JP2004237299A - ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents
ガスシールドアーク溶接用ワイヤ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004237299A JP2004237299A JP2003027079A JP2003027079A JP2004237299A JP 2004237299 A JP2004237299 A JP 2004237299A JP 2003027079 A JP2003027079 A JP 2003027079A JP 2003027079 A JP2003027079 A JP 2003027079A JP 2004237299 A JP2004237299 A JP 2004237299A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- wire
- welding
- contact tip
- mass
- lubricant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Lubricants (AREA)
Abstract
【課題】断続溶接や連続の長時間溶接においてもワイヤ送給性に優れ、且つコンタクトチップの摩耗が小さいガスシールドアーク溶接用ワイヤを提供する。
【解決手段】ワイヤ表面に潤滑油をベース油として4〜15質量%の有機モリブデン化合物および0.3〜4.0質量%の二硫化モリブデンを含有させた防錆潤滑剤をワイヤ10kg当たり0.5〜2.0g付着させたことを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】ワイヤ表面に潤滑油をベース油として4〜15質量%の有機モリブデン化合物および0.3〜4.0質量%の二硫化モリブデンを含有させた防錆潤滑剤をワイヤ10kg当たり0.5〜2.0g付着させたことを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、断続溶接や連続の長時間溶接においてもワイヤ送給性に優れ、且つコンタクトチップの摩耗が小さいガスシールドアーク溶接用ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガスシールドアーク溶接において、溶接用ワイヤ(以下、ワイヤという。)はスプールまたはパック容器からコンジットチューブを経て溶接トーチへ送られ、溶接電流はコンタクトチップから通電される。この通電時のワイヤとコンタクトチップの接触によりコンタクトチップが摩耗し、摩耗の程度が大きくなるとワイヤが振れることによる狙い位置のずれやアーク不安定が起こる。そのため、ワイヤとコンタクトチップの摩擦を減少するための技術としては、ソリッドワイヤやシームレスフラックス入りワイヤのようにワイヤ表面に銅めっきを施す方法や、例えば特公昭50−3256号公報(特許文献1)にみられるようなワイヤ表面に潤滑油を塗布する方法があるが、それだけでは不十分である。
【0003】
また、特開2002−239779号公報(特許文献2)にはワイヤ表面に二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の固体潤滑剤を混合した液体潤滑剤を付着させる方法、あるいは特開平6−262389号公報(特許文献3)にみられる有機モリブデンを含有させた液体潤滑剤を付着させる方法等各種の方法が提案または実施されている。
【0004】
しかし、ワイヤ表面に銅めっきを施したワイヤは、その製造工程が複雑で長く、行程削減やめっきの廃液処理の問題等から、これを省略しようという提案もある。また、特許文献2の如く固体潤滑剤を液体潤滑剤に混合した潤滑剤を塗布したワイヤは、長時間溶接において、固体潤滑剤がコンジットチューブ内またはコンタクトチップ内に溜まってワイヤの送給不良を引き起こすため、固体潤滑剤の混合量が限られる。また、特許文献3に記載の有機モリブデンを塗布したワイヤは、仮付け溶接や断続溶接などの様にコンタクトチップが高温になり難い溶接では有機モリブデンが二硫化モリブデンを析出できないので有効ではなく、二硫化モリブデンを含有する例は、その含有量が多くて前述の如く固体潤滑剤がコンジットチューブ内に溜まり、送給不良となる。
【0005】
【引用文献】
(a)特許文献1(特公昭50−3256号公報)
(b)特許文献2(特開2000−239779号公報)
(c)特許文献3(特開平6−262389号公報)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述した従来技術における溶接の開始時から連続した長時間溶接において、ワイヤの送給不良を起こさず、コンタクトチップの摩耗量が少ないワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベースとなる潤滑油に有機モリブデン化合物と共に、二硫化モリブデンを適量含有させた潤滑剤を付着させたワイヤであり、潤滑油をベース油として4〜15質量%の有機モリブデン化合物および0.3〜4.0質量%の二硫化モリブデンを含有させた防錆潤滑剤をワイヤ10kg当り0.5〜2.0g付着させたことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
発明者らは、ワイヤに付着させる潤滑剤について種々検討した結果、ベースとなる潤滑油に有機モリブデン化合物と共に、二硫化モリブデンを少量含有させた防錆潤滑剤を付着させたワイヤが、断続溶接や連続の長時間溶接においてワイヤ送給性に優れ、且つ、コンタクトチップの摩耗が小さいことを見出したものである。本発明に用いるベース油としては、動植物油、鉱物油、合成油を単独或はこれらを混合したものを使用することができ、これらのベース油は基本的にワイヤのコンジットチューブ内およびコンタクトチップ内の摩擦抵抗を下げて送給抵抗および摩耗量を低減する役割を担っている。
【0009】
有機モリブデン化合物としては、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオ燐酸モリブデン、硫化オキシモリブデンオルガ、ホスホロジチオエート等があり、これらの化合物は約300℃で二硫化モリブデンを析出し、コンジットチューブおよびコンタクトチップ内でのワイヤの摩擦抵抗を低減するものと考えられる。二硫化モリブデンの少量添加は、有機モリブデン化合物が十分な二硫化モリブデンを析出できない低い温度域における潤滑機能を補助するものであってコンジットチューブ内およびコンタクトチップ内でのワイヤの摩擦抵抗を低減する。これらの潤滑剤の他に固体潤滑剤として、グラファイトや二硫化タングステンあるいはCF系の固形潤滑剤を必要に応じ併用することができる。
【0010】
本発明における有機モリブデン化合物は、ベース油中の添加量として4質量%以上添加する必要があり、4質量%未満では耐チップ摩耗性について明瞭な効果は認められない。しかしながら、15質量%を超える添加は、有機モリブデン化合物の粘度が高いために潤滑剤の流動性が悪くなり、ワイヤ表面に均一に付着させることが困難となり好ましくない。よって、有機モリブデン化合物の添加量は、4〜15質量%に限定する。
【0011】
二硫化モリブデンは不溶性且つ不活性であり、ベース油中の添加量として4.0質量%を超える添加は防錆潤滑剤の流動性を悪化させ、ワイヤ表面への均一な付着を妨げると共に、コンジットチューブ内およびコンタクトチップ内に溜まると送給不良を起こす可能性がある。しかし、0.3質量%以上添加しなければ、低温での耐チップ摩耗性について明瞭な効果は認められない。
【0012】
なお、通常ワイヤ表面に防錆潤滑剤を付着させる方法としては、伸線後にロール又はフェルトを用いて塗布する方法や、伸線工程の最終ダイスの潤滑油として使用するなどの方法がある。また、グラファイトや二硫化タングステンなどと併用する場合のベース油中への添加量は、やはりベース油の流動性を悪化させ、ワイヤ表面への均一な付着を妨げると共に、送給不良を起こす可能性があるため、二硫化モリブデンを含めた固体潤滑剤の合計量としては4.0質量%以下が好ましい。
【0013】
次に、本発明のガスシールドアーク溶接用ワイヤへの防錆潤滑剤の付着量はワイヤ10kg当り0.5〜2.0gである。防錆潤滑剤の付着量がワイヤ10kg当り0.5g未満ではワイヤ送給性が不安定となり潤滑効果が明瞭にみられない。一方、付着量がワイヤ10kg当り2.0gを超えるとワイヤ送給性は安定するが、主に潤滑油に含まれるH2 源により、溶着金属中に水素含有量が増大するため、ブローホールや水素割れなどの溶接欠陥が生じ易くなり好ましくない。なお、本発明は、めっき有りまたはなしのソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤ何れにも適用可能である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
まず、ワイヤ径1.2mmのJIS Z3113 YFW−C5ODRのめっきなしワイヤに、表1に示す種々の潤滑剤を伸線工程の最終ダイス後にフェルトを用いて塗布したワイヤを試作した。図1に示す溶接装置を用いて溶接を行い、コンタクトチップの摩耗量およびワイヤ送給性を調査した。試験装置は、溶接機に繋がるワイヤ送給装置1に溶接用ワイヤスプール2を搭載し、ワイヤ送給ローラー3およびコンジットケーブル5を経由してワイヤ4を溶接トーチ6へ送給し、ノズル7からシールドガスとともに送り出してアークを発生させて、母材である鋼パイプ8をターニングローラ9の上にのせて、所定の速度で回転させて試験を行った。コンジットチューブの長さは6mのものを使用して途中に200mmRの曲りを2個設けた。
【0015】
溶接条件は、溶接電流300A、アーク電圧34V、溶接速度25cm/min、シールドガス条件CO2 、20リットル/min、ワイヤ突出し長さ20mmである。チップ摩耗試験は、10分間連続溶接した後3分間コンタクトチップを冷却し、再度10分間溶接するという工程を繰り返し行い、ワイヤを10kg消費した時点におけるコンタクトチップの摩耗量(溶接前後の質量差)を測定して行った。本発明においてはベース油のみを潤滑剤として用いた場合の例(表1中のNo.1)と比較してコンタクトチップの摩耗量が50%以下となるワイヤを良好とした。また、ワイヤ送給性については、アーク状態を観察するとともにワイヤ送給時における送給モータの電機子電流値で評価した。電機子電流が3.5Aを超えるとワイヤ送給性が悪くアークが不安定になる。それらの調査結果も表1にまとめて示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1中No.6〜10が本発明例、No.1〜6およびNo.11〜16は比較例である。本発明例であるNo.6〜10は、有機モリブデン化合物および二硫化モリブデンを適量含有した防錆潤滑剤を適量塗布してあるので、優れた送給性が得られるとともにコンタクトチップの摩耗が小さく、良好なアーク状態および溶接ビードが得られ、溶接結果も良好であった。
図2および図3は、有機モリブデン化合物の含有量および二硫化モリブデンの含有量とコンタクトチップの摩耗量との関係を示す図で、それぞれの限定された数値範囲内において良好な結果を示している。
【0018】
比較例中No.1〜5は、従来技術による例を示しており、No.1のベース油のみの使用ではコンタクトチップの摩耗が大きかった。No.2〜5は、No.1に比べて有機モリブデン化合物や固形潤滑剤添加の効果によりコンタクトチップの摩耗量が若干減少したものの、50%には及ばなかった。No.11は、有機モリブデン化合物が塗布されていないのでコンタクトチップの摩耗量多くなった。No.12は、二硫化モリブデンの含有量が少ないため、低温域における効果が得られず、コンタクトチップの摩耗量多くなった。
【0019】
No.13は、潤滑剤付着量が少なく、電機子電流が高くワイヤ送給性が悪くなって溶接途中でアーク切れした。No.14は、潤滑剤付着量が多く、そのH2 源により溶接ビード上に時々ピット状の欠陥発生が生じた。No.15およびNo.16は、ベース油中の有機モリブデン化合物および二硫化モリブデンの添加量が多過ぎるために潤滑剤の流動性が悪く、ワイヤに均一に付着させることが困難なために製造を中断した。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のガスシールドアーク溶接用ワイヤによれば、断続溶接や連続の長時間溶接においてもワイヤ送給性に優れ、且つコンタクトチップの摩耗が小さいなど快適な溶接作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた試験装置の概略図である。
【図2】ベース油中の有機モリブデン化合物含有量とコンタクトチップ摩耗量の関係を示した図である。
【図3】ベース油中の二硫化モリブデン含有量とコンタクトチップ摩耗量の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ送給装置
2 溶接用ワイヤスプール
3 ワイヤ送給ローラー
4 ワイヤ
5 コンジットケーブル
6 溶接トーチ
7 ノズル
8 鋼パイプ
9 ターニングローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、断続溶接や連続の長時間溶接においてもワイヤ送給性に優れ、且つコンタクトチップの摩耗が小さいガスシールドアーク溶接用ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガスシールドアーク溶接において、溶接用ワイヤ(以下、ワイヤという。)はスプールまたはパック容器からコンジットチューブを経て溶接トーチへ送られ、溶接電流はコンタクトチップから通電される。この通電時のワイヤとコンタクトチップの接触によりコンタクトチップが摩耗し、摩耗の程度が大きくなるとワイヤが振れることによる狙い位置のずれやアーク不安定が起こる。そのため、ワイヤとコンタクトチップの摩擦を減少するための技術としては、ソリッドワイヤやシームレスフラックス入りワイヤのようにワイヤ表面に銅めっきを施す方法や、例えば特公昭50−3256号公報(特許文献1)にみられるようなワイヤ表面に潤滑油を塗布する方法があるが、それだけでは不十分である。
【0003】
また、特開2002−239779号公報(特許文献2)にはワイヤ表面に二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の固体潤滑剤を混合した液体潤滑剤を付着させる方法、あるいは特開平6−262389号公報(特許文献3)にみられる有機モリブデンを含有させた液体潤滑剤を付着させる方法等各種の方法が提案または実施されている。
【0004】
しかし、ワイヤ表面に銅めっきを施したワイヤは、その製造工程が複雑で長く、行程削減やめっきの廃液処理の問題等から、これを省略しようという提案もある。また、特許文献2の如く固体潤滑剤を液体潤滑剤に混合した潤滑剤を塗布したワイヤは、長時間溶接において、固体潤滑剤がコンジットチューブ内またはコンタクトチップ内に溜まってワイヤの送給不良を引き起こすため、固体潤滑剤の混合量が限られる。また、特許文献3に記載の有機モリブデンを塗布したワイヤは、仮付け溶接や断続溶接などの様にコンタクトチップが高温になり難い溶接では有機モリブデンが二硫化モリブデンを析出できないので有効ではなく、二硫化モリブデンを含有する例は、その含有量が多くて前述の如く固体潤滑剤がコンジットチューブ内に溜まり、送給不良となる。
【0005】
【引用文献】
(a)特許文献1(特公昭50−3256号公報)
(b)特許文献2(特開2000−239779号公報)
(c)特許文献3(特開平6−262389号公報)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述した従来技術における溶接の開始時から連続した長時間溶接において、ワイヤの送給不良を起こさず、コンタクトチップの摩耗量が少ないワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベースとなる潤滑油に有機モリブデン化合物と共に、二硫化モリブデンを適量含有させた潤滑剤を付着させたワイヤであり、潤滑油をベース油として4〜15質量%の有機モリブデン化合物および0.3〜4.0質量%の二硫化モリブデンを含有させた防錆潤滑剤をワイヤ10kg当り0.5〜2.0g付着させたことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
発明者らは、ワイヤに付着させる潤滑剤について種々検討した結果、ベースとなる潤滑油に有機モリブデン化合物と共に、二硫化モリブデンを少量含有させた防錆潤滑剤を付着させたワイヤが、断続溶接や連続の長時間溶接においてワイヤ送給性に優れ、且つ、コンタクトチップの摩耗が小さいことを見出したものである。本発明に用いるベース油としては、動植物油、鉱物油、合成油を単独或はこれらを混合したものを使用することができ、これらのベース油は基本的にワイヤのコンジットチューブ内およびコンタクトチップ内の摩擦抵抗を下げて送給抵抗および摩耗量を低減する役割を担っている。
【0009】
有機モリブデン化合物としては、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオ燐酸モリブデン、硫化オキシモリブデンオルガ、ホスホロジチオエート等があり、これらの化合物は約300℃で二硫化モリブデンを析出し、コンジットチューブおよびコンタクトチップ内でのワイヤの摩擦抵抗を低減するものと考えられる。二硫化モリブデンの少量添加は、有機モリブデン化合物が十分な二硫化モリブデンを析出できない低い温度域における潤滑機能を補助するものであってコンジットチューブ内およびコンタクトチップ内でのワイヤの摩擦抵抗を低減する。これらの潤滑剤の他に固体潤滑剤として、グラファイトや二硫化タングステンあるいはCF系の固形潤滑剤を必要に応じ併用することができる。
【0010】
本発明における有機モリブデン化合物は、ベース油中の添加量として4質量%以上添加する必要があり、4質量%未満では耐チップ摩耗性について明瞭な効果は認められない。しかしながら、15質量%を超える添加は、有機モリブデン化合物の粘度が高いために潤滑剤の流動性が悪くなり、ワイヤ表面に均一に付着させることが困難となり好ましくない。よって、有機モリブデン化合物の添加量は、4〜15質量%に限定する。
【0011】
二硫化モリブデンは不溶性且つ不活性であり、ベース油中の添加量として4.0質量%を超える添加は防錆潤滑剤の流動性を悪化させ、ワイヤ表面への均一な付着を妨げると共に、コンジットチューブ内およびコンタクトチップ内に溜まると送給不良を起こす可能性がある。しかし、0.3質量%以上添加しなければ、低温での耐チップ摩耗性について明瞭な効果は認められない。
【0012】
なお、通常ワイヤ表面に防錆潤滑剤を付着させる方法としては、伸線後にロール又はフェルトを用いて塗布する方法や、伸線工程の最終ダイスの潤滑油として使用するなどの方法がある。また、グラファイトや二硫化タングステンなどと併用する場合のベース油中への添加量は、やはりベース油の流動性を悪化させ、ワイヤ表面への均一な付着を妨げると共に、送給不良を起こす可能性があるため、二硫化モリブデンを含めた固体潤滑剤の合計量としては4.0質量%以下が好ましい。
【0013】
次に、本発明のガスシールドアーク溶接用ワイヤへの防錆潤滑剤の付着量はワイヤ10kg当り0.5〜2.0gである。防錆潤滑剤の付着量がワイヤ10kg当り0.5g未満ではワイヤ送給性が不安定となり潤滑効果が明瞭にみられない。一方、付着量がワイヤ10kg当り2.0gを超えるとワイヤ送給性は安定するが、主に潤滑油に含まれるH2 源により、溶着金属中に水素含有量が増大するため、ブローホールや水素割れなどの溶接欠陥が生じ易くなり好ましくない。なお、本発明は、めっき有りまたはなしのソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤ何れにも適用可能である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
まず、ワイヤ径1.2mmのJIS Z3113 YFW−C5ODRのめっきなしワイヤに、表1に示す種々の潤滑剤を伸線工程の最終ダイス後にフェルトを用いて塗布したワイヤを試作した。図1に示す溶接装置を用いて溶接を行い、コンタクトチップの摩耗量およびワイヤ送給性を調査した。試験装置は、溶接機に繋がるワイヤ送給装置1に溶接用ワイヤスプール2を搭載し、ワイヤ送給ローラー3およびコンジットケーブル5を経由してワイヤ4を溶接トーチ6へ送給し、ノズル7からシールドガスとともに送り出してアークを発生させて、母材である鋼パイプ8をターニングローラ9の上にのせて、所定の速度で回転させて試験を行った。コンジットチューブの長さは6mのものを使用して途中に200mmRの曲りを2個設けた。
【0015】
溶接条件は、溶接電流300A、アーク電圧34V、溶接速度25cm/min、シールドガス条件CO2 、20リットル/min、ワイヤ突出し長さ20mmである。チップ摩耗試験は、10分間連続溶接した後3分間コンタクトチップを冷却し、再度10分間溶接するという工程を繰り返し行い、ワイヤを10kg消費した時点におけるコンタクトチップの摩耗量(溶接前後の質量差)を測定して行った。本発明においてはベース油のみを潤滑剤として用いた場合の例(表1中のNo.1)と比較してコンタクトチップの摩耗量が50%以下となるワイヤを良好とした。また、ワイヤ送給性については、アーク状態を観察するとともにワイヤ送給時における送給モータの電機子電流値で評価した。電機子電流が3.5Aを超えるとワイヤ送給性が悪くアークが不安定になる。それらの調査結果も表1にまとめて示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1中No.6〜10が本発明例、No.1〜6およびNo.11〜16は比較例である。本発明例であるNo.6〜10は、有機モリブデン化合物および二硫化モリブデンを適量含有した防錆潤滑剤を適量塗布してあるので、優れた送給性が得られるとともにコンタクトチップの摩耗が小さく、良好なアーク状態および溶接ビードが得られ、溶接結果も良好であった。
図2および図3は、有機モリブデン化合物の含有量および二硫化モリブデンの含有量とコンタクトチップの摩耗量との関係を示す図で、それぞれの限定された数値範囲内において良好な結果を示している。
【0018】
比較例中No.1〜5は、従来技術による例を示しており、No.1のベース油のみの使用ではコンタクトチップの摩耗が大きかった。No.2〜5は、No.1に比べて有機モリブデン化合物や固形潤滑剤添加の効果によりコンタクトチップの摩耗量が若干減少したものの、50%には及ばなかった。No.11は、有機モリブデン化合物が塗布されていないのでコンタクトチップの摩耗量多くなった。No.12は、二硫化モリブデンの含有量が少ないため、低温域における効果が得られず、コンタクトチップの摩耗量多くなった。
【0019】
No.13は、潤滑剤付着量が少なく、電機子電流が高くワイヤ送給性が悪くなって溶接途中でアーク切れした。No.14は、潤滑剤付着量が多く、そのH2 源により溶接ビード上に時々ピット状の欠陥発生が生じた。No.15およびNo.16は、ベース油中の有機モリブデン化合物および二硫化モリブデンの添加量が多過ぎるために潤滑剤の流動性が悪く、ワイヤに均一に付着させることが困難なために製造を中断した。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のガスシールドアーク溶接用ワイヤによれば、断続溶接や連続の長時間溶接においてもワイヤ送給性に優れ、且つコンタクトチップの摩耗が小さいなど快適な溶接作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた試験装置の概略図である。
【図2】ベース油中の有機モリブデン化合物含有量とコンタクトチップ摩耗量の関係を示した図である。
【図3】ベース油中の二硫化モリブデン含有量とコンタクトチップ摩耗量の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ送給装置
2 溶接用ワイヤスプール
3 ワイヤ送給ローラー
4 ワイヤ
5 コンジットケーブル
6 溶接トーチ
7 ノズル
8 鋼パイプ
9 ターニングローラ
Claims (1)
- 潤滑油をベース油として4〜15質量%の有機モリブデン化合物および0.3〜4.0質量%の二硫化モリブデンを含有させた防錆潤滑剤をワイヤ10kg当たり0.5〜2.0gをワイヤ表面に付着させたことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003027079A JP2004237299A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003027079A JP2004237299A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004237299A true JP2004237299A (ja) | 2004-08-26 |
Family
ID=32954919
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003027079A Pending JP2004237299A (ja) | 2003-02-04 | 2003-02-04 | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004237299A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8901455B2 (en) | 2008-06-18 | 2014-12-02 | Lincoln Global, Inc. | Welding wire for submerged arc welding |
US8952295B2 (en) | 2008-06-18 | 2015-02-10 | Lincoln Global, Inc. | Welding wire with perovskite coating |
US20220186433A1 (en) * | 2019-10-01 | 2022-06-16 | Toyoflex Corporation | Wire rope |
-
2003
- 2003-02-04 JP JP2003027079A patent/JP2004237299A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8901455B2 (en) | 2008-06-18 | 2014-12-02 | Lincoln Global, Inc. | Welding wire for submerged arc welding |
US8952295B2 (en) | 2008-06-18 | 2015-02-10 | Lincoln Global, Inc. | Welding wire with perovskite coating |
US20220186433A1 (en) * | 2019-10-01 | 2022-06-16 | Toyoflex Corporation | Wire rope |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
AU2011234166B2 (en) | Feeding lubricant for cored welding electrode, cored welding electrode and GMAW process | |
JP2004237299A (ja) | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ | |
JP4020903B2 (ja) | 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ | |
JP2000117486A (ja) | 溶接用ワイヤおよびその製造方法 | |
JP2006175452A (ja) | Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ | |
JP2006095551A (ja) | 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ | |
JP5068483B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ | |
JP3853815B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP4020873B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ | |
JP3153035B2 (ja) | アーク溶接用ワイヤ | |
JP3529669B2 (ja) | アーク溶接用ノーメッキワイヤおよびアーク溶接法 | |
JP4429864B2 (ja) | Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用めっきなしソリッドワイヤ | |
JP2008043990A (ja) | Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ | |
KR100322369B1 (ko) | 용접용 와이어 및 그 제조방법 | |
JP3474378B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法 | |
JP2006102799A (ja) | 炭酸ガスシールドアーク溶接用めっきなしソリッドワイヤ | |
JP5064960B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用めっきなし鋼ワイヤ | |
JP2006102793A (ja) | 炭酸ガスシールドアーク溶接用めっきなしソリッドワイヤ | |
JPH08150494A (ja) | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ | |
JP2006224172A (ja) | 薄板用ガスシールドアーク溶接用めっきなしソリッドワイヤ | |
JP2002219595A (ja) | 溶接ワイヤ | |
JPH1058183A (ja) | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ | |
JP5238273B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ | |
JP2008194716A (ja) | ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ | |
JPS5985396A (ja) | ア−ク溶接用フラツクス入りワイヤ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20050627 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20061201 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070123 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20070410 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |