JP2004231457A - 金属モリブデンナノ粒子が内含されている窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 - Google Patents

金属モリブデンナノ粒子が内含されている窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 Download PDF

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義雄 板東
Golberg Dmitri
デミトリー・ゴルバーグ
Shuu Fanfan
ファンファン・シュー
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Abstract

【課題】ナノケーブル等としてその応用が期待される金属モリブデンナノ粒子を内含した窒化ホウ素ナノチューブを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ、酸化ホウ素、酸化銅、酸化モリブデンの混合物を窒素気流中、1800K〜2200Kの温度範囲で約20〜40分間保持する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ナノケーブル、微細回路等として有用な、導電性の金属モリブデンナノ粒子が内含された絶縁性の窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、らせん形状や直径などの違いによって導電性や半導電性などの性質を示すことが知られている。そして、このカーボンナノチューブは一般的に濡れ性がよいので毛管法(capillarity)等の手段によってチューブの内部への他の物質充填が可能である。たとえば、カーボンナノチューブの内部への金属や金属酸化物を充填する方法として、毛管法で充填する方法(たとえば、非特許文献1〜3参照)や化学的方法(wet chemistry methods)によって充填する方法(たとえば、非特許文献4参照)等がすでに知られている。
【0003】
一方、六方晶系の窒化ホウ素ナノチューブは絶縁性であり、化学的にも熱的にもカーボンナノチューブよりも安定であるという優れた特徴を有しているが、この窒化ホウ素ナノチューブは他の物質との濡れ性が悪いため、上記のようなカーボンナノチューブ内部への金属や金属酸化物の充填方法を適用することができない。
【0004】
このため、絶縁性で、化学的、熱的に安定性に優れた窒化ホウ素ナノチューブの特徴を生かし、その内部に導電性物質を内含させることでナノケーブルや微細回路等を実現することが困難であった。
【0005】
【非特許文献】
文献1:P.M.Ajayan, ほか、Nature、361 巻、333 頁、1993年.
文献2:E.Dujardin, ほか、Science 、265 巻、1850頁、1994年.
文献3:N.Demoncy,ほか、Eur.Phys.B4 巻、147 頁、1998年.
文献4:S.C.Tsang,ほか、Nature、372 巻、159 頁、1994年.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、上記のとおりの従来技術の問題点を解消し、絶縁性で、化学的、熱的に安定性に優れているという窒化ホウ素ナノチューブの特徴を生かし、しかも、ナノケーブルや微細回路等としての応用を可能とするために、その内部に導電性物質を内含させた新しい窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するためのものとして、第1には、粒径3ナノメートル以下の金属モリブデン粒子が内含されていることを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブを提供し、第2には、金属モリブデン粒子の粒径が1〜2ナノメートルである上記窒化ホウ素ナノチューブを、また、第3には、ナノチューブの長さが約0.1〜0.4マイクロメートルである上記窒化ホウ素ナノチューブを提供するものである。
【0008】
そして、この出願の発明は、第4には、カーボンナノチューブと酸化ホウ素、酸化銅および酸化モリブデンの混合物を窒素ガスと共に加熱することを特徴とする金属モリブデン粒子が内含されている窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供し、また、第5には、30K/min〜50K/minの昇温速度で加熱した後、1800K〜2200Kの温度範囲で約20〜40分間保持する上記窒化ホウ素ナノチューブの製造方法提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0010】
まずなによりも、この出願の発明では、金属モリブデン粒子が内含されている新規な窒化ホウ素ナノチューブを提供する。この新規な窒化ホウ素ナノチューブにおいては、内含されている金属モリブデン粒子の粒径は3ナノメートル以下である。さらに実際的にはこの粒径は1〜2ナノメートルの範囲のものであることが例示される。金属モリブデン粒子は、ナノチューブの構造内に含有されており、個々の粒子はその複数のものが相互に接触していてもよい。
【0011】
金属モリブデン粒子を内含する窒化ホウ素ナノチューブの長さについては特に制限はないが、たとえば実際的には0.1〜0.4マイクロメートルの範囲のものであることが例示される。
【0012】
このような金属モリブデン粒子を内含した窒化ホウ素ナノチューブについては、この出願の発明によって以下のような新しい製造方法が提供される。
【0013】
すなわち、この方法では、カーボンナノチューブを鋳型にして、このカーボンナノチューブと酸化ホウ素、酸化銅および酸化モリブデンの混合物を窒素ガスと共に加熱する。この場合、搬送ガスとしてアルゴン等の不活性ガスを共存させてもよい。
【0014】
鋳型として用いるカーボンナノチューブ(または多層カーボンナノチューブ)についてはこれまでに知られている各種の方法によって形成することができる。
【0015】
たとえば、ステンレススチール製の研磨したウエハー等からなる基板を700K〜800Kの温度範囲に保ちながら、これにメタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素あるいはエチレン、プロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素等の炭素源ガスを水素ガスや窒素ガス等の搬送ガスとともに送りながらプラズマを照射してするプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などが採用されてよい。
【0016】
そして、このようにして形成したカーボンナノチューブと酸化ホウ素、酸化銅、酸化モリブデンの混合物を窒素気流中で昇温速度を30〜50K/min程度、好ましくは40K/minに保ちながら高周波(21kHz)誘導加熱炉を用いて、300Kから2000Kまで約40〜50分程度かけて加熱昇温する。そして、1800〜2200Kの温度範囲、好ましくは2000Kの温度で20〜40分程度、好ましくは30分間保持し、その後窒素ガスを流しながら、たとえば2時間程度かけて室温まで冷却する。これによって、金属モリブデンナノ粒子が内含された窒化ホウ素ナノチューブを生成させることができる。
【0017】
原料物質の使用割合については、一般的な目安としては、モル比において、酸化ホウ素10、酸化銅2、酸化モリブデン1の割合を基準とし、これら3物質の合計量10モルに対してのカーボンナノチューブが1モルの割合となることを基準として考慮することができる。これらの割合については、各々±20%までの範囲が好ましくは許容される。
【0018】
窒化ホウ素ナノチューブ内への金属モリブデン粒子の充填密度はモリブデンのSurface tension に左右されるものと考えられるが、原料物質の組成割合、加熱温度と時間等の条件の制御によって変化させることができる。
【0019】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0020】
【実施例】
ステンレススチール製の研磨したウエハーを基板として使用し、この基板を 773Kの温度に保持した状態で水素ガスを流量80sccm(Standard cc/min)に、またメタンガスを流量20sccm(Standard cc/min)に制御して送りながら直流プラズマを照射して多層カボンナノチューブを生成させた。
【0021】
このようにして得られたカーボンナノチューブと酸化ホウ素、酸化銅および酸化モリブデンの混合物をモル比として10:2:1の割合として、これら物質に対するカーボンナノチューブの割合がモル比で1/10となるようにグラファイト製のるつぼの中に入れて窒素気流中で高周波(21kHz)誘導加熱炉を用いて、昇温速度を40K/min程度に保ちながら300Kから2000Kまで約45分程度かけて昇温した。
【0022】
そして、約2000Kの温度で30分間保持した後、窒素ガスを流しながら約2時間かけてゆっくり室温まで冷却すると、ウエハーからなる基板表面には、長さが約0.2マイクロメートル程度のチューブ状体が生成された。
【0023】
このチューブ状体を高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)、エネルギー拡散X線回折(EDX)および電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて測定した結果、チューブ状体は六方晶系と菱面体晶系からなる窒化ホウ素で構成されており、該チューブの内部には主として1〜2ナノメートル程度の体心立方晶系の金属モリブデンナノ粒子が内含されていることが確認された。
【0024】
また、金属モリブデンナノ粒子には1ナノメートル以下の小さな粒子が混在していることも確認された。
【0025】
図1は成形された金属モリブデンナノ粒子が内含された窒化ホウ素ナノチューブを高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて観察した像を例示したものである。
【0026】
また、図2(a)は金属モリブデンナノ粒子が内含された窒化ホウ素ナノチューブのエネルギー拡散X線回折(EDX)スペクトルを示したものであるが、この図2(a)からナノ粒子は金属モリブデンのであり、ナノチューブは窒化ホウ素からなっていることがわかる。なお、図2(a)では銅の強いピークとチタンの弱いピークが観察されるが、これらのピークは透過型電子顕微鏡での測定のための銅グリッドとホルダーに由来するものと考えられる。
【0027】
また、図2(b)は金属モリブデンナノ粒子が充填されていない窒化ホウ素ナノチューブだけのエネルギー拡散X線回折(EDX)スペクトルを示したものであるが、当然に金属モリブデンは検出されておらず、ナノチューブの化学組成は窒化ホウ素からなることが確認される。
【0028】
さらに、図2(c)は中空チューブの電子エネルギー損失スペクトルを示したものであるが、188eVと401eVにホウ素のK 端と窒素のK端のピークがそれぞれ示されている。ホウ素と窒素の比がおよそ1:1であることから化学量論的な窒素ホウ素が形成されていることが確認される。
【0029】
【発明の効果】
この出願の発明によって、カーボンナノチューブに酸化ホウ素、酸化銅、酸化モリブデンの混合物を窒素気流中で高温下に反応させるという簡便な方法で、ナノケーブルとしてその応用が期待される導電性の金属モリブデン粒子が内含された絶縁性の窒化ホウ素ナノチューブを安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属モリブデンナノ粒子が内含された窒化ホウ素ナノチューブの高分解能透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図2】(a)金属モリブデンナノ粒子が内含された窒化ホウ素ナノチューブのエネルギー拡散X線回折スペクトルの図である。
(b)窒化ホウ素ナノチューブ単独のエネルギー拡散X線回折スペクトルの図である。
(c)窒化ホウ素ナノチューブの電子エネルギー損失スペクトル図である。

Claims (5)

  1. 粒径3ナノメートル以下の金属モリブデン粒子が内含されていることを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ。
  2. 金属モリブデン粒子の粒径が1〜2ナノメートルであることを特徴とする請求項1の窒化ホウ素ナノチューブ。
  3. ナノチューブの長さが0.1〜0.4マイクロメートルであることを特徴とする請求項1の窒化ホウ素ナノチューブ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかの窒化ホウ素ナノチューブの製造方法であって、カーボンナノチューブと酸化ホウ素、酸化銅および酸化モリブデンの混合物を窒素ガスと共に加熱することを特徴とする金属モリブデンナノ粒子が内含されている窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  5. 30K/min〜50K/minの昇温速度で加熱した後、1800K〜2200Kの温度範囲で約20〜40分間保持することを特徴とする請求項4の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
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