JP2004231578A - アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤 - Google Patents

アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤 Download PDF

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Abstract

【課題】新規皮膚バリアー機能回復促進剤の提供。
【解決手段】本発明は、アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤を提供する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤に関する。さらには、本発明はアニオン性高分子塩を含んで成る包帯に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、接触性皮膚炎等に見られる肌荒れ症状においては、皮膚からの水分の消失が、健常な皮膚に比べて盛んであることが知られている。このいわゆる経皮水分蒸散量(TEWL)の増加には、皮膚内において水分の保持やバリアーとしての機能を担っていると考えられる成分の減少が関与しているものと考えられてきた。
【0003】
従来、皮膚疾患や肌荒れに対して改善・予防効果を有する有効成分として、水分保持機能や皮膚バリアー機能を担う皮膚内成分を皮膚に補充するという観点から、NMF(Natural Moisturizing Factor)としてのアミノ酸や、角質細胞間脂質としての脂質類、その他ヒアルロン酸等のムコ多糖あるいはこれらの類似物質が、安全性も高いことから、化粧料や皮膚外用剤に配合されている。
【0004】
また、最近では、皮膚バリアー機能を担う皮膚内成分の生合成を活性化させるような特定の物質が、肌荒れに対して改善効果を有するという報告もなされている(特開平9−2952号公報)。
【0005】
肌荒れ改善・予防効果を有する物質については多くの研究がなされてきたが、皮膚バリアー機能の改善若しくは回復効果を有する物質についての研究は十分ではなく、皮膚バリアー機能に対する改善効果と肌荒れ改善・予防効果との関係は明らかになっていないため、肌荒れ改善・予防効果がある物質が必ずしも皮膚バリアー機能に対する改善効果があるとは限らない。
【0006】
一方、皮膚バリアー機能が低下すると、皮膚の皮膚機能が低下し、皮膚増殖性異常等が起こることが報告されている。特に、高齢者の場合は、低下した皮膚バリアー機能の回復には長い時間がかかり、加齢に伴う皮膚の皮膚機能の低下による皮膚増殖性異常等を防止するために有効な新規の皮膚バリアー機能回復促進剤に開発が要望されていた。
【0007】
表皮におけるカルシウムやマグネシウムイオン等の陽イオン勾配は皮膚バリアーの恒常性維持に関与することで知られる(Lee S.H. et al. J. Clin. Invest (1992) 89:530−538)。また本発明者は以前、皮膚バリアー機能が低い特異的皮膚に負電位を負荷することでその皮膚バリアー機能の向上を促進できることを見出した(特開2002−291909)。詳しくは、電位発生器の負電位側に接続された導体の端に付けられた電極板を皮膚バリアー機能が低い特異的皮膚の処置部位に接触させ、前記特異的皮膚に負電位を負荷し、同時に前記電位発生器の正電位側に接続され、かつ接地された導体の端に設けられた電極板を前記特異的皮膚の処置部位とは別の部位に接触させ、前記別部位を0電位とすることにより、特異的皮膚の皮膚バリアー機能の向上を促進させることができる。このように、皮膚バリアーの機能維持、向上においてイオンや電荷が大きな役割を果たしていることがわかっている。
【0008】
アニオン性高分子及びカチオン性高分子はそれぞれ負及び正電荷を帯びた高分子であり、汚染物質を固定してその拡散を防いだり、ヘドロや汚泥の凝集ために往々に利用されている。かかる電荷を帯びたイオン性高分子は皮膚に適用されることで皮膚の表面電荷に影響を及ぼすものと予測される。
【特許文献1】
特開2002−291909
【特許文献2】
特開2000−290135
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明者はイオン性高分子が皮膚バリアー機能に及ぼす影響を調べ、新たな機構に基づく皮膚バリアー機能回復促進剤の開発が可能であるかを検討した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
その結果、本発明者は、アニオン性高分子塩が皮膚バリアー機能の回復に有効であることを見出した。
【0011】
従って、本発明は、アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤を提供する。
好ましくは、かかるアニオン性高分子塩はカルボキシメチルセルロース、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸及びポリアクリル酸から成る群から選ばれる1又は複数種のアニオン性高分子の塩から成る。より好ましくは、当該アニオン性高分子塩はナトリウム又はカリウム塩である。
前記皮膚バリアー機能回復促進外用剤にはカチオン性高分子塩が更に配合されていてよい。好ましくは、カチオン性高分子塩はアニオン性高分子塩1モルに対し0〜1モルの量で配合されている。好ましい態様において、前記カチオン性高分子塩はキトサン又はポリ(N,N−ジメチルN,N−ジアリルアンモニウムクロリド)である。
別の態様において、本発明は肌改善方法であって、皮膚に上記皮膚バリアー機能回復促進外用剤を塗布して皮膚バリアー機能を回復促進させることを特徴とする方法を提供する。
更なる態様において、前記皮膚バリアー機能回復促進外用剤は包帯の形態であってよい。
本発明は更に、肌改善方法であって、かかる包帯を肌荒れした患部に覆うことで皮膚バリアー機能を回復促進させることを特徴とする方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、アニオン性高分子塩を皮膚に塗付すると、皮膚バリアー機能の回復促進が図れるという驚くべき発見に基づくものである。
【0013】
本発明でいうアニオン性高分子とは例えば−COOM又は−SOM(式中、Mはカチオン、例えばナトリウム、カリウムイオン等である)のアニオン基を有する水溶性高分子をいい、水中で解離して負の電荷を帯びる性質を有する。その例にはカルボキシメチルセルロースのようなアニオン性セルロース誘導体;ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸;アルギン酸、ペクチン、アラビアゴム、寒天、カラゲニン、フコイジン、ラミナリンといった植物性酸性多糖類;ポリアクリル酸等アクリル酸系ポリマーが挙げられ、更には−COOMもしくは−SOM基を有するその他の高分子、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン等であってもよい。当該アニオン性高分子量の分子量は特に限定されないが、分子量が大きいほど皮膚浸透性が低く、その結果生体内に異物として取り込まれにくく有利であると考えられる。従って、当該分子量は約2,000以上であるのが好ましく、より好ましくは約5,000以上、更に好ましくは約10,000以上である。また、当該分子量の上限値はないが、高分子の製造、入手の観点から、約5,000,000以下程度、好ましくは約2,500,000以下、より好ましくは約1,000,000以下程度が有利であろう。
【0014】
本発明でいうアニオン性高分子の塩とは、上記高分子とカチオン、例えばアルカリ金属イオン、例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウムイオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンもしくはテトラアルキルアンモニウムイオンとの塩を意味する。
【0015】
好ましくは、本発明に係るアニオン性高分子塩におけるカチオンはナトリウムやカリウムイオンのような拡散係数が相対的に大きいカチオンが好ましい。特に理論に拘束されるつもりはないが、本発明に係るアニオン性高分子塩におけるカチオンは拡散係数が相対的に大きいものほど拡散速度が速く、その結果当該アニオン性高分子塩が皮膚表面上に電荷二重層を形成することができるため、好ましいと考えられる。
【0016】
従って、本発明において特に好ましいアニオン性高分子塩は、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸又はポリアクリル酸のナトリウム塩又はカリウム塩、特にナトリウム塩である。
【0017】
本発明に係る皮膚バリアー機能回復促進剤はアニオン性高分子塩に加え、その皮膚バリアー機能回復促進効果を損なわない限りにおいて、カチオン性高分子や非イオン性高分子も含んでよい。アニオン性高分子塩を主体とする本発明に係る皮膚バリアー機能回復促進剤にカチオン性高分子を配合すると直ちに複合体を形成して沈殿物が生じてしまうおそれがあるが、その配合比に依存して、電荷の中和された疎水的領域と、電荷の中和されておらず、正電荷をもった領域及び負電荷をもった領域の3つの相に分かれ、アニオン性高分子塩とカチオン性高分子の両者が均一に溶解した溶液が形成されることが可能である。好ましくは、本発明において、配合するカチオン性高分子の量は電解質官能基のモル数に換算してアニオン性高分子塩の1モルに対し、最大で2モル、好ましくは最大で1モル、より好ましくは最大で0.5モルの量とする。
【0018】
本発明において使用可能なカチオン性高分子の例には、キトサン、ポリ(N,N−ジメチルN,N−ジアリルアンモニウムクロリド)等が挙げられる。また、本発明において使用可能な非イオン性高分子の例にはポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0019】
皮膚バリアー機能回復促進効果試験
本発明において、皮膚バリアー機能回復促進効果は様々な方法で評価することができ、例えば、哺乳動物(例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ等)の皮膚にテープストリッピングを施すことによって破壊された皮膚バリアー機能がもとの状態へ回復していく過程を経皮水分蒸散量(TEWL)を指標として評価することにより、定量的又は定性的に測定することができる。かかる測定は、例えば下記の通りにして実施することができる。
【0020】
1.水分蒸散量測定装置によりヘアレスマウス背部付近の経皮水分蒸散量(TEWL)を測定する。この際の値をTEWLの回復率100%とする。
2.皮膚のバリアーを、セロファンテープ等を使用し、ヘアレスマウスの表皮角層を剥がすことにより破壊する。このときTEWLの値が約800〜900となるまでこの作業を繰り返すのが好ましい。角層を剥がした後の測定値から角層を剥がす前の測定値を差し引いた値を、最もダメージの深い状態、即ち回復率0%とする。
3.試験試料を適宜の濃度(例えば1mM)で適量(例えば100μl)にて適当な基材、例えばプラスチックラップの上に載せ、哺乳動物の背部に貼付し、適当な時間(例えば5分)経過後、それを剥がす。
4.適当な時間(例えば0、2、4、6時間)経過後、水分蒸散量測定装置によりTEWLを測定する。角層除去時と同様、各時間の測定値から角層除去前のTEWL値を差し引き、回復率を算出する。
即ち、回復率は下記の式に従いもとめることができる:
【数1】
Figure 2004231578
【0021】
本発明において、「皮膚バリアー機能の回復を促進する」とは、皮膚のテープストリッピング直後の経皮水分蒸散量(TEWL)の値を0%、テープストリッピング前の値を100%として、各測定時間におけるTEWLの値が、コントロールと比較した場合に明らかに有意差が認められ、TEWL回復率を促進させる効果を有することを意味し、Andrewらの方法(J Invest Dermatol,86;598,1986)に従って、4%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液をしみ込ませたCotton ballにより皮膚を処理して判定を行ういわゆる肌荒れ改善防止効果とは異なる。
【0022】
皮膚厚み測定試験
皮膚バリアー機能回復促進効果は皮膚の厚みの測定に基づき行なうこともできる。皮膚に乾燥刺激を与えると皮膚組織が損傷して皮膚バリアー機能が低下し、その結果表皮細胞の増殖異常により皮膚の厚みが増大する。従って、皮膚のバリアー機能の低下は皮膚の厚みの組織学的観察により測定することができる。かかる組織学的観察は、例えば次のようにして実施してよい。哺乳動物、好ましくはヘアレスマウスを乾燥条件、例えば室温、湿度10%以下の環境にて前もって飼育し、TEWLが所望の程度、例えば2.5〜3.5mg/cm/h程度になるまでアセトンを用いて皮膚のバリアーを破壊する。次に、被験物質をその処置皮膚に滴下し、しかる後に上記環境下にて適当な時間飼育して乾燥刺激を与えた後、処置した部分の皮膚を採取し、そしてその皮膚試料を染色等して顕微鏡観察により表皮の厚みを計測する。
【0023】
本発明に係るアニオン性高分子塩含有製剤は皮膚バリアー機能を回復促進させることで、乾燥刺激により惹起される表皮増殖異常を有意に抑制し、さらには皮膚の厚みを減少させることさえもできる。
【0024】
本発明のアニオン性高分子塩含有製剤は、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等の化粧料、医薬品、医薬部外品に配合されて、好ましくは皮膚外用剤として皮膚に適用することが出来る。その配合量は特に制限がないが、これらの基剤全量に基づき0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜1重量%程度であろう。
また、当該アニオン性高分子塩含有製剤は皮膚バリアー機能の低下した肌のかかるバリアー機能回復促進のための包帯の形態であってもよい。かかる包帯は織物、不織布、編物の形態をとり得る。
【0025】
【実施例】
皮膚バリアー機能回復促進効果試験方法
以降の各実験において、皮膚バリアー機能回復促進効果は、ヘアレスマウス(Type HR−1, HOSHINO, Japan)の皮膚にテープストリッピングを施すことによって破壊された皮膚バリアー機能がもとの状態へ回復していく過程を経皮水分蒸散量(TEWL)を指標とし、以下の通り評価した。
【0026】
1.水分蒸散量測定装置MEECO(Meeco社製, Warrington, PA, USA)によりヘアレスマウス背部付近の経皮水分蒸散量(TEWL)を測定する。この際の値をTEWLの回復率100%とする。
2.皮膚のバリアーを、セロファンテープを使用し、ヘアレスマウスの表皮角層を剥がすことにより破壊する。このときTEWLの値が約800〜900となるまでこの作業を繰り返す。角層を剥がした後の測定値から角層を剥がす前の測定値を差し引いた値を、最もダメージの深い状態、即ち回復率0%とする。
3.試験試料を100μlにてプラスチックラップの上に載せ、背部に貼付し、5分後、それを剥がす。
4.0、2、4、6又は0、1、3、6時間経過後、MEECOによりTEWLを測定する。角層除去時と同様、各時間の測定値から角層除去前のTEWL値を差し引き、回復率をもとめる。
即ち、回復率は下記の式に従い算出する:
【数2】
Figure 2004231578
【0027】
実験1
皮膚バリアー機能回復効果を有する高分子をスクリーニングした。
下記の高分子(1重量%水溶液)について上記試験方法に記載の通りにヘアレスマウスの表皮に塗布し、TEWL試験を行い、皮膚バリアー機能回復促進効果の有無を検討した。その結果を図1に示す。
非イオン性高分子
・ポリビニルアルコール(和光純薬工業(株))
アニオン性高分子
・カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)(和光純薬工業(株))
・ヘパリンナトリウム塩(HP)(関東化学(株))
・コンドロイチン硫酸ナトリウム塩(CS)(和光純薬工業(株))
カチオン性高分子
・キトサン(KT)(和光純薬工業(株))
・ポリ(N,N−ジメチルN,N−ジアリルアンモニウムクロリド)(DDA)(和光純薬工業(株))
対照として、水のみを塗布した試験の結果も示す(CTR)。
【0028】
コントロールの結果との比較により明らかな通り、アニオン性高分子塩の塗布は皮膚バリアーの機能回復を促進した(CMC, HP, CS)。それに反し、カチオン性高分子塩の塗付は皮膚バリアーの機能回復を有意に遅らせた。従って、アニオン性高分子塩は皮膚バリアー機能の回復促進に有利であるのに対し、カチオン性高分子塩は皮膚バリアー機能の回復を阻害することが明らかとなった。尚、非イオン性高分子は皮膚バリアー機能に対し有意な作用を有しなかった。
【0029】
実験2
アニオン性高分子塩におけるカチオンの皮膚バリアー機能回復に対する影響を検討した。カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)0.1重量%水溶液、CMCに塩化マグネシウム10mMを添加してナトリウムイオンをマグネシウムイオンと交換したもの(CMC+MgCl)の1重量%水溶液を各々上記試験方法に記載の通りにしてヘアレスマウスの表皮に塗布し、TEWL試験を行った。その結果を図2に示す。対照として、水のみを塗布した試験(CTR)及び塩化マグネシウムのみ(10mM)を塗布した試験(MgCl)の結果も示す。尚、マグネシウムイオンは皮膚バリアー機能の回復を促進することで知られている(Denda M et al, Arch. Dermatol. Res. 291: 560−563, 1999)。
【0030】
コントロールの結果との比較により明らかなとおり、CMCや塩化マグネシウムは皮膚バリアー機能の回復を有意に促進するが、CMCのナトリウムイオンをマグネシウムイオンと交換すると(CMC+MgCl)CMCの皮膚バリアー機能回復促進効果が消失してしまうことがわかった。このことは驚くべき事実であり、何故なら上述の通りマグネシウムイオンは単独では皮膚バリアー機能の回復を促進する効果を有するからである。何ら理論に拘束されることを所望するわけでもないが、本発明者はナトリウムイオンとマグネシウムイオンのこの効果の差はそれらの拡散係数の相違に基づくものと考える。即ち、拡散係数が大きいほどアニオン性高分子による電気二重層の形成が起き、その結果表皮上層が負に帯電し、皮膚バリアー機能回復促進効果が有効に発揮されるものと推定する。
【0031】
実験3
ナトリムイオンをマグネシウムイオンではなく、カルシウムイオンと交換し、皮膚バリアー機能回復促進効果に対する影響を調べた。スチレンを主鎖とする陽イオン交換樹脂ダイヤオンUBK550(Na形)及びダイヤオンUBK555(Ca形)の水懸濁物(100mg/100μl)を各々上記試験方法に記載の通りにしてヘアレスマウスの表皮に塗布し、TEWL試験を行った。その結果を図3に示す。対照として、水のみを塗布した試験(CTR)及びスチレンを主鎖とする陰イオン交換樹脂ダイヤオンSA10A(Cl形)(100mg/100μl)を塗布した試験(Cl)の結果も示す。
尚、ダイヤオンUBK550、UBK555及びSA10Aの各々の単位構造は以下の通りである:
【化1】
Figure 2004231578
実験2の結果と同様に、ダイヤオンUBK550(Na形)は皮膚バリアー機能回復促進効果を有するが、ダイヤオンUBK555(Ca形)は皮膚バリアー機能回復促進効果を有さなかった。即ち、アニオン性高分子塩のナトリウムイオンをカルシウムイオンにするとアニオン性高分子の皮膚バリアー機能回復促進効果が抑制されることが明らかとなった。尚、カチオン性高分子塩であるSA10Aは予想通り皮膚バリアー機能の回復を阻害した。
【0032】
実験4
アニオン性高分子塩にカチオン性高分子塩を配合し、皮膚バリアー機能回復促進効果にどのような影響が及ぼされるかを検討した。
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)にキトサン(KT)をCMC:KT=1:0、2:1、1:1、1:2、0:1の重量比で配合した水溶液を各々上記試験方法に記載の通りにしてヘアレスマウスの表皮に高分子総重量0.1%の水溶液として塗布し、TEWL試験を行った。その結果を図4に示す。
その結果から明らかな通り、キトサンの配合量を増やしていくとカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の皮膚バリアー機能回復促進効果が抑制された。しかしながら興味深いことに、CMC:KT=1:1の場合でも皮膚バリアー機能回復はコントロールよりも有意に高かった。これは、かかる配合比では電荷の中和された疎水的領域、カチオン性高分子を基礎とする正電荷をもった領域及びアニオン性高分子を基礎とする負電荷をもった領域の3つの相が形成され、かかるアニオン性高分子を基礎とする負電荷をもった領域に基づく皮膚バリアー機能回復促進効果が有効に発揮されるからであると考えられる。
【0033】
実験5
アニオン性高分子含有製剤による皮膚バリアー機能の回復促進を組織学的観察により確認した。
詳しくは、ヘアレスマウスを温度22〜25℃、湿度10%以下の環境にて前もって飼育し、TEWLが2.5〜3.5mg/cm/hになるまでアセトンを用いてヘアレスマウス背部皮膚のバリアーを破壊し、次いでカルボキシセルロースのナトリウム塩の1重量%水溶液を200μl皮膚に滴下し、しかる後に上記環境下にて48時間飼育して乾燥刺激を与えた後、処置した部分の皮膚を採取した。4%のパラフォルムアルデヒドで固定後、パラフィン包埋し、4μmの切片にし、ヘマトキシリン−エオシン染色し、顕微鏡観察した。その結果を図5(B)に示す。コントロールとして、アセトン処理の後、水のみを塗布した実験も行った(A)。別に、カルボキシセルロースのナトリウム塩2重量部に対しカチオン性高分子キトサン1重量部を配合した高分子総重量1重量%の水溶液を200μl皮膚に滴下し、同様にしてその皮膚を顕微鏡観察した。その結果を図5(C)に示す。
【0034】
図から明らかなとおり、アセトン処理により増殖異常を起こした表皮が観察され、そしてその増殖異常がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の塗付により正常状態へと回復することがわかる。従って、アニオン性高分子塩が皮膚バリアー機能の回復促進に有効であることが証明された。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩にカチオン性高分子キトサンを配合した場合であっても、その配合量が適量であれば皮膚バリアー機能の回復が促進されることが証明された。
【0035】
【発明の効果】
以上の結果から、アニオン性高分子塩を肌荒れした皮膚に塗布することにより皮膚バリアー機能の回復を促進させることができることが明らかにされた。本願発明に従うと、新規且つ有効な皮膚バリアー機能回復促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】皮膚バリアー機能回復効果を有する高分子のスクリーニング結果。
【図2】アニオン性高分子塩におけるカチオンの皮膚バリアー機能回復に対する影響。
【図3】カルボキシメチルセルロース塩のナトリムイオンをカルシウムイオンと交換したときの皮膚バリアー機能回復促進効果に対する影響。
【図4】アニオン性高分子塩にカチオン性高分子塩を配合したときの皮膚バリアー機能回復促進効果に対する影響。
【図5】アニオン性高分子含有製剤による皮膚バリアー機能の回復促進の組織学的観察。

Claims (9)

  1. アニオン性高分子塩を含有する皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  2. 前記アニオン性高分子塩がカルボキシメチルセルロース、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸及びポリアクリル酸から成る群から選ばれる1又は複数種のアニオン性高分子の塩から成る、請求項1記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  3. 前記アニオン性高分子塩がナトリウム又はカリウム塩である、請求項1又は2記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  4. カチオン性高分子塩が更に配合された、請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  5. 前記カチオン性高分子塩が前記アニオン性高分子塩1モルに対し0〜1モルの量で配合されている、請求項4記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  6. 前記カチオン性高分子塩がキトサン又はポリ(N,N−ジメチルN,N−ジアリルアンモニウムクロリド)である、請求項4又は5記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  7. 肌改善方法であって、皮膚に請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤を適用して皮膚バリアー機能を回復促進させることを特徴とする、方法。
  8. 包帯の形態における、請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚バリアー機能回復促進外用剤。
  9. 肌改善方法であって、皮膚に請求項8項記載の包帯を肌荒れした患部に覆うことで皮膚バリアー機能を回復促進させることを特徴とする、方法。
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WO2015022907A1 (ja) * 2013-08-13 2015-02-19 生化学工業株式会社 カチオン化キトサンを含有する医薬

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