JP2004231839A - スチレン系樹脂組成物及びこれを用いた樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、スチレン系樹脂に無機フィラを混和させた樹脂組成物に係り、特に機械特性(引張強度や曲げ弾性率)の向上を図ったものである。
【解決手段】かゝる本発明は、スチレン系樹脂100重量部と、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどの分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラ10〜30重量部とからなるスチレン系樹脂組成物にある。そして、表面処理剤であるアルコキシシランが無機フィラとの結合性がよく、かつ、スチレン系樹脂に対しても優れた相溶性を有するものと考えられ、この結果として、大幅な機械特性の向上が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】かゝる本発明は、スチレン系樹脂100重量部と、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどの分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラ10〜30重量部とからなるスチレン系樹脂組成物にある。そして、表面処理剤であるアルコキシシランが無機フィラとの結合性がよく、かつ、スチレン系樹脂に対しても優れた相溶性を有するものと考えられ、この結果として、大幅な機械特性の向上が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂に無機フィラを混和させた樹脂組成物に係り、特に樹脂組成物の物性の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一般的にポリマの機械特性の向上を図るため、ガラス繊維などの無機フィラを混和することが広く行われている。用いられるガラス繊維としては、例えば平均直径14μmφ、長さ200〜30μm程度のものが挙げられ、通常、ポリマ100重量部に対して、5〜40重量部程度混和させている。
【0003】
このようなガラス繊維の場合、添加量の増量によって、即ち40重量部程度までは、機械特性の向上が期待てきるものの、これを越えた大量添加となると、ポリマと無機フィラ間の界面欠陥が増大するのか、増量の割りには、期待された機械特性の向上が得られないという問題があった。
【0004】
このため、ポリマと無機フィラ間の橋渡し役として、ポリマと反応性のある官能基を有すると共に、無機フィラ表面に対して結合し易い、シランカップリング剤、例えばビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランなどからなる表面処理剤を用いて、予め無機フィラを表面処理した上で、使用することが行われている。この表面処理された機能性無機フィラの場合、通常の添加量によっても、良好な機械特性の向上が得られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリマがスチレン系樹脂の場合、樹脂側に適当な反応性官能基がないため、上記したように、通常用いられているシランカップリング剤によって表面処理剤された無機フィラを使用しても、十分な機械特性の向上、即ち物性の向上が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者が、上記以外の種々のシランカップリング剤について、種々の試験を行ったところ、スチレン系樹脂に対しては、特定のシランカップリング剤を用いてガラス繊維を表面処理した場合、良好な機械特性の向上が得られることを見い出した。
【0007】
つまり、シランカップリング剤として、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシラン、例えばフェニルトリエトキシシラン、又はp−スチリルトリメトキシシランを用い、無機フィラを表面処理した場合、これらのシランは、無機フィラの表面との結合性がよく、また、スチレン系樹脂に対しても、優れた相溶性を有することが分かった。この結果、後述するように、通常の無機フィラと同程度の添加量でも、約20%以上の機械特性の向上が望めることも分かった。
【0008】
本発明は、このような経過を経てなされたもので、スチレン系樹脂に対して、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラを添加するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、スチレン系樹脂100重量部と、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラ10〜30重量部とからなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物にある。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記アルコキシシランが、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランから選ばれる1つであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記無機フィラが、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記スチレン系樹脂が、シンジオタクチックポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0013】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1、2、3又は4記載のスチレン系樹脂組成物により成形された樹脂成形品。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、Tg=100℃、Tm=270℃)の使用が好ましい。この樹脂は、主鎖に対してベンゼン環が規則的に交互に配列されてなり、この結果、非晶性のポリスチレンとは大きく異なった特性である、結晶性を示す。この結晶性により、汎用のポリスチレンが持つ、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性の他に、優れた耐熱性(融点Tm=270℃)、耐薬品性を兼ね備え、所謂エンジニアリングプラスチックと言われるものである。
【0015】
また、無機フィラも、特に限定されないがガラス繊維の使用が好ましい。例えば、平均直径14μmφ、長さ300〜30μm程度のガラス繊維が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられる、無機フィラの表面処理剤である、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランとしては、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランが挙げられる。
【0017】
そして、これらの基本的な配合は、スチレン系樹脂100重量部に対して、上記アルコキシシランにより表面処理された無機フィラを10〜30重量部添加するものである。
【0018】
この配合からなるスチレン系樹脂組成物によると、無機フィラの添加量がそれほど多くないのに係わらず、従来の一般的な機能性無機フィラ、即ちビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランなどからなる表面処理剤により表面処理されたガラス繊維の無機フィラに比較して、後述の如く、約20%以上の機械特性の向上が得られた。このような効果が発現する機構については明確ではないが、ベースホリマ及び表面処理剤の両方に含まれるベンゼン環のπ電子間の強い相互作用によるものと推定される。
【0019】
ここで、スチレン系樹脂100重量部に対して、アルコキシシランにより表面処理された無機フィラの添加量を、10〜30重量部としたのは、10重量部未満では、添加量が少な過ぎて、所望の機械特性、即ち引張強度(T.S.)及び曲げ弾性が得られないからである。逆に30重量部を上限としたのは、この上限量で所望の機械特性が得られる一方、これを越えると、不経済で、また、機械特性も低下するようになるからである。
【0020】
また、無機フィラに対する、上記アルコキシシラン、即ちビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランによる表面処理方法としては、次の方法が挙げられる。
【0021】
(1)乾式法→Vブレンダなどで無機フィラを強制攪拌しながら、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液を、乾燥空気又は窒素ガスで噴射させる方法。(2)湿式法→無機フィラを水に分散させ、スラリー状態になったところで、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液を添加させる方法。(3)スプレー法→炉から取り出した直後の高温の無機フィラに、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液をスプレーさせる方法。
【0022】
このようにしてなる、本発明のスチレン系樹脂組成物は、優れた機械特性を有する樹脂として、回路基板、電気電子部品、家電部品、押出製品、日用品、包装用品などに広く用いることができる。特に、携帯電話やHD装置のフレキシブルプリント基板(FPC)のベース樹脂として用いた場合、大きな引張強度及び曲げ弾性が得られるため、極めて有用である。また、無機フィラの添加量が少なくて済むため、製品の軽量化を図ることもできる。さらに、現在主流である、ポリアミド系樹脂製のFPCの場合、耐熱性は良いものの、高周波特性に問題があるのに対して、本発明の樹脂組成物によるFPCの場合、高周波特性の改善された製品が得られる。
【0023】
なお、上記本発明のスチレン系樹脂組成物には、アルコキシシランにより表面処理された無機フィラの他に、必要により他の添加剤、例えば酸化劣化防止剤、難燃剤などを適宜添加することができる。
【0024】
〈実施例〉
表1〜表3に示すように、本発明の要件を満たす配合のものと(実施例1〜6)と、本発明の要件を欠く配合のもの(比較例1〜11)を用い、サンプルとして、ASTM−D638タイプIの試験片を製造した。ここで、スチレン系樹脂はSPS、無機フィラはガラス繊維(平均直径14μmφ、平均長さ300μm)、表面処理剤は各表に示すものを用いた。また、サンプル製造にあたっては、2軸押出機を使用して、SPSに無機フィラを添加、混練してペレット化した後、型締力20tの射出成形機によりサンプルを製造した。
【0025】
得られたサンプルの物性評価として、比重、引張強度(T.S.)及び曲げ弾性率を求め、上記各表1〜表3に併記した。なお、比重はASTM−D792、引張強度及び曲げ弾性率はASTM−D638によった。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
先ず、上記表1〜表3から、本発明の実施例1〜6では、無機フィラの添加量がほぼ同様である、比較例5〜11に比較してほぼ同様の比重を呈するものの、引張強度及び曲げ弾性率の点においては、大幅な向上が見られることが分かる。つまり、本発明の場合、同量の無機フィラを添加した比較例に比べると、多少のバラツキがあるものの、約20%以上の向上があることが分かる。
【0030】
また、比較例1〜4では、本発明と同一の表面処理剤を用いているが、無機フィラの添加量が少なかったり、多過ぎて、特性上問題があることが分かる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のスチレン系樹脂組成物によると、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラを用いることにより、通常の添加量の範囲内で、言い換えれば、大量添加によることなく、大幅な物性の向上、即ち機械特性の向上を図ることができる。
【0032】
特に、スチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)の場合、上記機能性無機フィラとの組み合わせにより、この樹脂本来の優れた特性(エンジニアリングプラスチックとしての特性)を十分に発揮させることができる。つまり、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性、優れた耐熱性及び耐薬品性、優れた機械特性(引張強度及び曲げ弾性率)を得ることができる。
【0033】
したがって、また、本発明のスチレン系樹脂組成物によれば、優れた特性の樹脂成形品を得ることができる。特に、携帯電話やHD装置のFPCのベース樹脂として用いた場合、大きな引張強度及び曲げ弾性が得られるため、極めて有用である。また、無機フィラの添加量が少なくて済むため、製品の軽量化を図ることもでき、さらに、現在主流である、ポリアミド系樹脂製のFPCの欠点である高周波特性の改善を図った優れた製品を得ることもできる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂に無機フィラを混和させた樹脂組成物に係り、特に樹脂組成物の物性の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一般的にポリマの機械特性の向上を図るため、ガラス繊維などの無機フィラを混和することが広く行われている。用いられるガラス繊維としては、例えば平均直径14μmφ、長さ200〜30μm程度のものが挙げられ、通常、ポリマ100重量部に対して、5〜40重量部程度混和させている。
【0003】
このようなガラス繊維の場合、添加量の増量によって、即ち40重量部程度までは、機械特性の向上が期待てきるものの、これを越えた大量添加となると、ポリマと無機フィラ間の界面欠陥が増大するのか、増量の割りには、期待された機械特性の向上が得られないという問題があった。
【0004】
このため、ポリマと無機フィラ間の橋渡し役として、ポリマと反応性のある官能基を有すると共に、無機フィラ表面に対して結合し易い、シランカップリング剤、例えばビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランなどからなる表面処理剤を用いて、予め無機フィラを表面処理した上で、使用することが行われている。この表面処理された機能性無機フィラの場合、通常の添加量によっても、良好な機械特性の向上が得られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリマがスチレン系樹脂の場合、樹脂側に適当な反応性官能基がないため、上記したように、通常用いられているシランカップリング剤によって表面処理剤された無機フィラを使用しても、十分な機械特性の向上、即ち物性の向上が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者が、上記以外の種々のシランカップリング剤について、種々の試験を行ったところ、スチレン系樹脂に対しては、特定のシランカップリング剤を用いてガラス繊維を表面処理した場合、良好な機械特性の向上が得られることを見い出した。
【0007】
つまり、シランカップリング剤として、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシラン、例えばフェニルトリエトキシシラン、又はp−スチリルトリメトキシシランを用い、無機フィラを表面処理した場合、これらのシランは、無機フィラの表面との結合性がよく、また、スチレン系樹脂に対しても、優れた相溶性を有することが分かった。この結果、後述するように、通常の無機フィラと同程度の添加量でも、約20%以上の機械特性の向上が望めることも分かった。
【0008】
本発明は、このような経過を経てなされたもので、スチレン系樹脂に対して、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラを添加するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、スチレン系樹脂100重量部と、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラ10〜30重量部とからなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物にある。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記アルコキシシランが、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランから選ばれる1つであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記無機フィラが、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記スチレン系樹脂が、シンジオタクチックポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスチレン系樹脂組成物にある。
【0013】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1、2、3又は4記載のスチレン系樹脂組成物により成形された樹脂成形品。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、Tg=100℃、Tm=270℃)の使用が好ましい。この樹脂は、主鎖に対してベンゼン環が規則的に交互に配列されてなり、この結果、非晶性のポリスチレンとは大きく異なった特性である、結晶性を示す。この結晶性により、汎用のポリスチレンが持つ、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性の他に、優れた耐熱性(融点Tm=270℃)、耐薬品性を兼ね備え、所謂エンジニアリングプラスチックと言われるものである。
【0015】
また、無機フィラも、特に限定されないがガラス繊維の使用が好ましい。例えば、平均直径14μmφ、長さ300〜30μm程度のガラス繊維が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられる、無機フィラの表面処理剤である、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランとしては、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランが挙げられる。
【0017】
そして、これらの基本的な配合は、スチレン系樹脂100重量部に対して、上記アルコキシシランにより表面処理された無機フィラを10〜30重量部添加するものである。
【0018】
この配合からなるスチレン系樹脂組成物によると、無機フィラの添加量がそれほど多くないのに係わらず、従来の一般的な機能性無機フィラ、即ちビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランなどからなる表面処理剤により表面処理されたガラス繊維の無機フィラに比較して、後述の如く、約20%以上の機械特性の向上が得られた。このような効果が発現する機構については明確ではないが、ベースホリマ及び表面処理剤の両方に含まれるベンゼン環のπ電子間の強い相互作用によるものと推定される。
【0019】
ここで、スチレン系樹脂100重量部に対して、アルコキシシランにより表面処理された無機フィラの添加量を、10〜30重量部としたのは、10重量部未満では、添加量が少な過ぎて、所望の機械特性、即ち引張強度(T.S.)及び曲げ弾性が得られないからである。逆に30重量部を上限としたのは、この上限量で所望の機械特性が得られる一方、これを越えると、不経済で、また、機械特性も低下するようになるからである。
【0020】
また、無機フィラに対する、上記アルコキシシラン、即ちビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロスルトリメトキシシランによる表面処理方法としては、次の方法が挙げられる。
【0021】
(1)乾式法→Vブレンダなどで無機フィラを強制攪拌しながら、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液を、乾燥空気又は窒素ガスで噴射させる方法。(2)湿式法→無機フィラを水に分散させ、スラリー状態になったところで、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液を添加させる方法。(3)スプレー法→炉から取り出した直後の高温の無機フィラに、アルコキシシランを直接又は有機溶剤などで希釈した溶液をスプレーさせる方法。
【0022】
このようにしてなる、本発明のスチレン系樹脂組成物は、優れた機械特性を有する樹脂として、回路基板、電気電子部品、家電部品、押出製品、日用品、包装用品などに広く用いることができる。特に、携帯電話やHD装置のフレキシブルプリント基板(FPC)のベース樹脂として用いた場合、大きな引張強度及び曲げ弾性が得られるため、極めて有用である。また、無機フィラの添加量が少なくて済むため、製品の軽量化を図ることもできる。さらに、現在主流である、ポリアミド系樹脂製のFPCの場合、耐熱性は良いものの、高周波特性に問題があるのに対して、本発明の樹脂組成物によるFPCの場合、高周波特性の改善された製品が得られる。
【0023】
なお、上記本発明のスチレン系樹脂組成物には、アルコキシシランにより表面処理された無機フィラの他に、必要により他の添加剤、例えば酸化劣化防止剤、難燃剤などを適宜添加することができる。
【0024】
〈実施例〉
表1〜表3に示すように、本発明の要件を満たす配合のものと(実施例1〜6)と、本発明の要件を欠く配合のもの(比較例1〜11)を用い、サンプルとして、ASTM−D638タイプIの試験片を製造した。ここで、スチレン系樹脂はSPS、無機フィラはガラス繊維(平均直径14μmφ、平均長さ300μm)、表面処理剤は各表に示すものを用いた。また、サンプル製造にあたっては、2軸押出機を使用して、SPSに無機フィラを添加、混練してペレット化した後、型締力20tの射出成形機によりサンプルを製造した。
【0025】
得られたサンプルの物性評価として、比重、引張強度(T.S.)及び曲げ弾性率を求め、上記各表1〜表3に併記した。なお、比重はASTM−D792、引張強度及び曲げ弾性率はASTM−D638によった。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
先ず、上記表1〜表3から、本発明の実施例1〜6では、無機フィラの添加量がほぼ同様である、比較例5〜11に比較してほぼ同様の比重を呈するものの、引張強度及び曲げ弾性率の点においては、大幅な向上が見られることが分かる。つまり、本発明の場合、同量の無機フィラを添加した比較例に比べると、多少のバラツキがあるものの、約20%以上の向上があることが分かる。
【0030】
また、比較例1〜4では、本発明と同一の表面処理剤を用いているが、無機フィラの添加量が少なかったり、多過ぎて、特性上問題があることが分かる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のスチレン系樹脂組成物によると、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラを用いることにより、通常の添加量の範囲内で、言い換えれば、大量添加によることなく、大幅な物性の向上、即ち機械特性の向上を図ることができる。
【0032】
特に、スチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)の場合、上記機能性無機フィラとの組み合わせにより、この樹脂本来の優れた特性(エンジニアリングプラスチックとしての特性)を十分に発揮させることができる。つまり、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性、優れた耐熱性及び耐薬品性、優れた機械特性(引張強度及び曲げ弾性率)を得ることができる。
【0033】
したがって、また、本発明のスチレン系樹脂組成物によれば、優れた特性の樹脂成形品を得ることができる。特に、携帯電話やHD装置のFPCのベース樹脂として用いた場合、大きな引張強度及び曲げ弾性が得られるため、極めて有用である。また、無機フィラの添加量が少なくて済むため、製品の軽量化を図ることもでき、さらに、現在主流である、ポリアミド系樹脂製のFPCの欠点である高周波特性の改善を図った優れた製品を得ることもできる。
Claims (5)
- スチレン系樹脂100重量部と、分子中に1個以上のフェニル基又はスチリル置換基を有するアルコキシシランにより表面処理された無機フィラ10〜30重量部とからなることを特徴とするスチレン系樹脂組成物。
- 前記アルコキシシランが、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランから選ばれる1つであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記無機フィラが、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記スチレン系樹脂が、シンジオタクチックポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記請求項1、2、3又は4記載のスチレン系樹脂組成物により成形された樹脂成形品。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023381A JP2004231839A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | スチレン系樹脂組成物及びこれを用いた樹脂成形品 |
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JP2003023381A JP2004231839A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | スチレン系樹脂組成物及びこれを用いた樹脂成形品 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2004231839A true JP2004231839A (ja) | 2004-08-19 |
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JP (1) | JP2004231839A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021115096A1 (zh) * | 2019-12-13 | 2021-06-17 | Oppo广东移动通信有限公司 | 纳米注塑复合材料及其制备方法、壳体组件和电子设备 |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023381A patent/JP2004231839A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021115096A1 (zh) * | 2019-12-13 | 2021-06-17 | Oppo广东移动通信有限公司 | 纳米注塑复合材料及其制备方法、壳体组件和电子设备 |
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