JP2004217462A - コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 - Google Patents
コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004217462A JP2004217462A JP2003006290A JP2003006290A JP2004217462A JP 2004217462 A JP2004217462 A JP 2004217462A JP 2003006290 A JP2003006290 A JP 2003006290A JP 2003006290 A JP2003006290 A JP 2003006290A JP 2004217462 A JP2004217462 A JP 2004217462A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cobalt
- boron nitride
- nanowire
- nanowires
- nitride nanotube
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
Abstract
【課題】マイクロエレクトロニクス部品用材料、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品用材料、触媒等として有用なコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを提供する。
【解決手段】コバルト製のウエハーを基板として用い、窒素ガス、水素ガスおよびメタンガスの混合物のプラズマCVD法により、コバルト含有カーボンナノチューブを基板上に成長させ、次いでこのカーボンナノチューブの粉末と酸化ホウ素を窒素気流中で1700Kから2500Kの温度で置換反応させることにより、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】コバルト製のウエハーを基板として用い、窒素ガス、水素ガスおよびメタンガスの混合物のプラズマCVD法により、コバルト含有カーボンナノチューブを基板上に成長させ、次いでこのカーボンナノチューブの粉末と酸化ホウ素を窒素気流中で1700Kから2500Kの温度で置換反応させることにより、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒等の分野において、耐酸化性被覆材料や、電気的絶縁性被覆材料、反応促進剤等として有用な、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中空構造を有するカーボンナノチューブは、その中空部分に種々の物質を包含できるので、その包含によって、電気的性質、磁気的性質、機械的性質等に関して新たな物性の発現が期待されている。そして実際に、この種々の物質が包含されたカーボンナノチューブが毛管現象や化学的な方法を利用することによって得られている。包含されている物質としては酸化物、遷移金属や希土類元素の炭化物が知られている。
【0003】
一方、窒化ホウ素はカーボンにより構成されるグラファイトと層構造や格子定数が類似している。そして、窒化ホウ素のナノチューブは、カーボンナノチューブと同様に、アーク放電法、高圧レーザー加熱法、プラズマ解離蒸発法等により合成されている(文献1、2および3)。しかし、窒化ホウ素はカーボンと比較して、その表面への金属の濡れ性がよくないので、金属のナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを合成することは困難であった。これまでのところ、窒化ホウ素ナノチューブの先端部に金属粒子が入ることのみが報告されているにすぎない(文献1、4および5)。
【0004】
以上のような困難さにもかかわらず、カーボンナノチューブが導電性であるのに対して、窒化ホウ素ナノチューブは絶縁性で、化学的並びに、熱に対しての安定性に優れているという特徴を有していることから、導電性の金属のナノワイヤーを包含した構造体についてこれを簡便な方法によって実現可能とすることが待ち望まれていた。
【0005】
【文献】
1:A.Loiseau, et al, Phys. Rev. Lett. 76, 4737 (1996)
2:D.Golberg, et al, Appl. Phys. Lett. 69, 2045 (1996)
3:D.Yu, et al, Appl. Phys. Lett. 72, 1966 (1998)
4:N.G.Chopra, et al, Science, 269, 966 (1995)
5:M.Terrones, et al, Chem. Phys. Lett. 259, 568 (1996)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、ナノチューブの先端部から奥深くまで十分に金属のナノワイヤーが充填された新しい窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するための手段として、第1には、窒化ホウ素ナノチューブの先端部から内部域にまでコバルトナノワイヤーが充填されていることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを提供し、第2には、コバルトナノワイヤーはその直径が10nm〜100nmの範囲であることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを、第3には、コバルトナノワイヤーはその長さが1μm以上であることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを、第4には、窒化ホウ素ナノチューブは、その厚さが内部に包含されているコバルトナノワイヤーの直径の20%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを提供する。
【0008】
そしてまた、この出願の発明は、以上のとおりのナノチューブの製造方法として、第5には、コバルトを含有したカーボンナノチューブを酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温置換反応させ、カーボンナノチューブを窒化ホウ素に転換して、コバルトを包含した窒化ホウ素ナノチューブを製造する方法を提供し、第6には、コバルトを基板とし、炭化水素ガスと水素ガス並びに不活性ガスの混合物による650K以上の温度でのプラズマCVDによりコバルト基板上にコバルト含有のカーボンナノチューブを生成させ、次いで、酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を、第7には、コバルト含有のカーボンナノチューブと酸化ホウ素とを1700Kから2500Kの温度で反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ソウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0010】
この出願の発明においては、コバルト含有のカーボンナノチューブを酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させて、上記のとおりのコバルトのナノワイヤーを包含する窒化ホウ素ナノチューブを製造するが、その際のコバルト含有のカーボンナノチューブは反応の出発物質であって、かつ、いわゆる鋳型としての作用を果たすものと考えられる。
【0011】
すなわち、コバルト含有のカーボンナノチューブを出発原料の一つとすることにより、まず、融解した金属コバルトが濡れ性のよいカーボンナノチューブ内に毛管現象で十分に充填され、コバルトのナノワイヤーが包含されたカーボンナノチューブが一旦生成され、その後、ここで生成されたカーボンナノチューブが置換反応により窒化ホウ素に転換されることにより、従来の濡れ性の問題を解決して、コバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブを得ることができると推察される。ここで、鋳型としての、コバルトを含有したカーボンナノチューブは、たとえば好適には、コバルト製のウエハーを基板とし、搬送ガスとしての窒素ガス、炭素源としてのメタンガス並びに水素ガス等の混合物を用いて、基板の温度を650K以上、たとえば773Kに保ち、プラズマCVD法により基板上に成長させて合成することができる。この場合のプラズマCVDにおいては、炭素源としてのガスはメタンガスに限られることなく、エタン、エチレン等の各種の炭化水素ガス、あるいはこれらと一酸化炭素や二酸化炭素ガスとの混合物であってもよい。同様に搬送ガスは、窒素ガスだけでなく、アルゴン、ヘリウム等の各種の不活性ガスであってよい。プラズマCVDのための基板の温度は、好適には750K以上800K程度までとするのが好ましい。炭化水素ガスや水素ガスの濃度については反応温度や搬送ガス流速等を考慮して適宜に定めることができる。
【0012】
そして、プラズマCVD反応により生成したコバルトを含有するカーボンナノチューブの粉末は、酸化ホウ素とともに、たとえばグラファイト製の円筒状るつぼ等の反応容器の中に入れ、高周波誘導加熱炉等の加熱装置中に配置し、窒素ガス雰囲気下、特に窒素ガスを流しながら、好適には、1700Kから2500Kの温度範囲で加熱して置換反応を行わせ、カーボンナノチューブを窒化ホウ素ナノチューブに転換させる。反応終了後には、室温までゆっくりと冷却するのが好ましい。
【0013】
なお、高温置換反応における窒素ガスには、反応を阻害しない許容される範囲でアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを混合してもよい。
【0014】
得られた生成物は透過型電子顕微鏡でその形態を観察することができ、コバルトのナノワイヤーが包含された、すなわち、その先端部から内部域にまでコバルトナノワイヤーが充填されている窒化ホウ素ナノチューブの生成を確認することができる。この出願の発明においては、以上のとおりの方法によって、たとえば、直径が10nm〜100nm、長さが1μm以上のコバルトナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブが提供される。そして、この場合の窒化ホウ素ナノチューブについては、その厚さが、内部に包含されているコバルトナノワイヤーの直径の20%〜100%の範囲であるものが提供される。
【0015】
実際にも、上記の製造方法によって、その具体例として、コバルトのナノワイヤーの長さは長短が混在しており、長いものでは7マイクロメートルを超えているものや、コバルトのナノワイヤーの直径が20から70ナノメートルにわたっているものが例示される。
【0016】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0017】
【実施例】
コバルトのナノワイヤーを包含する窒化ホウ素ナノチューブを製造するために、まず、コバルトを含有したカーボンナノチューブを合成した。
【0018】
すなわち、コバルト製のウエハーを基板として使用し、窒素ガス(純度99.999%)、水素ガス(純度99.999%)およびメタンガス(純度99.9%)の混合物を用いて、コバルト基板の温度を773Kに維持して、プラズマCVD法により、コバルト基板上に、コバルトを含有したカーボンナノチューブを成長させた。引き続き、ここで生成したコバルト含有カーボンナノチューブの粉末と酸化ホウ素をグラファイト製の円筒状のるつぼの中に入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉中に配置して、窒素ガスを流しながら1723Kから1773Kでの30分間の加熱により置換反応を行った。反応終了後、2時間かけて室温まで冷却した。
【0019】
得られた生成物を透過型電子顕微鏡で観察した結果、図1(a)、図1(b)に示したように、短いナノワイヤーおよび長いナノワイヤーを包含していることが確認され、長いナノワイヤーでは、その長さが7マイクロメートルを超えていることが確認された。包含されているナノワイヤーの直径は20ナノメートルから70ナノメートルの範囲にわたっていた。また、外側の窒化ホウ素ナノチューブの厚さは内部に包含されているナノワイヤーの直径に対して40%から90%の範囲の厚さであった。
【0020】
電子エネルギー損失スペクトル分析の結果を図2(a)、図2(b)に示した。図2(a)は窒化ホウ素ナノチューブの外側部分のスペクトルパターンであるが、主にホウ素と窒素原子からなる組成であることがわかる。また、図2(b)はコバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブの中心部分のスペクトルであるが、図2(a)のパターンと比較して、炭素のピークが少し観察される。
【0021】
図3(a)、図3(b)にエネルギー分散X線回折のパターンを示した。図3(a)は図1(a)のナノワイヤーの左側部分の回折パターンを示し、図3(b)は図1(a)のナノワイヤーの右側部分の回折パターンを示す。図3(b)のパターンは図3(a)のパターンに比べて炭素濃度が高いが、いずれのパターンでもコバルトが含有されていることが確認された。図2および図3の結果から、ナノワイヤーが包含されたナノチューブは、ホウ素、窒素、コバルトからなる組成であることが確認された。
【0022】
図4には高分解能透過型電子顕微鏡によるコバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブの像を示したが、コバルトと窒化ホウ素が層構造を形成していることが確認された。
【0023】
【発明の効果】
コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブは、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒等の分野において、導電性金属ナノ粒子の酸化や化学的劣化を防止するための耐酸化性被覆材料、電気絶縁性の被覆材料、反応促進剤等として有用であるが、この出願の発明によって、コバルトのナノワイヤーが十分に内奥にまで充填された窒化ホウ素ナノチューブが提供される。
【0024】
そして、この出願の発明の製造方法によって、カーボンナノチューブを鋳型とすることで、窒化ホウ素とコバルトの濡れ性についての従来の問題を解決している。
【図面の簡単な説明】
【図1】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像の写真である。図1(a)は短いナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの写真である。図1(b)は長いナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの写真である。
【図2】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの電子エネルギー損失スペクトルの図である。図2(a)はコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの外側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。図2(b)はコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの中心部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。
【図3】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの電子エネルギー損失スペクトルの図である。図3(a)は図1(a)のナノワイヤーの左側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。図3(b)は図1(a)のナノワイヤーの右側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。
【図4】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの高分解能透過型電子顕微鏡の写真である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒等の分野において、耐酸化性被覆材料や、電気的絶縁性被覆材料、反応促進剤等として有用な、コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中空構造を有するカーボンナノチューブは、その中空部分に種々の物質を包含できるので、その包含によって、電気的性質、磁気的性質、機械的性質等に関して新たな物性の発現が期待されている。そして実際に、この種々の物質が包含されたカーボンナノチューブが毛管現象や化学的な方法を利用することによって得られている。包含されている物質としては酸化物、遷移金属や希土類元素の炭化物が知られている。
【0003】
一方、窒化ホウ素はカーボンにより構成されるグラファイトと層構造や格子定数が類似している。そして、窒化ホウ素のナノチューブは、カーボンナノチューブと同様に、アーク放電法、高圧レーザー加熱法、プラズマ解離蒸発法等により合成されている(文献1、2および3)。しかし、窒化ホウ素はカーボンと比較して、その表面への金属の濡れ性がよくないので、金属のナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを合成することは困難であった。これまでのところ、窒化ホウ素ナノチューブの先端部に金属粒子が入ることのみが報告されているにすぎない(文献1、4および5)。
【0004】
以上のような困難さにもかかわらず、カーボンナノチューブが導電性であるのに対して、窒化ホウ素ナノチューブは絶縁性で、化学的並びに、熱に対しての安定性に優れているという特徴を有していることから、導電性の金属のナノワイヤーを包含した構造体についてこれを簡便な方法によって実現可能とすることが待ち望まれていた。
【0005】
【文献】
1:A.Loiseau, et al, Phys. Rev. Lett. 76, 4737 (1996)
2:D.Golberg, et al, Appl. Phys. Lett. 69, 2045 (1996)
3:D.Yu, et al, Appl. Phys. Lett. 72, 1966 (1998)
4:N.G.Chopra, et al, Science, 269, 966 (1995)
5:M.Terrones, et al, Chem. Phys. Lett. 259, 568 (1996)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、ナノチューブの先端部から奥深くまで十分に金属のナノワイヤーが充填された新しい窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するための手段として、第1には、窒化ホウ素ナノチューブの先端部から内部域にまでコバルトナノワイヤーが充填されていることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを提供し、第2には、コバルトナノワイヤーはその直径が10nm〜100nmの範囲であることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを、第3には、コバルトナノワイヤーはその長さが1μm以上であることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを、第4には、窒化ホウ素ナノチューブは、その厚さが内部に包含されているコバルトナノワイヤーの直径の20%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブを提供する。
【0008】
そしてまた、この出願の発明は、以上のとおりのナノチューブの製造方法として、第5には、コバルトを含有したカーボンナノチューブを酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温置換反応させ、カーボンナノチューブを窒化ホウ素に転換して、コバルトを包含した窒化ホウ素ナノチューブを製造する方法を提供し、第6には、コバルトを基板とし、炭化水素ガスと水素ガス並びに不活性ガスの混合物による650K以上の温度でのプラズマCVDによりコバルト基板上にコバルト含有のカーボンナノチューブを生成させ、次いで、酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を、第7には、コバルト含有のカーボンナノチューブと酸化ホウ素とを1700Kから2500Kの温度で反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ソウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0010】
この出願の発明においては、コバルト含有のカーボンナノチューブを酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させて、上記のとおりのコバルトのナノワイヤーを包含する窒化ホウ素ナノチューブを製造するが、その際のコバルト含有のカーボンナノチューブは反応の出発物質であって、かつ、いわゆる鋳型としての作用を果たすものと考えられる。
【0011】
すなわち、コバルト含有のカーボンナノチューブを出発原料の一つとすることにより、まず、融解した金属コバルトが濡れ性のよいカーボンナノチューブ内に毛管現象で十分に充填され、コバルトのナノワイヤーが包含されたカーボンナノチューブが一旦生成され、その後、ここで生成されたカーボンナノチューブが置換反応により窒化ホウ素に転換されることにより、従来の濡れ性の問題を解決して、コバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブを得ることができると推察される。ここで、鋳型としての、コバルトを含有したカーボンナノチューブは、たとえば好適には、コバルト製のウエハーを基板とし、搬送ガスとしての窒素ガス、炭素源としてのメタンガス並びに水素ガス等の混合物を用いて、基板の温度を650K以上、たとえば773Kに保ち、プラズマCVD法により基板上に成長させて合成することができる。この場合のプラズマCVDにおいては、炭素源としてのガスはメタンガスに限られることなく、エタン、エチレン等の各種の炭化水素ガス、あるいはこれらと一酸化炭素や二酸化炭素ガスとの混合物であってもよい。同様に搬送ガスは、窒素ガスだけでなく、アルゴン、ヘリウム等の各種の不活性ガスであってよい。プラズマCVDのための基板の温度は、好適には750K以上800K程度までとするのが好ましい。炭化水素ガスや水素ガスの濃度については反応温度や搬送ガス流速等を考慮して適宜に定めることができる。
【0012】
そして、プラズマCVD反応により生成したコバルトを含有するカーボンナノチューブの粉末は、酸化ホウ素とともに、たとえばグラファイト製の円筒状るつぼ等の反応容器の中に入れ、高周波誘導加熱炉等の加熱装置中に配置し、窒素ガス雰囲気下、特に窒素ガスを流しながら、好適には、1700Kから2500Kの温度範囲で加熱して置換反応を行わせ、カーボンナノチューブを窒化ホウ素ナノチューブに転換させる。反応終了後には、室温までゆっくりと冷却するのが好ましい。
【0013】
なお、高温置換反応における窒素ガスには、反応を阻害しない許容される範囲でアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを混合してもよい。
【0014】
得られた生成物は透過型電子顕微鏡でその形態を観察することができ、コバルトのナノワイヤーが包含された、すなわち、その先端部から内部域にまでコバルトナノワイヤーが充填されている窒化ホウ素ナノチューブの生成を確認することができる。この出願の発明においては、以上のとおりの方法によって、たとえば、直径が10nm〜100nm、長さが1μm以上のコバルトナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブが提供される。そして、この場合の窒化ホウ素ナノチューブについては、その厚さが、内部に包含されているコバルトナノワイヤーの直径の20%〜100%の範囲であるものが提供される。
【0015】
実際にも、上記の製造方法によって、その具体例として、コバルトのナノワイヤーの長さは長短が混在しており、長いものでは7マイクロメートルを超えているものや、コバルトのナノワイヤーの直径が20から70ナノメートルにわたっているものが例示される。
【0016】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0017】
【実施例】
コバルトのナノワイヤーを包含する窒化ホウ素ナノチューブを製造するために、まず、コバルトを含有したカーボンナノチューブを合成した。
【0018】
すなわち、コバルト製のウエハーを基板として使用し、窒素ガス(純度99.999%)、水素ガス(純度99.999%)およびメタンガス(純度99.9%)の混合物を用いて、コバルト基板の温度を773Kに維持して、プラズマCVD法により、コバルト基板上に、コバルトを含有したカーボンナノチューブを成長させた。引き続き、ここで生成したコバルト含有カーボンナノチューブの粉末と酸化ホウ素をグラファイト製の円筒状のるつぼの中に入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉中に配置して、窒素ガスを流しながら1723Kから1773Kでの30分間の加熱により置換反応を行った。反応終了後、2時間かけて室温まで冷却した。
【0019】
得られた生成物を透過型電子顕微鏡で観察した結果、図1(a)、図1(b)に示したように、短いナノワイヤーおよび長いナノワイヤーを包含していることが確認され、長いナノワイヤーでは、その長さが7マイクロメートルを超えていることが確認された。包含されているナノワイヤーの直径は20ナノメートルから70ナノメートルの範囲にわたっていた。また、外側の窒化ホウ素ナノチューブの厚さは内部に包含されているナノワイヤーの直径に対して40%から90%の範囲の厚さであった。
【0020】
電子エネルギー損失スペクトル分析の結果を図2(a)、図2(b)に示した。図2(a)は窒化ホウ素ナノチューブの外側部分のスペクトルパターンであるが、主にホウ素と窒素原子からなる組成であることがわかる。また、図2(b)はコバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブの中心部分のスペクトルであるが、図2(a)のパターンと比較して、炭素のピークが少し観察される。
【0021】
図3(a)、図3(b)にエネルギー分散X線回折のパターンを示した。図3(a)は図1(a)のナノワイヤーの左側部分の回折パターンを示し、図3(b)は図1(a)のナノワイヤーの右側部分の回折パターンを示す。図3(b)のパターンは図3(a)のパターンに比べて炭素濃度が高いが、いずれのパターンでもコバルトが含有されていることが確認された。図2および図3の結果から、ナノワイヤーが包含されたナノチューブは、ホウ素、窒素、コバルトからなる組成であることが確認された。
【0022】
図4には高分解能透過型電子顕微鏡によるコバルトのナノワイヤーが包含された窒化ホウ素ナノチューブの像を示したが、コバルトと窒化ホウ素が層構造を形成していることが確認された。
【0023】
【発明の効果】
コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブは、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒等の分野において、導電性金属ナノ粒子の酸化や化学的劣化を防止するための耐酸化性被覆材料、電気絶縁性の被覆材料、反応促進剤等として有用であるが、この出願の発明によって、コバルトのナノワイヤーが十分に内奥にまで充填された窒化ホウ素ナノチューブが提供される。
【0024】
そして、この出願の発明の製造方法によって、カーボンナノチューブを鋳型とすることで、窒化ホウ素とコバルトの濡れ性についての従来の問題を解決している。
【図面の簡単な説明】
【図1】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの透過型電子顕微鏡像の写真である。図1(a)は短いナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの写真である。図1(b)は長いナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの写真である。
【図2】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの電子エネルギー損失スペクトルの図である。図2(a)はコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの外側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。図2(b)はコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの中心部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。
【図3】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの電子エネルギー損失スペクトルの図である。図3(a)は図1(a)のナノワイヤーの左側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。図3(b)は図1(a)のナノワイヤーの右側部分の電子エネルギー損失スペクトルの図である。
【図4】コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの高分解能透過型電子顕微鏡の写真である。
Claims (7)
- 窒化ホウ素ナノチューブの先端部から内部域にまでコバルトナノワイヤーが充填されていることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブ。
- コバルトナノワイヤーはその直径が10nm〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項1のコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブ。
- コバルトナノワイヤーはその長さが1μm以上であることを特徴とする請求項1または2のコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブ。
- 窒化ホウ素ナノチューブは、その厚さが内部に包含されているコバルトナノワイヤーの直径の20%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブ。
- コバルト含有カーボンナノチューブを酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
- コバルトを基板とし、炭化水素ガスと水素ガス並びに不活性ガスの混合物による650K以上の温度でのプラズマCVDによりコバルト基板上にコバルト含有のカーボンナノチューブを生成させ、次いで、酸化ホウ素と窒素雰囲気下に高温反応させることを特徴とするコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
- コバルト含有のカーボンナノチューブと酸化ホウ素とを1700Kから2500Kの温度で反応させることを特徴とする請求項5または6のコバルトのナノワイヤーを包含した窒化ソウ素ナノチューブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003006290A JP2004217462A (ja) | 2003-01-14 | 2003-01-14 | コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003006290A JP2004217462A (ja) | 2003-01-14 | 2003-01-14 | コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004217462A true JP2004217462A (ja) | 2004-08-05 |
Family
ID=32896720
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003006290A Pending JP2004217462A (ja) | 2003-01-14 | 2003-01-14 | コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004217462A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007096135A (ja) * | 2005-09-29 | 2007-04-12 | Univ Nagoya | カーボンナノ構造体を用いたダイオード |
US20150329360A1 (en) * | 2014-05-14 | 2015-11-19 | University Of Dayton | Growth of silicon and boron nitride nanomaterials on carbon fibers by chemical vapor deposition |
-
2003
- 2003-01-14 JP JP2003006290A patent/JP2004217462A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007096135A (ja) * | 2005-09-29 | 2007-04-12 | Univ Nagoya | カーボンナノ構造体を用いたダイオード |
US20150329360A1 (en) * | 2014-05-14 | 2015-11-19 | University Of Dayton | Growth of silicon and boron nitride nanomaterials on carbon fibers by chemical vapor deposition |
US9676627B2 (en) * | 2014-05-14 | 2017-06-13 | University Of Dayton | Growth of silicon and boron nitride nanomaterials on carbon fibers by chemical vapor deposition |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Luo et al. | Synthesis of long indium nitride nanowires with uniform diameters in large quantities | |
CN102154706A (zh) | 一种一维纳米材料的制备方法 | |
US20060115409A1 (en) | Method for producing carbon nanotube | |
CN111268656A (zh) | 氮化硼纳米管的制备方法 | |
JP3834640B2 (ja) | 窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 | |
JP2004217462A (ja) | コバルトのナノワイヤーを包含した窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 | |
JP3985044B2 (ja) | 単結晶珪素ナノチューブとその製造方法 | |
JP3571287B2 (ja) | 酸化珪素のナノワイヤの製造方法 | |
JP2004182571A (ja) | 酸化ガリウムを触媒とする窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 | |
JP2004161561A (ja) | 窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 | |
KR100753114B1 (ko) | 실리카 분말의 열적 반응을 이용한 실리콘계 세라믹나노와이어의 제조방법 | |
JP2008100863A (ja) | 炭化ケイ素ナノ構造物とその製造方法 | |
JP3616819B2 (ja) | ホウ素・炭素・窒素ナノチューブの製造方法 | |
JP3496050B2 (ja) | フラーレン状窒化ホウ素の中空微粒子の製造法 | |
JP2004190183A (ja) | 長周期構造を有する窒化ホウ素ナノ繊維およびその製造方法 | |
JP2004210562A (ja) | 窒化ホウ素で被覆された炭化珪素ナノワイヤーおよび窒化珪素ナノワイヤー並びにそれらの製造方法 | |
JP2004189527A (ja) | ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 | |
JP2004231457A (ja) | 金属モリブデンナノ粒子が内含されている窒化ホウ素ナノチューブとその製造方法 | |
JP3837573B2 (ja) | 窒素原子が結合したカーボンナノチューブの製造方法 | |
JP2004182547A (ja) | 酸化ガリウムナノワイヤーとその製造方法 | |
JP2004339020A (ja) | 窒化ガリウムナノチューブの製造方法 | |
JP3873126B2 (ja) | リン化インジウムナノワイヤーとナノチューブの製造方法 | |
JP4441617B2 (ja) | 窒化アルミニウムナノチューブ及びその製造方法 | |
JP4581121B2 (ja) | 窒化ホウ素ナノシートで被覆された窒化珪素ナノワイヤー及びその製造方法 | |
JP3834661B2 (ja) | 炭化ケイ素−二酸化ケイ素−炭素共軸ナノケーブルおよび炭化ケイ素ナノロッドとカーボンナノチューブが先端同士で交互に接合したナノチェーンの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060620 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20060627 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20061024 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |