JP2004232124A - アセテートトウ糸条への油剤付与方法及び油剤付与装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】オイリングガイド(11)を介して走行中のアセテートトウ糸条(20)を所要の糸条幅に集束しながら連続的に走行させるとき、ギアポンプ(12)を介して一定量の油剤をオイリングガイド(11)の連続スリット状油剤付与開口(17)に吐出する。その開口(17)に近接させてオイリングガイド(11)の表面に形成される油膜に接触しながらアセテートトウ糸条(20)の全幅にわたり油剤を連続して付与する。油剤の付着量を安定化させ、油剤の付着効率、油剤の付着均一性を向上させる。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ある一定の糸条幅をもって走行するアセテートトウ糸条に対して、糸条の長さ方向と幅方向にわたって一定量の油剤を連続的に且つ均一に付与することができる油剤付与方法とその油剤付与装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
紡糸口金の多数の紡糸孔から曳糸されたアセテート単繊維は、紡糸口金からフィードローラーに至る間に幅が3.0mm以上15.0mm以下の繊維集合体に配列される。この状態をアセテートトウ糸条という。アセテートトウの製造工程においては、走行するアセテートトウ糸条への油剤付与が一般的に行われている。この油剤付与は、アセテートトウの集束性、平滑性、制電性等を向上させ、紡糸工程での製造安定化のみならず、例えばタバコフィルターへ加工する際の製品品位を向上させ、毛羽立ちなどによるトラブルの発生を防止する点で極めて重要である。
【0003】
また、アセテートトウは、1個の紡糸口金から紡糸され、油剤が付与されたアセテートトウ糸条を数本分重ね合わせてアセテートトウバンドを形成し、捲縮を付与することにより得られる。従って、アセテートトウ糸条への油剤付与において重要な点は、糸条の長さ方向と幅方向にわたって油剤を均一に付与すること、重ね合わされたアセテートトウ糸条間においても、油分の差が生じないようにすることである。油剤の付着斑が発生すると、アセテートトウバンドの形成時においてアセテートトウ糸条の内部、もしくはアセテートトウ糸条間に張力差が生じることによりアセテートトウバンドの均一な開繊性が損なわれ、ひいてはタバコフィルターの製品品質を低下させるという原因につながる。
【0004】
ところで、走行する糸条に油剤を付与する油剤付与方法のうち最も一般的な方法として、樋状の油剤受けに油剤を満たし、その油剤液中に円筒状のオイリングローラーの一部分を浸漬した状態で駆動回転可能にした装置を用いる、所謂ローラー方式がある。このローラー方式は、オイリングローラーを、走行する糸条と同一方向に任意の回転数をもって駆動回転する。その際に、オイリングローラーのローラー面に付着した油膜を走行糸条に接触させて、同糸条に油剤を付与するものである。
【0005】
かかるローラー方式は、走行糸条に油剤を付与するには非常に簡易的な油剤付与方法であるが、油剤受け内の油剤液面高さが変動しやすく、走行するアセテートトウ糸条の長さ方向と幅方向の油剤付与の均一性及び重ね合わせたアセテートトウ糸条間の油分の均一性が損なわれやすいという問題点がある。
【0006】
かかる問題点を解決すべく、例えばギアポンプを介して、回転するオイリングローラー面に付与する油剤の流量を制御する方法が、また、オイリングローラーの下部の一部分が浸っている油剤の液面高さを制御する方法が、それぞれ知られている。一方、例えば特開平11−323718号公報には、ナイロン66繊維製の不織布からなる研磨部材とポリウレタン発泡材からなる軟質発泡部材とを油剤受けの取付板を介してローラー回転方向に向けて順次配置し、それらの部材をローラー面に接触させながらオイリングローラーを駆動回転することにより前記ローラー面に均一な油膜を形成して糸条に油剤を付与する方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記各方法は、一定の糸条幅をもって走行するアセテートトウ糸条の表裏両面に油剤を付与するような場合は、上述のローラー方式による通常の油剤付与では糸条の表裏両面に油剤を均一に浸透付与することはできず、片面への油剤付与しかできないという根本的な問題を生じる。また、一定の糸条幅を維持することもできない。
【0008】
走行糸条に油剤を付与する方法の他の例として、近年、走行糸条にオイリングガイドを介して一定量の油剤を付与し、このオイリングガイドの表面に走行糸条を集束させながら、走行糸条に油剤を付与する、所謂ガイド方式が活発に使われるようになってきている。
【0009】
かかるガイド方式による油剤付与方法の一例として、例えば特開平10−102315号公報には、セラミックス製オイリングノズル(オイリングガイド)のV溝状の案内部の一部に摺接して高速走行するポリエステル繊維糸条に油剤を均一に付着するようにした油剤付与方法が開示されている。前記案内部は山形の縦断面を有し、その頂上部をポリエステル繊維糸条の摺動面としている。前記案内部の入口側の斜面に円形開口面をもつオイル付与孔が形成され、そのオイル付与孔から油剤を吐出し、前記オイル付与孔と前記摺動部との間に形成されたオイル溜部に一旦油剤を蓄え、その蓄えられた油剤を高速走行するポリエステル繊維糸条に付与している。すなわち、同公報に開示された油剤付与方法は、ポリエステル繊維糸条とオイル付与孔の開口とを直接接触させないで油剤を付与するものである。
【0010】
また、例えば特開平11−286824号公報には、セラミックス製オイリングガイドの接糸部(摺動部)に糸条方向に向けて所要の曲率をもって屈曲する少なくとも一以上の屈曲部を介して高速走行するポリエステル繊維糸条に油剤を付与するようにした油剤付与方法が開示されている。同公報に開示された油剤付与方法は、高速走行するポリエステル繊維糸条とともに随伴する空気流を前記屈曲部を介してポリエステル繊維糸条の走行方向とは異なる方向にカット(分離)し、その随伴気流によって発生するオイル吐出孔から前記接糸部に流れる油剤の偏流や変動を防止するようにしている。
【0011】
また、上記随伴気流を防止するための油剤付与方法の他の一例として、例えば特開2000−212825号公報には、上記特開平10−102315号公報や特開平11−286824号公報と同様に、オイリングガイドの接糸集束面(接糸部)の上流側の傾斜面にオイル吐出孔を有する油剤付与方法が開示されている。同公報に開示された油剤付与方法は、前記傾斜面の上端縁が鋭角に形成された風切り縁とされており、高速走行するポリエステル繊維糸条に随伴する随伴気流を前記風切り縁によって分離し、分離した随伴気流を前記傾斜面の背面側下方に逃がすようにしている。
【0012】
また、走行糸条への油剤付与方法の更に他の一例として、例えば特開2002−249921号公報には、走行糸条から離れた位置に給油ノズルを設置し、油剤を走行繊維トウの走行面に噴霧することによって付与する油剤付与方法が、また、特開平6−330403号公報には、圧縮空気と液状のエマルジョンオイルを混合ヘッドを介して均一な泡状のエマルジョンオイルとし、これを電磁ポンプ及び吐出ノズルを介して、走行中のポリエステル繊維束に一定量の泡状のエマルジョンオイルを吐出する油剤付与方法が、それぞれ開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−323718号公報
【特許文献2】
特開平10−102315号公報
【特許文献3】
特開平11−286824号公報
【特許文献4】
特開2000−212825号公報
【特許文献5】
特開2002−249921号公報
【特許文献6】
特開平6−330403号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記各特許文献2〜4に開示された技術は、走行糸条との走糸摩擦抵抗が少なくなるような材質や形状を有するオイリングガイドの糸条非接触面に形成された円形状開口をもつ油剤付与孔から糸条接触面に向けて油剤を吐出し、その油剤に走行糸条を接触させながら走行させることによって一定量の油剤を付与するようにしている。
【0015】
しかしながら、上記各特許文献2〜4に開示された技術は、走行中の繊維糸条に油剤を付与するにあたり、いずれも糸条幅が1.0mm未満の長繊維に対して油剤を付与する場合には確かに有効なものであるかもしれないが、その孔径を大きくすれば油剤の均一な付与ができず、所要の糸条幅に拡幅された走行中の繊維糸条の全幅にわたって油剤を均等に付与することを意図するものではない。
【0016】
また、上記各特許文献2〜4に開示された技術は、糸条幅が1.0mm未満の走行中の長繊維に対して油剤を付与するものであるため、例えば糸条幅が3.0mm以上のアセテートトウ糸条の全幅をカバーするような広い領域にわたって油剤がオイリングガイドの円形開口をもつ油剤付与孔から糸条接触面に向けて均等に流れるという保証がなく、単一の油剤付与孔では対応できず、油剤の浸透性が低く、しかも油剤の付着量の変動が大きくなる。このため、アセテートトウ糸条の長さ方向と幅方向にわたって油剤を万遍なく均一に付与したり、あるいはアセテートトウ糸条の内部やアセテートトウ糸条間で油量に差が生じないように油剤を均一に付与することはできない。
【0017】
また、上記各特許文献2〜4に開示された技術は、上述のごとく糸条幅が1.0mm未満の走行中の長繊維に対して油剤を付与するものである。このため、オイリングガイドの円形開口の油剤付与孔の設置位置を一義的に決めるだけで済むが、仮に、従来の上記油剤付与方法を糸条幅が3.0mm以上のアセテートトウ糸条に適用しようとすると、アセテートトウ糸条の全幅をカバーするような広い領域にわたって油剤を付与するには、単一の油剤付与孔では足りず、オイリングガイドの複数箇所に複数個の油剤付与孔を形成しなければならなくなる。
【0018】
このため、オイリングガイドやその油剤付与孔に高度な加工精度が要求されることに加えて構造が複雑化するだけでなく、その製作費を高騰させる原因にもつながる。しかも、走行する広幅のアセテートトウ糸条に対して、複数個の油剤付与孔からの油剤を同時に且つ均等に付与するには、オイリングガイド内における圧力分布の高精度な制御が要求されるばかりでなく、その設備費がかかるという問題を有している。
【0019】
一方、上記特許文献5に開示された技術にあっては、給油ノズルから噴霧される油滴が走行中のアセテートトウ糸条の走行面から激しく飛散し、周辺の作業環境を悪化させるだけでなく、付与する油量の損失が大きくなりやすい。従って、上記各特許文献2〜4に開示された技術と同様に、走行するアセテートトウ糸条の全体に油剤を万遍なく均一に付着したり、あるいは走行中のアセテートトウ糸条の内部や同アセテートトウ糸条間に油分の差が生じないように油剤を含浸させることはできない。
【0020】
ところで、一般的に、アセテートトウ糸条の製造工程で使用される油剤は、鉱物油と適当な界面活性剤を混合、分散したベースオイルを水に分散させて調製されるエマルジョンオイルを使用している。そのエマルジョンオイルの濃度は、3.0%以上で且つ12.0%よりも小さい。上記特許文献6に開示された技術にあっては、アセテートトウ糸条の製造に使用される一般的なエマルジョンオイルの油剤密度の範囲よりも狭いため、アセテートトウ糸条に対する油剤の付着均一性をかなり損なうこととなる。
【0021】
このように、上記各特許文献2〜6に開示された技術は、3.0mm以上の糸条幅を有する走行中のアセテートトウ糸条に対して、糸条の長さ方向と幅方向にわたって油剤を均一に付与すること、アセテートトウ糸条の内部や重ね合わされたアセテートトウ糸条間においても、油分の差が生じないように油剤の浸透性を高めるという技術的課題を残している。
【0022】
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、所定の糸条幅をもって走行するアセテートトウ糸条に対して糸条の長さ方向と幅方向にわたって一定量の油剤を連続して均一に付与することを可能にし、製造費の低減とその生産性の向上とが実現される油剤付与方法を提供することを第1の目的とし、簡単な構造であり、走行中のアセテートトウ糸条に油剤を効率よく且つ円滑に付与することを可能にした油剤付与装置を提供することを第2の目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
本件請求項1に係る発明は、走行するアセテートトウ糸条にオイリングガイドを介して油剤を付与する油剤付与方法であって、前記オイリングガイドにより、走行中の前記アセテートトウ糸条の幅を規制するとともに、同オイリングガイドに形成された連続スリット状の油剤付与開口から同アセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を連続して付与することを特徴とするアセテートトウ糸条への油剤付与方法にある。
【0024】
本発明の油剤付与方法は、オイリングガイドを介して走行中のアセテートトウ糸条を所要の糸条幅に集束しながら連続的に走行させているとき、同オイリングガイドの連続スリット状の油剤付与開口からアセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を連続して付与する。
【0025】
アセテートトウ糸条の全幅をカバーするような広い領域にわたって一定量の油剤を前記油剤付与開口からアセテートトウ糸条の全幅に向けて均一に付与することができるようになり、油剤の付与量を無闇に増やすことなく、油剤の付着効率が極めて高められる。このため、アセテートトウ糸条の長さ方向と幅方向にわたって油剤を万遍なく且つ均一に安定して付着することができるとともに、アセテートトウ糸条の内部やアセテートトウ糸条間に付与油分の差を生じることはない。
【0026】
上記作用効果を顕著に達成するためには、前記油剤付与開口からアセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を連続して付与するにあたり、請求項2に係る発明のごとく前記アセテートトウ糸条を前記油剤付与開口に近接させて前記オイリングガイドの表面に形成される油膜に接触しながら走行させることが有効である。このように前記油剤付与開口に近接して連続的に走行させているとき、請求項3に係る発明のごとくギアポンプを介して一定量の油剤を前記オイリングガイドの油剤付与開口に連続して付与することにより、油剤の付着量を安定させることができるとともに、油剤の付着効率、油剤の付着均一性を顕著に向上させることができるようになる。
【0027】
本発明方法にあっては、ある一定の糸条幅を有する走行中のアセテートトウ糸条に対して、糸条長さ方向、糸条幅方向にわたり油剤を均一に付与するために、油剤を吐出する油剤付与開口の大きさ、油剤吐出量や油剤吐出線速度の設定が非常に重要となる。
【0028】
連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時の前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比(W/L)の値は、請求項4に係る発明のごとく、0.7以上で且つ1.0よりも小さいことが有効である。
【0029】
一般に、アセテートトウ糸条の製造工程で使用される油剤は、請求項6に係る発明のごとく、鉱物油と適当な界面活性剤を混合、分散したベースオイルを水に分散して形成されるエマルジョンオイルを使用している。一般的に使用されるエマルジョンオイルの濃度は3.0%以上12.0%未満であり、この濃度領域では一般の鉱物油に比べると、粘度が極端に低く、しかも水と同様に顕著な表面張力を有する。
【0030】
このため、連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比の値を(W/L)=1の関係をもって同油剤付与開口からエマルジョンオイルを吐出すると、連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の両端部から吐出されやすくなる。その結果、アセテートトウ糸条の幅方向の両端部に大量のエマルジョンオイルが付与されることとなり、その中央部にはエマルジョンオイルが付与されにくくなり、好ましくない。逆に(W/L)<0.7の関係を持って同油剤付与開口からエマルジョンオイルを吐出すると、アセテートトウ糸条の幅方向の中央部付近にのみエマルジョンオイルが付与されることになり、その両端部にはエマルジョンオイルが付与されにくくなり、好ましくない。
【0031】
連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時の前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比(W/L)が0.7≦(W/L)<1.0の関係を満足すると、前記油剤付与開口から糸条幅方向にわたり均一に一定量のエマルジョンオイルを吐出することができるようになり、この関係をもって前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wを3mm以上30mm以下とすることが可能である。更に、走行中のアセテートトウ糸条に対して油剤を付与するという点からみると、請求項5に係る発明のごとく、前記アセテートトウ糸条の規制幅Lは3mm以上15mm以下であることが特に有効である。
【0032】
前記油剤付与開口からの前記エマルジョンオイルの吐出線速度Q(cm/秒)は、請求項7に係る発明のごとく、5≦Q≦25、Q=V・D・F/6390ρm・C・W・Tの関係を満足していることが肝要である。ただし、W(mm):油剤付与開口の横幅、T(mm):油剤付与開口の縦幅、V(m/min):紡糸速度、D(dtex):オイリングガイド1個当たりで処理されるアセテートトウ糸条の繊度、C(wt%):付与するエマルジョンオイルの濃度、ρ(g/ml):付与するエマルジョンオイルの比重、F(wt%):処理後のアセテートトウ糸条の油分である。
【0033】
油剤を付与するアセテートトウ糸条の繊度は特に限定されるものではないが、1錘のアセテートトウ糸条に対して油剤を付与するという観点から、1000dtex以上4200dtex以下の範囲であることが望ましい。
【0034】
アセテートトウ糸条の製造工程で一般的に用いられるエマルジョンオイルは、上述のように粘度が極めて低く、水と同様に顕著な表面張力を有するため、連続スリット状の前記油剤付与開口からエマルジョンオイルを吐出させるとき、前記吐出線速度Q(cm/秒)が、5≦Q≦25の関係を満足しないと、走行中のアセテートトウ糸条に対するエマルジョンオイルの付与は、連続的且つ均一的ではなくなり、あたかも液滴が前記油剤付与開口から垂れ落ちるように不連続で且つ不均一な油剤付与となる。
【0035】
請求項8に係る発明は、走行するアセテートトウ糸条に油剤を付与する油剤付与装置であって、走行中の前記アセテートトウ糸条の走行面に近接して配される中空のオイリングガイドと、同オイリングガイドの一端に接続され、油剤を連続して付与する油剤供給手段とを備えてなり、前記オイリングガイドは、走行中の前記アセテートトウ糸条を案内するガイド本体と、同ガイド本体の前記アセテートトウ糸条の走行面に対向する表面に形成され、走行中の前記アセテートトウ糸条の幅を規制する一対の案内壁面部と、前記ガイド本体の前記一対の案内壁面部間の前記アセテートトウ糸条との接触面に形成され、前記アセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を付与する連続スリット状の油剤付与開口とを有してなることを特徴とするアセテートトウ糸条への油剤付与装置にある。
【0036】
本発明の油剤付与装置は、ガイド本体のアセテートトウ糸条の走行面に対向してアセテートトウ糸条との接触面に形成された一対の案内壁面部間を通して、走行中のアセテートトウ糸条を一定の幅寸法に規制しながら連続的に走行させ、油剤供給手段を介して前記一対の案内壁面部間のアセテートトウ糸条との接触面に形成された連続スリット状油剤付与開口からアセテートトウ糸条の全幅にわたり、一定量の油剤を連続して付与するようにしている。
【0037】
かかる構成により、上述の請求項1に係る発明方法を効果的に実施することができることに加えて、特別な付帯設備及び周辺装置を必要とすることなく簡単な構成であり、処理コストも安くなり、良好な生産性が達成できる。また、装置全体の構造が小型化できるばかりでなく、簡略化できるようになり、装置の製作費をも低減させることができ、経済的な効果が顕著に得られる。
【0038】
請求項9に係る発明のごとく、連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと前記一対の案内壁面部間の前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比(W/L)の値が、0.7以上で且つ1.0よりも小さく設定されていることが好ましい。かかる関係を満足することにより、前記油剤付与開口から糸条幅方向に一定量のエマルジョンオイルを均一に吐出することができるようになる。この関係をもって請求項10に係る発明のごとく、前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wを3mm以上30mm以下に設定することが好ましい。
【0039】
上記油剤供給手段は、請求項11に係る発明のごとく、一定量の油剤を前記油剤付与開口に連続的に付与するギアポンプと、同ギアポンプと前記オイリングガイドとを接続する配管とを有している。
【0040】
一定量の油剤を前記油剤付与開口に連続的に付与するギアポンプと前記オイリングガイドとを接続する配管として、可撓性をもつプラスチック製パイプやチューブなどが使用できる。前記オイリングガイドは、前記配管を介して前記ギアポンプから分離すると共に、前記配管の長さ分だけ離れた場所に配することができるようになり、前記オイリングガイドや前記ギアポンプの設置位置の自由度が大きくなる。
【0041】
また、前記オイリングガイドによる油剤付与は、アセテートトウ糸条の表裏両面のうちいずれか一方の片面だけでもよいが、好ましくはアセテートトウ糸条を挟んで上下一対のオイリングガイドを糸条走行方向に直交して高低差をもって配列することにより、アセテートトウ糸条の表裏両面に油剤を分割付与することが特に有効である。これにより、アセテートトウ糸条の製品品質を更に向上することができる。
【0042】
前記オイリングガイドは、請求項12に係る発明のごとく、前記ギアポンプの配置位置よりも高位置に配され、前記配管が上向きに傾斜した勾配をもって配されていることが好適である。前記ギアポンプと前記オイリングガイドとの高低差は1m以上あることが望ましい。
【0043】
アセテートトウ糸条の製造工程で一般的に使用されるエマルジョンオイルは、上述のように低粘度であり、水と同様に顕著な表面張力を有する。このような性質を有するエマルジョンオイルを定量的に送液する場合は、前記配管内は常に加圧状態となっていることが肝要である。
【0044】
アセテートトウ糸条の走行方向に対して下向きの傾斜勾配をもつ配管が一部でも配されていると、下向きの傾斜勾配をもつ配管内ではエマルジョンオイルが液滴状、もしくは配管の断面積の一部のみしか油剤が流れていない状態となり、連続スリット状の上記油剤付与開口からの油剤付与量は非定量状態となる。これがため、走行中のアセテートトウ糸条に対するエマルジョンオイルの付与は、連続して均一になされなくなり、あたかも液滴が前記油剤付与開口から垂れ落ちるようにして不連続で且つ不均一な油剤付与となり、油剤付着効率が極めて低下する。
【0045】
前記オイリングガイドを前記ギアポンプの配置位置よりも高位置に配するとともに、前記配管を常に上向きに傾斜した勾配をもって配することにより、前記配管内に常に高低差に基づく内圧を発生させることができるようになり、一定量のエマルジョンオイルを連続して均等に前記油剤付与開口から走行中のアセテートトウ糸条に吐出することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の代表的な実施形態である油剤付与装置の一例を模式的に示す説明図、図2は同油剤付与装置のオイリングガイドの一例を模式的に示す説明図である。
【0047】
図1において、符号10は、走行するアセテートトウ糸条20に油剤を付与する油剤付与装置を示している。この油剤付与装置10の基本的な構成は、走行中のアセテートトウ糸条20の走行面に近接して配されるオイリングガイド11と、一定量の油剤を連続して付与するギアポンプ12と、同ギアポンプ12と前記オイリングガイド11とを接続する配管13とを備えている。
【0048】
前記オイリングガイド11は、図2に示すように、走行中のアセテートトウ糸条20を案内するガイド本体14にアセテートトウ糸条20の幅方向に細長い中空円筒部材を使用している。同ガイド本体14の軸線方向の両側部には、その軸線方向外側に向かう拡径傾斜面をもつ両側一対の鍔部15,15が同一軸線上に一体形成されている。図示例による両側一対の鍔部15の内側周縁部は、前記ガイド本体14よりも大径の環状端面を有する段部形状をなしており、各鍔部15間には、走行中のアセテートトウ糸条20の幅を規制する陥没した凹環状の案内壁面部16が形成されている。走行中のアセテートトウ糸条20は各案内壁面部16を通して一定の幅寸法に制御される。
【0049】
各案内壁面部16間のアセテートトウ糸条20との接触面には、アセテートトウ糸条20の全幅にわたって開口する細長い連続スリット状をなす油剤付与開口17が直線的に形成されている。図示例による油剤付与開口17は、走行するアセテートトウ糸条20の幅方向に細長い長方形の連続スリット孔17を使用している。この油剤付与開口17における糸条幅方向の寸法Wは、3mm〜30mmに設定され、凹環状の案内壁面部16間の寸法Lは、アセテートトウ糸条20の規制幅Lと略同一寸法が好ましく、3mm〜15mmに設定される。
【0050】
前記ガイド本体14の軸線方向の一側部には、前記配管13を介して前記ギアポンプ12に接続する接続部18が形成されている。同接続部18は、内部に空洞部を有する円筒状部材からなり、前記油剤付与開口17に連通している。前記ギアポンプ12は図示せぬ一般的な圧油供給源に接続されており、一定量の油剤を前記配管13、前記接続部18、ガイド本体14の前記油剤付与開口17を介してアセテートトウ糸条20の長さ方向や全幅にわたって吐出する本発明に適用される油剤供給手段の一部を構成している。
【0051】
図示例による油剤付与装置1は、特に限定されるものではないが、上下一対の第1及び第2のオイリングガイド11,11が、アセテートトウ糸条20を挟んで上下に所要の間隔をおいて図示せぬ支持部材に支持されており、アセテートトウ糸条20の走行路に直交して上下に高低差をもって並設されている。アセテートトウ糸条20に対する油剤付与は、アセテートトウ糸条20の表裏両面のうちいずれか一方の片面だけでもよいが、好ましくは、アセテートトウ糸条20を挟んで上下一対のオイリングガイド11,11を糸条走行方向に直交して高低差をもって配列することにより、アセテートトウ糸条20の表裏両面に油剤を分割付与することが有効である。これにより、アセテートトウ糸条20の製品品質を更に向上することができる。
【0052】
なお、前記配管13として、可撓性をもつプラスチック製パイプやチューブなどが使用できる。前記オイリングガイド11は、前記配管13を介して前記ギアポンプ12から分離すると共に、配管13の長さ分だけ離れた場所に配することができるようになる。このため、前記オイリングガイド11やギアポンプ12の設置位置の自由度が大きくなる。
【0053】
このように、上記のごとく構成された油剤付与装置10は、特別な付帯設備及び周辺装置を必要とすることなく構造が簡単となり、装置全体の構造が小型化できるばかりでなく、簡略化できるようになり、廉価な装置が得られ、その製造費が低減できる。また、処理コストも安くなり、良好な生産性が達成でき、経済的な効果が顕著に得られる。
【0054】
本発明の油剤付与方法は、上記油剤付与装置10を使って実施される。前記油剤付与開口17からアセテートトウ糸条20の長さ方向や全幅にわたり一定量の油剤を連続して付与するにあたり、油剤が油剤付与開口17から垂れ落ちることがないようにアセテートトウ糸条20を油剤付与開口17に近接させて前記オイリングガイド11のアセテートトウ糸条20との接触面に形成される油膜に接触しながら走行させることが有効である。前記油剤付与開口17に近接して連続的に走行させているとき、前記ギアポンプ12を介して一定量の油剤をオイリングガイド11の油剤付与開口17に連続して付与することにより、油剤の付着量を安定させることができるとともに、油剤の付着効率、油剤の付着均一性を顕著に向上させることができるようになる。
【0055】
上記作用効果を顕著に達成するために、本発明の主要な構成の一部は、連続スリット状の油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時のアセテートトウ糸条20の規制幅(凹環状の案内壁面部16間の寸法)Lとの比(W/L)の値は、0.7以上で且つ1.0よりも小さく設定することにある。
【0056】
一般に、アセテートトウ糸条20の製造工程で使用される油剤は、鉱物油と適当な界面活性剤を混合、分散したベースオイルを水に分散して形成されるエマルジョンオイルを使用している。一般的に使用されるエマルジョンオイルの濃度は3.0%以上12.0%未満であり、この濃度領域では一般の鉱物油に比べると、粘度が極端に低く、しかも水と同様に顕著な表面張力を有する。
【0057】
このため、アセテートトウ糸条20の規制幅Lと連続スリット状油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wとの比の値をW/L=1の関係をもって、同油剤付与開口17からエマルジョンオイルを吐出する場合は、同油剤付与開口17の糸条幅方向の両端部から吐出されやくなる。その結果、アセテートトウ糸条20の幅方向の両端部に大量のエマルジョンオイルが付与され、その中央部にはエマルジョンオイルが付与されにくくなり、好ましくない。
【0058】
前記寸法Wと前記規制幅Lとの比(W/L)が0.7≦W/L<1.0の値を満足すると、前記連続スリット状油剤付与開口17から糸条走行方向、糸条幅方向にわたり均一に一定量のエマルジョンオイルを吐出することができるようになる。連続スリット状の油剤付与開口17から糸条走行方向、糸条幅方向にわたり均一に一定量のエマルジョンオイルを吐出するという点からみると、前記寸法Wと前記規制幅Lとの比(W/L)の値を0.7≦W/L<1.0の関係をもって連続スリット状油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wを3mm以上30mm以下に設定することが好ましい。また、走行中のアセテートトウ糸条20に対して油剤を付与するという点からみると、アセテートトウ糸条20の規制幅Lは3mm以上15mm以下であることが特に有効である。
【0059】
本発明方法において、ある一定の糸条幅を有する走行中のアセテートトウ糸条20に接触して、糸条の長さ方向、幅方向に連続して均一な油剤付与を行うためには、油剤を吐出する連続スリット状油剤付与開口17の連続スリット孔の設計以外に油剤の吐出量や吐出線速度が非常に重要となる。
【0060】
本発明の主要な構成の他の一部は、連続スリット状油剤付与開口17からのエマルジョンオイルの吐出線速度Q(cm/秒)が、5≦Q≦25、Q=V・D・F/6390ρm・C・W・Tの関係を満足していることにある。ただし、油剤付与開口17の横幅をW(mm)、油剤付与開口17の縦幅をT(mm)、紡糸速度をV(m/min)、1個のオイリングガイド11で処理されるアセテートトウ糸条20の繊度をD(dtex)、付与するエマルジョンオイルの濃度をC(wt%)、付与するエマルジョンオイルの比重をρ(g/ml)、処理後のアセテートトウ糸条20の油分をF(wt%)とする。なお、本発明にあっては、油剤を付与するアセテートトウ糸条20の繊度Dは特に限定されるものではないが、1錘のアセテートトウ糸条20に対して油剤を均等に付与するという点からみると、500dtex以上5000dtex以下の範囲であることが望ましい。
【0061】
アセテートトウ糸条20の製造工程で一般的に使用されるエマルジョンオイルは、上述のように極めて低粘度であり、水と同様に顕著な表面張力を有しているため、連続スリット状油剤付与開口17からエマルジョンオイルを吐出させる場合には、前記吐出線速度Qが、5≦Q≦25の関係を満足しないと、走行中のアセテートトウ糸条20に対するエマルジョンオイルの付与は、あたかも液滴が油剤付与開口17から垂れ落ちるように不連続で且つ不均一な油剤付与となり、連続して均一になされない。
【0062】
本発明にあっては、送液対象は低粘度のエマルジョンオイルであり、オイリングガイド11は、連続スリット状油剤付与開口17を有するため開放系への送液方式である。従って、連続スリット状油剤付与開口17からのエマルジョンオイルの吐出線速度Q(cm/秒)が、上述のごとく5≦Q≦25の関係よりも著しく高い吐出線速度でなければ、ポンプ供給圧に基づく所要の配管内圧は得られない。このような高吐出線速度は、実際にはアセテートトウ糸条20に付与すべきエマルジョンオイル量を大幅に逸脱したり、もしくは油剤付与開口17である連続スリット孔17の加工を極限まで微細化することでしか達成することはできず、現実的には不可能である。
【0063】
本発明にあっては、一般的なアセテートトウ糸条20の製造条件下で、定量性を確保しつつ連続的で且つ均一的なエマルジョンオイルの付与方法を得るには、オイリングガイド11の設置位置をギアポンプ12の設置位置よりも高位置に配するとともに、ギアポンプ12とオイリングガイド11とを接続する配管13が常に上向きの傾斜勾配を有するように設置することによって配管13内に常に高低差に基づく所要の内圧を発生させることができる。
【0064】
本発明の主要な構成の更に他の一部は、前記オイリングガイド11が、前記ギアポンプ12の配置位置よりも高位置に配され、前記配管13が常に上向きに傾斜した勾配をもって配されていることにある。好ましくは、ギアポンプ12とオイリングガイド11との高低差は1m以上あることが特に有効である。
【0065】
アセテートトウ糸条20の製造工程で一般的に使用されるエマルジョンオイルは、上述のように低粘度であり、水と同様に顕著な表面張力を有する。このような性質を有するエマルジョンオイルを定量的に送液する場合は、前記配管13内は常に加圧状態となっていることが肝要である。
【0066】
前記オイリングガイド11をギアポンプ12の配置位置よりも高位置に配するとともに、配管13を常に上向きに傾斜した勾配をもって配することにより、配管13内に常に高低差に基づく所要の内圧を発生させることができ、一定量のエマルジョンオイルを連続して均等に連続スリット状油剤付与開口17から走行中のアセテートトウ糸条20に吐出することができる。
【0067】
アセテートトウ糸条20の走行方向に対して下向きの傾斜勾配をもつ配管13が一部でも配されていると、下向きの傾斜勾配をもつ配管13内ではエマルジョンオイルが液滴状、もしくは配管13の断面積の一部のみしか油剤が流れていない状態となり、連続スリット状油剤付与開口17からの油剤付与量は非定量状態となる。これがため、走行中のアセテートトウ糸条20に対するエマルジョンオイルの付与は、連続して均一になされなくなり、あたかも液滴が油剤付与開口17から垂れ落ちるようにして不連続で且つ不均一な油剤付与となり、油剤付着効率が極めて低下する。
【0068】
以下に、本発明の更に具体的な実施例について比較例と共に説明する。
(油剤付着量の均一性の評価方法)
油剤付着量は、JIS L1015に定めるジエチルエーテル抽出法により、油剤分及び水分を除いた繊維重量に対する付着油剤重量の比率をパーセント(%)で表したものである。ここでは、油剤付着量の均一性の評価を長さ方向と幅方向の2方向で実施している。その長さ方向の油剤付着量の均一性は、長さ方向に10本の試料を採取し、測定した際の変動係数(変動係数=標準偏差/平均値×100%)で表した。また、その幅方向の油剤付着量の均一性は、一定幅のトウ単糸を幅方向に3分割(左部/中央部/右部)し、各分割部分において10点の油分測定をした際の変動係数(変動係数=標準偏差/平均値×100%)で表した。
【0069】
(実施例1〜5)
エマルジョンオイルの吐出線速度Qが17.6cm/秒の条件下において、連続スリット状油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時のアセテートトウ糸条20の規制幅Lとの比(W/L)の値を様々に変更し、得られたアセテートトウ糸条20の油分付着量の均一性の評価を行った。表1は、上記実施例1〜5における油剤付着量の均一性を評価した結果である。
【0070】
【表1】
【0071】
この表1から、連続スリット状の油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時のアセテートトウ糸条20の規制幅Lとの比(W/L)の値が、0.96〜0.7の場合は、単糸の幅方向における付着量の均一性が保たれているということが理解できる。これに対して、前記比(W/L)の値が(W/L)=1.0の場合は、アセテートトウ糸条20の糸条幅方向の両端部に大量のエマルジョンオイルが付与される傾向があり、前記比(W/L)の値が(W/L)<0.7の領域では、オイリングガイド11上を走行するアセテートトウ糸条20の糸条幅方向の両端部に必要とする油剤付着量が減少するとともに、その油剤付与が極端に不安定となる傾向があるということが理解できる。従って、前記比(W/L)の値が、0.7≦W/L<1.0の範囲では、走行中のアセテートトウ糸条20の油剤付着量の均一性などが保たれるということが分かる。
【0072】
(実施例6〜14)
上記実施例2と同様のオイリングガイド11を使用し、エマルジョンオイルの吐出線速度Qを様々に変更した。そして、得られたアセテートトウ糸条20の長さ方向の油剤付着量の均一性を評価した。その結果を表2に示している。
【0073】
【表2】
【0074】
この表2から、エマルジョンオイルの吐出線速度Qが低い場合は、エマルジョンオイルの吐出量が不安定となり、走行中のアセテートトウ糸条20に対しては斑付きとなった。また、エマルジョンオイルの吐出線速度Qが高い場合には、上記実施例2のように油剤付与時のアセテートトウ糸条20の規制幅L、つまりオイリングガイド11の凹環状の案内壁面部16間の寸法Lに対して、連続スリット状の油剤付与開口17の糸条幅方向の寸法Wを小さく設定しても、エマルジョンオイルの吐出圧によって、エマルジョンオイルが油剤付与開口17から漏れ出る現象を発生する。従って、エマルジョンオイルの吐出線速度Qが5≦Q≦25の関係を満足する範囲にあれば、エマルジョンオイルを連続して均一に付与することができるということが理解できる。
【0075】
(比較例1)
走行中のアセテートトウ糸条20の糸条幅が5mmとなるように、上記実施例1と同様に油剤付与時のアセテートトウ糸条20の規制幅Lを調整し、オイリングローラーを用いてアセテートトウ糸条20に1.0%の油剤が付与されるようにオイリングローラーの回転数を設定し、得られたアセテートトウ糸条20の油分付着量の均一性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
この表3から、オイリングローラーによる油剤付与方法は、上記実施例2及び3のように設定されたオイリングガイド11を使用した場合と比較すると、油分のバラツキが大きくなるということが理解できる。
【0078】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係るアセテートトウ糸条への油剤付与方法及び油剤付与装置は、アセテートトウ糸条の全幅をカバーするような広い領域にわたって一定量の油剤を連続スリット状の油剤付与開口からアセテートトウ糸条の全幅に向けて均一に万遍なく付与することができるようになり、油剤の付与量を無闇に増やすことなく、油剤の付着効率が極めて高められる。このため、アセテートトウ糸条の長さ方向と幅方向にわたって油剤を万遍なく且つ均一に安定して付与することができるとともに、アセテートトウ糸条の内部やアセテートトウ糸条間に油分の差が生じることなく、油剤の付着量を安定させることができる。なお、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、それらの実施形態や実施例から当業者が容易に変更可能な技術的な範囲をも当然に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態である油剤付与装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】同油剤付与装置のオイリングガイドの一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
10 油剤付与装置
11 オイリングガイド
12 ギアポンプ
13 配管
14 ガイド本体
15 鍔部
16 案内壁面部
17 油剤付与開口
18 接続部
20 アセテートトウ糸条
Claims (12)
- 走行するアセテートトウ糸条にオイリングガイドを介して油剤を付与する油剤付与方法であって、
前記オイリングガイドにより、走行中の前記アセテートトウ糸条の幅を規制するとともに、同オイリングガイドに形成された連続スリット状の油剤付与開口から同アセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を連続して付与することを特徴とするアセテートトウ糸条への油剤付与方法。 - 前記アセテートトウ糸条を油剤付与開口に近接させてオイリングガイドの表面に形成される油膜に接触しながら走行させることを特徴とする請求項1記載の油剤付与方法。
- ギアポンプを介して一定量の油剤を前記オイリングガイドの油剤付与開口に連続して付与することを特徴とする請求項1又は2記載の油剤付与方法。
- 連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと油剤付与時の前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比(W/L)の値が、0.7以上で且つ1.0よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油剤付与方法。
- 前記アセテートトウ糸条の規制幅Lが3mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油剤付与方法。
- 前記油剤がエマルジョンオイルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油剤付与方法。
- 前記油剤付与開口からの前記エマルジョンオイルの吐出線速度Q(cm/秒)が次式(1)及び(2)を満足してなることを特徴とする請求項6記載の油剤付与方法。
5≦Q≦25 ……(1)
Q=V・D・F/6390ρm・C・W・T……(2)
ただし、
W(mm) :油剤付与開口の横幅
T(mm) :油剤付与開口の縦幅
V(m/min):紡糸速度
D(dtex) :オイリングガイド1個当たりで処理されるアセテートトウ糸条の繊度
C(wt%) :付与するエマルジョンオイルの濃度
ρ(g/ml) :付与するエマルジョンオイルの比重
F(wt%) :処理後のアセテートトウ糸条の油分 - 走行するアセテートトウ糸条に油剤を付与する油剤付与装置であって、
走行中の前記アセテートトウ糸条の走行面に近接して配される中空のオイリングガイドと、
同オイリングガイドの一端に接続され、油剤を連続して付与する油剤供給手段と、
を備えてなり、
前記オイリングガイドは、
走行中の前記アセテートトウ糸条を案内するガイド本体と、
同ガイド本体の前記アセテートトウ糸条の走行面に対向する表面に形成され、走行中の前記アセテートトウ糸条の幅を規制する一対の案内壁面部と、
前記ガイド本体の前記一対の案内壁面部間の前記アセテートトウ糸条との接触面に形成され、前記アセテートトウ糸条の全幅にわたり油剤を付与する連続スリット状の油剤付与開口と、
を有してなることを特徴とするアセテートトウ糸条への油剤付与装置。 - 連続スリット状の前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wと前記一対の案内壁面部間の前記アセテートトウ糸条の規制幅Lとの比(W/L)の値が、0.7以上で且つ1.0よりも小さく設定されてなることを特徴とする請求項8記載の油剤付与装置。
- 前記油剤付与開口の糸条幅方向の寸法Wが3mm以上30mm以下に設定されてなることを特徴とする請求項8又は9記載の油剤付与装置。
- 前記油剤供給手段は、一定量の油剤を前記油剤付与開口に連続的に供給するギアポンプと、同ギアポンプと前記オイリングガイドとを接続する配管とを有してなることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の油剤付与装置。
- 前記オイリングガイドが前記ギアポンプの配置位置よりも高位置に配され、前記配管が上向きに傾斜した勾配をもって配されてなることを特徴とする請求項11記載の油剤付与装置。
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