JP2004232133A - 炭素繊維糸条およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】糸条幅W(mm)/糸条厚みT(mm)の比率であるアスペクト比Aが25〜500であり、かつストランド引張弾性率E(GPa)が320〜980(GPa)の範囲にある炭素繊維繊維糸条である。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維糸条およびその製造方法に関する。より詳しくは、弾性率の高い、いわゆる黒鉛化繊維も含めて加工性に優れた炭素繊維糸条およびその製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維糸条は、極めて高い比強度、比弾性率およびその優れた耐熱性から複合材料の強化繊維としていろいろな用途に展開されるようになった。
【0003】
しかしながら、近年、繊維強化複合材料製品の軽量化要求の高まりから、複合材料中の強化繊維の絶対量は極力少なくし、強化繊維含有率を高める傾向にある。従って、少量の強化繊維でかつ優れた特性を発現するために、繊維自体が高弾性率、高強度といった特性が求められる一方、フィラメントワインディング、プリプレグ化などいずれの加工工程を経る場合であっても、炭素繊維糸条が均一にかつ拡がりやすく、更には、繊維糸条の断面がより扁平であることが必要とされている。中でもより高弾性率を発現するいわゆる黒鉛化繊維の領域においてこのような要求が高まっている。
【0004】
かかる問題を解決するために、サイジング剤の糸条への付着量を特定の範囲とする技術が開示されているが(例えば特許文献1参照)、かかる方法ではサイジング剤の付着量が0.2〜0.5%程度と少ないため、プリプレグに生産時等の高次加工性において、ローラー等の擦過による炭素繊維における毛羽立ち易く、品位悪化ということがあった。また、より弾性率の高い黒鉛化繊維糸条の場合、炭素繊維糸条に比べ破断伸度が低く、更に毛羽立ち易いなど、サイジング剤の変更だけではかかる問題を解決することは困難であった。
【0005】
また、パッケージを解舒して糸条を供給する際にパッケージにタッチロールを接触させながら解舒することで扁平を維持したまま織物工程に扁平糸を供給する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。このような方法は解舒時の撚り混入を防止し、扁平性を維持する点で有効であるが、パッケージ上の糸条自体を扁平にするものではない。また、黒鉛化繊維糸条のように毛羽立ち易い繊維においてはできるだけガイド等を介さずにパッケージから直接的に次工程に供給できる方が好ましい。
【0006】
高弾性率の繊維、とりわけ黒鉛化繊維のように耐擦過性の低い繊維を製造する場合に、水により糸条に集束性を付与し、特定幅の溝付きガイドローラーにより一度乾燥工程を経た後に、黒鉛化処理に供する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。このような方法は、黒鉛化繊維製造工程における繊維糸条の集束性を維持し、糸条通過性を向上させる点では有効であるが、後加工プロセスでの糸条の拡がり性向上や糸条の扁平性向上という点では不十分であった。
【0007】
以上の通り、高弾性率を発現し、かつ拡がり性など高次加工性に優れる扁平な炭素繊維糸条は得られていないのが現状であった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−173873号公報(第4頁)
【0009】
【特許文献2】特開平10−317252号公報(第1〜2頁)
【0010】
【特許文献3】特公昭62−24525号公報(第2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、高次加工性に優れかつ高弾性率を発現する炭素繊維糸条とその製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の炭素繊維糸条は主として次の構成を有する。すなわち、糸条幅W(mm)/糸条厚みT(mm)の比率であるアスペクト比Aが25〜500であり、かつストランド弾性率E(GPa)が320〜980(GPa)の範囲にある炭素繊維糸条である。
【0013】
また、本発明の炭素繊維糸条の製造方法は、糸条幅W(mm)に対する溝底フラット部の幅B(mm)の比率R(B/W)が1<R≦5である溝ローラーを介して巻き取る炭素繊維糸条の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素繊維糸条は、糸条幅W(mm)/糸条厚みT(mm)の比率であるアスペクト比Aが25〜500の範囲にある。アスペクト比が25未満であると、高次加工時における炭素繊維糸条の拡がりが不十分となり、例えばプリプレグ中で糸条間に隙間(ワレ欠点)ができるなどし、結果、均一で高繊維含有率の複合材料を得ることが困難となる。かかるアスペクト比は均一で高繊維含有率の複合材料を得るという観点からは大きい程好ましいが、繊維糸条としての形態保持性から上限は500である。繊維糸条としての取り扱いの観点から、アスペクト比のより好ましい範囲は、30〜200であり、さらに好ましくは35〜100である。
【0015】
ここで糸条幅Wとは、炭素繊維糸条をボビン上に巻き付けてパッケージ状態としたときの糸条の幅、または、そのパッケージ状態から引き出した糸条の幅を静置した状態で測定した値のことであり、そのいずれかにより求めたアスペクト比が上記範囲を満たしていることが必要である。また、パッケージ状態での糸条の幅およびパッケージ状態から引き出した糸条の幅から求めたアスペクト比のいずれもが上記範囲を満たしていることがより好ましい。ここでパッケージ状態の糸条の幅とはパッケージ表面の糸条の幅を金尺(ものさし)で測定することにより求めることができる。また、パッケージより引き出した糸条の幅とはパッケージより引き出した糸条を平らな場所に静置した状態で金尺により測定することができる。
【0016】
また、糸条厚みTとは、求める糸条の繊度(1m当たりの重量)Y、比重H、フィラメント数F、単繊維径D及び前述した糸条幅Wから求められる計算上での厚みのことであり、次の式で求めることができる。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】
糸条幅Wについては、6点測定し、その平均により求められる。
【0020】
また、本発明の炭素繊維糸条のストランド引張弾性率E(GPa)は、320〜980GPaの範囲内にある。好ましい範囲は320〜700GPaであり、さらに好ましい範囲は320〜600GPaである。ストランド引張弾性率が320GPaよりも小さいと、繊維強化複合材料としたときの剛性が不足するなど所望の力学的特性が得られない。また、980GPaよりも大きくなると、ストランド圧縮強度が低下するなど他の力学的特性が低下する。
【0021】
ここでストランド引張弾性率Eは次のようにして求めることができる。すなわち、炭素繊維糸条に100重量部の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキシルカルボキシレートと、3重量部の三フッ化ホウ素モノエチルアミンと、4重量部のアセトンとの混合樹脂を含浸し、130℃で35分間加熱して樹脂を硬化させた後、引張試験機を用い、JIS R 7601に規定される方法に準拠して引張試験を行う。このとき、試料長は200mmとし、引張速度は60mm/分とする。そして、引張弾性率に合わせて、適当な測定伸度域における荷重変化の傾きから引張弾性率を算出する。例えば引張弾性率が380MPa程度の場合には測定伸度域0.30〜0.50%の範囲の範囲の荷重変化の傾きから引張弾性率を算出する。
【0022】
尚、本発明における炭素繊維とは、結晶サイズの大きいいわゆる黒鉛化繊維も含むものであり、好ましくは結晶サイズLc(nm)が2≦Lc≦6の範囲内にあることが好ましく、3.5≦Lc≦6であることがより好ましく、4.5≦Lc≦6であることが更に好ましい。
【0023】
また、本発明の炭素繊維糸条は単繊維数1,000本以上からなる糸条であることが好ましい。単繊維数のより好ましい範囲は、3,000〜48,000本、さらに好ましい範囲は3,000〜24,000本である。単繊維数が1,000本未満のものは、取扱性に劣る場合や、糸切れや毛羽が発生しやすい場合がある。上限には特に制限はないものの、あまり太いとプリプレグ化時などに樹脂含浸の均一性が低下し、それに起因して繊維強化複合材料中にボイド(空隙)ができることがあるので、48,000本以下とするのが好ましい。
【0024】
また、本発明の炭素繊維糸条の形態としては、前駆体繊維に撚りをかけて焼成して得られる、いわゆる有撚糸、その有撚糸の撚りを解いて得られる、いわゆる解撚糸、前駆体繊維に実質的に撚りをかけずに熱処理を行う、いわゆる無撚糸などが使用できるが、高次加工性を考慮すると無撚糸又は解撚糸が好ましく、さらに、拡がり性の観点からは無撚糸が好ましい。
【0025】
さらに、本発明の炭素繊維糸条は、原子間力顕微鏡により測定される表面積比が1.00〜1.10の炭素繊維からなることが好ましく、1.00〜1.05であればより好ましく、1.00〜1.03であればより好ましい。
【0026】
表面積比がかかる範囲内であれば、炭素繊維糸条の表面がより平滑なため、糸条の拡がり性の点で好ましい。かかる表面積比は炭素繊維表面の実表面積と投影面積との比で、表面の粗さの度合いを表しており、表面積比が1に近づくほど平滑であることを示している。ここで、実表面積および投影面積は原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。投影面積というのは繊維断面積の曲率を考慮した2次局面への投影面積である。
【0027】
本発明の炭素繊維糸条の製造方法は、サイジングを付着せしめた後、ボビン上に巻き取り、パッケージ状とするまでの間に、溝ローラーを介して糸条を走行せしめるものであり、かかる溝ローラーは底部が平らであり、溝底部の幅B(mm)と走行糸条幅wの比率R(B/w)を1<R≦5とするものである。好ましくは1.1≦R≦4であり、更に好ましくは1.1≦R≦3.5である。Rが1以下であれば、ローラー溝端部部分に糸条が当たるため糸条自体に撚りが入ることにより、ボビン上の糸幅が狭くなって高次加工時の拡がり性不良等の品位悪化につながるので好ましくない。かかる比率Rは大きいほど糸条との接触可能性が少なくなり好ましいが、製造装置の機幅を大きくする必要があり、製造コストが上がるので、5程度であれば十分である。
【0028】
また、上記溝ローラーの表面材質は、特に限定されるものではないが、好ましくは、巻き付きや汚れが少ない梨地ローラーが良い。ここでいう梨地ローラーとは、ローラー表面をブラスト処理等で粗したあと、メッキ(無電解ニッケルめっき等)による表面加工を行ったもの等を指す。更に、本発明の溝ローラーの谷の深さについては、該糸条厚みの5〜100倍とするのが良い。5倍未満であると、溝深さが浅すぎて溝をはみ出した隣接糸条同士が接触し、分繊不良などの操業不良を起こすことがある。また、100倍を越えると溝が深すぎて、巻き付きが発生したときに、処置がし難い場合がある。
【0029】
本発明の製造方法においては、サイジング剤を付着後、ボビン上に巻き取るまでの間に前記比率Rを有する溝ローラーを設けることが、糸条のアスペクト比をコントロールし扁平形状の糸条を得る点で好ましい。サイジング槽の後に乾燥工程を設け、かかる乾燥工程と駆動ローラーとの間に溝ローラーを設けることが、その扁平性を維持する点及び糸条の安定走行から好ましい。尚、ここで駆動ローラーとは一定速度、一定張力で巻取り工程へ糸を送り出すローラーをいう。
【0030】
ここでいう炭素繊維糸条としては、例えば、次のようにして製造する。すなわち、前駆体繊維、好ましくはポリアクリロニトリル系繊維を、酸化性雰囲気中(通常は空気中)にて200〜300℃の範囲の温度で加熱して耐炎化した後、不活性雰囲気中にて最高焼成温度が300〜2,000℃の範囲で加熱して炭化するとともに0.9〜1.0倍の範囲で延伸することによって製造する。なお、炭化処理に先立って、耐炎化繊維を不活性雰囲気中にて200〜800℃で加熱する、いわゆる予備炭化処理を施してもよい。耐炎化温度が200℃未満であると、焼け斑が発生し、引張強度の低下等の特性の低下や、糸傷、毛羽の発生等の品位低下を引き起こすことがある。また、300℃を超えると、反応熱の蓄熱が起こり、生産が不安定になる。好ましい範囲は200〜270℃であり、より好ましい範囲は210〜240℃である。また、炭化温度が300℃よりも低いと、得られる炭素繊維の引張強度や引張弾性率が低下する。一方、2,000℃を超えると、結晶化が促進されて得られる炭素繊維の0°方向の圧縮強度が低下し、繊維強化複合材料製の筒体としたときの捻り強さが損なわれるようになる。好ましい範囲は300〜2,000℃であり、より好ましい範囲は300〜1,950℃である。さらに、炭化処理における延伸比が0.9倍未満では、得られる炭素繊維の引張強度や引張弾性率が低下する場合がある。一方、1.1倍を超えると、解除時の糸切れやローラーとの擦過による毛羽を生ずるようになる場合がある。好ましい範囲は0.9〜1.0倍であり、さらに好ましい範囲は0.92〜0.98倍である。
【0031】
また、いわゆる黒鉛化繊維糸条を得る場合には、上記炭化繊維糸条を不活性雰囲気中(例えば窒素雰囲気中)にて2,000℃よりも高い最高焼成温度で黒鉛化するとともに0.9〜1.2倍の範囲で延伸することによって製造することが好ましい。このとき、最高焼成温度は、2,000〜3,000℃、好ましくは2,000〜2,900℃、より好ましくは2,000〜2,700℃の範囲で選択する。2,000℃未満では引張弾性率が不足することがあり、また、3,000℃を超えると炭素の結晶化が促進されて繊維強化複合材料としたときの0°方向の圧縮強度低下などの品質低下を招くことがある。黒鉛化処理における延伸比が0.9倍未満では引張弾性率や引張強度が低下することがあり、1.2倍を超えると、解除時の糸切れやローラーとの擦過による毛羽を生ずるようになることがある。延伸比についてのより好ましい範囲は1.0〜1.2倍であり、さらに好ましい範囲は1.0〜1.1倍である。また、黒鉛化処理に供する前に水等で集束性をもたせる工程とかかる水分を乾燥する工程を設けてもよい。
【0032】
本発明の炭素繊維糸条(黒鉛化繊維糸条を含む)の製造方法としては、得られた炭素繊維糸条を水溶液中にて表面を電解酸化処理することが好ましい。また、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を付着させた後、糸を予備乾燥により糸条をある程度扁平にし、最終的に更に高い温度で乾燥する方法を好ましく適用できる。予備乾燥にはホットローラーを用いてもよい。ここで最終乾燥温度としては100〜200℃が好ましい。
【0033】
また、サイジング付与後に複数のローラーを用いて炭素繊維束を千鳥状に搬送して乾燥する方法を用いることは拡幅性向上の点から好ましい。
【0034】
本発明のプリプレグは、例えばマトリックス樹脂をメチルエチルケトン、メタノールなどの溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウエット法、あるいは加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法などの方法により製造することができる。
【0035】
ウェット法では、強化繊維をマトリックス樹脂を含む液体に浸漬した後、引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。
【0036】
ホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を直接強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムをまず作製し、ついで強化繊維の両側あるいは片側から該フィルムを重ね、加熱加圧することにより樹脂を含浸させたプリプレグを製造することができる。ホットメルト法は、プリプレグ中に残留する溶媒がないため好ましい。特に、複合材料の軽量化の観点から、プリプレグ中に含まれる単位面積あたりの繊維量を10〜200g/m2とすることが好ましく、10〜150g/m2とすることがより好ましく、10〜100g/m2とするのがさらに好ましい。また、複合材料の強度と軽量化のバランスから、プリプレグ中の繊維含有量は60〜90重量%が好ましく、70〜85重量%がより好ましい。
【0037】
本発明のプリプレグを用いて繊維複合材料を成形するには、プリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させる方法などを用いることができる。
【0038】
熱及び圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などがあり、特にスポーツ用品に関しては、ラッピングテープ法、内圧成形法が好ましく採用される。
【0039】
ラッピングテープ法は、マンドレルなどの芯金にプリプレグを巻いて、管状体を成形する方法であり、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの棒状体を作製する際に好適である。具体的には、マンドレルにプリプレグを巻き付け、プリプレグの固定及び圧力付与のために、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを巻き付け、オーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き去ることで管状体を得ることができる。
【0040】
内圧成形法では、熱可塑性樹脂のチューブなどの内圧付与体にプリプレグを巻きつけたプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力をかけると同時に金型を加熱することによって管状体を成形することができる。
【0041】
また、本発明の繊維複合材料を得る方法としては、プリプレグを用いて得る方法の他に、ハンドレイアップ、RTM、SCRIMP(登録商標)、フィラメントワインディング、プルトルージョン、レジンフィルムインフュージョンなどの成形法を目的に応じて選択し適用することが出来る。
【0042】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0043】
本実施例中において炭素繊維糸条(黒鉛化繊維糸条を含む)のアスペクト比、ストランド弾性率、高次加工性は以下の方法で確認した。
(1)炭素繊維糸条のアスペクト比
本実施例ではパッケージ上の糸条幅を金尺により測定した値を糸条幅とし、前述の式に従ってアスペクト比を求めた。尚、糸条幅Wは、パッケージ上の位置を変更して、6点測定し、その平均により求めた。
(2)ストランド弾性率
引張弾性率については、炭素繊維糸条に、下記組成の樹脂を含浸させ、130℃で35分間硬化させた後、JIS R7601に基づいて引張試験を行った。
【0044】
*樹脂組成
このとき、試料長は200mmとし、引張速度は60mm/分とした。そして、引張弾性率が440MPaレベルでは測定伸度域0.25〜0.45%の範囲の、480MPaレベルでは測定伸度域0.18〜0.38%の範囲の荷重変化の傾きから引張弾性率を算出した。
(3)高次加工性
プリプレグを作製し、プリプレグ単位面積あたりの割れ欠点数を確認することで繊維糸条の高次加工性の指標とした。ここでいう割れ欠点とは、炭素繊維糸条自体の拡がりが不十分なことにより生じる糸条間の隙間のことであり、横幅方向に0.5mm以上、または束方向に20cm以上の隙間の数をプリプレグ100m2あたりにつき数えたものである。尚、プリプレグは次の要領で作製した。樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布し、繊維量、繊維含有量に応じた量の樹脂が塗布された樹脂フィルムを作製した。次に、この樹脂フィルム2枚を、シート状に一方向に整列させた炭素繊維の両側から挟み込むようにして重ね合わせ、加圧しながら加熱して炭素繊維に樹脂を含浸させた。樹脂組成物としては下記組成のエポキシ樹脂組成物を用いた。
【0045】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 20重量部
(エピコート828、登録商標、ジャパンエポキシレジン(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 30重量部
(エピコート1001、登録商標、ジャパンエポキシレジン(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 50重量部
(エピコート154、登録商標、ジャパンエポキシレジン(株)製)
ジシアンジアミド 5重量部
(DICY7、ジャパンエポキシレジン(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア 3重量部
(DCMU、保土谷化学工業(株)製)
(実施例1)
単繊維繊度0.65dtex、単繊維数12,000本のアクリロニトリル系繊維糸条を、240℃の酸化性雰囲気中にて120分間加熱し、耐炎化繊維糸条を得た後、その耐炎化繊維糸条を、不活性雰囲気中にて最高焼成温度700℃で加熱して予備炭化した。
【0046】
次に、予備炭化繊維糸条を、最高焼成温度2000℃の不活性中で炭化処理するとともに0.95倍に延伸し、炭化繊維糸条を得た。
【0047】
次に、上記炭化繊維を、最高焼成温度を2,300℃中の不活性雰囲気中で1.01倍に延伸しつつ焼成して黒鉛化繊維糸条を得た。引き続き水溶液中にて表面を電解酸化処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を1.3重量%になるように付与し、200℃で乾燥した。かかる乾燥後の糸条幅wは5.0(mm)であり、その後、溝ローラーの溝の底フラット部Bが6.5(mm)、であって乾燥後の糸条幅wに対する比率Rが1.3、溝深さ2(mm)である溝ローラーを用いて走行させ、最終的にワインダーで巻き取ることでパッケージ状の黒鉛化繊維糸条を得た。また、その黒鉛化繊維糸条を使用して前述の方法で繊維目付75g/m2,繊維含有量76重量%のプリプレグを得た。かかる黒鉛化繊維糸条の特性およびプリプレグ特性等は次のとおりであった。
【0048】
アスペクト比(−) :78
弾性率(GPa) :380
プリプレグ割れ欠点数 :0個/100m2
(比較例1)
溝ローラーの溝の底フラット部Bを1.0(mm)とし、サイジング付着後の走行糸条の糸幅wに対する比率Rを0.4とした以外は実施例1と同様の方法により、パッケージ状の黒鉛化繊維糸条およびプリプレグを得た。かかる黒鉛化繊維糸条の特性及びプリプレグ特性等は、次のとおりであった。
【0049】
アスペクト比(−) :22
弾性率(GPa) :380
プリプレグ割れ欠点数 :割れ多発(生産不可)
(比較例2)
単繊維数を6,000本とした以外は実施例1と同様の方法によりサイジング付着までを行った。サイジングを付着し、乾燥した後の、走行繊維糸条の糸幅wは2.5(mm)であった。その後、溝ローラーの溝の底フラット部B(mm)を1.0(mm)とし、ボビン上の糸幅Wの比率Rを0.5とした以外は実施例1と同様の方法でパッケージ状の黒鉛化繊維糸条を得た。またかかる黒鉛化繊維糸条を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグを得た。かかる黒鉛化繊維糸条の特性及びプリプレグ特性等は、次のとおりであった。
【0050】
アスペクト比(−) :24
弾性率(GPa) :380
プリプレグ割れ欠点数 :割れ多発(生産不可)
(実施例2)
単繊維繊度0.65dtex、単繊維数12,000本のアクリロニトリル系繊維糸条を、240℃の酸化性雰囲気中にて120分間加熱し、耐炎化繊維糸条を得た後、その耐炎化繊維糸条を、不活性雰囲気中にて最高焼成温度700℃で加熱して予備炭化した。
【0051】
次に、予備炭化繊維を、最高焼成温度2000℃の不活性雰囲気中で炭化処理するとともに0.95倍に延伸し、炭化繊維糸条を得た。
【0052】
次に、上記炭化繊維糸条を、最高焼成温度が2,500℃の不活性雰囲気中で焼成するとともに1.04倍に延伸して黒鉛化繊維糸条を得た。引き続き水溶液中にて表面を電解酸化処理させ、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を1.3重量%になるように付着し、200℃で乾燥した。かかる乾燥後の糸条幅wは5.0(mm)であり、その後、溝ローラーの溝の底フラット部Bが6.5(mm)であって、サイジング付着後との糸幅wに対する比率Rが1.3、溝深さ2(mm)の溝ローラを用いて走行させ、最終的にワインダーでボビン上に巻き取ることでパッケージ状の黒鉛化繊維糸条を得た。また、その黒鉛化繊維糸条を使用して前述の方法で繊維目付116g/m2,繊維含有量76重量%のプリプレグを得た。かかる黒鉛化繊維糸条およびプリプレグの特性は次のとおりであった。
【0053】
アスペクト比(−) :76
弾性率(GPa) :440
プリプレグ割れ欠点数 :2個/100m2
(比較例3)
溝ローラーの溝の底フラット部B(mm)を1.0(mm)とし、乾燥後の糸条幅wに対する比率Rを0.4とした以外は実施例2と同様の方法でパッケージ状の黒鉛化繊維糸条およびプリプレグを得た。得られた黒鉛化繊維糸条の特性及びプリプレグの特性は、次のとおりであった。
【0054】
アスペクト比(−) :24
弾性率(GPa) :440
プリプレグ割れ欠点数 :割れ多発(生産不可)
(実施例3)
単繊維繊度0.65dtex、単繊維数3,000本のアクリロニトリル系繊維糸条を、240℃の酸化性雰囲気中にて120分間加熱し、耐炎化繊維糸条を得た後、その耐炎化繊維糸条を、不活性雰囲気中にて最高焼成温度700℃で加熱して予備炭化した。
【0055】
次に、予備炭化繊維糸条を、最高焼成温度2000℃の不活性雰囲気中で炭化処理するとともに0.95倍に延伸し、炭化繊維糸条を得た。
【0056】
次に、上記炭化繊維糸条を、最高焼成温度が2,600℃の不活性雰囲気中で焼成するとともに1.05倍に延伸して黒鉛化繊維糸条を得た。引き続き水溶液中にて表面を電解酸化処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を1.3重量%になるように付着し、200℃で乾燥した。かかる乾燥後の糸条幅wは1.9(mm)であり、その後、溝の底フラット部Bが6.5(mm)であって、乾燥後の糸条幅wに対する比率Rが3.5、溝深さが2(mm)である溝ローラーを用いて走行させ、最終的にワインダーで巻き取ることでパッケージ状の黒鉛化繊維糸条を得た。また、この黒鉛化繊維糸条を使用して、前述の方法で繊維目付25g/m2,繊維含有量70重量%のプリプレグを得た。かかる黒鉛化繊維糸条およびプリプレグの特性は次のとおりであった。
【0057】
アスペクト比(−) :70
弾性率(GPa) :480
プリプレグ割れ欠点数 :7個/100m2
(比較例4)
溝の底フラット部Bが1.0(mm)であって、乾燥後の糸条幅Wに対する比率Rが0.7である溝ローラーを用いた以外は実施例3と同様の方法で黒鉛化繊維糸条およびプリプレグを得た。この黒鉛化繊維糸条及びプリプレグ特性等は、次のとおりであった。
【0058】
アスペクト比(−) :25
弾性率(GPa) :480
プリプレグ割れ欠点数 :割れ多発(生産不可)
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維糸条は、扁平であり、拡がり性にも優れるため、プリプレグなどの繊維強化複合材料の中間基材や繊維強化複合材料の製造効率に優れる。また得られる中間基材や繊維強化複合材料の品位も向上する。また、高い弾性率を有し、拡がり性にも優れることにより、更なる軽量・薄物化が要求される繊維強化複合材料、例えば釣り竿、ゴルフシャフト、テニスラケット等を製造するときの強化繊維として好適である。また、繊維含有量の高い中間基材、例えばプリプレグの製造にも好適な炭素繊維糸条を提供するものである。
Claims (7)
- 糸条幅W(mm)/糸条厚みT(mm)の比率であるアスペクト比Aが25〜500であり、かつストランド引張弾性率E(GPa)が320〜980(GPa)の範囲にある炭素繊維繊維糸条。
- 1糸条当たりの単繊維数が1,000本以上である請求項1に記載の炭素繊維糸条。
- 結晶サイズLc(nm)が2≦Lc≦6の範囲内にある請求項1または2に記載の炭素繊維糸条。
- 原子間力顕微鏡により測定される表面積比が1.0〜1.1である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維糸条。
- 炭素繊維糸条にサイジングを付与した後、炭素繊維糸条幅wに対する溝底フラット部の幅B(mm)の比率R(B/w)が1<R≦5である溝ローラーを介してボビン上に巻き取る炭素繊維糸条の製造方法。
- 請求項1〜4いずれか記載の炭素繊維糸条を含むプリプレグ。
- 請求項1〜4いずれか記載の炭素繊維糸条を含む繊維強化複合材料。
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-
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