JP2004231700A - ポリアミドの精製方法 - Google Patents

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一實 田中
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Abstract

【課題】溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミド製品中に混入した粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレット等の異物を効率的に分離・除去するポリアミドの精製方法を提供する。
【解決手段】溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドを精製するに際し、該ポリアミドのペレットから、
(1)風選により分離・除去する選別機を用いて、粉体およびフロスを除き、
(2)その後、光学的に識別し分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を除くことにより、
製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法。
【選択図】 無

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドの精製方法に関する。更に詳しくは、粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレットを、ペレット状のポリアミドから効率的に除き、製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドは家電製品や各種自動車用部品、コンピューターのハウジング等の成形材料、繊糸、編織物等の衣料品、タイヤコ−ド、漁網、釣り糸等の工業用またはレジャ−用フィラメント材料、食品包装用のフィルムや各種容器用シ−トあるいはボトル用材料として使用しうる高強力、耐磨耗性、耐疲労性、良好な染色性、ガスバリア性等の化学的、機械的性質を有している。特にキシリレンジアミンもしくはビス(アミノメチル)シクロヘキサンと脂肪族ジカルボン酸とから得られるアミド結合繰り返し単位を含有するポリアミドはポリアミド6やポリアミド66等に比べて高強度、高弾性率、低吸水性であり、なおかつガスバリア性にも優れるため、各種工業用材料、あるいは食品包装用のフィルム、シート、ボトル用材料として特に有用である。
【0003】
成形材料用途では一般に射出成形により成形され、溶融時の流動性が高いことが求められ、いわゆる低粘度品が用いられる。一方、ボトル,シート,フィルム及び繊維等の用途に用いられるポリアミドは、射出成形の他に押し出し成形によっても成形される。ボトル,シート,フィルム及び繊維等の用途では、溶融時の流動性は成形材料用途の場合より低いことが求められ、主に中,高粘度品が用いられる。主に成形材料用途に用いられる低粘度ポリアミドとしては、溶融重合して得られたポリアミドがそのまま用いられるか、又は更に乾燥したものが用いられる。一方、ボトル,シート,フィルム及び繊維等の用途に主に用いられる中,高粘度ポリアミドは、一旦溶融状態で重縮合して低粘度ポリアミドを得た後、固相状態で加熱処理するいわゆる固相重合を行い、粘度を高めることが知られている。
【0004】
通常、溶融重縮合の終了したポリアミドは、バッチ式の場合は重合槽内を不活性ガスで加圧することにより、また、連続式の場合はスクリューあるいはギヤポンプ等の機械的な動力によって複数の吐出口からストランドと呼ばれる糸状に押し出された後、造粒装置によって冷却固化・切断してペレット化される。この工程は一般に造粒工程と称され、溶融ストランドを冷媒で冷却固化した後、カッター等で切断してペレット化する方法が一般的である。ストランドをカッターで切断する際、その衝撃によって該ポリアミドペレットの端部が破砕し粉体が発生する。カッターの損耗状態によってその粉体量は変動し、一般に損耗が大きいほど粉体発生量も多くなる。
【0005】
一方、固相重合工程においても、粉体は発生する。連続式固相重合では、加熱した乾燥窒素を流通させながら結晶化装置、固相重合装置および冷却装置等の一連の設備を用いて実施される。ホッパー形状の装置を用いる場合、固相重合工程中にさほど粉体の発生は無いが、内部にパドルもしくは攪拌翼を備えた横型の装置を用いる場合、顕著な粉体の発生が認められる。また、回分式固相重合では、回転ドラム等の回分式加熱装置を用いて不活性ガス中もしくは減圧下で実施され、ペレットが攪拌されるために固相重合中に粉体の発生が認められる。
【0006】
粉体は溶融時の剪断を受けにくいため、大量にポリアミドペレットに付着した場合、供給不良等による射出成形機や押出機の不調、得られる成形加工品の外観不良や強度低下等の原因となることがある。また、固相重合工程において、上記粉体がペレットに大量に付着していると、ペレット同士の融着やペレットの装置内壁への融着原因となることがある。
【0007】
工業的にポリアミドを製造する場合、空気、乾燥空気、窒素等の気体を用いてペレット状のポリアミドが搬送される。このとき、配管の内面とポリアミドペレットが接触すると、ポリアミドが削られ配管内面が壁紙の様にコーティングされる現象が多々認められる。この現象は、ポリアミドが高速で搬送されるとき、配管に急な曲げ部位が存在するとき、ポリアミドのガラス転移点以上の温度になるとき、など特に顕著に現れる。この壁紙が剥離したものはフロスと呼ばれ、製品のポリアミドより高分子量であり高い融点を示す傾向にあり、製品ペレットに混入したとき未溶融となりやすい。このため、粉体と同様に成形加工品の外観不良や強度低下等を引き起こす。
【0008】
造粒工程においてストランド表面が完全に固化する前に、複数のストランドが接触した状態で、カッターで切断されると、ペレットが複数個連なったいわゆる多連ペレットが発生する。また、ストランドの径が変動すると、ペレットが細くなったり、太くなったり変動し、更には切断されない長いペレットあるいは潰れた形状のペレットが発生する。この様な通常製品としてコントロールされていない形状のペレットは異形ペレットと呼ばれ、性状は製品であるポリアミドと同一であるが、押出機あるいは射出成型機等を用いて溶融成形加工する際、可塑化される部位が異なったり供給部位で閉塞したりして様々な不都合を招く。また、この様な異形ペレットを固相重合した場合、ペレットへの伝熱状態あるいはペレット内部からの脱水状態が、通常製品としてコントロールされたペレットと異なるため、重合度のバラツキを招く。
【0009】
溶融重縮合の終了したポリアミドからストランドを形成する際、ダイと呼ばれる複数の吐出口を有する金属プレートが用いられる。当然ダイはポリアミドの融点以上に加温され、付着したポリアミドが酸化および熱劣化し、黄変ペレットおよびコゲ等の製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物となる。また、溶融重合設備に滞留部分があるとポリアミドが過度の熱履歴を受け、黄変ペレットとなる。固相重合工程においても、連続式、回分式を問わず、固相重合設備内に滞留部分があるとポリアミドが過度の熱履歴を受け、黄変ペレットとなる。この様な黄変ペレットおよびコゲ等の製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物は熱可塑性が消失し、得られる成形加工品の著しい外観不良や強度低下等を引き起こす。
【0010】
以上の様に、粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレットは、製造過程において生成し製品ペレットに混入するものである。これらはいずれもポリアミドに由来するが、製品ペレットに混入した際には成形加工品の外観を損ね、成形加工条件の変更を強いるため、製造工程での生成を極力抑制しかつ製品に混入した際は取り除かれなければならない。これら異物を取り除く目的で、様々な選別・分離機が市販されており、風選により分離・除去する選別機、形状を基に分離・除去する選別機等の例が文献に紹介されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照。)。
【0011】
しかしながら、ポリアミドは熱劣化しやすく他のポリマーに比べ、ポリアミド劣化物の発生が特に多い。このため、黄変ペレットおよびコゲ等の製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を光学的に識別し、分離・除去する選別機(以下色彩選別機ということがある)が特に重要であり、そのパフォーマンスを最大限発揮する必要がある。この様な光学的選別機は光学部の調整が非常に重要であり、光学部は光を照射する光源ランプと、対象物の色相を検出する光センサーから成る。光センサーの検出感度を上げ過ぎた場合、ペレットの影、ペレットの角等を着色部位と感知し、誤作動を起こし、製品ペレットも除去されてしまう。また、検出感度を下げ過ぎた場合、黄変ペレットおよびコゲ等の製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を充分に分離除去できない。また、光源ランプは使用時間に伴い劣化するため、所定時間毎に光センサーの検出感度を調整しなければならない。以上の様に色彩選別機は、保守管理に非常に手間がかかる。
【0012】
色彩選別機に製品ペレットとともに粉体もしくはフロスが供給された場合、粉体もしくはフロスは帯電しており、さらに選別機内で舞い上がるため、光源ランプや光センサーに直ぐに付着するため、充分な選別性能は全く期待できない。このため、光学部を透明なカバーで覆い、ワイパーで粉体もしくはフロスを払拭する事も実用化されているが、ワイパーの駆動そのものを阻害することが多々あり充分な対策とは言い難い。また、異形ペレットが製品ペレットとともに供給された場合、ペレットの影、ペレットの角等を着色部位と感知したり、ペレットの流れを阻害したりしてしまうため、色彩選別機の性能を充分に発揮できない。
【0013】
【非特許文献1】
「粉体機器トラブル改善事例集」、工場調査会、2000年8月、P129〜148
【非特許文献2】
「M&E」、工業調査会、1994年11月号、P88〜P99
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミド製品中に混入した粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレット等の異物を効率的に分離・除去するポリアミドの精製方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドから、粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレット等の異物を、効率的に分離・除去する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち本発明は、溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドを精製するに際し、該ポリアミドのペレットから、
(1)風選により分離・除去する選別機を用いて、粉体およびフロスを除き、
(2)その後、光学的に識別し分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を除くことにより、
製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法に関する。
【0017】
また本発明は、溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドを精製するに際し、該ポリアミドのペレットから、
(1)形状を基に除去する選別機、および風選により分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの形状と異なる異形ペレット、粉体およびフロスを除き、
(2)その後、光学的に識別し分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を除くことにより、
製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、製品ペレットとは、変色したポリアミド劣化物を内在しない定型サイズのペレットであり、かつ粉体およびフロスを含まない単独もしくは複数個のペレットを指す。
【0019】
本発明において、粉体およびフロスを、風選により分離・除去する際の好適な選別機(以下除塵機ということがある)として、気体と固体を分離するいわゆるサイクロン式分離機が挙げられる。気体と共に重量の軽い固体を、重量の重い固体から分離する様に、サイクロン式分離機を設計および調整することで、粉体およびフロスの製品ペレットからの分離が達成される。また、サイクロン式分離機に固体と共に供給される気体の他に、二次気体をサイクロン下部から供給することで、効率的に粉体およびフロスを分離するフロス分離機も利用できる。また、粉体および固体は耐電しているため、電気的に中和した後、自重落下させながら二次気体で風選を行う分離機もあり、特に好適に利用できる。
【0020】
製品ペレットの形状と異なる異形ペレットを、形状を基に除去する選別機(以下サイズ選別機と言うことがある)として、パンチングメタルもしくはメッシュスクリーンの様な篩を用いた選別機が好適に利用できる。この種の選別機として穴開きサイズが上から下にかけて小さくなる最低2枚の穴開きサイズの異なる円型のメッシュスクリーンが具備された円筒型の選別機がある。振動を与えながら一番上のメッシュスクリーンに選別対象となるペレットが供給され、製品ペレットより大きな異形ペレットは一番上のメッシュスクリーン上に捕捉され、一番下のメッシュスクリーン上に製品ペレットが捕捉され、製品ペレットより小さな異形ペレットは一番下のメッシュスクリーンを通過し、それぞれのサイズ毎に排出される。また、パンチングメタルを用いた選別機として、ラッパ状の選別機もある。これは穴開きサイズが上流から下流にかけて大きくなる最低3種類の穴開きサイズの異なるゾーンを有し、回転しているラッパ状の選別機の上流に選別対象となるペレットを供給する。最上流の穴開きサイズの最も小さなゾーンで、製品ペレットより小さな異形ペレットが分離され、中流の穴開きサイズが中間のゾーンで、製品ペレットが分離され、最後に最下流の穴開きサイズの最も大きなゾーンで、製品ペレットより大きな異形ペレットが分離される。
【0021】
篩を用いたサイズ選別機の他に、U字型のガイドを複数横方向に並べ、更に少しずつずらしながら幾重にも積み上げた面に、上方から振動させながら選別対象となるペレットを上方より供給する選別機もある。これは、製品ペレットのみU字型のガイドに乗って分離され、形状が製品ペレットより大きなものが、U字型のガイドを積み上げた面に沿って下方へ排出される。この選別機では、製品ペレットより小さな異形ペレットが分離できないが、ペレットの供給部もしくは排出部に製品ペレットより小さな穴開きサイズを有するパンチングメタルを具備することで、小さな異形ペレットも分離可能である。
【0022】
色彩選別機として、選別対象となるペレットをベルト上、もしくはスベリ台上に供給しペレットが重ならない様に分散させ移送しながら、光を照射する光源ランプと、対象物の色相を検出する光センサーから成る「光学部」に供給し、その後、光センサーが識別した着色物にエアーノズルから圧縮空気を吹きつけ、製品ペレットと変色したポリアミド劣化物を分離する選別機が好適に利用できる。
【0023】
この様な色彩選別機に製品ペレットとともに粉体およびフロスが供給された場合、粉体およびフロスは帯電しており、さらに選別機内で舞い上がるため、光源ランプや光センサーに直ぐに付着するため、充分な選別性能は全く期待できない。このため色彩選別機に供給されるペレットから、予め除塵機を用いて製品ペレットから除いておく事が好ましい。色彩選別機に供給されるペレット中の粉体およびフロスの濃度は、100ppm以下である事が好ましく、50ppm以下がより好ましい。
【0024】
また、異形ペレットが製品ペレットとともに供給された場合、ペレットの影、ペレットの角等を着色部位と感知したり、ペレットの流れを阻害したりしてしまうため、光学的選別機の性能を充分に発揮できない。このため色彩選別機に供給されるペレットから、予め製品ペレットの形状と異なる異形ペレットを、サイズ選別機を用いて製品ペレットから除いておく事が好ましい。色彩選別機に供給されるペレット中の異形ペレットの濃度は、1wt%以下である事が好ましく、0.5wt%以下がより好ましい。
【0025】
以上の様に色彩選別機に供給されるペレットは、予めサイズ選別機、および除塵機で処理されることが望ましいが、サイズ選別機、および除塵機の設置順序については特に限定されない。また、金属分離機等、製品ペレットの品質を維持する上で必要と判断される他の選別機も適時設置可能であり、設置順序および位置は特に限定されない。しかし、サイズ選別機では、粉体が形状の小さいものとしてある程度分離除去でき、長片ペレット等の異形ペレットは除塵機の閉塞等を招く恐れがある等の理由から、除塵機の前にサイズ選別機を設置することが運用上効率的である。また、金属分離機等、他の選別機を除塵機と色彩選別機の間に設置する場合、粉体およびフロスの発生源となることが懸念されるとき、他の選別機は除塵機の前に設置することが望ましい。
【0026】
本発明は、ジアミン成分とジカルボン酸成分からなるポリアミドに対して効果が大きい。中でもキシリレンジアミンもしくはビス(アミノメチル)シクロヘキサンとジカルボン酸から得られるポリアミドは、高弾性率でありストランドの硬度が高いために、カッターが比較的損耗しやすく、その結果粉体が発生しやすい傾向にある。このため、特にこの様なポリアミドにおいて本発明の効果が顕著に認められる。キシリレンジアミンはメタ、パラおよびオルソキシリレンジアミンが例示でき、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは1,2−、1,3−および1,4―ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが例示できる。得られるポリアミドの実用的な物性から考えて、キシリレンジアミンを主体とする場合、キシリレンジアミンを50モル%以上含むジアミンの使用が好ましく、より好ましくは70モル%以上である。また、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを主体とする場合、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを50モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
キシリレンジアミンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミン成分としてはテトラメチレンジアミン,ペンタメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,オクタメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,パラフェニレンジアミン等が挙げられ適時選択される。
【0027】
ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、琥珀酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合しても使用可能である。得られるポリアミドの実用的な物性から考えて、ジカルボン酸成分の50モル%以上がアジピン酸であることが特に好ましい。
また、ジアミンおよびジカルボン酸以外のポリアミド構成成分としては、カプロラクタム,バレロラクタム,ラウロラクタム,ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸,12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸を例示することができる。
【0028】
また、本発明のポリアミドの精製方法はナノコンポジットあるいは酸素捕捉性材料に用いられるポリアミドの精製方法としても、好適に利用される。
【0029】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお本発明における評価のための測定は以下の方法により、標準的な製品ペレットサイズは、径3mm、高さ3mmの円柱状ペレットとした。
(イ)粉体およびフロスの濃度
測定するポリアミドペレット1kgを5リットルの容器に入れ水2リットルを加え攪拌し、その後上澄み液を捕集し更に目開き1mmの篩いで濾過し、濾液を上澄み液とともに捕集した。この操作を3回繰り返した後、捕集された上澄み液および濾液約6リットルを更に重量が既知のグラスロートで吸引濾過した。グラスロートごと捕集物を120℃で6時間真空乾燥した後、重量を秤量し、測定に供したポリアミドペレットに対する比率を求めた。
(ロ)異形ペレットの濃度
測定するポリアミドペレット1kgから、2連以上の多連ペレット、高さもしくは径が5mm以上の長大ペレット、および高さもしくは径が1.5mm以下の短小ペレットを目視にて選別した後、重量を秤量し、測定に供したポリアミドペレットに対する比率を求めた。
(ハ)ポリアミド劣化物の濃度
測定するポリアミドペレット100kgから、黄変ペレットおよびコゲ等の製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物、およびそれが含まれるペレットを目視にて選別した後、重量を秤量し、測定に供したポリアミドペレットに対する比率を求めた。
【0030】
<ポリアミドの溶融重合>
回分式反応槽を用いて、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からポリメタキシリレンアジパミド(以下ナイロンMXD6という)を溶融重合し、反応槽から溶融状態のストランドとして取り出し、水で冷却固化した後、カッターで切断してペレット状のナイロンMXD6を得た。得られたペレット中の粉体およびフロスは450ppmであり、異形ペレットは0.35wt%であり、ポリアミド劣化物は12ppmであった。
【0031】
実施例1
前記溶融重合により得られたペレットを、粉体およびフロスを風選により分離・除去する選別機(ペレトロン社製、商品名:ディダスターP80、以下除塵機という)に送り、粉体およびフロスを35ppmまで低減した。その後、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を光学的に識別し分離・除去する選別機(安西製作所製、商品名:BLD−1200S、以下色彩選別機という)に送り、ペレットを精製した。処理量はいずれの選別機においても2t/hrであり、100tを処理した。精製後のペレット中のポリアミド劣化物およびそれが含まれるペレットは0.05ppm未満であり、色彩選別機によりポリアミド劣化物とともに除去された製品ペレットは、0.44wt%であった。また、色彩選別機の光学部の粉体による汚染は殆ど認められなかった。
【0032】
比較例1
前記溶融重合により得られたペレットを、色彩選別機に送り、ペレットを精製した。処理量は2t/hrであり、100tを処理した。精製後のペレット中のポリアミド劣化物およびそれが含まれるペレットは1.5ppmであり、色彩選別機によりポリアミド劣化物とともに除去された製品ペレットは、0.69wt%であった。色彩選別機の光学部は粉体により著しく汚染されており、誤作動の原因となったと推測される。
【0033】
実施例2
前記溶融重合により得られたペレットを、製品ペレットの形状と異なる異形ペレットを形状を基に除去する選別機(メルツ社製、商品名:ULA850−2000、以下サイズ選別機という)に送り、異形ペレットを0.09wt%まで低減した。その後、除塵機に送り粉体およびフロスを35ppmまで低減した上で、色彩選別機に送り、ペレットを精製した。処理量はいずれの選別機においても2t/hrであり、100tを処理した。精製後のペレット中のポリアミド劣化物およびそれが含まれるペレットは0.05ppm未満であり、色彩選別機によりポリアミド劣化物とともに除去された製品ペレットは、0.38wt%であった。また、色彩選別機の光学部の粉体による汚染は殆ど認められなかった。
【0034】
比較例2
前記溶融重合により得られたペレットを、サイズ選別機に送り、異形ペレットを0.09wt%まで低減した。その後、色彩選別機に送り、ペレットを精製した。処理量はいずれの選別機においても2t/hrであり、100tを処理した。精製後のペレット中のポリアミド劣化物およびそれが含まれるペレットは1.4ppmであり、色彩選別機によりポリアミド劣化物とともに除去された製品ペレットは、0.65wt%であった。色彩選別機の光学部は粉体により著しく汚染されており、誤作動の原因となったと推測される。
【0035】
上記の様に色彩選別機でポリアミドペレットを精製するに先立ち、予め除塵機を用いて粉体およびフロスを低減しておくことにより、色彩選別機によるポリアミド劣化物の除去性能が向上すると共に、色彩選別機によりポリアミド劣化物およびそれが含まれるペレットとともに除去される製品ペレット量も低減され、精製後の製品の収率が向上する。この様に本発明により、ペレット状のポリアミドから、粉体、フロス、ポリアミド劣化物、および異形ペレット等の異物を、効率的に分離・除去することが可能となる。
【0036】
【発明の効果】
本発明に係るポリアミドの精製方法によって以下の効果が得られる。
(イ)粉体およびフロスの選別機、ポリアミド劣化物の選別機、および異形ペレットの選別機を用いたポリアミドペレットの効率的な精製が可能となる。
(ロ)選別機の中で、特にポリアミド劣化物の選別機における、選別能力が向上する。
(ハ)選別機の中で、特にポリアミド劣化物の選別機における、製品ペレットのロスが低減する。
等、本発明によって得られる効果は非常に大きい。

Claims (3)

  1. 溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドを精製するに際し、該ポリアミドのペレットから、
    (1)風選により分離・除去する選別機を用いて、粉体およびフロスを除き、
    (2)その後、光学的に識別し分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を除くことにより、
    製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法。
  2. 溶融重合もしくは固相重合により得られたペレット状のポリアミドを精製するに際し、該ポリアミドのペレットから、
    (1)形状を基に除去する選別機、および風選により分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの形状と異なる異形ペレット、粉体およびフロスを除き、
    (2)その後、光学的に識別し分離・除去する選別機を用いて、製品ペレットの色相と異なる変色したポリアミド劣化物を除くことにより、
    製品ペレットを得ることを特徴とするポリアミドの精製方法。
  3. 光学的に識別し分離・除去する選別機に供給されるペレット中の粉体およびフロスの濃度が、100ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミドの精製方法。
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