JP2004226376A - 薄膜のその場解析方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】非破壊かつリアルタイムで、ナノオーダーの薄膜に対し、精度良く、膜厚および化学構造を解析できるその場解析方法および装置を提供する。
【解決手段】雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求める薄膜のその場解析方法であって、下記の工程:上記薄膜に光を照射し、該薄膜からの反射光の干渉に基づいて該薄膜の膜厚を求める工程、上記薄膜の表面を高エネルギービームで打撃して粗化することにより該薄膜からの反射光の干渉を解消させる工程、および上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析することにより該薄膜の化学構造を求める工程を行なうことを特徴とする。
【選択図】 図3
【解決手段】雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求める薄膜のその場解析方法であって、下記の工程:上記薄膜に光を照射し、該薄膜からの反射光の干渉に基づいて該薄膜の膜厚を求める工程、上記薄膜の表面を高エネルギービームで打撃して粗化することにより該薄膜からの反射光の干渉を解消させる工程、および上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析することにより該薄膜の化学構造を求める工程を行なうことを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雰囲気制御チャンバ内で薄膜をその場解析する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池や金属材料等、各種材料表面における反応皮膜厚さや化学構造を非破壊かつ反応中にリアルタイムで解析するその場(in situ)解析は、種々の装置や材料を開発する上で極めて重要である。典型例として、電池電極表面に形成する皮膜は、電池性能に直接反映するため、成長中の皮膜の厚さと化学構造を解析するツールが望まれている。
【0003】
従来、このような要請に対応する方法としては、1)皮膜断面部のSEM、TEM観察による断面測長、2)皮膜の電気特性(キャパシタンス等)の測定、3)赤外線反射法等による光干渉計など、が挙げられる。
【0004】
しかし、上記従来の方法1)〜3)には下記の問題があった。
【0005】
1)破壊分析である。リアルタイムでの観察ができない。化学構造を解析できない。
【0006】
2)測定精度が悪い。化学構造を解析できない。
【0007】
3)ナノオーダー(nmレベル)の薄膜が解析できない。
【0008】
また、特許文献1(特開平2−24502号公報)には、試料表面に形成した透明薄膜に紫外光を照射し、薄膜の膜厚(10nm以下)を測定する方法が提示されている。しかしこの方法では、測定雰囲気に対して何ら考慮が払われていないうえ、化学構造の解析を行なうことができない、という問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−24502号公報(2頁右上欄8〜14行、3頁右下欄12〜16行)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の限界を超えて、非破壊かつリアルタイムで、ナノオーダーの薄膜に対し、精度良く、膜厚および化学構造を解析できるその場解析方法および装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による方法は、雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求める薄膜のその場解析方法であって、下記の工程:
上記薄膜に光を照射し、該薄膜からの反射光の干渉に基づいて該薄膜の膜厚を求める工程、
上記薄膜の表面を高エネルギービームで打撃して粗化することにより該薄膜からの反射光の干渉を解消させる工程、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析することにより該薄膜の化学構造を求める工程
を行なうことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による装置は、雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求めるための薄膜のその場解析装置であって、下記:
薄膜試料を収容する雰囲気制御チャンバ、
上記薄膜の膜厚を求めるための第1の光源および反射光検出器、
上記薄膜の表面を粗化するための高エネルギービーム源、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析するための第2の光源および反射光検出器
を備えたことを特徴とする。
【0013】
薄膜の膜厚を求めるために、薄膜に照射する光として紫外光、可視光、赤外光のいずれかを用いることができる。
【0014】
前記薄膜の表面を粗化するために、高エネルギービームとしてイオンビーム、超音波ビーム、電子ビーム、無機物微粒子ビームの少なくとも1種を用いることができる。
【0015】
前記薄膜の化学構造を求めるために、薄膜の吸光分光分析のために紫外光または赤外光を用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、表面に薄膜が生成した試料を制御雰囲気中に保持したままの状態で膜厚測定と化学構造解析とを引き続き行なうことができるので、非破壊でリアルタイムのその場解析をすることができる。
【0017】
本発明による典型的な薄膜解析手順は、(1)光干渉による膜厚測定→(2)表面の粗化→(3)吸光分光分析による化学構造解析、である。
【0018】
このうち、(1)光干渉による膜厚測定は、前記特許文献1等により公知の方法により行なうことができる。光干渉が起きるためには、薄膜の表面が十分に平滑なことが必要である。
【0019】
本発明の特徴は、(2)表面の粗化の後に(3)吸光分光分析による化学構造解析を行なう点にある。膜厚測定に必要であった光干渉は、吸光分光分析のためにはむしろ妨げになる。反射光スペクトルにおいて、干渉ピークが吸光ピークと重なり、吸収ピークの検出精度が著しく劣化するからである。本発明では、薄膜表面を粗化して光干渉の発生を防止した状態で吸光分光分析を行なうので、干渉ピークの重なりに妨げられることなく吸光ピークを検出でき、薄膜の化学構造を高精度で解析できる。表面粗化された薄膜は、至る所で光路差が存在するので干渉が起きない。
【0020】
以下、本発明による解析手順の各ステップを詳述する。
【0021】
(1)光干渉による膜厚測定
膜厚測定用の光は、膜厚に応じて紫外光、可視光、赤外光のいずれかを用いる。特に膜厚の小さいナノオーダーの薄膜の場合には、紫外線(波長400nm以下)を用いる。紫外光の光源としては、Hgランプ、Xeランプ等を用いる。
【0022】
ただし、膜厚と光の波長との対応は必ずしも限定的ではなく、薄膜への光入射角の選択によりかなり広い範囲で許容される。例えば、薄膜表面に立てた垂線に対する入射角θを大きく(薄膜表面に対して平行に近く)して光を照射すれば、薄膜内での光路を大きく確保できるので、膜厚の小さい薄膜に対しても、紫外光ではなく可視光や赤外光を用いて干渉を起こすことができる。
【0023】
膜厚測定のためには、薄膜に照射する光の波長を一定の範囲内で変動させることで、波数(波長の逆数)に対する反射光強度のスペクトル(分光スペクトル)を採る。この分光スペクトルは、図1に模式的に示したように複数の干渉ピークPから成り、これに基づいて公知の下記式により薄膜の膜厚Dを算出する。
【0024】
〔膜厚Dの算出式〕
D=104Δm/{2(n2−sin2θ)1/2(ν1−ν2)}
D:膜厚(μm)
n:屈折率
θ:光入射角
ν1:最左端ピーク波数(cm−1)
ν2:最右端ピーク波数(cm−1)
Δm:ν1〜ν2間の谷数(周波数)
図2に示すように、反射光は、薄膜表面で直接反射された光(表面反射光)と、薄膜表面から薄膜内に入り薄膜裏面(薄膜と下地との界面)で反射され再び薄膜内を通って薄膜表面から出現した光(裏面反射光)とが重なり合って構成されており、両方の反射光の光路差が波長の整数倍となる場合に反射光強度が極大となり、反射スペクトル中の対応する波数νの位置に干渉ピークが出現する。
【0025】
上記式において屈折率nは、既知のデータベースの値を用いることができる。屈折率nが、化学構造により無視できない影響を受ける場合には、本発明において吸光分光分析により求める化学構造に対応するn値を用いることができる。
【0026】
チャンバ内をAr、N2等の不活性なガスで置換すれば、薄膜試料の酸化を防止して観察することができる。また、チャンバ内を減圧状態にすれば、気体による反射光の散乱を低減できるので、反射光検出効率を向上させることができる。
【0027】
(2)表面の粗化
これが本発明の最も重要な特徴である。既に述べたように、反射光スペクトル中に吸光ピークと干渉ピークが共存すると、干渉ピークに妨げられて吸光ピークを高精度で解析することができない。そこで本発明では、膜厚測定には必須でった光干渉の発生を防止して、吸光ピークを高精度で解析することを可能とした。光干渉を防止する手段として、高エネルギービームで薄膜表面を打撃することにより粗化する。この高エネルギービームとしては、イオンビーム、超音波ビーム、電子ビーム、無機物微粒子ビーム等を用いることができる。光干渉が発生するためには薄膜表面が高度に平滑であることが必要なので、干渉を起こさせないための表面粗化はごく軽微に行なえば十分である。必要な表面粗化が達成されたか否かは、吸光分光分析用の光を薄膜に照射して図1のような干渉ピークの有無により判定できる。
【0028】
高エネルギービームとしてイオンビームを用いる場合には、チャンバ内の雰囲気によりイオン照射が妨げられないように、チャンバ内を減圧しておくことが望ましい。
【0029】
(3)吸光分光分析による化学構造解析
表面粗化により光干渉が発生しない状態にした薄膜に対して、公知の方法により吸光分光分析を行なう。
【0030】
この吸光分光分析には、紫外光および/または赤外光を用いることができる。紫外光を用いれば薄膜構成物質の化学結合に関与している電子に関する情報が得られ、赤外光を用いれば化学結合している原子に関する情報が得られる。
【0031】
この場合にも、膜厚測定時と同様に、チャンバ内をAr、N2等の不活性なガスで置換すれば、薄膜試料の酸化を防止して観察することができる。また、チャンバ内を減圧状態にすれば、気体による反射光の散乱を低減できるので、反射光検出効率を向上させることができる。
【0032】
【実施例】
図3に、本発明による薄膜のその場解析装置の構成例を模式的に示す。
【0033】
図示した装置は、雰囲気制御チャンバ内に、表面皮膜としての薄膜を形成した試料を保持するようになっている。この表面皮膜は例えば厚さ0.01〜1μmである。
【0034】
紫外線光源から入射角θで皮膜に紫外線が照射され、皮膜から反射角θで出現した反射光を捕らえるように検出器が配置されている。この例では、膜厚測定および化学構造解析をいずれも紫外光により行なうように、図示した1組の紫外線光源および検出器を兼用している。表面粗化の手段としてイオン銃が配置されている。
【0035】
図4に、上記装置を用いて本発明による解析を行なった場合に得られる分光スペクトルの変化を模式的に示す。横軸は入射光波数、縦軸は反射光強度である。
【0036】
図4(A)は、本発明による解析手順(1)で皮膜表面が平滑なままの状態で求めた干渉スペクトルであり、規則的な干渉ピークのみが現われている。このスペクトルから膜厚を計算できる。
【0037】
図4(B)は、やはり本発明による解析手順(1)で皮膜表面が平滑なままの状態で求めた分光スペクトルであるが、規則的な干渉ピークの一部に重なって、化学構造に基づく吸光ピーク(図中の円内)が現われている。この場合、膜厚については、干渉ピークのみが規則的に現われているスペクトル領域を用いて算出できる。しかし、化学構造については、このような混在スペクトルから精度良く解析することはできない。
【0038】
図4(C)は、本発明により皮膜表面を粗化した後に求めた分光スペクトルである。粗化により干渉の発生を解消したことにより、吸光ピークのみが明瞭に現われている。この吸光スペクトルに基づき、例えば図示したようにCの二重結合を持つ6員環構造すなわちベンゼン環を同定することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、非破壊かつリアルタイムで、ナノオーダーの薄膜に対し、精度良く、膜厚および化学構造を解析できるその場解析方法および装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、干渉スペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、薄膜による光干渉発生の原理を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明による薄膜のその場解析装置の構成例を示す模式図である。
【図4】図4は、種々の状態の薄膜による分光スペクトルを示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、雰囲気制御チャンバ内で薄膜をその場解析する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池や金属材料等、各種材料表面における反応皮膜厚さや化学構造を非破壊かつ反応中にリアルタイムで解析するその場(in situ)解析は、種々の装置や材料を開発する上で極めて重要である。典型例として、電池電極表面に形成する皮膜は、電池性能に直接反映するため、成長中の皮膜の厚さと化学構造を解析するツールが望まれている。
【0003】
従来、このような要請に対応する方法としては、1)皮膜断面部のSEM、TEM観察による断面測長、2)皮膜の電気特性(キャパシタンス等)の測定、3)赤外線反射法等による光干渉計など、が挙げられる。
【0004】
しかし、上記従来の方法1)〜3)には下記の問題があった。
【0005】
1)破壊分析である。リアルタイムでの観察ができない。化学構造を解析できない。
【0006】
2)測定精度が悪い。化学構造を解析できない。
【0007】
3)ナノオーダー(nmレベル)の薄膜が解析できない。
【0008】
また、特許文献1(特開平2−24502号公報)には、試料表面に形成した透明薄膜に紫外光を照射し、薄膜の膜厚(10nm以下)を測定する方法が提示されている。しかしこの方法では、測定雰囲気に対して何ら考慮が払われていないうえ、化学構造の解析を行なうことができない、という問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−24502号公報(2頁右上欄8〜14行、3頁右下欄12〜16行)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の限界を超えて、非破壊かつリアルタイムで、ナノオーダーの薄膜に対し、精度良く、膜厚および化学構造を解析できるその場解析方法および装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による方法は、雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求める薄膜のその場解析方法であって、下記の工程:
上記薄膜に光を照射し、該薄膜からの反射光の干渉に基づいて該薄膜の膜厚を求める工程、
上記薄膜の表面を高エネルギービームで打撃して粗化することにより該薄膜からの反射光の干渉を解消させる工程、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析することにより該薄膜の化学構造を求める工程
を行なうことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による装置は、雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求めるための薄膜のその場解析装置であって、下記:
薄膜試料を収容する雰囲気制御チャンバ、
上記薄膜の膜厚を求めるための第1の光源および反射光検出器、
上記薄膜の表面を粗化するための高エネルギービーム源、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析するための第2の光源および反射光検出器
を備えたことを特徴とする。
【0013】
薄膜の膜厚を求めるために、薄膜に照射する光として紫外光、可視光、赤外光のいずれかを用いることができる。
【0014】
前記薄膜の表面を粗化するために、高エネルギービームとしてイオンビーム、超音波ビーム、電子ビーム、無機物微粒子ビームの少なくとも1種を用いることができる。
【0015】
前記薄膜の化学構造を求めるために、薄膜の吸光分光分析のために紫外光または赤外光を用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、表面に薄膜が生成した試料を制御雰囲気中に保持したままの状態で膜厚測定と化学構造解析とを引き続き行なうことができるので、非破壊でリアルタイムのその場解析をすることができる。
【0017】
本発明による典型的な薄膜解析手順は、(1)光干渉による膜厚測定→(2)表面の粗化→(3)吸光分光分析による化学構造解析、である。
【0018】
このうち、(1)光干渉による膜厚測定は、前記特許文献1等により公知の方法により行なうことができる。光干渉が起きるためには、薄膜の表面が十分に平滑なことが必要である。
【0019】
本発明の特徴は、(2)表面の粗化の後に(3)吸光分光分析による化学構造解析を行なう点にある。膜厚測定に必要であった光干渉は、吸光分光分析のためにはむしろ妨げになる。反射光スペクトルにおいて、干渉ピークが吸光ピークと重なり、吸収ピークの検出精度が著しく劣化するからである。本発明では、薄膜表面を粗化して光干渉の発生を防止した状態で吸光分光分析を行なうので、干渉ピークの重なりに妨げられることなく吸光ピークを検出でき、薄膜の化学構造を高精度で解析できる。表面粗化された薄膜は、至る所で光路差が存在するので干渉が起きない。
【0020】
以下、本発明による解析手順の各ステップを詳述する。
【0021】
(1)光干渉による膜厚測定
膜厚測定用の光は、膜厚に応じて紫外光、可視光、赤外光のいずれかを用いる。特に膜厚の小さいナノオーダーの薄膜の場合には、紫外線(波長400nm以下)を用いる。紫外光の光源としては、Hgランプ、Xeランプ等を用いる。
【0022】
ただし、膜厚と光の波長との対応は必ずしも限定的ではなく、薄膜への光入射角の選択によりかなり広い範囲で許容される。例えば、薄膜表面に立てた垂線に対する入射角θを大きく(薄膜表面に対して平行に近く)して光を照射すれば、薄膜内での光路を大きく確保できるので、膜厚の小さい薄膜に対しても、紫外光ではなく可視光や赤外光を用いて干渉を起こすことができる。
【0023】
膜厚測定のためには、薄膜に照射する光の波長を一定の範囲内で変動させることで、波数(波長の逆数)に対する反射光強度のスペクトル(分光スペクトル)を採る。この分光スペクトルは、図1に模式的に示したように複数の干渉ピークPから成り、これに基づいて公知の下記式により薄膜の膜厚Dを算出する。
【0024】
〔膜厚Dの算出式〕
D=104Δm/{2(n2−sin2θ)1/2(ν1−ν2)}
D:膜厚(μm)
n:屈折率
θ:光入射角
ν1:最左端ピーク波数(cm−1)
ν2:最右端ピーク波数(cm−1)
Δm:ν1〜ν2間の谷数(周波数)
図2に示すように、反射光は、薄膜表面で直接反射された光(表面反射光)と、薄膜表面から薄膜内に入り薄膜裏面(薄膜と下地との界面)で反射され再び薄膜内を通って薄膜表面から出現した光(裏面反射光)とが重なり合って構成されており、両方の反射光の光路差が波長の整数倍となる場合に反射光強度が極大となり、反射スペクトル中の対応する波数νの位置に干渉ピークが出現する。
【0025】
上記式において屈折率nは、既知のデータベースの値を用いることができる。屈折率nが、化学構造により無視できない影響を受ける場合には、本発明において吸光分光分析により求める化学構造に対応するn値を用いることができる。
【0026】
チャンバ内をAr、N2等の不活性なガスで置換すれば、薄膜試料の酸化を防止して観察することができる。また、チャンバ内を減圧状態にすれば、気体による反射光の散乱を低減できるので、反射光検出効率を向上させることができる。
【0027】
(2)表面の粗化
これが本発明の最も重要な特徴である。既に述べたように、反射光スペクトル中に吸光ピークと干渉ピークが共存すると、干渉ピークに妨げられて吸光ピークを高精度で解析することができない。そこで本発明では、膜厚測定には必須でった光干渉の発生を防止して、吸光ピークを高精度で解析することを可能とした。光干渉を防止する手段として、高エネルギービームで薄膜表面を打撃することにより粗化する。この高エネルギービームとしては、イオンビーム、超音波ビーム、電子ビーム、無機物微粒子ビーム等を用いることができる。光干渉が発生するためには薄膜表面が高度に平滑であることが必要なので、干渉を起こさせないための表面粗化はごく軽微に行なえば十分である。必要な表面粗化が達成されたか否かは、吸光分光分析用の光を薄膜に照射して図1のような干渉ピークの有無により判定できる。
【0028】
高エネルギービームとしてイオンビームを用いる場合には、チャンバ内の雰囲気によりイオン照射が妨げられないように、チャンバ内を減圧しておくことが望ましい。
【0029】
(3)吸光分光分析による化学構造解析
表面粗化により光干渉が発生しない状態にした薄膜に対して、公知の方法により吸光分光分析を行なう。
【0030】
この吸光分光分析には、紫外光および/または赤外光を用いることができる。紫外光を用いれば薄膜構成物質の化学結合に関与している電子に関する情報が得られ、赤外光を用いれば化学結合している原子に関する情報が得られる。
【0031】
この場合にも、膜厚測定時と同様に、チャンバ内をAr、N2等の不活性なガスで置換すれば、薄膜試料の酸化を防止して観察することができる。また、チャンバ内を減圧状態にすれば、気体による反射光の散乱を低減できるので、反射光検出効率を向上させることができる。
【0032】
【実施例】
図3に、本発明による薄膜のその場解析装置の構成例を模式的に示す。
【0033】
図示した装置は、雰囲気制御チャンバ内に、表面皮膜としての薄膜を形成した試料を保持するようになっている。この表面皮膜は例えば厚さ0.01〜1μmである。
【0034】
紫外線光源から入射角θで皮膜に紫外線が照射され、皮膜から反射角θで出現した反射光を捕らえるように検出器が配置されている。この例では、膜厚測定および化学構造解析をいずれも紫外光により行なうように、図示した1組の紫外線光源および検出器を兼用している。表面粗化の手段としてイオン銃が配置されている。
【0035】
図4に、上記装置を用いて本発明による解析を行なった場合に得られる分光スペクトルの変化を模式的に示す。横軸は入射光波数、縦軸は反射光強度である。
【0036】
図4(A)は、本発明による解析手順(1)で皮膜表面が平滑なままの状態で求めた干渉スペクトルであり、規則的な干渉ピークのみが現われている。このスペクトルから膜厚を計算できる。
【0037】
図4(B)は、やはり本発明による解析手順(1)で皮膜表面が平滑なままの状態で求めた分光スペクトルであるが、規則的な干渉ピークの一部に重なって、化学構造に基づく吸光ピーク(図中の円内)が現われている。この場合、膜厚については、干渉ピークのみが規則的に現われているスペクトル領域を用いて算出できる。しかし、化学構造については、このような混在スペクトルから精度良く解析することはできない。
【0038】
図4(C)は、本発明により皮膜表面を粗化した後に求めた分光スペクトルである。粗化により干渉の発生を解消したことにより、吸光ピークのみが明瞭に現われている。この吸光スペクトルに基づき、例えば図示したようにCの二重結合を持つ6員環構造すなわちベンゼン環を同定することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、非破壊かつリアルタイムで、ナノオーダーの薄膜に対し、精度良く、膜厚および化学構造を解析できるその場解析方法および装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、干渉スペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、薄膜による光干渉発生の原理を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明による薄膜のその場解析装置の構成例を示す模式図である。
【図4】図4は、種々の状態の薄膜による分光スペクトルを示すグラフである。
Claims (8)
- 雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求める薄膜のその場解析方法であって、下記の工程:
上記薄膜に光を照射し、該薄膜からの反射光の干渉に基づいて該薄膜の膜厚を求める工程、
上記薄膜の表面を高エネルギービームで打撃して粗化することにより該薄膜からの反射光の干渉を解消させる工程、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析することにより該薄膜の化学構造を求める工程
を行なうことを特徴とする薄膜のその場解析方法。 - 前記膜厚を求める工程において、該薄膜に照射する光として紫外光、可視光、赤外光のいずれかを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記薄膜の表面を粗化する工程において、前記高エネルギービームとしてイオンビーム、超音波ビーム、電子ビーム、無機物微粒子ビームの少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- 前記薄膜の化学構造を求める工程において、該薄膜の吸光分光分析のために紫外光または赤外光を用いることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- 雰囲気制御チャンバ内に薄膜試料を収容した状態で該薄膜の膜厚および化学構造を求めるための薄膜のその場解析装置であって、下記:
薄膜試料を収容する雰囲気制御チャンバ、
上記薄膜の膜厚を求めるための第1の光源および反射光検出器、
上記薄膜の表面を粗化するための高エネルギービーム源、および
上記表面粗化された薄膜を吸光分光分析するための第2の光源および反射光検出器
を備えたことを特徴とする薄膜のその場解析装置。 - 前記第1の光源および反射光検出器は、紫外光、可視光、赤外光のいずれかの光源および検出器であることを特徴とする請求項5記載の装置。
- 前記高エネルギービーム源は、イオンビーム源、超音波ビーム源、電子ビーム源、無機物微粒子ビーム源の少なくとも1種であることを特徴とする請求項5または6記載の装置。
- 前記第2の光源および反射光検出器は、紫外光または赤外光の光源および検出器であることを特徴とする請求項5から7までのいずれか1項記載の装置。
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ID=32904904
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003017864A Withdrawn JP2004226376A (ja) | 2003-01-27 | 2003-01-27 | 薄膜のその場解析方法および装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004226376A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100501376C (zh) * | 2005-08-08 | 2009-06-17 | 鸿富锦精密工业(深圳)有限公司 | 纳米材料相转移侦测装置及方法 |
US20220365038A1 (en) * | 2021-05-11 | 2022-11-17 | Jilin University | Battery in-situ test system |
-
2003
- 2003-01-27 JP JP2003017864A patent/JP2004226376A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100501376C (zh) * | 2005-08-08 | 2009-06-17 | 鸿富锦精密工业(深圳)有限公司 | 纳米材料相转移侦测装置及方法 |
US20220365038A1 (en) * | 2021-05-11 | 2022-11-17 | Jilin University | Battery in-situ test system |
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