5の無負荷電圧が正となるパルスであって、このパルスを印加すると被加工体5の平均電圧は正側に変化する。無負荷電圧とは、加工電源14がワイヤ電極2と被加工体5との間に印加電圧を印加した状態で、ワイヤ電極2と被加工体5との間にまだ放電が発生していない時に、ワイヤ電極2と被加工体5との間で測定される電圧である。放電が発生している間は電圧が低下している。逆極性パルスとはワイヤ電極2を基準とした被加工体5の無負荷電圧が負となるパルスであって、このパルスを印加すると被加工体の平均電圧は負側に変化する。したがって、上記の構成により、平均電圧が正の場合には逆極性パルスを多く発生させて平均電圧をゼロボルト方向に変化させ、平均電圧が負の場合には正極性パルスを多く発生させて平均電圧をゼロボルト方向に変化することになるから、平均電圧は常にゼロボルト近辺に維持されることになる。なお、図3−(a)および図3−(b)に示すように、正極性パルスと逆極性パルスの放電電流の流れる方向が逆となる場合を示した。
【0019】
また、加工速度や電極消耗などの加工特性上の理由から一定方向へのみ放電電流を流す必要がある場合には、図3−(c)および図3−(d)に示すように無負荷電圧のみを交番させてもよい。この場合、放電の発生が検出された瞬間に電圧印加方向を逆転させる。
【0020】
さらにまた、加工電源は無負荷時間中の電圧を正負の両側に印加して平均電圧をゼロに維持したが、図4−(b) および図4−(c)に示すように加工電源は休止時間中に無負荷電圧と反対の極性の電圧を印加し、平均電圧がゼロ近辺に維持されるように、この休止時間中に電圧を印加する時間を調整するよう構成しても良い。例えば、図4−(a)に示すように、あらかじめ正と負の閾値Vup、Vboを設定しておき、平均電圧がいずれかの閾値を超えた場合には休止時間中に電圧を印加する時間を平均電圧がゼロから離れるのを打ち消す方向へ増減させるなどの方法が考えられる。このように構成すれば、放電1パルスごとに逆方向の電圧が印加されるため上記実施例よりもさらに高速に電圧が交番するので、漏れ電流をいっそう低減できる。
【0021】
特開昭61−4620号公報に示すような、正極性パルス電圧と逆極性パルス電圧の両方を発生できる加工電源(以下、両極性電源と称す。)を用い、コロイド懸濁液中でさまざまな周波数の電圧を印加する実験を実施した。その結果、少なくとも1kHz以上、望ましくは10kHz以上の周波数で極性を交番させ、かつ平均電圧をゼロボルト付近に維持した場合には、放電を発生させるために必要かつ十分な電圧を印加可能である。
【0022】
なお、通常の仕上加工に用いられる電源周波数範囲内、すなわち50MHz程度以下であれば十分放電が発生可能であるから、電圧反転の最小周期は20nsecである。
【0023】
混入粉末の混入の体積比に関して、体積比0.1%以下では粉末混入の効果が得られ難い。体積比0.1%以上で0.5%未満であれば粉末混入の効果が得られる場合があるが、0.5%以上であれば十分満足できる粉末混入の効果が得られる。
【0024】
また、正逆の交番の周期に関して、1msecを越えると漏れ電流が大きすぎて放電しない。1msec以下で100μsecを越えると放電する場合もあるが、漏れ電流が大きく常に放電しない場合がある。100μsec以下では漏れ電流が小さく、満足した放電が発生する。
【0025】
極性が交番する電界内では分散粒子は電気泳動により往復運動するが、極性が交番する周波数を高く設定すれば往復運動の振幅を極めて小さくできる。また平均電圧がゼロボルト付近に維持されれば一方向だけに粒子が移動することはない。したがって、ほとんど漏れ電流が流れないので、工具電極と被加工体の間に十分な電圧が印加可能となる上、不導体粉末の堆積が防止されると考えられる。
なお、上記の両極性電源は、そもそも脱イオン水を加工液とするワイヤ放電加工装置において電解腐食を防止すべく考案されたものである。すなわち、イオン交換樹脂などで脱イオンした水性加工液中で放電加工する場合、正極性電圧または逆極性電圧のいずれか一方のみを印加する加工電源(以下、単極性電源と記す)では電解腐食現象の発生を避けられなかったが、両極性電源を用いれば電極と被加工体の間に流れる電解電流を抑制できるため電解腐食現象を防止できる。
【0026】
ただし、この電解腐食防止能力と放電の生じやすさは無関係である。すなわち、イオン交換樹脂などを用いて十分に脱イオンした水性加工液中では、単極性電源であっても両極性電源であっても放電を発生できるし、イオン等の溶解により絶縁性が低下した水性加工液中では、どちらの電源でも放電を発生できない。もちろん、清浄な油性加工液中ではどちらの電源でも放電を発生できる。
【0027】
一般に単極性電源が使用される粉末混入放電加工では、溶媒である加工液が十分に脱イオンした水性加工液や油性加工液であっても、微細粒子を高濃度で懸濁すると大きな漏れ電流が生じて放電を発生できなかった。上記のように、放電の生じやすさに関して単極性電源と両極性電源に差はないと考えられていたため、微細粉末の懸濁により絶縁性が低下した加工液中では、イオン等の溶解により絶縁性が低下した水性加工液中と同様に、単極性電源でも両極性電源でも放電加工できないと考えられていた。
【0028】
しかしながら、イオンの溶解により絶縁性が低下した加工液と、コロイド粒子の懸濁により絶縁性が低下した加工液では、直流での電気抵抗は同程度であっても、高周波領域でのインピーダンスは大きく相違している。このため、コロイド粒子が懸濁した水性または油性の加工液中では、両極性電源を用いて高速に極性を交番させた場合に限り放電を発生可能であった。もちろん、水性加工液の場合には、イオン交換樹脂等により脱イオンする必要があるのは当然である。
【0029】
放電加工工程終了後に、次のように研磨加工工程を実施する。スイッチ15を切り替えて、加工電源14をワイヤ電極2と被加工体5から切り離し、非平衡電圧電源16をワイヤ電極2と被加工体5に接続してワイヤ電極2の周囲に酸化アルミニウム粉末を凝集させる。この凝集状態のまま、ワイヤ電極2と被加工体5とを相対移動させて加工面を研磨する。ここで、非平衡電圧電源16は、平均出力電圧を正または負のどちらか一方に維持する電源である。例えば、直流電圧をパルス状もしくは連続的にワイヤ電極2と被加工体5の間に印加すればよい。もちろん、一時的に反対の極性で電圧が印加される構成であっても、平均電圧が正または負のどちらか一方に維持される構成であればよい。混入粉末がワイヤ電極側に凝集するような極性に平均電圧が維持されるように電圧を印加する必要があるから、酸化アルミニウムのように電荷零点が pH7よりも大きい材質が脱イオン水中に分散している場合には、ワイヤ電極を陰極側にすればよい。なお、上記非平衡電圧電源16は放電が発生しないように出力インピーダンスを十分高く設定しておく。
【0030】
以上のように、漏れ電流が流れないほど短い周期で電圧が交番するように正逆パルスが混合して発生され、平均電圧がゼロボルト近傍に制御するように、正逆パルスの発生比率が調整し、結果として短い周期で電圧が交番しつつ平均電圧がゼロボルト付近に維持されるので、これまでより平均粒径の小さな粒子を、混入による効果を得るために十分な濃度で混入した加工液中で放電加工が実行可能となる。その結果、加工屑の除去が一層容易で、混入粉末が沈降するおそれの全くない、高精度な粉末混入放電加工が可能となる。
【0031】
また、電極または被加工体への不導体粉末の堆積も防止できるので、不導体粉末を混入粉末として使用可能となり、硬度の硬い粉末を使用可能になる。
【0032】
また、水性溶媒を使用しているので、研磨後水洗を行うだけで済む。
【0033】
さらにまた、放電加工後に加工液を入れ替えることなく研磨加工を実施できるので、簡単な装置構成および手順で高品位な加工面が得られる。
【0034】
なお、本発明はワイヤ放電加工装置に限られないが、特にワイヤ放電加工装置の場合には、通常の手段では研磨不可能な微細スリット内部も研磨可能となる利点が生じる。
【0035】
なお、上記実施の形態1では正極性パルスと逆極性パルスとの発生比率を、平均電圧の変化に比例的に変化させたが、平均電圧の変化を打ち消す方向へ発生比率を変化させるのであれば、どのような方法でも良い。例えば、平均電圧が正の閾値を超えた場合には逆極性パルスを、負の閾値を超えた場合には正極性パルスを多く発生させ、両方の閾値の間の場合には正極性パルスと逆極性パルスを交互に発生させるなどの簡便な方法でも良い。
【0036】
また、実施の形態1では、酸化アルミニウムの粉末を懸濁させたが、混入粉末としては酸化チタン、酸化ケイ素などの無機酸化物または炭化ケイ素などの無機炭化物または窒化ケイ素などの無機窒化物または六フッ化ランタンなどの無機フッ化物などの硬質不導体の粉末でも同様な効果が得られる。
【0037】
なお、実施の形態1では平均粒径30nmの酸化アルミニウム粉末を使用したが、平均粒径1μm以下の粉末であれば加工液の濾過装置で濾過されないので使用可能である。平均粒径がさらに小さな粉末でも、加工液に分散することができれば同様な効果が得られる。通常平均粒径1nm以上が適当である。
【0038】
また、粉末濃度調整器は光学的手法により粉末濃度を検出したが、加工液の導電度を測定して懸濁濃度を推定する電気的な手法など、他の手法を採用しても差し支えない。ただし水性加工液に対して電気的手法を用いて懸濁濃度を推定する場合には、溶存イオンの導電度への影響も考慮しなければならない。したがって、例えば2種類の周波数で加工液のインピーダンスを測定し、高周波側のインピーダンスから溶存イオンに起因する導電度を求め、低周波側のインピーダンスを加味して粉末の濃度を推定するなどの手法を採用する必要がある。
【0039】
なお、脱イオン水に微細粒子を懸濁させたワイヤ放電加工装置について説明したが、この発明は固体粒子をコロイド分散状態に懸濁した加工液を用いた放電加工全てに適用可能であるから、溶媒の加工液が油性の場合や、形彫り放電加工の場合にも同様の効果を奏する。
【0040】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2の放電加工装置の構成を示す図である。図6はタイマーの出力と図5の被加工体と工具電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。実施の形態1と同一または相当部分に対しては同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この放電加工装置は、形彫り放電加工を行う。放電加工装置は、工具電極17と、制御装置3と、加工液7と、加工電源14と、加工槽18と、タイマー19と、放電状態検出器20とを備えている。
【0042】
次に動作について説明する。被加工体5は加工液7で満たされた加工槽18内に設置され、工具電極17との相対位置が駆動装置4を介して制御装置3により調節される。
【0043】
加工液7の主成分は形彫り放電加工にて通常使用される油性放電加工液である。この加工液中に平均粒径100nm程度のグラファイト粉末が混入粉末として添加されており、コロイド状の懸濁液となっている。ここでは、グラファイト粉末を添加しているが、カーボンブラックなどのカーボン導電粉末、銅、ニッケルなどの金属導体粉末、シリコンなどの等の半導体粉末、または窒化チタンおよび酸化アンチモンなどの無機化合物の導体粉末であってもよい。また、実施の形態1と同様に、不導体粉末を油性放電加工液へ添加してもよい。粉末の添加量は、粉末混入の効果を十分発揮させるために、固体粉末は体積比で0.1%以上、望ましくは0.5%以上(通常、混入粉末の比重は2以上であるから、重量比では1%以上)の濃度で懸濁させる必要があり、体積比で5%程度までであれば高濃度であるほど効果が高いので望ましい。これらの粒子の粒径は十分小さいので、加工液濾過装置8により除去されることはない。
【0044】
タイマー19は、図6−(a)に示すようにあらかじめ設定された周期ごとに論理出力が反転する。設定周期は1msec以下、望ましくは100μsec以下である。
【0045】
加工電源14は図6−(b)および図6−(c)に示すようにタイマー19の出力が反転する毎に無負荷時間中の電圧印加極性を反転させて工具電極17と被加工体5の間にパルス状の電圧を印加し、放電を発生させる。なお、図6−(b)および図6−(c)ではFETなどのスイッチング素子を用いた荒加工および中仕上げ加工用電源の場合を示した。形彫り放電加工では放電電流を工具電極17から被加工体5へ流した場合に電極消耗率が低くなるので、加工量が比較的大きい荒加工や中加工の領域では放電電流の方向を交番させるのは得策でない。したがって、図6に示したように放電中の電圧印加極性は交番させず、無負荷時間中の電圧印加極性のみ交番するよう構成することが望ましい。もちろん、加工量が十分少なく、したがって電極消耗量も無視できるほど少ない仕上げ加工領域では、図6−(d)および図6−(e)のように放電電流の方向を交番させても不都合が生じないから、必要に応じて適切な方法を適宜選択すればよい。
【0046】
放電状態検出器20は、従来の放電加工装置が採用している方法と同様の手法を用いて、工具電極17と被加工体5から形成される放電間隙の長さを反映した状態量を出力する。例えば、単位時間あたりに発生した放電パルス数や、平均無負荷時間、平均ギャップ電圧などを出力すればよい。ただし、従来の粉末混入放電加工の場合と異なり、両極性電源を用いているので、平均ギャップ電圧はほぼゼロボルトに維持されている。したがって従来の平均電圧測定方法は採用できない。放電状態として平均ギャップ電圧を測定する場合には、工具電極17と被加工体5の間に印加された電圧波形をダイオードブリッジなどで整流した後に、平均化する必要がある。
【0047】
制御装置3は、放電状態検出器20の出力に基づいて、従来の放電加工装置と同様の手法により工具電極17と被加工体5の相対位置を調節する。
【0048】
以上のように、短い周期で印加電圧極性が反転するので、導電粉末を混入による効果を得るために十分な濃度で添加しても放電加工が実行可能となる。
【0049】
また、炭化水素油に微粉末を分散することができるので、絶縁抵抗を高くすることができる。
【0050】
また、導電粒子を用いることができ、従来の放電条件を援用することができる。
【0051】
なお、この実施の形態2では、タイマーを用いて印加電圧の反転周期を決定したが、通常の放電加工では放電周波数がほぼ一定に維持されるように工具電極と被加工体の相対位置が調節されるのが普通であるから、印加電圧の反転周期は放電パルス数でも設定可能である。すなわち、上記実施の形態2のタイマーの代わりに放電パルス数計数カウンタを設け、漏れ電流が生じないような十分短い時間内に発生する一定数の放電パルス毎に印加電圧を反転させるよう構成してもよい。
【0052】
また、この実施の形態2では油性加工液に微細粒子を懸濁させた形彫り放電加工機について説明したが、微細粒子をコロイド分散状態に懸濁した加工液を用いた放電加工全てに適用可能であるから、溶媒の加工液が水性の場合や、ワイヤ放電加工の場合にも同様の効果を奏する。
【0053】
【発明の効果】
この発明に係わる放電加工機による効果は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番するので、本実施例によれば漏れ電流が流れない周波数帯域で平均電圧が測定され、測定電圧がゼロボルトから離れるのを打ち消す方向へパルスの発生比率が調整され、結果として短い周期で電圧が交番しつつ平均電圧がゼロボルト付近に維持されるので、これまでより粒径の小さな粒子を、混入による効果を得るために十分な濃度で混入した加工液中で放電加工が実行可能となる。その結果、加工屑の除去が一層容易で、混入粉末が沈降するおそれの全くない、高精度な粉末混入放電加工が可能となる。また、電極または被加工体への不導体粉末の堆積も防止できるので、不導体粉末を混入粉末として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1の放電加工機の構成図である。
【図2】図1の被加工体の平均電圧と正極性パルス比設定器との関係を示すグラフである。
【図3】図1の被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【図4】図1の被加工体の平均電圧、被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【図5】この発明の実施の形態2の放電加工装置の構成図である。
【図6】図5のタイマーの出力と図5の被加工体と工具電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ワイヤ供給装置、2 ワイヤ電極、3 制御装置、4 駆動装置、5 被加工体、6 加工液供給装置、7 加工液、8 加工液濾過装置、9 導電度調整装置、10 加工液温度調整装置、11 粉末濃度調整器、12 平均電圧測定器、13 正極性パルス比設定器、14 加工電源、15 スイッチ、16 被平衡電圧電源、17 加工槽、18 タイマー、19 放電状態検出器。
【発明の属する技術分野】
この発明は加工液に固体粉末を混入し、放電加工および研磨加工を行う粉末混入放電加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放電加工装置は、放電加工液中にシリコンなどの平均粒径が1〜50μm程度の微粉末を混入させて加工面品質を向上させる放電加工方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
しかし、これらの放電加工方法では、加工屑の除去に特別な装置を必要としたり、混入粉末の沈降を防止する手段が必要となるなどの問題があった。
そこで、さらに平均粒径0.5〜1.3μmの微細粉末を炭化水素油に対して重量比で0.5〜10%の割合で混合した加工液を用いることによりこれらの問題の解決を図る方法が提案されている。通常、加工機が装備している濾過装置は粒径数μm以上の加工屑を除去するから、上記濾過装置が微細粉末を除去するおそれは少ない。したがって、加工屑の除去に関する特別な構成は不要である。また、粒径が1μm程度以下の微細粉末は加工液中でコロイド状に懸濁可能であるから、混入粉末の沈降にはかなりの時間を要する。したがって、混入粉末の沈降を防止する手段を省略しても支障を来たさない場合が多い。さらに、混入粉末の粒径が小さいと放電ギャップが狭くなり、加工精度が向上する(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5315087号明細書
【特許文献2】
特開平7−108419号公報
【特許文献3】
特開平8−150515号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、混入粉末の粒径が小さいほど粉末混入の放電加工での効果が顕著となることは明らかであるにもかかわらず、混入粉末の粒径をこれ以上小さくすることは非常に困難と考えられていた。なぜなら、混入による効果が得られるほどの濃度で微細な粒子を加工液に混入した場合、混入粉末の粒径が小さくなるほど加工液の絶縁性が損なわれるからである。
【0005】
微細粒子が重力やファンデルワールス力に打ち勝ち、液中でコロイド分散状態を維持するには、粒子への帯電が必要である。例えば、「放電加工における極間粒子の挙動に関する研究」、電気加工学会誌29巻、61号、19〜27頁(以下参考文献と称す。)に記載されるように、帯電量は粒子の表面積に比例する。したがって、混入粉末を球状と仮定すると単位体積当たりの帯電量は粒径に反比例する。例えば粒径10nmの場合には粒径10μmの場合の1000倍の帯電量となる。他方、上記参考文献に記載されているように、加工液の粘性により、液中に電位差を与えた場合の粒子の移動速度は粒径にさほど影響されない。絶縁液中の電荷の移動は、これら帯電粒子の移動に起因するから、混入粉末濃度が一定の場合には、極間の電気抵抗は混入粉末の帯電量にほぼ反比例し、したがって粒径に比例する。例えば、粉末を混入した絶縁液中に電圧をかけると、粒径10nmの場合には粒径10μmの場合の1000倍の漏れ電流が流れることになる。実際には、加工電源の出力インピーダンスは無限に低くはないから、漏れ電流が大幅に増加すると極間電圧が低下し、放電が生じなくなる。漏れ電流を減少させるには粒子の濃度を下げざるを得ず、上述の例に倣えば粒径10nmの場合には濃度を1/1000にまで低下させる必要がある。しかるに、粉末混入放電加工で常用される粉末混入濃度範囲内では、粉末混入濃度が高いほど粒子混入の効果が発揮されるから、あまりに低い濃度の場合には混入による実質的な効果がほとんど得られない。
【0006】
すなわち、混入粉末の平均粒径が小さすぎる場合には、加工液への混入による効果が得られるほどの濃度で懸濁すると加工液の絶縁性が損なわれて放電が発生せず、逆に放電加工が可能となるほどの電圧を印加するためには混入濃度を大幅に低下させる必要が生じるため、実際には粉末混入の効果がほとんど得られない。したがって、加工屑の除去や混入粉末の沈降の問題と加工精度の面からは混入粉末の平均粒径が小さいほど望ましいにもかかわらず、混入粉末の平均粒径はこれ以上小さくできないという問題があった。
【0007】
さらに、混入粉末が不導体の場合には、混入粉末が電気泳動により工具電極もしくは被加工体に引きつけられてそのまま堆積するため、工具電極や被加工体が混入粉末の堆積物に覆われてしまい、放電加工の継続が不可能な状態となる。したがって、混入粉末は導電性または半導電性の物質に限定される問題もあった。
【0008】
なお、特表平1−500983号公報では、特殊なフレーク形状を有する導電性粒子を混入した放電加工方法について開示している。この方法は、混入粉末の平均粒径範囲を10nm〜50μmと非常に幅広く指定しており、コロイド状に懸濁可能な範囲を一部含んでいる。しかし、混入粉末の濃度が10−4〜0.1体積%、好ましくは10−3〜10−2体積%の範囲内で有効とされており、従来の粉末混入放電加工方法にて常用されている濃度範囲(重量比で数%〜十数%)に比較して著しく低い。すなわち、特表平1−500983号公報は、通常の粉末を混入した場合には効果が得られないほど希薄な混入濃度であっても、特殊な形状の導電性粒子を混入する場合に限っては効果が得られることを示しているに過ぎず、一般的な形状の粉末を常用される濃度で混入した加工液を想定したものではない。したがって、高濃度の懸濁液を使用する際の絶縁性の低下の問題は考慮されていない。
【0009】
この発明の目的は、粉末混入状態を維持するために加工機側に複雑な機構を必要せずに、混入よる効果を十分に発揮できる濃度で加工液中に分散した状態で高精度な加工をすることのできる放電加工機を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる放電加工機は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番する。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の第1の実施の形態1の放電加工装置の構成図である。図2は図1の被加工体の平均電圧と正極性パルス比設定器の出力との関係を示すグラフである。図3は図1の被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。図4は図1の被加工体の平均電圧、被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。図1の放電加工装置は工具電極としてワイヤを用いたワイヤ放電加工装置と、ワイヤを研磨工具として用いた研磨装置とを併せ備えている。
【0012】
放電加工装置は、ワイヤ供給装置1と、ワイヤ電極2と、制御装置3と、駆動装置4と、被加工体5と、加工液供給装置6と、加工液7と、加工液濾過装置8と、導電度調整装置9と、加工液温度調整装置10と、粉末濃度調整器11と、平均電圧測定器12と、正極性パルス比設定器13と、加工電源14と、スイッチ15と、非平衡電圧電源16とを備えている。
【0013】
ワイヤ供給装置1は、適切な速度でワイヤ電極2を繰り出し、走行させつつ、ワイヤ電極2に適切な張力を与える。制御装置3は、駆動装置4を制御してワイヤ電極2と被加工体5とをNCプログラムに記述したプログラム軌道に沿って相対的に移動させる。加工液供給装置6は、ワイヤ電極2と被加工体5とが対向する微小間隙に加工液7を供給する。加工液濾過装置8は、加工液7に混入する粒径数μm以上の加工屑を除去する。導電度調整装置9は、加工液7の導電度を測定し、一定値以上の場合に加工液をイオン交換樹脂塔内に流通させて加工液7の導電度を調整する。加工液温度調整装置10は、加工液の温度を調節する。
【0014】
加工液7の主成分はワイヤ放電加工にて通常使用される程度まで水の中に溶解しているイオンをイオン交換樹脂で交換して導電度が下げられた脱イオン水である。この脱イオン水に平均粒径1μm以下の酸化アルミニウム粉末を混入粉末として混入され、加工液7はコロイド状の懸濁液となっている。酸化アルミニウム粉末は、Nanophase Technologies社製の平均粒径30nm程度の酸化アルミニウム粉末である。粉末の混入の割合は、粉末混入の効果を十分発揮させるために、混入粉末は体積比で0.1%以上、望ましくは0.5%以上(通常、混入粉末の比重は2以上であるので、重量比では1%以上)の濃度で懸濁させる必要があり、体積比で5%程度までは、混入粉末が高濃度に混入されるほど効果が高い。混入粉末の粒子の粒径が十分小さいので、加工液濾過装置8により混入粉末が除去されることはない。
【0015】
粉末濃度調整器11は、流路内を流れる懸濁液に光を照射して透過光の強度から混入粉末の濃度を検出し、濃度が薄ければ粉末もしくは高濃度の懸濁液を追加投入して混入粉末の濃度を一定に維持する。
【0016】
平均電圧測定器12は、最低でも1kHz以下、望ましくは10kHz以下の周波数範囲において、ワイヤ電極2を基準とした被加工体5の電圧の平均値を測定する。カットオフ周波数10kHzのローパスフィルタを通過させたギャップ電圧波形をA/D変換して平均電圧を求める。
【0017】
正極性パルス比設定器13は、図2−(a)、図2−(b)に示すように平均電圧測定器12により測定された平均電圧に逆比例する値を出力する。平均電圧がゼロボルトであれば0.5を出力し、平均電圧がゼロボルトより正で大きいほど小さな値を出力し、平均電圧がゼロボルトより負で小さいほど大きな値を出力する。
【0018】
加工電源14は、図3−(a)および図3−(b)に示すようにワイヤ電極2と被加工体5の間に正極性および逆極性のパルス電圧を印加して放電を発生させる。ワイヤ放電加工ではパルス幅は長くても2μsec程度が適当である。図2−(b)に示すような正極性パルス比設定器13の出力に従って、正極性パルス数と逆極性パルス数との比率を変化してパルスを発生させる。例えば、正極性パルス比設定器13の出力がそれぞれ0.75、0.5、0.25の場合には、正極性パルスと逆極性パルスの発生比率をそれぞれ3:1、1:1、1:3となるように放電パルスを発生する。ここで、正極性パルスとはワイヤ電極2を基準とした被加工体5の無負荷電圧が正となるパルスであって、このパルスを印加すると被加工体5の平均電圧は正側に変化する。無負荷電圧とは、加工電源14がワイヤ電極2と被加工体5との間に印加電圧を印加した状態で、ワイヤ電極2と被加工体5との間にまだ放電が発生していない時に、ワイヤ電極2と被加工体5との間で測定される電圧である。放電が発生している間は電圧が低下している。逆極性パルスとはワイヤ電極2を基準とした被加工体5の無負荷電圧が負となるパルスであって、このパルスを印加すると被加工体の平均電圧は負側に変化する。したがって、上記の構成により、平均電圧が正の場合には逆極性パルスを多く発生させて平均電圧をゼロボルト方向に変化させ、平均電圧が負の場合には正極性パルスを多く発生させて平均電圧をゼロボルト方向に変化することになるから、平均電圧は常にゼロボルト近辺に維持されることになる。なお、図3−(a)および図3−(b)に示すように、正極性パルスと逆極性パルスの放電電流の流れる方向が逆となる場合を示した。
【0019】
また、加工速度や電極消耗などの加工特性上の理由から一定方向へのみ放電電流を流す必要がある場合には、図3−(c)および図3−(d)に示すように無負荷電圧のみを交番させてもよい。この場合、放電の発生が検出された瞬間に電圧印加方向を逆転させる。
【0020】
さらにまた、加工電源は無負荷時間中の電圧を正負の両側に印加して平均電圧をゼロに維持したが、図4−(b) および図4−(c)に示すように加工電源は休止時間中に無負荷電圧と反対の極性の電圧を印加し、平均電圧がゼロ近辺に維持されるように、この休止時間中に電圧を印加する時間を調整するよう構成しても良い。例えば、図4−(a)に示すように、あらかじめ正と負の閾値Vup、Vboを設定しておき、平均電圧がいずれかの閾値を超えた場合には休止時間中に電圧を印加する時間を平均電圧がゼロから離れるのを打ち消す方向へ増減させるなどの方法が考えられる。このように構成すれば、放電1パルスごとに逆方向の電圧が印加されるため上記実施例よりもさらに高速に電圧が交番するので、漏れ電流をいっそう低減できる。
【0021】
特開昭61−4620号公報に示すような、正極性パルス電圧と逆極性パルス電圧の両方を発生できる加工電源(以下、両極性電源と称す。)を用い、コロイド懸濁液中でさまざまな周波数の電圧を印加する実験を実施した。その結果、少なくとも1kHz以上、望ましくは10kHz以上の周波数で極性を交番させ、かつ平均電圧をゼロボルト付近に維持した場合には、放電を発生させるために必要かつ十分な電圧を印加可能である。
【0022】
なお、通常の仕上加工に用いられる電源周波数範囲内、すなわち50MHz程度以下であれば十分放電が発生可能であるから、電圧反転の最小周期は20nsecである。
【0023】
混入粉末の混入の体積比に関して、体積比0.1%以下では粉末混入の効果が得られ難い。体積比0.1%以上で0.5%未満であれば粉末混入の効果が得られる場合があるが、0.5%以上であれば十分満足できる粉末混入の効果が得られる。
【0024】
また、正逆の交番の周期に関して、1msecを越えると漏れ電流が大きすぎて放電しない。1msec以下で100μsecを越えると放電する場合もあるが、漏れ電流が大きく常に放電しない場合がある。100μsec以下では漏れ電流が小さく、満足した放電が発生する。
【0025】
極性が交番する電界内では分散粒子は電気泳動により往復運動するが、極性が交番する周波数を高く設定すれば往復運動の振幅を極めて小さくできる。また平均電圧がゼロボルト付近に維持されれば一方向だけに粒子が移動することはない。したがって、ほとんど漏れ電流が流れないので、工具電極と被加工体の間に十分な電圧が印加可能となる上、不導体粉末の堆積が防止されると考えられる。
なお、上記の両極性電源は、そもそも脱イオン水を加工液とするワイヤ放電加工装置において電解腐食を防止すべく考案されたものである。すなわち、イオン交換樹脂などで脱イオンした水性加工液中で放電加工する場合、正極性電圧または逆極性電圧のいずれか一方のみを印加する加工電源(以下、単極性電源と記す)では電解腐食現象の発生を避けられなかったが、両極性電源を用いれば電極と被加工体の間に流れる電解電流を抑制できるため電解腐食現象を防止できる。
【0026】
ただし、この電解腐食防止能力と放電の生じやすさは無関係である。すなわち、イオン交換樹脂などを用いて十分に脱イオンした水性加工液中では、単極性電源であっても両極性電源であっても放電を発生できるし、イオン等の溶解により絶縁性が低下した水性加工液中では、どちらの電源でも放電を発生できない。もちろん、清浄な油性加工液中ではどちらの電源でも放電を発生できる。
【0027】
一般に単極性電源が使用される粉末混入放電加工では、溶媒である加工液が十分に脱イオンした水性加工液や油性加工液であっても、微細粒子を高濃度で懸濁すると大きな漏れ電流が生じて放電を発生できなかった。上記のように、放電の生じやすさに関して単極性電源と両極性電源に差はないと考えられていたため、微細粉末の懸濁により絶縁性が低下した加工液中では、イオン等の溶解により絶縁性が低下した水性加工液中と同様に、単極性電源でも両極性電源でも放電加工できないと考えられていた。
【0028】
しかしながら、イオンの溶解により絶縁性が低下した加工液と、コロイド粒子の懸濁により絶縁性が低下した加工液では、直流での電気抵抗は同程度であっても、高周波領域でのインピーダンスは大きく相違している。このため、コロイド粒子が懸濁した水性または油性の加工液中では、両極性電源を用いて高速に極性を交番させた場合に限り放電を発生可能であった。もちろん、水性加工液の場合には、イオン交換樹脂等により脱イオンする必要があるのは当然である。
【0029】
放電加工工程終了後に、次のように研磨加工工程を実施する。スイッチ15を切り替えて、加工電源14をワイヤ電極2と被加工体5から切り離し、非平衡電圧電源16をワイヤ電極2と被加工体5に接続してワイヤ電極2の周囲に酸化アルミニウム粉末を凝集させる。この凝集状態のまま、ワイヤ電極2と被加工体5とを相対移動させて加工面を研磨する。ここで、非平衡電圧電源16は、平均出力電圧を正または負のどちらか一方に維持する電源である。例えば、直流電圧をパルス状もしくは連続的にワイヤ電極2と被加工体5の間に印加すればよい。もちろん、一時的に反対の極性で電圧が印加される構成であっても、平均電圧が正または負のどちらか一方に維持される構成であればよい。混入粉末がワイヤ電極側に凝集するような極性に平均電圧が維持されるように電圧を印加する必要があるから、酸化アルミニウムのように電荷零点が pH7よりも大きい材質が脱イオン水中に分散している場合には、ワイヤ電極を陰極側にすればよい。なお、上記非平衡電圧電源16は放電が発生しないように出力インピーダンスを十分高く設定しておく。
【0030】
以上のように、漏れ電流が流れないほど短い周期で電圧が交番するように正逆パルスが混合して発生され、平均電圧がゼロボルト近傍に制御するように、正逆パルスの発生比率が調整し、結果として短い周期で電圧が交番しつつ平均電圧がゼロボルト付近に維持されるので、これまでより平均粒径の小さな粒子を、混入による効果を得るために十分な濃度で混入した加工液中で放電加工が実行可能となる。その結果、加工屑の除去が一層容易で、混入粉末が沈降するおそれの全くない、高精度な粉末混入放電加工が可能となる。
【0031】
また、電極または被加工体への不導体粉末の堆積も防止できるので、不導体粉末を混入粉末として使用可能となり、硬度の硬い粉末を使用可能になる。
【0032】
また、水性溶媒を使用しているので、研磨後水洗を行うだけで済む。
【0033】
さらにまた、放電加工後に加工液を入れ替えることなく研磨加工を実施できるので、簡単な装置構成および手順で高品位な加工面が得られる。
【0034】
なお、本発明はワイヤ放電加工装置に限られないが、特にワイヤ放電加工装置の場合には、通常の手段では研磨不可能な微細スリット内部も研磨可能となる利点が生じる。
【0035】
なお、上記実施の形態1では正極性パルスと逆極性パルスとの発生比率を、平均電圧の変化に比例的に変化させたが、平均電圧の変化を打ち消す方向へ発生比率を変化させるのであれば、どのような方法でも良い。例えば、平均電圧が正の閾値を超えた場合には逆極性パルスを、負の閾値を超えた場合には正極性パルスを多く発生させ、両方の閾値の間の場合には正極性パルスと逆極性パルスを交互に発生させるなどの簡便な方法でも良い。
【0036】
また、実施の形態1では、酸化アルミニウムの粉末を懸濁させたが、混入粉末としては酸化チタン、酸化ケイ素などの無機酸化物または炭化ケイ素などの無機炭化物または窒化ケイ素などの無機窒化物または六フッ化ランタンなどの無機フッ化物などの硬質不導体の粉末でも同様な効果が得られる。
【0037】
なお、実施の形態1では平均粒径30nmの酸化アルミニウム粉末を使用したが、平均粒径1μm以下の粉末であれば加工液の濾過装置で濾過されないので使用可能である。平均粒径がさらに小さな粉末でも、加工液に分散することができれば同様な効果が得られる。通常平均粒径1nm以上が適当である。
【0038】
また、粉末濃度調整器は光学的手法により粉末濃度を検出したが、加工液の導電度を測定して懸濁濃度を推定する電気的な手法など、他の手法を採用しても差し支えない。ただし水性加工液に対して電気的手法を用いて懸濁濃度を推定する場合には、溶存イオンの導電度への影響も考慮しなければならない。したがって、例えば2種類の周波数で加工液のインピーダンスを測定し、高周波側のインピーダンスから溶存イオンに起因する導電度を求め、低周波側のインピーダンスを加味して粉末の濃度を推定するなどの手法を採用する必要がある。
【0039】
なお、脱イオン水に微細粒子を懸濁させたワイヤ放電加工装置について説明したが、この発明は固体粒子をコロイド分散状態に懸濁した加工液を用いた放電加工全てに適用可能であるから、溶媒の加工液が油性の場合や、形彫り放電加工の場合にも同様の効果を奏する。
【0040】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2の放電加工装置の構成を示す図である。図6はタイマーの出力と図5の被加工体と工具電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。実施の形態1と同一または相当部分に対しては同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この放電加工装置は、形彫り放電加工を行う。放電加工装置は、工具電極17と、制御装置3と、加工液7と、加工電源14と、加工槽18と、タイマー19と、放電状態検出器20とを備えている。
【0042】
次に動作について説明する。被加工体5は加工液7で満たされた加工槽18内に設置され、工具電極17との相対位置が駆動装置4を介して制御装置3により調節される。
【0043】
加工液7の主成分は形彫り放電加工にて通常使用される油性放電加工液である。この加工液中に平均粒径100nm程度のグラファイト粉末が混入粉末として添加されており、コロイド状の懸濁液となっている。ここでは、グラファイト粉末を添加しているが、カーボンブラックなどのカーボン導電粉末、銅、ニッケルなどの金属導体粉末、シリコンなどの等の半導体粉末、または窒化チタンおよび酸化アンチモンなどの無機化合物の導体粉末であってもよい。また、実施の形態1と同様に、不導体粉末を油性放電加工液へ添加してもよい。粉末の添加量は、粉末混入の効果を十分発揮させるために、固体粉末は体積比で0.1%以上、望ましくは0.5%以上(通常、混入粉末の比重は2以上であるから、重量比では1%以上)の濃度で懸濁させる必要があり、体積比で5%程度までであれば高濃度であるほど効果が高いので望ましい。これらの粒子の粒径は十分小さいので、加工液濾過装置8により除去されることはない。
【0044】
タイマー19は、図6−(a)に示すようにあらかじめ設定された周期ごとに論理出力が反転する。設定周期は1msec以下、望ましくは100μsec以下である。
【0045】
加工電源14は図6−(b)および図6−(c)に示すようにタイマー19の出力が反転する毎に無負荷時間中の電圧印加極性を反転させて工具電極17と被加工体5の間にパルス状の電圧を印加し、放電を発生させる。なお、図6−(b)および図6−(c)ではFETなどのスイッチング素子を用いた荒加工および中仕上げ加工用電源の場合を示した。形彫り放電加工では放電電流を工具電極17から被加工体5へ流した場合に電極消耗率が低くなるので、加工量が比較的大きい荒加工や中加工の領域では放電電流の方向を交番させるのは得策でない。したがって、図6に示したように放電中の電圧印加極性は交番させず、無負荷時間中の電圧印加極性のみ交番するよう構成することが望ましい。もちろん、加工量が十分少なく、したがって電極消耗量も無視できるほど少ない仕上げ加工領域では、図6−(d)および図6−(e)のように放電電流の方向を交番させても不都合が生じないから、必要に応じて適切な方法を適宜選択すればよい。
【0046】
放電状態検出器20は、従来の放電加工装置が採用している方法と同様の手法を用いて、工具電極17と被加工体5から形成される放電間隙の長さを反映した状態量を出力する。例えば、単位時間あたりに発生した放電パルス数や、平均無負荷時間、平均ギャップ電圧などを出力すればよい。ただし、従来の粉末混入放電加工の場合と異なり、両極性電源を用いているので、平均ギャップ電圧はほぼゼロボルトに維持されている。したがって従来の平均電圧測定方法は採用できない。放電状態として平均ギャップ電圧を測定する場合には、工具電極17と被加工体5の間に印加された電圧波形をダイオードブリッジなどで整流した後に、平均化する必要がある。
【0047】
制御装置3は、放電状態検出器20の出力に基づいて、従来の放電加工装置と同様の手法により工具電極17と被加工体5の相対位置を調節する。
【0048】
以上のように、短い周期で印加電圧極性が反転するので、導電粉末を混入による効果を得るために十分な濃度で添加しても放電加工が実行可能となる。
【0049】
また、炭化水素油に微粉末を分散することができるので、絶縁抵抗を高くすることができる。
【0050】
また、導電粒子を用いることができ、従来の放電条件を援用することができる。
【0051】
なお、この実施の形態2では、タイマーを用いて印加電圧の反転周期を決定したが、通常の放電加工では放電周波数がほぼ一定に維持されるように工具電極と被加工体の相対位置が調節されるのが普通であるから、印加電圧の反転周期は放電パルス数でも設定可能である。すなわち、上記実施の形態2のタイマーの代わりに放電パルス数計数カウンタを設け、漏れ電流が生じないような十分短い時間内に発生する一定数の放電パルス毎に印加電圧を反転させるよう構成してもよい。
【0052】
また、この実施の形態2では油性加工液に微細粒子を懸濁させた形彫り放電加工機について説明したが、微細粒子をコロイド分散状態に懸濁した加工液を用いた放電加工全てに適用可能であるから、溶媒の加工液が水性の場合や、ワイヤ放電加工の場合にも同様の効果を奏する。
【0053】
【発明の効果】
この発明に係わる放電加工機による効果は、被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、間隙に介在する加工液と、被加工体と工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、被加工体を放電加工する放電加工装置において、加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で印加電圧を正逆交番するので、本実施例によれば漏れ電流が流れない周波数帯域で平均電圧が測定され、測定電圧がゼロボルトから離れるのを打ち消す方向へパルスの発生比率が調整され、結果として短い周期で電圧が交番しつつ平均電圧がゼロボルト付近に維持されるので、これまでより粒径の小さな粒子を、混入による効果を得るために十分な濃度で混入した加工液中で放電加工が実行可能となる。その結果、加工屑の除去が一層容易で、混入粉末が沈降するおそれの全くない、高精度な粉末混入放電加工が可能となる。また、電極または被加工体への不導体粉末の堆積も防止できるので、不導体粉末を混入粉末として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1の放電加工機の構成図である。
【図2】図1の被加工体の平均電圧と正極性パルス比設定器との関係を示すグラフである。
【図3】図1の被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【図4】図1の被加工体の平均電圧、被加工体とワイヤ電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【図5】この発明の実施の形態2の放電加工装置の構成図である。
【図6】図5のタイマーの出力と図5の被加工体と工具電極間に掛かる電圧と電流を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ワイヤ供給装置、2 ワイヤ電極、3 制御装置、4 駆動装置、5 被加工体、6 加工液供給装置、7 加工液、8 加工液濾過装置、9 導電度調整装置、10 加工液温度調整装置、11 粉末濃度調整器、12 平均電圧測定器、13 正極性パルス比設定器、14 加工電源、15 スイッチ、16 被平衡電圧電源、17 加工槽、18 タイマー、19 放電状態検出器。
Claims (7)
- 被加工体に対し微小間隙を介して相対された工具電極と、上記間隙に介在する加工液と、上記被加工体と上記工具電極との間に印加電圧を印加し放電を発生させる加工電源とを備え、上記被加工体を放電加工する放電加工装置において、上記加工液は、平均粒径1μm以下1nm以上の混入粉末が0.1体積%以上5体積%以下混入され、上記加工電源は、1msec以下20nsec以上の周期で上記印加電圧を正逆交番することを特徴とする放電加工装置。
- 上記加工電源は、上記被加工体の平均電圧をゼロボルトに制御することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
- 上記混入粉末は、不導体粉末を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の放電加工装置。
- 上記加工液は、脱イオン水を溶媒とすることを特徴とする請求項3に記載の放電加工装置。
- 上記加工液は、炭化水素油を溶媒とすることを特徴とする請求項3に記載の放電加工装置。
- 上記混入粉末は、導電粒子を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の放電加工装置。
- 上記加工電源と並列に設けられ、上記被加工体と上記工具電極間に電圧を印加する電圧電源を備え、上記電圧電源は、上記混入粉末を上記工具電極に凝集する電圧を印加することを特徴とする請求項4または5に記載の放電加工装置。
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2003
- 2003-02-07 JP JP2003030660A patent/JP2004237413A/ja active Pending
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