JP2004232125A - 原液着色ポリプロピレン系繊維および織編物 - Google Patents

原液着色ポリプロピレン系繊維および織編物 Download PDF

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Abstract

【課題】紡糸後、精練工程を経ずに加工された繊維製品によりABS樹脂製品に接触しても繊維製造時に用いられた油剤によるABS樹脂の劣化を促進させない原着繊維及びその織編物を提供する。
【解決手段】耐薬品性試験「1/4楕円法」により、ABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上の値となる油剤が0.1〜5.0質量%付着してなる原液着色ポリプロピレン系繊維。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ABS樹脂製品に劣化性を与えることの少ない原液着色ポリプロピレン系繊維及び該繊維からの織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維は染色や発色性及び意匠性に富み、様々な素材開発がなされてきた。特にポリエステルマルチフィラメントやナイロンマルチフィラメントを使用した織編物では、分散染料或いはイオン性染料により容易に染色が可能であるために、色彩豊かな製品開発がなされてきた。このように染色工程を経る織編物では、一般的に界面活性剤を使用する精練工程を必要とするために、最終製品の段階で織編物に紡糸油剤が残留することは殆どなく、繊維製造に使用された油剤が実用上大きな問題となることはなかった。
【0003】
しかしながら、染色が困難なポリオレフィン系繊維では、紡糸前の原液に顔料を添加して着色する原液着色繊維が一般的であるため、精練工程または染色工程を経ないことが多い。更に近年では、染色可能な繊維でも染色工程の簡略化や染色廃液の処理問題から、原液着色繊維を使用した織編物が使用されることが多くなり、原糸製造段階で最終的な繊維製品を想定した設計が必要とされるようになった。
このような中で、原液着色ポリプロピレン系繊維を使用した細幅テープやファブリックと直接接触するかたちで使用されるABS樹脂製品は、該繊維を用いた織編物と接触することのない状態で使用されている樹脂製品より、表面または内面(部)の劣化が著しく早い傾向にあることが問題となっている。
【0004】
本発明者らは、ABS樹脂からなる製品に起こる劣化の原因について鋭意検討した結果、原液着色ポリプロピレン系繊維の表面に残留している紡糸油剤がABS樹脂に含浸し、ABS樹脂製品を劣化することが明らかになった。
このため、特にABS樹脂の劣化が問題となる用途では、原液着色ポリプロピレン系繊維が使用された織編物を、界面活性剤を使用して精練し、表面に付着残留している紡糸油剤を除去してから使用することが必要となり、原液着色繊維の織編物製造段階の経済的な特徴が失われることになる。
【0005】
【特許文献】
特開昭50−46982号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
プロピレン繊維に付着している工程油剤に起因する問題を解決するために、工程油剤が付着した原液着色ポリプロピレン繊維を高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩を含む水溶液で処理し、該油剤による顔料の滲み出し等を防ぐことが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、原液着色ポリプロピレン系繊維の製造工程で用いられる油剤を規制することにより、得られた原液着色ポリプロピレン系繊維製品をABS樹脂製品と接する状態で用いてもABS樹脂製品を劣化するのを防ぐ手段については知られていない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、紡糸後、精練等の工程を経ることなくそのまま製造される織編物がABS樹脂製品に対して直接接触する状態で使用されても、ABS樹脂が劣化しない原液着色ポリプロピレン系繊維及び織編物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、原液着色ポリプロピレン系繊維の製造工程において、ABS樹脂を劣化させることのない油剤を使用することにより、付着油剤を精練により落とさなくてもABS樹脂を劣化させることがない原液着色ポリプロピレン系繊維及び織編物にある。
すなわち、本発明は、耐薬品性試験「1/4楕円法」により、ABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上の値となる油剤が0.1〜5.0質量%付着してなる原液着色ポリプロピレン系繊維にある。
また、本発明は、上記発明の原液着色ポリプロピレン系繊維からなり、耐薬品性試験「1/4楕円法」によるABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上となる織編物にある。
さらに、本発明は、ABS樹脂の劣化性試験において、陰性と判定された成分を油剤成分中60質量%以上の割合で含む油剤を用いてなる原液着色ポリプロピレン系繊維にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について具体的に説明する。
本発明では、原液着色ポリプロピレン系繊維を製造するにあたり、ポリプロピレン系ポリマーから繊維を製造する段階で使用する紡糸油剤を予め特定されたものとしなければならない。
本発明で使用する紡糸油剤は、本明細書の実施例に記載した耐薬品性試験「1/4楕円法」によって測定した、臨界歪み値が0.30%以上の値となる油剤でなければならない。この試験はABS樹脂等の耐薬品性を測定する方法であり、臨界歪み値が0.30%より小さい値となる場合、油剤そのものがABS樹脂製品の劣化を促進する作用が大きいため好ましくない。臨界歪み値が0.30%より小さい油剤が付着している原液着色ポリプロピレン系繊維は、ABS樹脂製品と接触する状態で使用した場合、ABS樹脂製品表面の光沢を劣化させる。
【0010】
さらに、原液着色ポリプロピレン系繊維からなる織編物は、本明細書の実施例に記載した耐薬品性試験「1/4楕円法」によってABS樹脂の臨界歪み値を測定した場合、臨界歪み値が0.30%以上でなければならない。原液着色ポリプロピレン系繊維からなる織編物の臨界歪み値が0.30%より小さい場合、該織編物と接触する状態で使用されるABS樹脂製品の光沢が失われたり、応力が加わった際に、薬品割れと呼ばれるクラック等が発生するために好ましくない。したがって、原液着色ポリプロピレン系繊維からなる織編物はABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上であることが実用上望ましい。
【0011】
本発明で使用される油剤が、該耐薬品性試験にて0.30%以上の値を得るためには、その成分も特定の組成範囲にある必要がある。そのため油剤成分は、予めABS樹脂の表面簡易劣化性試験を行い、陰性成分を油剤成分中60%以上の割合で含まなければならない。ABS樹脂の表面簡易劣化性試験とは、各油剤成分中に厚さ2mmのABS樹脂製板を浸漬し、80℃で80時間保持することにより行われる。ABS樹脂表面簡易劣化性試験の結果は、ABS樹脂製板の光沢の変化、または表面状態の変化、着色などの現象の有無により判断される。
【0012】
本発明ではABS樹脂の表面簡易劣化性試験において、ABS樹脂試験片の光沢が失われたり、表面状態が変化したり、或いは着色などの現象が見られた油剤成分を、ABS樹脂の表面簡易劣化性試験の判定で陽性成分と判断し、これらの現象が発現しない油剤成分をABS樹脂表面簡易劣化性試験の判定で陰性成分とする。
【0013】
紡糸油剤において陰性成分が60%より少ない、すなわち、陽性成分が40%を超える油剤を使用した場合は、ABS樹脂の耐薬品性試験「1/4楕円法」において、その値が0.30%より小さい値となり好ましくない。ABS樹脂の耐薬品性試験において、0.30%以上の値にある油剤を得るためには、油剤を構成する成分を予め前記ABS樹脂表面簡易劣化性試験で判定し、油剤が陰性成分60%以上で構成されていることが好ましい。さらに好ましくは陰性成分60%以上の範囲で、かつ、陰性成分の濃度が高い方が良いが、紡糸油剤に求められる諸性質を満たす範囲で構成比を選ぶ必要がある。
【0014】
油剤は平滑剤、乳化剤、帯電防止剤、その他の添加剤などにより構成される。平滑剤としては,鉱物油、天然油脂(例えば、ヤシ油、ナタネ油等)一価アルコ−ルと一価カルボン酸とのエステル(例えば、ブチルステアレート、トリデシルステアレート、ラウリルオレエート等)、多価アルコールと一価カルボン酸とのエステル(例えば、トリメチロールプロパントリラウレート、グリセリントリオレエート等)、一価アルコールと多価カルボン酸とのエステル(例えば、ジオレイルアジペート、ジオクチルセバケート等)がある。
【0015】
乳化剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POE)アルキルエーテルやポリエチレングリコール(以下、PEG)エステル、ポリ−テル等がありPOEラウリルエーテル、PEGモノラウレート等がある。帯電防止剤としては、アルキルホスフェート、脂肪酸石鹸、アルキルスルフォネート等があげられ、アルキルスルホネートナトリウム、ラウリルホスフェートカリウム、ホスフェートアミン、オレイルイミダゾリン等が一般的である。
【0016】
油剤は単独で構成されていてもよく、または複数の成分を併用して構成されていてもよい。但し、ABS樹脂の表面簡易劣化性試験において陰性成分と判定された成分が60%以上で構成されることが必要である。さらに該油剤がABS樹脂の耐薬品性試験「1/4楕円法」において臨界歪み値0.30%以上の範囲にある必要がある。
【0017】
油剤には必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤等が添加されていてもよい。また、特定の機能を付与するために、撥水成分であるシリコン系化合物、フッ素系化合物等を含んでいてもよく、収束性向上剤として高粘度の高分子化合物を含んでいても上記条件を満たす範囲で構成されていれば問題はない。
【0018】
本発明で使用される紡糸油剤は、特にその性状が限定されるものではない。広義には低粘度希釈剤併用タイプや原液油剤を直接繊維に給油するタイプなどを含むストレート系油剤であってもよく、また、油剤成分が水中にエマルジョン状態で分散しているエマルジョン系油剤であってもよい。特に給油時の油剤の性状に限定されるわけではない。
【0019】
油剤付与装置は、油剤計量用ポンプにより計量された油剤を固定式ガイドの吐出口から定量的に吐出し、ガイド上を接触しながら走行する糸条に付着させる給油装置を用いてもよく、回転するローラー表面に油剤の皮膜を形成させ、ローラー上を接触しながら走行する糸条に油剤を付着させるオイリングローラー給油方式、或いは延伸工程で油剤を追加付与する多段付与方式等が採用できる。
【0020】
本発明の原液着色ポリプロピレン系繊維の製造工程において付与される油剤の量は、安定に製糸される範囲であればよく、付与量は走行する糸条に対して0.1〜5.0質量%の範囲、好ましくは0.1〜3.0質量%である。付与された油剤は製造工程中で飛散または蒸発してその付着量は減少するが最終的に繊維に付着している油剤の量が、0.1〜5.0質量%の範囲であればよく、後工程の製織、製編の安定性の面から0.1〜2.0質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
本発明において、原液着色ポリプロピレン系繊維の製造に使用されるポリプロピレン系ポリマーはホモポリマーであってもよく、ランダムコポリマーであってもよい。この場合コモノマーは特に限定はなく、エチレンやブテン−1などが一般的である。ランダムコポリマーを使用する場合にはプロピレン成分が95モル%以上あることが溶融紡糸工程における製糸安定性、糸条の耐熱性の点からも好ましい。
【0022】
ポリプロピレン系ポリマーを製造するにあたり使用される触媒は、チグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、Q値(重量平均分子量/数平均分子量の比)は溶融紡糸工程の製糸安定性の面から5未満であることが望ましいが、特に限定されるものではない。
プロピレン系ポリマーのメルトフローレート(以下、MFRと略称する。)はJIS K 7210に準拠し、測定温度230℃、測定荷重2.16kgにより測定される。使用されるポリプロピレン系ポリマーのMFRは3g/min以上であることが好ましく、さらに製糸安定性の面から10g/min以上60g/min以下の範囲であることがより好ましい。
【0023】
本発明の原液着色ポリプロピレン系繊維原料ポリマーには、目的とする繊維の用途に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、中和剤、可塑剤、抗菌剤、難燃剤等の添加剤を製糸性を損なわない範囲で添加することができる。これらの中特に安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の原液着色ポリプロピレン系繊維を製造するにあたり、配合される顔料は特に限定はなく、一般の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
有機顔料としてはβナフトール系化合物等のアゾレーキ顔料、フタロシアニン系顔料、塩基性染料レーキ及び酸性染料レーキ等の染付レーキ顔料、または蛍光顔料、金属塩系の顔料等が挙げられる。無機顔料としてはクロム酸塩、硫化物、酸化物、珪酸塩、リン酸塩、シアン化物、金属酸化物、水酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。また、繊維の風合いや後工程を改善するために、酸化チタン、シリカまたはカオリン等の粒子を製糸性が阻害されない範囲で配合してもよい。
【0025】
原液着色ポリプロピレン系繊維を製造する工程は特に限定はなく、通常の紡糸工程で製糸する。すなわち、紡糸は1軸或いは2軸押出機により溶融混練された着色用顔料を含んだポリプロピレン系ポリマーからなる原液をノズルから押出し、所定の油剤を給油し、糸条を引き取るとことより未延伸糸を得る。未延伸糸はそのまま連続工程で延伸をしてもよく、或いは一旦巻取った後、エージングを行ってから延伸してもよい。延伸工程は1段または2段以上の多段であってもよく、多段延伸における延伸倍率比の設定も特に限定はない。また、延伸工程では接触または非接触型の熱源を用いて加熱しても何ら問題ない。延伸倍率についても溶融紡糸されたフィラメントの破断伸度の範囲で任意に設定することが可能である。最終的に繊維の強伸度についても特に限定されることはない。
【0026】
上述の紡糸操作により得られるフィラメントの繊度及びフィラメント数に関しては目的とする繊維の用途に応じて任意に設定する。フィラメントの断面形状は円形または楕円、三角或いは四角等の多角形であってもよく、トリローバル等の多葉形状であってもよい。また、フィラメントは中実であっても中空形状であっても、さらに共重合範囲において共重合組成またはコモノマーの異なる原料或いはMFRが異なる原料を芯鞘型、サイドバイサイド型または海島型の複合紡糸により得られた複合繊維であっても問題ない。
【0027】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。
なお、本発明に用いた評価方法は次の通りである。
1.耐薬品性試験「1/4楕円法」による油剤のABS樹脂劣化促進試験
(1)試験片準備
ABS樹脂(UMGABS(株)社製、サイコラック3001G(商品名)。以下同じ。)にて厚さ2mmのコンプレッション板を作成し、35mm×120mmの大きさに切り出し、ABS樹脂試験片(サンプル)とした。
(2)試験前処理
ABS樹脂試験片に油剤を塗布し、23℃で24時間放置する。
(3)試験手順
試験は23℃、湿度50%の恒温室で行う。
図1に示した1/4楕円治具にサンプル2の一端を支点位置1に合わせ両端をバンド3,3で挟み固定具6で治具にセットする。
一定時間後(4時間)、サンプルの支点1から最初のクラック発生箇所または表面劣化部分までの距離Xを測定し、臨界歪み値を次式(1)から計算する。
歪み値=0.139(1−0.0000617X−3/2T (1)
X:支点1からクラックまでの長さ(単位;mm)(図1参照)
T:試験片の厚さ(単位;mm)
この試験によれば支点1から最も近いクラック発生箇所5までの距離、すなわちX値が小さい方がクラックが発生し易いということになる。
【0028】
2.耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験
(1)試験片準備
耐薬品性試験「1/4楕円法」によるABS樹脂劣化促進試験の場合と同様にしてABS樹脂試験片を作成した。
(2)試験前処理
ABS樹脂試験片を下記実施例において用いたと同様の4cm幅の平織り細幅テープで試験片表面全体に接触するように挟み、23℃で1週間放置する。
(3)試験手順
試験は23℃、湿度50%の恒温室で行う。
前記油剤によるABS樹脂劣化促進試験と同様に試験片を1/4楕円治具にセット(このとき試験片を挟んでいた細幅テープは取り除く。)する。(図1)
一定時間後(4時間)、サンプルの支点1から最も近いクラック発生箇所5または表面劣化部分までの距離を測定し、臨界歪み値を前記(1)式から計算する。
【0029】
3.ABS樹脂の表面簡易劣化性試験
(1)試験片準備
厚さ2mmのABS樹脂板を20mm四方の大きさに切り出し試験片とした。
(2)試験手順
ABS樹脂試験片を100mlガラス製ビーカーの中で、油剤成分50ml中に浸漬し、イナートオーブン中で空気雰囲気下、温度80℃にて80時間保持する。
(3)その後、ABS樹脂試験片の光沢の変化、または表面状態の変化、着色などの現象の有無を目視で観察し、変化が見られるものを陽性成分、変化が見られないものを陰性成分と判定した。
【0030】
[実施例1]
MFR30g/minのホモポリプロピレン樹脂96質量部に、カーボンブラックからなる黒色顔料25質量%を含む着色用黒色顔料マスターバッチ(以下、MB。)4質量部を混合して押出機に投入し、通常の溶融紡糸工程(温度260℃)でノズルより吐出されたフィラメントに、表1の実施例1欄に示した成分とその質量%で構成される油剤を、原液でタッチローラー方式によって給油し、未延伸糸を紡糸工程から連続工程で延伸を行い、760dtex、60フィラメントの黒色に着色された原液着色ポリプロピレン繊維を得た。油剤付着量は1.9質量%であった。
表1の実施例1欄に示した油剤原液のABS樹脂劣化促進試験を耐薬品性試験「1/4楕円法」にて行った。測定結果は、X値は30mmとなり臨界歪み値0.30%であった。
得られた原液着色ポリプロピレン繊維から織物(4cm幅の平織りの細幅テープ)を作成し、耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験を行った。測定結果は、X値は43mmとなり臨界歪み値0.33%であった。
【0031】
[実施例2]
紡糸工程で給油する油剤を、表1の実施例2に示した油剤とした以外は実施例1と同様の方法で、760dtex、60フィラメントの黒色に着色された原液着色ポリプロピレン繊維を得た。
表1の実施例2にで示した油剤原液のABS樹脂劣化促進試験を耐薬品性試験「1/4楕円法」にて行った。測定結果は、X値は39mmとなり臨界歪み値0.32%であった。
得られた油剤付着量2.0質量%の原液着色ポリプロピレン繊維から実施例1と同様に織物を作成し、耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験を行った。測定結果は、X値は46mmとなり臨界歪み値0.34%であった。
【0032】
[比較例1]
実施例1と同様にしてノズルより吐出された糸条に、表1の比較例1に示した成分とその比率で構成される油剤を濃度17質量%のエマルジョン状態で給油し未延伸糸を得た。この未延伸糸を24時間室温でエージングを行い、さらに延伸を行うことにより、760dtex、60フィラメントの黒色に着色された原液着色ポリプロピレン繊維を得た。油剤の付着量は1.7質量%であった。
表1の比較例1に示した油剤原液のABS樹脂劣化促進試験を耐薬品性試験「1/4楕円法」にて行った結果、X値は14mmとなり臨界歪み値0.28%であった。
以下、実施例1と同様にして織物を作成し、耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験を行った。測定結果は、X値は20mmとなり臨界歪み値0.29%であった。
【0033】
[比較例2]
紡糸工程で給油する油剤を、表1の比較例2に示した油剤とした以外は比較例1と同様の方法で、760dtex、60フィラメントの黒色に着色された原液着色ポリプロピレン繊維を得た。
表1の比較例2に示される油剤原液のABS樹脂劣化促進試験を耐薬品性試験「1/4楕円法」にて行った。測定結果は、X値は15mmとなり臨界歪み値0.28%であった。
以下、実施例1と同様にして織物を作成し、耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験を行った結果、X値は19mmとなり臨界歪み値0.29%であった。
【0034】
[比較例3]
紡糸工程で給油する油剤を、表1の比較例3に示した油剤とした以外は比較例1と同様の方法で、760dtex、60フィラメントの黒色に着色された原液着色ポリプロピレン繊維を得た。
表1の比較例3に示される油剤原液のABS樹脂劣化促進試験を耐薬品性試験「1/4楕円法」にて行った。測定結果は、X値は19mmとなり臨界歪み値0.29%であった。
以下、実施例1と同様にして織物を作成し、耐薬品性試験「1/4楕円法」による織編物のABS樹脂劣化促進試験を行った結果、X値は24mmとなり臨界歪み値0.29%であった。
なお、実施例1における臨界歪み値0.30%と比較例3の臨界歪み値0.29%をX値で比較すると30mmと19mmとなり、比較例3の方がクラックが入り易い結果を示している。
【0035】
【表1】
Figure 2004232125
【0036】
【発明の効果】
本発明は上述のように、原液着色ポリプロピレン系繊維を、ABS樹脂を劣化させることがない油剤を予め選択して給油することにより、付着油剤を精練により落とさなくてもABS樹脂製品を劣化させることがない原液着色ポリプロピレン系繊維及び織編物である。そのため、原着繊維の精錬工程を省略することができる上に、該繊維製品をABS樹脂製品に接触する用途に適用できるメリットがある。たとえば、細幅テープやファブリックを、ABS樹脂製の鞄、カメラ等のストラップ、持ち手等に使用する場合、接続部のABS樹脂製品と接触しても、これらABS樹脂製品を劣化させることなく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐薬品性試験「1/4楕円法」を行うための楕円治具の斜視図である。
【符号の説明】
1 支点位置
2 ABS樹脂試験片
3 バンド
4 油剤塗布面
5 クラック
6 バンド固定具
X 支点からクラックまでの距離

Claims (3)

  1. 耐薬品性試験「1/4楕円法」により、ABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上の値となる油剤が0.1〜5.0質量%付着してなる原液着色ポリプロピレン系繊維。
  2. 請求項1記載の原液着色ポリプロピレン系繊維からなり、耐薬品性試験「1/4楕円法」によるABS樹脂の臨界歪み値が0.30%以上となる織編物。
  3. ABS樹脂の劣化性試験において、陰性と判定された成分を油剤成分中60質量%以上の割合で含む油剤を用いてなる請求項1記載の原液着色ポリプロピレン系繊維。
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