JP2004231823A - 可剥離性床用被覆組成物 - Google Patents
可剥離性床用被覆組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004231823A JP2004231823A JP2003023059A JP2003023059A JP2004231823A JP 2004231823 A JP2004231823 A JP 2004231823A JP 2003023059 A JP2003023059 A JP 2003023059A JP 2003023059 A JP2003023059 A JP 2003023059A JP 2004231823 A JP2004231823 A JP 2004231823A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- trade name
- floor
- specimen
- type
- wax
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Paints Or Removers (AREA)
Abstract
【課題】塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができる可剥離性床用被覆組成物を提供する。
【解決手段】破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させた可剥離性床用被覆組成物とすることにより、十分な可剥離性及び耐汚れ性を発現することができる被覆膜を一液塗布型で形成できるようにした。
【選択図】 なし
【解決手段】破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させた可剥離性床用被覆組成物とすることにより、十分な可剥離性及び耐汚れ性を発現することができる被覆膜を一液塗布型で形成できるようにした。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可剥離性床用被覆組成物に関し、具体的には、床の美観を長期にわたって維持できる耐久性を有すると同時に、剥離剤を使用しなくても床から容易に剥離できる被覆膜を形成する水性の可剥離性床用被覆組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
床の美観を維持する場合、一般的に、床に艶出し剤を塗布して床を保護するようにしている。以前は、日本工業規格「JIS 3920」で規定されている油性フロアポリッシュ、乳化性フロアポリッシュ、ワックスタイプの水性フロアポリッシュ等のようなロウ主体の艶出し剤が主流となっていたが、このようなロウ主体の艶出し剤は、塗布後に磨き作業が必要であることや、光沢の持続性や汚れの付着具合等の耐久面で劣ることなどから難点があった。
【0003】
このため、例えば、下記特許文献1,2及び非特許文献1等では、金属架橋型のアクリル系共重合物のエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤等からなるポリマタイプの水性フロアポリッシュ(以下「樹脂ワックス」という。)等を提案している。このような樹脂ワックスにおいては、塗布後の磨き作業が不要であると共に、ロウ主体の上記艶出し剤に比べて、光沢の持続性や汚れの付着具合等の耐久面を向上させることができるものの、やはり、時間の経過に伴って、光沢が低下すると共に、汚れやブラックヒールマーク(靴底が削れて付着した黒い跡)が目立ってくるようになってしまう。
【0004】
そのため、上記樹脂ワックスにおいては、その劣化具合が軽度の場合には、その表面層を表面洗浄剤等により除去した後に新たに重ねて塗布することにより簡単に修復することができるものの、劣化具合が激しい場合には、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、キレート剤、アミン、無機アルカリ、湿潤剤等からなる剥離剤を用いて、溶剤成分で膨潤させると共に、アルカリ成分でアクリル樹脂の金属架橋部分を切断して細切れにして、ポリッシャ等で床面からすべて除去した後に新規に塗布することにより修復しなければならないため、修復作業に非常に時間を要してしまい、特に、被覆膜が厚く堆積していると、一度の作業で完全に除去することが難しく、複数回繰り返して除去作業を行わなければならなかった。また、剥離剤の使用済みの廃液は、BOD、COD、n−ヘキサン抽出物質、全窒素等の値が大きいため、そのまま廃棄することができず、環境に対する負荷を軽減するように後処理する必要があった。
【0005】
そこで、近年、細かい傷がついたり汚れたりすることをさらに抑制して耐久性をさらに向上させた下記特許文献3等に記載されているようなシリコーン系無機コーティング剤や、下記特許文献4等に記載されているような紫外線硬化型コーティング剤等が提案されているが、このようなコーティング剤においては、経時で深い傷が入り混んでしまい修復が困難になってしまうことや、剥離作業を簡単に行うことができない等の問題があり、広く普及するに至っていない。
【0006】
よって、例えば、下記特許文献5等では、フィルム状の膜を床面に形成することができるようにした可剥離性床コーティング系組成物を提案している。このような可剥離性床コーティング系組成物においては、一枚のフィルムとして床面から引き剥がすことができるので、剥離剤を使用しなくても容易に除去することができ、除去作業効率を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】
特公昭44−24407号公報
【特許文献2】
特公昭49−1458号公報
【特許文献3】
特開2001−149854号公報
【特許文献4】
特開2002−336759号公報
【特許文献5】
特開平11−199802号公報
【非特許文献1】
Cosmetic Chemical Specialties,61(9),86(1985)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献4等に記載されている可剥離性床コーティング系組成物は、床面に対する剥離性能を発現する剥離層を形成する液を塗布した後に、汚れ等を防止する防汚層を形成する液を塗布するという二液塗布型であるため、作業に非常に手間がかかってしまうという問題があった。
【0009】
このようなことから、本発明は、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができる可剥離性床用被覆組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、形成した被覆膜の破断強度及び破断伸びが所定値以上であるウレタン樹脂を主成分とする被覆組成物を使用することにより、一液の塗布作業で済ますことができると共に、剥離剤を使用しなくても裂け等を生じることなくフィルム状に手で剥がすことができる被覆膜を床面に形成することが可能であることを見い出して本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させたものであることを特徴とする。
【0012】
上述した可剥離性床用被覆組成物において、剥離向上剤を含有していることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物の実施の形態を以下に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、以下の特性を発現できる可剥離性床用被覆組成物を提供できることが重要である。
(1)ローラや刷毛やモップやコテ刷毛等により塗布することができると共に、厚塗りをすることができる。
(2)重ね塗りして膜厚を増やすことができる。
(3)吸い込み量の多い床材に対して使用するシーラ(アクリル樹脂ベース)に対しても塗布することができる。
(4)床材に対して人の歩行により容易に剥がれることのない適度な密着性を有する被覆膜を形成する。
(5)耐久性に優れ、長期間の人の歩行による塗膜の摩減や汚れの抱き込みが少ない被覆膜を形成する。
(6)適度な耐水性を有する被覆膜を形成する。
(7)時間の経過と共に傷や汚れが目立ってきても、密着性が高くなることなく、連続した一枚のフィルムとして人手により剥離できる被覆膜を形成する。
【0015】
このような特性を発現できるようにした本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させたものである。
【0016】
上記可剥離性床用被覆組成物は、主成分となる上記ウレタン樹脂等の原料が水中に分散されたものであり、水の蒸発に伴って、当該ウレタン樹脂同士が接近し、ウレタン基間での水素結合等の因子によりウレタン樹脂が連続層をなして被覆膜を形成するようになっている。
【0017】
このような被覆膜を形成するウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエーテル系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリカーボネート系、脂環族ポリエーテル系、脂環族ポリエステル系、脂環族ポリカーボネート系、芳香族ポリエーテル系、芳香族ポリエステル系、芳香族ポリカーボネート系などを単独又は任意の割合で複数混合されたもの等が挙げられる。
【0018】
上記ウレタン樹脂を主成分とした上記被覆膜は、その破断強度が10MPa以上、その破断伸びが50〜300%である必要があり、特に、破断強度が15MPa以上、破断伸びが100〜300%であると好ましい。
【0019】
なぜなら、破断強度が10MPa未満であると、剥離時に破断してしまい、一枚の連続したフィルムとして除去することができなくなってしまう一方、破断伸びが50%未満であると、硬脆くて破断しやすくなり、剥離時に一枚の連続したフィルムとして除去することができなくなってしまい、破断伸びが300%を越えると、軟らかくなり過ぎて、人の歩行等による汚れの抱き込みが顕著になってしまうからである。
【0020】
なお、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物を適用できる床としては、例えば、塩ビ系、オレフィン系、ゴム系等の化学系床や、大理石、御影石、陶磁器タイル等の石質系床や、フローリング、リノリューム、コルク等の木質系床や、エポキシ系、ウレタン系等の塗り床等のような各種の材料からなるものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0021】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、剥離向上剤を含有していると好ましい。
【0022】
上記剥離向上剤としては、例えば、フッ素系化合物、ワックス系化合物、シリコーン系化合物、アルキルリン酸エステル系化合物などを単独又は任意の割合で複数混合したもの等が挙げられ、水に溶解又は分散された形態や、粉末状の形態等で使用することができる。
【0023】
ここで、上記フッ素系化合物としては、分子中にフルオロアルキル基を含有するものが好ましく、具体的には、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−111(商品名)」等)、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−112(商品名)」等)、パーフルオロアルキルアミンオキシド(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−141(商品名)」等)、パーフルオロEO付加物(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−145(商品名)」等)等が挙げられ、特に、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩であると、より少ない量で剥離性能を向上させることができるのでさらに好ましい。
【0024】
上記ワックス系化合物としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックスや、蜜蝋、ラノリン、鯨蝋等のような動物系ワックスや、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等のような鉱物系ワックスや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等のような石油系ワックスや、フィッシャー・トロプシュワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、ポリプロピレンワックス、アクリル−エチレン共重合ワックス等のような合成炭化水素系ワックスや、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等のような変性系ワックスや、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等のような水素化系ワックスや、12−ヒドロキシステアリン酸や、ステアリン酸アミドや、無水フタル酸イミドや、ビスアマイドや、アマイドや、グリセリンエステルや、ソルビタンエステルや、C12以上(好ましくはC18以上)の高級アルコールや、C12以上(好ましくはC18以上)の高級脂肪酸等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0025】
上記シリコーン系化合物としては、シロキサン結合を主骨格としたものが挙げられ、例えば、シリコーンオイル(例えば、信越化学株式会社製「KF50(商品名)」,「KF53(商品名)」等のメチルフェニルポリシロキサン系、「KF96(商品名)」,「KF99(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「KF994(商品名)」,「KF995(商品名)」,「KF9902(商品名)」等の環状ジメチルポリシロキサン系、「FL100(商品名)」等のフロロポリシロキサン系、「KF101(商品名)」等のエポキシ変性、「KF351(商品名)」等のポリエーテル変性、「KF851(商品名)」等のアルコール変性、「KF857(商品名)」等のアミノ変性、「X22−3701(商品名)」等のカルボキシル変性など)や、シリコーンエマルジョン(例えば、信越化学株式会社製「KM70(商品名)」,「KM71(商品名)」,「KM72(商品名)」,「KM75(商品名)」,「KM85(商品名)」,「KM722(商品名)」,「KM740(商品名)」,「KM753(商品名)」,「KM764(商品名)」,「KM765(商品名)」,「KM766(商品名)」,「KM780(商品名)」,「KM883(商品名)」,「KM885(商品名)」,「KM901(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「KM244F(商品名)」等のポリエーテル変性など)や、シリコーン粉末(例えば、東レダウコーニング株式会社製「F201(商品名)」,「F202(商品名)」,「F250(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「F300(商品名)」等のメチルフェニルポリシロキサン系、「E601(商品名)」等のエポキシ変性など)や、シリコーン水溶性樹脂(例えば、東レダウコーニング株式会社製「SH3746(商品名)」,「SH3749(商品名)」,「SH3771(商品名)」等のポリエーテル変性など)等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0026】
上記アルキルリン酸エステル系化合物としては、例えば、中京油脂株式会社製「セパール#365(商品名)」,「セパール#380(商品名)」,「セパール#440(商品名)」,「セパール#441(商品名)」,「セパール#517(商品名)」,「セパール#521(商品名)」等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0027】
このような剥離向上剤を使用すると、形成された被覆膜の剥離性能を長期にわたって維持することができる。特に、フッ素系化合物、なかでも、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩であると、最も優れた効果を発現することができるものの、高コストとなることから、他の種類のものと併用するとよい。
【0028】
上記剥離向上剤は、当該被覆組成物の固形分100%重量部に対して、フッ素系化合物の場合には約0.01〜5.0%重量部(好ましくは約0.01〜3.0%重量部)、ワックス系化合物の場合には約1〜20%重量部(好ましくは1〜10%重量部)、シリコーン系化合物の場合には約0.1〜5%重量部(好ましくは約0.1〜3%重量部)、アルキルリン酸エステル系化合物の場合には約1〜10%重量部(好ましくは約1〜5%重量部)の量で使用すると好ましい。
【0029】
なぜなら、上記剥離向上剤の使用量が上記範囲よりも少ないと、形成された被覆膜の剥離性の向上を図ることができず、上記剥離向上剤の使用量が上記範囲よりも多いと、形成された被覆膜の剥離性が高くなり過ぎ、被覆膜が歩行によって床面から剥がれてしまったり、被覆膜が強度低下を生じて剥離時に切れやすくなってしまう等の問題を生じるからである。
【0030】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等のような他の樹脂のエマルジョンを含有すると、被覆膜の耐汚れ性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0031】
しかしながら、上記他の樹脂のエマルジョンの含有量が多過ぎると、強度低下を引き起し、本発明の目的を達成することができなくなってしまうため、30%重量部以下の添加に止めなければならない。
【0032】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、架橋剤を含有すると、形成された被覆膜の強度をさらに向上させることができるので好ましく、特に、被覆膜の生成過程における水の蒸発に伴って架橋が進行する内部添加タイプ(一液タイプ)であると、作業的に取り扱いやすくなるためにより好ましい。
【0033】
具体的には、例えば、カルボジイミド基含有タイプ(例えば、日清紡株式会社製「カルボジライト水性タイプV−02(商品名)」,「カルボジライト水性タイプV−02−L2(商品名)」「カルボジライト水性タイプV−04(商品名)」「カルボジライト水性タイプV−06(商品名)」「カルボジライト水性タイプE−01(商品名)」「カルボジライト水性タイプE−02(商品名)」等)や、オキサゾリン基含有タイプ(例えば、株式会社日本触媒製「エポクロスK−2010E(商品名)」,「エポクロスK−2020E(商品名)」,「エポクロスK−2030E(商品名)」,「エポクロスWS−500(商品名)」等)などが挙げられる。
【0034】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、必要に応じて、さらに、可塑剤(例えば、リン酸エステル類、脂肪酸エステル類等)、造膜助剤(例えば、エチレングリコール又はジエチレングリコールやプロピレングリコール又はジプロピレングリコールのアルキルエーテル類等)、顔料、染料、消泡剤(例えば、鉱油系、シリコーン系、ポリエーテル型界面活性剤系等)、湿潤剤、分散剤、増粘剤(例えば、無機系、有機系等)、防腐剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系、トリアジン系等)、凍結防止剤(例えば、多価アルコール類等)、乾燥促進剤(例えば、エタノール等の低級アルコール類等)、滑り調整剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等)などのような他の添加剤を含有することも可能である。
【0035】
なお、上記造膜助剤は、水中に分散された樹脂を乾燥時に連続被覆形成させるに必要な揮発性の水溶性溶剤のことである。
【0036】
上述したような本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、ローラ、モップ、刷毛、コテバケ等のような一般的に広く利用されている道具を用いて床面に塗布することができる。
【0037】
ここで、上記被覆組成物は、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm以上(好ましくは30μm以上)となる量で床面に塗布される。なぜなら、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm未満となってしまうと、被覆膜の強度等の性能に関係な、剥離時に被覆膜が切れてしまうからである。このため、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm以上(好ましくは30μm以上)となるように、必要に応じて、上記被覆組成物を床面に重ね塗りすることも可能である。
【0038】
このような本発明に係る可剥離性床用被覆組成物によれば、先に説明した特性を発現することができるので、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができるようになる。
【0039】
【実施例】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物の効果を確認するため、以下のような実験を行った。
【0040】
[試験体の作製]
<試験体1>
全固形分中に対する割合で、ウレタン樹脂(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−290H(商品名)」)を94.0重量%、剥離向上剤(セイミケミカル株式会社製パーフルオロアルキルリン酸エステル塩「サーフロンS112(商品名)」)を1.0重量%、湿潤剤(住友3M株式会社製パーフルオロアルキルカルボン酸塩「フローラドFC−129(商品名)」)を0.02重量%、酸化ポリエチレンエマルジョン(東邦化学工業株式会社製「ハイテックE4000R(商品名)」)を5.0重量%、消泡剤(独国 WACKER SILICONES CORPORATION製シリコーン系「SE−21(商品名)」)を0.03重量%混合し、全固形分の割合が25重量%となるように水分を調整して試験体1を作製した。
【0041】
<試験体2>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−401(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体2を作製した。
【0042】
<試験体3>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−232(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体3を作製した。
【0043】
<試験体4>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−380(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体4を作製した。
【0044】
<試験体5>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−680(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体5を作製した。
【0045】
<試験体6>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−240(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体6を作製した。
【0046】
<試験体7>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−5000(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体7を作製した。
【0047】
<試験体8>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−4300(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体8を作製した。
【0048】
<試験体9>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−3700(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体9を作製した。
【0049】
[実験方法]
<破断強度及び破断伸び>
平滑なガラス板上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、形成された被覆膜をガラス板から取り外して所定のサイズ(40mm×5mm)に切り出し、得られた試験片に対して引張試験機(インストロン社製「5565(型式)」)により所定の速度(200mm/分)で引張試験(破断強度及び破断伸び)を行った(試験温度:25℃)。
【0050】
<可剥離性>
床材(株式会社タジマ製ホモジニアスビニル床タイル「ジニアスプレーンGE−1109(商品名)」)上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、形成された被覆膜を床材から引き剥がして可剥離性を評価した。
【0051】
<耐汚れ性>
床材(ポリマーブル株式会社製ホモジニアスビニル床タイル(白色)「ハイプレーンHP−003(商品名)」)上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、歩行者通路に当該床材を敷設し、所定期間経過後(1ヵ月)の汚れ具合を目視評価した。
【0052】
[実験結果]
上述した実験の結果を下記の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1からわかるように、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50%以上となる範囲の試験体1〜4においては、可剥離性及び耐汚れ性に優れることが確認できた。特に、破断強度が15MPa以上であると共に破断伸びが100〜300%となる範囲の試験体3においては、可剥離性及び耐汚れ性の両者共に非常に優れることが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物によれば、十分な可剥離性及び耐汚れ性を発現させることができる被覆膜を一液塗布型で形成することができるので、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、可剥離性床用被覆組成物に関し、具体的には、床の美観を長期にわたって維持できる耐久性を有すると同時に、剥離剤を使用しなくても床から容易に剥離できる被覆膜を形成する水性の可剥離性床用被覆組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
床の美観を維持する場合、一般的に、床に艶出し剤を塗布して床を保護するようにしている。以前は、日本工業規格「JIS 3920」で規定されている油性フロアポリッシュ、乳化性フロアポリッシュ、ワックスタイプの水性フロアポリッシュ等のようなロウ主体の艶出し剤が主流となっていたが、このようなロウ主体の艶出し剤は、塗布後に磨き作業が必要であることや、光沢の持続性や汚れの付着具合等の耐久面で劣ることなどから難点があった。
【0003】
このため、例えば、下記特許文献1,2及び非特許文献1等では、金属架橋型のアクリル系共重合物のエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤等からなるポリマタイプの水性フロアポリッシュ(以下「樹脂ワックス」という。)等を提案している。このような樹脂ワックスにおいては、塗布後の磨き作業が不要であると共に、ロウ主体の上記艶出し剤に比べて、光沢の持続性や汚れの付着具合等の耐久面を向上させることができるものの、やはり、時間の経過に伴って、光沢が低下すると共に、汚れやブラックヒールマーク(靴底が削れて付着した黒い跡)が目立ってくるようになってしまう。
【0004】
そのため、上記樹脂ワックスにおいては、その劣化具合が軽度の場合には、その表面層を表面洗浄剤等により除去した後に新たに重ねて塗布することにより簡単に修復することができるものの、劣化具合が激しい場合には、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、キレート剤、アミン、無機アルカリ、湿潤剤等からなる剥離剤を用いて、溶剤成分で膨潤させると共に、アルカリ成分でアクリル樹脂の金属架橋部分を切断して細切れにして、ポリッシャ等で床面からすべて除去した後に新規に塗布することにより修復しなければならないため、修復作業に非常に時間を要してしまい、特に、被覆膜が厚く堆積していると、一度の作業で完全に除去することが難しく、複数回繰り返して除去作業を行わなければならなかった。また、剥離剤の使用済みの廃液は、BOD、COD、n−ヘキサン抽出物質、全窒素等の値が大きいため、そのまま廃棄することができず、環境に対する負荷を軽減するように後処理する必要があった。
【0005】
そこで、近年、細かい傷がついたり汚れたりすることをさらに抑制して耐久性をさらに向上させた下記特許文献3等に記載されているようなシリコーン系無機コーティング剤や、下記特許文献4等に記載されているような紫外線硬化型コーティング剤等が提案されているが、このようなコーティング剤においては、経時で深い傷が入り混んでしまい修復が困難になってしまうことや、剥離作業を簡単に行うことができない等の問題があり、広く普及するに至っていない。
【0006】
よって、例えば、下記特許文献5等では、フィルム状の膜を床面に形成することができるようにした可剥離性床コーティング系組成物を提案している。このような可剥離性床コーティング系組成物においては、一枚のフィルムとして床面から引き剥がすことができるので、剥離剤を使用しなくても容易に除去することができ、除去作業効率を向上させることができる。
【0007】
【特許文献1】
特公昭44−24407号公報
【特許文献2】
特公昭49−1458号公報
【特許文献3】
特開2001−149854号公報
【特許文献4】
特開2002−336759号公報
【特許文献5】
特開平11−199802号公報
【非特許文献1】
Cosmetic Chemical Specialties,61(9),86(1985)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献4等に記載されている可剥離性床コーティング系組成物は、床面に対する剥離性能を発現する剥離層を形成する液を塗布した後に、汚れ等を防止する防汚層を形成する液を塗布するという二液塗布型であるため、作業に非常に手間がかかってしまうという問題があった。
【0009】
このようなことから、本発明は、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができる可剥離性床用被覆組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、形成した被覆膜の破断強度及び破断伸びが所定値以上であるウレタン樹脂を主成分とする被覆組成物を使用することにより、一液の塗布作業で済ますことができると共に、剥離剤を使用しなくても裂け等を生じることなくフィルム状に手で剥がすことができる被覆膜を床面に形成することが可能であることを見い出して本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させたものであることを特徴とする。
【0012】
上述した可剥離性床用被覆組成物において、剥離向上剤を含有していることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物の実施の形態を以下に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、以下の特性を発現できる可剥離性床用被覆組成物を提供できることが重要である。
(1)ローラや刷毛やモップやコテ刷毛等により塗布することができると共に、厚塗りをすることができる。
(2)重ね塗りして膜厚を増やすことができる。
(3)吸い込み量の多い床材に対して使用するシーラ(アクリル樹脂ベース)に対しても塗布することができる。
(4)床材に対して人の歩行により容易に剥がれることのない適度な密着性を有する被覆膜を形成する。
(5)耐久性に優れ、長期間の人の歩行による塗膜の摩減や汚れの抱き込みが少ない被覆膜を形成する。
(6)適度な耐水性を有する被覆膜を形成する。
(7)時間の経過と共に傷や汚れが目立ってきても、密着性が高くなることなく、連続した一枚のフィルムとして人手により剥離できる被覆膜を形成する。
【0015】
このような特性を発現できるようにした本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させたものである。
【0016】
上記可剥離性床用被覆組成物は、主成分となる上記ウレタン樹脂等の原料が水中に分散されたものであり、水の蒸発に伴って、当該ウレタン樹脂同士が接近し、ウレタン基間での水素結合等の因子によりウレタン樹脂が連続層をなして被覆膜を形成するようになっている。
【0017】
このような被覆膜を形成するウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエーテル系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ポリカーボネート系、脂環族ポリエーテル系、脂環族ポリエステル系、脂環族ポリカーボネート系、芳香族ポリエーテル系、芳香族ポリエステル系、芳香族ポリカーボネート系などを単独又は任意の割合で複数混合されたもの等が挙げられる。
【0018】
上記ウレタン樹脂を主成分とした上記被覆膜は、その破断強度が10MPa以上、その破断伸びが50〜300%である必要があり、特に、破断強度が15MPa以上、破断伸びが100〜300%であると好ましい。
【0019】
なぜなら、破断強度が10MPa未満であると、剥離時に破断してしまい、一枚の連続したフィルムとして除去することができなくなってしまう一方、破断伸びが50%未満であると、硬脆くて破断しやすくなり、剥離時に一枚の連続したフィルムとして除去することができなくなってしまい、破断伸びが300%を越えると、軟らかくなり過ぎて、人の歩行等による汚れの抱き込みが顕著になってしまうからである。
【0020】
なお、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物を適用できる床としては、例えば、塩ビ系、オレフィン系、ゴム系等の化学系床や、大理石、御影石、陶磁器タイル等の石質系床や、フローリング、リノリューム、コルク等の木質系床や、エポキシ系、ウレタン系等の塗り床等のような各種の材料からなるものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0021】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、剥離向上剤を含有していると好ましい。
【0022】
上記剥離向上剤としては、例えば、フッ素系化合物、ワックス系化合物、シリコーン系化合物、アルキルリン酸エステル系化合物などを単独又は任意の割合で複数混合したもの等が挙げられ、水に溶解又は分散された形態や、粉末状の形態等で使用することができる。
【0023】
ここで、上記フッ素系化合物としては、分子中にフルオロアルキル基を含有するものが好ましく、具体的には、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−111(商品名)」等)、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−112(商品名)」等)、パーフルオロアルキルアミンオキシド(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−141(商品名)」等)、パーフルオロEO付加物(例えば、セイミケミカル株式会社製「サーフロンS−145(商品名)」等)等が挙げられ、特に、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩であると、より少ない量で剥離性能を向上させることができるのでさらに好ましい。
【0024】
上記ワックス系化合物としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックスや、蜜蝋、ラノリン、鯨蝋等のような動物系ワックスや、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等のような鉱物系ワックスや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等のような石油系ワックスや、フィッシャー・トロプシュワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、ポリプロピレンワックス、アクリル−エチレン共重合ワックス等のような合成炭化水素系ワックスや、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等のような変性系ワックスや、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等のような水素化系ワックスや、12−ヒドロキシステアリン酸や、ステアリン酸アミドや、無水フタル酸イミドや、ビスアマイドや、アマイドや、グリセリンエステルや、ソルビタンエステルや、C12以上(好ましくはC18以上)の高級アルコールや、C12以上(好ましくはC18以上)の高級脂肪酸等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0025】
上記シリコーン系化合物としては、シロキサン結合を主骨格としたものが挙げられ、例えば、シリコーンオイル(例えば、信越化学株式会社製「KF50(商品名)」,「KF53(商品名)」等のメチルフェニルポリシロキサン系、「KF96(商品名)」,「KF99(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「KF994(商品名)」,「KF995(商品名)」,「KF9902(商品名)」等の環状ジメチルポリシロキサン系、「FL100(商品名)」等のフロロポリシロキサン系、「KF101(商品名)」等のエポキシ変性、「KF351(商品名)」等のポリエーテル変性、「KF851(商品名)」等のアルコール変性、「KF857(商品名)」等のアミノ変性、「X22−3701(商品名)」等のカルボキシル変性など)や、シリコーンエマルジョン(例えば、信越化学株式会社製「KM70(商品名)」,「KM71(商品名)」,「KM72(商品名)」,「KM75(商品名)」,「KM85(商品名)」,「KM722(商品名)」,「KM740(商品名)」,「KM753(商品名)」,「KM764(商品名)」,「KM765(商品名)」,「KM766(商品名)」,「KM780(商品名)」,「KM883(商品名)」,「KM885(商品名)」,「KM901(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「KM244F(商品名)」等のポリエーテル変性など)や、シリコーン粉末(例えば、東レダウコーニング株式会社製「F201(商品名)」,「F202(商品名)」,「F250(商品名)」等のジメチルポリシロキサン系、「F300(商品名)」等のメチルフェニルポリシロキサン系、「E601(商品名)」等のエポキシ変性など)や、シリコーン水溶性樹脂(例えば、東レダウコーニング株式会社製「SH3746(商品名)」,「SH3749(商品名)」,「SH3771(商品名)」等のポリエーテル変性など)等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0026】
上記アルキルリン酸エステル系化合物としては、例えば、中京油脂株式会社製「セパール#365(商品名)」,「セパール#380(商品名)」,「セパール#440(商品名)」,「セパール#441(商品名)」,「セパール#517(商品名)」,「セパール#521(商品名)」等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0027】
このような剥離向上剤を使用すると、形成された被覆膜の剥離性能を長期にわたって維持することができる。特に、フッ素系化合物、なかでも、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩であると、最も優れた効果を発現することができるものの、高コストとなることから、他の種類のものと併用するとよい。
【0028】
上記剥離向上剤は、当該被覆組成物の固形分100%重量部に対して、フッ素系化合物の場合には約0.01〜5.0%重量部(好ましくは約0.01〜3.0%重量部)、ワックス系化合物の場合には約1〜20%重量部(好ましくは1〜10%重量部)、シリコーン系化合物の場合には約0.1〜5%重量部(好ましくは約0.1〜3%重量部)、アルキルリン酸エステル系化合物の場合には約1〜10%重量部(好ましくは約1〜5%重量部)の量で使用すると好ましい。
【0029】
なぜなら、上記剥離向上剤の使用量が上記範囲よりも少ないと、形成された被覆膜の剥離性の向上を図ることができず、上記剥離向上剤の使用量が上記範囲よりも多いと、形成された被覆膜の剥離性が高くなり過ぎ、被覆膜が歩行によって床面から剥がれてしまったり、被覆膜が強度低下を生じて剥離時に切れやすくなってしまう等の問題を生じるからである。
【0030】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等のような他の樹脂のエマルジョンを含有すると、被覆膜の耐汚れ性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0031】
しかしながら、上記他の樹脂のエマルジョンの含有量が多過ぎると、強度低下を引き起し、本発明の目的を達成することができなくなってしまうため、30%重量部以下の添加に止めなければならない。
【0032】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、さらに、架橋剤を含有すると、形成された被覆膜の強度をさらに向上させることができるので好ましく、特に、被覆膜の生成過程における水の蒸発に伴って架橋が進行する内部添加タイプ(一液タイプ)であると、作業的に取り扱いやすくなるためにより好ましい。
【0033】
具体的には、例えば、カルボジイミド基含有タイプ(例えば、日清紡株式会社製「カルボジライト水性タイプV−02(商品名)」,「カルボジライト水性タイプV−02−L2(商品名)」「カルボジライト水性タイプV−04(商品名)」「カルボジライト水性タイプV−06(商品名)」「カルボジライト水性タイプE−01(商品名)」「カルボジライト水性タイプE−02(商品名)」等)や、オキサゾリン基含有タイプ(例えば、株式会社日本触媒製「エポクロスK−2010E(商品名)」,「エポクロスK−2020E(商品名)」,「エポクロスK−2030E(商品名)」,「エポクロスWS−500(商品名)」等)などが挙げられる。
【0034】
また、本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、必要に応じて、さらに、可塑剤(例えば、リン酸エステル類、脂肪酸エステル類等)、造膜助剤(例えば、エチレングリコール又はジエチレングリコールやプロピレングリコール又はジプロピレングリコールのアルキルエーテル類等)、顔料、染料、消泡剤(例えば、鉱油系、シリコーン系、ポリエーテル型界面活性剤系等)、湿潤剤、分散剤、増粘剤(例えば、無機系、有機系等)、防腐剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系、トリアジン系等)、凍結防止剤(例えば、多価アルコール類等)、乾燥促進剤(例えば、エタノール等の低級アルコール類等)、滑り調整剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等)などのような他の添加剤を含有することも可能である。
【0035】
なお、上記造膜助剤は、水中に分散された樹脂を乾燥時に連続被覆形成させるに必要な揮発性の水溶性溶剤のことである。
【0036】
上述したような本発明に係る可剥離性床用被覆組成物は、ローラ、モップ、刷毛、コテバケ等のような一般的に広く利用されている道具を用いて床面に塗布することができる。
【0037】
ここで、上記被覆組成物は、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm以上(好ましくは30μm以上)となる量で床面に塗布される。なぜなら、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm未満となってしまうと、被覆膜の強度等の性能に関係な、剥離時に被覆膜が切れてしまうからである。このため、床面に形成される被覆膜の厚さ(乾燥膜厚)が、20μm以上(好ましくは30μm以上)となるように、必要に応じて、上記被覆組成物を床面に重ね塗りすることも可能である。
【0038】
このような本発明に係る可剥離性床用被覆組成物によれば、先に説明した特性を発現することができるので、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができるようになる。
【0039】
【実施例】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物の効果を確認するため、以下のような実験を行った。
【0040】
[試験体の作製]
<試験体1>
全固形分中に対する割合で、ウレタン樹脂(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−290H(商品名)」)を94.0重量%、剥離向上剤(セイミケミカル株式会社製パーフルオロアルキルリン酸エステル塩「サーフロンS112(商品名)」)を1.0重量%、湿潤剤(住友3M株式会社製パーフルオロアルキルカルボン酸塩「フローラドFC−129(商品名)」)を0.02重量%、酸化ポリエチレンエマルジョン(東邦化学工業株式会社製「ハイテックE4000R(商品名)」)を5.0重量%、消泡剤(独国 WACKER SILICONES CORPORATION製シリコーン系「SE−21(商品名)」)を0.03重量%混合し、全固形分の割合が25重量%となるように水分を調整して試験体1を作製した。
【0041】
<試験体2>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−401(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体2を作製した。
【0042】
<試験体3>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−232(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体3を作製した。
【0043】
<試験体4>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−380(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体4を作製した。
【0044】
<試験体5>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−680(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体5を作製した。
【0045】
<試験体6>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(旭電化工業株式会社製ウレタンディスパージョン「アデカボンタイターHUX−240(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体6を作製した。
【0046】
<試験体7>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−5000(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体7を作製した。
【0047】
<試験体8>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−4300(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体8を作製した。
【0048】
<試験体9>
試験体1におけるウレタン樹脂の種類を変更(東亜合成株式会社製ウレタンディスパージョン「ネオタンUE−3700(商品名)」)した以外は、試験体1と同様に調整することにより、試験体9を作製した。
【0049】
[実験方法]
<破断強度及び破断伸び>
平滑なガラス板上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、形成された被覆膜をガラス板から取り外して所定のサイズ(40mm×5mm)に切り出し、得られた試験片に対して引張試験機(インストロン社製「5565(型式)」)により所定の速度(200mm/分)で引張試験(破断強度及び破断伸び)を行った(試験温度:25℃)。
【0050】
<可剥離性>
床材(株式会社タジマ製ホモジニアスビニル床タイル「ジニアスプレーンGE−1109(商品名)」)上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、形成された被覆膜を床材から引き剥がして可剥離性を評価した。
【0051】
<耐汚れ性>
床材(ポリマーブル株式会社製ホモジニアスビニル床タイル(白色)「ハイプレーンHP−003(商品名)」)上に所定の乾燥膜厚(30〜40μm)となるように上記試験体1〜9を塗布して乾燥させた後(25℃×48時間)、歩行者通路に当該床材を敷設し、所定期間経過後(1ヵ月)の汚れ具合を目視評価した。
【0052】
[実験結果]
上述した実験の結果を下記の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1からわかるように、破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50%以上となる範囲の試験体1〜4においては、可剥離性及び耐汚れ性に優れることが確認できた。特に、破断強度が15MPa以上であると共に破断伸びが100〜300%となる範囲の試験体3においては、可剥離性及び耐汚れ性の両者共に非常に優れることが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る可剥離性床用被覆組成物によれば、十分な可剥離性及び耐汚れ性を発現させることができる被覆膜を一液塗布型で形成することができるので、塗布作業や剥離作業を簡単に行うことができる。
Claims (2)
- 破断強度が10MPa以上であると共に破断伸びが50〜300%となるウレタン樹脂を主成分とする被覆膜を形成する原料を水に分散させたものであることを特徴とする可剥離性床用被覆組成物。
- 請求項1において、
剥離向上剤を含有していることを特徴とする可剥離性床用被覆組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023059A JP2004231823A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 可剥離性床用被覆組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023059A JP2004231823A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 可剥離性床用被覆組成物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004231823A true JP2004231823A (ja) | 2004-08-19 |
Family
ID=32951970
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003023059A Pending JP2004231823A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 可剥離性床用被覆組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004231823A (ja) |
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007013582A1 (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-01 | Duskin Co., Ltd. | 可はく離性床コーティング並びに該コーティングの形成方法 |
JP2009120684A (ja) * | 2007-11-14 | 2009-06-04 | Rinrei:Kk | 建材用コーティング膜及び建材用コーティング剤 |
WO2009087922A1 (ja) * | 2008-01-11 | 2009-07-16 | Rinrei Wax Co., Ltd. | 可剥離性床用被覆組成物 |
JP2009179496A (ja) * | 2008-01-30 | 2009-08-13 | East Japan Railway Co | 養生方法 |
JP2011511184A (ja) * | 2008-01-24 | 2011-04-07 | ディバーシー・インコーポレーテッド | 塗膜を表面から除去する方法及び装置 |
US20140295188A1 (en) * | 2007-05-17 | 2014-10-02 | Diversey, Inc. | Surface coating system and method |
US9102783B2 (en) | 2009-09-25 | 2015-08-11 | Rinrei Wax Co., Ltd. | Strippable coating composition for floors |
US9868862B2 (en) | 2011-05-25 | 2018-01-16 | Diversey, Inc. | Surface coating system and method of using surface coating system |
CN108531066A (zh) * | 2018-05-04 | 2018-09-14 | 北京戍光科技有限公司 | 一种水性可剥离膜涂料的制备方法和应用 |
CN109354667A (zh) * | 2018-09-11 | 2019-02-19 | 东莞市吉鑫高分子科技有限公司 | 一种耐磨防污热塑性聚氨酯弹性体及其制备方法 |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023059A patent/JP2004231823A/ja active Pending
Cited By (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007013582A1 (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-01 | Duskin Co., Ltd. | 可はく離性床コーティング並びに該コーティングの形成方法 |
CN101233199B (zh) * | 2005-07-29 | 2011-01-26 | 打清股份有限公司 | 可剥离性地板涂层及该涂层的形成方法 |
US8153262B2 (en) | 2005-07-29 | 2012-04-10 | Duskin Co., Ltd. | Strippable floor coating and method of forming the coating |
US20140295188A1 (en) * | 2007-05-17 | 2014-10-02 | Diversey, Inc. | Surface coating system and method |
JP2009120684A (ja) * | 2007-11-14 | 2009-06-04 | Rinrei:Kk | 建材用コーティング膜及び建材用コーティング剤 |
WO2009087922A1 (ja) * | 2008-01-11 | 2009-07-16 | Rinrei Wax Co., Ltd. | 可剥離性床用被覆組成物 |
JP2011511184A (ja) * | 2008-01-24 | 2011-04-07 | ディバーシー・インコーポレーテッド | 塗膜を表面から除去する方法及び装置 |
US8567470B2 (en) | 2008-01-24 | 2013-10-29 | Diversey, Inc. | Method and apparatus for removing a film from a surface |
JP2009179496A (ja) * | 2008-01-30 | 2009-08-13 | East Japan Railway Co | 養生方法 |
US9102783B2 (en) | 2009-09-25 | 2015-08-11 | Rinrei Wax Co., Ltd. | Strippable coating composition for floors |
US9868862B2 (en) | 2011-05-25 | 2018-01-16 | Diversey, Inc. | Surface coating system and method of using surface coating system |
CN108531066A (zh) * | 2018-05-04 | 2018-09-14 | 北京戍光科技有限公司 | 一种水性可剥离膜涂料的制备方法和应用 |
CN109354667A (zh) * | 2018-09-11 | 2019-02-19 | 东莞市吉鑫高分子科技有限公司 | 一种耐磨防污热塑性聚氨酯弹性体及其制备方法 |
CN109354667B (zh) * | 2018-09-11 | 2022-08-16 | 东莞市吉鑫高分子科技有限公司 | 一种耐磨防污热塑性聚氨酯弹性体及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5517537B2 (ja) | 可剥離性床用被覆組成物 | |
JP2004231823A (ja) | 可剥離性床用被覆組成物 | |
TWI388635B (zh) | 可剝離性地板塗佈材及該塗佈材之形成方法 | |
US5782962A (en) | Cleaning and polishing composition | |
JP5680486B2 (ja) | ハードコートフィルム | |
JP2009167237A (ja) | 可剥離性床用被覆組成物 | |
CN105051131B (zh) | 涂层、组合物、涂覆制品和方法 | |
AU2008254809B2 (en) | Surface coating system and method | |
JP6799089B2 (ja) | アクリレート官能性トップコートを備えた自己修復性表面保護フィルム | |
CN104937053A (zh) | 可剥离柔性涂料、组合物及其方法 | |
JP2017536997A (ja) | 多重区域型基材上の剥離可能な表面コーティング系 | |
EP1809717A1 (en) | Protective film adhesive | |
US5445670A (en) | Abrasive-containing surface-finish composition | |
JP2012527366A (ja) | 表面処理フィルムおよび/または積層品 | |
JP2004509379A5 (ja) | ||
EP3568206A1 (en) | Nail metallization | |
US20130164450A1 (en) | Burnishing methods and compositions | |
CN1299268A (zh) | 有附着性、韧性和硬度的长久耐用指甲油 | |
CN106905857A (zh) | 一种高耐久性地板蜡及其制备方法 | |
JP2010037397A (ja) | 防汚塗料組成物、該防汚塗料組成物を含む塗膜、該塗膜の形成方法、および塗装物品 | |
JP7074879B2 (ja) | 仮接着用組成物、キットおよび積層体 | |
JP6348737B2 (ja) | 床用コーティング剤組成物およびそれを用いた床構造体 | |
JP4661156B2 (ja) | 経年劣化防水シートの修復施工構造および修復施工方法ならびにそれに用いる修復施工用保護用塗料 | |
JPH10237389A (ja) | 革靴用艶出し剤 | |
JPS6174678A (ja) | 剥離性塗料による表面保護方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051116 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20090213 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090310 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090811 |