JP2004228362A - 配線基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貫通導体に剥離が発生することがなく、貫通導体と配線導体との接続信頼性に優れる高密度配線の配線基板を提供すること。
【解決手段】絶縁樹脂板1の上下面に銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着された両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させるとともに、両面銅張板および絶縁樹脂層3A・3Bにレーザ加工を施すことにより、内面に炭化層8が形成された複数の貫通孔4を穿孔し、次に炭化層8上にめっき膜13Aを被着させ、次に炭化層8をめっき膜13Aとともにエッチング除去し、次に炭化層8およびめっき膜13Aが除去された貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】絶縁樹脂板1の上下面に銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着された両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させるとともに、両面銅張板および絶縁樹脂層3A・3Bにレーザ加工を施すことにより、内面に炭化層8が形成された複数の貫通孔4を穿孔し、次に炭化層8上にめっき膜13Aを被着させ、次に炭化層8をめっき膜13Aとともにエッチング除去し、次に炭化層8およびめっき膜13Aが除去された貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機材料系の多層配線基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を搭載するための有機材料系の配線基板として、例えばガラス−エポキシ樹脂から成る絶縁樹脂板の上下面に銅箔から成る配線導体が被着された両面銅張板の上下両面にエポキシ樹脂を主成分とする絶縁樹脂層が被着されているとともにその絶縁樹脂板および絶縁樹脂層を上下に貫通する複数の貫通孔を有し、貫通孔の内面に貫通導体および絶縁樹脂層の表面に配線導体層がそれぞれ無電解銅めっきおよび電解銅めっきにより被着されて成る多層配線基板が用いられている。この配線基板においては、貫通孔の内面に被着させた貫通導体を介して上下に位置する配線導体および配線導体層を電気的に接続することにより立体的な高密度配線が可能となっている。
【0003】
なお、このような有機材料系の多層配線基板は、例えば厚みが0.35〜0.45mm程度のガラス−エポキシ樹脂から成る絶縁樹脂板の上下面に厚みが7〜12μm程度の銅箔から成る配線導体が被着形成された両面銅張板の上下両面に厚みが25〜45μmの絶縁樹脂層を被着させるとともに、その上面から下面にかけて直径が200〜500μm程度の貫通孔をドリル加工により穿孔し、しかる後、貫通孔の内面に厚みが15〜50μm程度の銅めっきから成る貫通導体を、および絶縁樹脂層の表面に配線導体層を無電解めっき法および電解めっき法により被着させることによって製作されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−91750号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような有機材料系の多層配線基板においては、その配線密度をさらに高めるために貫通孔の直径を例えば75〜130μm程度の小さなものとする試みがなされている。そしてこのような直径が75〜130μm程度の小さな貫通孔を形成するためには、例えば炭酸ガスレーザによる穿孔方法が採用される。
【0006】
しかしながら、貫通孔を炭酸ガスレーザで穿孔した場合には、貫通孔の内面に絶縁樹脂板や絶縁樹脂層を構成する樹脂の炭化層が形成され、この炭化層がもろいために、貫通孔の内面に銅めっきから成る貫通導体を被着させた後、貫通孔の内面の炭化層を起点にして貫通導体が剥離してしまい、それにより貫通導体と配線導体との間にクラックが発生して導通不良を起こしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、貫通導体に剥離が発生することがなく、貫通導体と配線導体とが常に良好に接続された極めて高密度な配線が可能な配線基板およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板の製造方法は、絶縁樹脂板の上下面に銅箔から成る配線導体が被着された両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層を被着させるとともに、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層にレーザ加工を施すことにより、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層を貫通し、内面に炭化層が形成された複数の貫通孔を穿孔する工程と、次に前記炭化層の表面にめっき膜を被着させる工程と、次に前記炭化層を前記めっき膜とともにエッチング除去する工程と、次に前記炭化層および前記めっき膜が除去された前記貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成するとともに前記絶縁樹脂層の表面に前記めっきを被着させて配線導体層を形成する工程とを行なうことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の配線基板の製造方法によれば、レーザ加工により形成された貫通孔の内面の炭化層上にめっき膜を被着させた後、炭化層をめっき膜とともにエッチング除去し、さらに炭化層およびめっき膜が除去された貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成することから、めっき膜の形成時にめっき膜が炭化層の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜の成膜時の応力が炭化層に良好に作用して炭化層が剥離されやすくなり、炭化層およびめっき膜をエッチング除去する際に炭化層がめっき膜とともに良好に除去され、その結果、貫通導体が炭化層を起点にして剥離することがない配線基板を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の配線基板の製造方法について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法によって製作される配線基板の実施の形態の一例を示す部分断面図である。図1において、1は絶縁樹脂板、2A・2Bは配線導体、3A・3Bは絶縁樹脂層、4は貫通孔、5は貫通導体、6A・6Bは配線導体層であり、主として絶縁樹脂板1の上下面に配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bが順に被着されるとともに、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4が設けられ、さらに貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5が形成されるとともに絶縁樹脂層3A・3Bの表面に配線導体6A・6Bが被着形成されることにより配線基板が構成されている。なお、本実施の形態の一例においては、絶縁樹脂層3A・3B上にソルダーレジスト7が設けられている。
【0011】
絶縁樹脂板1は、本発明の製造方法によって製作される配線基板のコア部材として機能し、例えばガラスクロスやアラミドクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂を含浸させた有機系絶縁材料から成る厚みが0.35〜0.45mmの平板であり、その上下面に厚みが7〜12μmの銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着された、いわゆる両面銅張板を構成している。絶縁樹脂板1は、その厚みが0.35mm未満ではその上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させたり、あるいは絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4を形成したりする際等に熱や外力等の影響で配線基板に反りや変形が発生して配線基板に要求される平坦度を確保できなくなってしまう危険性が大きなものとなり、他方、0.45mmを超えると、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成するときに、貫通孔4の内部にめっき液が浸入しにくくなり、貫通導体5を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1の厚みは0.35〜0.45mmの範囲が好ましい。
【0012】
なお、絶縁樹脂板1は、ガラスクロスやアラミドクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロスやアラミドクロス等の繊維部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となる程度に含有させておけば、後述するように絶縁樹脂板1にレーザ光で貫通孔4を穿孔する際に、貫通孔4を絶縁樹脂板1に略均一な大きさで良好に形成することが可能となる。したがって、絶縁樹脂板1のガラスクロスやアラミドクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にはシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロスやアラミドクロス等の繊維部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となるように含有させておくことが好ましい。
【0013】
また、絶縁樹脂板1の上下面に被着された配線導体2A・2Bは、銅箔から成り、主として電源層やグランド層として機能する配線導体パターンWとこの配線導体パターンWから電気的に独立したダミー導体パターンDとを有し、その厚みが7〜12μm、その表面の算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度である。配線導体2A・2Bは、その厚みが7μm未満の場合、電源層やグランド層としての配線導体パターンWに対して十分な電気特性を付与することができず、他方、12μmを超える場合、後述するように絶縁樹脂板1と配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bとを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する場合に、貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、配線導体2A・2Bの厚みは、7〜12μmの範囲が好ましい。
【0014】
なお、配線導体2A・2Bは、貫通孔4により貫通されるとともに後述する貫通導体5に接する配線導体パターンWまたはダミー導体パターンDを全ての貫通孔4に対応して有するように形成しておくと、貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に全ての貫通孔4においてレーザ光の吸収反射を略同じとして全ての貫通孔4を略均一な大きさおよび形状に形成することができる。したがって、配線導体2A・2Bは、貫通孔4により貫通される配線導体パターンWまたはダミー導体パターンDを全ての貫通孔4に対応して有するように形成しておくことが好ましい。
【0015】
この場合、ダミー導体パターンDは、その直径が貫通孔4の直径よりも40〜100μm程度大きな略円形のパターンとすればよく、配線導体パターンWとの間に30〜60μm程度の幅の間隔を設ければよい。ダミー導体パターンDの直径が貫通孔4の直径よりも40μm未満大きな場合には、レーザ加工により貫通孔4を穿孔する際にダミー導体パターンDを正確に貫通することが困難となり、他方、100μmを超えて大きな場合には、配線導体パターンWの面積を広く採ることが困難となる。また、ダミー導体パターンDと配線導体パターンWとの間隔が30μm未満の場合には、ダミー導体パターンDと配線導体パターンWとの間の電気的絶縁が良好に保てなくなる傾向にあり、他方、60μmを超えると、配線導体パターンWの面積を広く採ることが困難となる。
【0016】
また、配線導体2A・2Bは、その表面の算術平均粗さRaが0.2μm未満の場合、配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとが強固に密着せずに配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとの間で剥離が発生しやすくなる傾向にあり、他方2μmを超えると、そのような粗い面を安定かつ効率良く形成することが困難となる傾向にある。したがって、配線導体2A・2B表面の算術平均粗さRaは0.2〜2μmの範囲が好ましい。
【0017】
また、絶縁樹脂板1の上下面に被着された絶縁樹脂層3A・3Bはエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、レーザ光に対する分解度合いが絶縁樹脂板1よりも大きく、その表面に配線導体層6A・6Bが被着されている。絶縁樹脂層3A・3Bは、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に絶縁するための絶縁間隔を提供するためのものであり、その厚みが配線導体2A・2B上で25〜45μmである。この絶縁樹脂層3A・3Bは、その厚みが配線導体2A・2B上で25μm未満の場合、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に良好に絶縁することができなくなり、他方、45μmを超えると、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に貫通孔4を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁層3A・3Bの厚みは配線導体2A・2B上で25〜45μmの範囲が好ましい。
【0018】
配線導体層6A・6Bは、厚みが8〜30μmの銅めっき膜から成り、電源配線およびグランド配線および信号配線を具備する配線パターンを形成している。そして、例えば上面側の配線導体層6Aの露出する一部に図示しない電子部品の電極が半田を介して接続されるとともに、下面側の配線導体層6Bの露出する一部が図示しない他の配線基板等に半田を介して接続される。
【0019】
これらの配線導体層6A・6Bは、その厚みが8μm未満であると、配線パターンの電気抵抗が高いものとなり、他方、30μmを超えると、配線パターンを高密度に形成することが困難となる。したがって、配線導体層6A・6Bの厚みは、8〜30μmの範囲が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の製造方法により製作される配線基板においては、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して貫通孔4がレーザ加工により形成されており、この貫通孔4の内部にめっきを充填することにより貫通導体5が形成されている。貫通孔4は、貫通導体5を絶縁樹脂層3Aの上面から絶縁樹脂層3Bの下面にかけて導出させるための導出路を提供するためのものである。この貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bのレーザ光に対する分解度合いを絶縁樹脂板1よりも大きいものとしておくことにより、絶縁樹脂板1においては直径が75〜115μmでその内面が絶縁樹脂板1の上下面と垂直であり、絶縁樹脂層3A・3Bにおいてはその内面が絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する、すなわち広がった形状となっている。
【0021】
このように、本発明の製造方法により製作される配線基板によれば、貫通孔4はレーザ加工により形成され、その直径が絶縁樹脂板1において75〜115μmと小さく、かつその内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する形状となっていることから、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することができ、それにより極めて高密度な配線を有する配線基板を得ることができる。
【0022】
また、貫通孔4はその直径が絶縁樹脂板1において75〜115μmと小さいものの、その内面が絶縁樹脂板1においてはその上下面と垂直でかつ絶縁樹脂層3A・3Bにおいては絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する形状となっていることから、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができる。
【0023】
なお、絶縁樹脂板1における貫通孔4の直径が75μm未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、115μmを超えると、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1における貫通孔4の直径は、75〜115μmの範囲が好ましい。
【0024】
また、絶縁樹脂板1における貫通孔4の内面が絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直でない場合、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に貫通孔4の内部に気泡が取り残されやすく、そのため貫通導体5を形成するためのめっき液が気泡の取り残された部分に良好に届かずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1における貫通孔4の内面は、絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直であることが好ましい。
【0025】
また、貫通孔4の内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて傾く角度が絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直な方向から10°未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、30°を超えるとそのような角度で内面が外側に向かって拡がる貫通孔4を安定して効率よく形成することが困難となる。したがって、貫通孔4の内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて傾く角度は、垂直方向から10〜30°の範囲が好ましい。
【0026】
貫通孔4の内部にめっきを充填することにより形成された貫通導体5は、無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成り、絶縁樹脂板1および絶縁樹脂層3A・3Bを挟んで上下に位置する配線導体2A・2Bおよび配線導体層6A・6B同士を互いに電気的に接続する接続導体として機能する。
【0027】
さらに、絶縁樹脂層3A・3Bの表面には、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂から成るソルダーレジスト7が被着されている。ソルダーレジスト7は、配線導体層6A・6Bを保護するとともに配線導体層6A・6Bにおける配線パターン同士を電気的に良好に絶縁するための保護層として機能し、配線導体層6A・6Bの一部を露出させる所定のパターンに被着形成されている。
【0028】
なお、ソルダーレジスト7は、その配線導体層6A・6B上における厚みが10μm未満であると、配線導体層6A・6Bを良好に保護することができなくなるとともに配線導体層6A・6Bにおける配線パターン同士を電気的に良好に絶縁することができなくなる傾向にあり、他方、40μmを超えると、ソルダーレジスト7を所定のパターンに形成することが困難となる傾向にある。したがって、ソルダーレジストの配線導体層6A・6B上における厚みは、10〜40μmの範囲が好ましい。
【0029】
次に、図1に示した配線基板を本発明の製造方法により製造する方法について図2(a)〜(h)を参照して詳細に説明する。なお、図2(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の部分断面図である。
【0030】
まず、図2(a)に部分断面図で示すように、例えばガラスクロスやアラミドクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂を含浸させた有機系絶縁材料から成る厚みが0.35〜0.45mmの絶縁樹脂板1の上下面に厚みが7〜12μmの銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着形成された両面銅張板を準備する。なお、配線導体2A・2Bはその表面の算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度となるように、その表面を粗化しておく。
【0031】
絶縁樹脂板1は、その厚みが0.35mm未満では、その上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させたり、あるいは絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4を形成する際等に熱や外力等の影響で配線基板に反りや変形が発生して配線基板に要求される平坦度を確保できなくなってしまう危険性が大きなものとなり、他方、0.45mmを超えると、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成するときに、貫通孔4の内部にめっき液が浸入しにくくなり、貫通導体5に断線が発生しやすくなる。したがって、絶縁樹脂板1の厚みは0.35〜0.45mmの範囲が好ましい。
【0032】
また、配線導体2A・2Bは、その厚みが7μm未満の場合、配線導体2A・2Bのパターンに電源層やグランド層としての十分な電気特性を付与することができず、他方、12μmを超える場合、後述するように絶縁樹脂板1と配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bとを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する場合に、直径が75〜130μmの貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、配線導体2A・2Bの厚みは、7〜12μmの範囲が好ましい。
【0033】
また、配線導体2A・2Bは、その表面の算術平均粗さRaが0.2μm未満の場合、後述するように、絶縁樹脂板1の上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させる際に、配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとが強固に密着せずに配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとの間で剥離が発生しやすくなる傾向にあり、他方2μmを超えると、そのような粗い面を安定かつ効率良く形成することが困難となる傾向にある。したがって、配線導体2A・2B表面の算術平均粗さRaは0.2〜2μmの範囲が好ましい。
【0034】
さらに、配線導体2A・2Bは貫通孔4が形成される位置に貫通孔4により貫通される導体パターンを全ての貫通孔4に対応して設けておくと、レーザ加工により貫通孔4を形成する際に全ての貫通孔4においてレーザ光の吸収反射が均一となり、全ての貫通孔4を略均一に形成することができる。したがって、配線導体2A・2Bは貫通孔4が形成される位置に貫通孔4により貫通される導体パターンを全ての貫通孔4に対応して設けておくことが好ましい。
【0035】
このような配線導体2A・2Bは、絶縁樹脂板1の上下全面に厚みが8〜16μm程度の銅箔を貼着するとともに、この銅箔上に感光性のドライフィルムレジストを被着させ、次にこの感光性ドライフィルムレジストを従来周知のフォトリソグラフィー技術により露光・現像してパターン形成位置にドライフィルムレジストを有するエッチングマスクを形成し、次にエッチングマスクから露出した銅箔を塩化第2銅水溶液もしくは塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いてエッチング除去し、最後にエッチングマスクを剥離した後、塩化第2銅水溶液に蟻酸が含有された粗化液を用いてその表面をエッチングして粗化することによって形成される。
【0036】
次に、図2(b)に部分断面図で示すように、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bから成る両面銅張板の上下両面に、厚みが配線導体2A・2B上で25〜45μmの絶縁樹脂層3A・3Bを被着形成する。この絶縁樹脂層3A・3Bはエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化型の樹脂から成り、炭酸ガスレーザ等のレーザ光に対する分解度合いが絶縁樹脂板1よりも大きい。
【0037】
この絶縁樹脂層3A・3Bは、その厚みが配線導体2A・2B上で25μm未満の場合、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に良好に絶縁することができなくなり、他方、45μmを超えると、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に、直径が75〜130μmの貫通孔4を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁層3A・3Bの厚みは配線導体2A・2B上で25〜45μmの範囲が好ましい。
【0038】
なお、絶縁樹脂板1の上下面に配線導体2A・2Bが被着されて成る両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着形成するには、半硬化状態の熱硬化性樹脂のフィルムを両面銅張板の上下両面に真空ラミネータで仮圧着した後、これを熱処理して硬化させる方法が採用される。
【0039】
次に図2(c)に部分断面図で示すように、レーザ加工により絶縁樹脂層3A・3Bおよび配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂板1を貫通する直径が75〜130μmの複数の貫通孔4を穿孔する。このとき、絶縁樹脂層3A・3Bのレーザ光に対する分解度合いを絶縁樹脂板1のレーザ光に対する分解度合いよりも大きくしておくと、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径する形状となる。
【0040】
このように、貫通孔4の直径を75〜130μmと小さいものとすることから、後述するように貫通導体5および配線導体層6A・6Bを形成する際に貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することができ、それにより高密度な配線基板を得ることができる。また、貫通孔4の直径が絶縁樹脂層3A・3Bの部位で外側に向かって広がる形状としておくと、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができる。
【0041】
なお、貫通孔4の直径が75μm未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まず、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができなくなり、他方、130μmを超えると、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することが困難となる。したがって、貫通孔4の直径は、75〜130μmの範囲が好ましい。
【0042】
また、貫通孔4の開口部における直径が絶縁樹脂板1における直径よりも10μm未満大きい場合には、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、50μmを超えて大きな場合には、そのような形状を有する貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、貫通孔4の開口部における直径は、絶縁樹脂板1における直径よりも10〜50μm大きくしておくことが好ましい。
【0043】
なお、絶縁樹脂層3A・3Bおよび配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂板1に貫通孔4を形成するには、絶縁樹脂層3A・3B上に例えばレーザ光のエネルギーを良好に吸収する黒色もしくは黒色に近い色を有する樹脂から成るレーザ加工用シートを貼着し、このレーザ加工用シートの上から7〜12mJの出力の炭酸ガスレーザ光を50〜500μ秒のパルス幅で所定の位置に照射して貫通孔4を穿孔する方法が採用される。このとき、炭酸ガスレーザ光の出力が7mJ未満だと貫通孔4を十分な大きさに穿孔することが困難となる傾向にあり、他方、12mJを超えると絶縁樹脂層3A・3Bにおける貫通孔4の直径が大きくなりすぎてしまう傾向にある。したがって、照射する炭酸ガスレーザ光は、その出力が7〜12mJでパルス幅が50〜500μ秒の範囲であることが好ましい。なお、レーザ加工用シートは、貫通孔4を穿孔した後に剥離する。このように貫通孔4をレーザ加工により形成することにより、直径が75〜130μmで、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径する形状の貫通孔4を容易に形成することができる。なお、この場合、貫通孔4の内面にはレーザ加工の熱によって厚みが数μmの、絶縁樹脂板1や絶縁樹脂層3A・3Bに含まれる樹脂の炭化層8が形成される。
【0044】
次に、図2(d)に部分断面図で示すように、貫通孔4内面の炭化層8および絶縁樹脂層3A・3Bの表面に厚みが1〜3μmの無電解銅めっきから成るめっき膜13Aを被着させる。なお、めっき膜13Aを被着させるには、例えば塩化アンモニウム系酢酸パラジウムを含有するパラジウム活性液を使用して貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にパラジウム触媒を付着させるとともに、その上に硫酸銅系の無電解銅めっき液を用いてめっき膜13Aを被着させればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に無電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4内面の炭化層8および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にめっき膜13Aを略均一な厚みに良好に被着させることができる。
【0045】
なお、めっき膜13Aを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4内面を例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いて粗化しておくとめっき膜13Aを強固に被着させることができる。したがって、めっき膜13Aを被着させる前に、絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4内面を例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いて粗化しておくことが好ましい。
【0046】
次に、図2(e)に部分断面図で示すように、貫通孔4内面の炭化層8をこの上に被着されためっき膜13Aとともにエッチング除去する。なお、このエッチングに使用するエッチング液としては、硫酸と過酸化水素水の混合溶液または塩化第2銅水溶液または塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いればよい。この場合、めっき膜13Aの形成時にめっき膜13Aが炭化層8の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜13Aの成膜時の応力が炭化層8に良好に作用して炭化層8が剥離されやすくなっている。したがって、炭化層8は、エッチング除去によりめっき膜13Aとともに良好に除去される。なお、この際、絶縁樹脂層3A・3B表面のめっき膜13Aも同時に除去する。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、炭化層8およびめっき膜13Aが除去された貫通孔4の内面およびめっき膜13Aが除去された絶縁樹脂層3A・3Bの表面に、厚みが1〜3μmの無電解銅めっきから成る無電解銅めっき層13Bを被着させる。なお、無電解銅めっき層13Bを被着させるには、例えば塩化アンモニウム系酢酸パラジウムを含有するパラジウム活性液を使用して貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にパラジウム触媒を付着させるとともに、その上に硫酸銅系の無電解銅めっき液を用いて無電解銅めっきを被着させればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に無電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面に無電解銅めっき層13Bを略均一な厚みに良好に被着させることができる。
【0048】
なお、無電解銅めっき層13Bを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4の内面を、例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いてその算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度になるように粗化しておくと無電解銅めっき層13Bを強固に被着させることができる。したがって、無電解銅めっき層13Bを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4の内面を、例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いてその算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度になるように粗化しておくことが好ましい。このとき、貫通孔4の内面は炭化層8が除去されていることから貫通孔4の内面で炭化層8を起点に無電解銅めっき層13Bが剥離するようなことが無く、貫通孔4の内面に無電解銅めっき層13Bを強固に被着するすることができる。
【0049】
次に、図2(g)に示すように絶縁層3A・3B上の無電解銅めっき層13B上にめっき用マスク14を被着させるとともに、めっき用マスク14から露出した無電解銅めっき層13B上に電解銅めっきを被着させ、貫通孔4の内部にめっきを充填させて成る貫通導体5を形成するとともに絶縁樹脂層3A・3B表面にパターン形成部位が選択的に厚く被着された無電解銅めっきと電解銅めっきとから成るめっき層13Cを形成する。
【0050】
なお、めっき用マスク14は、例えば感光性ドライフィルムレジストを絶縁樹脂層3A・3B上の無電解銅めっき層13B上に被着させるとともに、このドライフィルムレジストをフォトリソグラフィー技術により露光・現像して所定のパターンに加工することによって形成する。
【0051】
また、電解銅めっきを被着させるための電解銅めっき液としては、例えば、硫酸銅系から成る電解銅めっき液を用いればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4の内部が電解銅めっきにより良好に充填されるとともにな絶縁樹脂層3A・3B表面の無電解めっき層13B上に電解銅めっき層が良好に被着される。
【0052】
次に、図2(h)に部分断面図で示すように、めっき用マスク14を剥離するとともにめっき用マスク14の下にあった無電解銅めっき層13Bが消滅するまでめっき層13Cをエッチングし、絶縁樹脂層3A・3Bの表面に配線導体層6A・6Bを形成する。
【0053】
なお、めっき層13Cをエッチングするには、硫酸と過酸化水素水の混合溶液または塩化第2銅水溶液または塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いればよい。
【0054】
このとき、貫通導体4の内面は炭化層8が除去されていることから、貫通導体5が炭化層8を起点にして剥離してしまうようなことはない。したがって、本発明の製造方法によると、貫通導体5と配線導体2A・2Bとが常に良好に接続された、信頼性の高い高密度配線の配線基板を得ることができる。
【0055】
最後に、絶縁樹脂層3A・3Bの表面にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性樹脂から成るソルダーレジスト7を被着させることにより図1に示す本発明の配線基板が完成する。
【0056】
なお、ソルダーレジスト7は、ソルダーレジスト7用の感光性の樹脂ペーストを従来周知のスクリーン印刷法を採用して配線導体層6A・6Bが形成された絶縁樹脂層3A・3B上に印刷塗布し、これを従来周知のフォトリソグラフィー技術を採用して所定のパターンに露光・現像することによって形成される。
【0057】
【発明の効果】
本発明の配線基板の製造方法によれば、レーザ加工により形成された貫通孔の内面の炭化層上にめっき膜を被着させた後、炭化層をめっき膜とともにエッチング除去し、さらに炭化層およびめっき膜が除去された貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成することから、めっき膜の形成時にめっき膜が炭化層の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜の成膜時の応力が炭化層に良好に作用して炭化層が剥離されやすくなり、炭化層およびめっき膜をエッチング除去する際に炭化層がめっき膜とともに良好に除去され、その結果、貫通導体が炭化層を起点にして剥離することがない配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製作される配線基板の実施の形態の一例を示す部分断面図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の部分断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・絶縁樹脂板
2A・2B・・・配線導体
3A・3B・・・絶縁樹脂層
4・・・・・・・貫通孔
5・・・・・・・貫通導体
6A・6B・・・配線導体層
8・・・・・・・炭化層
13A・・・・・・めっき膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機材料系の多層配線基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を搭載するための有機材料系の配線基板として、例えばガラス−エポキシ樹脂から成る絶縁樹脂板の上下面に銅箔から成る配線導体が被着された両面銅張板の上下両面にエポキシ樹脂を主成分とする絶縁樹脂層が被着されているとともにその絶縁樹脂板および絶縁樹脂層を上下に貫通する複数の貫通孔を有し、貫通孔の内面に貫通導体および絶縁樹脂層の表面に配線導体層がそれぞれ無電解銅めっきおよび電解銅めっきにより被着されて成る多層配線基板が用いられている。この配線基板においては、貫通孔の内面に被着させた貫通導体を介して上下に位置する配線導体および配線導体層を電気的に接続することにより立体的な高密度配線が可能となっている。
【0003】
なお、このような有機材料系の多層配線基板は、例えば厚みが0.35〜0.45mm程度のガラス−エポキシ樹脂から成る絶縁樹脂板の上下面に厚みが7〜12μm程度の銅箔から成る配線導体が被着形成された両面銅張板の上下両面に厚みが25〜45μmの絶縁樹脂層を被着させるとともに、その上面から下面にかけて直径が200〜500μm程度の貫通孔をドリル加工により穿孔し、しかる後、貫通孔の内面に厚みが15〜50μm程度の銅めっきから成る貫通導体を、および絶縁樹脂層の表面に配線導体層を無電解めっき法および電解めっき法により被着させることによって製作されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−91750号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような有機材料系の多層配線基板においては、その配線密度をさらに高めるために貫通孔の直径を例えば75〜130μm程度の小さなものとする試みがなされている。そしてこのような直径が75〜130μm程度の小さな貫通孔を形成するためには、例えば炭酸ガスレーザによる穿孔方法が採用される。
【0006】
しかしながら、貫通孔を炭酸ガスレーザで穿孔した場合には、貫通孔の内面に絶縁樹脂板や絶縁樹脂層を構成する樹脂の炭化層が形成され、この炭化層がもろいために、貫通孔の内面に銅めっきから成る貫通導体を被着させた後、貫通孔の内面の炭化層を起点にして貫通導体が剥離してしまい、それにより貫通導体と配線導体との間にクラックが発生して導通不良を起こしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、貫通導体に剥離が発生することがなく、貫通導体と配線導体とが常に良好に接続された極めて高密度な配線が可能な配線基板およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板の製造方法は、絶縁樹脂板の上下面に銅箔から成る配線導体が被着された両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層を被着させるとともに、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層にレーザ加工を施すことにより、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層を貫通し、内面に炭化層が形成された複数の貫通孔を穿孔する工程と、次に前記炭化層の表面にめっき膜を被着させる工程と、次に前記炭化層を前記めっき膜とともにエッチング除去する工程と、次に前記炭化層および前記めっき膜が除去された前記貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成するとともに前記絶縁樹脂層の表面に前記めっきを被着させて配線導体層を形成する工程とを行なうことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の配線基板の製造方法によれば、レーザ加工により形成された貫通孔の内面の炭化層上にめっき膜を被着させた後、炭化層をめっき膜とともにエッチング除去し、さらに炭化層およびめっき膜が除去された貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成することから、めっき膜の形成時にめっき膜が炭化層の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜の成膜時の応力が炭化層に良好に作用して炭化層が剥離されやすくなり、炭化層およびめっき膜をエッチング除去する際に炭化層がめっき膜とともに良好に除去され、その結果、貫通導体が炭化層を起点にして剥離することがない配線基板を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の配線基板の製造方法について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法によって製作される配線基板の実施の形態の一例を示す部分断面図である。図1において、1は絶縁樹脂板、2A・2Bは配線導体、3A・3Bは絶縁樹脂層、4は貫通孔、5は貫通導体、6A・6Bは配線導体層であり、主として絶縁樹脂板1の上下面に配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bが順に被着されるとともに、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4が設けられ、さらに貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5が形成されるとともに絶縁樹脂層3A・3Bの表面に配線導体6A・6Bが被着形成されることにより配線基板が構成されている。なお、本実施の形態の一例においては、絶縁樹脂層3A・3B上にソルダーレジスト7が設けられている。
【0011】
絶縁樹脂板1は、本発明の製造方法によって製作される配線基板のコア部材として機能し、例えばガラスクロスやアラミドクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂を含浸させた有機系絶縁材料から成る厚みが0.35〜0.45mmの平板であり、その上下面に厚みが7〜12μmの銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着された、いわゆる両面銅張板を構成している。絶縁樹脂板1は、その厚みが0.35mm未満ではその上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させたり、あるいは絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4を形成したりする際等に熱や外力等の影響で配線基板に反りや変形が発生して配線基板に要求される平坦度を確保できなくなってしまう危険性が大きなものとなり、他方、0.45mmを超えると、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成するときに、貫通孔4の内部にめっき液が浸入しにくくなり、貫通導体5を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1の厚みは0.35〜0.45mmの範囲が好ましい。
【0012】
なお、絶縁樹脂板1は、ガラスクロスやアラミドクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロスやアラミドクロス等の繊維部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となる程度に含有させておけば、後述するように絶縁樹脂板1にレーザ光で貫通孔4を穿孔する際に、貫通孔4を絶縁樹脂板1に略均一な大きさで良好に形成することが可能となる。したがって、絶縁樹脂板1のガラスクロスやアラミドクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にはシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロスやアラミドクロス等の繊維部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となるように含有させておくことが好ましい。
【0013】
また、絶縁樹脂板1の上下面に被着された配線導体2A・2Bは、銅箔から成り、主として電源層やグランド層として機能する配線導体パターンWとこの配線導体パターンWから電気的に独立したダミー導体パターンDとを有し、その厚みが7〜12μm、その表面の算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度である。配線導体2A・2Bは、その厚みが7μm未満の場合、電源層やグランド層としての配線導体パターンWに対して十分な電気特性を付与することができず、他方、12μmを超える場合、後述するように絶縁樹脂板1と配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bとを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する場合に、貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、配線導体2A・2Bの厚みは、7〜12μmの範囲が好ましい。
【0014】
なお、配線導体2A・2Bは、貫通孔4により貫通されるとともに後述する貫通導体5に接する配線導体パターンWまたはダミー導体パターンDを全ての貫通孔4に対応して有するように形成しておくと、貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に全ての貫通孔4においてレーザ光の吸収反射を略同じとして全ての貫通孔4を略均一な大きさおよび形状に形成することができる。したがって、配線導体2A・2Bは、貫通孔4により貫通される配線導体パターンWまたはダミー導体パターンDを全ての貫通孔4に対応して有するように形成しておくことが好ましい。
【0015】
この場合、ダミー導体パターンDは、その直径が貫通孔4の直径よりも40〜100μm程度大きな略円形のパターンとすればよく、配線導体パターンWとの間に30〜60μm程度の幅の間隔を設ければよい。ダミー導体パターンDの直径が貫通孔4の直径よりも40μm未満大きな場合には、レーザ加工により貫通孔4を穿孔する際にダミー導体パターンDを正確に貫通することが困難となり、他方、100μmを超えて大きな場合には、配線導体パターンWの面積を広く採ることが困難となる。また、ダミー導体パターンDと配線導体パターンWとの間隔が30μm未満の場合には、ダミー導体パターンDと配線導体パターンWとの間の電気的絶縁が良好に保てなくなる傾向にあり、他方、60μmを超えると、配線導体パターンWの面積を広く採ることが困難となる。
【0016】
また、配線導体2A・2Bは、その表面の算術平均粗さRaが0.2μm未満の場合、配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとが強固に密着せずに配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとの間で剥離が発生しやすくなる傾向にあり、他方2μmを超えると、そのような粗い面を安定かつ効率良く形成することが困難となる傾向にある。したがって、配線導体2A・2B表面の算術平均粗さRaは0.2〜2μmの範囲が好ましい。
【0017】
また、絶縁樹脂板1の上下面に被着された絶縁樹脂層3A・3Bはエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、レーザ光に対する分解度合いが絶縁樹脂板1よりも大きく、その表面に配線導体層6A・6Bが被着されている。絶縁樹脂層3A・3Bは、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に絶縁するための絶縁間隔を提供するためのものであり、その厚みが配線導体2A・2B上で25〜45μmである。この絶縁樹脂層3A・3Bは、その厚みが配線導体2A・2B上で25μm未満の場合、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に良好に絶縁することができなくなり、他方、45μmを超えると、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に貫通孔4を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁層3A・3Bの厚みは配線導体2A・2B上で25〜45μmの範囲が好ましい。
【0018】
配線導体層6A・6Bは、厚みが8〜30μmの銅めっき膜から成り、電源配線およびグランド配線および信号配線を具備する配線パターンを形成している。そして、例えば上面側の配線導体層6Aの露出する一部に図示しない電子部品の電極が半田を介して接続されるとともに、下面側の配線導体層6Bの露出する一部が図示しない他の配線基板等に半田を介して接続される。
【0019】
これらの配線導体層6A・6Bは、その厚みが8μm未満であると、配線パターンの電気抵抗が高いものとなり、他方、30μmを超えると、配線パターンを高密度に形成することが困難となる。したがって、配線導体層6A・6Bの厚みは、8〜30μmの範囲が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の製造方法により製作される配線基板においては、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して貫通孔4がレーザ加工により形成されており、この貫通孔4の内部にめっきを充填することにより貫通導体5が形成されている。貫通孔4は、貫通導体5を絶縁樹脂層3Aの上面から絶縁樹脂層3Bの下面にかけて導出させるための導出路を提供するためのものである。この貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bのレーザ光に対する分解度合いを絶縁樹脂板1よりも大きいものとしておくことにより、絶縁樹脂板1においては直径が75〜115μmでその内面が絶縁樹脂板1の上下面と垂直であり、絶縁樹脂層3A・3Bにおいてはその内面が絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する、すなわち広がった形状となっている。
【0021】
このように、本発明の製造方法により製作される配線基板によれば、貫通孔4はレーザ加工により形成され、その直径が絶縁樹脂板1において75〜115μmと小さく、かつその内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する形状となっていることから、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することができ、それにより極めて高密度な配線を有する配線基板を得ることができる。
【0022】
また、貫通孔4はその直径が絶縁樹脂板1において75〜115μmと小さいものの、その内面が絶縁樹脂板1においてはその上下面と垂直でかつ絶縁樹脂層3A・3Bにおいては絶縁樹脂板1の上下面と垂直な方向から10〜30°の角度で傾いて外側に向けて拡径する形状となっていることから、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができる。
【0023】
なお、絶縁樹脂板1における貫通孔4の直径が75μm未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、115μmを超えると、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1における貫通孔4の直径は、75〜115μmの範囲が好ましい。
【0024】
また、絶縁樹脂板1における貫通孔4の内面が絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直でない場合、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に貫通孔4の内部に気泡が取り残されやすく、そのため貫通導体5を形成するためのめっき液が気泡の取り残された部分に良好に届かずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁樹脂板1における貫通孔4の内面は、絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直であることが好ましい。
【0025】
また、貫通孔4の内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて傾く角度が絶縁樹脂板1の上下面に対して垂直な方向から10°未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、30°を超えるとそのような角度で内面が外側に向かって拡がる貫通孔4を安定して効率よく形成することが困難となる。したがって、貫通孔4の内面が絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて傾く角度は、垂直方向から10〜30°の範囲が好ましい。
【0026】
貫通孔4の内部にめっきを充填することにより形成された貫通導体5は、無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成り、絶縁樹脂板1および絶縁樹脂層3A・3Bを挟んで上下に位置する配線導体2A・2Bおよび配線導体層6A・6B同士を互いに電気的に接続する接続導体として機能する。
【0027】
さらに、絶縁樹脂層3A・3Bの表面には、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂から成るソルダーレジスト7が被着されている。ソルダーレジスト7は、配線導体層6A・6Bを保護するとともに配線導体層6A・6Bにおける配線パターン同士を電気的に良好に絶縁するための保護層として機能し、配線導体層6A・6Bの一部を露出させる所定のパターンに被着形成されている。
【0028】
なお、ソルダーレジスト7は、その配線導体層6A・6B上における厚みが10μm未満であると、配線導体層6A・6Bを良好に保護することができなくなるとともに配線導体層6A・6Bにおける配線パターン同士を電気的に良好に絶縁することができなくなる傾向にあり、他方、40μmを超えると、ソルダーレジスト7を所定のパターンに形成することが困難となる傾向にある。したがって、ソルダーレジストの配線導体層6A・6B上における厚みは、10〜40μmの範囲が好ましい。
【0029】
次に、図1に示した配線基板を本発明の製造方法により製造する方法について図2(a)〜(h)を参照して詳細に説明する。なお、図2(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の部分断面図である。
【0030】
まず、図2(a)に部分断面図で示すように、例えばガラスクロスやアラミドクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂を含浸させた有機系絶縁材料から成る厚みが0.35〜0.45mmの絶縁樹脂板1の上下面に厚みが7〜12μmの銅箔から成る配線導体2A・2Bが被着形成された両面銅張板を準備する。なお、配線導体2A・2Bはその表面の算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度となるように、その表面を粗化しておく。
【0031】
絶縁樹脂板1は、その厚みが0.35mm未満では、その上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させたり、あるいは絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通して複数の貫通孔4を形成する際等に熱や外力等の影響で配線基板に反りや変形が発生して配線基板に要求される平坦度を確保できなくなってしまう危険性が大きなものとなり、他方、0.45mmを超えると、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成するときに、貫通孔4の内部にめっき液が浸入しにくくなり、貫通導体5に断線が発生しやすくなる。したがって、絶縁樹脂板1の厚みは0.35〜0.45mmの範囲が好ましい。
【0032】
また、配線導体2A・2Bは、その厚みが7μm未満の場合、配線導体2A・2Bのパターンに電源層やグランド層としての十分な電気特性を付与することができず、他方、12μmを超える場合、後述するように絶縁樹脂板1と配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂層3A・3Bとを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する場合に、直径が75〜130μmの貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、配線導体2A・2Bの厚みは、7〜12μmの範囲が好ましい。
【0033】
また、配線導体2A・2Bは、その表面の算術平均粗さRaが0.2μm未満の場合、後述するように、絶縁樹脂板1の上下面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着させる際に、配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとが強固に密着せずに配線導体2A・2Bと絶縁樹脂層3A・3Bとの間で剥離が発生しやすくなる傾向にあり、他方2μmを超えると、そのような粗い面を安定かつ効率良く形成することが困難となる傾向にある。したがって、配線導体2A・2B表面の算術平均粗さRaは0.2〜2μmの範囲が好ましい。
【0034】
さらに、配線導体2A・2Bは貫通孔4が形成される位置に貫通孔4により貫通される導体パターンを全ての貫通孔4に対応して設けておくと、レーザ加工により貫通孔4を形成する際に全ての貫通孔4においてレーザ光の吸収反射が均一となり、全ての貫通孔4を略均一に形成することができる。したがって、配線導体2A・2Bは貫通孔4が形成される位置に貫通孔4により貫通される導体パターンを全ての貫通孔4に対応して設けておくことが好ましい。
【0035】
このような配線導体2A・2Bは、絶縁樹脂板1の上下全面に厚みが8〜16μm程度の銅箔を貼着するとともに、この銅箔上に感光性のドライフィルムレジストを被着させ、次にこの感光性ドライフィルムレジストを従来周知のフォトリソグラフィー技術により露光・現像してパターン形成位置にドライフィルムレジストを有するエッチングマスクを形成し、次にエッチングマスクから露出した銅箔を塩化第2銅水溶液もしくは塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いてエッチング除去し、最後にエッチングマスクを剥離した後、塩化第2銅水溶液に蟻酸が含有された粗化液を用いてその表面をエッチングして粗化することによって形成される。
【0036】
次に、図2(b)に部分断面図で示すように、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bから成る両面銅張板の上下両面に、厚みが配線導体2A・2B上で25〜45μmの絶縁樹脂層3A・3Bを被着形成する。この絶縁樹脂層3A・3Bはエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化型の樹脂から成り、炭酸ガスレーザ等のレーザ光に対する分解度合いが絶縁樹脂板1よりも大きい。
【0037】
この絶縁樹脂層3A・3Bは、その厚みが配線導体2A・2B上で25μm未満の場合、互いに絶縁すべき配線導体2A・2Bと配線導体層6A・6Bとを電気的に良好に絶縁することができなくなり、他方、45μmを超えると、絶縁樹脂板1および配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂層3A・3Bを貫通する貫通孔4をレーザ加工により穿孔する際に、直径が75〜130μmの貫通孔4を良好に形成することが困難となる。したがって、絶縁層3A・3Bの厚みは配線導体2A・2B上で25〜45μmの範囲が好ましい。
【0038】
なお、絶縁樹脂板1の上下面に配線導体2A・2Bが被着されて成る両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層3A・3Bを被着形成するには、半硬化状態の熱硬化性樹脂のフィルムを両面銅張板の上下両面に真空ラミネータで仮圧着した後、これを熱処理して硬化させる方法が採用される。
【0039】
次に図2(c)に部分断面図で示すように、レーザ加工により絶縁樹脂層3A・3Bおよび配線導体2A・2Bならびに絶縁樹脂板1を貫通する直径が75〜130μmの複数の貫通孔4を穿孔する。このとき、絶縁樹脂層3A・3Bのレーザ光に対する分解度合いを絶縁樹脂板1のレーザ光に対する分解度合いよりも大きくしておくと、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径する形状となる。
【0040】
このように、貫通孔4の直径を75〜130μmと小さいものとすることから、後述するように貫通導体5および配線導体層6A・6Bを形成する際に貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することができ、それにより高密度な配線基板を得ることができる。また、貫通孔4の直径が絶縁樹脂層3A・3Bの部位で外側に向かって広がる形状としておくと、後述するように貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができる。
【0041】
なお、貫通孔4の直径が75μm未満の場合、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まず、貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することができなくなり、他方、130μmを超えると、貫通導体5および配線導体層6A・6Bを高密度で配置することが困難となる。したがって、貫通孔4の直径は、75〜130μmの範囲が好ましい。
【0042】
また、貫通孔4の開口部における直径が絶縁樹脂板1における直径よりも10μm未満大きい場合には、貫通孔4の内部にめっきを充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔4の内部に良好に入り込まずに貫通孔4の内部に貫通導体5を良好に形成することが困難となり、他方、50μmを超えて大きな場合には、そのような形状を有する貫通孔4を安定して形成することが困難となる。したがって、貫通孔4の開口部における直径は、絶縁樹脂板1における直径よりも10〜50μm大きくしておくことが好ましい。
【0043】
なお、絶縁樹脂層3A・3Bおよび配線導体2A・2Bおよび絶縁樹脂板1に貫通孔4を形成するには、絶縁樹脂層3A・3B上に例えばレーザ光のエネルギーを良好に吸収する黒色もしくは黒色に近い色を有する樹脂から成るレーザ加工用シートを貼着し、このレーザ加工用シートの上から7〜12mJの出力の炭酸ガスレーザ光を50〜500μ秒のパルス幅で所定の位置に照射して貫通孔4を穿孔する方法が採用される。このとき、炭酸ガスレーザ光の出力が7mJ未満だと貫通孔4を十分な大きさに穿孔することが困難となる傾向にあり、他方、12mJを超えると絶縁樹脂層3A・3Bにおける貫通孔4の直径が大きくなりすぎてしまう傾向にある。したがって、照射する炭酸ガスレーザ光は、その出力が7〜12mJでパルス幅が50〜500μ秒の範囲であることが好ましい。なお、レーザ加工用シートは、貫通孔4を穿孔した後に剥離する。このように貫通孔4をレーザ加工により形成することにより、直径が75〜130μmで、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径する形状の貫通孔4を容易に形成することができる。なお、この場合、貫通孔4の内面にはレーザ加工の熱によって厚みが数μmの、絶縁樹脂板1や絶縁樹脂層3A・3Bに含まれる樹脂の炭化層8が形成される。
【0044】
次に、図2(d)に部分断面図で示すように、貫通孔4内面の炭化層8および絶縁樹脂層3A・3Bの表面に厚みが1〜3μmの無電解銅めっきから成るめっき膜13Aを被着させる。なお、めっき膜13Aを被着させるには、例えば塩化アンモニウム系酢酸パラジウムを含有するパラジウム活性液を使用して貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にパラジウム触媒を付着させるとともに、その上に硫酸銅系の無電解銅めっき液を用いてめっき膜13Aを被着させればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に無電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4内面の炭化層8および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にめっき膜13Aを略均一な厚みに良好に被着させることができる。
【0045】
なお、めっき膜13Aを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4内面を例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いて粗化しておくとめっき膜13Aを強固に被着させることができる。したがって、めっき膜13Aを被着させる前に、絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4内面を例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いて粗化しておくことが好ましい。
【0046】
次に、図2(e)に部分断面図で示すように、貫通孔4内面の炭化層8をこの上に被着されためっき膜13Aとともにエッチング除去する。なお、このエッチングに使用するエッチング液としては、硫酸と過酸化水素水の混合溶液または塩化第2銅水溶液または塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いればよい。この場合、めっき膜13Aの形成時にめっき膜13Aが炭化層8の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜13Aの成膜時の応力が炭化層8に良好に作用して炭化層8が剥離されやすくなっている。したがって、炭化層8は、エッチング除去によりめっき膜13Aとともに良好に除去される。なお、この際、絶縁樹脂層3A・3B表面のめっき膜13Aも同時に除去する。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、炭化層8およびめっき膜13Aが除去された貫通孔4の内面およびめっき膜13Aが除去された絶縁樹脂層3A・3Bの表面に、厚みが1〜3μmの無電解銅めっきから成る無電解銅めっき層13Bを被着させる。なお、無電解銅めっき層13Bを被着させるには、例えば塩化アンモニウム系酢酸パラジウムを含有するパラジウム活性液を使用して貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面にパラジウム触媒を付着させるとともに、その上に硫酸銅系の無電解銅めっき液を用いて無電解銅めっきを被着させればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に無電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4の内面および絶縁樹脂層3A・3Bの表面に無電解銅めっき層13Bを略均一な厚みに良好に被着させることができる。
【0048】
なお、無電解銅めっき層13Bを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4の内面を、例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いてその算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度になるように粗化しておくと無電解銅めっき層13Bを強固に被着させることができる。したがって、無電解銅めっき層13Bを被着させる前に絶縁樹脂層3A・3B表面および貫通孔4の内面を、例えば過マンガン酸カリウム溶液や過マンガン酸ナトリウム溶液から成る粗化液を用いてその算術平均粗さRaが0.2〜2μm程度になるように粗化しておくことが好ましい。このとき、貫通孔4の内面は炭化層8が除去されていることから貫通孔4の内面で炭化層8を起点に無電解銅めっき層13Bが剥離するようなことが無く、貫通孔4の内面に無電解銅めっき層13Bを強固に被着するすることができる。
【0049】
次に、図2(g)に示すように絶縁層3A・3B上の無電解銅めっき層13B上にめっき用マスク14を被着させるとともに、めっき用マスク14から露出した無電解銅めっき層13B上に電解銅めっきを被着させ、貫通孔4の内部にめっきを充填させて成る貫通導体5を形成するとともに絶縁樹脂層3A・3B表面にパターン形成部位が選択的に厚く被着された無電解銅めっきと電解銅めっきとから成るめっき層13Cを形成する。
【0050】
なお、めっき用マスク14は、例えば感光性ドライフィルムレジストを絶縁樹脂層3A・3B上の無電解銅めっき層13B上に被着させるとともに、このドライフィルムレジストをフォトリソグラフィー技術により露光・現像して所定のパターンに加工することによって形成する。
【0051】
また、電解銅めっきを被着させるための電解銅めっき液としては、例えば、硫酸銅系から成る電解銅めっき液を用いればよい。このとき、貫通孔4は、絶縁樹脂層3A・3Bにおいて外側に向けて拡径していることから、貫通孔4の内部に電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔4の内部が電解銅めっきにより良好に充填されるとともにな絶縁樹脂層3A・3B表面の無電解めっき層13B上に電解銅めっき層が良好に被着される。
【0052】
次に、図2(h)に部分断面図で示すように、めっき用マスク14を剥離するとともにめっき用マスク14の下にあった無電解銅めっき層13Bが消滅するまでめっき層13Cをエッチングし、絶縁樹脂層3A・3Bの表面に配線導体層6A・6Bを形成する。
【0053】
なお、めっき層13Cをエッチングするには、硫酸と過酸化水素水の混合溶液または塩化第2銅水溶液または塩化第2鉄水溶液から成るエッチング液を用いればよい。
【0054】
このとき、貫通導体4の内面は炭化層8が除去されていることから、貫通導体5が炭化層8を起点にして剥離してしまうようなことはない。したがって、本発明の製造方法によると、貫通導体5と配線導体2A・2Bとが常に良好に接続された、信頼性の高い高密度配線の配線基板を得ることができる。
【0055】
最後に、絶縁樹脂層3A・3Bの表面にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性樹脂から成るソルダーレジスト7を被着させることにより図1に示す本発明の配線基板が完成する。
【0056】
なお、ソルダーレジスト7は、ソルダーレジスト7用の感光性の樹脂ペーストを従来周知のスクリーン印刷法を採用して配線導体層6A・6Bが形成された絶縁樹脂層3A・3B上に印刷塗布し、これを従来周知のフォトリソグラフィー技術を採用して所定のパターンに露光・現像することによって形成される。
【0057】
【発明の効果】
本発明の配線基板の製造方法によれば、レーザ加工により形成された貫通孔の内面の炭化層上にめっき膜を被着させた後、炭化層をめっき膜とともにエッチング除去し、さらに炭化層およびめっき膜が除去された貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成することから、めっき膜の形成時にめっき膜が炭化層の微視的な凹凸内に入り込んでめっき膜の成膜時の応力が炭化層に良好に作用して炭化層が剥離されやすくなり、炭化層およびめっき膜をエッチング除去する際に炭化層がめっき膜とともに良好に除去され、その結果、貫通導体が炭化層を起点にして剥離することがない配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製作される配線基板の実施の形態の一例を示す部分断面図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の部分断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・絶縁樹脂板
2A・2B・・・配線導体
3A・3B・・・絶縁樹脂層
4・・・・・・・貫通孔
5・・・・・・・貫通導体
6A・6B・・・配線導体層
8・・・・・・・炭化層
13A・・・・・・めっき膜
Claims (1)
- 絶縁樹脂板の上下面に銅箔から成る配線導体が被着された両面銅張板の上下両面に絶縁樹脂層を被着させるとともに、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層にレーザ加工を施すことにより、前記両面銅張板および前記絶縁樹脂層を貫通し、内面に炭化層が形成された複数の貫通孔を穿孔する工程と、次に前記炭化層の表面にめっき膜を被着させる工程と、次に前記炭化層を前記めっき膜とともにエッチング除去する工程と、次に前記炭化層および前記めっき膜が除去された前記貫通孔の内部にめっきを充填して貫通導体を形成するとともに前記絶縁樹脂層の表面に前記めっきを被着させて配線導体層を形成する工程とを行なうことを特徴とする配線基板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003014864A JP2004228362A (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | 配線基板の製造方法 |
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Cited By (2)
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KR100861406B1 (ko) | 2007-04-27 | 2008-10-02 | 주식회사 코리아써키트 | 인쇄회로기판 제조방법 |
CN110430669A (zh) * | 2019-08-13 | 2019-11-08 | 福建世卓电子科技有限公司 | 基于激光钻孔碳化导电直接金属化孔的电路板及生产工艺 |
-
2003
- 2003-01-23 JP JP2003014864A patent/JP2004228362A/ja active Pending
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