JP2004236490A - 地中アンカの埋設方法 - Google Patents

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Masao Nakajima
真夫 中島
Mitsuo Hara
光男 原
Sumio Kawamura
純男 川村
Osamu Suzuki
道 鈴木
Tomoyuki Kiyohara
智之 清原
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Abstract

【課題】岩盤のような硬質な地盤であっても、地中アンカを容易に埋設できるようにする。
【解決手段】軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを地中に埋設するときの地中アンカの埋設方法において、前記地中アンカの埋設位置にダウンザホールハンマ等の工具を用いて下穴をあけ、そのあけられた下穴に充填材を充填した後、その地中アンカを押圧させながら回転させて嵌入する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、配電線や電話線等の電柱、信号機等の柱状物、あるいは、その他の構造物を支える支線を地中において支持する地中アンカの埋設方法に係り、特に、地盤が岩盤のような硬質なところであっても容易に地中アンカを埋設することができ、また、これとは逆に、軟質の地盤であっても支線が所定の耐張力を有することができるように地中アンカを埋設することができるようにした地中アンカの埋設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に棒状の軸棒の周囲に複数の螺旋状の掘削刃を間欠的にその軸棒と一体的に設けた鋳鉄製の地中アンカを提案している(特許文献1〜3参照。)。この先の提案に係る地中アンカは、鋳鉄製の棒状の軸棒に所定の間隔を保って、かつ、先端側(地中に埋設される側)よりも上部ほど直径が大きくなる螺旋状の掘削刃を一体的に設けて構成されている。そして、この地中アンカは、電柱を立設するときの穴掘建柱車の回転部を用いて地中の任意の深さに簡単に埋設できる特長を有している。また、この先の提案に係る地中アンカは、螺旋状の掘削刃の大きさ(直径)を大きくすると、その分だけ支線の耐張力(引張力)が増加するという特長を有しているので、N値が5以下のような軟弱な地盤(地中あるいは地面というときもある。)であっても地中アンカを埋設できるという特長がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−1850号公報
【特許文献2】特開2001−59221号公報
【特許文献3】特開2001−182058号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、地中アンカを埋設する箇所の地盤の地質は、千差万別であり、岩盤のような硬質のところも存在する。例えば、一軸圧縮強度(地中アンカの軸棒に加わる圧縮強度)が50MPa以上となるような岩盤からなる地面には、地中アンカが地中に容易に嵌入(捩じ込み)していかないので、このような硬質の地盤には、先端に超硬チップを設けた特殊な工具やダウンザホールハンマ等の工具で予め下穴(前穴)をあけ、その下穴にアンカを嵌入するようにしている。しかし、その下穴の大きさがアンカの大きさに適合していないと、つまり大きすぎたり小さすぎたりすると、地中アンカの支線を支持する支持力、すなわち、耐張力が不足したり、地中アンカの嵌入に支障を来たす欠点があった。
【0005】
すなわち、地中アンカの螺旋状の掘削刃の形状は、先端ほど小さくなっているため、地中アンカの埋設される地盤よっては、地中アンカの耐張力は、上部の最も大径の螺旋状掘削刃のみで得られることがあり、耐張力が低下するおそれがある。このような問題点を解決するために、下穴の形状を地中アンカの形状にあった先細りにすることも考えられるが、下穴の施工に多くの時間と費用を要して現実的ではない。さらに、下穴をあけるときは、ドリル等の工具の焼付防止のため潤滑油が用いられるが、この潤滑油が下穴壁面に付着して螺旋状の掘削刃の地中(岩盤)への食込みを低下させて耐張力を低下させてしまうという欠点がある。さらにまた、地中アンカと下穴との間に空間が生成されると、その空間に雨水が溜まり、地中アンカの腐食を早めてしまうというおそれがある。このような欠点を除去するために、大きな下穴をあけ、その下穴に地中アンカを入れた後、コンクリートを流し込んで地中アンカを埋設する方法も考えられるが、コンクリートは、一定の養生期間を必要とし、その養生の前後で作業が複数回に渡ってしまい、作業日数が多くなってしまうという欠点がある。
【0006】
また、上述とは逆に、地中アンカの埋設される地面が軟弱なところも存在している。しかしながら、上記先の提案に係る地中アンカは、その地中アンカの螺旋状の掘削刃の直径を大きくすると軟弱な地盤であっても適用できるという特長を有しているが、螺旋状の掘削刃が大きくなるとアンカ全体が大型化するとともに、質量も大きくなって扱いにくくなるという問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、岩盤等の硬質の地面であっても容易に地中アンカを埋設することのできる地中アンカ埋設の方法を提供するとともに、比較的小型の地中アンカ、例えば、螺旋状の掘削刃の直径が140mmの地中アンカ(以下、140φのアンカのように表現する。)であっても、軟弱な地盤用の地中アンカとして採用することができるようにした地中アンカの埋設方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る地中アンカの埋設方法は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを地中に埋設するときの地中アンカの埋設方法において、前記地中アンカの埋設位置にダウンザホールハンマ等の工具を用いて下穴をあけ、そのあけられた下穴に充填材を充填した後、その地中アンカを押圧させながら回転させて嵌入することを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の地中アンカの埋設方法は、充填材は、砕石や礫、あるいはコンクリート片等の粒状物であることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の地中アンカの埋設方法は、地中アンカを埋設する地面の箇所に所定の穴径を有する下穴を所定深さあけ、そのあけられた下穴に所定の粒径を有する骨材を投入し、その投入された骨材を下端に超硬チップを有する工具を回転しながら押圧し、その骨材を破砕するとともにその下穴の壁面に圧入させ、次いで、その下穴に軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを埋設することを特徴としている。
本発明の請求項4に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材の投入は、分割して行い、その分割投入の都度、工具を用いて破砕と圧入を行うことを特徴としている。
本発明の請求項5に記載の地中アンカの埋設方法は、下穴あけは、工具を用いて行われることを特徴としている。
本発明の請求項6に記載の地中アンカの埋設方法は、地中アンカの最も大きな螺旋状の掘削刃の直径は、下穴の穴径の1.1〜1.5倍であることを特徴としている。
本発明の請求項7に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材は、粒径が50mm前後の砕石又は礫、あるいはコンクリート廃材であることを特徴としている。
本発明の請求項8に記載の地中アンカの埋設方法は、下穴の深さは100cm前後であることを特徴としている。
本発明の請求項9に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材の他にセメント又はモルタルも投入することを特徴としている。
本発明の請求項10に記載の地中アンカの埋設方法は、セメント又はモルタルは、急結セメント又は急結モルタルであることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、第1の実施の形態に係る地中アンカの埋設方法を実施するときの工程を示しており、以下、図1から順に説明する。
【0010】
図1は、岩盤等からなる硬質の地面Gのアンカ埋設位置に本発明の工具に相当するダウンザホールハンマ1を用いて下穴(前穴)Hをあける状態を示している。ここに示される下穴Hの穴方向は、図示しない支線方向と一致するように傾斜してあけられる。
【0011】
下穴Hをあけるためのダウンザホールハンマ1は、岩盤等の硬質地盤に穴を掘るための圧縮空気で駆動される周知のダウンザホールハンマからなり、図示しない穴掘建柱車の回転部、いわゆるオーガの先端に装着される。ダウンザホールハンマ1であけられる下穴Hの大きさは、後述する地中アンカAの大きさによって決められる。例えば、地中アンカAの上部に位置する最も大きな螺旋状の掘削刃a4 Dの直径が140mm(140φの地中アンカ)のとき、ダウンザホールハンマ1であけられる下穴Hの穴径は115mmである。この地中アンカAと下穴Hの穴径の関係は、地面Gの性質によっても異なるが、いずれにしても、地中アンカAの最も大きな螺旋状の掘削刃の直径よりも下穴Hの穴径が小さくなるようにあけられる。また、下穴Hの深さは、地中アンカAが嵌入されたときに地中アンカAの上端部分が地中内となるようにあけられる(後述の図3参照)。
【0012】
図2は、ダウンザホールハンマ1であけられた下穴Hに地中アンカAを嵌入するときの状態を示している。この地中アンカAの嵌入に先立って、下穴Hには、砕石あるいはコンクリート片等からなる充填材イが投入される。充填材イの粒径は、使用される地中アンカAによっても異なるが、螺旋状の掘削刃のピッチよりも小さい粒径となるように、例えば、螺旋状の掘削刃のピッチが40mmの場合、10〜30mmである。そして、その充填材イの充填量は、下穴Hの底から地中アンカAの長さとほぼ等しくなる高さまで投入される。なお、この充填材は、後述の骨材Cと同質のものである。
【0013】
下穴Hに充填材イが充填された後、地中アンカAの嵌入(捩じ込み)が行われる。地中アンカAは、本出願人が先に特開2000−1850号等で提案しているもので、鋳鉄製からなり、先細りの先端部にドリル部a0 を有する軸棒a′の周囲に螺旋状の掘削刃a1 ,a2 …が所定の間隔を保って複数個(図示の例では4個)設けられている。これら掘削刃a1 ,a2 …の直径は、上部側(後述の回転部Mに接続される側)が大きくなるように決められている。そして、その軸棒a′の上部側には、フランジa5 が設けられているとともに、そのフランジa5 の上側中央部には、地中アンカAを穴堀建柱車の回転部Mに接続するための角柱部a6 が設けられている。
【0014】
図2中、2は地中アンカAの角柱部a6 に自在継手を介して接続されている支線棒である。この支線棒2の先端(地中アンカAと反対側の端部)には、後に電柱等の構造物を支持する支線(図示せず)が取付けられる。
【0015】
図2中、3は円筒状の補助工具である。この補助工具3は、本出願人が特開2001−271345号等で示したもので、先端部(図2において上端部)は、穴掘建柱車の回転部Mに装着されている。そして、工具3の下部下端には、地中アンカAの角柱部a6 が挿入される角穴(図示せず)が設けられている。したがって、この角穴に支線棒2を接続した状態の地中アンカAの角柱部a6 を挿入し、図示しないピンを補助工具3及び角柱部a6 に設けられている貫通穴に貫通させると、補助工具3と地中アンカAとが連結される。
【0016】
次いで、地中アンカAの先端を下穴Hに入れ、その先端が充填材イに少し押入された時点でピンが抜かれる。その後、地中アンカAを押圧しながら穴掘建柱車の回転部Mを回転させると、地中アンカAは、下穴Hの充填材イ中へ嵌入される。この穴掘建柱車の回転部Mの押圧回転により、螺旋状の掘削刃a1 〜a4 が充填材イに捩じ込まれるが、この際、地中アンカAの捩じ込み初期には、地中アンカAの先端の螺旋状の掘削刃a1 により容易に掻き分けられて地中アンカAの充填材イ中への進入が進行する。充填材イがある程度の粒径(例えば10〜30mm)を有しているが、螺旋状の掘削刃a1 〜a4 のピッチよりも小さいので、それら螺旋状の掘削刃a1 〜a4 で移動され、充填材イは、ついにフランジa6 で塞止められる。しかも、地中アンカAは、回転部Mで強力な力で捩じ込まれるため、充填材イの一部は潰れ、地中アンカAと下穴Hの壁の間の間隙が無くなるように圧密される。これにより、地中アンカAは、下穴H内の充填材イ中に強固に嵌入された状態となる。しかも、地中アンカAのうち大径の螺旋状の掘削刃(図示の例ではa4 )は、下穴Hの内壁に食い込まれているので、地中アンカAの耐張力をより高めることができる。
【0017】
図3は、地中アンカAを下穴Hに嵌入した後、回転部Mを地中アンカAから離れる方向に移動させて補助工具3を外した状態を示している。下穴Hの支線棒2の囲りの空間には、土等の充填材(図示せず)が挿入されて地中アンカAの埋設は終了となる。支線棒2の先端には図示しない支線が取付けられて図示しない電柱等の構造物が支持される。
【0018】
なお、上述の充填材イを下穴Hに投入するときには、急結性のセメント又はモルタル等の接着剤や固化剤も一緒に投入するようにしてもよい。この場合は、アンカの耐張力をより高めることができる。また、上述の例では、地面Gが岩盤の場合を示したが、岩盤よりも軟らかい場合であってもよい。この場合であっても、充填材イが螺旋状の掘削刃a1 〜a4 で圧密化されるので、地中アンカAの耐張力を高めることができる。
【0019】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。図4(a)〜(e)は、本発明のアンカの埋設方法を実施する工程のうち、下穴(前穴)を地面Gに形成する工程を示し、図5は、その下穴に地中アンカAを埋設した状態を示している。先ず、下穴の形成工程を図4(a)〜(e)に従って説明する。
【0020】
図4(a)は、地中アンカA(図5参照)を埋設する位置に工具10を用いて図4(b)に示されるような所定の深さ、例えば100cmの深さで、所定の直径、例えば120φの下穴Hがあけられる。この下穴Hの掘削作業で用いられる工具10は、通常、超硬ビットと呼ばれているもので、本出願人が特願2002−18420号で提案している。この工具10は、鋼製の棒状体11の先端及び上部のつば部下部に超硬チップ12a,12bを有している。この工具10には、上記図2で示したパイプ状の補助工具(この補助工具については、本出願に係る特開2001−271345号公報に詳述されている。)3が工具10の頂部に設けられている角柱部13に嵌められるように構成されている。そして、その工具10は、補助工具3が図示しない穴掘建柱車の回転部M(上記図2参照)で押圧させながら回転させられると、地中G内に圧入され、所定深さの下穴Hが簡単に形成される(図4(b)参照)。
【0021】
地面Gに形成される下穴Hは、上述したような超硬チップを有する工具10を用いることなく、所定の深さで、かつ、所定の直径の穴を掘ることができるものであれば採用することができる。例えば、電柱の穴掘建柱車に設けられる螺旋状掘削刃を小型化したようなものを用いることができる。しかし、後述する骨材の破砕と圧入を兼ねることができるので、上述の超硬チップ12a,12bを有する工具10の方が便利である。
【0022】
下穴Hの深さは、通常、100cm前後とされる。これは、N値が10以下の普通地盤や軟弱(軟質)地盤では、地表から100cmの深さまでが最も硬く、それよりも深くなると軟らかくなり、100cmよりも深く下穴Hを形成しても支線の張力を高める効果がそれほど期待できないからである。なお、これについては、後に図7を用いて説明する。
【0023】
また、工具10であけられる下穴Hの直径(穴径)D1 は、地中アンカA(図5参照)の螺旋状の掘削刃(上部の最も大きな直径の掘削刃)の直径D2 によって決められる。すなわち、下穴Hの直径D1 と地中アンカAの直径D2 との関係は、D2 =D1 ×1.1〜1.5とされる。例えば、140φの規格品の地中アンカAの場合、上部の超硬チップ12bの設けられているつば部の直径が120mmの規格型の工具(超硬チップ)10が用いられる。これについては、後に、図7を用いて説明する。
【0024】
工具10を用いてあけられた下穴Hには、所定量の骨材Cが投入され、その後、工具10で破砕圧入される(図4(c)参照)。ここで用いられる骨材Cとしては、粒径50mm程度の砕石や礫、あるいは同程度に破砕されたコンクリート廃材(コンクリート砕片)でもよく、ある程度硬質のものであればその種類は問わない。したがって、ここでいう骨材Cは、上記図1〜図3の第1の実施の形態で用いられた充填材イと同一である。また、地中アンカAがアース装置の電極と兼用されるようなときは、その骨材としてコークスを用いることもできる。なお、粒径が50mmを大きく越えるような骨材のときは、工具10による破砕に時間がかかって好ましくなく、また、砂のように小さすぎると、工具10により骨材Cを下穴Hの壁面に圧入することができない。
【0025】
下穴Hに投入される1回分の骨材Cの投入量は、下穴Hの穴径にもよるが、その下穴Hの穴径が120φのときは、スコップ1杯分の骨材量(骨材が礫の場合は、約5kg)で足りる。そして、この骨材Cの投入後にその骨材Cを工具10で押圧しながら回転すると、骨材Cは破砕されるとともに、下穴Hの内壁面内に圧入される(図4(d)のC′は、破砕された骨材Cの状態を示している。)。
【0026】
工具10による骨材Cの破砕圧入処理後、下穴Hには、上述と同量の骨材Cが再び投入され、工具10を用いて上述と同様に破砕圧入処理が行われる(図4(d)参照)。
【0027】
図4(e)は、骨材Cの投入と工具10を用いた破砕圧入を複数回繰返して得られた下穴Hの下部に形成された骨材Cの圧密化された状態を示している。下穴Hの下部における圧密化をする深さ、すなわち、下穴Hの底から圧密化する高さは、地中アンカAの長さ分あれば十分である。これについては、後に図6を用いて説明する。
【0028】
骨材Cを分割して投入し、その投入の都度、工具10で破砕と圧入を繰返すようにすると、破砕されて細片化された骨材C′をまんべんなく下穴Hの壁面に圧入させて、下穴Hの下部に硬い大きな塊を作ることができる。
【0029】
図5は、下穴Hの下部部が骨材Cで圧密化された後に、その下穴Hに骨材Cを投入後、地中アンカAを埋設した状態を示している。この地中アンカAについては、上記図2を用いて説明されているので、ここではその説明を省略するが、この地中アンカAの先端(図3において下端部)は、硬質のドリル部a0 に形成され、また、掘削刃a1 〜a4 も硬質で、かつ、その外周は尖鋭に形成されているので、工具10と同様の作用を有することができる。したがって、地中アンカAの埋設の際(地中アンカAのねじ込みの際)、骨材Cを破砕し、その破片を下穴Hの壁面に圧入させることができる。なお、骨材Cは、地中アンカAを埋設した後、下穴Hに投入してもよいが、事前に投入しておくと、地中アンカAを埋設するときに骨材Cが下穴Hの周囲に圧入されて下穴Hを補強する効果が得られる。
【0030】
上述のように下部部分が骨材Cの細片で圧密化された下穴Hには、地中アンカAが埋設される。この地中アンカAの埋設は、上記図2を用いた説明と同様に行われる。すなわち、先ず、地中アンカAの角柱部a6 に設けられているアイ部に支線棒2を接続し、その支線棒2を補助工具3(図5では省略、図2参照。)の内部に収納しながらその補助工具3を角柱部a6 に嵌め、その補助工具3を穴掘建柱車の回転部M(図2参照)で押圧させながら回転して行われる。そして、地中アンカAが所定深さに埋設された後、補助工具3が外されると、地上には支線棒2の先端部が現れる。次いで、その支線棒2の先端に設けられているリング部に図示しないシンブルを介して支線(図示せず)が取付けられる。
【0031】
以下、図6を用いて本発明の実験結果について説明する。実験の行われた地盤Gは、本出願人の豊川事業所内の松林内で、地表から100cmのN値が5前後の軟弱地盤である。また、工具10は120φで、したがって、下穴Hは、120φ(D1 )の穴径となり、その下穴Hの深さは100cmである。そして、使用した地中アンカAは、140φ(D2 )と200φ(D2 )である。140φの地中アンカAの場合、D2 は約1.17×D1 であり、200φの地中アンカAの場合、D2 は約1.7×D1 である。なお、140φの地中アンカA及び200φの地中アンカAともその長さは550mmで、螺旋状の掘削刃a1 〜a4 は4個である。
【0032】
先ず、下穴Hに骨材C(図6及び後述の図7では砕石)を投入せずに地中アンカAを埋設したときの耐張力(地中アンカAを埋設後、引き抜く力)は、140φの地中アンカAのときは10.7KNで地面Gから抜けてしまい、また、200φの地中アンカAのときは、9.0KNで地面Gから抜けてしまった。
【0033】
図6において、No.1は、砕石を5kgずつ7回に分けて投入し、その投入の都度、工具1で破砕圧入し、その後、骨材Cを下穴Hに投入し、140φの地中アンカAを埋設したときの耐張力(KN)を示している。No.2は、上述の骨材Cの投入回数が6回、No.3は、上述の骨材Cの投入回数が8回、そして、No.4は、上述の骨材Cの投入回数が5回である。これらNo.1〜No.4から明らかなように、骨材Cを用いた方が耐張力が高まることが分る。しかも、5回(25kg)以上の投入の場合、20KN以上の高い耐張力が得られることが分る。
【0034】
次に、図7を用いて本発明の実験結果について説明する。実験の行われた地盤Gは、本出願人の豊川事業所内の工場の敷地内で、地表から100cmのN値が10前後の普通地盤である。また、工具10は120φで、したがって、下穴Hは、120φ(D1 )の穴径となり、その下穴Hの深さは、No.2が120cm、それ以外(No.1,No.3〜No.5)は100cmである。そして、使用した地中アンカAは、140φ(D2 )と200φ(D2 )ある。140φの地中アンカAの場合、D2 は約1.17×D1 であり、200φの地中アンカAの場合、D2 は約1.7×D1 である。なお、140φの地中アンカA及び200φの地中アンカAともその長さは550mmで、螺旋状の掘削刃a1 〜a4 は4個である。
【0035】
先ず、下穴Hに骨材Cを投入せずに地中アンカAを埋設したときの耐張力は、140φの地中アンカA及び200φの地中アンカAともに、耐張力に比例して変位量が大きくなり、10KN前後で地面Gから抜けてしまった。
【0036】
図7において、No.1は、砕石を5kgずつ7回に分けて投入し、その投入の都度、工具1で破砕圧入し、その後、骨材Cを下穴Hに投入し、140φの地中アンカAを埋設したときの耐張力(KN)を示している。
【0037】
No.1〜No.5の場合、20KN以上の大きな耐張力が得られることが分るが、下穴Hの深さを深くしても(No.2参照)、No.1〜No.3と同様な耐張力が得られ、下穴Hの深さが深ければ有利であるということを意味していない。すなわち、普通地盤や軟弱地盤においては、地表から100cm以下はN値が低くなるので(軟らかくなるので)、100cm以上の下穴Hを掘ってもそれほどの耐張力が得られないことを意味している。また、下穴Hが深くなるほど、下穴Hの施工時間が多くなるだけでなく、地中アンカAの支線棒2や支線を長くしなければならないという不都合が発生する。したがって、普通地盤や軟弱地盤においては、100cm前後の深さの下穴Hがよい。
【0038】
図7においてNo.4及びNo.5は、200φの地中アンカAの耐張力を示している。これらは、No.1〜No.3で示される140φの地中アンカAよりも耐張力が低いことが分る。これからも明らかなように、下穴Hの穴径D1 に対して1.5倍を越えるような直径の地中アンカAを用いると、せっかく形成された骨材Cの細片による圧密化された塊外側に地中アンカAの掘削刃a1 〜a4 が位置し、耐張力が損なわれると考えられる。したがって、下穴Hの穴径D1 と地中アンカAの螺旋状の最も大きい掘削刃a4 の直径D2 との関係は、D2 =(1.1〜1.5)×D2 がよい。
【0039】
次に、図8及び図9を用いて第3の実施の形態に係る地中アンカの埋設方法について説明する。この第3の実施の形態に係る地中アンカの埋設方法は、上記図4〜図7に示される第2の実施の形態に係る地中アンカの埋設方法を発展させたもので、骨材Cの外にセメント、特に、急結セメントを用いた地中アンカの埋設方法である。このように、骨材Cとセメントとを用いると地中アンカの耐張力を高めることができる。セメントの使用量は、骨材Cに対して1〜3割程度で十分である。
【0040】
図8は、セメントを用いたときの地中アンカの耐張力と変位量との関係を示すグラフであり、この図において、No.1及びNo.2の実験例は、骨材を一切用いずにセメントのみを用いた比較例であり、No.3〜No.5の実験例は、骨材とセメントとを用いたもので、本発明に係るものである。
【0041】
この実験の行われた地盤Gは、本出願人の豊川事業所内の工場の敷地内で、地表から100cmのN値が10前後の普通地盤である。また、用いた工具10(上記図4参照)は120φで、したがって、下穴Hは、120φの穴径となり、その下穴Hの深さは100cmである。そして、使用した地中アンカAは、140φの地中アンカAで、その長さは550mmであり、螺旋状の掘削刃は4個(a1 〜a4 )である。
【0042】
先ず、No.1の実験例について説明すると、このNo.1では、地面Gに鉄棒からなるバールで下穴H(なお、このときの下穴Hは、工具10を用いたときの下穴Hよりも少し小径である。)をあけ、その下穴Hに急結セメント10kgとそのセメント10kgを混練するに必要な水を投入した後、地中アンカAを埋設したものである。急結セメントが硬化した後、耐張力のテストを行ったところ、徐々に変位量が大きくなってきたので、約40KNの耐張力のところでテストを終了した。
【0043】
No.2の実験例では、地面Gに工具10を用いて下穴Hをあけ、その下穴Hに急結セメント10kg及び水を投入し、地中アンカAを埋設したもので、その急結セメントの硬化後に耐張力のテストを行ったところ、この場合も、上記No.1と同様に変位量が大きくなってきたので、約40KNの耐張力のところでテストを終了した。
【0044】
図9(a)は、上記No.1及びNo.2の耐張テスト後に、地中アンカAの埋設状態が目視できるように、地面Gを掘削したときの地中の状態を示したものである。地中では、地中アンカAの上部部分にかけてセメントの塊▲1▼が認められたが、地中アンカAの下部部分は空洞状態であり、この部分は、地中アンカAの耐張力に寄与していないことがうかがわれる。
【0045】
図8のNo.3の実験例は、工具10を用いて下穴Hをあけ、その下穴Hに粒径50mm前後の砕石からなる骨材Cを5kg投入後、工具10を用いて破砕し、再度、骨材Cを5kg投入して工具10で破砕を行い、次いで、急結セメント10kgを投入し、さらに、上述と同量(5kg)の骨材Cを2回に分けて投入するとともに破砕し、最後に、急結セメントを混練するに必要な水と骨材C(5kg)を投入して破砕し、その後、その下穴Hに地中アンカAを埋設したときのものである。急結セメントの硬化後、耐張力と変位量をテストしたところ、耐張力40KNにおいてもほとんど変位が見られなかった。
【0046】
図8のNo.4の実験例は、No.3の実験例における急結セメントと水の投入を工程の前半にもってきたものであり、No.5の実験例では、地面Gに工具10で下穴Hをあけたのちに、骨材Cを5kg、急結セメント2kg及び水を投入した後、工具10で破砕し、これを5回繰り返したものである。これらNo.4及びNo.5の急結セメントの硬化後の地中アンカAの耐張力のテストにおいても、上記No.3と同様に、変位量がほとんど見られない良好な耐張力が得られることが分かる。この変位量が小さいということは、時間が経過しても支線が弛まないことを意味している。
【0047】
図9(b)は、上記No.3〜No.5の耐張テスト後に、地中アンカAの埋設状態を目視できるように、地面Gを掘削したときの地中の状態を示したものである。地中では、地中アンカAを囲むように、かつ、強固な骨材の大きな塊▲2▼が形成されていることが認められた。
【0048】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の地中アンカの埋設方法は、軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを地中に埋設するときの地中アンカの埋設方法において、前記地中アンカの埋設位置にダウンザホールハンマ等の工具を用いて下穴をあけ、そのあけられた下穴に充填材を充填した後、その地中アンカを押圧させながら回転させて嵌入するので、硬質の地盤であっても地中アンカを容易に埋設することができるとともに、その地中アンカの耐張力を高めることができる。
本発明の請求項2に記載の地中アンカの埋設方法は、充填材は、砕石や礫、あるいはコンクリート片等の粒状物であるので、地中アンカの耐張力を効率よく高めることができる。
本発明の請求項3に記載の地中アンカの埋設方法は、地中アンカを埋設する地面の箇所に所定の穴径を有する下穴を所定深さあけ、そのあけられた下穴に所定の粒径を有する骨材を投入し、その投入された骨材を下端に超硬チップを有する工具を回転しながら押圧し、その骨材を破砕するとともにその下穴の壁面に圧入させ、次いで、その下穴に軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを埋設するので、軟弱な地盤であっても小型の地中アンカであっても十分な耐張力を得ることができる。
本発明の請求項4に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材の投入は、分割して行い、その分割投入の都度、工具を用いて破砕と圧入を行うので、骨材の破砕と圧入を効率よく行うことができる。
本発明の請求項5に記載の地中アンカの埋設方法は、下穴あけは、工具を用いて行われるので、骨材の破砕と圧入を行う工具を用いて容易に下穴をあけることができる。
本発明の請求項6に記載の地中アンカの埋設方法は、地中アンカの最も大きな螺旋状の掘削刃の直径を下穴の穴径の1.1〜1.5倍としたので、地中アンカを必要以上に大型化することなく、高い耐張力を得ることができる。
本発明の請求項7に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材を粒径が50mm前後の砕石又は礫、あるいはコンクリート廃材としたので、工具による破砕と圧入を効率よく行うことができる。
本発明の請求項8に記載の地中アンカの埋設方法は、下穴の深さを100cm前後としたので、必要以上の下穴をあけることなく地中アンカを埋設することができる。
本発明の請求項9に記載の地中アンカの埋設方法は、骨材の他にセメント又はモルタルも投入するので、地中アンカの耐張力をより高めることができる。
本発明の請求項10に記載の地中アンカの埋設方法は、セメント又はモルタルを急結セメント又は急結モルタルとしたので、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る地中アンカの埋設方法を実施するときの工程を示したもので、下穴あけの状態を示している。
【図2】本発明の一実施の形態に係る地中アンカの埋設方法を実施するときの工程を示したもので、充填材の充填及び地中アンカの嵌入状態を示している。
【図3】本発明の一実施の形態に係るアンカ埋設方法を実施するときの工程を示したもので、地中アンカが嵌入された状態を示している。
【図4】(a)〜(e)は、下穴をあける工程図である。
【図5】下穴にアンカを埋設したときの正面図である。
【図6】実験結果を示すグラフである。
【図7】実験結果を示すグラフである。
【図8】実験結果を示すグラフである。
【図9】埋設された地中アンカの地中の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ダウンザホールハンマ
2 支線棒
3 補助工具
10 工具(超硬ビット)
M 回転部
A アンカ
G 岩盤(地面)
イ 充填材
C 骨材

Claims (10)

  1. 軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを地中に埋設するときの地中アンカの埋設方法において、
    前記地中アンカの埋設位置にダウンザホールハンマ等の工具を用いて下穴をあけ、そのあけられた下穴に充填材を充填した後、その地中アンカを押圧させながら回転させて嵌入することを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  2. 請求項1に記載の地中アンカの埋設方法において、充填材は、砕石や礫、あるいはコンクリート片等の粒状物であることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  3. 地中アンカを埋設する地面の箇所に所定の穴径を有する下穴を所定深さあけ、そのあけられた下穴に所定の粒径を有する骨材を投入し、その投入された骨材を下端に超硬チップを有する工具を回転しながら押圧し、その骨材を破砕するとともにその下穴の壁面に圧入させ、次いで、その下穴に軸棒の周囲に螺旋状の掘削刃を有する地中アンカを埋設することを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  4. 請求項3に記載の地中アンカの埋設方法において、骨材の投入は、分割して行い、その分割投入の都度、工具を用いて破砕と圧入を行うことを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  5. 請求項3又は4に記載の地中アンカの埋設方法において、下穴あけは、工具を用いて行われることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載の地中アンカの埋設方法において、地中アンカの最も大きな螺旋状の掘削刃の直径は、下穴の穴径の1.1〜1.5倍であることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  7. 請求項3〜6のいずれかに記載の地中アンカの埋設方法において、骨材は、粒径が50mm前後の砕石又は礫、あるいはコンクリート廃材であることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  8. 請求項3〜7のいずれかに記載の地中アンカの埋設方法において、下穴の深さは100cm前後であることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  9. 請求項2〜8のいずれかに記載の地中アンカの埋設方法において、骨材の他にセメント又はモルタルも投入することを特徴とする地中アンカの埋設方法。
  10. 請求項9に記載の地中アンカの埋設方法において、セメント又はモルタルは、急結セメント又は急結モルタルであることを特徴とする地中アンカの埋設方法。
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