JP2004225685A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる車両の駆動力制御装置を提供すること。
【解決手段】少なくともトルク応答の早い電動モータとトルク応答の遅いエンジンを含む出力制御可能な複数の原動機が搭載されたパワートレインと、ドライバーの操作に応じて原動機の出力を定め、複数の原動機の出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段と、を備えた車両の駆動力制御装置において、駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、電動モータに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくともトルク応答の早い電動モータとトルク応答の遅いエンジンを含む出力制御可能な複数の原動機が搭載されたパワートレインと、ドライバーの操作に応じて原動機の出力を定め、複数の原動機の出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段と、を備えた車両の駆動力制御装置において、駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、電動モータに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加速要求時にドライバーの加速要求操作に応じた車両の加速応答波形をパワートレインの駆動力を制御することにより実現する車両の駆動力制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来のハイブリッド車両の駆動力制御装置は、目標駆動トルクと発電トルクとを達成するトルク値を目標エンジントルクとしてエンジンを制御すると共に、目標駆動トルクとエンジントルク推定値との差分を目標モータトルクとしてモータを制御する。これにより、定常的には要求発電量を達成でき、バッテリの充電状態を満たすことができる上に、過渡的には乗員の要求駆動力を達成でき、俊敏な加速、減速を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−343891号公報(第1頁、図6)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来のハイブリッド車両の駆動力制御装置にあっては、アクセル踏み込み操作開始からエンジンが応答しない期間、モータで全ての要求トルクを実現させようとした場合、必要とする期間が数100[ms]単位の短時間であるにもかかわらず、必要となるトルクはエンジントルクとほぼ同等分だけ必要になることから、モータ、および、それを動かすための電源系に大きな負担がかかる。この結果、より大きなモータ、電源系が必要となり、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招く。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答良く、かつ、十分な加速感を実現することができる車両の駆動力制御装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、
ドライバーの操作に応じてパワートレインの出力を定め、パワートレインの出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、前記パワートレインに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現する手段とした。
【0007】
【発明の効果】
本発明の車両の駆動力制御装置にあっては、駆動力制御手段において、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、パワートレインに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにしたため、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答良く、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の車両の駆動力制御装置を実現する実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例の車両の駆動力制御装置を示す全体ブロック図、図2は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の加速時初期応答生成部を示すブロック図、図3は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の加速時主応答生成部を示すブロック図、図4は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の減速時主応答生成部を示すブロック図である。
【0010】
図1において、1はアクセル操作量検出手段、2は車速検出手段、3は静的目標駆動力生成部、4は駆動力配分部、5は遅れ補償量演算手段、6は加算器、7は加速操作判別部、8は加速時初期応答生成部、9は加速時主応答生成部、10は減速時主応答生成部、11はエンジン応答推定部、12は加算器、13は切り替え器、14は差分器である。
【0011】
前記アクセル操作量検出手段1は、ドライバーによるアクセルペダルへの操作量を検出する手段であり、例えば、アクセル開度センサ等が該当する。
【0012】
前記車速検出手段2は、車両速度を検出する手段であり、例えば、変速機出力軸回転センサや車輪速センサ等が該当する。
【0013】
前記静的目標駆動力生成部3は、アクセル操作量の絶対値と、車速とに基づき、主に車速に関連して定められる定速走行状態での走行抵抗から決まるアクセル操作量−収束車速特性によって静的目標駆動力を生成する。
【0014】
前記駆動力配分部4は、静的目標駆動力生成部3からの静的目標駆動力を目標エンジントルクと目標モータトルクとに配分する。
【0015】
前記遅れ補償量演算手段5は、アクセル操作量検出手段1からのアクセル操作量と静的目標駆動力生成部3からの静的目標駆動力を入力し、エンジンの応答遅れに対するモータでのトルク補償分である遅れ補償量を演算する。
【0016】
前記加算器6は、駆動力配分部4からの目標モータトルクに、遅れ補償量演算手段5からの遅れ補償量を加算して、最終的な目標モータトルクとする。
【0017】
なお、前記駆動力配分部4からの目標エンジントルクは、図外のエンジン(第2の原動機)に設けられた制御スロットルバルブを制御することで得られ、前記加算器6からの目標モータトルクは、図外のモータ(第1の原動機)を駆動制御することで得られる。
【0018】
前記加速操作判別部7は、アクセル操作量の変化に基づいて、ドライバーの要求が加速要求であるか否かを判別し、加速操作判別信号を切り替え器13へ送出する。例えば、アクセル操作量の時間微分値が正であれば加速要求であると判別し、アクセル操作量の時間微分値がゼロではれば一定車速要求であると判別し、アクセル操作量の時間微分値が負であれば減速要求であると判別する。
【0019】
前記加速時初期応答生成部8は、静的目標駆動力に予め上下限の制限をかけてから、動特性に入力することにより、加速度検知の閾値近傍を上限とした加速時初期応答を生成する。すなわち、加速時初期応答生成部8は、図2に示すように、加速時初期応答制限演算部8aと、加速時初期応答動特性8bにより構成されている。前記加速時初期応答制限演算部8aでは、静的目標駆動力と加速時初期応答上限値のうち小さい値を選択し、次いで、選択した値と加速時初期応答下限値のうち大きな値を選択し、この選択値を制限付き目標駆動力とする。前記加速時初期応答動特性8bは、加速時初期応答制限演算部8aからの制限付き目標駆動力を加速時初期応答動特性に入力することで加速時初期応答目標駆動力を演算する。
【0020】
前記加速時主応答生成部9は、静的目標駆動力から加速時初期応答生成部8で生成された制限付き目標駆動力を差し引き、応答入力の絶対量を合わせてから、動特性に入力することにより、加速時主応答を生成する。すなわち、加速時主応答生成部9は、図3に示すように、静的目標駆動力から制限付き目標駆動力を差し引く差分器9aと、差し引いた駆動力を加速時主応答動特性に入力することで加速時主応答目標駆動力を演算する加速時主応答動特性9bと、により構成されていて、最終的な応答のゲインを1にしている。
【0021】
前記減速時主応答生成部10は、図4に示すように、静的目標駆動力を入力することにより減速時目標駆動力を生成する減速時主応答動特性10aにより構成される。
【0022】
前記エンジン応答推定部11は、静的目標駆動力から、パワートレイン系の遅れ要素として、エンジンの吸入空気の応答遅れ、吸気サイクルによる遅れ、吸入空気量制御装置の応答遅れ、系のイナーシャトルク、系のバネ要素、系の効率を用いてエンジンの応答特性分遅らせたエンジン応答推定駆動力を算出する。
【0023】
前記加算器12は、加速時初期応答目標駆動力と加速時主応答目標駆動力とを加算して加速時目標駆動力を算出する。
【0024】
前記切り替え器15は、前記加速操作判別部7からの加速操作判別信号により、加速操作判別時には加速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力として選択し、定速操作時や減速操作時には減速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力として選択する。
【0025】
前記差分器16は、前記切り替え器15からの動特性付き目標駆動力から、前記エンジン応答推定部11からのエンジン応答推定駆動力を差し引くことにより遅れ補償量が算出され、これを前記加算器6に出力する。
【0026】
次に、作用を説明する。
【0027】
[加速要求に対する従来の駆動力制御の考え方]
一般に、内燃機関には、その動作が間欠的であることと、吸入空気の応答から、トルクの増加要求(アクセル踏み込み操作)に対して、図5に示すように、車両加速度の上昇に応答遅れが存在する。
【0028】
この車両加速度の上昇応答遅れにより、ドライバーの要求に対して車両の挙動変化が遅れるため、加速感をスポイルする要因となっている。モータにはこのような応答遅れ要因はないため、非常に高い応答性を実現することができる。そこで、内燃機関の遅れ分をモータに配分し、これを実現することによって、内燃機関の応答遅れを補償するハイブリッド(HEV)システムを考える。
【0029】
図6は無段変速機(CVT)の変速の応答遅れをモータで補償する従来例である。無段変速機の変速の応答遅れは、一般に前述の内燃機関の応答遅れよりも、遅れが大きく、したがって、この従来では、内燃機関の応答遅れの補償については語られていない。
【0030】
この応答遅れを、例えば、モータのように、内燃機関より応答の早い原動機を用いて補償することにより、機関全体の応答性を向上させ、加速性能を向上させる方法が考えられる。
【0031】
図7の例は、動的目標駆動力生成部にて、目標とする動特性つき目標駆動力を生成し、エンジン応答推定部にて、エンジンの応答遅れを勘案したエンジン応答推定駆動力を生成し、この差分を、目標モータトルクに加えて、モータにて補償するものである。
【0032】
このとき、図8に示すように、エンジンが応答しない期間、モータで全ての要求トルクを実現させようとした場合、必要とする期間が数100[ms]単位の短時間であるにもかかわらず、必要となるトルクはエンジントルクとほぼ同等分だけ必要になることから、モータ、および、それを動かすための電源系に大きな負担がかかる。この結果、より大きなモータ、電源系が必要となり、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招く。
【0033】
[加速要求に対する本発明の駆動力制御の考え方]
そこで、本発明では、ドライバーの加速要求に対し、最小限のモータアシストで、加速感を向上させることを考える。
重要なのは、ドライバーの要求に対して、即座に応答したようにドライバーが感じることであって、即座に応答することではない。
そこで、人間の加速度に対する生理的要求として、以下の2つに注目する。
・加速度が変化しても、その変化代がある閾値を超えないと、検知できない。
・加速度が変化しても、ある無駄時間経過しないと、検知できない。
これらから、図9に示すように、モータ等のアシストにより、内燃機関の遅れを補償しようとしても、効果のない時間的、物理的領域が存在する。
【0034】
この領域内でいくら内燃機関の応答遅れの補償を行っても、ドライバーはその生理的限界から認識することが出来ない。また、図9に示すように、加速度の変化に気づくと同時に、ドライバーの操作以前と加速度の絶対値が大きく変化すると、ドライバーとしては変化を予測することが難しくなり、したがって、制御の難しい系となってしまう。
【0035】
なお、人間の外界変化の認識応答時間は0.1〜0.2sec遅れることより、加速度変化に気づいたときにはその加速度変化の大きさが大き過ぎ、ドライバーは加速度を下げるように操作してしまい、加速操作と減速操作とのハンチングが起こり得る。
【0036】
これに対し、本発明では、ドライバーの加速要求に対してモータに与えるエンジンの遅れ補償量を、即座に応答し、かつ、加速度検知の閾値近傍でとどまり、絶対値として、大きな加速度を感じさせない第1の応答と、第1の応答と比べて、大きな遅れを持ち、かつ、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の総和による最小限アシストによるものとした。
【0037】
[加速要求時の駆動力制御作用]
加速要求時の駆動力制御作用について説明すると、まず、アクセル操作量から、ドライバーの要求が加速要求であるか否かを、加速操作判別部7にて判定する。ドライバーの要求が加速要求であると判別したならば、加速時初期応答生成部8からの加速時初期応答目標駆動力と、加速時主応答生成部9からの加速時主応答目標駆動力の和で求められる加速時目標駆動力を切り替え器15にて選択する。また、ドライバーの要求が加速要求でない、と判定したならば、減速時主応答生成部10からの減速時目標駆動力を切り替え器15にて選択する。
【0038】
以上の処理により得られた動特性付き目標駆動力と、エンジンの応答特性分遅らせたエンジン応答推定駆動力との差を差分器14において算出し、この差分をエンジンの応答遅れ補償量とし、これを目標モータトルクに加え、図10に示すように、人間の生理的限界を前提にした最小限アシストを実現する。
【0039】
図11は加速時初期応答生成部8での加速時初期応答動特性であり、ステップ的に上昇するアクセル操作量に対し、単調な1次遅れ特性による加速時初期応答を示す(第1の応答)。
【0040】
図12は加速時主応答生成部9での加速時主応答動特性であり、ステップ的に上昇するアクセル操作量に対し、第1の応答と比べて、大きな遅れを持ち、かつ、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する加速時主応答を示す(第2の応答)。
【0041】
なお、図12の中段に示すのは第2の応答の微分形であり、y=tnとy=e−atの掛け算であるy=tn・e−atの式にて近似され、その積分値をとることで、図12の下段に示す第2の応答の特性を作ることができる。
【0042】
そして、加速時初期応答生成部8での第1の応答と、加速時主応答生成部9での第2の応答を加算することで、図10の最小限アシスト部分が生成されることになる。
【0043】
これによって、ドライバーの加速要求操作に対して、まず第1の応答が、遅れなく立ち上がる。このことにより、ドライバーが加速度の変化を検知可能になった段階で、不必要に大きな加速度変化を感じさせることなく、かつ、即座にまず応答したことのみを感じさせることができる。また、ここで、加速度の変化代が検知限界近傍にあることで、次からの応答に対しては、この加速度検知の閾値による無駄時間を生じさせることなく、検知させることが可能である。
【0044】
続いて、第2の応答により、そこから滑らかに加速度を増加させ、目標まで漸近させる。このとき、第2の応答として、加速度変化速度を徐々に増加させるような特性を用いた場合、ドライバーは常に加速度の増加を感じつづけるので、加速感をより強調することできる。
【0045】
以上のように、この第1の応答と第2の応答を組み合わせることにより、図10に示すように、人間の生理的限界を前提にした駆動力の最小限アシストが達成され、この最小限アシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現できる。さらに、ドライバーが加速度の変化を検知した時の加速度の大きさは、検知限界相当なので、加速の変化に段差感がない。
【0046】
[減速要求時の駆動力制御作用]
減速時には、応答よりも、滑らかに加速度が減少することが求められるので、第1の応答のようなアクセル操作に対応した初期応答は必要ない。また、主応答についても、徐々に加速度が変化するような特性は必要ないと思われるので、むしろ、図13に示すように、減速開始は滑らかに変化し、そののち単調減少するような第3の応答(2次遅れ特性)が求められる。したがって、減速時主応答生成部10の動特性は、加速時主応答生成部9の動特性とは異なるものが必要である。
【0047】
次に、効果を説明する。
第1実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0048】
(1) ドライバーの操作に応じてパワートレインの出力を定め、パワートレインの出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、電動モータに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにしたため、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0049】
(2) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し第1の応答である加速時初期応答を生成する加速時初期応答生成部8と、静的目標駆動力を入力し第2の応答である加速時主応答を生成する加速時主応答生成部9と、生成された加速時初期応答と加速時主応答とを加えて加速時目標駆動力を得る加算器12と、を有する構成であるため、独立に生成された第1の応答と第2の応答とを加算する演算処理により、加速操作時において、最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる動特性付き目標駆動力を確実に得ることができる。
【0050】
(3) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し第3の応答である減速時主応答を生成する減速時主応答生成部10と、アクセル操作に基づいて加速操作を判別する加速操作判別部7と、加速操作であると判別されたときは加算器12からの加速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力とし、定速操作もしくは減速操作であると判別されたときは減速時主応答生成部10からの減速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力とする切り替え器13と、を有する構成としたため、加速操作時と定速操作もしくは減速操作時とで要求に応じた異なる応答による動特性付き目標駆動力を得ることができる。
【0051】
(4) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力しエンジンの応答を推定するエンジン応答推定部11と、動特性付き目標駆動力からエンジン応答推定駆動力を差し引くことでエンジンの遅れ補償量を求める差分器14と、該差分器14からの遅れ補償量を電動モータの目標モータトルクに加える加算器6と、を有する構成としたため、加速操作時において、エンジンの応答遅れを考慮した遅れ補償量による精度の高いモータ出力制御により、最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0052】
(5) エンジン応答推定部11は、パワートレイン系の遅れ要素として、エンジンの吸入空気の応答遅れ、吸気サイクルによる遅れ、吸入空気量制御装置の応答遅れ、系のイナーシャトルク、系のバネ要素、系の効率を用いて、エンジン応答推定駆動力を演算するため、静的目標駆動力から精度の高いエンジン応答推定駆動力を求めることができる。
【0053】
(6) 加速時初期応答生成部8は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力に対し、上下限の制限を行なう加速時初期応答制限演算部8aと、上下限の制限を行った後の制限付き目標駆動力を入力信号として、その出力を第1の応答とする加速時初期応答動特性8bと、を有する構成としたため、第1の応答における加速度が大き過ぎて従来技術と変わらなくなることも、第1の応答における加速度が小さ過ぎてドライバーに違和感を与えることも防止できる。
【0054】
(7) 加速時初期応答制限演算部8aは、目標値に対し上下限の制限において、一般に人間が検知できる加速度段差の下限幅に相当する上限制限を行い、また、絶対値0による下限制限を行うようにしたため、第1の応答における加速度を、人間が加速度検知可能な閾値近傍の適切な加速度にすることができる。なお、この人間が加速度検知可能な閾値は、現在の加速度の大きさにかかわらず一定の値で与える。
【0055】
(8) 加速時主応答生成部9は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力から制限付き目標駆動力を差し引く差分器9aと、差分器9aからの駆動力を入力信号として、その出力を第2の応答とする加速時主応答動特性9bと、を有する構成としたため、加速時初期応答動特性8bへ入力する制限付き目標駆動力と加速時主応答動特性9bへ入力する目標駆動力との和が静的目標駆動力となり、加速時目標駆動力を生成する加算器12での最終的な応答ゲインを1にすることができる。
【0056】
(9) 減速時主応答推定部10は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し、滑らかに減速の変化が始まって徐々に収束する2次遅れ特性による第3の応答を生成する減速時主応答動特性10aを有する構成としたため、滑らかに加速度が減少することが求められる減速時に対応した加速度応答を得ることができる。
【0057】
(第2実施例)
この第2実施例は、操作前の目標駆動力の値によらず加速時に初期応答を与えることができると共に、微小の入力信号の変化による揺らぎを抑制することができる加速時初期応答生成部とした例である。
【0058】
すなわち、第2実施例の加速時初期応答生成部18は、図14に示すように、静的目標駆動力の現在値と1制御周期前の値との差分をとる差分器18aと、この差分値と1制御周期前の第2比較器18dにより選択された値とを加算する積分器18bと、この積分値と加速時初期応答上限値+上限ヒステリシス分との最小値をとる第1比較器18cと、該第1比較器からの最小値と加速時初期応答下限値との最大値をとる第2比較器18dと、この最大値と加速時初期応答上限値との最小値(制限付き目標駆動力)をとる第3比較器18eと、加速時に制限付き目標駆動力から加速時初期応答目標駆動力を得る加速時初期応答動特性18fと、減速時に制限付き目標駆動力から減速時初期応答目標駆動力を得る減速時初期応答動特性18gと、前記差分器18aから出力される値の符号が正の場合は加速側に符号がゼロまたは負の場合は減速側に切り替える切り替え器18hと、を有して構成している。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0059】
次に、作用を説明する。
【0060】
[初期応答の生成作用]
第2実施例の加速時初期応答生成部18では、差分器18aにおいて、一旦、静的目標駆動力の1制御周期前の値との差分を取る。次に、その結果を積分器18bにて積分するにあたって、積分値に上下限の制限を設ける。よって、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行った後に、減速要求、あるいは、定速走行要求により、アクセルの戻し操作が行われれば、静的目標駆動力が減少するので、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行う直前には、この積分値は、0に漸近していることが期待できる。
【0061】
したがって、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行ったとき、操作前の目標駆動力の値によらず、そこからの変化代に対して上限制限を持った、第1の応答を生成することが可能である。このとき、積分値に対する上限値に、ヒステリシス分を上乗せした上で、動特性に送る際に、本来の上限値で制限することにより、微小の入力信号の変化による積分値の上限近傍の揺らぎを抑制することができる。
【0062】
また、第2実施例装置のような構成を採用した場合、アクセル操作や車速の増加等による静的目標駆動力の減少に伴ない、第1の応答の出力も減少することになる。このときに、第1の応答と第2の応答では、基本的な動特性に差があるので、応答をそろえる必要がある。そこで、静的目標駆動力の差分値の符号に対して、増加側と減少側で動特性を変更し、増加側では第1の応答における本来の応答、減少側では第2の応答と同等の応答を生成するようにする。
【0063】
次に、効果を説明する。
第2実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0064】
(10) 加速時初期応答生成部18では、差分器18aにおいて、一旦、静的目標駆動力の1制御周期前の値との差分をとり、その結果を積分器18bにて積分するにあたって、積分値に上下限の制限を設けるようにしたため、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行ったとき、操作前の目標駆動力の値によらず、そこからの変化代に対して上限制限を持った、第1の応答を生成することができる。
【0065】
(11) 加速時初期応答生成部18では、積分値に対する上限値に、ヒステリシス分を上乗せした上で、動特性に送る際に、本来の上限値で制限するようにしたため、微小の入力信号の変化による積分値の上限近傍の揺らぎを抑制することができる。
【0066】
なお、第2実施例装置において、図15に示すように、加速時初期応答生成部18’として、例えば、アイドルスイッチ信号等による加速要求判断時に、第2比較器18dにより選択された値に切り替え、加速要求判断以外の時に、ゼロ設定器18jによる値(=0)に切り替える切り替え器18iを追加するようにしても良い。この場合、ドライバーが加速要求でないときには、第1比較器18cへの積分値が0とされると共に、第3比較器18eへの値も0とされる。
よって、ドライバーの減速要求時における初期応答の生成が排除され、ドライバーの加速要求時にのみ、上記(10),(11)の効果を得ることができる。
【0067】
(第3実施例)
本件制御では、その目的から、上記のようにいくつかの動特性を切り替えて使用するが、切り替えに際して、適切な初期化を行わないと、動特性の出力が急変し、段差感やハンチングの要因となる。そこで、加速時初期応答生成部に初期化機能を持たせたのが第3実施例である。
【0068】
第3実施例の初期化機能付き加速時初期応答生成部28は、図16に示すように、加速時初期応答制限演算部28a(=加速時初期応答制限演算部8a)と加速時初期応答動特性28bとの間に、制限付き目標駆動力とゼロ駆動力とを加速操作判別に基づいて切り替える第1切り替え器28cを設け、かつ、加速時初期応答動特性28bの下流位置に、加速時初期目標駆動力とゼロ駆動力とを加速操作判別に基づいて切り替える第2切り替え器28dを設けている。
【0069】
そして、前記加速時初期応答動特性28bは、図17に示すように、初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部28eと、初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部28fと、加算器28gと、により構成している。
【0070】
前記初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部28eは、加速操作判別信号の切り替わりを検知して、ON/OFFする初期化信号を用いて、各々の応答の伝達関数分子多項式演算部28eへの過去の入力信号の履歴を、初期化信号ONの際には、現在の入力信号に切り替えることで、初期化を行う。
【0071】
前記初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部28fは、加速操作判別信号の切り替わりを検知して、ON/OFFする初期化信号を用いて、各々の応答の伝達関数分母多項式演算部28fへの過去の内部出力信号の履歴を、初期化信号ONの際には、前回の外部出力信号に切り替えることで、初期化を行う。
【0072】
ここで、外部出力信号とは、最終的な制御システムの出力であり、例えば、図1ならば、動特性付き目標駆動力がこれに相当する。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0073】
次に、作用を説明する。
【0074】
[初期応答の生成作用]
第1の応答を生成する加速時初期応答生成部28の初期化要件は、ドライバーの要求が加速要求でないと判断されたとき、そのときの出力信号と、内在している積分要素の値を0にすることである。このため、加速操作判別信号を見て、加速要求が無いと判断した際には、加速時初期応答動特性の前後の値を0にし、かつ、動特性の伝達関数分母多項式の外部出力信号に、この切り替え後の値を入れて、すなわち、加速要求が無いと判断した際には、動特性に内在している積分要素の値を0にする。
【0075】
次に、効果を説明する。
第3実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0076】
(12) 第1の応答を生成する第3実施例の加速時初期応答生成部28は、ドライバーの要求が加速要求でないと判断されたとき、そのときの出力信号と、内在している積分要素の値を0にするため、いくつかの動特性の切り替えに際して、適切な初期化を行うことができ、この結果、動特性の出力が急変した場合でも、段差感やハンチングを防止できる。
【0077】
(第4実施例)
第4実施例は、加速時初期応答生成部に加速時初期応答無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減するようにした例である。
【0078】
すなわち、第4実施例の加速時初期応答生成部38は、図18に示すように、第1実施例と同様な加速時初期応答制限演算部38aと、加速時初期応答動特性38bと、加速時初期応答無駄時間38cと、によって構成されている。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0079】
次に、作用を説明する。
【0080】
[初期応答の生成作用]
第1実施例の加速時初期応答生成部8及び第2実施例の加速時初期応答生成部18では、ドライバーの加速要求に対して、遅れなく応答をさせてきたが、一般的な人間の応答時間分より少なくとも短い遅れを持たせて、応答を開始することで、より少ないアシスト量で、アシスト可能である。
【0081】
図19は第4実施例の加速時初期応答生成部38における動作の時系列での模式図である。このように、人間の応答時間分は、どのように加速度を変化させても、人間には検知不能なのであるから、その応答時間より少なくとも短い遅れ、無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減できる。
【0082】
次に、効果を説明する。
第4実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0083】
(13) 第1の応答を生成する第4実施例の加速時初期応答生成部38に加速時初期応答無駄時間38cを設定したため、ドライバーが感じる加速感を損なうことなく、アシスト量を削減することができる。
【0084】
(第5実施例)
第5実施例は、加速時主応答生成部に加速時主応答無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減するようにした例である。
【0085】
すなわち、第5実施例の加速時主応答生成部19は、図20に示すように、第1実施例と同様な差分器19aと、加速時主応答動特性19bと、加速時主応答無駄時間19cと、によって構成されている。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0086】
次に、作用を説明する。
【0087】
[初期応答の生成作用]
第1実施例の加速時主応答生成部9では、ドライバーの加速要求に対して、遅れなく応答をさせてきたが、一般的な人間の応答時間分より少なくとも短い遅れを持たせて、応答を開始することで、より少ないアシスト量で、アシスト可能である。
【0088】
図21は第5実施例の加速時主応答生成部19における動作の時系列での模式図である。このように、人間の応答時間分は、どのように加速度を変化させても、人間には検知不能なのであるから、その応答時間より少なくとも短い遅れ、無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減できる。
【0089】
次に、効果を説明する。
第5実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0090】
(14) 第2の応答を生成する第5実施例の加速時主応答生成部19に加速時主応答無駄時間19cを設定したため、ドライバーが感じる加速感を損なうことなく、アシスト量を削減することができる。
【0091】
(第6実施例)
上記第1実施例では、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合、最初の1回だけ、第1の応答が加えられることとなり、その後のアクセル操作に対する応答性が悪化したように感じてしまうという課題を解決するのが第6実施例である。
【0092】
まず、構成を説明する。
【0093】
第6実施例装置の加速時初期応答生成部68は、図22に示すように、加速時初期応答制限演算部68aと、加速時初期応答動特性部68bと、加速時初期応答上限値増分演算部68cと、を有して構成されている。そして、加速時初期応答上限値増分演算部68cにて生成した加速時初期応答上限値増分を、加速時初期応答上限値基本値に加え、加速時初期応答上限値とすることにより、加速時初期応答上限値を増減可能としている。
【0094】
前記加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図23に示すように、アクセル全閉判断部68dと、加速時初期応答収束判断部68eと、アクセル踏み込み操作判断部68fと、アクセル戻し操作判断部68gと、を有する。まず、アクセル戻し操作判断部68gにて、アクセルの戻し操作の有り無しを判定し、アクセルの戻し操作がある場合には、加速時初期応答上限値減分だけ、前回の加速時初期応答上限値増分を減ずる。また、その結果の値が、0以下にならないように制限を掛ける。次に、加速時初期応答収束判断部68eで、第1の応答が加速時初期応答上限値に対して、どの程度、前回の出力が近いづいているかを判断する。同様に、アクセル踏み込み操作判断部68fにて、アクセルの踏み込み操作が行われているかを判断する。前回の出力が加速時初期応答上限値に対し、充分、近傍にあると判断し、かつ、アクセルの踏み込み操作が行われたときは、加速時初期応答上限値増分を増加させる。また、アクセル全閉判断部68dにより、アクセルが全閉であると判断されたときには、この加速時初期応答上限値増分を0にする。
【0095】
前記加速時初期応答収束判断部68eは、図24に示すように、前回の第1の応答出力と、加速時初期応答上限値との差分を取り、もしこれが、収束判断上限閾値より大きければ、収束してないと判断し、OFFを出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回の第1の応答出力と、加速時初期応答上限値との差分が、収束判断下限閾値より小さければ、収束していると判断し、ONを出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。収束判断上限閾値>収束判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0096】
前記アクセル踏み込み操作判断部68fは、図25に示すように、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分を取り、もしこれが、アクセル踏み込み判断下限閾値より小さければ、アクセル踏み込み操作が行われていない判断し、0を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分が、アクセル踏み込み判断上限閾値より大きければ、アクセル踏み込み操作が行われている判断し、1を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。以上の判断結果を前回の結果と比較し、今回>前回となったとき、すなわち、現在まさにアクセル踏み込み操作が開始されたと判断して、アクセル踏み込み操作判断を真とする。アクセル踏み込み操作判断上限閾値>アクセル踏み込み操作判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0097】
前記アクセル戻し操作判断部68gは、図26に示すように、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分を取り、もしこれが、アクセル戻し判断上限閾値より大きければ、アクセル戻し操作が行われていない判断し、0を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分が、アクセル戻し判断下限閾値より小さければ、アクセル戻し操作が行われている判断し、1を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。以上の判断結果を前回の結果と比較し、今回>前回となったとき、すなわち、現在まさにアクセル戻し操作が開始されたと判断して、アクセル戻し操作判断を真とする。アクセル戻し操作判断上限閾値>アクセル戻し操作判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0098】
次に、作用を説明する。
【0099】
目標となる駆動力、もしくは、加速度を、内燃機関とモータに配分し、これを同時に制御することによって、実現するHEVシステムを考える。
一般に、内燃機関には、その動作が間欠的であることと、吸入空気の応答から、トルクの増加要求に対して、応答遅れが存在する(図5)。この応答遅れにより、ドライバーの要求に対して車両の挙動変化が遅れるため、加速感をスポイルする要因となっている。
【0100】
この応答遅れを、例えば、モータのようにより応答の早い原動機を用いて補償することにより、機関全体の応答性を向上させ、加速性能を向上させる方法が考えられる。図1の第1実施例は、動的目標駆動力生成部にて、目標とする動特性つき目標駆動力を生成し、エンジン応答推定部にて、エンジンの応答遅れを勘案したエンジン応答推定駆動力を生成し、この差分を、目標モータトルクに加えて、モータにて補償するものである。
【0101】
このとき、ドライバーの要求に対して、即座に応答し、かつ、加速度検知の閾値近傍でとどまり、絶対値として、大きな加速度を感じさせない第1の応答と、ドライバーの要求に対して、加速度検知の無駄時間相当の遅れを持った後、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する第2の応答とを組み合わる(図10)。ドライバーの加速要求操作に対して、まず第1の応答が、遅れなく立ち上がる。このことにより、ドライバーが加速度の変化を検知可能になった段階で、不必要に大きな加速度変化を感じさせることなく、かつ、即座にまず応答したことを感じさせることができる。また、ここで、加速度の変化代が検知限界近傍にあることで、次からの応答に対しては、この加速度検知の閾値による無駄時間を生じさせることなく、検知させることが可能である。
【0102】
しかし、第1実施例では、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合、最初の1回だけ、第1の応答が加えられることとなり、その後のアクセル操作に対する応答性が悪化したように感じてしまう。例えば、図27は第1実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【0103】
そこで、アクセルの踏み込み操作を検知して、それにあわせて、第1の応答を形成するための上限制限の閾値を段階的に増加させていくことを考える。
第1の応答が上限制限閾値近傍にあるとき、ここで、アクセルの踏み増し操作を行っても、第1の応答の変化代は、上限制限閾値までのわずかな変化だけとなる。そこで、第1の応答が上限制限閾値近傍にあるとき、アクセルの踏み増し操作が行われたならば、上限制限閾値を、応答が起きたと感じる範囲で増加させる。また、アクセルの戻し操作が行われたとき、キャンセルする。さらに、アクセル戻し操作が行われるごとに、所定の量、上限制限閾値の増分を減じていく。また、アクセルが全閉位置まで一気に戻された場合には、この増分を0とする。
【0104】
図28に第6実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図を示す。この場合、2回目のアクセル踏み込み操作時においても第1の応答が出て、図27に比べて滑らかな加速応答を得ていることが分かる。
【0105】
次に、効果を説明する。
第6実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0106】
(15) 加速時初期応答生成部68は、ドライバーの要求が加速要求時には、上限を設けた応答時間の早い第1の応答を生成すると共に、この上限の値を、ドライバーの加速要求操作がある毎に増加させていく加速時初期応答上限値増分演算部68cを有するため、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合でもアクセル操作に対する良好な応答性を確保することができる。
【0107】
(16) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、ドライバーの加速要求操作を判断し、一連の加速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で増加させていくようにしたため、連続してアクセルの踏み込み操作を行った場合、第1の応答と第2の応答とが繰り返されることによる滑らかな加速度特性を得ることができる。
【0108】
(17) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、前回の第1の応答の演算結果と前回の上限値の差分に対する大小判断を行い、前回の第1の応答の演算結果が上限値近傍にあるときのみ、上限値の増加を許可するようにしたため、第1の応答が上限制限閾値近傍にあるときにアクセルの踏み増し操作を行った場合、応答が起きたと感じる範囲で加速度を増加させることができる。
【0109】
(18) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値を、ドライバーの減速要求操作があったとき、標準値に戻すようにしたため、減速要求操作後の加速要求操作時に上限の値の増加基準を一定に保つことができる。
【0110】
(19) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、ドライバーの減速要求操作を判断し、一連の減速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で減少させていくため、減速要求操作時に滑らかな減速感を得ることができる。
【0111】
(20) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、アクセルが完全戻し位置になったとき、直ちに上限の値を標準値に戻すようにしたため、アクセル足離し操作からの加速要求操作時に上限の値の増加基準を一定に保つことができる。
【0112】
(第7実施例)
第6実施例において、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合、その操作に対して、大きな応答を出すと、ビジーフィーリングになることが課題として考えられ、この課題を解決するのが第7実施例である。
【0113】
まず、構成を説明する。
【0114】
第7実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図29に示すように、第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68c(図23)の構成に、前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける加速時初期応答上限値増分時間制限演算部68hを加えたものである。
【0115】
次に、作用を説明する。
【0116】
第7実施例装置では、前回のアクセル踏み込み操作からの経過時間が短いほど、上限制限閾値の標準値に対して、絶対値が小さくなるよう制限する方法により、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合においてビジーフィーリングになることを防止している。この場合、所定時間経過後は、上限制限閾値の標準値と等しくなる必要がある。
【0117】
まず、時間制限に対する制限方法として、加速時初期応答上限値増分時間制限値を与え、この値を初期値から1までの内分比と考えて、時間ごとに増加させることにより、この制御を実現する。このために、前々回、加速時初期応答上限値増加制御が行われず、かつ、前回加速時初期応答上限値増加制御が行われたとき、加速時初期応答上限値増分時間制限値を加速時初期応答上限値増分時間制限初期値に設定する。その後、1制御周期ごとに、加速時初期応答上限値増分時間制限変化量を加え、加速時初期応答上限値増分時間制限値を1まで増加させる。その結果、得られた加速時初期応答上限値増分時間制限値を、加速時初期応答上限値増分に掛け、加速時初期応答上限値増分最終値を得る。
【0118】
図30に第7実施例装置にて前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける場合の動作模式図を示す。アクセル操作が時間間隔を異ならせて連続して複数回行われた場合には、第1の応答特性に示すように、時間間隔が短いほど加速時初期応答上限値の増分が少なくなってきていて、加速度特性においても時間間隔が短いと第1の応答が小さく、時間間隔が長いと第1の応答が大きくなっていて、ビジーフィーリングが防止されているのが分かる。
【0119】
次に、効果を説明する。
第7実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0120】
(21) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、前回のアクセル操作からの時間に応じて、時間が短ければ短いほど小さくすると共に、その比率を、上限値増加制御を行った後、初期値を設定し、時間経過ごとに比率1まで増加させる加速時初期応答上限値増分時間制限演算部68hを有するため、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合でもビジーフィーリングになることを防止することができる。
【0121】
(22) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、増加操作の無いときの上限値の標準値と同等にするため、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合、所定時間経過後の上限の値の増加代を上限値の標準値と等しくすることができる。
【0122】
(第8実施例)
第6実施例において、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合、その操作全てに対して、大きな応答を出すと、同様に、ビジーフィーリングになることがもう1つの課題として考えられ、この課題を解決するのが
まず、構成を説明する。
【0123】
第8実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図31に示すように、第7実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68c(図29)の構成に、加速時初期応答上限値増分の回数を制限する加速時初期応答上限値増分回数制限特性部68iを加えたものである。
【0124】
次に、作用を説明する。
【0125】
第8実施例装置では、アクセル操作の踏み込み操作が連続した場合には、加速時初期応答上限値増分を徐々に減らす方法により、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合において、ビジーフィーリングになることを防止している。が考えられる。
【0126】
ここで、加速時初期応答上限値増分は、アクセルの踏み込み操作の回数に応じて、徐々に増加していくのであるから、この値の増加に対して、徐々に飽和してゆく特性を、加速時初期応答上限値増分回数制限特性として与え、この特性にて、変換した値を加速時初期応答上限値増分最終値として出力すればよい。
【0127】
図32に第8実施例装置にて加速時初期応答上限値増分の回数を制限した場合の動作模式図を示す。アクセル操作がステップ的に連続して複数回行われた場合には、第1の応答特性に示すように、回数を繰り返すうちに、加速時初期応答上限値の増分が少なくなってきていて、加速度特性においても主応答の大きさは変わらず、回数を繰り返すほど第1の応答のみ小さくなっていて、ビジーフィーリングが防止されているのが分かる。
【0128】
次に、効果を説明する。
第8実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0129】
(23) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定すると共に、今回までの増加代合計に対して、それが大きくなるほど飽和する特性を用いて、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定する加速時初期応答上限値増分回数制限特性部68iを有するため、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合でもビジーフィーリングになることを防止することができる。
【0130】
以上、本発明の車両の駆動力制御装置を第1実施例〜第8実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0131】
例えば、第1実施例では、トルク応答の早い第1の原動機を電動モータとし、トルク応答の遅い第2の原動機をエンジンとする例を示したが、例えば、トルク応答が異なる二種類の第1エンジンと第2エンジンを搭載した車両や、トルク応答が異なる二種類の第1モータと第2モータを搭載した車両にも適用することができる。この場合、トルク応答の早い側を「第1の原動機」といい、トルク応答が遅い側を「第2の原動機」という。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の車両の駆動力制御装置を示す全体ブロック図である。
【図2】第1実施例装置の加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図3】第1実施例装置の加速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図4】第1実施例装置の減速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図5】アクセル操作に対する加速度応答の無駄時間の関係を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図6】モータによる応答遅れ補償の従来例を示すブロック図である。
【図7】ハイブリッド車両でエンジン応答遅れ補償制御の例を示すブロック図である。
【図8】エンジン応答遅れをより応答の早い原動機(モータ等)により、無駄時間分を補償した場合の例を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図9】人間の生理的限界と加速度波形の関係を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図10】人間の生理的限界を前提にした第1実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図11】第1実施例装置の加速時初期応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が上昇した場合の加速時初期応答動特性を示す図である。
【図12】第1実施例装置の加速時主応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が上昇した場合の加速時主応答動特性を示す図である。
【図13】第1実施例装置の減速時初期応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が低下した場合の減速時初期応答動特性を示す図である。
【図14】第2実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図15】第2実施例装置の変形例における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図16】第3実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図17】第3実施例装置における加速時初期応答動特性内の初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部と初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部を示すブロック図である。
【図18】第4実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図19】人間の生理的限界を前提にした第4実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図20】第5実施例装置における加速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図21】人間の生理的限界を前提にした第5実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図22】第6実施例装置の加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図23】第6実施例装置の加速時初期応答生成部の加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図24】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部の加速時初期応答収束判断部を示すブロック図である。
【図25】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部のアクセル踏み込み操作判断部を示すブロック図である。
【図26】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部のアクセル戻し操作判断部を示すブロック図である。
【図27】第1実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【図28】第6実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【図29】第7実施例装置の加速時初期応答生成部において前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図30】第7実施例装置にて前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける場合の動作模式図である。
【図31】第8実施例装置の加速時初期応答生成部において加速時初期応答上限値増分の回数を制限する加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図32】第8実施例装置にて加速時初期応答上限値増分の回数を制限した場合の動作模式図である。
【符号の説明】
1 アクセル操作量検出手段
2 車速検出手段
3 静的目標駆動力生成部
4 駆動力配分部
5 遅れ補償量演算手段
6 加算器
7 加速操作判別部
8 加速時初期応答生成部
8a 加速時初期応答制限演算部
8b 加速時初期応答動特性
9 加速時主応答生成部
9a 差分器
9b 加速時主応答動特性
10 減速時主応答生成部
10a 減速時主応答動特性
11 エンジン応答推定部
12 加算器
13 切り替え器
14 差分器
【発明の属する技術分野】
本発明は、加速要求時にドライバーの加速要求操作に応じた車両の加速応答波形をパワートレインの駆動力を制御することにより実現する車両の駆動力制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来のハイブリッド車両の駆動力制御装置は、目標駆動トルクと発電トルクとを達成するトルク値を目標エンジントルクとしてエンジンを制御すると共に、目標駆動トルクとエンジントルク推定値との差分を目標モータトルクとしてモータを制御する。これにより、定常的には要求発電量を達成でき、バッテリの充電状態を満たすことができる上に、過渡的には乗員の要求駆動力を達成でき、俊敏な加速、減速を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−343891号公報(第1頁、図6)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来のハイブリッド車両の駆動力制御装置にあっては、アクセル踏み込み操作開始からエンジンが応答しない期間、モータで全ての要求トルクを実現させようとした場合、必要とする期間が数100[ms]単位の短時間であるにもかかわらず、必要となるトルクはエンジントルクとほぼ同等分だけ必要になることから、モータ、および、それを動かすための電源系に大きな負担がかかる。この結果、より大きなモータ、電源系が必要となり、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招く。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答良く、かつ、十分な加速感を実現することができる車両の駆動力制御装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、
ドライバーの操作に応じてパワートレインの出力を定め、パワートレインの出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、前記パワートレインに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現する手段とした。
【0007】
【発明の効果】
本発明の車両の駆動力制御装置にあっては、駆動力制御手段において、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、パワートレインに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにしたため、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答良く、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の車両の駆動力制御装置を実現する実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例の車両の駆動力制御装置を示す全体ブロック図、図2は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の加速時初期応答生成部を示すブロック図、図3は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の加速時主応答生成部を示すブロック図、図4は第1実施例装置における目標モータトルク演算手段の減速時主応答生成部を示すブロック図である。
【0010】
図1において、1はアクセル操作量検出手段、2は車速検出手段、3は静的目標駆動力生成部、4は駆動力配分部、5は遅れ補償量演算手段、6は加算器、7は加速操作判別部、8は加速時初期応答生成部、9は加速時主応答生成部、10は減速時主応答生成部、11はエンジン応答推定部、12は加算器、13は切り替え器、14は差分器である。
【0011】
前記アクセル操作量検出手段1は、ドライバーによるアクセルペダルへの操作量を検出する手段であり、例えば、アクセル開度センサ等が該当する。
【0012】
前記車速検出手段2は、車両速度を検出する手段であり、例えば、変速機出力軸回転センサや車輪速センサ等が該当する。
【0013】
前記静的目標駆動力生成部3は、アクセル操作量の絶対値と、車速とに基づき、主に車速に関連して定められる定速走行状態での走行抵抗から決まるアクセル操作量−収束車速特性によって静的目標駆動力を生成する。
【0014】
前記駆動力配分部4は、静的目標駆動力生成部3からの静的目標駆動力を目標エンジントルクと目標モータトルクとに配分する。
【0015】
前記遅れ補償量演算手段5は、アクセル操作量検出手段1からのアクセル操作量と静的目標駆動力生成部3からの静的目標駆動力を入力し、エンジンの応答遅れに対するモータでのトルク補償分である遅れ補償量を演算する。
【0016】
前記加算器6は、駆動力配分部4からの目標モータトルクに、遅れ補償量演算手段5からの遅れ補償量を加算して、最終的な目標モータトルクとする。
【0017】
なお、前記駆動力配分部4からの目標エンジントルクは、図外のエンジン(第2の原動機)に設けられた制御スロットルバルブを制御することで得られ、前記加算器6からの目標モータトルクは、図外のモータ(第1の原動機)を駆動制御することで得られる。
【0018】
前記加速操作判別部7は、アクセル操作量の変化に基づいて、ドライバーの要求が加速要求であるか否かを判別し、加速操作判別信号を切り替え器13へ送出する。例えば、アクセル操作量の時間微分値が正であれば加速要求であると判別し、アクセル操作量の時間微分値がゼロではれば一定車速要求であると判別し、アクセル操作量の時間微分値が負であれば減速要求であると判別する。
【0019】
前記加速時初期応答生成部8は、静的目標駆動力に予め上下限の制限をかけてから、動特性に入力することにより、加速度検知の閾値近傍を上限とした加速時初期応答を生成する。すなわち、加速時初期応答生成部8は、図2に示すように、加速時初期応答制限演算部8aと、加速時初期応答動特性8bにより構成されている。前記加速時初期応答制限演算部8aでは、静的目標駆動力と加速時初期応答上限値のうち小さい値を選択し、次いで、選択した値と加速時初期応答下限値のうち大きな値を選択し、この選択値を制限付き目標駆動力とする。前記加速時初期応答動特性8bは、加速時初期応答制限演算部8aからの制限付き目標駆動力を加速時初期応答動特性に入力することで加速時初期応答目標駆動力を演算する。
【0020】
前記加速時主応答生成部9は、静的目標駆動力から加速時初期応答生成部8で生成された制限付き目標駆動力を差し引き、応答入力の絶対量を合わせてから、動特性に入力することにより、加速時主応答を生成する。すなわち、加速時主応答生成部9は、図3に示すように、静的目標駆動力から制限付き目標駆動力を差し引く差分器9aと、差し引いた駆動力を加速時主応答動特性に入力することで加速時主応答目標駆動力を演算する加速時主応答動特性9bと、により構成されていて、最終的な応答のゲインを1にしている。
【0021】
前記減速時主応答生成部10は、図4に示すように、静的目標駆動力を入力することにより減速時目標駆動力を生成する減速時主応答動特性10aにより構成される。
【0022】
前記エンジン応答推定部11は、静的目標駆動力から、パワートレイン系の遅れ要素として、エンジンの吸入空気の応答遅れ、吸気サイクルによる遅れ、吸入空気量制御装置の応答遅れ、系のイナーシャトルク、系のバネ要素、系の効率を用いてエンジンの応答特性分遅らせたエンジン応答推定駆動力を算出する。
【0023】
前記加算器12は、加速時初期応答目標駆動力と加速時主応答目標駆動力とを加算して加速時目標駆動力を算出する。
【0024】
前記切り替え器15は、前記加速操作判別部7からの加速操作判別信号により、加速操作判別時には加速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力として選択し、定速操作時や減速操作時には減速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力として選択する。
【0025】
前記差分器16は、前記切り替え器15からの動特性付き目標駆動力から、前記エンジン応答推定部11からのエンジン応答推定駆動力を差し引くことにより遅れ補償量が算出され、これを前記加算器6に出力する。
【0026】
次に、作用を説明する。
【0027】
[加速要求に対する従来の駆動力制御の考え方]
一般に、内燃機関には、その動作が間欠的であることと、吸入空気の応答から、トルクの増加要求(アクセル踏み込み操作)に対して、図5に示すように、車両加速度の上昇に応答遅れが存在する。
【0028】
この車両加速度の上昇応答遅れにより、ドライバーの要求に対して車両の挙動変化が遅れるため、加速感をスポイルする要因となっている。モータにはこのような応答遅れ要因はないため、非常に高い応答性を実現することができる。そこで、内燃機関の遅れ分をモータに配分し、これを実現することによって、内燃機関の応答遅れを補償するハイブリッド(HEV)システムを考える。
【0029】
図6は無段変速機(CVT)の変速の応答遅れをモータで補償する従来例である。無段変速機の変速の応答遅れは、一般に前述の内燃機関の応答遅れよりも、遅れが大きく、したがって、この従来では、内燃機関の応答遅れの補償については語られていない。
【0030】
この応答遅れを、例えば、モータのように、内燃機関より応答の早い原動機を用いて補償することにより、機関全体の応答性を向上させ、加速性能を向上させる方法が考えられる。
【0031】
図7の例は、動的目標駆動力生成部にて、目標とする動特性つき目標駆動力を生成し、エンジン応答推定部にて、エンジンの応答遅れを勘案したエンジン応答推定駆動力を生成し、この差分を、目標モータトルクに加えて、モータにて補償するものである。
【0032】
このとき、図8に示すように、エンジンが応答しない期間、モータで全ての要求トルクを実現させようとした場合、必要とする期間が数100[ms]単位の短時間であるにもかかわらず、必要となるトルクはエンジントルクとほぼ同等分だけ必要になることから、モータ、および、それを動かすための電源系に大きな負担がかかる。この結果、より大きなモータ、電源系が必要となり、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招く。
【0033】
[加速要求に対する本発明の駆動力制御の考え方]
そこで、本発明では、ドライバーの加速要求に対し、最小限のモータアシストで、加速感を向上させることを考える。
重要なのは、ドライバーの要求に対して、即座に応答したようにドライバーが感じることであって、即座に応答することではない。
そこで、人間の加速度に対する生理的要求として、以下の2つに注目する。
・加速度が変化しても、その変化代がある閾値を超えないと、検知できない。
・加速度が変化しても、ある無駄時間経過しないと、検知できない。
これらから、図9に示すように、モータ等のアシストにより、内燃機関の遅れを補償しようとしても、効果のない時間的、物理的領域が存在する。
【0034】
この領域内でいくら内燃機関の応答遅れの補償を行っても、ドライバーはその生理的限界から認識することが出来ない。また、図9に示すように、加速度の変化に気づくと同時に、ドライバーの操作以前と加速度の絶対値が大きく変化すると、ドライバーとしては変化を予測することが難しくなり、したがって、制御の難しい系となってしまう。
【0035】
なお、人間の外界変化の認識応答時間は0.1〜0.2sec遅れることより、加速度変化に気づいたときにはその加速度変化の大きさが大き過ぎ、ドライバーは加速度を下げるように操作してしまい、加速操作と減速操作とのハンチングが起こり得る。
【0036】
これに対し、本発明では、ドライバーの加速要求に対してモータに与えるエンジンの遅れ補償量を、即座に応答し、かつ、加速度検知の閾値近傍でとどまり、絶対値として、大きな加速度を感じさせない第1の応答と、第1の応答と比べて、大きな遅れを持ち、かつ、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の総和による最小限アシストによるものとした。
【0037】
[加速要求時の駆動力制御作用]
加速要求時の駆動力制御作用について説明すると、まず、アクセル操作量から、ドライバーの要求が加速要求であるか否かを、加速操作判別部7にて判定する。ドライバーの要求が加速要求であると判別したならば、加速時初期応答生成部8からの加速時初期応答目標駆動力と、加速時主応答生成部9からの加速時主応答目標駆動力の和で求められる加速時目標駆動力を切り替え器15にて選択する。また、ドライバーの要求が加速要求でない、と判定したならば、減速時主応答生成部10からの減速時目標駆動力を切り替え器15にて選択する。
【0038】
以上の処理により得られた動特性付き目標駆動力と、エンジンの応答特性分遅らせたエンジン応答推定駆動力との差を差分器14において算出し、この差分をエンジンの応答遅れ補償量とし、これを目標モータトルクに加え、図10に示すように、人間の生理的限界を前提にした最小限アシストを実現する。
【0039】
図11は加速時初期応答生成部8での加速時初期応答動特性であり、ステップ的に上昇するアクセル操作量に対し、単調な1次遅れ特性による加速時初期応答を示す(第1の応答)。
【0040】
図12は加速時主応答生成部9での加速時主応答動特性であり、ステップ的に上昇するアクセル操作量に対し、第1の応答と比べて、大きな遅れを持ち、かつ、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する加速時主応答を示す(第2の応答)。
【0041】
なお、図12の中段に示すのは第2の応答の微分形であり、y=tnとy=e−atの掛け算であるy=tn・e−atの式にて近似され、その積分値をとることで、図12の下段に示す第2の応答の特性を作ることができる。
【0042】
そして、加速時初期応答生成部8での第1の応答と、加速時主応答生成部9での第2の応答を加算することで、図10の最小限アシスト部分が生成されることになる。
【0043】
これによって、ドライバーの加速要求操作に対して、まず第1の応答が、遅れなく立ち上がる。このことにより、ドライバーが加速度の変化を検知可能になった段階で、不必要に大きな加速度変化を感じさせることなく、かつ、即座にまず応答したことのみを感じさせることができる。また、ここで、加速度の変化代が検知限界近傍にあることで、次からの応答に対しては、この加速度検知の閾値による無駄時間を生じさせることなく、検知させることが可能である。
【0044】
続いて、第2の応答により、そこから滑らかに加速度を増加させ、目標まで漸近させる。このとき、第2の応答として、加速度変化速度を徐々に増加させるような特性を用いた場合、ドライバーは常に加速度の増加を感じつづけるので、加速感をより強調することできる。
【0045】
以上のように、この第1の応答と第2の応答を組み合わせることにより、図10に示すように、人間の生理的限界を前提にした駆動力の最小限アシストが達成され、この最小限アシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現できる。さらに、ドライバーが加速度の変化を検知した時の加速度の大きさは、検知限界相当なので、加速の変化に段差感がない。
【0046】
[減速要求時の駆動力制御作用]
減速時には、応答よりも、滑らかに加速度が減少することが求められるので、第1の応答のようなアクセル操作に対応した初期応答は必要ない。また、主応答についても、徐々に加速度が変化するような特性は必要ないと思われるので、むしろ、図13に示すように、減速開始は滑らかに変化し、そののち単調減少するような第3の応答(2次遅れ特性)が求められる。したがって、減速時主応答生成部10の動特性は、加速時主応答生成部9の動特性とは異なるものが必要である。
【0047】
次に、効果を説明する。
第1実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0048】
(1) ドライバーの操作に応じてパワートレインの出力を定め、パワートレインの出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、電動モータに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現するようにしたため、コスト、重量増と共に、効率の悪化を招くことのない最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0049】
(2) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し第1の応答である加速時初期応答を生成する加速時初期応答生成部8と、静的目標駆動力を入力し第2の応答である加速時主応答を生成する加速時主応答生成部9と、生成された加速時初期応答と加速時主応答とを加えて加速時目標駆動力を得る加算器12と、を有する構成であるため、独立に生成された第1の応答と第2の応答とを加算する演算処理により、加速操作時において、最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる動特性付き目標駆動力を確実に得ることができる。
【0050】
(3) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し第3の応答である減速時主応答を生成する減速時主応答生成部10と、アクセル操作に基づいて加速操作を判別する加速操作判別部7と、加速操作であると判別されたときは加算器12からの加速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力とし、定速操作もしくは減速操作であると判別されたときは減速時主応答生成部10からの減速時目標駆動力を動特性付き目標駆動力とする切り替え器13と、を有する構成としたため、加速操作時と定速操作もしくは減速操作時とで要求に応じた異なる応答による動特性付き目標駆動力を得ることができる。
【0051】
(4) 駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力しエンジンの応答を推定するエンジン応答推定部11と、動特性付き目標駆動力からエンジン応答推定駆動力を差し引くことでエンジンの遅れ補償量を求める差分器14と、該差分器14からの遅れ補償量を電動モータの目標モータトルクに加える加算器6と、を有する構成としたため、加速操作時において、エンジンの応答遅れを考慮した遅れ補償量による精度の高いモータ出力制御により、最小限のアシストで、応答の良い、かつ、十分な加速感を実現することができる。
【0052】
(5) エンジン応答推定部11は、パワートレイン系の遅れ要素として、エンジンの吸入空気の応答遅れ、吸気サイクルによる遅れ、吸入空気量制御装置の応答遅れ、系のイナーシャトルク、系のバネ要素、系の効率を用いて、エンジン応答推定駆動力を演算するため、静的目標駆動力から精度の高いエンジン応答推定駆動力を求めることができる。
【0053】
(6) 加速時初期応答生成部8は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力に対し、上下限の制限を行なう加速時初期応答制限演算部8aと、上下限の制限を行った後の制限付き目標駆動力を入力信号として、その出力を第1の応答とする加速時初期応答動特性8bと、を有する構成としたため、第1の応答における加速度が大き過ぎて従来技術と変わらなくなることも、第1の応答における加速度が小さ過ぎてドライバーに違和感を与えることも防止できる。
【0054】
(7) 加速時初期応答制限演算部8aは、目標値に対し上下限の制限において、一般に人間が検知できる加速度段差の下限幅に相当する上限制限を行い、また、絶対値0による下限制限を行うようにしたため、第1の応答における加速度を、人間が加速度検知可能な閾値近傍の適切な加速度にすることができる。なお、この人間が加速度検知可能な閾値は、現在の加速度の大きさにかかわらず一定の値で与える。
【0055】
(8) 加速時主応答生成部9は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力から制限付き目標駆動力を差し引く差分器9aと、差分器9aからの駆動力を入力信号として、その出力を第2の応答とする加速時主応答動特性9bと、を有する構成としたため、加速時初期応答動特性8bへ入力する制限付き目標駆動力と加速時主応答動特性9bへ入力する目標駆動力との和が静的目標駆動力となり、加速時目標駆動力を生成する加算器12での最終的な応答ゲインを1にすることができる。
【0056】
(9) 減速時主応答推定部10は、ドライバーの操作に応じた静的目標駆動力を入力し、滑らかに減速の変化が始まって徐々に収束する2次遅れ特性による第3の応答を生成する減速時主応答動特性10aを有する構成としたため、滑らかに加速度が減少することが求められる減速時に対応した加速度応答を得ることができる。
【0057】
(第2実施例)
この第2実施例は、操作前の目標駆動力の値によらず加速時に初期応答を与えることができると共に、微小の入力信号の変化による揺らぎを抑制することができる加速時初期応答生成部とした例である。
【0058】
すなわち、第2実施例の加速時初期応答生成部18は、図14に示すように、静的目標駆動力の現在値と1制御周期前の値との差分をとる差分器18aと、この差分値と1制御周期前の第2比較器18dにより選択された値とを加算する積分器18bと、この積分値と加速時初期応答上限値+上限ヒステリシス分との最小値をとる第1比較器18cと、該第1比較器からの最小値と加速時初期応答下限値との最大値をとる第2比較器18dと、この最大値と加速時初期応答上限値との最小値(制限付き目標駆動力)をとる第3比較器18eと、加速時に制限付き目標駆動力から加速時初期応答目標駆動力を得る加速時初期応答動特性18fと、減速時に制限付き目標駆動力から減速時初期応答目標駆動力を得る減速時初期応答動特性18gと、前記差分器18aから出力される値の符号が正の場合は加速側に符号がゼロまたは負の場合は減速側に切り替える切り替え器18hと、を有して構成している。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0059】
次に、作用を説明する。
【0060】
[初期応答の生成作用]
第2実施例の加速時初期応答生成部18では、差分器18aにおいて、一旦、静的目標駆動力の1制御周期前の値との差分を取る。次に、その結果を積分器18bにて積分するにあたって、積分値に上下限の制限を設ける。よって、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行った後に、減速要求、あるいは、定速走行要求により、アクセルの戻し操作が行われれば、静的目標駆動力が減少するので、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行う直前には、この積分値は、0に漸近していることが期待できる。
【0061】
したがって、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行ったとき、操作前の目標駆動力の値によらず、そこからの変化代に対して上限制限を持った、第1の応答を生成することが可能である。このとき、積分値に対する上限値に、ヒステリシス分を上乗せした上で、動特性に送る際に、本来の上限値で制限することにより、微小の入力信号の変化による積分値の上限近傍の揺らぎを抑制することができる。
【0062】
また、第2実施例装置のような構成を採用した場合、アクセル操作や車速の増加等による静的目標駆動力の減少に伴ない、第1の応答の出力も減少することになる。このときに、第1の応答と第2の応答では、基本的な動特性に差があるので、応答をそろえる必要がある。そこで、静的目標駆動力の差分値の符号に対して、増加側と減少側で動特性を変更し、増加側では第1の応答における本来の応答、減少側では第2の応答と同等の応答を生成するようにする。
【0063】
次に、効果を説明する。
第2実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0064】
(10) 加速時初期応答生成部18では、差分器18aにおいて、一旦、静的目標駆動力の1制御周期前の値との差分をとり、その結果を積分器18bにて積分するにあたって、積分値に上下限の制限を設けるようにしたため、ドライバーが加速要求によるアクセルの踏み込み操作を行ったとき、操作前の目標駆動力の値によらず、そこからの変化代に対して上限制限を持った、第1の応答を生成することができる。
【0065】
(11) 加速時初期応答生成部18では、積分値に対する上限値に、ヒステリシス分を上乗せした上で、動特性に送る際に、本来の上限値で制限するようにしたため、微小の入力信号の変化による積分値の上限近傍の揺らぎを抑制することができる。
【0066】
なお、第2実施例装置において、図15に示すように、加速時初期応答生成部18’として、例えば、アイドルスイッチ信号等による加速要求判断時に、第2比較器18dにより選択された値に切り替え、加速要求判断以外の時に、ゼロ設定器18jによる値(=0)に切り替える切り替え器18iを追加するようにしても良い。この場合、ドライバーが加速要求でないときには、第1比較器18cへの積分値が0とされると共に、第3比較器18eへの値も0とされる。
よって、ドライバーの減速要求時における初期応答の生成が排除され、ドライバーの加速要求時にのみ、上記(10),(11)の効果を得ることができる。
【0067】
(第3実施例)
本件制御では、その目的から、上記のようにいくつかの動特性を切り替えて使用するが、切り替えに際して、適切な初期化を行わないと、動特性の出力が急変し、段差感やハンチングの要因となる。そこで、加速時初期応答生成部に初期化機能を持たせたのが第3実施例である。
【0068】
第3実施例の初期化機能付き加速時初期応答生成部28は、図16に示すように、加速時初期応答制限演算部28a(=加速時初期応答制限演算部8a)と加速時初期応答動特性28bとの間に、制限付き目標駆動力とゼロ駆動力とを加速操作判別に基づいて切り替える第1切り替え器28cを設け、かつ、加速時初期応答動特性28bの下流位置に、加速時初期目標駆動力とゼロ駆動力とを加速操作判別に基づいて切り替える第2切り替え器28dを設けている。
【0069】
そして、前記加速時初期応答動特性28bは、図17に示すように、初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部28eと、初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部28fと、加算器28gと、により構成している。
【0070】
前記初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部28eは、加速操作判別信号の切り替わりを検知して、ON/OFFする初期化信号を用いて、各々の応答の伝達関数分子多項式演算部28eへの過去の入力信号の履歴を、初期化信号ONの際には、現在の入力信号に切り替えることで、初期化を行う。
【0071】
前記初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部28fは、加速操作判別信号の切り替わりを検知して、ON/OFFする初期化信号を用いて、各々の応答の伝達関数分母多項式演算部28fへの過去の内部出力信号の履歴を、初期化信号ONの際には、前回の外部出力信号に切り替えることで、初期化を行う。
【0072】
ここで、外部出力信号とは、最終的な制御システムの出力であり、例えば、図1ならば、動特性付き目標駆動力がこれに相当する。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0073】
次に、作用を説明する。
【0074】
[初期応答の生成作用]
第1の応答を生成する加速時初期応答生成部28の初期化要件は、ドライバーの要求が加速要求でないと判断されたとき、そのときの出力信号と、内在している積分要素の値を0にすることである。このため、加速操作判別信号を見て、加速要求が無いと判断した際には、加速時初期応答動特性の前後の値を0にし、かつ、動特性の伝達関数分母多項式の外部出力信号に、この切り替え後の値を入れて、すなわち、加速要求が無いと判断した際には、動特性に内在している積分要素の値を0にする。
【0075】
次に、効果を説明する。
第3実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0076】
(12) 第1の応答を生成する第3実施例の加速時初期応答生成部28は、ドライバーの要求が加速要求でないと判断されたとき、そのときの出力信号と、内在している積分要素の値を0にするため、いくつかの動特性の切り替えに際して、適切な初期化を行うことができ、この結果、動特性の出力が急変した場合でも、段差感やハンチングを防止できる。
【0077】
(第4実施例)
第4実施例は、加速時初期応答生成部に加速時初期応答無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減するようにした例である。
【0078】
すなわち、第4実施例の加速時初期応答生成部38は、図18に示すように、第1実施例と同様な加速時初期応答制限演算部38aと、加速時初期応答動特性38bと、加速時初期応答無駄時間38cと、によって構成されている。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0079】
次に、作用を説明する。
【0080】
[初期応答の生成作用]
第1実施例の加速時初期応答生成部8及び第2実施例の加速時初期応答生成部18では、ドライバーの加速要求に対して、遅れなく応答をさせてきたが、一般的な人間の応答時間分より少なくとも短い遅れを持たせて、応答を開始することで、より少ないアシスト量で、アシスト可能である。
【0081】
図19は第4実施例の加速時初期応答生成部38における動作の時系列での模式図である。このように、人間の応答時間分は、どのように加速度を変化させても、人間には検知不能なのであるから、その応答時間より少なくとも短い遅れ、無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減できる。
【0082】
次に、効果を説明する。
第4実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0083】
(13) 第1の応答を生成する第4実施例の加速時初期応答生成部38に加速時初期応答無駄時間38cを設定したため、ドライバーが感じる加速感を損なうことなく、アシスト量を削減することができる。
【0084】
(第5実施例)
第5実施例は、加速時主応答生成部に加速時主応答無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減するようにした例である。
【0085】
すなわち、第5実施例の加速時主応答生成部19は、図20に示すように、第1実施例と同様な差分器19aと、加速時主応答動特性19bと、加速時主応答無駄時間19cと、によって構成されている。なお、他の構成は、第1実施例装置と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0086】
次に、作用を説明する。
【0087】
[初期応答の生成作用]
第1実施例の加速時主応答生成部9では、ドライバーの加速要求に対して、遅れなく応答をさせてきたが、一般的な人間の応答時間分より少なくとも短い遅れを持たせて、応答を開始することで、より少ないアシスト量で、アシスト可能である。
【0088】
図21は第5実施例の加速時主応答生成部19における動作の時系列での模式図である。このように、人間の応答時間分は、どのように加速度を変化させても、人間には検知不能なのであるから、その応答時間より少なくとも短い遅れ、無駄時間を設定することにより、アシスト量を削減できる。
【0089】
次に、効果を説明する。
第5実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0090】
(14) 第2の応答を生成する第5実施例の加速時主応答生成部19に加速時主応答無駄時間19cを設定したため、ドライバーが感じる加速感を損なうことなく、アシスト量を削減することができる。
【0091】
(第6実施例)
上記第1実施例では、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合、最初の1回だけ、第1の応答が加えられることとなり、その後のアクセル操作に対する応答性が悪化したように感じてしまうという課題を解決するのが第6実施例である。
【0092】
まず、構成を説明する。
【0093】
第6実施例装置の加速時初期応答生成部68は、図22に示すように、加速時初期応答制限演算部68aと、加速時初期応答動特性部68bと、加速時初期応答上限値増分演算部68cと、を有して構成されている。そして、加速時初期応答上限値増分演算部68cにて生成した加速時初期応答上限値増分を、加速時初期応答上限値基本値に加え、加速時初期応答上限値とすることにより、加速時初期応答上限値を増減可能としている。
【0094】
前記加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図23に示すように、アクセル全閉判断部68dと、加速時初期応答収束判断部68eと、アクセル踏み込み操作判断部68fと、アクセル戻し操作判断部68gと、を有する。まず、アクセル戻し操作判断部68gにて、アクセルの戻し操作の有り無しを判定し、アクセルの戻し操作がある場合には、加速時初期応答上限値減分だけ、前回の加速時初期応答上限値増分を減ずる。また、その結果の値が、0以下にならないように制限を掛ける。次に、加速時初期応答収束判断部68eで、第1の応答が加速時初期応答上限値に対して、どの程度、前回の出力が近いづいているかを判断する。同様に、アクセル踏み込み操作判断部68fにて、アクセルの踏み込み操作が行われているかを判断する。前回の出力が加速時初期応答上限値に対し、充分、近傍にあると判断し、かつ、アクセルの踏み込み操作が行われたときは、加速時初期応答上限値増分を増加させる。また、アクセル全閉判断部68dにより、アクセルが全閉であると判断されたときには、この加速時初期応答上限値増分を0にする。
【0095】
前記加速時初期応答収束判断部68eは、図24に示すように、前回の第1の応答出力と、加速時初期応答上限値との差分を取り、もしこれが、収束判断上限閾値より大きければ、収束してないと判断し、OFFを出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回の第1の応答出力と、加速時初期応答上限値との差分が、収束判断下限閾値より小さければ、収束していると判断し、ONを出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。収束判断上限閾値>収束判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0096】
前記アクセル踏み込み操作判断部68fは、図25に示すように、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分を取り、もしこれが、アクセル踏み込み判断下限閾値より小さければ、アクセル踏み込み操作が行われていない判断し、0を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分が、アクセル踏み込み判断上限閾値より大きければ、アクセル踏み込み操作が行われている判断し、1を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。以上の判断結果を前回の結果と比較し、今回>前回となったとき、すなわち、現在まさにアクセル踏み込み操作が開始されたと判断して、アクセル踏み込み操作判断を真とする。アクセル踏み込み操作判断上限閾値>アクセル踏み込み操作判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0097】
前記アクセル戻し操作判断部68gは、図26に示すように、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分を取り、もしこれが、アクセル戻し判断上限閾値より大きければ、アクセル戻し操作が行われていない判断し、0を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。同様に、前回のアクセル操作量と、現在のアクセル操作量との差分が、アクセル戻し判断下限閾値より小さければ、アクセル戻し操作が行われている判断し、1を出力する。そうでない場合は、前回の値を出力する。以上の判断結果を前回の結果と比較し、今回>前回となったとき、すなわち、現在まさにアクセル戻し操作が開始されたと判断して、アクセル戻し操作判断を真とする。アクセル戻し操作判断上限閾値>アクセル戻し操作判断下限閾値と言う関係を持たすことにより、判断にヒステリシスを持たすことができ、制御が安定する。
【0098】
次に、作用を説明する。
【0099】
目標となる駆動力、もしくは、加速度を、内燃機関とモータに配分し、これを同時に制御することによって、実現するHEVシステムを考える。
一般に、内燃機関には、その動作が間欠的であることと、吸入空気の応答から、トルクの増加要求に対して、応答遅れが存在する(図5)。この応答遅れにより、ドライバーの要求に対して車両の挙動変化が遅れるため、加速感をスポイルする要因となっている。
【0100】
この応答遅れを、例えば、モータのようにより応答の早い原動機を用いて補償することにより、機関全体の応答性を向上させ、加速性能を向上させる方法が考えられる。図1の第1実施例は、動的目標駆動力生成部にて、目標とする動特性つき目標駆動力を生成し、エンジン応答推定部にて、エンジンの応答遅れを勘案したエンジン応答推定駆動力を生成し、この差分を、目標モータトルクに加えて、モータにて補償するものである。
【0101】
このとき、ドライバーの要求に対して、即座に応答し、かつ、加速度検知の閾値近傍でとどまり、絶対値として、大きな加速度を感じさせない第1の応答と、ドライバーの要求に対して、加速度検知の無駄時間相当の遅れを持った後、所定の加速度変化速度まで滑らかに立ち上がり、かつ、所定の加速度に滑らかに収束する第2の応答とを組み合わる(図10)。ドライバーの加速要求操作に対して、まず第1の応答が、遅れなく立ち上がる。このことにより、ドライバーが加速度の変化を検知可能になった段階で、不必要に大きな加速度変化を感じさせることなく、かつ、即座にまず応答したことを感じさせることができる。また、ここで、加速度の変化代が検知限界近傍にあることで、次からの応答に対しては、この加速度検知の閾値による無駄時間を生じさせることなく、検知させることが可能である。
【0102】
しかし、第1実施例では、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合、最初の1回だけ、第1の応答が加えられることとなり、その後のアクセル操作に対する応答性が悪化したように感じてしまう。例えば、図27は第1実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【0103】
そこで、アクセルの踏み込み操作を検知して、それにあわせて、第1の応答を形成するための上限制限の閾値を段階的に増加させていくことを考える。
第1の応答が上限制限閾値近傍にあるとき、ここで、アクセルの踏み増し操作を行っても、第1の応答の変化代は、上限制限閾値までのわずかな変化だけとなる。そこで、第1の応答が上限制限閾値近傍にあるとき、アクセルの踏み増し操作が行われたならば、上限制限閾値を、応答が起きたと感じる範囲で増加させる。また、アクセルの戻し操作が行われたとき、キャンセルする。さらに、アクセル戻し操作が行われるごとに、所定の量、上限制限閾値の増分を減じていく。また、アクセルが全閉位置まで一気に戻された場合には、この増分を0とする。
【0104】
図28に第6実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図を示す。この場合、2回目のアクセル踏み込み操作時においても第1の応答が出て、図27に比べて滑らかな加速応答を得ていることが分かる。
【0105】
次に、効果を説明する。
第6実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0106】
(15) 加速時初期応答生成部68は、ドライバーの要求が加速要求時には、上限を設けた応答時間の早い第1の応答を生成すると共に、この上限の値を、ドライバーの加速要求操作がある毎に増加させていく加速時初期応答上限値増分演算部68cを有するため、連続して、かつ、小刻みに、アクセルの踏み込み操作を行った場合でもアクセル操作に対する良好な応答性を確保することができる。
【0107】
(16) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、ドライバーの加速要求操作を判断し、一連の加速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で増加させていくようにしたため、連続してアクセルの踏み込み操作を行った場合、第1の応答と第2の応答とが繰り返されることによる滑らかな加速度特性を得ることができる。
【0108】
(17) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、前回の第1の応答の演算結果と前回の上限値の差分に対する大小判断を行い、前回の第1の応答の演算結果が上限値近傍にあるときのみ、上限値の増加を許可するようにしたため、第1の応答が上限制限閾値近傍にあるときにアクセルの踏み増し操作を行った場合、応答が起きたと感じる範囲で加速度を増加させることができる。
【0109】
(18) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値を、ドライバーの減速要求操作があったとき、標準値に戻すようにしたため、減速要求操作後の加速要求操作時に上限の値の増加基準を一定に保つことができる。
【0110】
(19) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、ドライバーの減速要求操作を判断し、一連の減速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で減少させていくため、減速要求操作時に滑らかな減速感を得ることができる。
【0111】
(20) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、アクセルが完全戻し位置になったとき、直ちに上限の値を標準値に戻すようにしたため、アクセル足離し操作からの加速要求操作時に上限の値の増加基準を一定に保つことができる。
【0112】
(第7実施例)
第6実施例において、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合、その操作に対して、大きな応答を出すと、ビジーフィーリングになることが課題として考えられ、この課題を解決するのが第7実施例である。
【0113】
まず、構成を説明する。
【0114】
第7実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図29に示すように、第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68c(図23)の構成に、前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける加速時初期応答上限値増分時間制限演算部68hを加えたものである。
【0115】
次に、作用を説明する。
【0116】
第7実施例装置では、前回のアクセル踏み込み操作からの経過時間が短いほど、上限制限閾値の標準値に対して、絶対値が小さくなるよう制限する方法により、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合においてビジーフィーリングになることを防止している。この場合、所定時間経過後は、上限制限閾値の標準値と等しくなる必要がある。
【0117】
まず、時間制限に対する制限方法として、加速時初期応答上限値増分時間制限値を与え、この値を初期値から1までの内分比と考えて、時間ごとに増加させることにより、この制御を実現する。このために、前々回、加速時初期応答上限値増加制御が行われず、かつ、前回加速時初期応答上限値増加制御が行われたとき、加速時初期応答上限値増分時間制限値を加速時初期応答上限値増分時間制限初期値に設定する。その後、1制御周期ごとに、加速時初期応答上限値増分時間制限変化量を加え、加速時初期応答上限値増分時間制限値を1まで増加させる。その結果、得られた加速時初期応答上限値増分時間制限値を、加速時初期応答上限値増分に掛け、加速時初期応答上限値増分最終値を得る。
【0118】
図30に第7実施例装置にて前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける場合の動作模式図を示す。アクセル操作が時間間隔を異ならせて連続して複数回行われた場合には、第1の応答特性に示すように、時間間隔が短いほど加速時初期応答上限値の増分が少なくなってきていて、加速度特性においても時間間隔が短いと第1の応答が小さく、時間間隔が長いと第1の応答が大きくなっていて、ビジーフィーリングが防止されているのが分かる。
【0119】
次に、効果を説明する。
第7実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0120】
(21) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、前回のアクセル操作からの時間に応じて、時間が短ければ短いほど小さくすると共に、その比率を、上限値増加制御を行った後、初期値を設定し、時間経過ごとに比率1まで増加させる加速時初期応答上限値増分時間制限演算部68hを有するため、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合でもビジーフィーリングになることを防止することができる。
【0121】
(22) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、増加操作の無いときの上限値の標準値と同等にするため、アクセル操作の踏み込み操作が短時間で連続した場合、所定時間経過後の上限の値の増加代を上限値の標準値と等しくすることができる。
【0122】
(第8実施例)
第6実施例において、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合、その操作全てに対して、大きな応答を出すと、同様に、ビジーフィーリングになることがもう1つの課題として考えられ、この課題を解決するのが
まず、構成を説明する。
【0123】
第8実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68cは、図31に示すように、第7実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部68c(図29)の構成に、加速時初期応答上限値増分の回数を制限する加速時初期応答上限値増分回数制限特性部68iを加えたものである。
【0124】
次に、作用を説明する。
【0125】
第8実施例装置では、アクセル操作の踏み込み操作が連続した場合には、加速時初期応答上限値増分を徐々に減らす方法により、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合において、ビジーフィーリングになることを防止している。が考えられる。
【0126】
ここで、加速時初期応答上限値増分は、アクセルの踏み込み操作の回数に応じて、徐々に増加していくのであるから、この値の増加に対して、徐々に飽和してゆく特性を、加速時初期応答上限値増分回数制限特性として与え、この特性にて、変換した値を加速時初期応答上限値増分最終値として出力すればよい。
【0127】
図32に第8実施例装置にて加速時初期応答上限値増分の回数を制限した場合の動作模式図を示す。アクセル操作がステップ的に連続して複数回行われた場合には、第1の応答特性に示すように、回数を繰り返すうちに、加速時初期応答上限値の増分が少なくなってきていて、加速度特性においても主応答の大きさは変わらず、回数を繰り返すほど第1の応答のみ小さくなっていて、ビジーフィーリングが防止されているのが分かる。
【0128】
次に、効果を説明する。
第8実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に述べる効果を得ることができる。
【0129】
(23) 加速時初期応答上限値増分演算部68cは、上限の値の増加代を、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定すると共に、今回までの増加代合計に対して、それが大きくなるほど飽和する特性を用いて、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定する加速時初期応答上限値増分回数制限特性部68iを有するため、アクセル操作の踏み込み操作が、時間を空けながらも連続した場合でもビジーフィーリングになることを防止することができる。
【0130】
以上、本発明の車両の駆動力制御装置を第1実施例〜第8実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0131】
例えば、第1実施例では、トルク応答の早い第1の原動機を電動モータとし、トルク応答の遅い第2の原動機をエンジンとする例を示したが、例えば、トルク応答が異なる二種類の第1エンジンと第2エンジンを搭載した車両や、トルク応答が異なる二種類の第1モータと第2モータを搭載した車両にも適用することができる。この場合、トルク応答の早い側を「第1の原動機」といい、トルク応答が遅い側を「第2の原動機」という。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の車両の駆動力制御装置を示す全体ブロック図である。
【図2】第1実施例装置の加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図3】第1実施例装置の加速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図4】第1実施例装置の減速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図5】アクセル操作に対する加速度応答の無駄時間の関係を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図6】モータによる応答遅れ補償の従来例を示すブロック図である。
【図7】ハイブリッド車両でエンジン応答遅れ補償制御の例を示すブロック図である。
【図8】エンジン応答遅れをより応答の早い原動機(モータ等)により、無駄時間分を補償した場合の例を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図9】人間の生理的限界と加速度波形の関係を示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図10】人間の生理的限界を前提にした第1実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図11】第1実施例装置の加速時初期応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が上昇した場合の加速時初期応答動特性を示す図である。
【図12】第1実施例装置の加速時主応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が上昇した場合の加速時主応答動特性を示す図である。
【図13】第1実施例装置の減速時初期応答生成部においてステップ的にアクセル操作量が低下した場合の減速時初期応答動特性を示す図である。
【図14】第2実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図15】第2実施例装置の変形例における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図16】第3実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図17】第3実施例装置における加速時初期応答動特性内の初期化機能付き伝達関数分子多項式演算部と初期化機能付き伝達関数分母多項式演算部を示すブロック図である。
【図18】第4実施例装置における加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図19】人間の生理的限界を前提にした第4実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図20】第5実施例装置における加速時主応答生成部を示すブロック図である。
【図21】人間の生理的限界を前提にした第5実施例装置での最小限アシストを示すアクセル操作量特性図及び加速度特性図である。
【図22】第6実施例装置の加速時初期応答生成部を示すブロック図である。
【図23】第6実施例装置の加速時初期応答生成部の加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図24】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部の加速時初期応答収束判断部を示すブロック図である。
【図25】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部のアクセル踏み込み操作判断部を示すブロック図である。
【図26】第6実施例装置の加速時初期応答上限値増分演算部のアクセル戻し操作判断部を示すブロック図である。
【図27】第1実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【図28】第6実施例装置にてアクセルを2回連続で踏み込み操作されたときの動作模式図である。
【図29】第7実施例装置の加速時初期応答生成部において前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図30】第7実施例装置にて前回の上限値増からの時間で増分に制限を掛ける場合の動作模式図である。
【図31】第8実施例装置の加速時初期応答生成部において加速時初期応答上限値増分の回数を制限する加速時初期応答上限値増分演算部を示すブロック図である。
【図32】第8実施例装置にて加速時初期応答上限値増分の回数を制限した場合の動作模式図である。
【符号の説明】
1 アクセル操作量検出手段
2 車速検出手段
3 静的目標駆動力生成部
4 駆動力配分部
5 遅れ補償量演算手段
6 加算器
7 加速操作判別部
8 加速時初期応答生成部
8a 加速時初期応答制限演算部
8b 加速時初期応答動特性
9 加速時主応答生成部
9a 差分器
9b 加速時主応答動特性
10 減速時主応答生成部
10a 減速時主応答動特性
11 エンジン応答推定部
12 加算器
13 切り替え器
14 差分器
Claims (29)
- ドライバーの操作に応じてパワートレインの出力を定め、パワートレインの出力制御により目標駆動力を実現する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求に対して、即座に応答し、かつ、人間が加速度検知可能な閾値近傍の加速度でとどまる第1の応答と、該第1の応答に比べて遅れを持ち、かつ、要求加速度に滑らかに収束する第2の応答と、の合成波形を生成し、前記パワートレインに対する出力制御により、この合成波形による加速度応答を実現することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの要求が減速要求時か、加速要求時もしくは一定車速要求時かを判別するドライバー要求判別部を設け、ドライバーの要求が減速要求時であるとき、加速要求時もしくは一定車速要求時であるときにおける第1の応答と第2の応答の合成波形とは異なる、第3の応答を用いることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的な目標駆動力、目標トルク、目標出力のいずれか、もしくは、それらに相当するものに対して、各応答の動特性を加えて、動的目標駆動力を得ることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項3に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記パワートレインには、少なくともトルク応答の早い第1の原動機とトルク応答の遅い第2の原動機を有し、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的な目標駆動力により、パワートレイン系の遅れ要素を見込んだ応答推定駆動力を演算し、この応答推定駆動力と前記動的目標駆動力の差分の分を、第1の原動機に遅れ補償量として出力することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項4に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、パワートレイン系の遅れ要素として、エンジンの吸入空気の応答遅れ、吸気サイクルによる遅れ、吸入空気量制御装置の応答遅れ、系のイナーシャトルク、系のバネ要素、系の効率を用いて、エンジン応答推定駆動力を演算することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的な目標駆動力、目標トルク、目標出力のいずれか、もしくは、それらに相当するものに対し、上下限の制限を行った後の信号を入力信号として、所定の動特性に入力し、その出力を第1の応答とすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項6に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上下限の制限において、一般に人間が検知できる加速度段差の下限幅に相当する上限制限を行い、また、絶対値0による下限制限を行うことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項7に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、目標値に対し、その時間差分を取り、その差分値に対して、上下限の制限を行いながら積分し、それを所定の動特性に入力する入力信号とすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項8に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上限側制限値にヒステリシス分を加えた値にて上限制限を行い、入力信号に対して、再度、上限制限を行い、入力信号とすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項8または請求項9に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの要求が加速要求でないときは、積分値を0にすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項6ないし請求項10の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、動特性として、単調に増加し所定時間後に静定する動特性を用いることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項11に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、目標値の時間差分の符号により、単調に増加し所定時間後に静定する動特性と、これとは別の動特性と、を切り替えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項12に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、目標値を入力し第2の応答である加速時主応答を生成する加速時主応答生成部を設け、別の動特性として、前記加速時主応答生成部の動特性と同じものを使用することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項11ないし請求項13の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求、減速要求の切り替わりに際し、動特性のそのときの出力信号と、内在している積分要素、および、遅れ要素の値を、そのときの入力信号と、前回の出力信号に切り替えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項14に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、動特性について、切り替えに際して、その動特性のそのときの出力信号と、内在している積分要素の値を、全て0にすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項6ないし請求項15の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、目標値の変化開始、もしくは、ドライバーの加速要求開始に対して、一般的な人間の応答時間分より少なくとも短い遅れを持たせて、応答を開始することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1ないし請求項16の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの操作に応じた静的な目標駆動力、目標トルク、目標出力のいずれか、もしくは、それらに相当するものものに対し、応答出力の変化率が時間と共に徐々に増加し、かつ、ある最大値を取った後、0まで減衰する特性を、第2の応答に用いることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項17に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、第1の応答を生成するための入力信号と、目標値との差分を取った後の信号を入力信号として、所定の動特性に入力し、その出力を第2の応答とすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項16または請求項17に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、目標値の変化開始、もしくは、ドライバーの加速要求開始に対して、一般的な人間において、情報の提示からそれに対する検知、あるいは、対応するための動作開始までの応答時間分遅れて、応答を開始することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項19に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求、減速要求の切り替わりに際して、動特性のそのときの出力信号と、内在している積分要素、および、遅れ要素の値を、そのときの入力信号と、前回の出力信号に切り替えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの要求が加速要求時には、第1の応答を生成する上限の値を、ドライバーの加速要求操作がある毎に増加させていくことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの加速要求操作を判断し、一連の加速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で増加させていくことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21または請求項22に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、前回の第1の応答の演算結果と前回の上限値の差分に対する大小判断を行い、前回の第1の応答の演算結果が上限値近傍にあるときのみ、上限値の増加を許可することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21ないし請求項23の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上限の値の増加代を、増加操作の無いときの上限値の標準値と同等にすることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21ないし請求項24の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上限の値の増加代を、前回のアクセル操作からの時間に応じて、時間が短ければ短いほど小さくすると共に、その比率を、上限値増加制御を行った後、初期値を設定し、時間経過ごとに比率1まで増加させることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21ないし請求項25の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上限の値の増加代を、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定すると共に、今回までの増加代合計に対して、それが大きくなるほど飽和する特性を用いて、今回までの増加代合計が大きければ大きいほど、小さくなるように設定することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項21ないし請求項26の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、上限の値を、ドライバーの減速要求操作があったとき、標準値に戻すことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項27に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、ドライバーの減速要求操作を判断し、一連の減速要求操作の開始時のみ、上限の値を所定の値で減少させていくことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項27または請求項28に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、アクセルが完全戻し位置になったとき、直ちに上限の値を標準値に戻すことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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- 2003-06-20 JP JP2003176544A patent/JP2004225685A/ja active Pending
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